JP3603929B2 - 車載用ステレオカメラの支持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基線長を利用して対象物までの距離測定を行うステレオカメラを搭載し、車に固定するための支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車の衝突防止システムとして車間距離警報,居眠り運転警報,歩行者保護や後方障害物警報を発するものが考えられている。また、車線逸脱防止,車間距離維持,事故自動回避のシステムが考えられている。
このようなシステムにおいて、対象物までの距離を測定するために搭載される測距装置の1つとしてステレオ形式のカメラがある。このステレオカメラは、2個の撮像素子の光軸を一定の距離(基線長)だけ離して前方に向けて配置されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般に測定された距離の誤差の原因はステレオカメラの2個の撮像素子の配置精度に依存する。例えば、2個の撮像素子の距離がわずかに変わったり,撮像素子の光軸が所定の方向よりずれたりした場合には、測距誤差として現れ、システムの信頼性が低下する結果となる。
図9にステレオカメラの支持部材の考えられる取付構造の一例を示す。
3個のカラー41a,41bおよび41cを挟んでカメラステイ42を車体側取付面43に取り付けるもので、接触面を少なくして車体からの熱伝導を緩和するとともに車振動などの影響によるガタ付きを少なくするため強固に取り付けられる。
しかしながら、この構造は取付面の高さの一部の寸法が異なっている場合には、カメラステイ42にひずみを発生させることとなる。
【0004】
そこで、車にステレオカメラを固定する場合、支持部材にひずみが発生しないように取り付け、しかも車の振動に対して2個の撮像素子の間の配置関係がずれないようにしなければならない。
また、車内は厳しい環境下に晒される場合があり、駐車中に直射日光が照り付けて高温になったり、極寒の地では逆に低温になったりする。このような環境下でも耐えることができ、熱膨張などにより取付部材が伸びたり,縮んだりしても取付精度に変動が生じないことが要求される。
【0005】
また、車内がエアコン等により温度調整されつつある状態または温度調整された後にシステムが起動され、車が動き始めた場合でも、例えば、夏の暑い時にはステレオカメラは車体の一部(例えばルーフの下面)に取り付けられるので、高温となったルーフの熱がステレオカメラの取付具に伝達しやすく、また、依然として車内の温度が下がらなかったりする場合には、取付具にひずみを生じ易い。本発明の課題は、上記諸問題を解決するもので、取付時の締め付けによる部材の歪みや自重による撓みなどを部材の形状および軽量化により最小に抑えるとともに車両走行時における幅広い周波数での振動を許容する剛性を確保することにより振動による基線長や撮像素子の光軸が変動しないようにし、さらに過酷な環境下における支持部材の熱膨張による基線長や撮像素子の光軸のずれを防止することにより、誤差の発生を取り除き許容範囲の測距精度を維持できる車載用ステレオカメラの支持装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明による車載用ステレオカメラの支持装置は、複数の撮像素子を搭載し基線長に基づき測距を行う車載用ステレオカメラの支持装置において、
前記支持装置は、横長形状の板であって前面側にリブを有し、中央後部で熱伝導度の小さい樹脂スペーサまたは硬質ゴムを挟んで車体側取付部に取付け、
かつ、両端部の前記リブ付近にそれぞれ撮像素子を取付けた構造としてある。また、本発明における前記車体側取付部に取り付ける中央後部は、前記撮像素子取付部分を結ぶ線上より後ろ側の位置に設けてある。
さらに本発明における前記支持装置の部材はアルミ合金またはセラミックスを用いるものである。
【0007】
【作用】
