JP3597992B2 - エアー動圧軸受装置及びその製造方法 - Google Patents

エアー動圧軸受装置及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動圧軸受内の空気に対して動圧を発生させ、その空気動圧によって軸部材と軸受部材とを相対回転自在に支持するように構成したエアー動圧軸受装置及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ポリゴンミラー、磁気ディスク、光ディスク等の各種回転部材をエアー動圧軸受装置によって支持する提案が種々行われている。このエアー動圧軸受装置においては、軸部材側の動圧面と、軸受部材側の動圧面とが微小隙間を介して半径方向に対向配置されることによって動圧軸受部が構成されており、この動圧軸受部における両対向動圧面のうちの少なくとも一方側に動圧発生用溝が形成されている。そして、上記動圧軸受部の微小隙間内の空気が、回転時に上記動圧発生用溝のポンピング作用により加圧され、当該空気の動圧によって軸部材及び軸受部材の両部材が相対的に回転可能に支持されるようになっている。
【0003】
一方、このような動圧軸受装置の軸部材又は軸受部材における両動圧面の少なくとも一方側の表面には、高速回転時の接触による焼き付きを防止するための潤滑塗装膜が被着・形成されている。この潤滑塗装膜を構成する潤滑塗料としては、例えば、ポリアミドイミド(PAI)をバインダー樹脂として、10〜80体積%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の潤滑粒子、耐摩耗性向上のためのグラファイト片、及び着色のためのカーボンブラックなどを分散材として添加したものが用いられる。
【0004】
このポリアミドイミドは、高耐熱性を有するスーパーエンプラと呼ばれるものであり、成膜過程の自由度が低いためにスプレー塗装工法によって成膜形成されている。このときの1回当たりのスプレー塗装は、膜厚にして20μm程度が限度であるため、スプレー工程と乾燥工程とを数回繰り返すことによって所定の膜厚を得ている。また、スプレー塗装のみでは高精度な外径寸法に形成することはできないので、塗装膜に対して切削加工を施して寸法出しをしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなスプレー塗装を行う場合には、環境や人体に有害な溶剤を撒き散らすこととなるため、環境問題に発展するおそれがある。また、スプレー塗装では、上述したように工程を繰り返し行わなければならないために工程管理が複雑化しコスト高となっている上に、寸法精度を出すための切削工程を要していることから厚い膜厚に形成しておく必要があり、生産効率に問題がある。しかも、気泡の抱き込みなどによって品質にバラツキを生じ易いため、各工程の品質管理が難しいという問題もある。
【0006】
このような問題を解消するために電着工法等の他の工法も考えられるが、ポリアミドイミドのような特殊な材料は電着工法等の他の工法には使用できず、そのままでは現状のスプレー塗装に限られる。一方、電着工法等の他の工法を採用するために、成形自由度の高いアクリル系樹脂材料を採用することも考えられるが、アクリル系樹脂は汎用樹脂であるため耐熱性等の特性が良好でなく、焼付を生じる危険性が大きい。
【0007】
より具体的に説明すると、従来のようなポリアミドイミド(PAI)にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を添加したものでは、PTFEの融点が327℃であり、ポリアミドイミドは500℃程度で炭化を起こすまで構造は崩れず軟化することはない。つまり、局部的に高い摺動熱が生じた場合にはPTFEが融けて流れて熱の発散作用をすることとなり、しかもPTFEは相手金属材との親和性が低いために焼付に至ることはない。
【0008】
しかしながら、上述したように単にアクリル系樹脂を採用してPTFEを添加した場合には、アクリル系樹脂は一般に耐熱性が低い上に、熱硬化型樹脂であるとはいってもPTFEの融点以下で軟化を始めてしまう。つまり、摺動熱で流動を起こすのはアクリル若しくはアクリル及びPTFEの両方である。そして、軟化流動を起こしたアクリルは、相手側部材に対して容易に付着するため焼付に至り易い。
【0009】
