JP3604110B2 - トルクコンバータのステータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トルクコンバータのステータ、特に薄いブレードを有するトルクコンバータのステータに関する。
【0002】
【従来の技術】
トルクコンバータは、インペラ、タービン及びステータを内部に有し、充填される作動油により動力を伝達する装置である。作動油は、トルクコンバータの外周部でインペラからタービンへと流れ、トルクコンバータの内周部でステータを介してタービンからインペラへと流れる。
【0003】
ステータは、インペラとタービンとの間に配置される部材で、ワンウェイクラッチを介してステータシャフトに固定されている。また、ステータシャフトはトランスミッションハウジングに固定されている。このステータは、樹脂やアルミ合金等で鋳造により製作され、主に、環状のシェルと、環状のコアと、シェルとコアとの間に形成されるブレードとから構成される。
【0004】
ブレードは、円周方向に複数設けられるもので、内周側のシェルから外周側のコアへと延びており、タービンからインペラへと戻される作動油の方向を調整する。このブレードの形状は、一体鋳造するためにシェル等との取り合い部分に発生する断面が円弧状の部分(以下、スミR部と称す)を除けば、断面積の変化率がほぼ一定である。すなわち、ブレードの形状の表面はシェルからコアへと延びる直線が集合したものとなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
トルクコンバータのトルク伝達効率を向上させるためには、インペラやタービンの形状に対応してステータに最適な流体的性能を設定することが必要とされる。このためには、一般にステータのブレードを薄くすることが有効である。これにより、ステータの性能をより広い範囲で設定することができるようになる。
【0006】
しかし、性能的にブレードの薄翼化が求められる一方、強度的にはブレードの厚翼化が要求される。
本発明の課題は、強度を保持しつつブレードの薄翼化を図って、トルクコンバータのステータの性能及びトルクコンバータの性能を向上させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のトルクコンバータのステータは、シェルと、コアと、ブレードとを備えている。シェルは環状である。コアは、環状であって、シェルの外周側に配置されている。ブレードは、シェルとコアとの間に形成されるもので、円周方向に複数配置されている。このブレードは、シェルの外周部とコアの内周部とを連結するようにシェルからコアへと向かって延びている。ブレードの断面積の変化率は、シェルの外周部とコアの内周部との距離の1/6〜1/2の範囲のうちの任意の寸法だけシェルからコアへと延びた位置において変化する。このようにシェルの外周部とコアの内周部との距離の1/6〜1/2の範囲のうちの任意の寸法だけシェルからコアへと延びた位置においてブレードの断面積の変化率が変わることによって、ブレードの断面積の変化率が変わらない場合に較べて、シェル近傍のブレードの断面積が大きくなっている。
【0008】
トルクコンバータのステータについては、性能的な観点からブレードの薄翼化が求められる一方、強度的な観点からはブレードの厚翼化が要求される。
ここでは、この相反する要求を満足させるために、コアからブレードの中間部分(ステータの径方向に対する中間部分)までは性能を重視してブレードを薄翼とし、かつ中間部分において断面積の変化率を変えてシェル近傍の断面積を増やし強度的な要求を満足させる。このため、本請求項のステータのブレードは、中間部分において、その断面積(ステータの径方向に対して垂直な面で切ったときの断面積)のステータの径方向に沿った変化率が変化している。そして、通常のステータのサイズ及び形状を考慮すると、所定の性能向上を図るためにはブレードの断面積の変化率が変わるポイントをシェルの外周部とコアの内周部との距離の1/2だけシェルからコアへと延びた位置よりもシェル側とする必要があり、所定の強度をステータに具備させるためにはシェルの外周部とコアの内周部との距離の1/6だけシェルからコアへと延びた位置よりもコア側とする必要がある。
【0009】
このようにブレードの中間部分でブレードの断面積の変化率を変化させて、主として中間部分よりコア側を薄翼とすることによって性能を向上させ、主として中間部分よりシェル側において断面積を増大させ強度を満足させているので、ステータのブレードの強度を満足しつつステータの性能を良いものとすることができる。
【0010】
請求項2に記載のトルクコンバータのステータは、請求項1に記載のステータにおいて、ブレードの断面積の変化率が変化する位置は、シェルの外周部とコアの内周部との距離の1/3だけシェルからコアへと延びた位置よりもシェル側にある。
ブレードの断面積の変化率の変化する位置をシェル側に近づけるに従ってブレードを薄翼とすることができるが、ある程度以上の性能を確保するためには、ブレードの断面積の変化率が変化する位置をシェルの外周部とコアの内周部との距離の1/3だけシェルからコアへと延びた位置よりもシェル側に設定することのほうが、1/2だけシェルからコアへと延びた位置よりもシェル側に設定することよりもより望ましい。