上記構成によれば、取付時のひずみは最小限に抑えられ、自重による撓みも少なくなり、さらに車体側からの振動は一定の硬度のスペーサにより支持部材にずれを生じるほどの振動を与えることなく吸収されるとともにとともに熱伝導も少なくなり、撮像素子の位置関係のずれの発生は非常に少なくなり測距精度は維持できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
図1は本発明による車載用ステレオカメラの支持装置を用いるシステムを説明するための概念図である。
車1および2には車内の天井にステレオカメラ4および5が取り付けられている。ステレオカメラ4および5は前方の物体の画像を左右の撮像素子から取り入れる。画像処理部では取り入れた左右の画像のずれを処理することにより前方の物体までの距離を算出できる。
車1のステレオカメラ4は車2との車間距離を検知でき、車2のステレオカメラ5は前方にある障害物3までの距離を検知できる。
【0009】
図2は、図1のシステムの動作の一例を説明するためのブロック図である。
ステレオカメラの2つのCCDより所定のタイミングで画像を取り入れている(ステップ(以下「S」という)201)。取り込れた2つの画像はそのずれを算出し基線長により物体までの距離を算出することができる(S202)。
この物体画像を、障害物と認識し(S203)、一定の距離に入ったか否かを判断し、または一定の距離以内に入る可能性があるか否かを予測する(S204)。一定の距離に入ったか、または予測した場合には音・光等により運転者にその旨の警告を発する(S205)。
【0010】
図3は、本発明による車載用ステレオカメラの支持装置の実施の形態を示す分解斜視図である。
車両ルーフに車体側取付部6が設けられている。この部分に板状の取付用スペーサ7を挟んでカメラステイ8の固定部25が3本のボルトによって締め付け固定される。
取付用スペーサ7は、硬質の樹脂、または硬質ゴムが用いられる。したがって、ボルトを締め付けたとき、ある程度圧縮されるため、たとえ取付部分の一部に誤差があったとしてもその誤差は吸収され、カメラステイ8へひずみを与えることは少ない。また、車両走行中における幅広い周波数の振動も吸収するためカメラステイ8に及ぼす振動も緩和される。さらに硬質の樹脂または硬質ゴムは金属板に対し熱伝導率が低く、車両からの熱伝導によるカメラステイ8のひずみを抑えることができる。
【0011】
図4は、上記カメラステイの詳細図で、(a)は平面図,(b)は正面図,(c)は底面図,(d)A−A断面図,(e)はB−B断面図である。
カメラステイ8は長方形状の薄い板で、中央部の後部端面から少し突出して固定部25が設けられている。前部下面には長辺方向に強度を与えるため、特にCCD取付による荷重を保持するために一定の高さのリブ26が設けられている。一方、後部下面の固定部25を除く部分にはリブ26より低くて薄いリブ27が設けられている。さらにリブ27より低い3本のリブ28,29および30がカメラステイ8の下面に設けられている。
このようにリブ26に対し、リブ27の高さ,厚さを小さくしたのは大きな強度を必要としない部分はできるだけ部材を軽量化し、かつ一定の強度を保つためである。同様な理由で3本のリブ28,29および30も設けられている。
【0012】
右端部付近および左端部付近にはCCD取付部31および32がリブ26寄りに設けられている。
固定部25にはボルトを通すためのボルト取付孔25a〜25eが、CCD取付部31および32にはCCD(1)9および(2)10(図3参照)をそれぞれ取り付けるネジを通すためのネジ取付孔31aおよび31bならびに32aおよび32bが穿設されている。
固定部25は、CCD取付部31とCCD取付部32のネジ取付孔の中央点を結んだ線より後部寄りに設けてあり、このような位置関係にすることにより、固定部25を車両側取付部6にボルトで取付けたときの締め付けトルクがCCD取付部31および32に直接及ばないようにしてある。
【0013】
図5は、図3の支持装置に搭載されるCCD駆動回路の実施の形態を示すブロック図である。
