JP3602597B2 - トリベンジルスルホニウム誘導体トリフルオロメタンスルホン酸塩 - Google Patents

トリベンジルスルホニウム誘導体トリフルオロメタンスルホン酸塩 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な化合物に関し、特に、化学増幅型レジスト等の感化学線硬化性樹脂用に使用する酸発生剤として有効な、新規なスルホニウム塩に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、スルホニウム、ヨードニウム等の強酸オニウム塩が紫外線、電子線、X線等の活性線(本明細書においてはこれを化学線とする)を吸収して分解し、強酸を発生するという性質は広く知られており、これらは、半導体製造に使用される化学増幅型フォトレジスト等の感化学線硬化性樹脂構成成分である、酸発生剤のひとつとして重要な物質となっている。
【0003】
強酸のオニウム塩は、活性化学線を吸収して陽イオンの一部の結合が解裂し、中性物質と強酸を生ずるという化学変化を起こす。従って、感化学線硬化性樹脂、特に化学増幅型フォトレジストにおいては、ここで発生する酸を触媒として樹脂間の架橋反応を起こすような官能基を持った成分を系に加えることによって、目的とする物性を有するレジストを製造することが可能となる。
【0004】
オニウム塩の化学増幅型レジストの使用例としてはポジ型レジスト[イトウら、1983年のポリマーエンジニアリング アンド サイエンス、第23巻、1023頁(H.Itoら、Polym.Eng.&Sci.,23巻、1023頁(1983)]が挙げられる。しかしながら化学増幅型レジストの構成成分として発表されてきた多くのスルホニウム類は、遠紫外領域における光吸収が大きく、微細加工を目的として使用した場合、レジスト膜中での著しい光の減衰による、いわゆる裾引きが生ずるため、照射部と非照射部のコントラストが下がり、これによって解像性能が悪化するという欠点があった。
【0005】
そこでこの問題を解決するために、紫外光の吸収が比較的小さく、かつ従来のオニウム塩程度の酸発生能を得ることのできる化合物の開発が求められた。期る要求に答えるオニウム塩として、トリアルキルスルホニウム誘導体[ナカノら、SPIE’S 1994 Symposium on Microlithography, San Jose, California. 要旨集 2195巻、 1023頁]が、ArFエキシマレーザー光用として発表されたが、より一般的な遠紫外光源であるKrFエキシマレーザーの波長である248nmの光に対しては、十分な実用感度が得られなかった。
【0006】
一方、上記のオニウム塩と類似するトリベンジルスルホニウム塩は硬化性エポキシ樹脂の硬化剤(特開平2−232215)として発表されているが、この場合の対イオンはフルオロアンチモン系及びフルオロ砒素系であり、金属表面で使用した場合にはその表面に損傷を与える可能性があるので、半導体製造用レジスト等には使用することができなかった。又、対イオンが異なるものとして、p−トルエンスルホン酸塩が同時に報告されている(特開平2−232215)が、p−トルエンスルホン酸では酸強度が必ずしも十分ではないという欠点があった。
従って、遠紫外領域、特に250nm付近の波長における光吸収が小さく、かつ従来のオニウム塩程度の酸を発生することのできるオニウム塩は未だ知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、強酸を発生することのできる対イオンを持つと共に金属表面を損なう危険性の低い、トリフルオロメタンスルホン酸を持つ種々のスルホニウム塩の合成を行い、更に、化学線に対する感度を検討したところ、トリフルオロメタンスルホン酸トリベンジルスルホニウム類が、遠紫外部でのモル吸光係数が小さいにもかかわらず、250nm付近の紫外線によって効率良く分解して酸を発生することを見出し、本発明に到達した。
従って、本発明の目的は、フォトレジスト等の、活性化学線によって変性する樹脂組成物用酸発生剤として有効な、新規な化合物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記の目的は、活性化学線によって変成する樹脂組成物用に使用される酸発生剤であって、該酸発生剤が下記化1で表されることを特徴とするトリベンジルスルホニウム誘導体トリフルオロメタンスルホン酸塩によって達成された。
【化1】
但し、化1中のR1からR15は、それぞれ水素原子、水酸基、ハロゲン原子、
炭素数1〜6のアルキル基の何れかを表わし、それらはそれぞれ同一であっても異なっても良い。
【0009】
ここでアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、等を挙げることができる。又、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素の各原子が好ましい。
【0010】
本発明の化合物は、ベンジルスルフィド類とベンジルハライド類を溶媒に溶解し、次いでトリフルオロメタンスルホン酸銀を加えて撹拌することによって、又は、ベンジルアルコール類とベンジルアルコールエステル類を溶媒に溶解し、次いでトリフルオロメタンスルホン酸を加えて撹拌することによって、容易に合成することができる。
【0011】
トリフルオロメタンスルホン酸銀を使用して合成する時に用いる溶媒としては、ニトロメタン、アセトニトリル、アセトン、アルコール類などが挙げられるが、特に、ニトロメタン及び/又はアセトニトリルを使用することが好ましい。
トリフルオロメタンスルホン酸銀の使用量は、目的物を得るに必要な理論量以上である限り特に制限されないが、経済性の観点から理論量で足りる。
【0012】
