JP3603930B2 - 映像表示光学系 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、映像を観察者の瞳に投影して表示する映像表示光学系に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
観察者の眼球に映像を表示する映像表示光学系の従来例としては、例えば特開平7−140414号公報に記載されたもの(従来例1)があり、図3は前記公報に記載の光学系の断面図を示す図である。図3の映像表示光学系は、映像を形成する映像表示素子である液晶表示素子(LCD)51と、LCD51により形成された映像光束を観察者の眼球に導くためLCD51の光軸と観察者の視軸の交点近傍に傾斜配置されるハーフミラー52と、正のパワーを有しハーフミラー52を介してLCD51と対向配置される拡大反射鏡53とを備えて成る。
【0003】
従来例1は、LCD51からの映像光束の内のハーフミラー52を透過した映像光束が拡大反射鏡53で反射して再びハーフミラー52に導かれた後、ハーフミラー52で反射された映像光束が観察者の瞳位置54に導かれるようになっている。
【0004】
従来例1は、上述のようにLCD51からの映像光束が観察者の瞳位置54に到達するまでにハーフミラー52を2回通過するので、最終的に観察者の瞳に導かれる光量はLCD51において発生された光量の(1/2)2=25%にしかならず、光の利用効率が低い。光の利用効率の向上を図った映像表示光学系として、例えば特開平6−324286号公報、米国特許第5,383,053号に記載されたものがある。
【0005】
図4は、特開平6−324286号公報に記載の光学系(従来例2)を示すものである。図4の映像表示光学系は、映像を形成する映像表示素子であるLCD62と、LCD62により形成された映像光束を観察者の眼球66に導くためLCD62の光軸と観察者の視軸の交点近傍に傾斜配置されたハーフミラー63とハーフミラー63の透過側と反射側にそれぞれ配置された正のパワーを有する拡大反射鏡64、65とを備えて成る。
【0006】
従来例2においては、LCD62から出射された映像光束はまずハーフミラー63に与えられる。映像光束の内、ハーフミラー63で透過された光束は拡大反射鏡64に与えられここで反射され、ハーフミラー63に再入射する。そして、ハーフミラー63で反射された光束が観察者の眼球66に与えられる。LCD62からの映像光束の内、ハーフミラー63で反射された光束は拡大反射鏡65に与えられここで反射され、ハーフミラー63に再入射する。そして、ハーフミラー63で透過された光束が観察者の眼球66に与えられる。
【0007】
ハーフミラー63の透過側と反射側にそれぞれ拡大反射鏡64、65が設けられている上記のような構成の光学系においては、一方しか設けられていない例えば従来例1の光学系と比較して光の利用効率が原理的には2倍となる。
【0008】
図5は、米国特許第5,383,053号に記載の光学系(従来例3)を示すものである。図5の映像表示光学系は、映像を形成する映像ソース55と、映像ソース55により形成された映像光束を観察者の眼球61に導くため映像ソース55の光軸と観察者の視軸の交点近傍に傾斜配置されたビームスプリッタ57と、正のパワーを有しビームスプリッタ57を介して観察者の眼球61と対向配置された凹レンズ59と、さらに映像ソース55とビームスプリッタ57の間に配置されたリレーレンズ56と、ビームスプリッタ57と凹レンズ59の間に配置された4分の1波長板58とを備えて成る。尚、ビームスプリッタ57はS偏光を反射し、P偏光を透過するものである。
【0009】
従来例3において、映像ソース55から出射されたS偏光よりなる映像光束はリレーレンズ56を介してビームスプリッタ57に与えられ、ここで反射される。ビームスプリッタ57で反射されたS偏光光束は、4分の1波長板58を介して凹レンズ59に与えられ、ここで反射され再び4分の1波長板58を介してビームスプリッタ57に与えられる。
【0010】
映像光束はビームスプリッタ57を出射してからここに再入射するまでに、4分の1波長板58を2回通過するので位相が180度ずれる。つまり、P偏光光束よりなる映像光束がビームスプリッタ57に再入射される。P偏光は、ビームスプリッタ57で透過され観察者の眼球61に与えられる。観察者は与えられた映像光束により虚像60を観察することになる。ビームスプリッタ57で、完全に全てのS偏光を反射し、P偏光を透過することは困難であり、また映像ソース55より出射される映像光束も特定の偏光状態のもののみが有効であるために、幾分光の損失はあるものの、光の利用効率は従来例1と比較して大幅に改善されている。