そこで本発明は、軸部材又は軸受部材に対して良好な耐熱特性を備えた潤滑塗装膜を、電着工法等の他の工法によって容易かつ良好な環境下で形成することができるようにしたエアー動圧軸受装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、軸部材の外周面に形成した動圧面と、上記軸部材に嵌合する軸受部材の内周面に形成した動圧面とを対向配置することにより動圧軸受部を形成し、当該動圧軸受部内の空気に動圧を発生させることによって上記軸部材と軸受部材とを相対回転可能に支承するエアー動圧軸受装置において、上記軸部材又は軸受部材の動圧面を含む表面上に、アクリル系樹脂からなるべ一スレジンにフッ素系樹脂を分散した潤滑塗装膜が被着・形成されたものであって、上記フッ素系樹脂として、前記アクリル系樹脂の軟化温度より低い融点を有する樹脂が採用されている。
【0011】
また、請求項2記載の発明では、清求項1記載のフッ素系樹脂が熱可塑性樹脂からなること。
【0012】
さらに、請求項3記載の発明では、請求項1記載のフッ素系樹脂がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、かつ前記アクリル系樹脂からなるべ一スレジンには、当該べ一スレジンの軟化点をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点より高くする無機フィラーが添加されている。
【0013】
さらにまた、請求項4記載の発明では、清求項1又は2記載のアクリル系樹脂が熱硬化性樹脂からなる。
【0014】
また、請求項5記載の発明では、請求項1記載のフッ素系樹脂が、潤滑塗装膜の膜厚の1/10以下の径を有する粒子からなり、ベースレジンに対して2〜20体積%の割合で添加されている。
【0015】
さらに、請求項6記載の発明では、軸部材及び軸受部材にそれぞれ設けられた動圧面どうしを対向配置することにより動圧軸受部を形成し、当該動圧軸受部内の空気に動圧を発生させることによって上記軸部材と軸受部材とを相対回転可能に支承するエアー動圧軸受装置の製造方法において、上記軸部材又は軸受部材の動圧面を含む表面上に、アクリル系樹脂からなるべ一スレジンにフッ素系樹脂を分散した塗料を用いて潤滑塗装膜を被着・形成するものであって、上記フッ素系樹脂として、前記アクリル系樹脂の軟化温度より低い融点を有する樹脂を用いるようにしている。
【0016】
さらにまた、請求項7記載の発明では、請求項6記載のフッ素系樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いるとともに、アクリル系樹脂からなるべ一スレジンに、当該べ一スレジンの軟化点をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点より高くする無機フィラーを添加するようにしている。
【0017】
このように本発明では、潤滑塗装膜の材料として成形自由度の高いアクリル系樹脂を採用しているため、電着工法のような多種多様な工法によって潤滑塗装膜が容易に成形されるとともに、融点の低いフッ素系樹脂を添加することによって耐熱性・耐焼付性等の特性が良好に維持されるようになっている。すなわち、アクリル系樹脂からなるべ一スレジンより融点の低いフッ素系樹脂を添加したものでは、表面流動を起こす温度はPTFEよりやや下がるものの、流動によって熱拡散が起こるために更なる発熱が抑制され、焼付などに発展することはない。また、構造強度を担うベースレジンによって必要な強度も確保される。なお、PTFEより摩擦低減作用が若干劣ることとなるが、エアー動圧軸受装置で接触を生じるのは起動停止時や強い外力を受けた時などに限定され、定常的な現象ではないのでほとんど問題とならないと考えられる。
【0018】
また、本発明のように、べ一スレジンを構成するアクリル系樹脂に無機フィラーを混ぜることとすれば、分子運動に対する拘束力が向上して軟化現象が抑制されることとなり、これによって軟化点をPTFEの融点(327℃)以上に高めれば、PTFEとの組み合わせが可能となる。このときの無機フィラーとしては、グラファイトを始めとして多種多様なものが採用可能である。
【0019】
なお、熱硬化型樹脂は三次元架橋を生じているので、一般的には軟化現象を問題とされることはないが、実際には、高温引っ掻き試験などを行うことによって軟化現象は明らかに認められる。また、DSC(示差走査熱量計)のデータなどでも軟化現象を裏付けられる。これは、架橋度が低い若しくは架橋結合が弱い場合に、分子熱運動が拘束力に勝って全体運動を生じるものと推定される。
【0020】
