JP3604212B2 - 摩擦式無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、遠心送風機、遠心圧縮機、ラジアルタービン等の羽根車のような高速回転体を駆動する出力軸を無段変速し、入力軸回転数が変動しても羽根車が装着されている出力軸が一定回転できるように増速する摩擦式無段変速機に関し、特に摩擦式無段変速機構に対する潤滑構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
摩擦式無段変速機において、入力軸回転数が小さくても出力軸を高回転させるようにした構造のものとして、図7に示すように、摩擦式無段変速機構1の入力軸12に遊星歯車機構2を連結し、この歯車機構2の入力軸25の回転を増速して変速機構1の入力軸12に伝達するものが考えられている。
【0003】
上記摩擦式無段変速機構1は、ハウジング11の両側に入力軸12と出力軸13を同軸上に対向配置し、出力軸の外側に位置するキャリアガイド10に移動自在に取付けたキャリア14にキャリア軸15を介して複数のダブルコーン16を回転可能に取付け、そのダブルコーン16が、出力軸13の端部のコーン17と、入力軸12に連結するアウターリング18とに同時に接触するようにしている。この無段変速機において、ダブルコーン16は自転のみ行い公転しない構造となっている。
【0004】
また、遊星歯車機構2は、インターナルギヤ22に複数のプラネタリーギヤ23を噛合させ、このプラネタリーギヤ23を支持するキャリア24を入力軸25に連結し、各プラネタリーギヤ23と噛合するサンギヤ26を変速機構1の入力軸12に固定している。
【0005】
この構造では、遊星歯車機構2の入力軸25が回転すると、インターナルギヤ22と噛合するプラネタリーギヤ23の自転と公転により、サンギヤ26と固定されている変速機構1の入力軸12が増速駆動され、変速機構入力軸12の回転はアウターリング18とダブルコーン16の接触部において増速され、次にダブルコーン16と出力軸13の接触部において増速されて動力が伝達され、出力軸13に取付けた羽根車機構3の羽根車19が高速回転することになる。
【0006】
従来の摩擦式無段変速機において、上記ダブルコーン16の自転を支える軸受の潤滑は、グリースあるいはハウジング11内の雰囲気の油の飛沫によっていた。
【0007】
また、アウターリング18とダブルコーン16の摩擦接触部及びダブルコーン16と出力軸13の摩擦接触部の潤滑は、同様にハウジング11内の油の飛沫で行っていた。
【0008】
他の従来の摩擦式無段変速機のダブルコーン自転軸受の潤滑方法として実開平3−7566に示すものがある。この考案は、ダブルコーンの軸受を油によって潤滑するため、ダブルコーンの支持軸及びキャリアに潤滑路を設けたものである。キャリアの主潤滑路に潤滑油を供給する方法はここでは明言されていないが、支持軸にそれぞれ外部から潤滑用の配管を有するように構成されているものである。
【0009】
実開平3−7566に示すものでは、アウターリングとダブルコーンの摩擦接触部及びダブルコーンと出力軸の摩擦接触部は、ダブルコーンの支持軸に設けた潤滑路によってダブルコーンの自転軸受を潤滑したのちダブルコーンの開口部から漏れた油によって潤滑を行うようになっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ダブルコーン16の自転を支える軸受の潤滑をグリースあるいは雰囲気内の油の飛沫で潤滑を行う場合、潤滑不足のためダブルコーン16を高速回転させることができないという問題があった。
【0011】
そこで、この発明の課題は、出力軸の軸受とダブルコーンの自転を支える軸受の潤滑及び出力軸の摩擦部に対する潤滑が簡単な構造で確実に行なえる摩擦式無段変速機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、入力軸側のアウターリングと出力軸の間に配置したダブルコーンを入出力軸の軸方向に移動させることにより、入力軸の回転を出力軸に変速して取り出し、前記入力軸側に潤滑油を所要部位に供給するオイルポンプを設けた摩擦式無段変速機において、前記オイルポンプによって供給された潤滑油を摩擦式無段変速機のフロントケーシングに導き、このフロントケーシングにおいて潤滑路を、出力軸の軸受とダブルコーンを支持するキャリア及びダブルコーンの摩擦接触部の3箇所に分岐して設け、前記キャリアに対して潤滑油を供給する潤滑路のキャリアガイドからキャリアへの連絡が、キャリアガイドの外径面にキー溝状の潤滑路を軸方向に沿って設け、キャリアの内径面に該潤滑路と連通する環状の潤滑路を設け、このキャリアに、キャリア軸の潤滑路と環状の潤滑路をつなぐ半径方向の潤滑路をキャリア軸の数だけ設けて形成されている構成を採用したものである。
