JP3604900B2 - 静圧磁気複合軸受およびスピンドル装置 - Google Patents

静圧磁気複合軸受およびスピンドル装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、静圧軸受と磁気軸受とを組み合わせた静圧磁気複合軸受、およびその軸受の製造方法、並びにこの軸受を備えたスピンドル装置、例えば高速切削機械加工機等に用いられるスピンドル装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
磁気軸受は、大きな軸受ギャップを持つため回転によるトルクロスが極めて小さく、積分制御により大きな静剛性を付与できる特徴がある。しかし、磁気軸受スピンドル装置は、加工中に主軸の曲げ固有振動数の影響を受け易く、そのため非常に複雑な制御系を構成する必要がある。したがって、様々な加工条件への対応が要求される汎用工作機用スピンドル装置としては適さない。
一方、非接触の軸受として、磁気軸受のほかに静圧軸受がある。静圧軸受は、回転精度が極めて高く優れた動的安定性を持っているが、圧縮性を有するために、静剛性および負荷容量が小さく、汎用工作機械用としてはほとんど適用例がない。
【0003】
そこで、最近、高速加工機用スピンドル装置として、図15(A)に縦断面図で示すように、静圧軸受101と磁気軸受102とを組合せた複合軸受スピンドル装置が提案され、実用化が検討されている。同図の複合軸受スピンドル装置では、磁気軸受101と、静圧軸受102とを、軸方向に並べて配置しているため、主軸103が長くなり、曲げ固有振動数が低くなるという問題点がある。また、磁気軸受を単独で適用するスピンドル装置の場合と全く同じ構造の制御系の構成を採用しているために、静圧軸受の動的安定性を損ね、むしろ外乱発生源として作用するという問題点もある。
したがって、静圧軸受,磁気軸受の特長を生かしつつ、欠点を補い合うという目的は十分に達成されていないのが現状である。
【0004】
このような従来の課題を解消するため、同図(B)に示すように、静圧軸受と磁気軸受とを、互いに兼用部分が生じるように一体化した静圧磁気複合軸受104、およびこの軸受104を用いたスピンドル装置を考えた。この提案例の静圧磁気複合軸受104は、磁気軸受のコア105で静圧軸受の軸受隙間形成面106の一部形成し、コア105に圧力流体のノズル107を設けたものである。コア105は、主軸103の周方向複数個所に設け、コイル108は、その中心軸が主軸103の軸方向と垂直な方向となるように設ける。
これによれば、静圧軸受の優れた動剛性および回転精度と磁気軸受の優れた静剛性とを併せ持つ軸受とでき、主軸長も短縮できる。
しかし、コア105、および主軸103で構成される磁気回路では、高速回転時に発生する電流を小さくすることができないため、磁気回路形成、コンパクト化等の面で一層の改良が求められる。
また、本発明者は、ラジアル形式の静圧磁気複合軸受の具体的構成として、この明細書に実施形態の一つとして図9に示すように、円周方向に四分割したヨーク49を設けたものを提案した。静圧軸受が作用する面は、空気の漏れる隙間を無くす必要があるため、各ヨーク49の間に樹脂(非磁性体)51を充填した後、内径面研削仕上げを行う。
しかし、同図の軸受において、スピンドル回転によるモータの発熱や、磁気浮上による磁気軸受からの発熱によって、ヨーク49や樹脂51が温度上昇する。この温度上昇に対して、樹脂51はヨーク49に比較して熱膨張係数が1桁程度大きいため、樹脂51が、図11に示すようにヨーク49に対して表面の盛り上がり部51aを生じ、静圧軸受性能に大きな影響を与える。
前記樹脂51に代えて、ヨーク51,51間の隙間に合わせた非磁性体の金属部材51(図12)を機械加工にて製作し、挿入する方法も考えられるが、静圧軸受性能に影響を与えない程度に隙間を無くすことは非常に困難である。
【0005】
図16は、アキシャル軸受に応用した静圧磁気複合軸受の提案例である。この例では、主軸110に設けた鍔状の軸受ロータ部110aと対面して静圧磁気複合軸受111を設けている。静圧磁気複合軸受111は、その幅面が静圧軸受の軸受隙間形成面114となる断面コ字状の環状のコア112を設け、このコア112内にコイル113を設けると共に、コア112の内径部にノズル115を設けている。
