JP3602356B2 - 電磁波発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、特にX線等の波長の短い電磁波を大強度で発生させる電磁波発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は、例えば「加速器科学(パリティ物理学コース)1993年、41頁」に記載されている従来の電磁波発生装置の概略を示す構成図である。
図7において、1016は真空ダクト1015に電子を注入する電子銃、1018はヨーク1014,磁極1011,コイル1012で構成される電磁石に交流電流を供給し、真空ダクト1015中に時間的に変化する磁界を発生させる交流電源、1019は真空ダクト1015中を周回する電子ビームの加速軌道を変更させる補正コイル、1017は真空ダクト1015中に配置され、周回する電子ビームを衝突させて制動放射による電磁波を発生させるターゲット。1013はフラックス磁極である。
図8は図7における真空ダクト1015部分の断面図であり、図において1016は真空ダクト1015内に電子eを注入する電子銃、1017は電子ビームの周回軌道上に設けられたターゲット、1021はターゲット1017に電子ビームが衝突した際に発生した制動放射にて放出されるX線を含む電磁波である。
【0003】
従来の電磁波発生装置は、電子銃1016で電子eを発生させ、この電子eを電子ビームとして真空ダクト1015中を周回させるところのヨーク1014、磁極1011及びコイル1012で構成された電磁石に交流電源1018から交流電流を供給し、真空ダクト1015中に時間的に変動する磁界を発生させる。
【0004】
その結果、真空ダクト1015中で電子ビームの進行方向に電界が発生し、その電界により電子ビームが加速される。加速された電子ビームは、電子軌道をずらす補正コイル1019を励磁することで外側に軌道が変化し、ターゲット1017に衝突する。ターゲット1017に衝突した電子ビームはエネルギーを失う。更に、エネルギーは夕一ゲット1017や真空ダクト1015に衝突して失われる。電子ビームがターゲット1017に衝突すると、制動放射によりX線領域を含む電磁波を放出する。その電磁波を真空ダクト1015外へ取り出して主としてX線透視等に利用する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の様な電磁波発生装置は、発生する電磁波の量が少ないといった問題から、電磁波発生装置中の電子ライナックで発生した電子ビームを重金属のターゲットに当てる装置が主流となり、電子ビームをターゲットに衝突させて電磁波を放出させて電磁波の一種であるX線を用いるという目的には用いられなくなった。また、従来の装置は厚い重金属のターゲットと電子ビームの相互作用が非常に大きく、そこから発生する電磁波は角度広がりが大きいビームとなり、利用分野が制限されていた。
【0006】
この発明は、かかる問題点を解消するためになされたもので、従来の電磁波発生装置より発生する電磁波のエネルギー強度より数桁から数10桁エネルギー強度の強い電磁波を発生させることができると共に、ビーム制御が簡便であり、且つ、大電流ビームであっても不安定になりにくく、更に、ある特定の波長領域のみを利用する場合に、大強度の電磁波を発生することが可能となる電磁波発生装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る電磁波発生装置は、電子銃より発せられた電子を、周回磁場発生用コイルにより発生させた誘導電界により加速して電子ビームを周回させる真空ダクトの前記電子ビームの周回軌道上に気体又はプラズマを噴出する噴出器と、前記真空ダクトから前記気体又はプラズマを取り除く回収器とを備え、前記噴出器は、前記周回磁場発生用コイルの励磁パターンに同期し励磁電流が所定の値に達した時に前記気体又はプラズマを噴出し、前記電子ビームが前記気体又はプラズマに衝突して制動放射よりパルス状の電磁波を発生するものである。
【0009】
請求項2の発明に係る電磁波発生装置は、前記気体又はプラズマの構成物質を、電磁波を照射する測定対象の吸収端より波長が長い第1の元素と、前記吸収端より波長が短い第2の元素としたものである。
【0010】
請求項3の発明に係る電磁波発生装置は、前記気体又はプラズマの構成物質を、任意の特性X線の波長を持つ元素の気体粒子と、電磁波を照射する測定対象の吸収端より波長が長い元素の第1の固体微粒子と、前記吸収端より波長が短い元素の第2の固体微粒子としたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図について説明する。図1は本実施の形態に係る電磁波発生装置の模式図である。図において、11はコイル(周回磁場発生用コイル)、12はヨーク、13は磁極、14はフラックス磁極、15は真空ダクト、16は電子銃、17は気体又はプラズマ噴出器、18は集束磁場発生用コイルである。