【0011】
しかしながら、従来例2、3の映像表示光学系は、従来例1に示した映像表示光学系と比較して光の利用効率の向上は図られているものの、瞳径の拡大に関しては考慮されていない。瞳径の拡大に関して考慮されていないのは、従来例1も同様である。瞳径が大きいほど観察者は映像を観察しやすいことになる。
【0012】
米国特許第5,506,728号においては、瞳径の拡大を図った映像表示光学系が記載されている。図6は、米国特許第5,506,728号の光学系(従来例4)を示す図である。図6に示す映像表示光学系は、映像を形成する映像ソース67と、映像ソース67により形成された映像光束を観察者の眼球71に導くため映像ソース67の光軸と観察者の視軸の交点近傍に傾斜配置された平行な二つのハーフミラー68、69と、正のパワーを有しハーフミラー68、69を介して映像ソース67と対向配置されたコリメータミラー70とを備えて成る。
【0013】
映像ソース67で形成された映像光束のうち、ハーフミラー68、69を透過した光束はコリメータミラー70で反射されてハーフミラー69に与えれられる。ハーフミラー69で反射された光束は観察者の眼球71に導かれる。また、ハーフミラー69で透過された光束のうちハーフミラー68で反射された光束も同じく観察者の眼球71に導かれる。
【0014】
このような構成においては、2つのハーフミラー68、69により反射された光束が観察者の眼球71の異なる位置に入射されることにより、瞳径の拡大が図られる。従って、図3に示した光学系と同様なコンパクトさを保ったまま瞳径の拡大が図られることになる。尚、図3に示した光学系においては、外部72からの光束も観察者の眼球71に導かれるように構成されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例4においては、光の利用効率の低さと、二つのハーフミラー68、69での面間反射に起因するゴーストが生じるという問題点がある。図7に従来例4の光学系を簡略化して示し、光の利用効率の低さについて説明する。図7においては、観察者の眼球71に与えられることなく捨てられる光束を点線で示す。
【0016】
図をみるとわかるように、映像光束は観察者の眼球71に与えられるまでに、ハーフミラー68、69を3回または4回通過しており、通過する度に光量が半分となるので、結果的に観察者に与えられる映像光束は映像ソース67で出射された映像光束の光量の約10%となり、光の利用効率が大変低い。光の利用効率が低いと、小出力の映像ソース67を用いた場合には所望の光量を確保できないので、所望の光量を確保するためには大出力(大型)の映像ソース67を用いなければならず、映像表示装置が大型化してしまう。
【0017】
次に、図8を用いてゴーストに関して説明する。図8も図7と同じく従来例4の光学系を簡略化して示した図である。ゴーストに起因する光線を点線で示す。観察者に与えられる映像光束として、コリメータミラー70に与えられる前に、ハーフミラー69で反射されハーフミラー68に与えられ、ここでも同じく反射された後コリメータミラー70に与えられた光束も含まれてしまう。この光束は図中点線で示したものであるが、実線で示した光束とは異なる角度で観察者の眼球71に与えられ、ゴーストとして観察されることになる。
【0018】
本発明は、上記問題点に鑑み、コンパクトで光量の損失が少なく、面間反射によるゴーストを解消した瞳径の大きな映像表示光学系を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の映像表示光学系は、無偏光の映像光束を形成する映像表示素子と、前記映像表示素子の光軸と観察者の視軸の交点を挟んで観察者の瞳と対向するように配され少なくとも一つの反射面を含み正のパワーを有する第1の接眼光学系と、前記交点を挟んで前記映像表示素子と対向するようにかつ前記交点からの光路長が前記交点から第1の接眼光学系までの光路長とほぼ等しくなる位置に配され少なくとも一つの反射面を含み第1の接眼光学系とほぼ等しい正のパワーを有する第2の接眼光学系と、前記交点近傍に傾斜配置され前記映像表示素子からの映像光束を反射、透過することにより第1の接眼光学系方向と第2の接眼光学系方向に導くようになす第1の偏光半透過面と、第1の偏光半透過面近傍の第2の接眼光学系側に第1の偏光半透過面と略平行に配された第2の偏光半透過面と、第1の偏光半透過面で反射されて第1の接眼光学系で反射された後第1の偏光半透過面に再入射する映像光束を第1の偏光半透過面で透過される偏光の映像光束とする第1の偏光変換手段と、第2の偏光半透過面で透過されて第2の接眼光学系で反射された後第2の偏光半透過面に再入射する映像光束を第2の偏光半透過面で反射される偏光の映像光束とする第2の偏光変換手段とを備えた構成とする。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の映像表示光学系において、第1の偏光変換手段は第1の偏光半透過面と第1の接眼光学系の間に配された4分の1波長板であり、第2の偏光変換手段は第2の偏光半透過面と第2の接眼光学系の間に配された4分の1波長板である構成とする。
