JP3599684B2 - 燃料電池システムの制御法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池システムの制御法に関し、特に、固体酸化物型燃料電池システムの制御法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、炭化水素系ガスを燃料とする固体酸化物型燃料電池システムとして、低温型の固体酸化物型燃料電池と高温型の固体酸化物型燃料電池とからなる燃料電池システム、すなわち、二温制御連結式固体酸化物型燃料電池システムが知られている。
【0003】
図4は従来の二温制御連結式固体酸化物型燃料電池システムを説明する図である。図において、この燃料電池システムは、炭化水素系ガス11を燃料ガスとし、その部分酸化反応
CnH2n+2 + 0.5nO2 → nCO +(n+1)H2
および発電を行う低温型の固体酸化物型燃料電池12と、燃料電池12からの排出ガス13を受入れ、排出ガス13中の、前記低温型の固体酸化物型燃料電池で未反応の炭化水素系ガスの水蒸気改質反応
CnH2n+2 + nH2O → nCO +(2n+1)H2
及び一酸化炭素の酸化反応
CO + 0.5O2 → CO2
及び水素の酸化反応
H2 + 0.5O2 → H2O
及び発電を行う高温型の固体酸化物型燃料電池14とを連結させて設けたことを特徴とする二温制御連結式固体酸化物型燃料電池システムである。
【0004】
この場合に、燃料電池12と14とは熱的にも連結していて、燃料電池14で発生した熱の一部は燃料電池12に流れて、燃料電池12の温度維持に役立つ。
【0005】
同様のシステムは、例えば特開2000−268832号公報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
燃料電池システムが単独で熱的な自立が出来ない場合は、外部から加熱するか、燃料の一部を燃焼させて、反応熱をシステムの温度維持に利用する必要がある。
【0007】
上記の低温型の固体酸化物燃料電池12における部分酸化反応の出力密度は低く、例えば、メタンを燃料とした部分酸化反応
CH4 + 0.5O2 → CO + 2H2
を利用した固体酸化物型燃料電池で現在達成されている最大出力密度は単セルレベルで0.3W/cm2程度(運転温度800℃、運転電圧0.4V程度)である。 上記の低温型の固体酸化物燃料電池12の理論開路電圧は1.2V程度と高いので、実際には1V程度の高い電圧で運転することが予想される。1Vの電圧で運転すると想定すると、出力密度は高く見積もっても0.1W/cm2程度である。
【0008】
これに対し、現在、上記の高温型の固体酸化物型燃料電池14は単セルレベルで0.5W/cm2程度(運転温度1000℃、運転電圧0.7V程度)と高い出力密度が得られている。
【0009】
従って、従来の二温制御連結式固体酸化物型燃料電池では、低温型の固体酸化物型燃料電池12のセル面積が大きくなりシステムも大型化する可能性がある。例えば、従来の図4のシステムに炭化水素系ガス11としてメタンが供給され、低温型の固体酸化物型燃料電池12でシステムに供給されたメタンの95%が部分酸化反応し、その部分酸化反応により発生した水素と一酸化炭素は全て高温型の固体酸化物型燃料電池14で反応し、低温型の固体酸化物型燃料電池12で反応しなかった残りの5%のメタンを燃焼させてシステムを熱的に自立させているとする。低温型の固体酸化物型燃料電池12は電圧1V、温度800℃で、高温型の固体酸化物型燃料電池14は電圧0.7V、温度1000℃で、それぞれ運転すると、総合効率は63%程度であり、総合出力を100kWとすると、低温型の固体酸化物型燃料電池12で約32kW、高温型の固体酸化物型燃料電池14で約68kWの出力となる。出力密度を低温型の固体酸化物型燃料電池12は0.1W/cm2、高温型の固体酸化物型燃料電池14は0.5W/cm2としてセル面積を概算すると、低温型の固体酸化物型燃料電池12のセル面積は32m2、高温型の固体酸化物型燃料電池14のセル面積は13.6m2となり、低温型の固体酸化物型燃料電池12の容積が大きくなる。このような燃料電池容積増大を抑制し、システムを小型化することが1つの課題となる。
