JP3602019B2 - 半導体レーザ素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ディスク等の記録再生光源に適した半導体レーザ素子およびその製造方法に関し、特に高温で動作する半導体レーザ素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
AlGaInP系材料の半導体レーザは高密度光ディスクシステム用光源として好適であり、実用に供せられている。さらに、書込み可能な光ディスクシステムに適用する場合や光ディスクシステムの高速化を図る場合には、光源の光出力を従来の数mWから数十mWまで大きくすることが必要である。
【0003】
図6は、従来のAlGaInP系半導体レーザ素子12の断面構造を示す。図6において、1はn型GaAs基板、2はn型GaAsバッファ層、3はn型(Alx2Ga1-x2)0.5In0.5Pクラッド層(x2は通常0.7)、4はアンドープMQW(多重量子井戸構造)層、5はp型(Alx2Ga1-x2)0.5In0.5Pクラッド層、6はIn0.5Ga0.5P中間層、7はp型GaAsコンタクト層、8はn型GaAs電流阻止層である。
【0004】
また、上記n型GaAs基板1およびp型GaAsコンタクト層7の外側には金属電極9あるいは金属電極10が積層されている。
【0005】
上記アンドープMQW層4は、通常は、活性層である1つまたは複数の(Alx1Ga1-x1)yIn1-yP量子井戸層(図示せず)(x1≦x2≦1)および複数の(Alx3Ga1-x3)0.5In0.5P光ガイド層(x1≦x3≦x2,x3は通常0.3)(図示せず)から構成されている。ここで、「y」は、量子井戸層を構成する結晶の格子定数が基板の格子定数と完全には一致せず、且つ、2%以上ずれない範囲であることが、発光効率および信頼性の点から望ましい。
【0006】
図6に示すAlGaInP系半導体レーザ素子12は、以下のようにして作成される。
【0007】
主面が(100)面または(100)面から[111]方向に5°〜20°程度傾いているn型GaAs基板1上に、通常のMOCVD(有機金属化学蒸着)法又はMBE(分子線エピタキシー)法を用いてn型GaAsバッファ層2、n型(Alx2Ga1-x2)0.5In0.5Pクラッド層3、アンドープMQW層4、p型(Alx2Ga1-x2)0.5In0.5Pクラッド層5、In0.5Ga0.5P中間層6、p型GaAsコンタクト層7の一部(n型GaAs電流阻止層8の上面の位置まで)を、順次成長する。
【0008】
次に、上述のようにして形成された積層体ウェハに対して、通常のホトリソグラフィ法を用いてp型(Alx2Ga1-x2)0.5In0.5Pクラッド層5の中間層まで部分的にエッチングを行い、エッチング領域間にリッヂ部11を形成する。このリッヂ部11は共振器方向に延在した構造を有する。
【0009】
尚、(100)面からずれているn型GaAs基板1を用いた場合には、図6に示すようにリッヂ部11の断面形状は非対称となるが、特性に影響は無い。また、エッチング深さを制御するために、p型(Alx2Ga1-x2)0.5In0.5Pクラッド層5の深さ方向中間位置にエッチングストップ層を設けてもよい。
【0010】
次に、選択成長技術によって、上記リッヂ部11上に選択マスク(図示せず)を形成し、リッヂ部11の両側にn型GaAs電流阻止層8を成長する。そして、最後に、上記選択マスクを除去し、全体をp型GaAsコンタクト層7で埋め込んでAlGaInP系半導体レーザ素子12が完成する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のAlGaInP系半導体レーザ素子12には、以下のような問題がある。すなわち、AlGaInP系半導体レーザの出力を大きくするためには、アンドープMQW層4を構成する活性層((Alx1Ga1-x1)yIn1-yP量子井戸層)内における電荷輸送体である電子およびホールの密度を高くすることが必要である。特に、質量の軽いホールの密度を高くすることが望ましい。そのために、クラッド層3,5のAl混晶比、好ましくはp型クラッド層5のAl混晶比を大きくして、上記活性層とクラッド層3,5とのエネルギーギャップ差を大きくすると共に、クラッド層3,5のキャリア濃度を高くして実効的なエネルギー障壁の高さを高くすることが重要であることが良く知られている。
【0012】
上記クラッド層3,5のキャリア濃度を高くするには、不純物原子のドープ量を(例えば1×1018cm-3以上まで)多くすればよい。ところが、クラッド層3,5はAl混晶比が大きいため、キャリア濃度は飽和してある程度以上の値にならないのである。この理由は、例えば、特開平6‐268324号公報に記載されているように、不純物原子と成長雰囲気から取り込まれた水素とが結合して、上記不純物原子を電気的に不活性にしてしまうためである。