アキシャル形式の具体的構成としては、この明細書に実施形態の一つとして図10に示すように、コア25を内径側コア部品26と外径側コア部品27とに2分割し、静圧軸受面の隙間を無くすために、両コア部品26,27の間に樹脂(非磁性体)65を充填したものを提案した。
しかし、アキシャル軸受においても、ラジアル軸受と同様に、樹脂の熱膨張や隙間の発生による静圧軸受性能の低下の問題がある。すなわち、図10の軸受において、スピンドル回転によるモータの発熱や、磁気浮上による磁気軸受からの発熱によって、コア25や樹脂65が温度上昇する。この温度上昇に対して、樹脂65はコア25に比較して熱膨張係数が1桁程度大きいため、樹脂65が、図図13に示すようにコア25に対して表面の盛り上がり部65aを生じ、静圧軸受性能に大きな影響を与える。
前記樹脂65に代えて、コア部品26,27間の隙間に合わせた非磁性体の金属部材28A(図14)を機械加工にて製作し、挿入する方法も考えられるが、静圧軸受性能に影響を与えない程度に隙間を無くすことは非常に困難である。
【0006】
この発明の目的は、このような課題を解消し、静圧軸受の優れた動剛性および回転精度と磁気軸受の優れた静剛性とを併せ持ち、一層のコンパクトが図れる静圧磁気複合軸受およびその軸受を備えたスピンドル装置を提供することを目的とする。
この発明の他の目的は、軸受部の温度上昇による静圧軸受の軸受隙間が変動することを防止でき、また組立誤差等で軸受隙間からの無用な流体漏れが生じることをなくせる性能の安定した静圧磁気複合軸受およびその簡単な製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明の静圧磁気複合軸受は、いずれも静圧軸受と磁気軸受とを所定の関係で組み合わせて構成される。このため、静圧軸受の優れた動剛性および回転精度と磁気軸受の優れた静剛性という両者の特徴を生かした軸受とできる。
このうち、請求項1記載の静圧磁気複合軸受は、静圧軸受と磁気軸受とを、互いに兼用部分が生じるように一体化したラジアル形式の軸受とし、前記磁気軸受のコイルの中心線をロータの軸方向と略平行とし、かつ前記静圧軸受の圧力流体のノズルを前記コイルに対して軸方向に並べて設けたものである。具体的には、前記ノズルは前記コイルに対してコイルの両側に設ける。
このように、静圧軸受と磁気軸受とに兼用部分を設けると、単に静圧軸受と磁気軸受とを軸方向に並べて配置する場合に比べて、構成がコンパクトになり、ロータ長さも短縮できる。これにより、ロータとなり、あるいはロータが設けられる主軸の曲げ固有振動数が高められ、より高速回転が可能となる。また、コイルの中心線をロータの軸方向と略平行としたため、コイルを小型化しても必要な磁力が確保でき、より一層のコンパクト化が図れる。
【0008】
この発明におけるラジアル形式とした軸受において、前記磁気軸受は、ロータの外周に円周方向へ並べて配置された複数個の電磁石を有し、これら各電磁石のコアは、ロータの軸方向に沿う断面形状がC字形状であってその開口部がロータ側に向き、前記開口部が非磁性体で埋められたものとし、円周方向に隣合う各コアの間を非磁性体で埋め、前記各コアに前記ノズルを設けたものとしても良い。
この構成の場合、コアの開口部が非磁性体で埋められるため、この開口部も静圧軸受の軸受隙間形成面に利用できる。
【0009】
この発明におけるラジアル形式とした軸受において、リング状の非磁性体に形成された円周方向複数個所の孔に電磁石コアの一部となるヨークを締り嵌め状態に嵌合させた一対のヨーク結合体を設け、これらヨーク結合体は互いに軸方向に並べ、コイルが外周に巻かれたコア部品を両ヨーク結合体の対向するヨーク間に介在させ、両ヨーク結合体の対向面の内周縁間を非磁性材体で埋め、この磁性体の内径面および前記ヨーク結合体の内径面を静圧軸受の軸受隙間形成面とし、前記ヨークに前記軸受隙間形成面に開口するノズルを設けたものとしても良い。
この構成の場合、ヨークが非磁性体に形成された孔に締り嵌め状態に取付けられるため、円周方向に隣合うヨークの間を完全に隙間なく非磁性体が埋めることが容易である。また、そのため非磁性体に金属材料等の線膨張係数の小さい材質を選定でき、これにより、軸受部の温度上昇に対して軸受隙間の変動を小さくでき、静圧軸受の性能維持が得られる。また、このようにヨーク間の隙間を完全に無くす構成としながら、組立が簡単に行える。
【0010】
