JP3605270B2 - 光学式エンコーダ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータリ型またはリニア型の光学式エンコーダに係り、特に、発光素子から出射された光をコード板の検出パターンを介して受光素子で検出する光学式エンコーダに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の光学式エンコーダは、A,B相パターンから回転方向と回転量を検出するインクリメンタルタイプと、回転方向と回転量に加えてZ相パターンから絶対位置を検出するアブソリュートタイプとに大別され、これら両タイプの光学式エンコーダは用途に応じて使い分けられている。
【0003】
図7〜図9はインクリメンタルタイプの光学式エンコーダの従来例を示すもので、図7はコード板の平面図、図8は検出部分を示す断面図、図9はA,B相信号の説明図である。これらの図において、符号1で示すコード板は図示せぬ回転軸等に取付けられて回転自在に支承されており、このコード板1の同一トラックT上には多数のスリット2が形成されている。検出パターンであるスリット2はA,B相パターンを構成するもので、トラックT上に等ピッチ間隔で連続的に形成されている。図8に示すように、これらスリット2を介して第1の発光素子3と第1の受光素子4の組および第2の発光素子5と第2の受光素子6の組がそれぞれ対向配置されている。第1および第2の発光素子3,5はLEDからなり、第1および第2の受光素子4,6はフォトトランジタやフォトダイオード等からなり、これら第1および第2の受光素子4,6はスリット2の配列ピッチに対して90度の位相差をもつようにトラックT方向に沿って位置ずれしている。
【0004】
このように構成された光学式エンコーダにおいて、コード板1が正逆いずれかの方向へ回転すると、その回転中に、第1の発光素子3から発せられた光がスリット2を透過して第1の受光素子4で受光され、同様に、第2の発光素子5から発せられた光がスリット2を透過して第2の受光素子6で受光される。これら第1および第2の受光素子4,6はスリット2の配列ピッチに対して90度の位相差をもっているため、図9(a),(c)に示すように、両受光素子4,6から位相が90度ずれた正弦波が出力され、これらを所定のスレッシュホールド電圧を閾値として波形成形することにより、図9(b),(d)に示すように、90度の位相差を有するA相信号とB相信号が出力される。したがって、A相信号とB相信号からコード板1の回転方向と回転量(角度)が求められ、それによってコード板1が連結された回転体の回転情報を得ることができる。
【0005】
なお、アブソリュートタイプの光学式エンコーダの場合は、コード1のトラックTとは異なる別のトラック上にZ相パターンを構成するスリットを不等ピッチ間隔で間欠的に形成し、これらスリットを介して別の発光素子と受光素子の組を対向配置してある。このものは、コード板1の回転中に、A,B相信号とZ相信号が出力されるため、A相信号とB相信号からコード板1の回転方向と回転量(角度)が求めると共に、Z相信号からコード板1の絶対位置が求められる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、第1および第2の発光素子3,5として用いられるLEDから出射される光量は常に一定であるわけではなく、個々の素子の製造上のばらつきや環境温度変化あるいは経時変化等によって変動し、同様に、第1および第2の受光素子4,6の感度も個々の素子についてばらつきがあり、さらに、受光素子のスレッシュホールド照度(電圧)も環境温度変化等によって大きく変動する。このため、前述した従来の光学式エンコーダでは、これら種々の要因によって出力信号特性が大きく影響されるという問題が発生する。例えば、第2の発光素子5の光量が第1の発光素子3の光量に対して経時的に低下すると、図9(c),(d)の破線で示すように、第2の受光素子6から出力される信号が第1の受光素子4に対して90度の位相差をもたなくなってしまい、A相信号とB相信号を正確に出力することができなくなる。
【0007】
