JP3604265B2 - X線回折要素及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小領域X線分析、X線透過検査、X線顕微鏡、X線露光装置に用いられるX線集光装置、特にX線源から発散されるX線を実質的に点状に集めてX線の強度を増やすX線集光装置に用いるX線回折要素に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、X線源から発散されるX線を集光するために、X線集光装置において湾曲結晶を用いたX線回折要素が用いられている。そのような湾曲結晶としては、一次元的に湾曲させたsingly−bent型結晶および二次元的に湾曲させたdoubly−bent型結晶がある。
【0003】
singly−bent型結晶を用いてX線を集光する場合、点状光源から出たX線は、線状に集められるため、別のsingly−bent型結晶を用いて線状に集められたX線を点状に集める必要がある。これに対して、doubly−bent型結晶を用いてX線を集光する場合、一つの結晶で点状に集光させることができる。
【0004】
singly−bent型結晶を2つ組み合わせた光学系では、singly−bent型系に入射するX線の立体角が小さく、X線源から出たX線の大部分を集光できない。また、2つの結晶を用いて2回ブラッグ反射させるため、集められたX線の強度低下が大きい。更に、この光学系は、X線源から集光点までの距離が長くなり、そのため間に存在する空気によって吸収されるX線の量が増えるので、集められたX線の強度は一層弱くなる。このように、singly−bent型結晶を組み合わせた光学系では、X線の集光は可能であるが、集められたX線の強度はそれほど強くない。
【0005】
結晶を二次元的に湾曲させたdoubly−bent型結晶を用いる場合、singly−bent型結晶と比べると、結晶に入射するX線の立体角が大きくとれ、また、1回のブラッグ反射で集光できるため、singly−bent型結晶を用いる場合より強いX線強度を達成できる。このようなdoubly−bent型結晶を複数組み合わせてトロイダル形状にすることにより、X線源から出たX線の相当部分を集光できるため、集光したX線の強度を更に強くすることができる。尚、「トロイダル形状」とは、有限長さを有する曲線をそれを含まない軸の回りで360°回転させることにより得られる形状を意味するものとして使用している。
【0006】
湾曲結晶の具体的な態様として、図3(a)に示すようなヨハン型形状1、あるいは図3(b)に示すようなヨハンソン型形状2がsingly−bent型結晶用として提案されている。また、ヨハン型またはヨハンソン型形状をX線源(S)と集光点(F)を結ぶ直線を回転軸として部分的に回転させることによりdoubly−bent型形状が得られ、360゜回転することによりトロイダル形状を有するdoubly−bent型のX線回折要素が得られる。
【0007】
このような湾曲結晶を得るには結晶を曲げる必要があり、そのために、結晶の弾性変形、あるいは塑性変形が利用されている。例えば水晶またはシリコン結晶の場合は、薄い結晶を2枚の金属板の間に挟み、これらを長手方向に徐々に圧力を加えながら横断方向に曲げて弾性変形させることにより結晶を湾曲させることができる。また、フッ化リチウム結晶の場合は、加熱した油の中で結晶を曲げて均一に塑性変形させることができる。
別法として、特開平4−120500号公報ではトロイダル形状の内側面を粉末結晶により形成したX線集光装置用回折要素が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3(a)に示すように、湾曲結晶形状(1)としてヨハン型を用いる場合には点状光源(S)から出たX線は実質的に1点(F)に収束せず、非点収差が生じる。そのため、反射点または回折点が湾曲結晶の中心部(3)からずれるにつれて収差は大きくなると共に、結晶に入射するX線の入射角がブラッグ角(θ)からずれるため、ブラッグ反射が起こらなくなる。従って、湾曲結晶中心部近傍に入射したX線のみを集光できるだけであるので、集光点(F)におけるX線強度をある値以上に強くすることができない。
【0009】