また、フッ素系樹脂の添加量及び粒径を、請求項5のように設定することによってベースレジンの構造強度は一層十分に確保される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、それに先立って、本発明を適用する空気動圧軸受を備えた軸回転型のポリゴンミラー駆動用モータの構造について図面に基づき説明する。
【0022】
図1には、ポリゴンミラーを回転駆動するための軸固定型の空気動圧軸受装置を備えたアウタロータ型モータの一例が表されている。この空気動圧軸受モータは、フレーム10側に組み付けられた固定部材としてのステータ組20と、このステータ組20に対して、図示上側から嵌め込むようにして組み付けられた回転部材としてのロータ組30とから構成されており、このうちステータ組20は、上記フレーム10の略中心位置に立設するように取り付けられた固定軸(軸体)21を有しているとともに、その固定軸21の外周面から半径方向に一定の距離を隔てて円筒状に取り囲む軸受ホルダー22を有している。上記軸受ホルダー22の外周にはステータコア23が嵌着されており、ステータコア23の突極部には駆動コイル24が巻回されている。
【0023】
また、上記固定軸21の外周面には、ヘリングボーン型の動圧発生用溝25が軸方向に2ブロックに分けられて環状に凹設されており、当該動圧発生用溝25,25が設けられた固定軸21の外側には、前記ロータ組30の円筒胴部(軸嵌合体)31が、数μm〜十数μmの隙間を隔てて回転可能に装着されている。そして上記固定軸21の外周面と、ロータ組30の円筒胴部31の内周面との間に、空気動圧が発生させられてラジアル軸受が形成されるように構成されている。また上記固定軸21には、当該固定軸21の軸端部(図示上端部)から空気供給孔26が軸方向に延在しており、当該空気供給孔26は、前記2ブロックの動圧発生用溝25,25の間部分において固定軸21の外側に向かって開口している。
【0024】
さらに、上記固定軸21の軸端部(図示上端部)は、外周部分が軸方向に所定量突出しており、その突出部分の内周壁に、スラスト浮上用の固定側マグネット27が環状に装着されている。一方、上記ロータ組30における円筒胴部31の基部側(図示上端部側)には、その中心部分に、所定の空気流動抵抗を有する細孔状のエアオリフィス32がダンパー手段として軸方向に貫通形成されており、このエアオリフィス32の通気抵抗によるダンパー作用によって、ロータ組30に対する軸方向の衝撃が緩和されるようになっている。またロータ組30の内部における空気は、前記空気供給孔26によって動圧発生用溝25,25の間部分に送給され、動圧発生用溝25,25のポンピング作用によって軸方向外側図示上下方向に流動させられ外部側に排出されるようになっている。
【0025】
さらにまた、上記エアオリフィス32の周囲には、スラスト浮上用の回転側マグネット33が環状に装着されている。この回転側マグネット33は、上述した固定軸21側の固定側マグネット27と相互に磁気的吸引力を生じるように、軸方向(図示上下方向)に着磁されており、両者の吸引作用によってロータ組30がスラスト方向に所定量浮上した状態に保持されるように構成されている。
【0026】
一方、上記ロータ組30の円筒胴部31の基部側(図示上端部側)外周には、回転板としての平面六角形状のポリゴンミラー34が回転板を構成するように嵌着されている。このポリゴンミラー34は、円筒胴部31から半径方向外方に向かって延出する保持部38上に軸方向に載置されており、クランプ手段である押えバネ39によって軸方向外側から固着されている。
【0027】
また、上記保持部38から半径方向外方に向かってロータフランジ部35が延出している。このロータフランジ部35は、前記円筒胴部31及び保持部38と一体に形成された円盤状部材からなり、前記駆動コイル24が配置されたロータ内空間と、ポリゴンミラー34が配置されたロータ外空間とを仕切るように配置されている。
【0028】
さらに、上記ロータフランジ部35の外周部から軸方向(図示下方向)に向かって突出する環状の取付板36の内周壁面に、磁性材からなるバックヨークを介して駆動マグネット37が環状に装着されている。上記駆動マグネット37は、前述したステータコア23の外周面に対して半径方向に対向するように配置され、モータ駆動部を構成している。
【0029】
なお、図1の実施形態では、保持部38、円筒胴部31、ロータフランジ部35及び取付部36が一体に形成されているが、それぞれが別体に形成される場合もある。
【0030】
