JP3600365B2 - 連続自動肉盛溶接装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば潜水艦のような船舶その他各種の構造物が備える貫通金物、つまり、厚み方向に貫通孔を有した金物に対して、その貫通孔の耐食性向上等のために貫通孔回りにステンレス鋼等の肉盛溶接を施す連続自動肉盛溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
貫通金物を固定し、その貫通孔回りに、溶接ワイヤが供給される溶接トーチを動かして、貫通孔回りに肉盛溶接をする溶接装置は、溶接トーチとともに移動される各種の配管や配線の類の処理が面倒であり、機構が複雑とならざるを得ず、また、移動に必要なスペースも多く必要とする等の問題があるので、溶接トーチを基準として貫通金物を回転させて肉盛溶接を行う溶接装置の方が優れている。
【0003】
この種のものとして特公平3−16224号公報に記載の発明が知られている。この従来技術は、固定用チャックで円筒状被溶接物(貫通金物)が固定される回転ポジショナーと、ブームに支持され、かつ、ピッチ送り装置で円筒状被溶接物の直径方向に一定ピッチで移動できるTIG溶接トーチとから成るTIG自動肉盛連続溶接装置である。
【0004】
この溶接装置は、円筒状被溶接物の端面全周をTIG溶接トーチで溶接した後、前記トーチを被溶接物の直径方向に一定ピッチ移動して、更に全周を溶接する作業を順次行うものである。こうして1パス毎にトーチ位置を貫通孔の径方向にシフトして連続的に1層を溶接するので、回転ポジショナーの回転速度を制御することなく、前記端面全面を連続して自動的に肉盛溶接することができる。それにより、例えば潜水艦の耐圧タンク、昇降筒、脱出筒、圧力容器等の被溶接物の貫通孔回りへの肉盛溶接を可能にしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、回転ポジショナーは、その上に直接固定された貫通金物を回転させて、その溶接位置を溶接トーチに対して連続的に移動させるものであるから、前記従来の肉盛溶接装置は、貫通金物の貫通孔が円形の場合に適している。
【0006】
しかし、貫通金物の貫通孔が円形でない場合、つまり、互いに平行な直線孔縁の一端間および他端間を夫々反対向きの半円孔縁で連続させてなるレーストラック形の貫通孔については、前記回転ポジショナーの動作だけで、溶接トーチに対してレーストラック形の貫通孔の全周を順次移動させて位置合わせすることはできないから、こうした形状の貫通孔を有した貫通金物についての連続自動肉盛溶接はできない。
【0007】
そのため、現状ではレーストラック形の貫通孔を有した貫通金物に対して、その貫通孔回りに肉盛溶接をするには、手作業により行わざるを得ない。したがって、その溶接には多大な手間を要している。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、円形またはレーストラック形の貫通孔を有した貫通金物に対する肉盛溶接を自動化できる連続自動肉盛溶接装置を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、回転ポジショナーと、このポジショナー上に搭載された回転側スリップリングおよびこのスリップリングの周囲に配置された固定側スリップリングを備えるスリップリング機構と、前記回転側スリップリング上に搭載されて前記スリップリング機構を介して供給される動作媒体により動作される直線往復動機構と、この直線往復動機構上に搭載され、かつ、互いに平行な直線孔縁の一端間および他端間を夫々反対向きの半円孔縁で連続させてなるレーストラック形または円形の貫通孔を有した貫通金物が着脱自在に固定される金物ホルダと、前記貫通金物の貫通孔回りにその上方から肉盛溶接をする溶接トーチと、この溶接トーチを上下動させるとともに前記貫通孔の径方向に移動させるマニピュレータとを具備したものである。
【0010】
請求項1の発明において、回転ポジショナーは、その上に搭載された回転側スリップリング、直線往復動機構、および金物ホルダを同時に回転させ、それにより金物ホルダに固定された貫通金物が有した貫通孔の半円孔縁回りを溶接トーチに対して順次移動させて位置合わせする。直線往復動機構はその上の金物ホルダを直線往復運動させ、それにより、前記貫通孔の直線孔縁回りを溶接トーチに対して順次移動させて位置合わせする。スリップリング機構は回転ポジショナーによる回転に拘らず、直線往復動機構にこれを動作させる動作媒体を供給し、水ホース等の捩じれを防止する。前記貫通孔回りにその上方から肉盛溶接をする溶接トーチはマニピュレータに支持され、このマニピュレータは溶接トーチを上下動させるとともに貫通孔の径方向に移動させて、溶接トーチの位置を上方向および貫通孔の径方向に順次シフトさせる。
【0011】
そのため、この連続自動肉盛溶接装置は、回転ポジショナーによる貫通金物の回転移動にしたがって貫通孔の半円孔縁回りに溶接トーチによる自動的な肉盛溶接をすることができ、直線往復動機構により貫通金物の直線移動にしたがって貫通孔の直線孔縁回りに溶接トーチによる自動的な肉盛をすることができるから、これらの組み合わせによりレーストラック形貫通孔回りに対して連続して肉盛溶接を施すことができる。しかも、マニピュレータによる溶接トーチの位置を径方向に順次シフトさせることで所望とする肉盛ビード幅に亘り肉盛溶接をすることができ、かつ、溶接トーチの位置を上方向に順次シフトすることにより、所望とする肉盛厚さに達するまで複数層に亘り肉盛溶接をすることができる。したがって、この連続自動肉盛溶接装置によりレーストラック形貫通孔回りに対して所望とする幅および厚さの肉盛溶接を施すことができる。
【0012】
また、この連続自動肉盛溶接装置において、その直線往復動機構を動作させずに用いる場合には、金物ホルダに固定された貫通金物は回転ポジショナーにより回転されるだけであり、その途中で直線往復運動をすることがないから、回転ポジショナーによる貫通金物の回転とマニピュレータによる溶接トーチの前記径方向および上方向のシフトとの組合わせにより、円形の貫通孔回りに対する肉盛溶接を自動的に連続して施すことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図6を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。