尚、ここで気体又はプラズマ噴出器17、集束磁場発生用コイル18以外はその使用目的は従来装置と同様である。
【0012】
また、図2は図1に示す気体又はプラズマ噴出器17付近の概略平面図である。図2において、15は真空ダクト、17は気体又はプラズマの噴出器、18はビームの周回軌道、19は気体の通過管、20は気体又はプラズマの回収器である。
【0013】
本発明の電磁波発生装置は、電子銃16で電子ビームを発生させ、真空ダクト15中に電子ビームを周回させる。そして、コイル11、ヨーク12、磁極13、フラックス磁極14で構成された電磁石により、真空ダクト15中に時間的に変動する磁界を発生させる。
【0014】
その結果、真空ダクト15中で電子ビームの進行方向に誘導電界が発生し、その電界により電子ビームが加速される。加速された電子ビームは気体又はプラズマ噴出器17から出てくる気体又はプラズマと衝突して制動放射のX線を放射することで電磁波が発生する。
【0015】
従来の装置では、電磁波を発生させる時に、電子ビームを金属板と衝突させるために補正コイルにより加速軌道をずらす必要があったが、本発明の場合、加速軌道と電磁波発生中の軌道は同一で良い。
【0016】
図2に示すように、気体の通過管19を通ってきた気体は電子ビーム18の周回軌道上に噴出される。電子ビーム18は気体又はプラズマと衝突することでエネルギーの一部を失う。失ったエネルギーは、誘導電界により一部が補われるが、1夕一ン(周回)で誘導電界で得られるエネルギーは少なく、電子ビームは徐々に軌道の内側に移動し、最終的にはチェンバ等に衝突しエネルギーは失われる。
【0017】
しかしながら、気体又はプラズマ噴出器17を通過する時に失うエネルギーはごくわずかで、電子ビームは数100ターンから数万ターン周回することになる。電子ビームは気体又はプラズマ部分を通過する度に気体又はプラズマに衝突し制動放射により電磁波を放出するので大強度の電磁波を取り出すことができる。また、従来装置の夕一ゲットと異なり気体やプラズマは密度の調整が可能であるので、発生させる電磁波の量の制御が簡便になる。発生した電磁波はダクト外へ取り出して利用され、気体やプラズマは気体やプラズマの回収器25で取り除かれるため、真空ダクト内の真空度は高真空に保たれる。
【0018】
従来例のように電子を厚いターゲットに衝突させて電磁波を発生させると、発生する電磁波の大部分はターゲット内で吸収され、さらに多重散乱により、放射角は広がる。これに対して本発明の電磁波発生装置はターゲット内で吸収される電磁波がなく、また、多重散乱も少ないので多量の電磁波を取り出すことが可能である。
【0019】
更に図1に示すプラズマの噴出器17から噴出される気体やプラズマの量を調整することにより、電子ビームの1夕一ンにおいて誘導電界で得るエネルギーと気体やプラズマで失われるエネルギーをほぼ同じにすることができる可能性があり、その場合には更に大強度のX線を発生させることが可能となる。
【0020】
図3は本実施の形態に係る電磁波発生装置による電磁波発生方法を説明するタイミングチャート図である。
このタイミングチャートにおいて横軸は時間を示す。また、各タイミングチャートにおいて縦軸31は図1における周回磁場発生用コイル11の励磁パターン、縦軸32は図1における気体又はプラズマ噴出器17からの気体又はプラズマの噴射パターン、縦軸33は発生する電磁波の出力パターンを示す。
【0021】
気体又はプラズマ噴出器17(以下、気体噴出器)から気体又はプラズマ(以下、気体)を噴出させるタイミングを周回磁場発生用コイル11の励磁パターン31と同期させる。具体的には、周回磁場発生用コイル11の励磁電流がある値に達した時に気体噴出器17から気体を噴出させる。電磁波は電磁波の出力パターンに示す様に気体が噴出したタイミングで放射させることになる。
【0022】
周回磁場発生用コイル11の励磁電流と加速された電子ビームのエネルギーはほぼ比例しているので、加速された電子ビームのエネルギーがある程度のエネルギーに達した時に電磁波が放射されることになる。この様な一定のタイミングで電磁波を放射させることにより、電磁波の発生位置や強度を安定に保つことが可能となる。励磁パターンの周期は電源装置の費用等を考えると商用周波数が望ましいと考えられ50Hz〜60Hz程度である。
【0023】
実施の形態2.