【0013】
ところで、上述のような不純物原子と水素との結合を分離するためには、成長温度よりも十分高い温度で熱処理を行えばよい。光出力が7mW程度の通常の半導体レーザであれば、特に熱処理の必要は無い。ところが、書込み用等に用いられる光出力が10mW以上の高出力半導体レーザを得るには、長時間の熱処理を行う必要があることが分っている。しかしながら、熱処理時間を長くすると上記クラッド層3,5に大量にドープされた不純物原子が上記活性層に拡散し、活性層内に非発光再結合中心を形成したり、ひどい場合には活性層の量子井戸構造を破壊して発光効率を低下させることになる。その結果、発振閾値電流が高くなったり、信頼性が低下するという問題が発生する。
【0014】
従来、上記クラッド層3,5に大量にドープされた不純物原子の拡散を防止するために、上記活性層とクラッド層3,5との間にキャリア濃度の低い層を設ける方法が良く知られている(特開平5‐243674号公報、特開平6‐45698号公報、特許第2847702号公報等)。即ち、通常のMOCVD法で成長されたp型クラッド層5の不純物がZnである場合には、活性層とp型クラッド層5との間に形成する上記低キャリア濃度層の厚さを30nm〜200nmとすることが開示されている。さらに、n型クラッド層3の不純物がSeである場合には、活性層とn型クラッド層3との間に形成する上記低キャリア濃度層の厚さを100nm〜500nmとすることも開示されている。
【0015】
しかしながら、上記不純物は一般に拡散し易く、しかも結晶成長法がMOCVD法であるために成長温度が650℃〜750℃と高い。したがって、結晶成長中に拡散が起こっているものと考えられる。つまり、上記低キャリア濃度層は、結晶成長中の拡散を防止するのには有効な手段なのである。
【0016】
ところで、p型不純物としてのBeやn型不純物としてのSiのごとく、拡散の少ない不純物を用いた場合には、成長中に拡散は生じない。しかしながら、成長中に生じた上記拡散係数の小さい不純物原子と水素との結合を分離するために、成長温度よりも十分に高い温度で熱処理を行うと拡散が生じてしまうのである。この様子を図7に示す。図7は、不純物Beを1×1018cm-3の濃度でドープした(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層とInGaP層とを積層し、1気圧の窒素雰囲気中において700℃で2時間熱処理した後に、SIMS法(二次イオン質量分析法)によって不純物濃度の深さ方向の分布を調べたものである。図7から、不純物BeがInGaP層に50nm程度拡散していることが分かる。
【0017】
したがって、上記拡散係数の小さい不純物原子と水素との結合を分離して、不純物原子のドープ量を多くすることによってAlGaInP系半導体レーザ素子12の特性を良好に保つためには、MOCVD法の成長温度650℃〜750℃よりも十分高温での熱処理による上記不純物の拡散を防止する必要がある。ところが、このような高温での熱処理時における不純物の拡散を防止することは、上述した従来の技術も含めてこれまで開示されてはいない。
【0018】
そこで、この発明の目的は、クラッド層のキャリア濃度を高めると共に、クラッド層中の不純物の活性層への拡散を防止して、高温で大きな出力を得ることができる半導体レーザ素子を提供することにある。また、上記半導体レーザ素子の製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の半導体レーザ素子の製造方法は、基板上に活性層および高不純物濃度層をMBE法によって結晶成長して半導体積層体を形成する際に , 上記活性層と高不純物濃度層との間に不純物がドープされない領域を形成する工程と、上記半導体積層体を,上記MBE法による結晶成長温度より高温であって且つ上記半導体績層体の結晶構成原子が離脱しない温度で熱処理を行って , 上記高不純物濃度層中の不純物原子と結合した水素を分離する工程を備えて、上記不純物がドープされない領域を、上記熱処理を行う際に、上記活性層側に拡散する上記高不純物濃度層中の不純物原子を取り込んで上記活性層に拡散させないようにする緩衝領域として機能させることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、基板上に活性層および高不純物濃度層を結晶成長した半導体積層体が結晶成長温度より高温で熱処理されるので、結晶成長時に成長雰囲気から取り込まれて上記高不純物濃度層中の不純物原子と結合した水素が分離される。その結果、上記不純物原子のドープ量を多くでき、上記高不純物濃度層中のキャリア濃度を高くして大きな出力が得られる。その際に、上記熱処理温度は、上記半導体績層体の結晶構成原子が離脱しない温度であるため、上記半導体績層体が破壊されることは無い。