第1の実施形態に係る連続自動肉盛溶接装置の構成を示す図1(A)(B)〜図3(A)(B)中1は長方形のベースであり、この上面には回転ポジショナー2が固定されている。回転ポジショナー2は、ターンテーブル2aと、このテーブル2aの下方に配置されてターンテーブル2aを回転させるテーブル駆動手段を内蔵した回転ポジショナー本体2bとを有している。なお、回転ポジショナー本体2bには、ターンテーブル2aの回転角を検出する回転角検出手段、およびこの手段の検出信号にしたがって前記テーブル駆動手段の動作を制御する制御装置、およびターンテーブル2aをその不用意な回転を防止して任意回転位置で固定するブレーキ手段等も内蔵されている。
【0014】
ターンテーブル2a上にはスリップリング機構3の回転側スリップリング3aが水平な姿勢で搭載されている。スリップリング機構3は、回転側スリップリング3aと、このリング3aの周囲に配置された固定側スリップリング3bとを備え、固定側スリップリング3bは支え部材4を介してベース1上に支持されている。固定側スリップリング3bには電線ケーブル5および水ホース6等が接続されており、これらは回転側スリップリング3aの上部(固定側スリップリング3bの上面より上位置に位置されている。)外面に連結された電線ケーブル7および水ホース8にスリップリング機構3を介して電気的に接続されまたは連通されている。
【0015】
スリップリング機構3は、後述の直線往復動機構に対する動作媒体としての電気の供給を中継するとともに、冷却水の循環を中継するものであり、そのためのケーブルや水ホース等が回転ポジショナー2による回転に伴って捩じれないようにして、後述する貫通金物をその肉盛溶接に必要とされる回数の連続回転を可能とするために用いられている。なお、後述の直線往復動機構が電気エネルギーではなく、空気や水等の流体のエネルギーを用いて動作されるものである場合には、動作媒体として空気や水等の流体が使用される。
【0016】
回転側スリップリング3a上には直線往復動機構として例えば電動スライド9が水平な姿勢で搭載されている。このスライド9は、回転側スリップリング3aの上面に固定されたガイドフレーム9aと、このフレーム9aにガイドされてその内側に直線往復動自在に設けられたスライダ9bと、ガイドフレーム9aの一端部外面に取付けられた正逆回転可能なパルスモータ等からなる駆動モータ9cとを有しており、このモータ9cの運転に伴って図示しないリードスクリュー等の送り手段を介してスライダ9bが移動されるように構成されている。ガイドフレーム9aの外形は長方形であり、その長手方向一端部に駆動モータ9cが固定されている。駆動モータ9cには前記電線ケーブル7が接続されている。スライダ9bはガイドフレーム9aの上面より上方に突出されている。
【0017】
スライダ9b上には金物ホルダ10が水平な姿勢で搭載されている。このホルダ10は上面および両端が夫々開放された凹溝構造をなしている。さらに金物ホルダ10は、その側壁の内側に、これら側壁を貫通した夫々複数の締め付けねじ11によって進退される固定パッド10aを有している。また、この金物ホルダ10は冷却板を兼ねており、その内部には図示しないが冷却水循環通路が設けられている。この冷却水循環通路の入口と出口とには夫々前記水ホース8が接続されている。
【0018】
金物ホルダ10上には貫通金物12が着脱自在に固定されるようになっている。貫通金物12は、例えば幅 500mm、長さ1000mm、厚さ 100mmの平板であり、その厚み方向に貫通する円形またはレーストラック形の貫通孔12aを有している。図示されるレーストラック形の貫通孔12aは、図4および図5等に示されるように互いに平行な直線孔縁12a1の一端間および他端間を夫々反対向きの半円孔縁12a2で連続させてなる略長円形状をなしている。この貫通金物12は、金物ホルダ10内に水平な姿勢で収められ、その両側縁に前記締め付けねじ11の締め付けにより当接される固定パッド10a間に挟まれて金物ホルダ10に固定され、また、締め付けねじ11を緩めて前記挟持を解除することにより金物ホルダ10上から取外し得るようになっている。
【0019】
前記ベース1上には支柱13が立設され、その上端部には、マニピュレータ14が取付けられている。このマニピュレータ14は、支柱13から金物ホルダ10上に向けて水平に突設されたブーム14aと、このブーム14aの先端面に沿ってブーム14aの幅方向、言い換えれば、金物ホルダ10に固定された貫通金物12の貫通口12aの径方向に水平移動可能に取付けられた水平スライダ14bと、スライダ14bの側面に上下動可能に取付けられた上下スライダ14cとを有している。このマニピュレータ14の各スライダ14b、14cは夫々に内蔵された図示しない電動式駆動機構により動作されるようになっている。
【0020】
上下スライダ14cには溶接トーチ15が下向きに固定されている。このトーチ15には、TIG(タングステンイナートガスアーク)溶接或いはプラズマアーク溶接を行う溶接トーチが採用される。この第1の実施の形態で採用したTIG溶接を行う溶接トーチ15は、設定したアーク電圧を一定に保持できるように自動制御する機能を有している。
【0021】
支柱13の上端には溶接ワイヤ供給装置16が取付けられている。この供給装置16はパイプ状の溶接ワイヤガイド16aを有している。このガイド16aは、その先端部を溶接トーチ15の下端に近接して配置し、送り出されるステンレス鋼線等からなる溶接ワイヤ17を案内して溶接トーチ15から吹き出されるアーク内に略横方向から供給するようになっている。
【0022】
次に、前記構成の連続自動肉盛溶接装置によりレーストラック形貫通孔12aを有した貫通金物12に肉盛溶接する手順を説明する。