この発明のラジアル形式の静圧磁気複合軸受の製造方法は、円周方向に並ぶ複数のヨーク嵌合孔を有する非磁性体を準備し、この非磁性体の前記各ヨーク嵌合孔にヨークを締り嵌め状態に嵌め込む過程と、この非磁性体の中心部に前記ヨークが露出した状態に円筒孔を形成して前記非磁性体と複数のヨークとでなるリング状のヨーク結合体とする過程と、このように各々加工された一対のヨーク結合体を軸方向に並べ、コイルが外周に巻かれたコア部品を両ヨーク結合体の対向するヨーク間に介在させると共に、両ヨーク結合体の対向面の内周縁間を別の非磁性材体で埋める過程とを含み、前記ヨーク結合体の円筒孔の内径面および前記別の非磁性体の内径面が静圧軸受の軸受隙間形成面となり、この軸受隙間形成面に開口するノズルが前記ヨークに形成された静圧磁気複合軸受を製造する方法である。
このように、非磁性体に設けた孔にヨークを締り嵌め状態に嵌合させた一対のヨーク結合体を製作し、このヨーク結合体を用いて組み立てることにより、簡単な組立方法で、円周方向に隣合うヨーク間の隙間を完全に無くすことができ、上記のような各種の優れた軸受性能を持つ静圧磁気複合軸受を簡単に製作することができる。
【0011】
この軸受製造方法において、非磁性体の前記各ヨーク嵌合孔にヨークを締り嵌め状態に嵌め込む過程の後、またはこの非磁性体の中心部に前記ヨークが露出した状態に円筒孔を形成して前記非磁性体と複数のヨークとでなるリング状のヨーク結合体とする過程の後、非磁性体とヨークとを溶接で接合しても良い。
【0012】
この発明の請求項6記載の静圧磁気複合軸受は、静圧軸受と磁気軸受とを、互いに兼用部分が生じるように一体化したアキシャル形式の軸受とし、前記磁気軸受は、ロータの幅面に対面するリング状の電磁石コアを有し、このコアは開口部がロータの幅面側に向くC字状の断面形状とされて、その開口部が非磁性体で埋められ、前記コア内にコイルを有し、前記コアに静圧軸受の圧力流体のノズルを有するものである。
この構成の場合も、単に静圧軸受と磁気軸受とを径方向に並べて配置する場合に比べて、構成がコンパクトになる。
【0013】
この発明におけるアキシャル形式としたものにおいて、前記コアが、前記開口部から内径側へ延びる内径側コア部品と、前記開口部から外径側へ延びる外径側コア部品とに2分割されて、これら内径側コア部品の前記開口部の形成面、および外径側コア部品の前記開口部の形成面の両方に対して、この開口部に設けられるリング状の非磁性体が締り嵌め状態に嵌り合い、前記内径側部品に前記ノズルが設けられたものとする。
このように、コアを2分割し、コアの開口部にリング状の非磁性体を締り嵌め状態に取付けるようにしたため、コアの開口部を容易にかつ完全に隙間なく非磁性体で埋めることができる。また、開口部を埋める非磁性体に金属材料等の線膨張係数の小さな材質を選定でき、これにより、温度上昇に対しても軸受隙間の変動が防止でき、静圧軸受の性能維持が得られる。
【0014】
この発明のアキシャル式の静圧磁気複合軸受の製造方法は、互いに組み合わさって磁気軸受におけるC字状断面形状のリング状の電磁石コアを構成するコア部品であって、前記開口部から内径側へ延びる内径側コア部品、および前記開口部から外径側へ延びる外径側コア部品を準備する過程と、これら内径側コア部品の前記開口部の形成面、および外径側コア部品の前記開口部の形成面の両方に対して、リング状の非磁性体が順次締り嵌め状態に嵌り合うように、これら内径側コア部品、外径側コア部品、および非磁性体を組み立てる過程とを含み、前記コアが前記開口部側の幅面でロータの幅面に対面してその対向面および前記非磁性体の表面が静圧軸受の軸受隙間形成面となり、かつ前記内径側コア部品に前記軸受隙間形成面に開口する圧力流体のノズルを有する静圧磁気複合軸受を製造する方法である。リング状の非磁性体は、内径側コア部品および外径側コア部品のいずれに先に嵌合させても良い。
この方法によると、コアを2分割し、コアの開口にリング状の非磁性体を締り嵌め状態に取付けるようにしたため、コアの開口を容易にかつ完全に隙間なく非磁性体で埋めることができる。また、リング状の非磁性体は、内径側コア部品および外径側コア部品の一方に嵌合させた後、他方に嵌合させるようにこれら内径側コア部品および外径側コア部品とリング状の非磁性体とを組み立てるため、簡単に内外の両コア部品に対して簡単な作業でリング状の非磁性体を締まり嵌め状態とすることができる。そのため、上記のような各種の優れた軸受性能を持つアキシャル式の静圧磁気複合軸受を簡単に製作することができる。
この軸受製造方法において、外径側コア部品の開口部の形成面にリング状の非磁性体を締り嵌め状態に嵌め込んだ後、これら外径側コア部品と非磁性体とを溶接で接合し、この非磁性体の接合された外径側コア部品と内径側コア部品とを嵌り合い状態に組み立てるようにしても良い。