上記駆動コイル24に所定の駆動電圧が印加されると、円筒胴部31とともにポリゴンミラー34が回転し、このポリゴンミラー34の回転によって該ポリゴンミラー34に収束されたレーザー光が図示されない画像記録媒体上を走査するようになっている。この時、円筒胴部31は、当該円筒胴部31と固定軸21との間に発生する空気の動圧力によってラジアル方向に支持されるとともに、回転側マグネット33と固定側マグネット27との磁気的吸引作用によってロータ組30がスラスト方向に所定量浮上した状態に保持される。
【0031】
上述した固定軸21は、アルミニウム、アルミニウム合金等のアルミ材よりなり、当該固定軸21の動圧面を含む外周表面には、電着塗装工程によって塗装膜が形成されている。この潤滑塗装膜は、アクリル系樹脂からなるべ一スレジンに、当該べ一スレジンの軟化温度より低い融点のフッ素系樹脂が分散材として添加されたものである。
【0032】
上記フッ素系樹脂としては、粒状に形成されたものが採用されているが、その粒子径は、ベースレジンの強度を確保し得るように塗装膜の膜厚の1/10以下に調整・設定されている。また、同様の理由から、上記フッ素系樹脂の添加量は2〜20体積%の範囲に調整・設定されている。具体的な実施例として、以下の実施例1,2にかかるものを作成してみた。
【0033】
実施例1(低沸点フッ素樹脂を組み合わせたもの)
べ一スレジン:アクリルメラミン樹脂
フッ素樹脂 :PVDF(ポリビニリデンフルオライド)微粒子
塗装工法 :電着塗装
【0034】
この実施例1におけるべ一スレジンを構成するアクリルメラミン樹脂は、アクリル主鎖の一部をフッ素化して添加剤の分散性を向上させた熱硬化性樹脂であって、軟化点は約280℃である。この軟化点は、高温槽で昇温しながら随時ピンセットで引っ掻いて硬さチェックした値である。また、上記フッ素樹脂(PVDF)は、融点160〜180℃の熱可塑性樹脂であり、上記べ一スレジンに対して10体積%に相当する量を添加した。
【0035】
実施例2(無機フィラー添加により軟化点を向上させたもの)
ベースレジン:アクリル変性エポキシ樹脂
無機フィラー:鱗片状グラファイト微粉
フッ素樹脂 :PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)微粒子
塗装工法 :電着塗装
【0036】
この実施例2におけるべ一スレジンを構成するアクリル変性エポキシ樹脂も、アクリル主鎖の一部をフッ素化して添加剤の分散性を向上させたものであり、これに対して上記無機フィラーを7体積%に相当する量添加することにより基材を構成した。この基材の軟化点は、無機フィラーの添加によってポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点(327℃)より高い350℃となった。
【0037】
次に、上述した軸部材としての固定軸21の詳細構造を、本発明にかかる製造方法の一実施形態とともに述べる。
まず、アルミ及びアルミ合金材料を用いた鋳造、ダイキャスト法又はその他の加工方法によって、図2(a)に示されているような固定軸21のブランク21aを形成し、そのブランク21aの外表面に対して、耐食性・塗装密着性を向上させるためのクロメート処理(アロジン処理)、或いは陽極酸化皮膜処理(アルマイト処理)等の下地処理を施す。
【0038】
次いで、図2(b)に示されているように、上記ブランク21aの外表面における動圧発生溝を形成すべき位置に、絶縁性を有するエポキシ系等の樹脂塗料を動圧発生溝の形状に沿って被着させて絶縁膜21bを形成する。このときの絶縁性樹脂塗料の被着方法としては、例えば、スクリーン印刷やスクリーン印刷等のマスキング印刷法によって行う。
【0039】
そして、上記絶縁膜21bが形成された軸素材を、水溶性の電着液を満たした電着槽(図示省略)に没入して、上記軸素材の全表面に対して電気泳導による電着塗装を施し電着塗装膜を形成する。電着塗装は、水に分散した塗料の中に軸素材を入れて、当該軸素材と他の金属体とが両極になるようにして電流を通すことにより軸素材に塗料を塗るものであるが、電着塗装は、上述した絶縁膜21b上には被着することがない。従って、図2(c)に示されているように、動圧発生溝25を形成すべき部分を除いた他の表面部分に、電着塗装形成部からなる潤滑性電着塗装膜21cが被着されるとともに、動圧発生溝25を形成すべき部分は、電着塗装非形成部となって上述した絶縁膜21bがそのまま維持される。
【0040】
