JP2002301049A - 低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置 - Google Patents

低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 近年眼科臨床で実用されている光波断層画像
測定法の基盤技術である低コヒーレンス干渉計と旋光分
析技術とを融合させた、患者の負担が少なく、測定時間
が速い低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置を
提供する。 【解決手段】 偏波面選択性のある光波断層画像測定装
置に、複数の参照光ミラー(7,8)を設けてそれぞれ
個別の周波数で振動させることにより、生体内の異なっ
た位置からの後方散乱光を検出し、その後方散乱光の偏
光状態を測定する手段と、2つの位置間での偏光状態の
変化から糖などの光学活性物質の濃度を求める手段とを
具備する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低コヒーレンス光
干渉計を用いた血糖測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、このような分野の技術としては、
器具を眼に取り付けて前眼房水の透過光の旋光性を測定
する方法が提案されている(文献1:DIABETES
CARE,VOL.5,NO.3 MAY−JUNE
1982 P.259〜265,Fig.8および9
参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】現在、糖尿病患者をは
じめ、血糖に関する病の多くの患者から体内血糖の無侵
襲測定装置の開発が求められている。これに対して、光
波を用いる方法は、無侵襲性であることから有望視され
ており、既に吸収スペクトルを用いる方法などが報告さ
れている〔文献2:病態生理 Vol.12,No.4
(1993:4),P.293〜300〕。
【0004】また、眼球前部の前眼房水には、糖濃度測
定の妨げとなる物質が比較的少ないこと、前眼房水の糖
濃度は血中濃度の約61%であるが追従性が比較的いい
ことなどから、早くから測定への応用が注目されてい
る。例えば、1979年から1982年には、in v
itro系の実験で近赤外光を用いて旋光分析により、
前眼房水で、ブドウ糖濃度20〜1000mg/100
mlの計測が可能であることが実験的に示されている
(上記した文献1および2)。
【0005】そこで、本発明は、上記状況に鑑みて、近
年眼科臨床で実用されている光波断層画像測定法(OC
T;Optical Coherence Tomog
raphy)の基盤技術である低コヒーレンス干渉計と
旋光分析技術とを融合させた、患者の負担が少なく、測
定時間が速い低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定
装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、 〔1〕低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置に
おいて、低コヒーレンス光源(1)を用いた干渉計を基
に、前眼房水(5A)を往復する光波の旋光能を測定し
て、人体内のブドウ糖濃度を無侵襲的に測定するように
したものである。
【0007】〔2〕低コヒーレンス光干渉計を用いた血
糖測定装置において、偏波面選択性のある光波断層画像
測定装置(Polarization Sensiti
veOptical Coherence Tomog
raphy,PSOCT)に、複数の参照光ミラー
(7,8)を設けて、それぞれ個別の周波数で振動させ
ることにより、生体内の異なった位置からの後方散乱光
を検出し、その後方散乱光の偏光状態を測定する手段
と、2つの位置間での偏光状態の変化から糖などの光学
活性物質の濃度を求める手段とを具備することを特徴と
する。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。
【0009】まず、ブドウ糖は、光学活性であり、それ
により旋光性を有する。旋光性とはブドウ糖などの光学
活性物質中を左・右円偏光が伝搬したとき、左・右円偏
光、それぞれに対する屈折率が違うために出射時の偏光
状態が入射偏光状態と異なる現象をいう。これにより、
直線偏光は左・右円偏光の和であるために、直線偏光入
射時に出射光の偏波面が、物質の旋光能・濃度に応じて
変化する〔先行技術文献3:小川智哉著、「結晶物理工
学」、裳華房 p.206−207、6−3図、式
(6.25)〕。
【0010】よって、この偏波面の旋光度を測定すれ
ば、物質の旋光能が既知の場合、濃度が測定される。ブ
ドウ糖濃度と旋光度との関係は実験的に測定され、報告
されている(上記した文献1参照)。簡易な旋光分析装
置では0.0013度で20mg/100mlの感度が