【0015】
この発明の静圧磁気複合軸受スピンドル装置は、この発明における前記のいずれかの静圧磁気複合軸受を介して前記ロータを含む主軸をハウジングに回転自在に支持したものである。
この構成によると、大きな静剛性と優れた動的安定性および回転精度が得られ、かつ主軸を短くできて、主軸の曲げ固有振動数が高められるため、汎用の高速加工機用スピンドル装置として実用化が可能となる。また、全体のコンパクト化が図れる。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1ないし図3と共に説明する。この実施形態にかかる静圧磁気複合軸受1は、ラジアル軸受において、静圧軸受2と磁気軸受3とを、互いに兼用部分が生じるように一体化したものである。軸受ロータ4aは、主軸4の一部の長さ部分からなる。軸受ロータ4aは、主軸4と別体に形成されて主軸4に取付けられたものであっても良い。
磁気軸受3の電磁石5は、円周方向に複数個(図示の例では4個)設けられる。各電磁石5はコア6とコイル7とからなり、各コイル7は各々が電源10に接続される。コア6は、コイル7が巻かれた直線状のコア部品8と、このコア部品8の両端から挟む一対のヨーク9,9とからなり、主軸4の軸方向に沿う断面形状が、主軸4側に開口したC字状となっている。コア部品8およびヨーク9は、いずれも強磁性体からなる。コア部品8は、丸棒状のものとしてあるが、角棒状のものであってもよい。
【0017】
円周方向に並ぶ複数のヨーク9は、非磁性体11(図1(B))と共にリング状のヨーク結合体12を構成する。すなわち、リング状の非磁性体11に形成された円周方向複数個所のヨーク嵌合孔13にヨーク9を締り嵌め状態に嵌合させてヨーク結合体12としてある。ヨーク結合体12は、中心部に円筒孔12bが貫通して形成され、この円筒孔12aはヨーク9の一部を切欠く内径に形成されている。各ヨーク9は、円板状体または円柱状体から、前記円筒孔12aとなる部分が切り欠かれた形状とされ、また円周方向に隣合うヨーク9の間には、非磁性体11のヨーク嵌合孔13,13間の部分が介在する。ヨーク結合体12は、片面の内周縁に、ヨーク9および非磁性体11の一部で形成された鍔部12aを有している。ヨーク結合体12は、鍔部12a,12aが互いに対向するように、一対のものが軸方向に並べて設けられる。両ヨーク結合体12の鍔部12a,12a間は、別の非磁性体14で埋められる。この非磁性体14は、円筒状のものとされ、鍔部12aと内外径が同一とされている。各非磁性体11,14には、金属材料のものが使用されている。
【0018】
両ヨーク結合体12,12およびその間の非磁性体14の内径面は、静圧軸受2の軸受隙間形成面2aとなる。両ヨーク結合体12,12の各ヨーク9には、軸受隙間形成面2aに開口するノズル15が設けられる。このノズル15は、ヨーク9を主軸4の半径方向に貫通した孔で形成してある。ノズル15は、例えば、コイル7の両側に対称に位置するように、各ヨーク9に2本ずつ設けてある。なお、ノズル15の個数はいくつであっても良く、またノズル15の位置はコイル7とは関係なく設けることができる。ノズル15は、絞り(図示せず)を有するものであっても良い。
【0019】
図2は、ヨーク結合体12の製造過程を示す。丸孔からなる複数のヨーク嵌合孔13が円周方向に等配された厚肉円板状の非磁性体11Aが準備される(同図(A))。この非磁性体11Aの各ヨーク嵌合孔13に円柱状の磁性体からなるヨーク素材9Aを圧入または焼き嵌めにより、締り嵌め状態に嵌め込む(同図(B))。このヨーク素材9Aが嵌合した非磁性体11Aを、旋削等の機械加工を施して、中央部にボス部12cが突出したボス付き円板状とする(同図(C))。ボス部12cの外径は、後に鍔部12aとなる外径とする。このボス付き円板状の工作物の中心に円筒孔12bを形成し、ヨーク結合体12とされる(同図(D))。円筒孔12bの内径面は研削加工等で仕上げられる。同図(E)は、完成したヨーク結合体12の平面図である。このヨーク結合体12は、ノズル15(図1)を加工した後、他の部品と共に組立てられる。
この組立は、図3に示すように、前記のように製作した一対のヨーク結合体12,12の各ヨーク9,9間に、コイル7の巻かれたコア部品8を挟み込み、ヨーク結合体12,12の対向する鍔部12a,12a間に円筒状の非磁性体14を挟むことにより行う。非磁性体14は、一方のヨーク結合体12の鍔部12aに接合しておき、その状態で各コア部品8をヨーク結合体12,12で挟み込む。