このCCD駆動回路はカメラステイ8の底面側に取り付けられる。CCD(1)9から読み込まれた物体の画像はサンプルホールド回路16によりサンプリングされ、プロセスIC17で処理が行われる。AGC回路17aによりゲインが適切なレベルに調整され、γ値補正回路17bによりγ値が補正された後、ドライバ17cによりNTSCS信号が出力される。省略されているが、CCD(2)10も同様な回路構成となっている。
【0014】
2つのCCD(1)9と(2)10の同期はタイミングジェネレータ18により確保されている。タイミングジェネレータ18から各タイミングで出力されるクロックは、それぞれバァファ回路19a,19b,20a,20b,21aおよび21bで波形整形されCCD,サンプルホールド回路およびプロセスICに供給される。
測距精度を維持するためには、上記のように同期が取られ、車両に取り付ける前に調整された2つのCCDの相対的画素位置および光軸方向は、車両に取り付けた時およびその後の車両走行中に生ずるずれ量が許容範囲内に納まることである。
【0015】
図6は、カメラステイの撓み量の計算モデルを示す図である。
この例は長方形状の平板35を用いている。
車体側取付部34に完全拘束状態で取り付けられた平板35の固定端からその先端部までのはりの長さをl,固定端から集中荷重を受ける位置までの距離をa,集中荷重をw,分散荷重をω,座標をx,y(平板の先端をx=0,y=0),平板の縦弾性係数(ヤング率)をE,断面二次モーメントをIとすると、
x=l−aの位置でのy方向の撓み量y(x=l−a) は
y(x=l−a) ={ω(6a2 l2−4a3l+a4)/24EI}+W a3/ 3EI …(1) で表すことができる。
【0016】
図7は、カメラステイの各箇所のモーメントを算出するための図で、(a)はカメラステイの横断面図,(b)は断面形状の分割図である。
(a)に示すような断面形状の断面二次モーメントを求めるために、(b)に示すように断面形状を長方形と三角形の単純な形状の集合体に分割する。それぞれの図形の面積とカメラステイ上面(基準軸)に対する面積モーメントの和から元の断面の図心を求める。さらに平行軸定理を用いて基準軸に対するそれぞれの図形の断面二次モーメントI’から元の断面の図心を通る水平軸に対する断面二次モーメントを求めることができる。
このような手法により1)〜6)までの各図形の断面二次モーメントを求めたのが表1である。
【表1】
【0017】
表1によれば、面積の約74%の割合を占める(1)+2))の部分が剛性の面で寄与する割合は僅か約26%である。これに対し面積が約16%の割合を占める(4)−5)−6))のリブ26がカメラステイ8の約67%の剛性を導き出している。このようにCCD取付部付近に設置されているリブ26が剛性の大きなウエイトを占めていることが分かる。
そして、表1のデータを(1)式に代入すると、CCD取付位置での撓み量y=0.00758〔mm〕と算出される。
この撓み量は、図6に示す長方形状の平板の撓み量を計算した場合のy’=0.01130〔mm〕と比較すると、約33%少なくなっていることが分かる。
【0018】
図8は、カメラステイのひずみ測定方法を説明するための図で、(a)はひずみ測定のレイアウトを示す図,(b)はそのひずみ測定結果を示すグラフである。この図は理論値と実測値の比較を行ったもので、ひずみゲージ37を車体側取付部6(固定部25)から一定の距離の位置に貼付け、その点における応力を測定したものである。
(b)のグラフによれば、実験値ではカメラステイに理論値の20〜22倍の応力が発生していることが分かる。しかしながら、CCDカメラを取付け、荷重を加えたときの画素ずれ量をCCDの出力信号より読み取ったとき、画素ずれ量は1Kgの集中荷重(CCDカメラも含む)を加えたときに約1/3画素のずれしか生ぜず、CCDカメラ単体のみではカメラステイの変形量は無視できるほどであった。
【0019】
一方、理論値では1Kgの集中荷重を加えたときのカメラステイの撓み量は約0.035mmとなり、画素単位では約4.7画素に相当する。すなわちカメラステイの撓み量は計算値よりも測定値の方が遙かに小さくなった。これは計算ではカメラステイの変形のモードを片持ちばりとしてモデル化したのに対し、実際にはカメラステイは車体への取付がボルトによる3点締めとなるため支持条件がモデルと異なること、さらに車体取付時のボルトの締め付けを考慮し取付部は肉厚を増加させていることが原因と推察される。