【0021】
さらに、上記高不純物濃度層中の不純物原子と結合した水素を分離するために上記熱処理を行う際に、上記活性層と高不純物濃度層との間に形成された不純物がドープされない領域が不純物拡散の緩衝領域となる。こうして、上記高不純物濃度層中の不純物原子が上記活性層まで拡散することが防止される。したがって、上記活性層内に非発光再結合中心が形成されたり、上記活性層の量子井戸構造が破壊されて発光効率が減少することはなく、発振閾値電流が低く、10mW以上の高出力での使用に対して高信頼性が得られる。
【0022】
また、この発明の半導体レーザ素子の製造方法は、上記半導体積層体をGaAs基板上にエピタキシャル成長された(AlxGa1-x)yIn1-yP系半導体積層体(0≦x≦1,0<y<1)で成すことが望ましい。
【0023】
上記構成によれば、上記不純物の活性化率が高く、したがって信頼性の高い半導体レーザ素子が得られる。
【0024】
また、この発明の半導体レーザ素子の製造方法は、上記結晶成長温度を400℃以上且つ600℃以下とし、上記結晶構成原子が離脱しない熱処理温度を700℃以上且つ750℃以下とすることが望ましい。
【0025】
上記構成によれば、上記高不純物濃度層中の不純物原子と結合した水素を分離するために行われる上記熱処理が、MBE法による結晶成長温度400℃以上且つ600℃以下よりも十分高く、上記結晶構成原子が離脱しない温度である700℃以上且つ750℃以下で行われる。したがって、発振閾値電流が低く、10mW以上の高い出力での使用に対して信頼性の高い半導体レーザが得られる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
<第1実施の形態>
図1は、本実施の形態のAlGaInP系半導体レーザ素子における縦断面図である。
【0027】
本実施の形態のAlGaInP系半導体レーザ素子33は、図6に示す従来のAlGaInP系半導体レーザ素子12と略同じ構成を有している。但し、クラッド層のAl混晶比は0.7であり、活性層のAl混晶比は0である。
【0028】
すなわち、図1において、21はn型GaAs基板、22はn型GaAsバッファ層、23はn型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層、24はアンドープMQW層、25はp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層、26はIn0.5Ga0.5P中間層、27はp型GaAsコンタクト層、28はn型のGaAs電流阻止層である。また、n型GaAs基板21およびp型GaAsコンタクト層27の外側には、金属電極29あるいは金属電極30が積層されている。
【0029】
尚、アンドープMQW層24は、活性層である1つあるいは複数のGayIn1-yP量子井戸層(図示せず)から構成されている。
【0030】
本実施の形態においては、上記p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層25におけるアンドープMQW層(活性層)24との境界領域に、傾斜不純物濃度領域32を形成している。図2は、クラッド層23,25および活性層24等を構成する(AlxGa1-x)yIn1-yP系半導体結晶のAl混晶比と、傾斜不純物濃度領域32における不純物濃度分布とを示している。図2において、横軸はn型GaAs基板21からの距離であり、縦軸は上記Al混晶比xまたは不純物濃度である。また、上記不純物濃度分布は破線Aで示し、上記Al混晶比は実線Bで示している。尚、上記不純物濃度分布に対する縦軸は対数表示である。簡単のため、図2においては、活性層24である量子井戸層は1層であるとしているが、複数層であっても構わない。上記量子井戸層が複数層である場合には、図2に示す量子井戸層はp型クラッド層25に最も近い量子井戸層であると考えればよい。
【0031】
上述のごとく、本実施の形態におけるAlGaInP系半導体レーザ素子33においては、p型クラッド層25における活性層24との境界領域に傾斜不純物濃度領域32を設けている。その場合における傾斜不純物濃度領域32の望ましい不純物分布を図2(a)に示す。図2(a)においては、p型クラッド層25内部から活性層24に向って上記不純物濃度が滑らかに減少している。これに対して、図2(b)においては、上記不純物濃度が傾斜不純物濃度領域32と活性層24との界面で不連続に変化している。これは、傾斜不純物濃度領域32に不純物を添加して成長した場合に良く発生する。また、図4(c)においては、上記不純物濃度が傾斜不純物濃度領域32と活性層24との界面で不連続に変化し、活性層24内で再び増加している。このような場合には、発光効率の低下が見られる。