なお、ヨーク結合体12は、図7に示すように、非磁性体11とヨーク9とを溶接19で結合しても良い。
【0020】
この静圧磁気複合軸受1は、このように静圧軸受2と磁気軸受3とを組み合わせたものであるため、静圧軸受2の優れた動剛性と磁気軸受3の優れた静剛性という両者の特長を生かした軸受とできる。静圧軸受2と磁気軸受3とは、構成部品が兼用されているため、単に静圧軸受と磁気軸受とを軸方向に並べて配置する場合に比べて、構成がコンパクトになり、主軸4の長さも短縮できる。これにより、曲げ固有振動数が高められ、より高速回転が可能となる。また、磁気軸受3のヨーク9が静圧軸受2の軸受隙間dの形成部材を兼用し、かつヨーク9がノズル15の形成部材を兼用するため、構成部品が高度に兼用化され、構成のコンパクト化の効果が高い。
また、ヨーク9が非磁性体11に形成された孔13に締り嵌め状態に取付けられるため、後に示す各実施形態に比べて円周方向に隣合うヨーク9,9間の隙間を完全に非磁性体11が埋めることが容易であり、軸受性能に対する軸受部の温度上昇の影響が少ない。また、このようにヨーク9,9間の隙間を完全に無くす構成としながら、組立が簡単に行える。
【0021】
図4および図5は、この発明をアキシャル軸受に適用した実施形態を示す。この静圧磁気複合軸受21は、静圧軸受22と磁気軸受23とを、互いに兼用部分が生じるように一体化したものである。軸受ロータ4bは、主軸4に設けられた鍔状部分からなる。
磁気軸受23は、ロータ4bの幅面に対面するリング状の電磁石コア25を有し、このコア25はC字状の断面形状とされてそのC字形状の開口部25aがロータ4bの幅面側に向き、非磁性体28で埋められている。コア25内にコイル29が設けられている。コイル29は、その中心線がロータ4bの軸心方向と平行となるように設けられ、電源30に接続されている。なお、コア25は強磁性体からなり、非磁性体28には金属材料のものが用いられている。
静圧軸受22は、コア25および非磁性体28によりロータ4bの幅面に対面する軸受隙間形成面31を設け、この軸受隙間形成面31に開口する圧力流体のノズル32を設けたものである。ノズル32は、エア供給源(図示せず)に接続される。軸受隙間形成面31は研削仕上げする。
【0022】
コア25は、そのC字形状の開口部25aから内径側へ延びる内径側コア部品26と、開口部25aから外径側へ延びる外径側コア部品27とに2分割されている。非磁性体28はリング状に形成されたものであり、内径側コア部品26の前記開口部25aの形成面、および外径側コア部品27の前記開口部25aの形成面の両方に対して、圧入または焼き嵌めにより、締り嵌め状態に嵌り合っている。
内径側コア部品26は、リング状板部26a(図5(D))と、このリング状板部26aの内径縁から突出した内側筒部26bと、この内側筒部26bの先端から外径側に延びる鍔部26cとでなり、鍔部26cの先端が前記開口部25aの形成面となる。コイイル29は、この内径側コア部品26のリング状板部26aの内面に設置されている。また、ノズル32は内径側コア部品26の内側筒部26bを軸方向に貫通した孔で形成され、円周方向の複数個所に等配されている。
外径側コア部品27は、外側筒部27b(図5(A)と、この外側筒部27bの先端から内径側に延びる鍔部27cとでなり、鍔部27cの先端が前記開口部25aの形成面となる。外側筒部27bは、外径が内径側コア部品26のリング状板部26aの外径と同径とされ、リング状板部26aの内面外周部に突き合わせられる。
【0023】
図5は、このアキシャル式の静圧磁気複合軸受21の組立工程を示す。外径側コア部品27の鍔部27cの内径面に非磁性体28が圧入または焼き嵌めで取付けられる。この外径側コア部品27と非磁性体28との組立体を、コイル29の設置された内径側コア部品26と組み合わせる。この場合に、非磁性体28に対して、内径側コア部品26の鍔部26cを圧入または焼き嵌めすることで組み立てる。これにより、同図(E)のように静圧磁気複合軸受21が組み立てられる。なお、内径側コア部品26には、組立前にノズル32を加工しておく。また、図8に示すように、外径側コア部品27の鍔部27cの内径面に非磁性体28が圧入または焼き嵌めで取付けた後、両部品27,28を溶接33で結合しても良い。
【0024】