反応は撹拌しながら行うため、反応温度は0℃から60℃の範囲内で足りるが、特に0℃から30℃の間で反応させることが、反応時間及び收率の観点から好ましい。
反応液中の全反応物の濃度は、10重量%から50重量%であることが、撹拌を行う観点及び経済性などの観点から好ましい。
これらの反応条件であれば、反応は2〜8時間で終了する。反応液から目的物を分離精製することは、活性炭カラム、陽イオン交換樹脂、ゲル濾過カラムクロマト等の公知の方法を、適宜組み合わせることによって容易に行うことができる。
【0013】
トリフルオロメタンスルホン酸を使用する合成時に用いる溶媒としては、ニトロメタン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられるが、特に、ジクロロメタンを使用することが好ましい。
トリフルオロメタンスルホン酸の使用量は、目的物を得るに必要な理論量以上である限り特に制限されないが、経済性の観点から理論量で足りる。
【0014】
反応は撹拌しながら行うため、反応温度は−20℃から40℃の範囲内で足りるが、特に0℃から30℃の間で反応させることが、反応時間及び收率の観点から好ましい。
反応液中の全反応物の濃度は、10重量%から50重量%であることが、撹拌を行う観点及び経済性などの観点から好ましい。
これらの反応条件であれば、反応は4〜8時間で終了する。反応液から目的物を分離精製することは、活性炭カラム、陽イオン交換樹脂、ゲル濾過カラムクロマト等の公知の方法を、適宜組み合わせることによって容易に行うことができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明の化合物は、248nmでのモル吸光係数が比較的に小さく、かつ光照射による酸発生効率が、今までに使用されているスルホニウム誘導体と同等である上、発生した酸が金属表面を損傷することもないので、特に、半導体製造用の化学増幅型フォトレジスト組成物として好適である。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0017】
実施例1.
撹拌機と滴下漏斗を装着した500mlのフラスコ中に、ベンジルスルフィド21.4g(0.1モル)及びベンジルブロマイド17.1g(0.1モル)を仕込み、次いでアセトニトリル100mlを加えて溶解した。次いで、氷浴上で撹拌しながら、トリフルオロメタンスルホン酸銀25.7g(0.1モル)のアセトニトリル溶液200mlを、5分間かけて滴下した。
【0018】
室温で3時間撹拌した後、生成した臭化銀を濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:アセトン=10:1で溶出)で精製し、無色結晶のトリベンジルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート38.6g(收率85%)を得た。
上記精製物の融点は130.5〜132.5℃であり、下記H−NMR、及び、13C−NMRによって本発明の化合物であることが確認された。
【0019】
H−NMR
δ4.75(s 6H −C −)
δ7.32(s 15H −Ph)
13C−NMR
δ44.669(−−)
δ127.003(−Ph)
δ129.657(−Ph)
δ129.997(−Ph)
δ130.272(−Ph)
ε(248nm)=1490
【0020】
実施例2.
撹拌機と滴下漏斗を装着した500mlのフラスコ中に、ベンジルスルフィド21.4g(0.1モル)及びベンジルアルコール10.8g(0.1モル)を仕込み、次いで塩化メチレン100mlを加えて溶解した。次いで、氷浴上で撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸15.0g(0.1モル)を5分間かけて滴下した。
【0021】
室温で4時間撹拌した後溶媒を減圧留去し、次いで150gのエチルエ−テルを加えて生成物を結晶化させた。これを濾過し、無色結晶のトリベンジルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート27.2g(收率60%)を得た。
【0022】
実施例3.
撹拌機と滴下漏斗を装着した500mlのフラスコ中に、ベンジルスルフィド21.4g(0.1モル)及び4−メチルベンジルブロマイド18.5g(0.1モル)を仕込み、次いでアセトニトリル100mlを加えて溶解した。次いで、氷浴上で撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸銀25.7g(0.1モル)のアセトニトリル溶液200mlを5分間かけて滴下した。
【0023】
室温で3時間撹拌した後、生成した臭化銀を濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:アセトン=10:1で溶出)で精製し、無色結晶のジベンジル−(4−メチルベンジル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート34.6g(收率74%)を得た。
上記精製物の融点は100.0〜102℃であり、下記H−NMR、及び、13C−NMRによって本発明の化合物であることが確認された。
【0024】
H−NMR
δ2.32 (s 3H −PhC
δ4.71 (s 6H −C −)
δ7.13 (d 2H −−Ph)
δ7.24 (d 2H −−Ph)
δ7.32 (s 10H −−Ph)
【0025】
13C−NMR
δ21.255(−Ph
δ44.555(−−)
δ44.709(−−)
δ123.746(−Ph)
δ127.149(−Ph)
δ129.807(−Ph)
δ130.118(−Ph)
δ130.373(−Ph)
δ130.426(−Ph)
δ130.531(−Ph)
δ140.524(−Ph)
ε(248nm)=3840
【0026】
実施例4.