まず、ホームポジションに位置する金物ホルダ10に貫通金物12を水平な姿勢に配置し締め付けねじ11の締め付けにより固定した後、電動スライド9を動作させて金物ホルダ10とともに貫通金物12を図1、図2中右または左方向に移動させて、貫通孔12aの一方の半円孔縁12a2の中心Cを、回転ポジショナー2の回転中心Dに合わせる。それによって、貫通金物12の上方において既に上下方向および水平方向の原点位置に配置されている溶接トーチ15の直下に、貫通孔12の前記一方の半円孔縁12a2とその一端に連続した一方の直線孔縁121aとが連続する点が位置決めして配置される。この状態は図2に示されている。
【0023】
こうしたセット状態で連続自動肉盛溶接を実施する。
イ)この溶接は、溶接トーチ15を動作させてその直下に向けてアークを発生させるとともに、溶接ワイヤ供給装置16を動作させて前記アークに向けて溶接ワイヤ17を連続的に供給して行われ、そして、この場合に、回転ポジショナー2が動作されて回転側スリップリング3a、電動スライド9、金物ホルダ10とともに貫通金物12を図中時計回りに回転させる。この回転は 180゜に達すると停止する。この回転の途中の状態は図3に示される。そうすると、前記一方の半円孔縁12a2回りに対して第1層の第1溶接パスP1a(図4〜図6参照)が自動的に肉盛溶接される。
【0024】
ロ)そして、貫通金物12の前記 180゜の回転完了に連続して電動スライド9を動作させて、金物ホルダ10とともに貫通金物12を、その貫通孔12aの直線部12a1の長さE分だけ移動させる。こうして移動された状態は図1に示されている。このような電動スライド9の往動動作に従い貫通孔12の前記一方の直線孔縁12a1回りに対して第1層の第1溶接パスP1aが連続して自動的に肉盛溶接される。
【0025】
ハ)この後、前記長さEの移動完了に連続して再び回転ポジショナー2が動作されて貫通金物12が図1中時計回りに回転される。この回転は 180゜に達すると停止する。それにより、貫通孔12aの他方の半円孔縁12a2回りに対して第1層の第1溶接パスP1aが自動的に肉盛溶接される。
【0026】
ニ)次に、前記2回目の 180゜の回転完了に連続して電動スライド9を動作させて、金物ホルダ10とともに貫通金物12を、その貫通孔12aの直線部12a1の長さE分だけ前記と反対方向に移動させる。こうして移動された状態は図2と同様である。このような電動スライド9の復動動作に従い貫通孔12の前記他方の直線孔縁12a1回りに対して第1層の第1溶接パスP1aが連続して自動的に肉盛溶接される。
【0027】
このとき、この他方の直線孔縁12a1回りへの肉盛溶接が終了する直前、例えば10数mmになった時点において、マニピュレータ14の水平スライダ14cが動作されて、溶接トーチ15を溶接パスの1ピッチ分例えば貫通孔12の径方向外側に移動させる。こうした電動スライド9の送り方向とは直角方向に溶接トーチ15を移動させる水平スライダ14による径方向へのシフト動作により、形成される肉盛溶接の態様は、図4および図5中長さ範囲Fにおいて示され、少し斜めに肉盛される。
【0028】
こうして第1層の第1溶接パスP1aがレーストラック形の貫通孔12回りに一回り連続して自動的に肉盛溶接される。
この後、前記イ)〜ニ)の工程を繰り返して第1層の第2溶接パスP1b を、前記第1溶接パスP1aに沿って例えば外側に設け、以後必要な数の溶接パスP1nを順次形成して、第1層の連続自動肉盛溶接を行う。こうした連続自動肉盛溶接により形成された第1層の肉盛ビードP1は図4に示されている。
【0029】
そして、設定された肉盛ビード幅Gの肉盛ビードP1が形成されると、その時点で一旦溶接動作を中断し、この中断時期においてマニピュレータ14の上下スライダ14cを動作させて溶接トーチ15を第1層の溶接パスの肉盛厚みに応じて上方に移動させる。
【0030】
次に、こうして溶接トーチ15を上方向に1ピッチ分シフトさせた状態で、再び前記イ)〜ニ)の工程を所定回数繰り返して第2層の溶接パスP2a、P2b…P2nを肉盛溶接により形成する。この場合、第1層の溶接パスP1a、P1b…P1nを形成する径方向へのシフト動作とは逆方向に、したがって、この第1の実施の形態では径方向内側に向けて径方向シフトを行わせる。図6中矢印H、Iは径方向シフトの方向を示している。なお、必要がある場合には以上の径方向および上方向のシフトが繰り返され、それによって、所定の肉盛厚さJになるまで肉盛ビード層が積み重ねられる。
【0031】
以上のようにしてレーストラック形の貫通孔12回りに所定の肉盛ビード幅Gと所定の肉盛厚さJとを有した肉盛溶接を、自動的に連続して施すことができる。この肉盛溶接により貫通孔12回りの耐食性、又は耐摩耗性、或いは強度等を向上できる。
【0032】
また、レーストラック形ではなく円形の貫通孔を有した貫通金物に対して肉盛溶接をするには、まず、ホームポジションに位置する金物ホルダ10に貫通金物(図示しない)を水平な姿勢に配置し締め付けねじ11の締め付けにより固定した後、電動スライド9を動作させて金物ホルダ10とともに貫通金物を図1、図2中右または左方向に移動させて、円形の貫通孔の中心Cを、回転ポジショナー2の回転中心Dに合わせる。それによって、貫通金物の上方において既に上下方向および水平方向の原点位置に配置されている溶接トーチ15の直下に、円形の貫通孔12の孔縁が位置決めして配置される。なお、電動スライド9は以後動作しないように保持される。
【0033】
こうしたセット状態で連続自動肉盛溶接を実施する。
ホ)この溶接は、溶接トーチ15を動作させてその直下に向けてアークを発生させるとともに、溶接ワイヤ供給装置16を動作させて前記アークに向けて溶接ワイヤ17を連続的に供給して行われ、そして、この場合に、回転ポジショナー2が動作されて回転側スリップリング3a、電動スライド9、金物ホルダ10とともに貫通金物を図1、図2中時計回りに回転させる。それにより、円形状に連続する第1層の第1溶接パスが自動的に肉盛溶接される。
【0034】
このとき、前記第1層の第1溶接パスを形成する一回りの肉盛溶接が終了する直前、例えば10数mmになった時点において、マニピュレータ14の水平スライダ14cが動作されて、溶接トーチ15を溶接パスの1ピッチ分例えば貫通孔12の径方向外側に移動させる。こうした径方向へのシフト動作により形成される肉盛溶接部分は少し斜めに肉盛される。
【0035】
ヘ)この後、前記ホ)の工程を繰り返して第1層の第2溶接パスを、前記第1溶接パスに沿って例えば外側に設け、以後必要な数の溶接パス順次形成して、第1層の連続自動肉盛溶接を行う。
