JP3602994B2 - 橋梁伸縮連結装置及び橋梁接続部 - Google Patents

橋梁伸縮連結装置及び橋梁接続部 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁の伸縮を吸収緩和するために橋梁に設けた接続部に関するものであり、更には、橋梁接続部にて、遊間部の両側に位置した躯体を伸縮自在に連結するための橋梁伸縮連結装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、橋梁の伸縮を吸収緩和するための橋梁伸縮連結装置として、鋼製及びゴム製の橋梁伸縮連結装置が広く使用されている。図5及び図6には、このような鋼製の橋梁伸縮連結装置の一例を示す。簡単に説明すると、鋼製の橋梁伸縮連結装置100は、波形をした鋼製のコネクタ本体101、102を有し、この橋梁伸縮連結装置100は、両コネクタ本体101、102をアンカーバー103にて橋梁遊間部の両側躯体端部に埋設することによって橋梁接続部200に設置される。
【0003】
しかしながら、上記のような鋼製の橋梁伸縮連結装置100は、車両の継続的な通行により、連結装置近傍の舗装材が破損したり、轍が生じ、通行車両がこの装置の上を通行するたびに大きな騒音を発生させている。又、アンカーバー103を止めるアンカーの抜けによる本体の浮きによって生じるたたき音も騒音の一因となっている。
【0004】
不具合がなく健全な場合でも、コネクタ本体101、102の目地部空隙による通行衝撃音も、コネクタ本体の構造上止むを得ないところである。更に、この目地部に水が侵入することにより遊間部下方の主桁や支承が腐食し、それによって水が下方躯体部へと流出し通行障害の原因となっている。
【0005】
又、橋梁伸縮連結装置は、橋梁が圧縮されたときに盛り上がり、そのために橋梁接続部の平坦性を損なうために、車両の通行時に大きな騒音を発生する。更に、ゴム製伸縮連結装置は、ゴムの摩耗、剥離、損傷などが生じ易く、耐久性に欠ける、という欠点をも有している。
【0006】
そこで、図7に示すように、本特許出願人は、特開平10−298908号公報に記載されるように、橋梁の接続部200において遊間部の両側に位置した躯体201の表面にそれぞれ取付けられる支持金属板2と、伸縮可能の湾曲部10Cを有し、この湾曲部10Cの両端部にて両支持金属板2に接合された強化繊維複合材10とを有する橋梁伸縮連結装置1Aを提案した。
【0007】
この橋梁伸縮連結装置1Aは、高強度、高弾性率の強化繊維複合材10を積層した上に連結部被覆材210を打設することにより路面高さを橋梁上面の舗装300の高さと一致させることができ、且つ強化繊維複合材10が有する優れた防振特性を利用することにより、発生する騒音を低減することができ、しかも耐摩耗性、耐衝撃性、補修での開放性に優れているという特長を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載の橋梁伸縮連結装置1Aは、橋梁の接続部200において強化繊維複合材10を使用しているために、橋梁間の伸縮量が少ない場合や、一定方向の伸縮に対しては問題ないが、例えば高速道路の合流部のような橋軸方向の連結(縦目地)の場合では橋梁間の動きが、幅方向、上下方向、更にはせん断方向に働くため、強化繊維を樹脂で固めた強化繊維複合材10では、特にせん断方向の動きに耐えられずに破損することがある。
【0009】
従って、本発明の目的は、橋梁の接続部に高強度繊維シートを使用し、高強度繊維シートの上に連結部被覆樹脂を打設することにより路面高さを橋梁上面の舗装高さと一致させることができ、且つ高強度繊維シートが有する優れた防振特性を利用することにより、発生する騒音を低減することができ、しかも耐摩耗性、耐衝撃性、補修での開放性に優れていると共に、更に、例え橋梁間の伸縮量が大きく、しかも、橋梁間の動きが、幅方向、上下方向、更にはせん断方向に働いたとしても破損することのない高伸縮性能を有した橋梁伸縮連結装置及び橋梁接続部を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、更に、耐候性、耐水性に優れた高伸縮性能を有した橋梁伸縮連結装置及び橋梁接続部を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明に係る橋梁伸縮連結装置及び橋梁接続部にて達成される。
【0012】