図4は電磁波発生装置における気体またはプラズマ噴出器(以下、気体噴出器)から噴出する気体またはプラズマ(以下、気体)の模式図である。図中、17は気体噴出器、41は気体A,42は気体Bである。
【0024】
図5は電磁波発生装置から放出される電磁波の波長分布(スペクトル分布)と電磁波を照射する測定対象の吸収特性のスペクトル分布を模式的に示したものである。図において、51は電磁波発生装置から放出される電磁波の波長分布、52は測定村象の吸収特性のスペクトル分布である。
【0025】
また、53は気体Aの構成元素の特性X線の波長スペクトルピーク、54は気体Bの構成元素の特性X線の波長スペクトルピークである。さらに、55は測定対象である物質の吸収端を示す。
【0026】
次に電磁波発生装置をX線の発生源として、心臓の冠状動脈の血管の詰まりを診断するアシジオグラフィを例にとり本実施の形態の動作を説明する。アシジオグラフィでは、X線を人体に照射してその透過X線量を測定することで血管を造影する。血管中の血液の流れを際だたせる為に通常は沃素の造影剤を血管内に注射する。
【0027】
沃素は33keV付近に吸収端(図5の55)を持ち、吸収端から高波長側と短波長側でのX線の吸収特性が異なる。よって、両方の波長のX線で冠状動脈血管を撮影しその差分を取ることにより沃素が流れる冠状動脈血管をくっきりと映し出すことが可能となる。
【0028】
従来の電磁波発生装置では、電子をターゲットに衝突して発生する連続X線や、荷電粒子が磁場で曲げられる時に発生するSRを用いていた。その波長分布は連続でありその中から所定の2波長をモノクロ化すると強度が弱くなるという問題があった。
【0029】
本実施の形態では、気体噴射装置17から発生させる気体の元素の特性X線の波長を沃素の吸収端より波長が短い元素(図中の54、物質B)の特性X線と、沃素の吸収端より波長が長い元素(図中の53、物質A)の特性X線とすることで、吸収端の両端で強いX線を得ることが可能となる。
【0030】
パラメータにより異なるが連続X線と比較して1桁から2桁程エネルギー強度のX線を得ることができる。よって、それらのX線を単色化しても、なおエネルギー強度の強いX線を得ることができ、エネルギー強度の強い2つの波長のX線ビームを人体に照射することが可能となる。
【0031】
実施の形態3.