【0036】
ト)そして、設定された肉盛ビード幅の肉盛ビードが形成されると、その時点で一旦溶接動作を中断し、この中断時期においてマニピュレータ14の上下スライダ14cを動作させて溶接トーチ15を第1層の溶接パスの肉盛厚みに応じて上方に移動させる。
【0037】
次に、こうして溶接トーチ15を上方向にシフトさせた状態で、再び前記ホ)〜ト)の工程を所定回数繰り返して第2層の溶接パスを肉盛溶接により形成する。この場合、第1層の溶接パスを形成する径方向へのシフト動作とは逆方向に、したがって、この第1の実施の形態では径方向内側に向けて径方向シフトを行わせる。なお、必要がある場合には以上の径方向および上方向のシフトが繰り返され、それによって、所定の肉盛厚さになるまで肉盛ビード層が積み重ねられる。
【0038】
したがって、以上のようにして円形の貫通孔回りに所定の肉盛ビード幅と所定の肉盛厚さとを有した肉盛溶接を、自動的に連続して施すことができる。
以上説明したように前記構成の連続自動肉盛溶接装置は、貫通金物12に設けられた貫通孔が円形である場合は勿論のこと、レーストラック形である場合にも、その貫通孔12a回りに自動的に連続して肉盛溶接を行うことができる。このようにレーストラック形の貫通孔12aの回りに対する肉盛溶接を手作業によらずに自動化できるので、その肉盛溶接の工数が削減されて製造能率を向上できるとともに、肉盛品質を均一にできる。なお、以上の肉盛溶接において回転ポジショナー2の回転速度と電動スライド9による移動速度とを同じとして、溶接速度を一致させることは、肉盛品質を向上する上で特に好ましい。
【0039】
また、前記溶接動作において回転ポジショナー2の間欠動作により、電動スライド9等は何回転も連続的に回転するが、回転ポジショナー2と電動スライド9との間にはスリップリング機構3が介在されているので、電線ケーブルや水ホース等が前記連続的回転に伴って捩じれることはなく、それにより、電動スライド9の前記間欠動作を行わせ、以上のような自動肉盛溶接を実現できる。
【0040】
さらに、金物ホルダ10は、その内部に冷却水が循環する冷却板を兼ねているので、何時間にも及ぶ前記連続肉盛溶接に伴って貫通金物12が、その金属組織に悪影響を与える程の高温になることを防止できる。
【0041】
なお、本発明は前記第1の実施の形態には制約されない。例えば、肉盛溶接の開始は一方の直線孔縁12a1から先にはじめてもよい。その場合、溶接トーチの径方向シフトは一方の直線孔縁12a1の回りに肉盛溶接をする際に最初に設けてもよいし、或いは一つの溶接パスが形成され終わった直後に連続して溶接トーチを径方向シフトして設けるようにしてもよい。
【0042】
また、本発明において、径方向シフトは、前記第1の実施の形態とは逆に、奇数層目の溶接パスについては径方向外側から内側に向けてシフトし、偶数層目の溶接パスについては径方向内側から外側に向けてシフトさせてもよい。
【0043】
さらに、本発明は、前記第1の実施の形態で述べた連続自動肉盛溶接装置の動作手順を工程として、レーストラック形の貫通孔回りに肉盛溶接を自動的に連続して形成する連続自動肉盛溶接方法を新たな実施の形態としてもよい。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1の発明によれば、回転ポジショナーによる貫通金物の回転移動にしたがって貫通孔の半円孔縁回りに溶接トーチで肉盛溶接ができ、直線往復動機構による貫通金物の直線移動にしたがって貫通孔の直線孔縁回りに溶接トーチで肉盛溶接ができるとともに、これらとマニピュレータにより溶接トーチの位置を径方向および上方向にシフトさせることで、レーストラック形貫通孔回りに対して連続して所望とする幅および厚さの肉盛溶接を施すことができる。また、前記直線往復動機構を動作させずに用いれば、回転ポジショナーによる貫通金物の回転とマニピュレータによる溶接トーチの前記径方向および上方向のシフトで、円形の貫通孔回りに対する肉盛溶接を自動的に連続して施すことができる。このように請求項1の発明においては、円形またはレーストラック形の貫通孔を有した貫通金物に対する肉盛溶接を自動化できる連続自動肉盛溶接装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に連続自動肉盛溶接装置の構成を、その直線往復動作機構により貫通金物が往動されて貫通孔の直線孔縁回りに対して溶接が施される開始時点の状態で示す平面図。
(B)は図1(A)の状態で連続自動肉盛溶接装置の構成を示す側面図。
【図2】(A)は第1の実施の形態に連続自動肉盛溶接装置の構成を、その直線往復動作機構により貫通金物が往動されて貫通孔の半円孔縁回りに対して溶接が施される開始時点の状態で示す平面図。
(B)は図2(A)の状態で連続自動肉盛溶接装置の構成を示す側面図。
【図3】(A)は第1の実施の形態に連続自動肉盛溶接装置の構成を、その回転ポジショナーにより貫通金物が回転されて貫通孔の半円孔縁回りに対して溶接が施される状態で示す平面図。
(B)は図3(A)の状態で連続自動肉盛溶接装置の構成を示す側面図。
【図4】第1の実施の形態に係る連続自動肉盛溶接装置で肉盛溶接された肉盛ビードの1層目を示す平面図。
【図5】第1の実施の形態に係る連続自動肉盛溶接装置で肉盛溶接された肉盛ビードの1層目と2層目との積層状態を示す平面図。
【図6】図5中Z−Z線に沿って示す肉盛ビードの断面図。
【符号の説明】
2…回転ポジショナー、
3…スリップリング機構、
3a…回転側スリップリング、
3b…固定側スリップリング、
9…電動スライド(直線往復動機構)、
10…金物ホルダ、
12…貫通金物、
12a…貫通孔、
12a1…貫通孔の直線孔縁、
12a2…貫通孔の半円孔縁、
14…マニピュレータ、
15…溶接トーチ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば潜水艦のような船舶その他各種の構造物が備える貫通金物、つまり、厚み方向に貫通孔を有した金物に対して、その貫通孔の耐食性向上等のために貫通孔回りにステンレス鋼等の肉盛溶接を施す連続自動肉盛溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