第1の本発明によれば、橋梁の接続部において遊間部の両側に位置した躯体の表面にそれぞれ取付けられる支持金属板と、高強度繊維を一方向に配列してシート状とするか、或いは、高強度繊維にて織成した織物であって、樹脂が含浸されていない伸縮可能の湾曲部を有し、前記両支持金属板の一部に接合された高強度繊維シートと、を有することを特徴とする橋梁伸縮連結装置が提供される。本発明の一実施態様によれば、前記高強度繊維は、PBO繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、金属繊維を一種、又は複数種混入したハイブリッドタイプのものを使用することができる。更に他の実施態様によれば、前記高強度繊維シート或いは前記高強度繊維は、耐候性、耐水性処理が施されるか、又は、前記高強度繊維シート或いは前記高強度繊維は、耐候性、耐水性を有する材料で被覆されて耐候性、耐水性処理が施される。
【0013】
本発明の他の実施態様によれば、前記支持金属板は、遊間部の両側躯体の上面に設置される平坦部と、遊間部の両側躯体の端面角部の湾曲に沿って形成された湾曲部と、遊間部の両側躯体の端面へと垂下して延在する垂下部とを有し、前記高強度繊維シートの端部は、前記支持金属板の前記平坦部に接合される。
【0014】
第2の本発明によれば、上記橋梁伸縮連結装置を備えた橋梁接続部であって、前記高強度繊維シートの上に連結部被覆材が、隣接するアスファルト部分と同じ高さまで打設されることを特徴とする橋梁接続部が提供される。本発明の一実施態様によれば、前記連結部被覆材は、ゴムアスファルト、又は、ウレタン樹脂若しくはMMA樹脂などの被覆樹脂を含む。
【0015】
本発明の他の実施態様によれば、少なくとも前記高強度繊維シートの伸縮可能の湾曲部上方に位置して、前記連結部被覆材中に欠損部突出防止シート材を配置することができる。前記欠損部突出防止シート材は、PBO繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維或いはガラス繊維にて作製されたメッシュ状シートとし得る。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る橋梁伸縮連結装置及び橋梁接続部を図面に則して更に詳しく説明する。
【0017】
実施例1
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る橋梁伸縮連結装置1を橋梁接続部200に取付けた態様が示される。本実施例の橋梁伸縮連結装置1は、両側に対向配置された支持金属板2を有する。両支持金属板2は、例えば鋼板とされ、同じ形状とすることができる。各支持金属板2は、橋梁の遊間部の両側に対向して配置された躯体、即ち、両コンクリート201、201の上面に設置される平坦部2Aと、該平坦部2Aに連接し、両コンクリート201の端面角部の湾曲(半径R)に添って形成された湾曲部2Bと、更に、コンクリート201の端面へと垂下して延在する垂下部2Cとを有する。両支持金属板2の垂下部2Cの外側寸法(W)は、両コンクリート間の間隙(遊間幅)(W)より僅かに小さくなるように形成される。
【0018】
本実施例の橋梁伸縮連結装置1は、上記両支持金属板2の一部の上面に一体的に接合された高強度繊維シート20を備えている。つまり、高強度繊維シート20は、両支持金属板2の平坦部2Aの上に接合される長さ(L)とされる両側の平坦部20A、20Aと、この平坦部20Aから、前記各支持金属板2の湾曲部2Bに添って下方へと湾曲した湾曲部20Bと、両湾曲部20Bから下方へとU字形状に所定の半径(R)にて湾曲し、前記両湾曲部20Bを接続する伸縮湾曲部20Cとを有する。高強度繊維シート20の平坦部20Aは、上述のように、支持金属板2の平坦部2Aに一体に接合されるが、高強度繊維シート20の湾曲部20B及び前記伸縮湾曲部20Cは、支持金属板2に接合されることはなく、両コンクリート201、201間の伸縮に対応して伸縮可能とされる。本実施例では、支持金属板2の平坦部2Aは、高強度繊維シート20の平坦部20Aより、更に外側方へと距離(L)だけ長く延在するように形成された。
【0019】
高強度繊維シート20は、高強度繊維を一方向に配列してシート状とするか、或いは、高強度繊維を織成した織物とされる。又、高強度繊維としては、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)繊維を好適に使用することができる。