一方、図3(b)に示すように、ヨハンソン型結晶では実質的に収差がなく、点状光源(S)から出たX線は実質的に1点(F)に集光できる。しかしながら、ヨハンソン型結晶を形成するには、結晶面が半径2Rの円周有する曲面に削った後、更に、結晶を半径Rの円周を有する曲面となるように曲げなければならない。そのため、ヨハンソン型結晶のX線回折要素の形成において、精度良く加工することが必要となるが、このような加工は非常に困難であり、曲率半径の小さいヨハンソン型結晶の高精度のX線回折要素は未だに形成することができていない。また、トロイダル形状など面積の大きい結晶を形成することは非常に困難である。更に、結晶によっては、精密に削ったり、曲げたりすることができないものもある。例えば通常のグラファイト結晶は、そのような加工を施すことができない。
【0010】
また、特願平4−120500号公報に開示されているトロイダル面の内面を粉末結晶で形成したX線集光装置では、粉末結晶では結晶方位がランダムなため、X線反射率が低く、X線を集光することはできるが、集光点におけるX線強度はそれほど強くならない。
所定の形状のX線回折面を有するX線回折要素、例えばトロイダル形状面をX線回折面として有するX線回折要素を複数パーツに分割した結晶片を組み合わせることによりX線回折面を形成する場合、所定のトロイダル形状面となるように各結晶面が整列するように各パーツを相互に精密に調節する必要があるが、この精密調整は非常に困難である。
【0011】
本発明は、上述のような問題点を解決するものであって、発散X線源から出たX線を効率よく集光することができる新たなX線回折要素を提供することにより、集光点におけるX線強度をより強くできるX線集光装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、所定の形状を有するX線回折要素を複数の結晶片を用いて簡単に形成できる方法およびその方法により形成されるX線回折要素を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を解決するために検討した結果、ヨハン型形状よりも楕円の式を補正した曲線を回転させて得られる曲面を有するX線回折面を用いてX線を集光することにより、より向上した集光効率が達成されること、また、そのようなX線回折面を有するX線回折要素は、楕円の式を補正した曲線を回転させて得られる曲面を有する中空部材を樹脂で形成し、その部材の外側面に結晶片を張り付けることにより容易に得ることができることを見いだして本発明を完成するに到った。
【0013】
即ち、1つの要旨において、本発明は、
発散X線源からのX線を集光するX線集光装置に使用する、X線をブラッグ反射する結晶面により構成されたX線回折面を有して成るX線回折要素であって、
X線回折面は、X線源およびX線を集めるべき点を両焦点とする楕円の式:
y=b(1−x/a1/2 式(1)
(式中、a=(b+L/4)1/2、b=L・tanθ/2であり、Lは両焦点間の距離、θはブラッグ角である。)
に補正項としてx/kを加えた曲線(以下、「補正楕円曲線」とも呼ぶ):
y=b(1−x/a1/2+x/k 式(2)
(式中、nは正の整数であり、kは0より大きい任意の数である。)
の少なくとも一部分を両焦点を通過する直線(即ち、x軸)を回転軸として回転させることにより得られる回転体(以下、「回転補正楕円体」とも呼ぶ)の表面の少なくとも一部分を実質的に構成すること
を特徴とするX線回折要素を提供する。
【0014】
本発明のX線回折要素のX線回折面は、補正楕円曲線の全体を回転させて得られる完全な回転補正楕円体であっても、そのような完全回転楕円体の両端部を切除したような立体の表面であっても、更にはそのような立体の一部分、例えば補正楕円曲線のx=0の近傍の部分のみをX軸の回りに回転させて得られる回転体の表面(従って、回転体の表面は帯状となる)であってもよい。また、回転角度も必ずしも360゜(即ち、いわゆるトロイダル形状)である必要はなく、それより小さい角度、例えば20゜であってもよい。
【0015】
このような本発明のX線回折要素を使用して、その一方の焦点にX線発散源を配置すると、他方の焦点にX線を効率良く集めることができるだけでなく、X線単色化も改善させることができる。
焦点間の距離を最初に決めて、種々のnおよびkの組の値を種々変えて、理論的計算を繰り返すことにより、適当なnおよびkの組を選択することができる。即ち、nおよびkを選択すると、補正楕円曲線が一義的に決まるので、焦点から回折点に向かうX線の入射角、およびその回折点においてブラッグ反射した場合に焦点からどれだけずれた箇所にX線が照射されるかを計算でき、これを種々のnおよびkの組み合わせついて計算すれば、適当なnおよびkの組を求めることができる。