貫通金物を固定し、その貫通孔回りに、溶接ワイヤが供給される溶接トーチを動かして、貫通孔回りに肉盛溶接をする溶接装置は、溶接トーチとともに移動される各種の配管や配線の類の処理が面倒であり、機構が複雑とならざるを得ず、また、移動に必要なスペースも多く必要とする等の問題があるので、溶接トーチを基準として貫通金物を回転させて肉盛溶接を行う溶接装置の方が優れている。
【0003】
この種のものとして特公平3−16224号公報に記載の発明が知られている。この従来技術は、固定用チャックで円筒状被溶接物(貫通金物)が固定される回転ポジショナーと、ブームに支持され、かつ、ピッチ送り装置で円筒状被溶接物の直径方向に一定ピッチで移動できるTIG溶接トーチとから成るTIG自動肉盛連続溶接装置である。
【0004】
この溶接装置は、円筒状被溶接物の端面全周をTIG溶接トーチで溶接した後、前記トーチを被溶接物の直径方向に一定ピッチ移動して、更に全周を溶接する作業を順次行うものである。こうして1パス毎にトーチ位置を貫通孔の径方向にシフトして連続的に1層を溶接するので、回転ポジショナーの回転速度を制御することなく、前記端面全面を連続して自動的に肉盛溶接することができる。それにより、例えば潜水艦の耐圧タンク、昇降筒、脱出筒、圧力容器等の被溶接物の貫通孔回りへの肉盛溶接を可能にしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、回転ポジショナーは、その上に直接固定された貫通金物を回転させて、その溶接位置を溶接トーチに対して連続的に移動させるものであるから、前記従来の肉盛溶接装置は、貫通金物の貫通孔が円形の場合に適している。
【0006】
しかし、貫通金物の貫通孔が円形でない場合、つまり、互いに平行な直線孔縁の一端間および他端間を夫々反対向きの半円孔縁で連続させてなるレーストラック形の貫通孔については、前記回転ポジショナーの動作だけで、溶接トーチに対してレーストラック形の貫通孔の全周を順次移動させて位置合わせすることはできないから、こうした形状の貫通孔を有した貫通金物についての連続自動肉盛溶接はできない。
【0007】
そのため、現状ではレーストラック形の貫通孔を有した貫通金物に対して、その貫通孔回りに肉盛溶接をするには、手作業により行わざるを得ない。したがって、その溶接には多大な手間を要している。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、円形またはレーストラック形の貫通孔を有した貫通金物に対する肉盛溶接を自動化できる連続自動肉盛溶接装置を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、回転ポジショナーと、このポジショナー上に搭載された回転側スリップリングおよびこのスリップリングの周囲に配置された固定側スリップリングを備えるスリップリング機構と、前記回転側スリップリング上に搭載されて前記スリップリング機構を介して供給される動作媒体により動作される直線往復動機構と、この直線往復動機構上に搭載され、かつ、互いに平行な直線孔縁の一端間および他端間を夫々反対向きの半円孔縁で連続させてなるレーストラック形または円形の貫通孔を有した貫通金物が着脱自在に固定される金物ホルダと、前記貫通金物の貫通孔回りにその上方から肉盛溶接をする溶接トーチと、この溶接トーチを上下動させるとともに前記貫通孔の径方向に移動させるマニピュレータとを具備したものである。
【0010】
請求項1の発明において、回転ポジショナーは、その上に搭載された回転側スリップリング、直線往復動機構、および金物ホルダを同時に回転させ、それにより金物ホルダに固定された貫通金物が有した貫通孔の半円孔縁回りを溶接トーチに対して順次移動させて位置合わせする。直線往復動機構はその上の金物ホルダを直線往復運動させ、それにより、前記貫通孔の直線孔縁回りを溶接トーチに対して順次移動させて位置合わせする。スリップリング機構は回転ポジショナーによる回転に拘らず、直線往復動機構にこれを動作させる動作媒体を供給し、水ホース等の捩じれを防止する。前記貫通孔回りにその上方から肉盛溶接をする溶接トーチはマニピュレータに支持され、このマニピュレータは溶接トーチを上下動させるとともに貫通孔の径方向に移動させて、溶接トーチの位置を上方向および貫通孔の径方向に順次シフトさせる。
【0011】
そのため、この連続自動肉盛溶接装置は、回転ポジショナーによる貫通金物の回転移動にしたがって貫通孔の半円孔縁回りに溶接トーチによる自動的な肉盛溶接をすることができ、直線往復動機構により貫通金物の直線移動にしたがって貫通孔の直線孔縁回りに溶接トーチによる自動的な肉盛をすることができるから、これらの組み合わせによりレーストラック形貫通孔回りに対して連続して肉盛溶接を施すことができる。しかも、マニピュレータによる溶接トーチの位置を径方向に順次シフトさせることで所望とする肉盛ビード幅に亘り肉盛溶接をすることができ、かつ、溶接トーチの位置を上方向に順次シフトすることにより、所望とする肉盛厚さに達するまで複数層に亘り肉盛溶接をすることができる。したがって、この連続自動肉盛溶接装置によりレーストラック形貫通孔回りに対して所望とする幅および厚さの肉盛溶接を施すことができる。
【0012】
また、この連続自動肉盛溶接装置において、その直線往復動機構を動作させずに用いる場合には、金物ホルダに固定された貫通金物は回転ポジショナーにより回転されるだけであり、その途中で直線往復運動をすることがないから、回転ポジショナーによる貫通金物の回転とマニピュレータによる溶接トーチの前記径方向および上方向のシフトとの組合わせにより、円形の貫通孔回りに対する肉盛溶接を自動的に連続して施すことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図6を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。