【0020】
高強度繊維シート20は、一実施例によれば、次ぎのような工程にて支持金属板2、2に予め取付けられる。つまり、図2に示すように、成形型M(M1、M2)の上に所定形状に成形された支持金属板2、2をセットする。次いで、高強度繊維シート20を支持金属板2、2の上に配置し、両支持金属板2、2が対面する遊間部にて伸縮湾曲部20Cを形成し、その両端部20A及び湾曲部20Bは、支持金属板2の平坦部2A及び湾曲部2Bに配置する。支持金属板2の平坦部2Aの表面には予めプライマを塗布しておくことが好ましい。次いで、高強度繊維シート20側よりマトリクス樹脂を塗布し、高強度繊維シート20の両平坦部20Aにのみ樹脂を含浸させる。必要に応じて、更に他の高強度繊維シート20を積層し、同様に平坦部20Aにのみ樹脂を含浸させる。
【0021】
このようにして所要枚数の高強度繊維シート20を支持金属板2の上に積層し、その後、樹脂を硬化する。これによって、高強度繊維シート20は、その両平坦部20Aのみが硬化した強化繊維複合材となり、支持金属板2に一体的に接合され、連結装置1を形成する。通常、両端部における硬化した強化繊維複合材部分の厚さは、0.1〜5mmとされる。
【0022】
一方、上述にて理解されるように、高強度繊維シート20の湾曲部20B及び伸縮湾曲部20Cには樹脂は含浸されておらず、伸縮可能とされる。
【0023】
上述したように、本実施例の橋梁伸縮連結装置1では、高強度繊維シート20は、伸縮可能な湾曲部20B及び伸縮湾曲部20C以外の領域は、コンクリート床版201に固定することが望ましいことから、樹脂で固めた強化繊維複合材とし、支持金属板2を介してコンクリート201に固定するものととして説明したが、高強度繊維シート20がコンクリート201に固定されるなら、任意の方法を採用し得る。
【0024】
又、高強度繊維シート20を構成する高強度繊維は、PBO繊維のみに限定されるものではなく、その他に、ガラス繊維;アラミド、ナイロン、ポリエステルなどの有機繊維;ボロン、チタン、スチールなどの金属繊維;などを一種、又は複数種混入したハイブリッドタイプのものを使用することもできる。
【0025】
又、マトリクス樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ポリエステル系樹脂、MMA樹脂などの熱硬化性樹脂、又、所望に応じてポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂をも使用することができる。
【0026】
本実施例にて上記橋梁伸縮連結装置1は、詳しくは後述する橋梁接続部200に適用するに際し、次のような具体的寸法とすることにより好結果を得ることができた。
【0027】
支持金属板2
金属板(鋼板)2の板厚: 6mm
平坦部2Aの長さ(L+L): 382mm
湾曲部2Bの半径(R): 53mm
垂下部2Cの長さ: 50mm
両垂下部2Cの幅(W): 70mm
高強度繊維シート20
平坦部20Aの長さ(L): 132.5mm
湾曲部20Bの半径: 59mm
伸縮湾曲部20Cの半径R: 25mm
高強度繊維シートの物性:
PBO繊維:東洋紡績株式会社(商品名:ザイロン)
引張弾性率 2.7×10N/mm
引張強度 5800N/mm
樹脂含浸部の成形後の厚さ 2mm
高強度繊維シートの積層枚数 3層
次に、図1を参照して、上記構成の本発明の橋梁伸縮連結装置1及び橋梁接続部200の施工方法について説明する。
【0028】
本発明の橋梁伸縮連結装置1が取り付けられる橋梁の接続部200においては、対面する両コンクリート201の上面は、橋梁伸縮連結装置1が十分設置できる程度の長さにて且つ道路全幅にわたって舗装材、即ち、アスファルト300が除去される。本実施例では、両コンクリート201の遊間幅(W)は80mmとされ、橋梁接続部200は、長さ(L)が1255mmとなるようにアスファルト300を除去し、コンクリート201を露出した。
【0029】
次いで、橋梁接続部200の対面する両コンクリート201の半径Rとされる端面角部を削り取る。更に、各コンクリート201の上面の、連結装置1の高強度繊維シート20の外側端縁より更に外側部分を所定深さ(d)にて、例えば10mm程度の深さまでハツリ(削り)、コンクリートを除去する。そして、この部分に、例えばMMA樹脂203を打設し、不陸の修正を行なう。