【0016】
本発明のX線回折要素の好ましい態様では、上記補正項において、nが奇数であるのが好ましく、特に1以上の奇数である。例えば、nとしては1、3または5を用いることができる。例えば、kはn=1の時はk=1.8×10、n=3の時はk=5.0×10、また、n=5の時はk=10であるのが好ましい。 ブラッグ反射に使用する結晶は、X線の回折に使用できるいずれの適当な結晶であってもよく、例えばダイヤモンド、グラファイト、ペンタエリスリトール、フッ化リチウムなどを例示できるが、グラファイトを使用するのが回折効率の点で最も好ましい。本発明の要素において使用するグラファイトは、いずれの方法によって得られるものであってもよいが、特開平8−244119号公報に記載された方法により得られる、最初から曲面形状を有するグラファイトを使用するのが特に好ましい。即ち、予め回転補正楕円体の表面の少なく一部分に対応する成形型を用いてグラファイト面状体を形成するのが好ましい。
【0017】
本発明のX線回折要素の別の好ましい態様では、X線回折面は補正楕円曲線のx=0の両側でx=0を中心として延びる、より好ましくは−L/2<x<L/2の範囲、最も好ましくは−L/4<x<L/4の範囲、特に好ましくは−L/8<x<L/8の範囲で延びる部分曲線を回転軸の回りで360゜回転させて得られる帯状の回転補正楕円体表面を有する。
別の要旨では、本発明は、X線発散源および上記X線回折要素を有して成るX線集光装置であって、X線発散源は一方の焦点に配置され、X線回折要素は、そのX線回折面がそれを導出した回転補正楕円体の表面の少なくとも一部分と一致するように配置され、発散されたX線は他方の焦点またはその近傍に集められることを特徴とする装置を提供する。
【0018】
更に別の要旨では、本発明は、X線回折要素の形成方法であって、回転補正楕円体の表面の少なくとも一部分に対応する面を有する樹脂製の面状支持体を形成し、その支持体のいずれかの主表面にX線をブラッグ反射する少なくとも1つの結晶片を取り付けて、結晶片が支持体の回転補正楕円体の表面の少なくとも一部分に実質的に対応する回転補正楕円体の表面部分を形成するようにするX線回折要素の形成方法およびこの方法により形成されるX線回折要素を提供する。この方法において、「実質的に対応する」とは、支持体の面と結晶片が形成する表面とが実質的に同じであることを意味し、支持と結晶片により形成された回転補正楕円体の表面部分がヨハン型のdoubly−bent型結晶面を用いる場合より向上したX線集光を達成できれば、「実質的に対応する」と言える。 面状支持体は、上述の本発明のX線回折要素のX線回折面と同様に、回転補正楕円体の全表面であっても、トロイダル形状部分、例えば帯状形状をであってもよい。また、トロイダル形状の一部分(即ち、360゜より小さい回転によりできるもの)であってもよい。
【0019】
好ましい態様において、結晶片はモザイク結晶であり、そのモザイクスプレッドは好ましくは0.1゜〜8゜、より好ましくは0.3゜〜2゜である。結晶片は、支持体の内側または外側のいずれに取り付けてもよいが、支持体がトロイダル形状である場合は、結晶片を支持体の外側表面に貼り付けるのが好ましい。
【0020】
本明細書において、「モザイク結晶」なる用語は、粒界、転位などの格子欠陥を多く含み、3次元的な周期性が乱れている比較的容易に入手できる結晶であり、周期性の乱れのない微小領域(モザイク片)がわずかな結晶面(または格子面)の方位のずれの分布をもって多数集合して1つの結晶片を構成するものとして使用している。また、「モザイクスプレッド」とは、モザイク片どうしの格子面の傾き角の分布を表すものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のX線回折要素のX線回折面は、上述のように回転補正楕円体の表面の少なくとも一部分を構成する。図1に模式的に示すように、X線源Sと集光点Fの距離をLとし、結晶のブラッグ反射角をθとすると、補正楕円曲線10(その一部分のみを図示)が得られる。図1の曲線10をx軸の回りで回転させると、回転補正楕円体が得られ、本発明のX線回折要素12は、その回転補正楕円体の表面の少なくとも一部分をX線回折面14として有する。
【0022】