【0013】
請求項2の発明は、キャリアガイドからキャリアへの潤滑路の連絡が、キャリアガイドの外径面にキー溝状の潤滑路を軸方向に沿って設け、キャリアの内径面に該潤滑路と連通する環状の潤滑路を設け、このキャリアに、キャリア軸の潤滑路と環状の潤滑路をつなぐ半径方向の潤滑路をキャリア軸の数だけ設けて形成されている構成としたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0016】
図1に示す構造の摩擦式無段変速機は、基本的機能においては従来の技術の項で述べた図7と同じであり、図7と同一部分については同一符号を付して説明に代える。すなわち、入力軸25の回転は遊星歯車機構2のプラネタリーギヤ23のキャリアに入力され、増速されてサンギヤ26から出力される。遊星歯車機構2のサンギヤ26には変速機構入力軸12が連結されており、変速機構入力軸12の回転はアウターリング18とダブルコーン16の接触部において増速され、次にダブルコーン16と出力軸13の接触部において増速されて動力が伝達される。
【0017】
この実施例では、図1に示すように、変速機構1と遊星歯車機構2のハウジング11を共通のものとし、そのハウジング11の端部に、オイルポンプ32を中央部に組込んだ蓋部材31を取付けている。
【0018】
このオイルポンプ32は、ロータが遊星歯車機構2の入力軸25に連結され、該ポンプ32の吸入ポートは図示しない吸油路で、歯車機構2内と連通し、変速機構1と歯車機構2を分離するように設けられるハウジング11の隔壁34には、潤滑油が流通するための連通孔35が形成され、この連通孔35の存在により、入力軸25が回転すると、オイルポンプ32は、変速機構1及び歯車機構2内の潤滑油を吸い上げることになる。
【0019】
この発明の主要部のひとつは、ダブルコーン16を油潤滑するための潤滑油路であり、その構成をなしているのは、フロントケーシング36、フロントケーシング36に固定されているキャリアガイド10、キャリアガイド10と相対的に可動するキャリア14及びキャリア14と一体に形成されて複数のダブルコーン16の回転を支持しているキャリア軸15の各々に設けられた潤滑路の組み合せからなっている。
【0020】
オイルポンプ32によって吐出ポートから供給された潤滑油は、ハウジング11に設けられた潤滑路あるいはハウジング外部に設けた配管によって、図3に示すように羽根車機構3を取り付けるフロントケーシング36に導かれる。
【0021】
次に、図1のII−II断面である図2に示すように、フロントケーシング36において潤滑路を出力軸受潤滑路A、キャリア軸潤滑路B、摩擦接触部潤滑路Cの3箇所に分岐させる。ただし3箇所の分岐部は図には描かれていない。
【0022】
分岐した3箇所の潤滑路の内、キャリア軸15への潤滑径路Bを図3に示す。
【0023】
図3において、フロントケーシング36の半径方向に沿って設けたキャリア軸潤滑路Bの内端にキャリアガイド10の基部に設けた水平の潤滑路B1 が連通し、キャリアガイド10のキャリア14が嵌合する部分に設けた軸方向の潤滑路B2 が前記潤滑路B1 と半径方向の潤滑路B3 で連通している。
【0024】
図3と図4に示すように、キャリアガイド10の外径面にキー溝状の潤滑路B4 が軸方向に沿って設けられ、この潤滑路B4 と前記軸方向の潤滑路B2 が半径方向の潤滑路B5 で接続されている。
【0025】
キャリアガイド10に対して軸方向に移動自在となるよう外嵌するキャリア14の内径面には、図3と図4に示すように環状の潤滑路B6 が前記キー溝状の潤滑路B4 と連通するように設けられ、キャリア14には複数のキャリア軸15が該キャリア14と一体に形成され、キャリア14には、それぞれのキャリア軸15に潤滑油を供給するための半径方向の潤滑路B7 が環状の潤滑路B6 と連通するようキャリア軸15の数だけ設けてある。