【0030】
次いで、図1に示すように、本発明の橋梁伸縮連結装置1を、アスファルト300が除去された橋梁接続部200のコンクリート201上に設置する。このとき、橋梁伸縮連結装置1の支持金属板垂下部2C、2Cが橋梁接続部200の遊間部(W)に適合して挿入される。
【0031】
又、支持金属板2及び高強度繊維シート20の平坦部2A、20Aにはそれぞれ取付け穴2D、20D(図2)が形成されており、従って、連結装置1をコンクリート201の上面に設置したとき、両コンクリート201に埋設されているアンカーボルトのような金属アンカー204がこの取付け穴2D、20Dから突出する。このアンカーボルト204にナット205を螺合することにより、連結装置1は両コンクリート201に強固に取付けられる。図1には、アンカーボルト204は、一方のコンクリート201にのみ図示されているが、他方のコンクリート201にも設けられている。
【0032】
次に、上記連結装置1を覆って、前記アスファルト300が除去されている領域、即ち、連結接続部にアスファルト部分300と同じ高さまで、連結部被覆材210、例えばゴムアスファルト、又は、ウレタン樹脂若しくはMMA樹脂などの連結部被覆樹脂が打設される。その時、下層部と上層部で被覆材210と、硅砂及び骨材との配合を変えながら厚みに対応していくことが好ましい。
【0033】
このように、高強度繊維シート20を備えた連結装置1の上にゴムアスファルト或いは連結部被覆樹脂などの被覆材210を打設することにより路面高さを橋梁上面の舗装300の高さと一致させることができ、しかも、高強度繊維シート20は防振特性に優れているために、発生する騒音を著しく低減することができる。又、ゴムアスファルト或いは連結部被覆樹脂などの被覆材210は耐久性にも優れていることが分かった。
【0034】
実施例2
本発明の橋梁伸縮装置1を使用した橋梁接続部200にて、長年の使用により高強度繊維シート20の湾曲部20C内に挿入された連結部被覆材210が割れ、欠損部が道路表面へと突出することが考えられる。
【0035】
そこで、本実施例では、図1に一点鎖線にて示すように、上記連結装置1を覆って、連結部被覆材210を打設する過程において、高強度繊維シート20の、少なくとも伸縮可能の湾曲部上方に位置して、欠損部突出防止シート材30を配置することができる。好ましくは、欠損部突出防止シート材30の長さLSは、高強度繊維シート20と同程度まで延在して配置されるが、通常、15〜50cmとされる。
【0036】
欠損部突出防止シート材30は、メッシュ状シートとされ、メッシュの大きさは、硅砂及び骨材の出入りが可能な大きさ、例えば5cm×5cm程度とされる。シート材質としては、アラミド繊維などの有機繊維が好ましいが、これに限定されるものではない。又、メッシュ状シート30は、両躯体201が互いに離接し得るように、図3に示すように、両躯体201の離接方向(X)に対し、繊維30a、30bが斜めになるように配置されるのが好ましい。
【0037】
実施例3
実施例1で説明したように、本発明では、高強度繊維シート20の高強度繊維として有機繊維が好適に使用される。しかしながら、有機繊維は、置かれた条件により耐候性、耐水性に劣る可能性がある。
【0038】
このように、有機繊維などの耐候性、耐水性に劣る種類の繊維を使用する場合には、斯かる繊維に対して、耐候性、耐水性処理を施すことができる。
【0039】
具体的には、有機繊維を紡糸する原料に着色することが最も好ましいが、その他の手法として、有機繊維のサイジング剤、集束剤にカーボンブラックなどの顔料や、染料を混入して繊維を着色する方法も有効である。
【0040】
第2の方法としては、耐候性、耐水性に劣る種類の繊維を、耐候性及び耐水性のある他の材料で被覆し、耐候性、耐水性処理を施すことができる。
【0041】
具体的には、繊維及びその織物に靭性のある塗料を塗布することでも十分にその効果を出すことができる。又、他の方法としては、黒などの濃い色の布又はフィルムを高強度繊維シートの少なくとも下面側に重ねるように設置することで良好な耐候性、耐水性処理を施すことができる。
【0042】
実験例
本発明の橋梁伸縮連結装置1の効果を確認するために本発明に従って作製された高強度繊維シート20と、図7を参照して説明した上記特開平10−298908号公報に記載されるような強化繊維複合材10とを使用して、図4に示される構成の試験体T1、T2を作製し、これら試験体T1、T2を試験装置50に装着して試験した。