【0021】
上記構成において、各半透過面から出射された光束はそれぞれ4分の1波長板を2回通過して各半透過面に再入射することになる。よって、各半透過面において出射時と再入射時で光束の偏光方向は90度異なる。従って、出射時に半透過面で反射された光束は再入射時には透過され、出射時に半透過面で透過された光束は再入射時には反射されることになる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の映像表示光学系において、前記二つの接眼光学系は裏面反射面を有する接眼レンズである構成とする。
【0023】
接眼光学系として裏面反射面を有する接眼レンズを用いると、像面性が良い。これと同程度の性能を達成するためには、屈折系では正と負のレンズが必要となる。また、反射鏡1枚では、同程度の性能を達成できない。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明の実施形態の映像表示光学系を模式的に示す。図1の映像表示光学系は、映像光束を形成する映像形成部材(映像表示素子)2と、映像形成部材2の光軸2aと所定位置における観察者の瞳10の視軸10aの交点1を挟んで観察者の瞳10と対向するように配され反射面を含み正のパワーを有する第1の接眼レンズ7と、交点1を挟んで映像形成部材2と対向するようにかつ交点1からの光路長が交点1から第1の接眼レンズ7までの光路長とほぼ等しくなる位置に配され反射面を含み第1の接眼レンズ7とほぼ等しい正のパワーを有する第2の接眼レンズ9と、交点1近傍に傾斜配置され映像表示部材2からの映像光束を反射・透過することにより第1の接眼レンズ7方向と第2の接眼レンズ8方向に導くようになす第1の半透過面4と、第1の半透過面4近傍の第2の接眼レンズ9側に第1の半透過面4と略平行に配された第2の半透過面5と、第1の半透過面4と第1の接眼レンズ7の間に配された4分の1波長板6と、第2の半透過面5と第2の接眼レンズ9の間に配された4分の1波長板8とからなる。
【0025】
前記映像形成部材2は、DVDやCRTなどの無偏光の映像光束を形成する映像表示素子である。第1、第2の半透過面4、5は入射光束の偏光方向によって選択的に反射、透過を行う偏光半透過面であり、ここではS偏光を反射し、P偏光を透過するものであるとする。
【0026】
映像形成部材2で形成された映像光束は第1の半透過面4に与えられる。ここで、映像光束のうちS偏光光束は反射され、P偏光光束は透過される。反射されたS偏光光束は4分の1波長板6を介して接眼レンズ7に与えられ、ここで反射された後再び4分の1波長板6を介して第1の半透過面4に与えられる。映像光束は往復で2回4分の1波長板6を透過することにより位相が180度ずれ偏光方向が90度回転する。よって、第1の半透過面4に再入射する映像光束はP偏光光束よりなる。このP偏光光束は第1の半透過面4、第2の半透過面5で透過され観察者の瞳10に与えられる。
【0027】
映像形成部材2から第1の半透過面4に与えられ、ここで透過されたP偏光光束は第2の半透過面5でも透過され、4分の1波長板8を介して接眼レンズ9に与えられ、ここで反射された後再び4分の1波長板8を介して第2の半透過面5に与えられる。映像光束は往復で2回4分の1波長板8を透過することにより位相が180度ずれ偏光方向が90度回転する。よって、第2の半透過面5に再入射する映像光束はS偏光光束よりなる。このS偏光光束は第2の半透過面5で反射され観察者の瞳10に与えられる。
【0028】
第1の半透過面4で分割された映像光束は、上記のようにどちらも観察者の瞳10に導かれる。このとき、第1の半透過面4と第2の半透過面5のずれ分だけ、分割光束の射出位置がずらされることになる。この射出位置のずれ量が適当な値となるように二つの半透過面4、5を配置することで、半透過面が一つである場合と比較して瞳径の引き延ばしが図られる。図中では、dに示した分だけ瞳径が引き延ばされることになる。