【0026】
前記キャリア14とそれぞれのキャリア軸15の軸方向に設けた潤滑路B8 は先の潤滑路B7 と連通し、キャリア軸15には潤滑路B8 と連通する潤滑油出口B9 が設けられ、キャリア軸15に保持されているダブルコーン16の軸受37への潤滑を行なうようになっている。
【0027】
図4ではキャリア軸15は4本とした図が描かれているが、ダブルコーン16の数だけキャリア軸15を設ければよい。すなわち、環状の潤滑路B6 は複数の潤滑路B7 へ潤滑油を配分するために設けたものである。
【0028】
上記のように、フロントケーシング36の潤滑路Bに分配供給された潤滑油は、連通する各潤滑路を通り、ダブルコーン16の軸受37の潤滑を行なうことになる。
【0029】
変速機構入力軸12に対し出力軸13を変速するため、キャリアガイド10の軸方向にキャリア14を移動させた状態が図5である。キャリア14に設けた環状の潤滑路B6 が、キャリアガイド10にキー溝状に設けられた潤滑溝B4 に沿って動くため、キャリア14に設けた潤滑路B6 が潤滑溝B4 から外れない範囲内ではキャリア14がどの位置にあっても、潤滑油は潤滑溝B4 を介して環状の潤滑路B6 に流入する。後は潤滑路B7 、B8 へ潤滑油が流れる。
【0030】
潤滑経路の主要部の二つ目は、ダブルコーンと出力軸の摩擦接触部への油の潤滑路Cを設けた点である。
【0031】
図2に示すように、フロントケーシング36において潤滑路を3箇所に分岐させたうちの摩擦接触部潤滑路Cは、図6に示すように、キャリアガイド10に設けた潤滑路C1 及び潤滑路C2 につながっており、潤滑路C2 は入力軸側に開放されており、この部分から潤滑油が流出して出力軸摩擦接触部を潤滑する。
【0032】
入力軸摩擦接触部の潤滑に関しては、変速機入力軸12の回転による遠心力の作用で図3あるいは図6の潤滑路B8 からの油及び図6の潤滑路C2 からの油によって行われる。このため、ダブルコーン16の先端には潤滑油の流出を許容する開口40が設けられている。
【0033】
潤滑径路の主要部の三つ目である出力軸受潤滑路Aは、図2のように、フロントケーシング36の半径方向に設けられ、この潤滑路Aの内端と、図3等に示したようにキャリアガイド10の出力軸軸受38との重なり面に設けた給油口39とを、図示省略したがキャリアガイド10に設けた潤滑路で接続し、軸受38に対して潤滑油の供給が行なえるようになっている。
【0034】
上記のように、この発明の潤滑径路は、フロントケーシング36、フロントケーシング36に固定されているキャリアガイド10、キャリアガイド10と相対的に可動するキャリア14、キャリア14と一体で形成されて複数のダブルコーン16の回転を支持するキャリア軸15にそれぞれ潤滑路を設け、ハウジング11内部において他に特別な配管部品を使用する必要がないように潤滑路を構成することにより、ダブルコーン16の軸受37に潤滑油を確実に供給でき、また、キャリアガイド10に潤滑路を設けてダブルコーン16と出力軸13の摩擦接触部に油を供給すると共に、出力軸13の軸受38に対しても潤滑油を供給する。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、この発明によると、摩擦式無段変速機のフロントケーシングに、潤滑路を、出力軸の軸受とダブルコーンを支持するキャリア及びダブルコーンの摩擦接触部の3箇所に分岐して設け、前記キャリアに対して潤滑油を供給する潤滑路のキャリアガイドからキャリアへの連絡を、キャリアガイドの外径面にキー溝状の潤滑路を軸方向に沿って設け、キャリアの内径面に該潤滑路と連通する環状の潤滑路を設け、このキャリアに、キャリア軸の潤滑路と環状の潤滑路をつなぐ半径方向の潤滑路をキャリア軸の数だけ設けて形成されているので、複数のダブルコーンの回転を支持するキャリア軸の軸受を油潤滑することができ、ダブルコーンの高速回転が可能となる。これと同時に出力軸の軸受及び高速回転となる出力軸側摩擦接触部の潤滑不足を解消できる。
【0036】