第1の実施形態に係る連続自動肉盛溶接装置の構成を示す図1(A)(B)〜図3(A)(B)中1は長方形のベースであり、この上面には回転ポジショナー2が固定されている。回転ポジショナー2は、ターンテーブル2aと、このテーブル2aの下方に配置されてターンテーブル2aを回転させるテーブル駆動手段を内蔵した回転ポジショナー本体2bとを有している。なお、回転ポジショナー本体2bには、ターンテーブル2aの回転角を検出する回転角検出手段、およびこの手段の検出信号にしたがって前記テーブル駆動手段の動作を制御する制御装置、およびターンテーブル2aをその不用意な回転を防止して任意回転位置で固定するブレーキ手段等も内蔵されている。
【0014】
ターンテーブル2a上にはスリップリング機構3の回転側スリップリング3aが水平な姿勢で搭載されている。スリップリング機構3は、回転側スリップリング3aと、このリング3aの周囲に配置された固定側スリップリング3bとを備え、固定側スリップリング3bは支え部材4を介してベース1上に支持されている。固定側スリップリング3bには電線ケーブル5および水ホース6等が接続されており、これらは回転側スリップリング3aの上部(固定側スリップリング3bの上面より上位置に位置されている。)外面に連結された電線ケーブル7および水ホース8にスリップリング機構3を介して電気的に接続されまたは連通されている。
【0015】
スリップリング機構3は、後述の直線往復動機構に対する動作媒体としての電気の供給を中継するとともに、冷却水の循環を中継するものであり、そのためのケーブルや水ホース等が回転ポジショナー2による回転に伴って捩じれないようにして、後述する貫通金物をその肉盛溶接に必要とされる回数の連続回転を可能とするために用いられている。なお、後述の直線往復動機構が電気エネルギーではなく、空気や水等の流体のエネルギーを用いて動作されるものである場合には、動作媒体として空気や水等の流体が使用される。
【0016】
回転側スリップリング3a上には直線往復動機構として例えば電動スライド9が水平な姿勢で搭載されている。このスライド9は、回転側スリップリング3aの上面に固定されたガイドフレーム9aと、このフレーム9aにガイドされてその内側に直線往復動自在に設けられたスライダ9bと、ガイドフレーム9aの一端部外面に取付けられた正逆回転可能なパルスモータ等からなる駆動モータ9cとを有しており、このモータ9cの運転に伴って図示しないリードスクリュー等の送り手段を介してスライダ9bが移動されるように構成されている。ガイドフレーム9aの外形は長方形であり、その長手方向一端部に駆動モータ9cが固定されている。駆動モータ9cには前記電線ケーブル7が接続されている。スライダ9bはガイドフレーム9aの上面より上方に突出されている。
【0017】
スライダ9b上には金物ホルダ10が水平な姿勢で搭載されている。このホルダ10は上面および両端が夫々開放された凹溝構造をなしている。さらに金物ホルダ10は、その側壁の内側に、これら側壁を貫通した夫々複数の締め付けねじ11によって進退される固定パッド10aを有している。また、この金物ホルダ10は冷却板を兼ねており、その内部には図示しないが冷却水循環通路が設けられている。この冷却水循環通路の入口と出口とには夫々前記水ホース8が接続されている。
【0018】
金物ホルダ10上には貫通金物12が着脱自在に固定されるようになっている。貫通金物12は、例えば幅 500mm、長さ1000mm、厚さ 100mmの平板であり、その厚み方向に貫通する円形またはレーストラック形の貫通孔12aを有している。図示されるレーストラック形の貫通孔12aは、図4および図5等に示されるように互いに平行な直線孔縁12a1の一端間および他端間を夫々反対向きの半円孔縁12a2で連続させてなる略長円形状をなしている。この貫通金物12は、金物ホルダ10内に水平な姿勢で収められ、その両側縁に前記締め付けねじ11の締め付けにより当接される固定パッド10a間に挟まれて金物ホルダ10に固定され、また、締め付けねじ11を緩めて前記挟持を解除することにより金物ホルダ10上から取外し得るようになっている。
【0019】
前記ベース1上には支柱13が立設され、その上端部には、マニピュレータ14が取付けられている。このマニピュレータ14は、支柱13から金物ホルダ10上に向けて水平に突設されたブーム14aと、このブーム14aの先端面に沿ってブーム14aの幅方向、言い換えれば、金物ホルダ10に固定された貫通金物12の貫通口12aの径方向に水平移動可能に取付けられた水平スライダ14bと、スライダ14bの側面に上下動可能に取付けられた上下スライダ14cとを有している。このマニピュレータ14の各スライダ14b、14cは夫々に内蔵された図示しない電動式駆動機構により動作されるようになっている。
【0020】
上下スライダ14cには溶接トーチ15が下向きに固定されている。このトーチ15には、TIG(タングステンイナートガスアーク)溶接或いはプラズマアーク溶接を行う溶接トーチが採用される。この第1の実施の形態で採用したTIG溶接を行う溶接トーチ15は、設定したアーク電圧を一定に保持できるように自動制御する機能を有している。
【0021】
支柱13の上端には溶接ワイヤ供給装置16が取付けられている。この供給装置16はパイプ状の溶接ワイヤガイド16aを有している。このガイド16aは、その先端部を溶接トーチ15の下端に近接して配置し、送り出されるステンレス鋼線等からなる溶接ワイヤ17を案内して溶接トーチ15から吹き出されるアーク内に略横方向から供給するようになっている。
【0022】
次に、前記構成の連続自動肉盛溶接装置によりレーストラック形貫通孔12aを有した貫通金物12に肉盛溶接する手順を説明する。
まず、ホームポジションに位置する金物ホルダ10に貫通金物12を水平な姿勢に配置し締め付けねじ11の締め付けにより固定した後、電動スライド9を動作させて金物ホルダ10とともに貫通金物12を図1、図2中右または左方向に移動させて、貫通孔12aの一方の半円孔縁12a2の中心Cを、回転ポジショナー2の回転中心Dに合わせる。それによって、貫通金物12の上方において既に上下方向および水平方向の原点位置に配置されている溶接トーチ15の直下に、貫通孔12の前記一方の半円孔縁12a2とその一端に連続した一方の直線孔縁121aとが連続する点が位置決めして配置される。この状態は図2に示されている。
【0023】
こうしたセット状態で連続自動肉盛溶接を実施する。