図6は本実施の形態に係る気体またはプラズマ噴出器(以下、気体噴出器)から噴出する気体またはプラズマ(以下、気体)を示す模式図である。
【0032】
図において、17は気体噴出器、61は固体微粒子A,62は固体微粒子B,63は気体粒子である。
【0033】
本実施の形態では、気体噴射装置17から発生させる気体の元素は任意の特性X線の波長を持つもので良く、気体の中に金属粉等の固体微粒子を挿入して一緒に噴出させる。
【0034】
具体的には沃素の吸収端より波長が短い元素(図5中の54、物質B)の固体微粒子と、沃素の吸収端より波長が長い元素(図5中の53、物質A)の固体微粒子を気体中に挿入することで、吸収端の両端で強いX線を得ることが可能となる。具体的な適用方法は実施の形態2と同様であるので省略する。
【0035】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、電子銃より発せられた電子を、周回磁場発生用コイルにより発生させた誘導電界により加速して電子ビームを周回させる真空ダクトの前記電子ビームの周回軌道上に気体又はプラズマを噴出する噴出器と、前記真空ダクトから前記気体又はプラズマを取り除く回収器とを備え、前記噴出器は、前記周回磁場発生用コイルの励磁パターンに同期し励磁電流が所定の値に達した時に前記気体又はプラズマを噴出し、前記電子ビームが前記気体又はプラズマに衝突して制動放射よりパルス状の電磁波を発生することで、大強度の電磁波を発生させることが可能となった。
【0036】
また、電磁波発生時に加速ビームの軌道を変更する必要がないので、制御が簡便になり、さらに、大電流ビームが不安定になることのない電磁波発生装置を提供することが可能になった。
【0037】
更に、ターゲット等の固体物質に電子ビームを衝突させる必要がないので、衝突物質の熱除去の問題等が生じないといった効果を奏する。
【0038】
また、大強度の電磁波を安定して発生できるといった効果を奏する。
【0039】
請求項2の発明によれば、気体又はプラズマの構成物質として電磁波を照射する測定対象の吸収端より波長が長い第1の元素と、前記吸収端より波長が短い第2の元素を用いることにより、特定の波長で大強度のX線を発生することができるといった効果を奏する。
【0040】
請求項3の発明によれば、気体又はプラズマの構成物質として任意の特性X線の波長を持つ元素の気体粒子と、電磁波を照射する測定対象の吸収端より波長が長い元素の第1の固体微粒子と、前記吸収端より波長が短い元素の第2の固体微粒子を用いることにより、特定の波長で大強度のX線を発生することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】電磁波発生装置の鳥瞰図である。
【図2】気体又はプラズマ噴出器付近の平面図である。
【図3】タイミングチャート図である。
【図4】気体またはプラズマ噴出器から噴出する気体またはプラズマの模式図(1)である。
【図5】電磁波発生装置から放出される電磁波の波長分布と、測定対象の吸収特性のスペクトルの模式図である。
【図6】気体またはプラズマ噴出器から噴出する気体またはプラズマの模式図(2)である。
【図7】従来の電磁波発生装置の概略構成図(立断面図)である。
【図8】従来の電磁波発生装置の概略構成図(平面図)である。
【符号の説明】
11 メインコイル(主コイル)、12 ターンヨーク、13 磁極、14 フラックス磁極、15 真空チェンバ、16 電子銃、17 薄膜、31 コイルの励磁パターン、32 気体又はプラズマ噴出器からの気体又はプラズマの噴射するタイミング、33 発生電磁波の出力ハターン、41 気体A、42 気体B、61 固体微粒子A、62 固体微粒子B、63 気体粒子。
Claims (3)
- 電子銃より発せられた電子を、周回磁場発生用コイルにより発生させた誘導電界により加速して電子ビームを周回させる真空ダクトの前記電子ビームの周回軌道上に気体又はプラズマを噴出する噴出器と、
前記真空ダクトから前記気体又はプラズマを取り除く回収器とを備え、
前記噴出器は、前記周回磁場発生用コイルの励磁パターンに同期し励磁電流が所定の値に達した時に前記気体又はプラズマを噴出し、
前記電子ビームが前記気体又はプラズマに衝突して制動放射よりパルス状の電磁波を発生する
ことを特徴とする電磁波発生装置。 - 前記気体又はプラズマの構成物質は、電磁波を照射する測定対象の吸収端より波長が長い第1の元素と、前記吸収端より波長が短い第2の元素である
ことを特徴とする請求項1記載の電磁波発生装置。 - 前記気体又はプラズマの構成物質は、任意の特性X線の波長を持つ元素の気体粒子と、電磁波を照射する測定対象の吸収端より波長が長い元素の第1の固体微粒子と、前記吸収端より波長が短い元素の第2の固体微粒子である
ことを特徴とする請求項1記載の電磁波発生装置。
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