また、構成部品内部に潤滑路を設けることによって、複数のキャリア軸へ個別に外部で配管する必要がなく、部品点数の削減による低コスト化及び組立工数の削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る摩擦式無段変速機の縦断正面図
【図2】図1の矢印II−IIに沿う縦断側面図
【図3】キャリアとダブルコーンの部分の構造を示す拡大断面図
【図4】図3の矢印IV−IVに沿う縦断側面図
【図5】キャリアの移動状態を示す拡大断面図
【図6】キャリアとダブルコーンの部分における摩擦接触部潤滑路の構造を示す縦断面図
【図7】従来の摩擦式無段変速機を示す縦断正面図
【符号の説明】
1 摩擦式無段変速機構
2 遊星歯車機構
3 羽根車機構
11 ハウジング
12、25 入力軸
13 出力軸
14 キャリア
15 キャリア軸
16 ダブルコーン
17 コーン
18 アウターリング
32 オイルポンプ
36 フロントケーシング
A 出力軸受潤滑路
B キャリア軸潤滑路
C 摩擦接触部潤滑路
Claims (2)
- 入力軸側のアウターリングと出力軸の間に配置したダブルコーンを入出力軸の軸方向に移動させることにより、入力軸の回転を出力軸に変速して取り出し、前記入力軸側に潤滑油を所要部位に供給するオイルポンプを設けた摩擦式無段変速機において、前記オイルポンプによって供給された潤滑油を摩擦式無段変速機のフロントケーシングに導き、このフロントケーシングにおいて潤滑路を、出力軸の軸受とダブルコーンを支持するキャリア及びダブルコーンの摩擦接触部の3箇所に分岐して設け、前記キャリアに対して潤滑油を供給する潤滑路のキャリアガイドからキャリアへの連絡が、キャリアガイドの外径面にキー溝状の潤滑路を軸方向に沿って設け、キャリアの内径面に該潤滑路と連通する環状の潤滑路を設け、このキャリアに、キャリア軸の潤滑路と環状の潤滑路をつなぐ半径方向の潤滑路をキャリア軸の数だけ設けて形成されていることを特徴とする摩擦式無段変速機。
- 入力軸側のアウターリングと出力軸の間に配置したダブルコーンを入出力軸の軸方向に移動させることにより、入力軸の回転を出力軸に変速して取り出し、前記入力軸側に潤滑油を所要部位に供給するオイルポンプを設け、このオイルポンプによって供給された潤滑油をダブルコーンを支持するキャリアに供給するようにした摩擦式無段変速機において、キャリアガイドからキャリアへの潤滑路の連絡が、キャリアガイドの外径面にキー溝状の潤滑路を軸方向に沿って設け、キャリアの内径面に該潤滑路と連通する環状の潤滑路を設け、このキャリアに、キャリア軸の潤滑路と環状の潤滑路をつなぐ半径方向の潤滑路をキャリア軸の数だけ設けて形成されていることを特徴とする摩擦式無段変速機。
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JP27922495A JP3604212B2 (ja) | 1995-10-26 | 1995-10-26 | 摩擦式無段変速機 |
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JP27922495A JP3604212B2 (ja) | 1995-10-26 | 1995-10-26 | 摩擦式無段変速機 |
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JPH09119494A JPH09119494A (ja) | 1997-05-06 |
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JP27922495A Expired - Fee Related JP3604212B2 (ja) | 1995-10-26 | 1995-10-26 | 摩擦式無段変速機 |
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1995
- 1995-10-26 JP JP27922495A patent/JP3604212B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH09119494A (ja) | 1997-05-06 |
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