イ)この溶接は、溶接トーチ15を動作させてその直下に向けてアークを発生させるとともに、溶接ワイヤ供給装置16を動作させて前記アークに向けて溶接ワイヤ17を連続的に供給して行われ、そして、この場合に、回転ポジショナー2が動作されて回転側スリップリング3a、電動スライド9、金物ホルダ10とともに貫通金物12を図中時計回りに回転させる。この回転は 180゜に達すると停止する。この回転の途中の状態は図3に示される。そうすると、前記一方の半円孔縁12a2回りに対して第1層の第1溶接パスP1a(図4〜図6参照)が自動的に肉盛溶接される。
【0024】
ロ)そして、貫通金物12の前記 180゜の回転完了に連続して電動スライド9を動作させて、金物ホルダ10とともに貫通金物12を、その貫通孔12aの直線部12a1の長さE分だけ移動させる。こうして移動された状態は図1に示されている。このような電動スライド9の往動動作に従い貫通孔12の前記一方の直線孔縁12a1回りに対して第1層の第1溶接パスP1aが連続して自動的に肉盛溶接される。
【0025】
ハ)この後、前記長さEの移動完了に連続して再び回転ポジショナー2が動作されて貫通金物12が図1中時計回りに回転される。この回転は 180゜に達すると停止する。それにより、貫通孔12aの他方の半円孔縁12a2回りに対して第1層の第1溶接パスP1aが自動的に肉盛溶接される。
【0026】
ニ)次に、前記2回目の 180゜の回転完了に連続して電動スライド9を動作させて、金物ホルダ10とともに貫通金物12を、その貫通孔12aの直線部12a1の長さE分だけ前記と反対方向に移動させる。こうして移動された状態は図2と同様である。このような電動スライド9の復動動作に従い貫通孔12の前記他方の直線孔縁12a1回りに対して第1層の第1溶接パスP1aが連続して自動的に肉盛溶接される。
【0027】
このとき、この他方の直線孔縁12a1回りへの肉盛溶接が終了する直前、例えば10数mmになった時点において、マニピュレータ14の水平スライダ14cが動作されて、溶接トーチ15を溶接パスの1ピッチ分例えば貫通孔12の径方向外側に移動させる。こうした電動スライド9の送り方向とは直角方向に溶接トーチ15を移動させる水平スライダ14による径方向へのシフト動作により、形成される肉盛溶接の態様は、図4および図5中長さ範囲Fにおいて示され、少し斜めに肉盛される。
【0028】
こうして第1層の第1溶接パスP1aがレーストラック形の貫通孔12回りに一回り連続して自動的に肉盛溶接される。
この後、前記イ)〜ニ)の工程を繰り返して第1層の第2溶接パスP1b を、前記第1溶接パスP1aに沿って例えば外側に設け、以後必要な数の溶接パスP1nを順次形成して、第1層の連続自動肉盛溶接を行う。こうした連続自動肉盛溶接により形成された第1層の肉盛ビードP1は図4に示されている。
【0029】
そして、設定された肉盛ビード幅Gの肉盛ビードP1が形成されると、その時点で一旦溶接動作を中断し、この中断時期においてマニピュレータ14の上下スライダ14cを動作させて溶接トーチ15を第1層の溶接パスの肉盛厚みに応じて上方に移動させる。
【0030】
次に、こうして溶接トーチ15を上方向に1ピッチ分シフトさせた状態で、再び前記イ)〜ニ)の工程を所定回数繰り返して第2層の溶接パスP2a、P2b…P2nを肉盛溶接により形成する。この場合、第1層の溶接パスP1a、P1b…P1nを形成する径方向へのシフト動作とは逆方向に、したがって、この第1の実施の形態では径方向内側に向けて径方向シフトを行わせる。図6中矢印H、Iは径方向シフトの方向を示している。なお、必要がある場合には以上の径方向および上方向のシフトが繰り返され、それによって、所定の肉盛厚さJになるまで肉盛ビード層が積み重ねられる。
【0031】
以上のようにしてレーストラック形の貫通孔12回りに所定の肉盛ビード幅Gと所定の肉盛厚さJとを有した肉盛溶接を、自動的に連続して施すことができる。この肉盛溶接により貫通孔12回りの耐食性、又は耐摩耗性、或いは強度等を向上できる。
【0032】
また、レーストラック形ではなく円形の貫通孔を有した貫通金物に対して肉盛溶接をするには、まず、ホームポジションに位置する金物ホルダ10に貫通金物(図示しない)を水平な姿勢に配置し締め付けねじ11の締め付けにより固定した後、電動スライド9を動作させて金物ホルダ10とともに貫通金物を図1、図2中右または左方向に移動させて、円形の貫通孔の中心Cを、回転ポジショナー2の回転中心Dに合わせる。それによって、貫通金物の上方において既に上下方向および水平方向の原点位置に配置されている溶接トーチ15の直下に、円形の貫通孔12の孔縁が位置決めして配置される。なお、電動スライド9は以後動作しないように保持される。
【0033】
こうしたセット状態で連続自動肉盛溶接を実施する。
ホ)この溶接は、溶接トーチ15を動作させてその直下に向けてアークを発生させるとともに、溶接ワイヤ供給装置16を動作させて前記アークに向けて溶接ワイヤ17を連続的に供給して行われ、そして、この場合に、回転ポジショナー2が動作されて回転側スリップリング3a、電動スライド9、金物ホルダ10とともに貫通金物を図1、図2中時計回りに回転させる。それにより、円形状に連続する第1層の第1溶接パスが自動的に肉盛溶接される。
【0034】
このとき、前記第1層の第1溶接パスを形成する一回りの肉盛溶接が終了する直前、例えば10数mmになった時点において、マニピュレータ14の水平スライダ14cが動作されて、溶接トーチ15を溶接パスの1ピッチ分例えば貫通孔12の径方向外側に移動させる。こうした径方向へのシフト動作により形成される肉盛溶接部分は少し斜めに肉盛される。
【0035】
ヘ)この後、前記ホ)の工程を繰り返して第1層の第2溶接パスを、前記第1溶接パスに沿って例えば外側に設け、以後必要な数の溶接パス順次形成して、第1層の連続自動肉盛溶接を行う。
【0036】
ト)そして、設定された肉盛ビード幅の肉盛ビードが形成されると、その時点で一旦溶接動作を中断し、この中断時期においてマニピュレータ14の上下スライダ14cを動作させて溶接トーチ15を第1層の溶接パスの肉盛厚みに応じて上方に移動させる。
【0037】