このように、アキシャル軸受とした場合も、磁気軸受23のコア25および非磁性体28を静圧軸受22の軸受隙間形成面31の構成部品として兼用し、またコア25をノズル32の構成部品に兼用したため、構成がコンパクトになる。
さらに、コア25を2分割し、コア25の開口部25aにリング状の非磁性体28を順次締り嵌め状態に取付けるようにしたため、コア25の開口部を容易にかつ完全に隙間なく非磁性体28で埋めることができる。
【0025】
図6は、この発明の実施形態にかかる静圧磁気複合軸受スピンドル装置を示す。このスピンドル装置は、2組のラジアル形式の静圧磁気複合軸受81,81と、両軸受81,81の間に配置された2組のアキシャル形式の静圧磁気複合軸受82,82と、主軸4を回転させるモータ83とをハウジング84内に設置したものである。モータ83は、これら軸受81,82による支持部分よりも後方に設置してある。アキシャル形式の2組の静圧磁気複合軸受82,82は、主軸4に形成された同じロータ4bの両面に対面して配置してあるが、1組の静圧磁気複合軸受82をロータ4bの片面のみに配置するようにしても良い。各軸受81,82には、ハウジング84内に設けられた共通の給気経路85を介して空気圧源(図示せず)に接続される。
前記各静圧磁気複合軸受81,82は、この発明にかかる静圧磁気複合軸受であれば良く、前記各実施形態の軸受1,21であっても、また後述の各実施形態の軸受を用いても良い。また、このスピンドル装置を構成する軸受81,82は、必ずしも全てを静圧磁気複合軸受とする必要はなく、いずれか一つにこの発明にかかる静圧磁気複合軸受を用いれば良い。
【0026】
このように、この発明の静圧磁気複合軸受を用いたスピンドル装置とすることにより、大きな静剛性と優れた動的安定性および回転精度が得られ、かつ主軸4を短くできて、主軸4の曲げ固有振動数が高められるため、汎用の高速加工機用スピンドル装置として実用化が可能となる。また、装置全体のコンパクト化が図れる。
【0027】
図9は、この発明の他の実施形態にかかるラジアル形式の静圧磁気複合軸受を示す。この静圧磁気複合軸受41は、図1の実施形態にかる静圧磁気複合軸受1において、コア部品8の両側に設けられるヨーク49を、図9(B)のように扇形のヨーク49とし、円周方向に隣合うヨーク49,49間に非磁性体51を介在させたものである。非磁性体51は樹脂性のものであり、所定間隔で配置したヨーク49,49間に溶融樹脂を充填して形成される。これにより、ヨーク49と非磁性体51とが一体化したヨーク結合体52が構成される。ヨーク結合体52の軸受隙間形成面22となる内径面52bは、樹脂製の非磁性体51の硬化後に研削仕上げされる。その他の構成は図1の例と同じであり、対応部分に同一符号を付してその説明を省略する。
このように構成した場合も、磁気回路が綺麗に形成されるなど、図1の実施形態で説明した各効果が得られる。ただし、この実施形態の場合、温度上昇時に、ヨーク49と樹脂製の非磁性体51との熱膨張差から、図11に誇張して示すように、樹脂製の非磁性体51に軸受隙間形成面に突出する盛り上がり部51aが生じることがある。この盛り上がり部51aは、軸受隙間に影響するため、静圧軸受の制御を工夫する必要がある。
【0028】
図9の例において、非磁性体51を樹脂製のものに代えて、非磁性の金属製とし、ヨーク49,49間の隙間形状に合わせて機械加工により製作し、ヨーク49,49間に挿入しても良い。これによれば、温度上昇時の盛り上がりの問題が解消される。しかし、非磁性体51を金属部材とした場合、精度良く加工することが難しいことから、図12に誇張して示すように、非磁性体51とヨーク49との間に余分な隙間eが生じることがある。この隙間eは、軸受隙間dに影響しない程度であれば良いが、そのようにするには、非磁性体51やヨーク49を高精度に加工する必要がある。
図1の実施形態はこれらの盛り上がり部51aや余分な隙間eの発生の課題を解消し、軸受の組み立て性の向上と共に、静圧軸受の軸受性能の安定を図ったものである。
【0029】
図10は、この発明のさらに他の実施形態にかかるアキシャル形式の静圧磁気複合軸受を示す。この静圧磁気複合軸受61は、図4の実施形態にかかる静圧磁気複合軸受21において、非磁性体28を締り嵌めさせる代わりに、コア25内に樹脂製の非磁性体65を充填したものである。非磁性体65は、コア25の表面と同一平面となるまで充填し、これらコア25および非磁性体65の軸受隙間形成面31となる面は研削仕上げする。その他の構成は図4の実施形態と同じである。