【0043】
先ず、本発明に従った高強度繊維シート20を用いた試験体T1について説明する。高強度繊維シート20としてはPBO繊維織物を使用した。PBO繊維織物シート20の両端にエポキシ樹脂を含浸させて硬化し、両端部のみを強化繊維複合材とした。PBO繊維織物シート20の、この両端強化複合材部分を、厚さ6mmとされる支持金属板2にエポキシ樹脂で接着し、押さえ鋼板230を重ねてアンカーボルト204でコンクリート板201へ固定した。
【0044】
この試験体T1にて、PBO繊維織物シート20の湾曲部20Cには樹脂は含浸されておらず、繊維状態のままである。
【0045】
このようにして作製した、高強度繊維シート20が取り付けられたコンクリート板201からなる試験体T1を鋼製枠231に装着した。
【0046】
次いで、鋼製枠231に取付けられた試験体T1の上方に、即ち、PBO繊維織物シート20の湾曲部、両側固定部分の全ての上に伸縮可能な特殊ゴムアスファルト210(ヒートロック工業(株)製:商品名「ファルコンL」)を加熱溶融させながら隙間のないようにして充填した。
【0047】
このようにして作製された試験体T1を備えた鋼製枠231の一端は固定し、他端は電動式作動装置(図示せず)に取付けた。
【0048】
これに対して、比較例としての強化繊維複合材10を用いた試験体T2は、上記試験体T1とは、高強度繊維シート20の代わりに、炭素繊維シート10を使用し、湾曲部10C及び両側の固定部分にエポキシ樹脂を含浸させて硬化し、強化繊維複合材とした以外は、全て同じ手順で作製されるので、再度の説明は省略する。
【0049】
試験体T1、T2の具体的寸法を示すと次ぎのとおりであった。
【0050】
支持金属板2
金属板(鋼板)2の板厚: 6mm
平坦部2Aの長さ(L): 132mm
湾曲部2Bの半径(R): 30mm
両コンクリート板の間隔(W): 76mm
高強度繊維シート20
平坦部20Aの長さ(L): 132mm
伸縮湾曲部20Cの半径R: 30mm
高強度繊維シートの物性:
PBO繊維:東洋紡績株式会社(商品名:ザイロン)
引張弾性率 2.7×10N/mm
引張強度 5800N/mm
樹脂含浸部の成形後の厚さ 2mm
高強度繊維シートの積層枚数 3層
強化繊維複合材10
平坦部10Aの長さ(L): 132mm
伸縮湾曲部10Cの半径R: 30mm
強化繊維複合材の物性:
炭素繊維の弾性率 2.3×10N/mm
炭素繊維の引張強度 3400N/mm
炭素繊維の目付量 900g/m
強化繊維複合材10の成形後の厚さ 2mm
強化繊維複合材の積層枚数 3層
上記試験体T1、T2に対し、図4にて、(1)AB間が平行に伸縮する実験1、(2)AB間が上下する実験2、(3)AB間にせん断力が作用する実験3、を行った。実験結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
Figure 0003602994
表1に示すように、試験体T2では、AB間の平行伸縮及び上下変位ではそれぞれ作動幅±10mm及び±15mmで200回作動させたが何の問題も生じなかったが、AB間にせん断力を与えたところ作動幅±17.5mmで20回作動させた時点で強化繊維複合材10の湾曲部10Cに割れが生じた。
【0052】
一方、試験体T1では、AB間の平行伸縮及び上下変位でそれぞれ作動幅±10及び±15mmで200回作動させたが何の問題も生じなかった。更に、AB間にせん断力を作動幅±17.5mmで200回作動させた時点でも高強度繊維シート20のの湾曲部20Cやその周辺でも全くひび割れが生じなかった。
【0053】
このことから、湾曲部10Cを樹脂で固めた強化繊維複合材10は、繊維部分の動きが拘束されている状態のため、AB間の平行な伸縮及びAB間の上下変位では湾曲部分で応力を吸収し破損しないが、AB間にせん断応力が繰り返しかかると破損に至ることが分かった。
【0054】
一方、本発明に従って湾曲部20Cを樹脂で固めていない高強度繊維シート20では、AB間の伸縮及び上下変位では勿論、AB間のせん断応力が繰り返し作用しても湾曲部分が十分追従することで、破損に至らないことが分かった。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の橋梁伸縮連結装置及び橋梁接続部は、橋梁の接続部において遊間部の両側に位置した躯体の表面に取付けられる支持金属板と、高強度繊維を一方向に配列してシート状とするか、或いは、高強度繊維にて織成した織物であって、樹脂が含浸されていない伸縮可能の湾曲部を有し、両支持金属板の一部に接合された高強度繊維シートと、を有する構成とされるので、