そこで、このような問題を解消するために、従来より差動出力タイプの受光素子を用いた光学式エンコーダが提案されている。この差動出力タイプの受光素子は、図10に示すように、4個の受光素子7a,7b,8a,8bを基台9上に一体的に配置し、各受光素子7a,7b,8a,8bが対応するスリットの配列方向に対して平行となるようにレイアウトしたものである。受光素子7a,7bはスリットの配列ピッチに対して180度の位相差をもつように位置ずれしており、同様に、受光素子8a,8bもスリットの配列ピッチに対して180度の位相差をもつように位置ずれし、かつ、受光素子7a,7bと受光素子8a,8bは相互に90度の位相差をもっている。したがって、コード板の回転中に、受光素子7a,7bから図11(a)に示すような180度の位相差をもつ正弦波が出力されると共に、受光素子8a,8bから図11(b)に示すような180度の位相差をもつ正弦波が出力され、これら正弦波のクロスポイントで矩形波を生成することにより、図11(c),(d)に示すような90度の位相差を有するA相信号とB相信号が出力される。
【0008】
このような差動出力タイプの受光素子を用いた光学式エンコーダによれば、LEDから出射される光量がばらついたとしても、そのばらつきは受光素子7a,7b間と受光素子8a,8b間でそれぞれキャンセルされるため、図11(a),(b)に示したクロスポイントはほとんど変動せず、A相信号とB相信号を正確に検出できるという利点がある。しかしながら、各受光素子7a,7b,8a,8bが対応するスリットの配列ピッチに対して所定の位相差をもつように基台9上にレイアウトされているため、分解能に応じて決定されるスリットの配列ピッチに対して使用できる受光素子が限定されてしまい、設計上の自由度が極めて小さいという問題がある。また、スリットの配列ピッチに対して所定の位相差をもつ受光素子7a,7bと受光素子8a,8bからそれぞれ出力される正弦波のクロスポイントで矩形波を生成するため、スリットが等ピッチ間隔で配列されているA,B相パターンには対応できるが、スリットが不等ピッチ間隔で配列されているZ相パターンには全く対応できない。つまり、適用範囲がインクリメンタルタイプに限定され、アブソリュートタイプの光学式エンコーダには適用できないという問題もある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ライトオンとライトオフというように互いに反対のオン/オフ動作をする第1および第2の受光素子を用い、これら両受光素子を結ぶ直線がコード板に等ピッチ間隔で形成された第1のトラックと不等ピッチ間隔で形成された第2のトラックの各スリットの配列方向に対して直交するように配置すると共に、このような検出素子を第1のトラックのスリットの配列ピッチに対して90度の位相差をもつように2個配置することとする。このような検出素子を用いると、コード板の移動に伴って常に第1および第2の受光素子から互いに反対の波形が出力されるため、これら波形のクロスポイントで矩形波を生成することにより、発光素子からの光量のばらつきや変化に左右されない安定したA,B相信号とZ相信号を出力することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の光学式エンコーダでは、回転または直線的に移動可能なコード板と、光の照射によって互いに反対のオン/オフ動作をする第1および第2の受光素子が一体化された検出素子と、前記コード板に形成された多数のスリットを介して前記検出素子に対向配置された発光素子とを備えた光学式エンコーダにおいて、前記コード板に前記スリットを等ピッチ間隔で配列した第1のトラックと前記スリットを不等ピッチ間隔で配列した第2のトラックとを形成し、前記検出素子の第1および第2の受光素子を結ぶ直線を前記第1のトラックの前記スリットの配列方向に対して直交するように配置すると共に、該検出素子を前記第1のトラックの前記スリットの配列ピッチに対して90度の位相差をもつように2個配置し、かつ、前記検出素子の第1および第2の受光素子を結ぶ直線を前記第2のトラックの前記スリットの配列方向に対して直交するように配置した。
【0011】
前記検出素子はA,B,Z相検出用としてそれぞれ決められたメカ的な位置関係にレイアウトされていれば、インクリメンタルタイプの光学式エンコーダのみならずアブソリュートタイプの光学式エンコーダにも適用することができる。例えば、コード板に検出パターンとしての多数のスリットを等ピッチ間隔で配列したインクリメンタルタイプの場合は、2個の検出素子をスリットの配列ピッチに対して90度の位相差をもつような機械的位置に位置決めすれば、両検出素子から90度の位相差をもつA,B相信号を検出することができる。また、コード板にA,B相パターンとは別に不規則なスリットを不等ピッチ間隔で配列したアブソリュートタイプの場合は、該検出パターンの配列方向にも前記検出素子を配置すれば、各検出素子からA,B相信号とZ相信号をそれぞれ検出することができる。当然ながら、AまたはB相信号とZ相信号の位相差関係も必要な機械的位置への位置決めにより決定される。