好ましい態様では、X線回折面14は、図示するように、回転補正楕円体の表面の少なくとも一部分であり、特にx=0を中心にしてy軸の両側で実質的に同じxの範囲(例えば図示するように−w<x<w)で延びる補正楕円曲線の一部分(即ち、補正楕円曲線(2)の−w<x<wの部分)をX軸の回りで回転させることにより得られる帯状の回転補正楕円体の表面の一部分、好ましくはトロイダル形状部分を構成する。通常、L>2wであるが、焦点に近い側は、いずれの側であっても、入射角がブラッグ角から大きく隔たるので、その部分のX線回折面はそれほど有効に採用しない。特にL/6<2w<L/3であるのが最も一般的である。
【0023】
補正楕円曲線のx軸の回りの回転角度は、一般的に360゜(即ち、トロイダル形状)に近いほど、より多くのX線を集光できるので好都合であるが、X線がX線源の周囲に均等に発散されない場合には、それを考慮して、発散されない方向のX線回折面を部分的に省略してもよい。従って、X線が片側だけに発散される場合、回転角度は例えば180゜以下であってもよい。
【0024】
このようなX線回折面を使用する場合をシュミレートして、発散されたX線の回折位置(x座標値)、その位置におけるX線の入射角(θ)、その位置にてブラッグ反射した場合にX線がx軸と交差する点とFとの間の距離(即ち、集光点Fからのずれ(d))を、例えばX線波長を銅のKα線(λ=1.5418Å)、X線回折結晶面をグラファイト(002)面(ブラッグ反射角θ=13.3゜)、X線源と集光点までの距離L=240mmとして計算すると、表1に示す結果が得られた。但し、計算に際して、式(2)においてn=5、k=10とした。比較のために、ヨハン型形状の結晶を用いる場合についても、入射角およびずれを算出した。この計算は、回折位置においてブラッグ反射条件を満たすように幾何学的に計算した。
【0025】
【表1】
Figure 0003604265
【0026】
表1から明らかなように、ヨハン型形状に比べて本発明の補正楕円曲線を用いる場合は、X線の入射角(θ)がブラッグ反射角に近く、集光点からのずれ(d)も小さい。従って、補正楕円曲線をx軸を回転軸として回転させた回転体の表面形状と同じ形状を有するX線回折面をX線を回折できる結晶により成形することにより、集光点におけるX線強度を強くできる。
【0027】
本発明の補正楕円曲線の式(2)の補正項は、xが負の領域では負であり、xが正の領域では正であるのが好ましいことが発明者らの検討で既に判っている。即ち、nが偶数の場合、xが負の領域において、補正項は元の楕円曲線をyが大きくなる側にシフトさせる、即ち、xが負の領域では入射するX線の入射角が大きくなり過ぎて、ブラッグ角からの偏奇が大きくなる。従って、nは奇数であるのが望ましい。勿論、xが正の領域では、補正項の効果はnが偶数でも奇数でも同じであり、元の楕円曲線をyが大きくなる側にシフトさせることにより入射するX線の入射角が大きくなり過ぎて、ブラッグ角からの偏奇が大きくなるのを防止するので好ましい。この意味で、補正楕円曲線はnが偶数の場合であっても有効であり、x=0近傍からx>0の範囲の補正楕円曲線を回転させる得られる曲面を使用することはX線の集光に有効である。
【0028】
先にも説明したように、kの値にも影響されるが、一般的にnは大きいほど好ましいが、補正項の効果は6以上にしてもそれほど大きく異ならないので、実用的には5で十分である。勿論、nは5より小さくてもよい。kの値については、特に限定されるものではないが、上述のようにnおよびkの適切な組を選択できる。この適切か否かは、ヨハン型のX線回折面と比較して優っていれば適切であると判断してよい。
【0029】
X線の入射角がブラッグ反射角から少しずれるとブラッグ反射しなくなるため、X線回折面に使用する結晶が完全結晶である場合には、ヨハンソン型以外の形状では結晶の一部しかブラッグ入射角が確保されない。これに対して、モザイク結晶を使用する場合、入射角がブラッグ角から多少ずれても、モザイクスプレッドがあるので少なくとも一部分の結晶に対してはブラッグ入射角が確保されるという利点がある。従って、本発明のX線集光要素のX線回折面はモザイク結晶により形成するのが好ましい。
【0030】
モザイク結晶を使用する場合には、完全結晶を用いる場合ほど結晶面の角度調整が厳密である必要はないが、モザイク結晶を使用する場合であっても、X線回折面が上述の補正楕円回転体の表面の少なくとも一部分を形成するように加工することは必ずしも容易ではない。
【0031】