得られており、血糖測定に利用できる感度である。
【0011】既に、OCTの分野では、生体組織の偏光
変化に着目した研究がなされており、PSOCTの基本
構成や測定データが報告されている〔文献4:IEEE
JOURNAL OF SELECTED TOPI
CS IN QUANTUMELECTRONICS,
VoL.5,NO.4,JULY/AUGUST199
9.P.1159〜1167参照〕。
【0012】これを踏まえて、本発明の実施例について
説明する。
【0013】図1は本発明の実施例を示す低コヒーレン
ス光干渉計を用いた血糖測定装置の構成図である。
【0014】この図において、1は低コヒーレンス光源
(LCLS)、2はビームスプリッター(BS)、3は
ビーム走査装置(BSS)、4は対物レンズ(OL)、
5は眼前部(EYE)、5Aは前眼房水(S)、6は波
長板(WP)、7はピエゾ付き振動ハーフミラー(H
M)、8はピエゾ付き振動ミラー(M)、9は偏光ビー
ムスプリッター(PBS)、10,11は光検出器(D
1 、D2 )、12はアナログ加算器(AD)、13,1
4,15は周波数f1 、f2 を分離しそれぞれの振幅信
号を出力するDEMOV(Demodulator f
or Vertical signal)、DEMOA
(Demodulator for Added si
gnal)、DEMOH(Demodulator f
or Horizontal signal)である。
【0015】この図において、LCLS1からの水平直
線偏光は、BS2、BSS3、OL4を通って、EYE
5に照射される。EYE5からの後方散乱光である信号
光は、再度、OL4、BSS3、BS2を通ってPBS
9で水平・垂直偏光に分離されて、D1 10、D2 11
へ入射する。
【0016】一方、参照光は、WP6を介してHM7、
M8によって反射され、それぞれの反射光はBS2へ向
かう。この際、偏光状態は水平に対して45度傾くよう
にWP6で調整する。PBS9で水平・垂直偏波成分は
等分配されてD1 10、D211に入射する。HM7、
M8はそれぞれ独立にステージで光軸方向に移動可能で
あり、参照光路(RA)と信号光路(SA)との光路差
が調整可能である。
【0017】また、M8,HM7はそれぞれピエゾ振動
子で周波数f1 、f2 で振動しており、それぞれの参照
光に対するヘテロダインビート信号の検出が可能であ
る。
【0018】OCTの原理(文献5:計測と制御 第3
9巻 第4号 2000年4月号,P.259〜266
参照)によれば、参照光路(RA)と信号光路(SA)
との光路差が光源のコヒーレント長以内のときに干渉信
号が発生する。EYE5からのある後方散乱光に対し
て、HM7,M8を光軸方向に走査して干渉が生じた場
合、D1 10,D2 11からのヘテロダインビート信号
のRFスペクトルは、図2に示すようになり、それぞれ
1 ,f2 周波数成分が抽出可能である。よって、DE
MOV13、DEMOA14、DEMOH15により、
各信号の振幅信号が容易に得られる。
【0019】次に、周波数f1 のビート信号に着目し
て、M8を光軸方向に走査すると、図3(a)に示すよ
うに、移動座標に対する信号強度プロファイルが得られ
る。
【0020】このプロファイルは、図3に示すように眼
の断層構造と関係があることが知られている(上記した
文献4、Fig.4参照)。よって、M8を地点Aに固
定することにより、水晶体前面からの後方散乱信号のみ
を引き出すことができる。
【0021】次に、周波数f2 のビート信号に着目し
て、HM7を光軸方向に走査すると、図3(b)に示す
ように、移動座標に対する信号強度プロファイルが得ら
れる。よって、同様にHM7を地点Bに固定することに
より、前眼房水S5A前面からの後方散乱信号のみを引
き出すことができる。これより、周波数f1 ,f2 それ
ぞれのヘテロダインビート信号が、水晶体前面、前眼房
水S5A前面からの信号に対応することとなる。
【0022】図4(a)は入射光波が水平直線偏光であ
ることを示し、図4(b)は、出射光波が旋光して偏波
面がθ回転した様子を示す。この時、PBS9により水
平・垂直偏波成分がD1 10、D2 11で検出され、そ
れぞれの信号はSH (fi )、SV (fi )(i=1,
2)で示される。
【0023】ここで、 SH (fi )∝〔2Er/(√2)〕Es・cosθ・
cos(2πfi ・t)(i=1,2) SV (fi )∝〔2Er/(√2)〕Es・sinθ・
cos(2πfi ・t)(i=1,2) 故に θi =tan-1〔SV (fi )/SH (fi )〕 よって、入射偏波に対する水晶体前面と前眼房水前面か
らの後方散乱光のそれぞれの旋光度がθ1 ,θ2 と求ま
り、その旋光度の差から前眼房水に含まれる糖濃度が求
まり、血中糖濃度が測定される。
【0024】OCTにおいて、複数の参照光ミラーで同
時に複数の鉛直断面画像を測定する試みは既に報告され
ている(文献6:July 1,1997/Vol.2
2,No.13/OPTICS LETTERS,P.