次に、こうして溶接トーチ15を上方向にシフトさせた状態で、再び前記ホ)〜ト)の工程を所定回数繰り返して第2層の溶接パスを肉盛溶接により形成する。この場合、第1層の溶接パスを形成する径方向へのシフト動作とは逆方向に、したがって、この第1の実施の形態では径方向内側に向けて径方向シフトを行わせる。なお、必要がある場合には以上の径方向および上方向のシフトが繰り返され、それによって、所定の肉盛厚さになるまで肉盛ビード層が積み重ねられる。
【0038】
したがって、以上のようにして円形の貫通孔回りに所定の肉盛ビード幅と所定の肉盛厚さとを有した肉盛溶接を、自動的に連続して施すことができる。
以上説明したように前記構成の連続自動肉盛溶接装置は、貫通金物12に設けられた貫通孔が円形である場合は勿論のこと、レーストラック形である場合にも、その貫通孔12a回りに自動的に連続して肉盛溶接を行うことができる。このようにレーストラック形の貫通孔12aの回りに対する肉盛溶接を手作業によらずに自動化できるので、その肉盛溶接の工数が削減されて製造能率を向上できるとともに、肉盛品質を均一にできる。なお、以上の肉盛溶接において回転ポジショナー2の回転速度と電動スライド9による移動速度とを同じとして、溶接速度を一致させることは、肉盛品質を向上する上で特に好ましい。
【0039】
また、前記溶接動作において回転ポジショナー2の間欠動作により、電動スライド9等は何回転も連続的に回転するが、回転ポジショナー2と電動スライド9との間にはスリップリング機構3が介在されているので、電線ケーブルや水ホース等が前記連続的回転に伴って捩じれることはなく、それにより、電動スライド9の前記間欠動作を行わせ、以上のような自動肉盛溶接を実現できる。
【0040】
さらに、金物ホルダ10は、その内部に冷却水が循環する冷却板を兼ねているので、何時間にも及ぶ前記連続肉盛溶接に伴って貫通金物12が、その金属組織に悪影響を与える程の高温になることを防止できる。
【0041】
なお、本発明は前記第1の実施の形態には制約されない。例えば、肉盛溶接の開始は一方の直線孔縁12a1から先にはじめてもよい。その場合、溶接トーチの径方向シフトは一方の直線孔縁12a1の回りに肉盛溶接をする際に最初に設けてもよいし、或いは一つの溶接パスが形成され終わった直後に連続して溶接トーチを径方向シフトして設けるようにしてもよい。
【0042】
また、本発明において、径方向シフトは、前記第1の実施の形態とは逆に、奇数層目の溶接パスについては径方向外側から内側に向けてシフトし、偶数層目の溶接パスについては径方向内側から外側に向けてシフトさせてもよい。
【0043】
さらに、本発明は、前記第1の実施の形態で述べた連続自動肉盛溶接装置の動作手順を工程として、レーストラック形の貫通孔回りに肉盛溶接を自動的に連続して形成する連続自動肉盛溶接方法を新たな実施の形態としてもよい。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1の発明によれば、回転ポジショナーによる貫通金物の回転移動にしたがって貫通孔の半円孔縁回りに溶接トーチで肉盛溶接ができ、直線往復動機構による貫通金物の直線移動にしたがって貫通孔の直線孔縁回りに溶接トーチで肉盛溶接ができるとともに、これらとマニピュレータにより溶接トーチの位置を径方向および上方向にシフトさせることで、レーストラック形貫通孔回りに対して連続して所望とする幅および厚さの肉盛溶接を施すことができる。また、前記直線往復動機構を動作させずに用いれば、回転ポジショナーによる貫通金物の回転とマニピュレータによる溶接トーチの前記径方向および上方向のシフトで、円形の貫通孔回りに対する肉盛溶接を自動的に連続して施すことができる。このように請求項1の発明においては、円形またはレーストラック形の貫通孔を有した貫通金物に対する肉盛溶接を自動化できる連続自動肉盛溶接装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に連続自動肉盛溶接装置の構成を、その直線往復動作機構により貫通金物が往動されて貫通孔の直線孔縁回りに対して溶接が施される開始時点の状態で示す平面図。
(B)は図1(A)の状態で連続自動肉盛溶接装置の構成を示す側面図。
【図2】(A)は第1の実施の形態に連続自動肉盛溶接装置の構成を、その直線往復動作機構により貫通金物が往動されて貫通孔の半円孔縁回りに対して溶接が施される開始時点の状態で示す平面図。
(B)は図2(A)の状態で連続自動肉盛溶接装置の構成を示す側面図。
【図3】(A)は第1の実施の形態に連続自動肉盛溶接装置の構成を、その回転ポジショナーにより貫通金物が回転されて貫通孔の半円孔縁回りに対して溶接が施される状態で示す平面図。
(B)は図3(A)の状態で連続自動肉盛溶接装置の構成を示す側面図。
【図4】第1の実施の形態に係る連続自動肉盛溶接装置で肉盛溶接された肉盛ビードの1層目を示す平面図。
【図5】第1の実施の形態に係る連続自動肉盛溶接装置で肉盛溶接された肉盛ビードの1層目と2層目との積層状態を示す平面図。
【図6】図5中Z−Z線に沿って示す肉盛ビードの断面図。
【符号の説明】
2…回転ポジショナー、
3…スリップリング機構、
3a…回転側スリップリング、
3b…固定側スリップリング、
9…電動スライド(直線往復動機構)、
10…金物ホルダ、
12…貫通金物、
12a…貫通孔、
12a1…貫通孔の直線孔縁、
12a2…貫通孔の半円孔縁、
14…マニピュレータ、
15…溶接トーチ。
Claims (1)
- 回転ポジショナーと、
このポジショナー上に搭載された回転側スリップリングおよびこのスリップリングの周囲に配置された固定側スリップリングを備えるスリップリング機構と、
前記回転側スリップリング上に搭載されて前記スリップリング機構を介して供給される動作媒体により動作される直線往復動機構と、
この直線往復動機構上に搭載され、かつ、互いに平行な直線孔縁の一端間および他端間を夫々反対向きの半円孔縁で連続させてなるレーストラック形または円形の貫通孔を有した貫通金物が着脱自在に固定される金物ホルダと、
前記貫通金物の貫通孔回りにその上方から肉盛溶接をする溶接トーチと、
この溶接トーチを上下動させるとともに前記貫通孔の径方向に移動させるマニピュレータと
を具備した連続自動肉盛溶接装置。
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