そこで、本発明では、図2に模式的に示すように、トロイダル面またはその一部分20を樹脂を用いて中空または面状の支持体22を予め形成し、その支持体の表面、中空の場合は特に外側にモザイク結晶片24をはりつけることにより、モザイク結晶を精度良くトロイダル形状に配置できる。このようにすれば、モザイク結晶片の配置を精密に調整して結晶片から直接トロイダル形状を形成する必要が解消され、支持体の形状に追随する(または実質的に対応する)ようにモザイク結晶片を支持体の表面、特に外側に配置するだけでよいので好都合である。勿論、支持体の内側にモザイク結晶片を配置することも可能であるが、支持体が中空である場合、結晶片を支持体の外側に配置する場合には、結晶配置作業が非常に簡便となるので好ましい。また、結晶片を支持体の外側に貼り付ける場合には、結晶片の厚みは回折面に影響を与えないので好都合である。
【0032】
このような支持体を予め形成する本発明は、X線回折面が上述の回転補正楕円体の一部分の形状の場合であっても、これまでに提案されている他の形状のトロイダル面の場合であっても、等しく適用できる。即ち、結晶片を配置して所望の形状を有するトロイダル形状のX線回折面を形成する場合に適用できる。本発明の補正楕円曲線を回転させた形状だけではなく、例えば、トロイダル形状としては、ヨハン型、楕円などの曲線を回転させた形状の場合にも支持体を予め形成して、その表面に結晶片を配置することにより、精密に調整されたトロイダル面を容易に形成できる。
【0033】
従って、本発明は、X線回折要素の形成方法であって、トロイダル形状の表面の少なくとも一部分に対応する面を有する樹脂製の面状支持体を形成し、その支持体のいずれかの主表面にX線をブラッグ反射する少なくとも1つの結晶片を取り付けて、結晶片が支持体のトロイダル形状の表面の少なくとも一部分に実質的に対応するトロイダル形状の表面部分を形成するようにするX線回折要素の形成方法を提供する。
【0034】
支持体を形成するために使用する樹脂材料としては、X線の吸収係数が小さいものであり、かつ、加工が比較的容易なものであればよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンが適している。樹脂材料をトロイダル形状に成形する方法として、ブロー成形、研削、研磨などいずれの適当な加工法を使用してもよい。
【0035】
結晶としては、例えばグラファイト、フッ化リチウム、ペンタエリスリトールなどを入手でき、これらを好ましく使用できるが、X線の集光点における強度をより強くするには、X線の反射率の高いグラファイトが適している。
【0036】
例えばグラファイトの(002)面のモザイクスプレッドとして、グラファイトとして作製できる最高のモザイクスプレッド0.1゜から、高いX線反射率を得ることができる最低ラインである8゜までのものが便用できる。モザイクスプレッドが8゜を超えるとX線の集光点における反射強度が低下するのでそれほど好ましくない。
【0037】
トロイダル形状支持体の外側にはりつける結晶片としてもグラフファイトが特に適している。グラファイトはX線の反射率が高く、また結晶構造が層状構造をとっているため、層間剥離しやすい性質がある。そのため、平板グラファイト薄く剥離させ、それをトロイダル形状支持体の外側にはりつけることができる。また、グラファイトを特開平8−244119号公報に記載されている方法でトロイダル形状に成形し、それをトロイダル形状支持体の外側にはりつけてもよい。結晶片の大きさは支持体の曲率などに応じて適当に選択できるが、例えば特開平8−244119号公報に記載された方法により得られるグラファイトの場合では、例えば50×80×3mm程度の大きさのものを使用できる。
【0038】
【実施例】
次に、本発明の貝体例を説明する。
(実施例1)
X線が銅のKα線(波長λ=1.5418)、結晶がグラファイト(002)面(ブラッグ反射角θ=13.3゜)、X線源Sと集光点Fまでの距離L=240mmの場合に用いるX線回折要素として、図1に示す本発明の補正楕円曲線(補正項はn=5、k=10)の一部分をSFを回転軸として回転させた回転補正楕円体(w=40mm)のトロイダル形状のグラファイトで作製した。
【0039】
グラファイトの作製方法は、特開平8−244119号公報に記載されている方法で回転補正楕円体をx軸を含む面で半分に分割して得られる2つのピース作製し、これらを精密に調整してトロイダル形状を形成するように配置した。
このX線回折装置の焦点にX線管(ターゲット:銅、焦点サイズ:0.7mmの点焦点)を配置し、それから出たX線を集光する実験を行った。
【0040】
