JP3605223B2 - 逆ドーム型スピーカ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は音響機器の一種であるスピーカに関し、詳しくは振動板形状が正面縦断面でその曲面が下方にドーム状に突出した逆ドーム型スピーカに関する。
【0002】
【従来の技術】
図6において従来の逆ドーム型スピーカの構造を説明する。図において、1は曲面が下方にドーム状に突出した形状の木材パルプやアルミニュウム等からなる振動板である。2はボイスコイル2aを捲着したボイスコイルボビン、3はボイスコイルボビン2を保持するダンパー、4は振動板1の外周を保持するエッジ、5はセンターポール部5aとフランジ部5bからなる断面逆T字状のヨーク、6はリング状のマグネット、7はリング状のプレート、8はプレート7の内周面とセンターポール部5aの上方外周面との間に形成された磁気ギャップ、9はヨーク5に設けた貫通孔、10はフレーム、11はガスケットである。
【0003】
逆ドーム型スピーカは浅いドーム形状を取ることにより適度な形状剛性が得られる上に前室効果の出ない理想的な性能が得られる。これに対し、コーン型スピーカは一般的に振動板前面の窪みによる前室効果のために音圧特性に乱れが生じる。また、平面型スピーカは振動板の剛性を得るのが困難で高域特性が伸びない。
【0004】
逆ドーム型スピーカにはキャップ部の接着が無く振動板が一体であるため、高域特性のバラツキが少なく安定している。また、形状が球面で剛性が高いので、分割振動周波数が高くなり、中音域の歪みを低くすることができる。
【0005】
逆ドーム型スピーカは振動板が凹面状でショートホーンが不要であるため、フラットな特性が得られる上にイコライザーやメタルカバーのようなプロテクターが無く、クリヤーな音質が再生できる。
【0006】
逆ドーム型スピーカは振動板外形の約0.75倍内側の最適位置を駆動し、高域特性をコントロールすることで、同一口径のドーム型スピーカに比べ、指向性をさらに改善することができる。
【0007】
逆ドーム型スピーカでは、振動板の深さを浅くすることができるため、マルチウェイ方式スピーカにおいて、各スピーカユニットから聴取位置までの信号到達時間の差が少なく位相のずれによるクロスオーバー近辺の波形歪みが減少する。また、ユニット間前後のわずかな位置調整でこの位相差を完全に補正でき、バッフル板の構造もシンプルになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の逆ドーム型スピーカにおいては振動板にボイスコイルボビンを接合する場合、位置決めを正確に行うことと接着剤を安定に塗布することは著しく困難で作業性が悪いという課題があった。また、従来の木材パルプやアルミニュウムのような材料からなる振動板では高域においてピークやf特のあばれが発生するという課題があった。
【0009】
本発明は上記のことに鑑み提案されたもので、その主目的とするところは、振動板にボイスコイルボビンを接合する場合、正確に位置決めを行うことができ、容易に接着剤を塗布することができることによって作業性の向上を図ると共に、特定の熱可塑性樹脂を主材とする振動板を用いることによって品質の向上を図った逆ドーム型スピーカを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
逆ドーム型スピーカの振動板の背面に同心円状の複数のリング状のリブを設ける。これらのリブは振動板の強度を増すと共に、ボイスコイルボビンの位置決めするためのガイドとして使用される。また、ボイスコイルボビンをリブの位置で振動板に接合することによってボイスコイルボビンの変形の防止、矯正が期待できる。更に、ボイスコイルボビンの上部口径を加工,成形,アダプター等によってテーパ状に径を大きくし、振動板の駆動位置を調整して特性を選択することができる。
【0011】
また、ボイスコイルボビンを一つのリブで振動板に接合し、かつ、ボイスコイルボビンの上方部と他のリブとの間にリング状のスロートを配設する。このスロートによりボイスコイルボビンと振動板との接着強度が増し、高入力時における信頼性を高くし、音圧特性安定とバラツキを低減すると共に、駆動点を変えて所望の特性を得ることができる。
【0012】