【0029】
本実施形態では、原理的には半透過面4、5での反射、透過により失われる映像光束がないため、映像形成部材2から出射された全ての映像光束が観察者の瞳10に導かれる。よって、損失光量はない。また、映像形成部材2において形成される映像光束の偏光方向も限定されることがなく、ある特定の偏光方向の光束のみからなる映像光束を形成する場合のように映像光束形成時での損失光量もない。
【0030】
また、本実施形態では二つの半透過面4、5を有するように構成されているが、面間反射に起因するゴーストが生じることはない。なぜなら、二つの半透過面4、5は偏光半透過面であり、第1の半透過面4を透過する光束はP偏光光束のみからなり第2の半透過面5での反射成分を含まない。よって、二つの半透過面4、5間の反射は発生せず面間反射に起因するゴーストが生じることはない。
【0031】
図2は、図1に示した光学系の具体的な構成を示した図である。第1、第2の接眼レンズ7、9はそれぞれ裏面反射面7a、9aを有する構成である。第1、第2の半透過面4、5はプリズム3内に形成されており、第1、第2の半透過面4、5の法線と映像形成部材2の光軸のなす角度が45度以上となるように形成されている。45度より小さくなると、第2の接眼レンズ9の観察者側の端面が観察者側に突き出した構成となり、第1、第2の半透過面4、5と瞳10との距離が増大し、ひいては第1の接眼レンズが瞳10から遠ざかり、第1、第2の接眼レンズ7、9の径が増大し、光学系全体のコンパクトさを損なうことになるからである。二つの4分の1波長板6、8はそれぞれプリズム3の側面に貼り付けられている。
【0032】
【発明の効果】
本発明の光学系によると、瞳径の拡大が図られることになる。瞳径が大きいので、観察者が観察可能な瞳位置の領域が広くなり、観察しやすいことになる。尚、本発明の光学系は二つの半透過面を有する構成であるが、上述のように面間反射に起因するゴーストは発生しない。また、原理的には、損失光量がないので、最初に発生させる映像光束の光量が少なくてよく、映像表示素子の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の映像表示光学系の模式図。
【図2】本発明の実施形態の映像表示光学系の具体的な構成図。
【図3】従来例1の光学系を示した図。
【図4】従来例2の光学系を示した図。
【図5】従来例3の光学系を示した図。
【図6】従来例4の光学系を示した図。
【図7】従来例4の光学系における光の利用効率の低さを説明するための図。
【図8】従来例4の光学系において発生するゴーストについて説明するための図。
【符号の説明】
2 映像形成部材
4 第1の半透過面
5 第2の半透過面
6、8 4分の1波長板
7 第1の接眼レンズ
9 第2の接眼レンズ
10 瞳
Claims (3)
- 無偏光の映像光束を形成する映像表示素子と、
前記映像表示素子の光軸と観察者の視軸の交点を挟んで観察者の瞳と対向するように配され少なくとも一つの反射面を含み正のパワーを有する第1の接眼光学系と、 前記交点を挟んで前記映像表示素子と対向するようにかつ前記交点からの光路長が前記交点から第1の接眼光学系までの光路長とほぼ等しくなる位置に配され少なくとも一つの反射面を含み第1の接眼光学系とほぼ等しい正のパワーを有する第2の接眼光学系と、
前記交点近傍に傾斜配置され前記映像表示素子からの映像光束を反射、透過することにより第1の接眼光学系方向と第2の接眼光学系方向に導くようになす第1の偏光半透過面と、
第1の偏光半透過面近傍の第2の接眼光学系側に第1の偏光半透過面と略平行に配された第2の偏光半透過面と、
第1の偏光半透過面で反射されて第1の接眼光学系で反射された後第1の偏光半透過面に再入射する映像光束を第1の偏光半透過面で透過される偏光の映像光束とする第1の偏光変換手段と、
第2の偏光半透過面で透過されて第2の接眼光学系で反射された後第2の偏光半透過面に再入射する映像光束を第2の偏光半透過面で反射される偏光の映像光束とする第2の偏光変換手段とを備えたことを特徴とする映像表示光学系。 - 第1の偏光変換手段は第1の偏光半透過面と第1の接眼光学系の間に配された4分の1波長板であり、
第2の偏光変換手段は第2の偏光半透過面と第2の接眼光学系の間に配された4分の1波長板であることを特徴とする請求項1に記載の映像表示光学系。 - 前記二つの接眼光学系は裏面反射面を有する接眼レンズであることを特徴とする請求項1または2に記載の映像表示光学系。
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