【0012】
【実施例】
実施例について図面を参照して説明すると、図1は実施例に係るアブソリュートタイプの光学式エンコーダに備えられるコード板の平面図、図2は該光学式エンコーダに備えられる検出素子の説明図、図3は該光学式エンコーダの検出部分の断面図、図4は図2の検出素子から出力されるA(B)相信号の説明図、図5は図2の検出素子から出力されるZ相信号の説明図、図6はA,B相信号とZ相信号の位置関係を示す説明図である。
【0013】
図1に示すように、回転自在に支承されたコード板10の異なるトラックT1,T2上にはそれぞれ検出パターンとしてスリット11,12が形成されている。スリット11はA,B相パターンを構成するもので、トラックT1上に等ピッチ間隔で連続的に形成されている。一方、スリット12はZ相パターンを構成するもので、トラックT2上に不等ピッチ間隔で不規則に形成されている。
【0014】
図2に示すように、検出素子13はフォトトランジタやフォトダイオード等からなる第1および第2の受光素子14,15を有し、これら両受光素子14,15は合成樹脂等からなる基台16上に一体的に配置されている。第1の受光素子14は光の照射によってオン動作するライトオン(またはダークオフ)と称せられる素子で、第2の受光素子15は光の照射によってオフ動作するライトオフ(またはダークオン)と称せられる素子であるが、これとは逆に、第1の受光素子14がライトオフの素子で、第2の受光素子15がライトオンの素子であっても良い。
【0015】
図3に示すように、トラックT1に沿って2個の検出素子13(以下、必要に応じて符号13a,13bを付す)が配置されており、これら検出素子13a,13bは図示せぬ位置決め部材によってスリット11の配列ピッチに対して90度の位相差をもつような機械的位置に位置決めされている。その際、両検出素子13a,13bの第1および第2の受光素子14,15を結ぶ直線はスリット11の配列方向に対して直交しており、これら検出素子13a,13bに対向してLEDからなる発光素子17がコード板10を介してそれぞれ配置されている。図示省略してあるが、コード板10のトラックT2を介して別の検出素子13と発光素子17の組が対向配置されており、この検出素子13の第1および第2の受光素子14,15を結ぶ直線もスリット12の配列方向に対して直交している。
【0016】
このように構成された光学式エンコーダにおいて、コード板10が正逆いずれかの方向へ回転すると、一方の発光素子17から出射されてスリット11を透過した光がこれに対向する検出素子13aの第1および第2の受光素子14,15で受光され、他方の発光素子17から出射されてスリット11を透過した光がこれに対向する検出素子13bの第1および第2の受光素子14,15で受光される。ここで、両検出素子13a,13bの第1の受光素子14はライトオン、第2の受光素子15はライトオフの素子であるから、両検出素子13a,13bの第1および第2の受光素子14,15から図4(a)に示すような180度の位相差をもつ正弦波がそれぞれ出力され、これら正弦波のクロスポイントで矩形波を生成することにより、図4(b)に示すようなスリット11の配列ピッチに応じた矩形波が出力される。同様に、コード板10の回転中に、別の発光素子17から出射されて不等ピッチのスリット12を透過した光がこれに対向する検出素子13の第1および第2の受光素子14,15で受光されるため、これら第1および第2の受光素子14,15から図5(a)に示すような互いに反対の波形が出力され、これら波形のクロスポイントで矩形波を生成することにより、図5(b)に示すようなスリット12の配列ピッチに応じた矩形波が出力される。
【0017】
したがって、トラックT1に沿って配置された2個の検出素子13a,13bのうち、例えば一方の検出素子13aをA相検出、他方の検出素子13bをB相検出として用い、トラックT2に沿って配置された別の検出素子13をZ相検出として用いれば、図6に示すように、両検出素子13a,13bのそれぞれの第1および第2の受光素子14,15から90度の位相差を有するA,B相信号が出力され、残りの検出素子13の第1および第2の受光素子14,15からZ相信号が出力される。これらA,B,Z相信号はいずれも検出素子13の第1および第2の受光素子14,15から出力されるものであるから、対応する発光素子(LED)17から出射される光量がばらついたとしても、そのばらつきはライトオンの第1の受光素子14とライトオフの第2の受光素子15間でキャンセルされ、両素子14,15から出力される波形のクロスポイントはほとんど変動しない。