このように構成した場合も、磁気回路bが綺麗に形成されるなど、図4の実施形態で説明した各効果が得られる。ただし、この実施形態においても、図13に示すように、温度上昇時の非磁性体65の盛り上がり部65aによる軸受隙間dへの影響があり、その対策が必要である。
【0030】
また、図4の実施形態において、非磁性体65を外径側コア部品27に圧入または焼き嵌めした後に内径側コア部品26と外径側コア部品27とを組み立てる代わりに、内径側コア部品26と外径側コア部品27とが組み合わせられた状態のコア25の開口部25aにリング状の非磁性体28Aを挿入する組み立て方法を採っても良い。
ただし、その場合、非磁性体65を隙間なく挿入することが難しく、図14に誇張して示すように、余分な隙間fが軸受隙間dと連通して生じることがあり、静圧軸受の性能に影響する。このため、図5と共に説明したように、非磁性体65を外径側コア部品27に圧入または焼き嵌めした後に内径側コア部品26と外径側コア部品27とを組み立てることが好ましい。
【0031】
【発明の効果】
この発明の静圧磁気複合軸受およびスピンドル装置は、いずれも静圧軸受と磁気軸受とを所定の関係で組み合わせたものであるため、静圧軸受の優れた動剛性および回転精度と磁気軸受の優れた静剛性とを併せ持ちながら、構成がコンパクトになる。ラジアル軸受としたものでは、主軸長も短縮するできる。
また、この発明の静圧磁気複合軸受の製造方法によると、簡単な組立過程で、ヨーク間の隙間を容易に無くすことができ、軸受性能の安定が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態にかかるラジアル形式の静圧磁気複合軸受の断面図、(B)は同破断平面図である。
【図2】同静圧磁気複合軸受におけるヨーク結合体の製造過程の説明図である。
【図3】同静圧磁気複合軸受の組み立て方法を示す斜視図である。
【図4】(A)はこの発明の他の実施形態にかかるアキシャル形式の静圧磁気複合軸受の破断側面図、(B)は同破断平面図である。
【図5】同軸受の組み立て工程の説明図である。
【図6】この発明の一実施形態にかかる静圧磁気複合軸受スピンドル装置の断面図である。
【図7】図1の実施形態におけるヨーク結合体の変形例を示す斜視図である。
【図8】図4の実施形態における外径側コア部品および非磁性体の変形例を示す断面図である。
【図9】(A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかるラジアル形式の静圧磁気複合軸受の断面図、(B)はその破断平面図である。
【図10】(A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかるアキシャル形式の静圧磁気複合軸受の断面図、(B)はその破断平面図である。
【図11】図9の実施形態の問題点を示す破断平面図である。
【図12】さらに他の実施形態の問題点を示す破断平面図である。
【図13】図10の実施形態の問題点を示す破断側面図である。
【図14】さらに他の実施形態の問題点を示す破断側面図である。
【図15】(A)は従来のスピンドル装置の断面図、(B)は比較提案例にかかるスピンドル装置の断面図である。
【図16】比較提案例にかかるアキシャル形式の静圧磁気複合軸受の破断側面図である。
【符号の説明】
2…静圧軸受 12…ヨーク結合体
2a…軸受隙間形成面 14…非磁性体
3…磁気軸受 15…ノズル
4…主軸 22…静圧軸受
4a…ロータ 23…磁気軸受
4b…ロータ 25…コア
5…電磁石 26…内径側コア部品
6…コア 27…外径側コア部品
7…コイル 28…非磁性体
8…コア部品 29…コイル
9…ヨーク 31…軸受隙間形成面
11…非磁性体 32…ノズル

Claims (9)

  1. 静圧軸受と磁気軸受とを、互いに兼用部分が生じるように一体化したラジアル形式の軸受とし、前記磁気軸受のコイルの中心線をロータの軸方向と略平行とし、かつ前記静圧軸受の圧力流体のノズルを前記コイルに対してコイルの両側に設けた静圧磁気複合軸受。
  2. 静圧軸受と磁気軸受とを、互いに兼用部分が生じるように一体化したラジアル形式の軸受とし、前記磁気軸受のコイルの中心線をロータの軸方向と略平行とし、かつ前記静圧軸受の圧力流体のノズルを前記コイルに対して軸方向に並べて設け、前記磁気軸受は、ロータの外周に円周方向へ並べて配置された複数個の電磁石を有し、これら各電磁石のコアは、ロータの軸方向に沿う断面形状がC字形状であってその開口部がロータ側に向き、前記開口部が非磁性体で埋められたものとし、円周方向に隣合う各コアの間を非磁性体で埋め、前記各コアに前記ノズルを設けた静圧磁気複合軸受。