【0032】
上記アンドープMQW層24は、活性層である量子井戸層の両側に光ガイド層を設けて構成しても差し支えない。その場合におけるクラッド層23,25およびアンドープMQW層24のAl混晶比と傾斜不純物濃度領域32における不純物濃度分布とは、図3に示すようになる。この場合における傾斜不純物濃度領域35はp型クラッド層25側の光ガイド層24cからp型クラッド層25に掛けて形成すればよい。尚、その場合に、上記量子井戸層は複数設けても差し支えない。
【0033】
本実施の形態におけるAlGaInP系半導体レーザ素子33は、以下のようにして作成される。主面が(100)面あるいは(100)面から[111]方向に5°〜20°程度傾いているn型GaAs基板21上に、通常のMBE法を用いてn型GaAsバッファ層22、n型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層23、アンドープMQW層24、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層25、In0.5Ga0.5P中間層26、p型GaAsコンタクト層27の一部(n型GaAs電流阻止層28の上面の位置まで)を、順次成長する。
【0034】
その場合に、上記アンドープMQW層24の成長開始からp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層25の成長の途中(傾斜不純物濃度領域32終了位置)までp型不純物のドープを停止する。こうして、不純物のドープを停止した状態で傾斜不純物濃度領域32の厚さ分だけp型クラッド層25を成長する。その後、p型不純物のドープを開始してp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層25の成長を継続するのである。その場合のp型不純物はBeであり、不純物濃度は1×1018cm-3である。
【0035】
次に、この積層体ウェハを熱処理して、結晶成長時に成長雰囲気から取り込まれて結晶中のp型不純物原子Beと結合した水素を分離するために、加熱炉に入れる。その際に、上記加熱炉内を一旦真空引きして水分や水素を十分に排気した後、加熱炉内に窒素ガスを充填する。こうすることによって、上記加熱炉内部の水素の分圧を十分低くすることができ、p型不純物原子Beと水素との結合を回避するのに効果がある。次に、上記加熱炉を700℃まで昇温して績層体ウェハを熱処理する。その際における熱処理時間は、昇温,降温時間を除いて120分である。
【0036】
その場合に、上記p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層25におけるアンドープMQW層(活性層)24との境界領域には、上述のようにp型不純物がドープされない領域32が形成されている。そして、この領域32は、上記700℃での熱処理に際しては不純物拡散の緩衝領域となる。したがって、上記熱処理後における領域32を含むp型クラッド層25及び活性層24の不純物濃度分布は、図2(a)に示すように、p型クラッド層25内部から活性層24に向って滑らかに減少する分布になり(その結果、領域32は傾斜不純物濃度領域となる)、p型不純物原子は活性層24まで拡散しないのである。
【0037】
その結果、上記活性層24内に非発光再結合中心が形成されたり、活性層24の量子井戸構造が破壊されることによって、発光効率が減少することが防止される。したがって、発振閾値電流が低く、10mW以上の高い出力で使用しても高信頼性が得られるのである。
【0038】
最後に、上述のようにしてp型GaAsコンタクト層27の一部まで形成された積層体ウェハに対して、通常のホトリソグラフィ法を用いてp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層25の中間層まで部分的にエッチングを行い、エッチング領域間にリッヂ部31を形成する。このリッヂ部31は共振器方向に延在した構造を有する。
【0039】
尚、(100)面からずれているn型GaAs基板21を用いた場合には、リッヂ部31の断面形状は非対称となるが、特性に影響は無い。また、エッチング深さを制御するために、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層25の深さ方向中間位置にエッチングストップ層を設けてもよい。