まず、X線集光装置なしで、X線焦点SからL=240mmの位置Fにφ2.0mmピンホールをおき、そのピンホールを通過したX線をシンチレーションカウンターでカウントした。その後、上述のX線集光装置により、X線を集光し、集光点にφ2.0mmのピンホールをおき、そのピンホールを通過したX線を力ウントした。
集光倍率をX線集光装置なしのときのX線強度に対するX線集光装置を付けたときのX線強度の比と定義すると、10倍の集光倍率が得られた。
【0041】
(実施例2)
図2に示すように、トロイダル面20を有する支持体22を樹脂で形成し、その外面にグラファイト片24をはりつけたX線回折要素26を作成した。支持体は、ポリプロピレンを使用し、実施例1で用いた補正楕円曲線の回転体のトロイダル形状を金型でブロー成形した(肉厚0.3mm)。
膜厚0.2mm〜0.4mmに剥離したモザイク結晶の平板状グラファイト(寸法:5mm×5mm、モザイクスプレッド0.5゜)を、支持体の外側面にはりつけた。
このX線回折要素を使用して、実施例1と同様に集光倍率を測定した結果、3倍の集光倍率が得られた。
【0042】
【発明の効果】
X線集光装置の形状をヨハン型よりも本発明の補正楕円曲線を回転させた形状とする方が、大きな立体角でX線管からのX線をブラッグ反射することができるとともに、集光点における収差が小さいため、集光点におけるX線強度が強くなる。
【0043】
また、トロイダル形状の支持体を樹脂で形成し、その外側面にX線回折可能結晶をはりつけることにより、集光点におけるX線強度の強いX線回折要素を精度良く、簡単に製作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の補正楕円曲線形状に基づいて得られるX線回折要素の原理を示す模式的断面図である。
【図2】トロイダル形状支持体を樹脂で形成し、その外面に結晶をはりつけた本発明のX線回折要素の模式的断面図である。
【図3】従来の技術の湾曲結晶形状の模式的断面図であり、(a)はヨハン型形状の原理図、(b)はヨハンソン型形状の原理図である。
【符号の説明】
S…X線源、F…集光点、1…ヨハン型形状、2…ヨハンソン型形状、3…中心、10…補正楕円曲線、12…X線回折要素、14…X線回折面または補正楕円曲線の一部分)、20…トロイダル面、22…支持体、24…モザイク結晶片、26…X線回折要素。

Claims (8)

  1. 発散X線源からのX線を集光するX線集光装置に使用する、X線をブラッグ反射する結晶面により構成されたX線回折面を有して成るX線回折要素であって、X線回折面は、X線源およびX線を集めるべき点を両焦点とする楕円の式:
    y=b(1−x2/a21/2
    (式中、a=(b2+L2/4)1/2、b=L・tanθ/2であり、Lは両焦点間の距離、θはブラッグ角である。)
    に補正項としてxn/kを加えた式:
    y=b(1−x2/a21/2+xn/k
    (式中、nは正の整数であり、kは0より大きい任意の数である。)
    により表される補正楕円曲線の少なくとも一部分を両焦点を通過する直線(即ち、x軸)を回転軸として回転させることにより得られる回転体の表面の少なくとも一部分を実質的に構成すること
    を特徴とするX線回折要素。
  2. nは、1以上の奇数である請求項1記載の要素。
  3. 結晶面は、グラファイトのモザイク結晶面である請求項1または2記載の要素。
  4. モザイク結晶面のモザイクスプレッドは0.1〜8°の範囲である請求項3記載の要素。
  5. X線発散源および請求項1〜4のいずれかに記載のX線回折要素を有して成るX線集光装置であって、X線発散源は一方の焦点に配置され、X線回折要素は、そのX線回折面がそれを導出した回転補正楕円体の表面の少なくとも一部分と一致するように配置され、発散されたX線は他方の焦点またはその近傍に集められることを特徴とする装置。
  6. X線回折要素の形成方法であって、トロイダル形状の表面の少なくとも一部分に対応する面を有する樹脂製の面状支持体を形成し、その支持体の外側の主表面にX線をブラッグ反射する少なくとも1つの結晶片を取り付けて、結晶片が支持体のトロイダル形状の表面の少なくとも一部分に実質的に対応するトロイダル形状の表面部分を形成するようにするX線回折要素の形成方法。
  7. トロイダル形状は、請求項1記載の補正楕円曲線の一部分をx軸の回りで回転させることにより得られる形状である請求項6記載の方法。
  8. 請求項6または7記載の方法によって形成されるX線回折要素。
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