【0010】
燃料電池システムの内部条件や環境条件が変化した時、固体酸化物型燃料電池セルの温度を一定に保つことが出来ないと、温度変化により発生する熱応力が固体酸化物型燃料電池セルに損傷を与える。
【0011】
劣化のない固体酸化物型燃料電池セルを基に、自己の温度を維持する為の熱と反応の余剰熱が釣り合うように設計された固体酸化物型燃料電池システムにおいて、固体酸化物型燃料電池セルの性能の劣化が起こり、出力が低下すると、システムの熱損失が増加し、システム全体の温度が上昇する。この温度変化により発生する熱応力が固体酸化物型燃料電池セルに損傷を与える。このような燃料電池セルの熱応力による損傷を防止することが他の1つの課題となる。
【0012】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、外部からの熱供給や燃料電池内での燃焼器を用いずに固体酸化物型燃料電池セルの運転温度を一定に保つ二温制御連結式固体酸化物型燃料電池システムを制御する燃料電池システムの制御法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明においては、請求項1に記載したように、
炭化水素系ガスを燃料とし、一酸化炭素、水素及び未反応の炭化水素系ガスを排出して部分酸化反応により発電を行う低温型の固体酸化物型燃料電池と、前記低温型の固体酸化物型燃料電池からの排出ガスを燃料として酸化反応により発電を行う高温型の固体酸化物型燃料電池とを備え、外部から供給される炭化水素系ガス全体の流れを任意の比率で二分岐させ、一方の分岐を前記低温型の固体酸化物型燃料電池に供給し、他方の分岐を前記高温型の固体酸化物型燃料電池に供給する分流器を有し、前記低温型の固体酸化物型燃料電池の温度は、前記高温型の固体酸化物型燃料電池からの熱の流入によって維持されている燃料電池システムを制御する燃料電池システムの制御法であって、前記分流器における、前記低温型の固体酸化物型燃料電池に供給する炭化水素系ガスの比率を、前記低温型の固体酸化物型燃料電池の温度が設定温度よりも低くなった際は減少させ、前記低温型の固体酸化物型燃料電池の温度が前記設定温度よりも高くなった際は増加させることを特徴とする燃料電池システムの制御法を構成する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係る燃料電池システムの制御法の適用対象となる二温制御連結式固体酸化物型燃料電池システムにおいては、外部から供給される炭化水素系ガス全体の流れを任意の比率で二分岐させ、一方の分岐を前記低温型の固体酸化物型燃料電池に供給し、他方の分岐を前記高温型の固体酸化物型燃料電池に供給する分流器を備えていることを特徴とし、この特徴によって、本発明に係る燃料電池システムの制御法を適用した場合に、低温型の固体酸化物型燃料電池セルの運転温度を一定に保ち、燃料電池セルの熱応力による損傷を防止することが可能となる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態例について、図面を用いて、詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る燃料電池システムの制御法の適用対象となる二温制御連結式固体酸化物型燃料電池システムを説明する図である。
【0018】
システムに供給されるメタン・エタン・プロパン・ブタン等の炭化水素系ガス11は分流器21で任意の割合に二分され、一方は炭化水素系ガス22として、部分酸化反応及び発電を行う低温型の固体酸化物型燃料電池12に流入し、もう一方は炭化水素系ガス23として、一酸化炭素及び水素ガスの酸化による発電及び水素の酸化により発生した水蒸気を用いて炭化水素系ガスの改質反応を行う高温型の固体酸化物型燃料電池14に流入する。この場合、上記の一酸化炭素及び水素ガスは、高温型の固体酸化物型燃料電池14に流入する低温型の固体酸化物型燃料電池12からの排出ガス13中に含まれている。