  3. 静圧軸受と磁気軸受とを、互いに兼用部分が生じるように一体化したラジアル形式の軸受とし、前記磁気軸受のコイルの中心線をロータの軸方向と略平行とし、かつ前記静圧軸受の圧力流体のノズルを前記コイルに対して軸方向に並べて設け、リング状の非磁性体に形成された円周方向複数個所の孔に電磁石コアの一部となるヨークを締り嵌め状態に嵌合させた一対のヨーク結合体を設け、これらヨーク結合体は互いに軸方向に並べ、コイルが外周に巻かれたコア部品を両ヨーク結合体の対向するヨーク間に介在させ、両ヨーク結合体の対向面の内周縁間を別の非磁性材体で埋め、この別の非磁性体の内径面および前記ヨーク結合体の内径面を静圧軸受の軸受隙間形成面とし、前記ヨークに前記軸受隙間形成面に開口するノズルを設けた静圧磁気複合軸受。
  4. 円周方向に並ぶ複数のヨーク嵌合孔を有する非磁性体を準備し、この非磁性体の前記各ヨーク嵌合孔にヨークを締り嵌め状態に嵌め込む過程と、この非磁性体の中心部に前記ヨークが露出した状態に円筒孔を形成して前記非磁性体と複数のヨークとでなるリング状のヨーク結合体とする過程と、このように各々加工された一対のヨーク結合体を軸方向に並べ、コイルが外周に巻かれたコア部品を両ヨーク結合体の対向するヨーク間に介在させると共に、両ヨーク結合体の対向面の内周縁間を別の非磁性材体で埋める過程とを含み、前記ヨーク結合体の円筒孔の内径面および前記別の非磁性体の内径面が静圧軸受の軸受隙間形成面となり、この軸受隙間形成面に開口するノズルが前記ヨークに形成されたラジアル形式の静圧磁気複合軸受を製造する軸受製造方法。
  5. 請求項4記載の軸受製造方法において、非磁性体の前記各ヨーク嵌合孔にヨークを締り嵌め状態に嵌め込む過程の後、またはこの非磁性体の中心部に前記ヨークが露出した状態に円筒孔を形成して前記非磁性体と複数のヨークとでなるリング状のヨーク結合体とする過程の後、非磁性体とヨークとを溶接で接合する軸受製造方法。
  6. 静圧軸受と磁気軸受とを、互いに兼用部分が生じるように一体化したアキシャル形式の軸受とし、前記磁気軸受は、ロータの幅面に対面するリング状の電磁石コアを有し、このコアは開口部がロータの幅面側に向くC字状の断面形状とされて、その開口部が非磁性体で埋められ、前記コア内にコイルを有し、前記コアに静圧軸受の圧力流体のノズルを有し、前記コアが、前記開口部から内径側へ延びる内径側コア部品と、前記開口部から外径側へ延びる外径側コア部品とに2分割されて、これら内径側コア部品の前記開口部の形成面、および外径側コア部品の前記開口部の形成面の両方に対して、この開口部に設けられるリング状の非磁性体が締り嵌め状態に嵌り合い、前記内径側部品に前記ノズルが設けられた静圧磁気複合軸受。
  7. 互いに組み合わさって磁気軸受におけるC字状断面形状のリング状の電磁石コアを構成するコア部品であって、前記C字状断面形状における開口部から内径側へ延びる内径側コア部品、および前記開口部から外径側へ延びる外径側コア部品を準備する過程と、これら内径側コア部品の前記開口部の形成面、および外径側コア部品の前記開口部の形成面の両方に対して、リング状の非磁性体が順次締り嵌め状態に嵌り合うように、これら内径側コア部品、外径側コア部品、および非磁性体を組み立てる過程とを含み、前記コアが前記開口部側の幅面でロータの幅面に対面してその対向面および前記非磁性体の表面が静圧軸受の軸受隙間形成面となり、かつ前記内径側コア部品に前記軸受隙間形成面に開口する圧力流体のノズルを有するアキシャル形式の静圧磁気複合軸受を製造する軸受製造方法。
  8. 請求項7記載の軸受製造方法において、外径側コア部品の開口部の形成面にリング状の非磁性体を締り嵌め状態に嵌め込んだ後、これら外径側コア部品と非磁性体とを溶接で接合し、この非磁性体の接合された外径側コア部品と内径側コア部品とを嵌り合い状態に組み立てる軸受製造方法。
  9. 請求項1または請求項2または請求項3または請求項6記載の静圧磁気複合軸受を介して前記ロータを含む主軸をハウジングに回転自在に支持した静圧磁気複合軸受スピンドル装置。
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