【0011】
請求項1では、ブレードの断面積の変化率が変化する位置をシェルの外周部とコアの内周部との距離の1/2だけシェルからコアへと延びた位置よりもシェル側に設定すればよいとしているが、本請求項では、性能面を重視して、ブレードの断面積の変化率が変化する位置をより望ましいシェルの外周部とコアの内周部との距離の1/3だけシェルからコアへと延びた位置よりもシェル側に設定している。
【0012】
請求項3に記載のトルクコンバータのステータは、請求項1又は2に記載のステータにおいて、ブレードの断面積の変化率が変化する位置は、シェルの外周部とコアの内周部との距離の1/4だけシェルからコアへと延びた位置よりもコア側にある。
ブレードの断面積の変化率の変化する位置をコア側に近づけるに従ってブレードの強度が向上するが、ある程度強度に余裕を持たせるためには、ブレードの断面積の変化率が変化する位置をシェルの外周部とコアの内周部との距離の1/4だけシェルからコアへと延びた位置よりもコア側に設定することのほうが1/6だけシェルからコアへと延びた位置よりもコア側に設定することよりもより望ましい。
【0013】
請求項1又は2では、ブレードの断面積の変化率が変化する位置をシェルの外周部とコアの内周部との距離の1/6だけシェルからコアへと延びた位置よりもコア側に設定すればよいとしているが、本請求項では、強度面を重視して、ブレードの断面積の変化率が変化する位置をより望ましいシェルの外周部とコアの内周部との距離の1/4だけシェルからコアへと延びた位置よりもコア側に設定している。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明の一実施形態であるステータ6を備えたトルクコンバータ1を示す。ここでは、O−Oがトルクコンバータ1の回転軸線であり、図の左側にエンジン(図示せず)が配置され、図の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。
【0015】
このトルクコンバータ1は、主として、エンジン側のクランクシャフトからトランスミッションのメインドライブシャフトにトルクを伝達するための機構であり、外周部がクランクシャフトに連結されるフロントカバー3と、3種の羽根車(インペラ4,タービン5,ステータ6)からなるトルクコンバータ本体とから構成されている。フロントカバー3とインペラ4とは外周部で溶接され、両者で作動油室を形成している。
【0016】
クランクシャフトからフロントカバー3に入力されたトルクは、インペラ4からタービン5に流れる作動油によって、タービン5に連結されるメインドライブシャフトに出力される。エンジン始動時、インペラ4によって循環させられた作動油はタービン5に跳ね返されインペラ4を押し戻す方向に流れる。これを抑えるためにステータ6が設けられている。このステータ6は、タービン5により跳ね返された作動油の流れをインペラ4と同じ回転方向に変換して、トルクコンバータ1のトルク伝達効率を向上させている。
【0017】
ステータ6は、環状のシェル11と、環状のコア12と、複数のブレード13とを備えており、アルミ合金を原料として鋳造によって一体的に製作される。このため、ブレード13とシェル11との取り合い部分には、半径が1mm〜2mm程度のスミR部14が存在する。
シェル11は、ステータ支持構造を介して、トランスミッションのハウジングに固定されたステータシャフト(図示せず)に固定されている。このシェル11の外径は寸法(r1)×2である。シェル11の内周部にはスラスト受け部11aが形成されている。ステータ支持構造に関しては後述する。
【0018】
コア12は、シェル11の外周側に配置されている。このコア12の内径は寸法(r2)×2である。
ブレード13は、シェル11とコア12との間に形成されるもので、円周方向に複数設けられている。このブレード13は、シェル11の外周部とコア12の内周部とを連結するようにシェル11からコア12へと向かって延びており、コア12側の第1ブレード部13aとシェル11側の第2ブレード部13bとから構成されている。第2ブレード部13bの断面積(ステータ6の径方向に対して垂直な面で切ったときの断面積)の変化率は第1ブレード部13aの断面積の変化率と異なっている。このように第2ブレード部13bの断面積の変化率が第1ブレード部13aの断面積の変化率と異なっていることにより、第2ブレード部13bの断面積の変化率が第1ブレード部13aの断面積の変化率と等しい場合に較べて、シェル11近傍のブレード13の断面積が大きくなっている。
【0019】