【0040】
次に、選択成長技術によって、上記リッヂ部31上に選択マスク(図示せず)を形成し、リッヂ部31の両側にn型GaAs電流阻止層28を成長する。そして、最後に、上記選択マスクを除去し、全体をp型GaAsコンタクト層27で埋め込んでAlGaInP系半導体レーザ素子33が完成する。
【0041】
ここで、本実施の形態におけるAlGaInP系半導体レーザ素子33の結晶成長にMBE法を用いる理由を説明する。
【0042】
通常、半導体レーザや発光ダイオード等に用いられる良質のInGaAlP系化合物半導体結晶薄膜はMOCVD法あるいはMBE法によって作成される。上記MOCVD法においては、有機金属を運ぶキャリアガスとして水素を用いることが一般的である。また、上記有機金属自体がトリメチルガリウム(Ga(CH3)3)やジメチルジンク(Zn(CH3)3)等の水素化合物である。したがって、有機金属分子を分離するために、成長温度を650℃〜750℃とMBE法の場合に比べて高くする必要がある。これに対して、上記MBE法の場合には、成長温度は400℃〜600℃、より好ましくは450℃〜550℃である。
【0043】
この成長温度は非常に重要である。すなわち、上述したごとく、結晶中に取り込まれて不純物原子と結合した水素を分離するために成長温度より高温で熱処理を行う必要がある。ところが、熱処理温度を高くし過ぎると、結晶構成原子であるリン(P)原子が結晶から抜けてしまう。このような条件から熱処理温度は1気圧の窒素中では750℃が上限と考えられる。即ち、上記MOCVD法で成長した結晶では、十分な温度で水素を分離することができないことになる。
【0044】
ところで、上記MBE法でも結晶中に水素が入る現象が見られる。この原因は以下のように考えられる。 すなわち、MBE法においては分子線が発生する10-9Pa程度の真空雰囲気中で成長を行う。そして、このような高真空を生成するために用いられるイオンポンプ,ターボポンプ,ターボ分子ポンプ,クライオポンプといった排気ポンプは、その特性上水素が最も排気し難い。一方、材料原子も10-7Pa程度しか用いないので、結晶成長雰囲気における水素原子の割合はそれ程低くはならない。その結果、MBE法によって成長した半導体結晶にはかなりの量の水素が含まれるのである。
【0045】
尚、上記熱処理をより高い圧力で、特にリン雰囲気中で実施すれば、結晶成長温度も高くすることができることは言うまでもない。
【0046】
上述のように形成されたAlGaInP系半導体積層体ウェハをチップに分割して個々の半導体レーザ素子33とし、その特性を測定した結果を図4に示す。縦軸は80℃で光出力10mWを得るための発振閾値電流の値であり、横軸は傾斜不純物濃度領域32の厚さである。図中1つの点が1つの半導体レーザ素子33に対応している。尚、上記電流値が低い程特性が良いことを表している。また、上記電流値が低い方が概ね信頼性も良く、長時間の使用に対して光出力の低下は少ない。但し、図4は、p型クラッド層25にのみ傾斜不純物領域32を設けた場合の結果であり、傾斜不純物領域32の厚さが5nmよりも薄くなると電流値が増加することが分かる。したがって、傾斜不純物領域32の厚さとしては5nm以上が必要である。
【0047】
上述のように、本実施の形態においては、主面が(100)面あるいは(100)面から[111]方向に5°〜20°程度傾いているn型GaAs基板21上に、上記n型GaAsバッファ層22、n型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層23、アンドープMQW層24、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層25、In0.5Ga0.5P中間層26、p型GaAsコンタクト層27の一部(n型GaAs電流阻止層28の上面の位置まで)を、MBE法で順次成長する。
【0048】
そして、この積層体ウェハを、水分や水素を窒素ガスで置換した加熱炉内で700℃で120分間熱処理して、結晶成長時に成長雰囲気からで取り込まれて結晶中のp型不純物原子と結合した水素を分離する。
【0049】
次に、ホトリソグラフィ法を用いてp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層25の中間層まで部分的にエッチングを行って、エッチング領域間にリッヂ部31を形成する。さらに、リッヂ部31の両側にn型GaAs電流阻止層28を成長し、全体をp型GaAsコンタクト層27で埋め込んでAlGaInP系半導体レーザ素子33を形成するようにしている。
【0050】