更に、インジェクション成型からなる振動板の主材にオレフィン系樹脂を用いる。また、主材のオレフィン系樹脂に補強材を配合することによって優れた高域特性を得ることができる。例えば、アスペクト比(aspect ratio,縦横比)が15以上のフレーク状の天然マイカもしくは人工マイカからなる補強材を20〜50%重量比で主材のオレフィン系樹脂に配合したものを用いることにより優れた高域特性を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
上記目的を達成するために本発明による逆ドーム型スピーカは、振動板形状が正面縦断面でその曲面が下方にドーム状に突出した逆ドーム型スピーカにおいて、振動板1が熱可塑性樹脂を主材としたインジェクション成型からなり、振動板1の背面に同心円状の複数のリング状のリブ15a,15b,15c,15d〜からなるリブ群15を設け、前記リブ群15の一つをガイドとしてボイスコイルボビン2を振動板1に固着することに特徴を有している。
【0014】
また、上記本発明による逆ドーム型スピーカに、ボイスコイルボビン2と前記リブ群15の他の一つのリブとの間にリング状のスロート22を配設することに特徴を有している。
【0015】
更に、上記本発明による逆ドーム型スピーカにおいて、振動板1がオレフィン系樹脂や、オレフィン系樹脂に補強材を配合したものからなることに特徴を有している。
【0016】
または、オレフィン系樹脂に配合する前記補強材はアスペクト比15以上のフレーク状天然マイカもしくは人工マイカを重量比20ないし50%であることに特徴を有している。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1は第1実施例における逆ドーム型スピーカの半断面図である。なお、図6と同一符号を付したものはそれぞれ同一の要素を示しており、説明を省略する。図において、15は逆ドーム形状の振動板1の裏面に設けた同心円状の複数のリブ15a,15b,15c,15d〜からなるリブ群である。実施例では、ボイスコイルボビン2はリブ15bの内周に位置決めされ、振動板1に固着されている。すなわち、接合工程としては、振動板1の凸面を上にした状態でリブ内周に接着剤を施し、上からボイスコイルボビン2を載せて接着するもので、リブが接着剤の流れ出しを防止し、接着剤溜まり部が形成されるので、接着がより容易にかつ正確にできる。
【0018】
なお、振動板1はオレフィン系樹脂にアスペクト比15以上のフレーク状天然マイカもしくは人工マイカからなる補強材を重量比20ないし50%配合したものをインジェクション成型したものである。
この振動板1のリブの断面形状を方形、半円形、三角形等用途に合った形状に設計することができる。また、凹部を設けた断面形状にすることによってボイスコイルボビン2を嵌め込み、一層正確な位置決め、安定した接合、ボイスコイルボビン2の変形の防止,矯正等が期待できる。
【0019】
図2は第1実施例における他の逆ドーム型スピーカの半断面図である。なお、図1と同一符号を付したものはそれぞれ同一要素を示しており、説明を省略する。図において、21は上部口径を加工,成形,アダプター等によってテーパ状に径を大きくしたボイスコイルボビンである。このボイスコイルボビン21はリブ15cの内周に位置決めされ、振動板1に固着されている。ボイスコイルボビン21の上部口径の寸法とリブ15cの径により振動板1の駆動位置を調整して特性を選択することができる。
【0020】
図3は第2実施例における逆ドーム型スピーカの半断面図であり、図1にリング状のスロート22を追加したものである。実施例では、このスロート22はボイスコイルボビン2の上方部とリブ15dとの間に配設されており、ボイスコイルボビン2はリブ15bの内周に位置決めされ、振動板1に固着されている。
【0021】
但し、この構造の場合、所望の特性を調整するために振動板1とボイスコイルボビン2との結合は振動板1とスロート22間の接着だけとし、ボイスコイルボビン2と振動板1とを直接固着しないこともある。このスロート22によりボイスコイルボビン2と振動板1との接着強度が増し、スロート22の上部口径の寸法とリブ15dの径により振動板1の駆動位置を調整して特性を選択することができると共に、作業性が向上する
【0022】
図4は振動板に用いられる材料の物性を表す図である。実施例A,Bはいずれもオレフィン系樹脂としてポリプロピレン樹脂を用いたもので、実施例Aにおける振動板は、ポリプロピレン樹脂100%をインジェクション成型したもので、請求項3に対応している。実施例Bにおける振動板は、ポリプロピレン樹脂にアスペクト比30のフレーク状マイカからなる補強材を重量比40%配合したものをインジェクション成型したもので、請求項4に対応している。従来例Cにおける振動板は、木材パルプを使用したものである。これら3種類の材料のヤング率,密度,内部損失,伝播速度から実施例Bの材料が最も優れていることが分かる。