この第1ブレード部13aと第2ブレード部13bとの境をステータ6の径方向のどの位置に設定するかについては、作動油の流れを考慮する性能面からの要求と強度面からの要求との調整となるが、通常用いられるステータのサイズに対しては、性能面及び強度面から、少なくともシェル11の外周部とコア12の内周部との距離(r2−r1)の1/6〜1/2の寸法に寸法(r1)を加えた寸法だけ軸O−Oから離れた位置となる。また、性能面から見てより望ましくは(r2−r1)の1/3の寸法に寸法(r1)を加えた寸法だけ軸O−Oから離れた位置よりもシェル11側に設定すべきであり、強度面から見てより望ましくは(r2−r1)の1/4の寸法に寸法(r1)を加えた寸法だけ軸O−Oから離れた位置よりもコア12側に設定すべきである。ここでは、本実施形態のトルクコンバータ1のインペラ4,タービン5,及びステータ6の形状及びサイズから、(r2−r1)の1/3の寸法に寸法(r1)を加えた寸法(r3)だけ軸O−Oから離れた位置を第1ブレード部13aと第2ブレード部13bとの境に設定している。したがって、この位置において、ブレード13の断面積の変化率が変化している。
【0020】
一般にトルクコンバータのステータについては、性能的な観点からブレードの薄翼化が求められる一方、強度的な観点からはブレードの厚翼化が要求されている。本実施形態のステータ6では、この相反する要求を満足させるために、コア12からブレード13の第1ブレード部13aと第2ブレード部13bとの境までは性能を重視して第1ブレード部13aの厚みを薄くし、第1ブレード部13aと第2ブレード部13bとの境からシェル11までは強度的な要求を満たすように第2ブレード部13bの断面積を増大させている。したがって、主として薄翼の第1ブレード部13aによって性能を確保しつつ、主として第2ブレード部13bにおいて断面積を増大させることで必要な強度を確保している。これにより、従来のブレードの断面積の変化率がほぼ一定であるステータを採用する場合に較べて、ステータ6の性能設定可能範囲が拡がることからトルクコンバータ1の性能を向上させることができ、かつ、ステータ6の強度が確保される。
【0021】
次に、ステータ支持構造について説明する。
ステータ支持構造は、ワンウェイクラッチ機構21と、環状のリテーナ22とから構成されている。ワンウェイクラッチ機構21は、ステータ6を一方向にのみ回転させるための機構であり、アウターレース23と、インナーレース25と、両レース間に配置されたクラッチ部材24とから構成されている。アウターレース23は、シェル11の内周部に固定されている。また、アウターレース23及びインナーレース25のエンジン側の側部は、リティーナ22に当接し、リティーナ22はスラストころ軸受26を介してタービンハブ8に支持されている。タービンハブ8はタービン5の内周部に固定されている部材である。一方、アウターレース23及びインナーレース25のトランスミッション側の側部は、シェル11のスラスト受け部11aに当接し、スラスト受け部11aはスラストころ軸受27を介してインペラハブ4aに支持されている。インペラハブ4aは、インペラ4の内周部に固定されている部材である。このように、ステータ6のシェル11及びステータ支持構造は、インペラハブ4aとタービンハブ8との間でスラストころ軸受26,27によって軸O−O方向の移動が規制される。インナーレース25の内周部には、ステータシャフト(図示せず)に係合するスプライン孔25aが形成されている。
【0022】
【発明の効果】
本発明では、コアからブレードの中間部分までは性能を重視してブレードを薄翼とすることができ、ブレードの中間部分からシェルまでは強度的な要求を満たすようにブレードの断面積を増大させることができるため、強度を保持したままでブレードの薄翼化が可能となり、トルクコンバータのステータの性能及びトルクコンバータの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるステータが採用されたトルクコンバータの概略断面図。
【図2】図1のII−II矢視図。
【符号の説明】
1 トルクコンバータ
6 ステータ
11 シェル
12 コア
13 ブレード

Claims (3)

  1. 環状のシェルと、
    前記シェルの外周側に配置される環状のコアと、
    前記シェルと前記コアとの間に形成されるもので、円周方向に複数配置されており、前記シェルの外周部と前記コアの内周部とを連結するように前記シェルから前記コアへと延び、前記シェルの外周部と前記コアの内周部との距離の1/6〜1/2だけ前記シェルから前記コアへと延びた位置において断面積の変化率が変わり、前記断面積の変化率が変わることで前記断面積の変化率が変わらない場合に較べて前記シェル近傍の断面積が大きくなるブレードと、
    を備えたトルクコンバータのステータ。
  2. 前記ブレードの断面積の変化率が変化する位置は、前記シェルの外周部と前記コアの内周部との距離の1/3だけ前記シェルから前記コアへと延びた位置よりも前記シェル側にある、
    請求項1に記載のトルクコンバータのステータ。
  3. 前記ブレードの断面積の変化率が変化する位置は、前記シェルの外周部と前記コアの内周部との距離の1/4だけ前記シェルから前記コアへと延びた位置よりも前記コア側にある、
    請求項1又は2に記載のトルクコンバータのステータ。
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