このように、本実施の形態においては、MBE法で結晶成長を行っている。したがって、その場合の成長温度は450℃〜600℃であればよく、成長温度よりも十分高い温度が必要である上記熱処理温度を、結晶からリン原子が抜けない温度700℃に設定できるのである。こうして、効果的にp型不純物原子と結合した水素を分離することができ、p型クラッド層25の不純物原子のドープ量を多くしてキャリア濃度を高くして、高温で大きな出力を得ることができるのである。
【0051】
また、本実施の形態においては、上記p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層25の成長に際して、アンドープMQW層24の成長開始からp型クラッド層25の成長の途中までp型不純物のドープを停止し、その後p型不純物のドープを開始してp型クラッド層25の成長を継続するようにしている。こうして、p型クラッド層25における活性層24側に不純物がドープされない領域32を形成するのである。したがって、上記700℃での熱処理に際して、領域32は不純物拡散の緩衝領域となり、上記熱処理によってp型不純物原子は活性層24まで拡散しないのである。
【0052】
したがって、上記活性層24内に非発光再結合中心が形成されたり、活性層24の量子井戸構造が破壊されることによって、発光効率が減少することを防止できる。その結果、発振閾値電流が低く、10mW以上の高い出力での使用が可能になる。
【0053】
<第2実施の形態>
本実施の形態のAlGaInP系半導体レーザ素子は、図1に示す第1実施の形態におけるAlGaInP系半導体レーザ素子33と略同じ構成を有している。但し、本実施の形態においては、傾斜不純物濃度領域をn型クラッド層におけるアンドープMQW層(活性層)との境界領域に形成している。尚、縦断面構造は、特に図示してはいない。
【0054】
図5は、本実施の形態におけるAlGaInP系半導体レーザ素子によって80℃で光出力10mWを得るための電流(発振閾値電流)値と上記傾斜不純物濃度領域の厚さとの関係を示す。図4の場合と同様に、1つの点が1つの半導体レーザ素子に対応している。
【0055】
図5によれば、上記傾斜不純物濃度領域の厚さが100nmまでは、発振閾値電流の顕著な増加は見られない。しかしながら、上記n型クラッド層に不純物をドープしない領域を設けるものの熱処理を行わず、上記傾斜不純物濃度領域が形成されないようにした場合(図示せず)には、上記不純物をドープしない領域の厚さが100nmを越えると発振閾値電流の増加が見られた。これはn型クラッド層と活性層との間に100nmより広い不純物をドープしない領域が存在するためにn型クラッド層と活性層とが遠くなり過ぎたことによって、電荷を運ぶ電子あるいはホールの活性層への閉じ込めが悪くなるためであると考えられる。
【0056】
すなわち、第1実施の形態も含めてこの発明の半導体レーザ素子においては、不純物原子と結合した水素を分離するための熱処理による不純物の活性層内への拡散を防ぐためには、上記傾斜不純物領域を厚くすることが望ましい。しかしながら、第1実施の形態のごとく上記p型クラッド層25における傾斜不純物領域32は厚さが5nmよりも薄くなると発振閾値電流値が増加すること、第2実施の形態のごとく上記n型クラッド層における傾斜不純物領域は厚さが100nmを超えると電荷を運ぶ電子またはホールの活性層への閉じ込めができないことから、上記傾斜不純物領域の厚さは、5nm以上且つ100nm以下である必要がある。
【0057】
そうすることによって、上記活性層とp型クラッド層とのエネルギー障壁を実質的に低下させないので電荷を運ぶ電子やホールを活性層内に効率よく閉じ込めることができ、より発振閾値電流が低く、信頼性の高い半導体レーザ素子を実現できるのである。
【0058】
尚、上記実施の形態においては、結晶成長時に不純物原子と結合した水素を分離するための熱処理温度を700℃としているが、上記MBE法による成長温度400℃〜600℃より十分に高い温度であって、且つ、半導体積層体の結晶構成原子が抜けない温度であればよく、700℃〜750℃であれば特に限定するものではない。
【0059】
【発明の効果】
以上より明らかなように、この発明の半導体レーザ素子の製造方法は、基板上に活性層および高不純物濃度層をMBE法によって結晶成長して形成した半導体積層体を、MBE法による結晶成長温度より高温であって且つ結晶構成原子が離脱しない温度で熱処理するので、結晶成長時に上記高不純物濃度層中の不純物原子と結合した水素を分離させることができる。したがって、上記不純物原子のドープ量を多くして上記高不純物濃度層中のキャリア濃度を高め、大きな出力を得ることができる。その際に、上記熱処理温度は、上記半導体績層体の結晶構成原子が離脱しない温度であるため、上記半導体績層体が破壊されることはない。