また、各検出素子13の第1および第2の受光素子14,15は対応するスリット11,12の配列方向に対して直交するように配置されているため、等ピッチ間隔で連続的に配列されたスリット11に対しては、2個の検出素子13a,13bをスリット11の配列ピッチに対して90度の位相差をもつような機械的位置に位置決めするだけでA,B相信号を検出することができ、不等ピッチ間隔で不規則に配列されたスリット12に対しても、同一構成の検出素子13からZ相信号を検出することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0021】
回転または直線的に移動可能なコード板と、光の照射によって互いに反対のオン/オフ動作をする第1および第2の受光素子が一体化された検出素子と、前記コード板に形成された多数のスリットを介して前記検出素子に対向配置された発光素子とを備えた光学式エンコーダにおいて、前記コード板に前記スリットを等ピッチ間隔で配列した第1のトラックと前記スリットを不等ピッチ間隔で配列した第2のトラックとを形成し、前記検出素子の第1および第2の受光素子を結ぶ直線を前記第1のトラックの前記スリットの配列方向に対して直交するように配置すると共に、該検出素子を前記第1のトラックの前記スリットの配列ピッチに対して90度の位相差をもつように2個配置し、かつ、前記検出素子の第1および第2の受光素子を結ぶ直線を前記第2のトラックの前記スリットの配列方向に対して直交するように配置すると、コード板の移動に伴って常に第1および第2の受光素子から互いに反対の波形が出力されるため、これら波形のクロスポイントで矩形波を生成することにより、発光素子からの光量のばらつきや変化に左右されない安定したA,B相信号とZ相信号を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るアブソリュートタイプの光学式エンコーダに備えられるコード板の平面図である。
【図2】該光学式エンコーダに備えられる検出素子の説明図である。
【図3】該光学式エンコーダの検出部分の断面図である。
【図4】図2の検出素子から出力されるA(B)相信号の説明図である。
【図5】図2の検出素子から出力されるZ相信号の説明図である。
【図6】A,B相信号とZ相信号の位置関係を示す説明図である。
【図7】従来のインクリメンタルタイプの光学式エンコーダに備えられるコード板の平面図である。
【図8】該光学式エンコーダの検出部分の断面図である。
【図9】図8の検出素子から出力されるA,B相信号の説明図である。
【図10】従来の差動出力タイプの受光素子を示す説明図である。
【図11】図10の受光素子から出力されるA,B相信号の説明図である。
【符号の説明】
10 コード板
11,12 スリット
13(13a,13b) 検出素子
14 第1の受光素子
15 第2の受光素子
16 基台
17 発光素子
Claims (1)
- 回転または直線的に移動可能なコード板と、光の照射によって互いに反対のオン/オフ動作をする第1および第2の受光素子が一体化された検出素子と、前記コード板に形成された多数のスリットを介して前記検出素子に対向配置された発光素子とを備えた光学式エンコーダにおいて、
前記コード板に前記スリットを等ピッチ間隔で配列した第1のトラックと前記スリットを不等ピッチ間隔で配列した第2のトラックとを形成し、前記検出素子の第1および第2の受光素子を結ぶ直線を前記第1のトラックの前記スリットの配列方向に対して直交するように配置すると共に、該検出素子を前記第1のトラックの前記スリットの配列ピッチに対して90度の位相差をもつように2個配置し、かつ、前記検出素子の第1および第2の受光素子を結ぶ直線を前記第2のトラックの前記スリットの配列方向に対して直交するように配置したことを特徴とする光学式エンコーダ。
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JP27152197A JP3605270B2 (ja) | 1997-10-03 | 1997-10-03 | 光学式エンコーダ |
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Family Applications (1)
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