【0023】
図5は本発明と従来例との音圧−周波数特性の比較を示す。この比較試験は図4における材料を用いた振動板を12cmのミッドレンジスピーカに組み込んで行ったものである。実線Aは図4における実施例Aであり、実線Bは図4における実施例Bであり、破線Cは図4における従来例Cである。図から明らかなように、実線Aはヤング率が木材パルプに比べて小さいので、高域で伸びていないが、ピークやf特のあばれは解消されている。実線Bは高域も伸びフラットな特性になり、高域のディップの平坦化、高域の再生特性において顕著な改善が見られる。なお、実施例では、オレフィン系樹脂としてポリプロピレンを用いたものを示したが、ポリエチレンの如き他のオレフィン系樹脂を用いても同様の効果が得られる。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載の本発明によれば、逆ドーム型スピーカの振動板は熱可塑性樹脂を主材としたインジェクション成型からなり、背面に同心円状の複数のリング状のリブを設けることにより、振動板の強度を増すと共に、ボイスコイルボビンの位置決めするためのガイドとして使用されるので、正確に位置決めを行うことができ、容易に接着剤を塗布することができ、品質と作業性の向上を図ることができる。
【0025】
また、請求項2記載の本発明によれば、逆ドーム型スピーカの振動板の背面に同心円状の複数のリング状のリブを設けることにより、振動板の強度を増すと共に、ボイスコイルボビンの位置決めするためのガイドとして使用され、ボイスコイルボビンの上方部と他のリブとの間にリング状のスロートを配設するので、より一層正確に位置決めを行うことができ、容易に接着剤を塗布することができ、品質と作業性の向上を図ることができる。
【0026】
更に、請求項3及び請求項4記載の本発明によれば、インジェクション成型からなる振動板の主材にオレフィン系樹脂を用い、また、主材のオレフィン系樹脂に補強材を配合したものを用いることにより、更に、主材のオレフィン系樹脂にアスペクト比が15以上のフレーク状の天然マイカもしくは人工マイカを20〜50%重量比の補強材を配合したものを用いることにより優れた高域特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例における逆ドーム型スピーカの半断面図である。
【図2】本発明の第1実施例における他の逆ドーム型スピーカの半断面図である。
【図3】本発明の第2実施例における逆ドーム型スピーカの半断面図である。
【図4】振動板に用いられる材料の物性を表す図である。
【図5】本発明と従来例との音圧に対する周波数特性を示す。
【図6】従来例における逆ドーム型スピーカの半断面図である。
【符号の説明】
1 振動板
2 ボイスコイルボビン
2a ボイスコイル
3 ダンパー
4 エッジ
5 ヨーク
5a センターポール部
5b フランジ部
6 マグネット
7 プレート
8 磁気ギャップ
9 貫通孔
10 フレーム
11 ガスケット
15 リブ群
15a,b,c,d リブ
21 ボイスコイルボビン
22 スロート
Claims (4)
- 振動板形状が正面縦断面でその曲面が下方にドーム状に突出した逆ドーム型スピーカにおいて、
振動板(1)が熱可塑性樹脂を主材としたインジェクション成型からなり、
振動板(1)の背面に同心円状の複数のリング状のリブ(15a,15b,15c,15d〜)からなるリブ群(15)を設け、
前記リブ群(15)の一つをガイドとしてボイスコイルボビン(2)を振動板(1)に固着することを特徴とする逆ドーム型スピーカ。 - 前記ボイスコイルボビン(2)と前記リブ群(15)の他の一つのリブとの間にリング状のスロート(22)を配設することを特徴とする請求項1記載の逆ドーム型スピーカ。
- 前記振動板(1)がオレフィン系樹脂、または、オレフィン系樹脂に補強材を配合したものからなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の逆ドーム型スピーカ。
- オレフィン系樹脂に配合する前記補強材はアスペクト比15以上のフレーク状天然マイカもしくは人工マイカを重量比20ないし50%であることを特徴とする請求項3記載の逆ドーム型スピーカ。
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