(1)橋梁の接続部に高強度繊維シートを使用することにより、高強度繊維シートの上に連結部被覆樹脂を打設することにより路面高さを橋梁上面の舗装高さと一致させることができ、且つ高強度繊維シートが有する優れた防振特性を利用することにより、発生する騒音を低減することができ、しかも耐摩耗性、耐衝撃性、補修での開放性に優れている。更に、
(2)例え橋梁間の伸縮量が大きく、しかも、橋梁間の動きが、幅方向、上下方向、更にはせん断方向に働いたとしても破損することのない高伸縮性能を有している。更に又、
(3)高強度繊維シート或いは、高強度繊維自体に耐候性、耐水性処理を施すことにより、耐候性、耐水性に優れたものとなる。
といった効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の橋梁伸縮連結装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の橋梁伸縮連結装置の作製方法を説明する図である。
【図3】欠損部突出防止シートの一部を示す平面図である。
【図4】本発明の橋梁伸縮連結装置の効果を説明するための試験装置の概略構成図である。
【図5】従来の橋梁伸縮連結装置を示す斜視図である。
【図6】従来の橋梁伸縮連結装置を使用した橋梁接続部を示す斜視図である。
【図7】従来の橋梁伸縮連結装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 橋梁伸縮連結装置
2 支持金属板
20 高強度繊維シート
20C 伸縮湾曲部
30 欠損部突出防止シート
200 橋梁接続部
201 躯体(コンクリート)
210 連結部被覆材

Claims (9)

  1. 橋梁の接続部において遊間部の両側に位置した躯体の表面にそれぞれ取付けられる支持金属板と、高強度繊維を一方向に配列してシート状とするか、或いは、高強度繊維にて織成した織物であって、樹脂が含浸されていない伸縮可能の湾曲部を有し、前記両支持金属板の一部に接合された高強度繊維シートと、を有することを特徴とする橋梁伸縮連結装置。
  2. 前記高強度繊維は、PBO繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、金属繊維を一種、又は複数種混入したハイブリッドタイプのものを使用することを特徴とする請求項の橋梁伸縮連結装置。
  3. 前記高強度繊維シート或いは前記高強度繊維は、耐候性、耐水性処理が施されることを特徴とする請求項又はの橋梁伸縮連結装置。
  4. 前記高強度繊維シート或いは前記高強度繊維は、耐候性、耐水性を有する材料で被覆されて耐候性、耐水性処理が施されることを特徴とする請求項又はの橋梁伸縮連結装置。
  5. 前記支持金属板は、遊間部の両側躯体の上面に設置される平坦部と、遊間部の両側躯体の端面角部の湾曲に沿って形成された湾曲部と、遊間部の両側躯体の端面へと垂下して延在する垂下部とを有し、前記高強度繊維シートの端部は、前記支持金属板の前記平坦部に接合されることを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の橋梁伸縮連結装置。
  6. 前記請求項1〜のいずれかの項に記載の橋梁伸縮連結装置を備えた橋梁接続部であって、前記高強度繊維シートの上に連結部被覆材が、隣接するアスファルト部分と同じ高さまで打設されることを特徴とする橋梁接続部。
  7. 前記連結部被覆材は、ゴムアスファルト、又は、ウレタン樹脂若しくはMMA樹脂などの被覆樹脂を含むことを特徴とする請求項の橋梁接続部。
  8. 少なくとも前記高強度繊維シートの伸縮可能の湾曲部上方に位置して、前記連結部被覆材中に欠損部突出防止シート材を配置することを特徴とする請求項又はの橋梁接続部。
  9. 前記欠損部突出防止シート材は、PBO繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維或いはガラス繊維にて作製されたメッシュ状シートであることを特徴とする請求項の橋梁接続部。
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