撹拌機と滴下漏斗を装着した500mlのフラスコ中に、ベンジルスルフィド21.4g(0.1モル)及び4−t−ブチルベンジルブロマイド16.4g(0.1モル)を仕込み、更に塩化メチレン100mlを加えて溶解した。次いで、氷浴上で撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸15.0g(0.1モル)を5分間かけて滴下した。
【0027】
室温で3時間撹拌し、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和した後、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:アセトン=10:1で溶出)で精製し、無色結晶のジベンジル−(4−t−ブチルベンジル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート17.8g(收率35%)を得た。
上記精製物の融点は129〜131℃であり、下記H−NMR、13C−NMR及び、IRによって本発明の化合物であることが確認された。
【0028】
H−NMR
δ1.26(s 9H −C
δ4.73(m 6H −C −)
δ7.26(d 2H −−Ph)
δ7.31(m 12H −−Ph)
【0029】
13C−NMR
δ30.961(−
δ34.643(−Me
δ44.571(−−)
δ44.632(−−)
δ123.681(−Ph)
δ126.610(−Ph)
δ127.169(−Ph)
δ129.604(−Ph)
δ129.904(−Ph)
δ130.045(−Ph)
δ130.264(−Ph)
δ153.386(−Ph)
ε(248nm)=4580
【0030】
実施例5.
撹拌機と滴下漏斗を装着した500mlのフラスコ中に、ベンジルスルフィド21.4g(0.1モル)及び4−ブロモベンジルブロマイド25.04g(0.1モル)を仕込み、次いでアセトニトリル100mlを加えて溶解した。次いで、氷浴上で撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸銀25.7g(0.1モル)のアセトニトリル溶液200mlを5分間かけて滴下した。
【0031】
室温で3時間撹拌した後、生成した臭化銀を濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:アセトン=10:1で溶出)で精製し、無色油状物のジベンジル−(4−ブロモベンジル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート43.9g(收率88%)を得た。
下記H−NMR、13C−NMR及び、IRによって本発明の化合物であることが確認された。
【0032】
H−NMR
δ4.75(s 2H −C −)
δ4.77(s 4H −C −)
δ7.15(d 2H −−Ph)
δ7.31(s 10H −−Ph)
δ7.38(d 2H −−Ph)
【0033】
13C−NMR
δ44.224(−C −)
δ45.085(−C −)
δ124.563(−Ph)
δ126.348(−Ph)
δ126.987(−Ph)
δ129.831(−Ph)
δ130.195(−Ph)
δ130.377(−Ph)
δ131.919(−Ph)
δ132.886(−Ph)
ε(248nm)=12800
【0034】
実施例6.
光照射により発生した酸の測定は、テトラブロモフェノールブルーを指示薬として以下のように行った。
まず検定試料としてトリフルオロメタンスルホン酸トリベンジルスルホニウムの0.125mMアセトニトリル溶液を調整した。これを光路長1cmの石英セルに入れ、光反応装置(RIKO PHOTOCHEMICAL REACTOR MODEL RH400−10W : (株) リコ−製の商品名)を使用して波長254nmの光を120秒間照射した。
【0035】
照射後、反応液1mlを8.0μMテトラブロモフェノールブルー2−ナトリウムアセトニトリル溶液で10倍に希釈し、618nmにおける吸光度を測定した。この値を用いて、塩酸標準液を用いて作成した検量線により換算したところ、スルホニウム添加量に対し、53%相当のトリフルオロメタンスルホン酸の発生が認められた。
従来酸発生剤として使用されているトリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムの同条件下での酸の発生を測定したところ85%であった。
このことからトリフルオロメタンスルホン酸トリベンジルスルホニウムは、若干の感度低下はあるものの、十分な酸発生能を有することが確認された。

Claims (2)

  1. 活性化学線によって変成する樹脂組成物用に使用される酸発生剤であって、該酸発生剤が下記化1に示されるトリベンジルスルホニウム誘導体トリフルオロメタンスルホン酸塩で表されることを特徴とする酸発生剤
    但し、化1中のR1からR15は、それぞれ水素原子、水酸基、ハロゲン原子、
    炭素数1〜6のアルキル基の何れかを表わし、それらはそれぞれ同一であっても異なっても良い。
  2. 前記トリベンジルスルホニウム誘導体トリフルオロメタンスルホン酸塩が、トリベンジルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジベンジル−(4−メチルベンジル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジベンジル−(4−tert-ブチルベンジル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジベンジル−(4−ブロモベンジル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネートからなる群の中から選択された何れかである、請求項1に記載された酸発生剤。
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