【0019】
図1に示したシステムに、炭化水素系ガス11としてメタンが供給され、分流器21により二分され、システムに供給されたメタンの例えば50%が低温型の固体酸化物型燃料電池12に供給され、その内部で部分酸化反応し、システムに供給された残りの50%のメタンが高温型の固体酸化物型燃料電池14に供給され、その内部で水蒸気改質反応
CH4 + H2O → CO + 3H2
し、部分酸化反応及び水蒸気改質反応により発生した水素と一酸化炭素は全て高温型の固体酸化物型燃料電池14で反応するとする。このとき、低温型の固体酸化物型燃料電池12を電圧1V、温度800℃で運転し、高温型の固体酸化物型燃料電池14を電圧0.7V、温度1000℃で運転すると、発電効率は63%程度となる。この効率は従来のシステムにおいて、炭化水素系ガス11としてメタンが供給され、低温型の固体酸化物型燃料電池12でシステムに供給されたメタンの95%が部分酸化反応し、部分酸化反応により発生した水素と一酸化炭素は全て高温型の固体酸化物型燃料電池14で反応し、システムに供給されたメタンの5%を燃焼させてシステムを熱的に自立させた場合の効率に等しい。
【0020】
図1に示したシステムにおいて総合出力を100kWとすると、低温型の固体酸化物型燃料電池12で約17kW、高温型の固体酸化物型燃料電池14で約83kWの出力となる。出力密度を低温型の固体酸化物型燃料電池12は0.1W/cm2、高温型の固体酸化物型燃料電池14は0.5W/cm2として、セル面積を概算すると、低温型の固体酸化物型燃料電池12のセルは17m2、高温型の固体酸化物型燃料電池14のセルは16.6m2となる。
【0021】
図1に示したシステムでは高温型の固体酸化物型燃料電池14内において、炭化水素系ガス23の改質反応を行っている。しかし、その場合でも高温型の固体酸化物型燃料電池14の容積は内部で炭化水素系ガス23の改質反応を行わない場合(すなわち、炭化水素系ガス23を供給しない場合)と同程度に抑えることが出来る。従って、100kWの本システムにおけるトータルのセル面積は33.6m2であり、従来のシステムにおけるトータルのセル面積45.6m2に比較して27%程度の小型化が実現している。
【0022】
図1に示したシステムは、分流器21において、低温型及び高温型の固体酸化物型燃料電池(12及び14)に供給する炭化水素系ガス(22及び23)の比率を制御することによって、低温型及び高温型の固体酸化物型燃料電池(12及び14)の温度が制御される。
【0023】
図2に示すように、低温型の固体酸化物型燃料電池12の温度TLを測定し、TLが設定した運転温度よりも低下した場合には高温型の固体酸化物型燃料電池14に供給する比率を増加させて(すなわち、低温型の固体酸化物型燃料電池12に供給する比率を減少させて)高温型の固体酸化物型燃料電池14の温度を上昇させ、TLが設定した運転温度よりも上昇した場合には低温型の固体酸化物型燃料電池12に供給する比率を増加させて(すなわち、高温型の固体酸化物型燃料電池14に供給する比率を減少させて)高温型の固体酸化物型燃料電池14の温度を低下させ、TLが設定した運転温度と一致している場合には低温型及び高温型の固体酸化物型燃料電池(12及び14)に供給する炭化水素系ガス(22及び23)の比率を維持するように制御される。低温型の固体酸化物型燃料電池12の温度は、高温型の固体酸化物型燃料電池14からの熱の流入によって維持されているので、このような制御方法によって、低温型の固体酸化物型燃料電池12の温度は一定に維持される。低温型の固体酸化物型燃料電池12の温度が一定に維持されていれば、高温型の固体酸化物型燃料電池14から低温型の固体酸化物型燃料電池12への熱の流れも定常状態に達するので、高温型の固体酸化物型燃料電池14の温度も一定となる。
【0024】