1039〜1041参照)。
【0025】また、光学活性物質を通過する光波をミラ
ーで反射させた場合、旋光性が相殺されるとの報告(文
献7:Rev.Sci.Instrum.64(1
0),Oct 1993,P.2801〜2807参
照)があるが、ここでは生体内での散乱現象により後方
散乱光が生じるので偏光情報を有する光波のみが選択的
に検出される。
【0026】一方、図5に示すように、サンプルアーム
(図1に示すSA)を光ファイバーで延長したり、光フ
ァイバー23とレンズ24で構成される簡易な複数の先
端部を光スイッチ(OS)22で高速に切り替えること
により、遠隔地や病院などで複数の患者の測定にも対応
することができる。ここで、LCI(Low Cohe
rence Interferometer)21は、
図1において点線より矢印側の低コヒーレンス干渉系お
よび信号処理系である。
【0027】なお、本発明は上記実施例に限定されるも
のではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能
であり、これらを本発明の範囲から排除するものではな
い。
【0028】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、患者の眼に全く非接触で、実時間で眼前部の構
造を観察しながら前眼房水による旋光性から糖濃度の測
定を行うようにしたので、患者の負担が少なく、測定時
間が早い。
【0029】また、光ネットワークを用いたシステム化
にも対応できるために、多くの遠隔地での患者にもサー
ビスが可能である。
【0030】更に、光ファイバーで先端部を延長・分岐
すれば、病院などで複数の患者ごとに測定が可能にな
る。
【0031】したがって、多くの糖尿病患者に対して、
負担の少ない血糖測定が可能になるので、医学分野での
貢献や、半導体や他の産業分野への波及効果は多大であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す低コヒーレンス光干渉計
を用いた血糖測定装置の構成図である。
【図2】ヘテロダインビート信号のRFスペクトルを示
す図である。
【図3】移動座標に対する信号強度プロファイルを示す
図である。
【図4】ミラーの位置と偏光の関係を示す図である。
【図5】遠隔地や病院などで複数の患者の測定の説明図
である。
【符号の説明】
1 低コヒーレンス光源(LCLS) 2 ビームスプリッター(BS) 3 ビーム走査装置(BSS) 4 対物レンズ(OL) 5 眼前部(EYE) 5A 前眼房水(S) 6 波長板(WP) 7 ピエゾ付き振動ハーフミラー(HM) 8 ピエゾ付き振動ミラー(M) 9 偏光ビームスプリッター(PBS) 10,11 光検出器(D1 ,D2 ) 12 アナログ加算器(AD) 13 DEMOV(Demodulator for
Verticalsignal) 14 DEMOA(Demodulator for
Added signal) 15 DEMOH(Demodulator for
Horizontal signal) 21 LCI(低コヒーレンス干渉計:Low Co
herence Interferometer) 22 光スイッチ(OS) 23 光ファイバー 24 レンズ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01B 9/02 G01N 21/21 Z G01N 21/17 630 A61B 5/14 310 21/21 3/10 Z R Fターム(参考) 2F064 FF02 GG02 GG22 GG23 GG37 GG70 HH01 JJ05 2G059 AA01 AA06 BB12 CC16 EE02 EE05 EE09 FF08 GG00 GG04 JJ11 JJ13 JJ15 JJ17 JJ19 JJ20 JJ22 KK01 KK03 LL04 NN01 4C038 KK10 KL05 KL07 KM00 KY01 KY03

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低コヒーレンス光源を用いた干渉計を基
    に、前眼房水を往復する光波の旋光能を測定して、人体
    内のブドウ糖濃度を無侵襲的に測定することを特徴とす
    る低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置。
  2. 【請求項2】(a)偏波面選択性のある光波断層画像測
    定装置に、複数の参照光ミラーを設けてそれぞれ個別の
    周波数で振動させることにより、生体内の異なった位置
    からの後方散乱光を検出し、該後方散乱光の偏光状態を
    測定する手段と、(b)2つの位置間での偏光状態の変
    化から糖などの光学活性物質の濃度を求める手段とを具
    備することを特徴とする低コヒーレンス光干渉計を用い
    た血糖測定装置。
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