【0060】
さらに、上記活性層と高不純物濃度層との間に不純物がドープされない領域を形成するので、上記熱処理を行う際に、上記不純物がドープされない領域を不純物拡散の緩衝領域として、上記高不純物濃度層中の不純物原子が上記活性層まで拡散するのを防止できる。したがって、上記活性層内に非発光再結合中心が形成されたり、上記活性層の量子井戸構造が破壊されて発光効率が減少することを防止して、発振閾値電流を低くし、10mW以上の高出力での使用に対して高信頼性を得ることができる。
【0061】
また、この発明の半導体レーザ素子の製造方法は、上記半導体積層体をGaAs基板上にエピタキシャル成長された(AlxGa1-x)yIn1-yP系半導体積層体(0≦x≦1,0<y<1)で成せば、上記不純物の活性化率が高く、信頼性の高い半導体レーザ素子を得ることができる。
【0062】
また、この発明の半導体レーザ素子の製造方法は、上記結晶成長温度を400℃以上且つ600℃以下とし、上記結晶構成原子が離脱しない熱処理温度を700℃以上且つ750℃以下とすれば、上記熱処理を、MBE法による結晶成長温度(400℃以上且つ600℃以下)よりも十分高く、上記結晶構成原子が離脱しない温度(700℃以上且つ750℃以下)で行うことができる。したがって、発振閾値電流が低く、10mW以上の高い出力での使用に対して信頼性の高い半導体レーザを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のAlGaInP系半導体レーザ素子における縦断面図である。
【図2】図におけるクラッド層および活性層のAl混晶比と傾斜不純物濃度領域の不純物濃度分布とを示す図である。
【図3】図1におけるアンドープMQW層に光ガイド層を設けた場合のクラッド層および活性層のAl混晶比と傾斜不純物濃度領域の不純物濃度分布とを示す図である。
【図4】図1に示すAlGaInP系半導体レーザ素子の発振閾値電流値とp型クラッド層に形成した傾斜不純物濃度領域の厚さとの関係を示す図である。
【図5】AlGaInP系半導体レーザ素子の発振閾値電流値とn型クラッド層に形成した傾斜不純物濃度領域の厚さとの関係を示す図である。
【図6】従来のAlGaInP系半導体レーザ素子の縦断面図である。
【図7】熱処理によって不純物が拡散した状態を示す不純物濃度の深さ方向の分布を示す図である。
【符号の説明】
21…n型GaAs基板、
22…n型GaAsバッファ層、
23…n型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層、
24…アンドープMQW層、
25…p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層、
26…In0.5Ga0.5P中間層、
27…p型GaAsコンタクト層、
28…n型GaAs電流阻止層、
29,30…金属電極、
31…リッヂ部、
32,35…傾斜不純物濃度領域、
33…AlGaInP系半導体レーザ素子。
Claims (3)
- 基板上に活性層および高不純物濃度層を分子線エピタキシー法によって結晶成長して半導体積層体を形成する際に、上記活性層と高不純物濃度層との間に不純物がドープされない領域を形成する工程と、
上記半導体積層体を、上記分子線エピタキシー法による結晶成長温度より高温であって且つ上記半導体績層体の結晶構成原子が離脱しない温度で熱処理を行って、上記高不純物濃度層中の不純物原子と結合した水素を分離する工程
を備えて、
上記不純物がドープされない領域を、上記熱処理を行う際に、上記活性層側に拡散する上記高不純物濃度層中の不純物原子を取り込んで上記活性層に拡散させないようにする緩衝領域として機能させることを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。 - 請求項1に記載の半導体レーザ素子の製造方法において、
上記半導体積層体はG a A s 基板上にエピタキシャル成長された ( A l x G a 1-x ) y I n 1-y P系半導体積層体 ( 0≦x≦1 , 0<y<1 )であることを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。 - 請求項1に記載の半導体レーザ素子の製造方法において、
上記結晶成長温度は400℃以上且つ600℃以下であり、
上記結晶構成原子が離脱しない熱処理温度は700℃以上且つ750℃以下であることを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
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