図3に、低温型の固体酸化物型燃料電池12に供給する炭化水素系ガス22の比率を0から1迄変化させた時の燃料電池システムの総合発電効率を示す。低温型の固体酸化物型燃料電池12を電圧1V、温度800℃で運転し、高温型の固体酸化物型燃料電池14を電圧0.7V、温度1000℃で運転すると仮定している。低温型の固体酸化物型燃料電池12に供給する炭化水素系ガス11の比率を増加させるほどシステム効率は上昇し、システムの温度維持に利用する発熱が減少する。逆に低温型の固体酸化物型燃料電池12に供給する炭化水素系ガス11の比率を減少させるほどシステム効率は下降し、システムの温度維持に利用する発熱が増加する。なお、上記の比率が0あるいは1である場合には、外部から供給される炭化水素系ガス11の流れを2つの分岐に分けたことにはならず、これらの場合は本発明の対象外となる。
【0025】
環境条件が変化しても、この制御によりシステムの温度維持に利用する熱量を調整出来るので、固体酸化物型燃料電池12、14の温度を一定に保つことが可能となり、熱応力による固体酸化物型燃料電池セルの損傷を防ぐことが出来る。
【0026】
固体酸化物型燃料電池セルの性能が劣化しても、分流器21により低温型の固体酸化物型燃料電池12に供給する炭化水素系ガス22の比率を増加させれば、出力の低下及び固体酸化物型燃料電池セルの昇温を防ぎ、熱応力による固体酸化物型燃料電池セルの損傷を防ぐことが出来る。
【0027】
以上に説明したように、本発明に係る燃料電池システムの制御法を用いれば、燃料を燃焼させることなく、温度維持に利用する熱量を調節することにより、固体酸化物型燃料電池の温度が変化することを防ぎ、熱応力によるセルの損傷を防ぐことが出来る。
【0028】
【発明の効果】
本発明の実施により、外部からの熱供給や燃料電池内での燃焼器を用いずに固体酸化物型燃料電池セルの運転温度を一定に保つ二温制御連結式固体酸化物型燃料電池システムを制御する燃料電池システムの制御法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの制御法の適用対象となる二温制御連結式固体酸化物型燃料電池システムを説明する図である。
【図2】本発明に係る二温制御連結式固体酸化物型燃料電池システム制御法を示す図である。
【図3】低温型の固体酸化物燃料電池に供給する炭化水素系ガスの比率とシステムの総合発電効率の関係を示す図である。
【図4】従来の二温制御連結式固体酸化物型燃料電池システムを説明する図である。
【符号の説明】
11…システムに供給される炭化水素系ガス、12…低温型の固体酸化物型燃料電池、13…低温型の固体酸化物型燃料電池からの排出ガス、14…高温型の固体酸化物型燃料電池、21…システムに供給される炭化水素系ガスの分流器、22…分流器から低温型の固体酸化物型燃料電池に流入する炭化水素系ガス、23…分流器から高温型の固体酸化物型燃料電池に流入する炭化水素系ガス。
Claims (1)
- 炭化水素系ガスを燃料とし、一酸化炭素、水素及び未反応の炭化水素系ガスを排出して部分酸化反応により発電を行う低温型の固体酸化物型燃料電池と、
前記低温型の固体酸化物型燃料電池からの排出ガスを燃料として酸化反応により発電を行う高温型の固体酸化物型燃料電池とを備え、
外部から供給される炭化水素系ガス全体の流れを任意の比率で二分岐させ、
一方の分岐を前記低温型の固体酸化物型燃料電池に供給し、
他方の分岐を前記高温型の固体酸化物型燃料電池に供給する分流器を有し、
前記低温型の固体酸化物型燃料電池の温度は、前記高温型の固体酸化物型燃料電池からの熱の流入によって維持されている燃料電池システムを制御する燃料電池システムの制御法であって、
前記分流器における、前記低温型の固体酸化物型燃料電池に供給する炭化水素系ガスの比率を、前記低温型の固体酸化物型燃料電池の温度が設定温度よりも低くなった際は減少させ、前記低温型の固体酸化物型燃料電池の温度が前記設定温度よりも高くなった際は増加させることを特徴とする燃料電池システムの制御法。
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