ひずみの測定値が計算値より遙かに大きくなったにもかかわらず、カメラステイの撓み量が計算値より測定値の方が小さくなった原因として、今回用いた計算モデルのカメラステイ断面は左右非対称であり、カメラステイの曲げ剛性の大部分をステイ前面のリブ26が担っている。その結果、カメラステイ断面方向に応力分布が生じ、今回ひずみ量の測定を行ったカメラステイ中央部は応力が集中する箇所になったと考えられるからである。
【0020】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明は、横長形状の板であって前面側にリブを有し、中央後部で熱伝導度の小さい樹脂スペーサまたは硬質ゴムを挟んで車体側取付部に取付け、かつ、両端部のリブ付近に2つの撮像素子をそれぞれ取付けるようにしたものである。また、車体側取付部に取り付ける中央後部は、2つの撮像素子取付部分を結ぶ線上より後ろ側の位置に設けたものである。さらに部材はアルミ合金またはセラミックスが用いられる。
したがって、取付時のひずみは最小限に抑えられ、自重による撓みも少なくなる。また、車体側からの振動は一定の硬度のスペーサにより支持部材にずれを生じるほどの振動を与えることなく吸収されるとともに過酷な条件下での車体からの熱伝導も少なくなる。よって、車両に取り付けた後の2つの撮像素子の位置のずれの発生は非常に少なくなり、ステレオカメラの測距精度を許容範囲内に維持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による車載用ステレオカメラの支持装置を用いるシステムを説明するための概念図である。
【図2】図1のシステムの動作の一例を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明による車載用ステレオカメラの支持装置の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図4】支持部材として用いられるカメラステイの詳細図で、(a)は平面図,(b)は正面図,(c)は底面図,(d)A−A断面図,(e)はB−B断面図である。
【図5】図3の支持装置に搭載されるCCD駆動回路の実施の形態を示すブロック図である。
【図6】カメラステイの撓み量の計算モデルを示す図である。
【図7】カメラステイの各箇所のモーメントを算出するための図で、(a)はカメラステイの断面図,(b)は断面形状の分割図である。
【図8】カメラステイのひずみ測定方法を説明するための図で、(a)はひずみ測定のレイアウトを示す図,(b)はそのひずみ測定結果を示すグラフである。
【図9】従来の支持部材の取付構造の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
1,2…車
3…障害物
4,5…車載用ステレオカメラ
6…車体側取付部
7…取付用スペーサ
8…カメラステイ
9…CCD(1)
10…CCD(2)
16…サンプルホールド回路
17…プロセスIC
17a…AGC回路
17b…γ値補正回路
17c…ドライバ
18…タイミングジェネレータ
31,32…CCD取付部
Claims (3)
- 複数の撮像素子を搭載し基線長に基づき測距を行う車載用ステレオカメラの支持装置において、
前記支持装置は、横長形状の板であって前面側にリブを有し、中央後部で熱伝導度の小さい樹脂スペーサまたは硬質ゴムを挟んで車体側取付部に取付け、
かつ、両端部の前記リブ付近に前記2つの撮像素子をそれぞれ取付けたことを特徴とする車載用ステレオカメラの支持装置。 - 前記車体側取付部に取り付ける中央後部は、前記2つの撮像素子取付部分を結ぶ線上より後ろ側の位置に設けたことを特徴とする請求項1記載の車載用ステレオカメラの支持装置。
- 前記支持装置の部材はアルミ合金またはセラミックスであることを特徴とする請求項1または2記載の車載用ステレオカメラの支持装置。
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