このような電着塗装形成部からなる潤滑性電着塗装膜21cの層厚さは、電着の時間及び電圧によって調整されるが、本実施形態では、5〜15ミクロン程度の厚さにわたって電着塗装を行っており、塗装後には、加熱処理及び光照射処理を行って樹脂を硬化させる。
【0041】
そして、電着塗装非形成部に被着されていた絶縁膜21bを溶剤により溶かして剥離し、その部分に剥離部分に軸素材の外表面を露出させ、図2(d)に示されているように、剥離後における電着塗装非形成部における軸素材の外表面と、電着塗装形成部からなる潤滑性電着塗装膜21cの外表面との間に生じた段差によって、動圧発生溝25を形成する。
【0042】
また、このような固定軸21と組み合わせられるロータ組30の円筒胴部31もアルミニウム、アルミニウム合金等のアルミ材よりなり、当該円筒胴部31の動圧面を含む外周表面には、ニッケルメッキが施されている。
【0043】
このような実施形態では、固定軸21の表面上に形成された潤滑塗装膜の材料として成形自由度の高いアクリル系樹脂が採用されているため、潤滑塗装膜が電着工法のような多種多様な工法によって良好に成形されるとともに、融点の低いフッ素系樹脂を添加することによって、耐熱性・耐焼付性等の特性が向上される。
【0044】
また、上述した実施例2のように、べ一スレジンを構成するアクリル系樹脂に無機フィラーを混ぜることによって軟化現象を抑制し、軟化点をPTFEの融点(327℃)以上に高めることとすれば、PTFEとの組み合わせも可能となる。
【0045】
このとき、フッ素系樹脂の添加量及び粒径を、2〜20体積%の範囲に設定すれば、ベースレジンの構造強度は一層十分に確保される。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0047】
例えば、上述した各実施形態のように、潤滑塗装膜を軸部材側に設ける場合のみならず、軸受部材側に形成する場合であっても本発明は同様に適用することができる。さらに、潤滑塗装膜は、電着塗装に限らず他の多種多様な工法も同様に採用することができる。
【0048】
さらにまた、動圧発生用溝は、各実施形態のように軸部材側に設ける場合のみならず、軸受部材側に形成する場合であっても、本発明は同様に適用することができる。
【0049】
また、本発明は、上述したモータ以外に用いられる動圧軸受装置、例えば、ハードディスク駆動用(HDD)モータに設けられた動圧軸受装置に対しても本発明は同様に適用することができる。
【0050】
【発明の効果】
このように本発明は、潤滑塗装膜の材料として成形自由度の高いアクリル系樹脂を採用することによって潤滑塗装膜を電着工法のような多種多様な工法により良好に成形可能とするとともに、アクリル系樹脂からなるべ一スレジンの軟化点より融点の低い融点の低いフッ素系樹脂を添加することによって耐熱性・耐焼付性等の特性を向上するように構成したものであるから、潤滑塗装膜の信頼性を維持しつつ軸部材又は軸受部材に対して潤滑塗装膜を良好な環境下で容易に形成することができ、エアー動圧軸受装置の品質を良好に維持しながら生産性の向上を図ることができる。
【0051】
さらに、本発明は、べ一スレジンを構成するアクリル系樹脂に無機フィラーを混ぜることによって軟化現象を抑制し、これによって軟化点をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点(327℃)以上に高めてPTFEとの組み合わせを可能としたものであるから、上述した効果に加えて、PTFEの特性をも得ることができる。
【0052】
このとき、フッ素系樹脂の添加量及び粒径を、請求項5の範囲に設定すれば、ベースレジンの構造強度が十分に確保されることとなり、エアー動圧軸受装置の品質を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるエアー動圧軸受装置を備えたポリゴンモータの構造を表した半横断面説明図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる電着工法によって潤滑塗装膜を軸部材に成形する場合を表した工程説明図である。
【符号の説明】
21 固定軸
21a ブランク
21c 電着塗装膜
25 動圧発生用溝
31 回転円筒胴部

Claims (7)

  1. 軸部材の外周面に形成した動圧面と、上記軸部材に嵌合する軸受部材の内周面に形成した動圧面とを対向配置することにより動圧軸受部を形成し、当該動圧軸受部内の空気に動圧を発生させることによって上記軸部材と軸受部材とを相対回転可能に支承するエアー動圧軸受装置において、
    上記軸部材又は軸受部材の動圧面を含む表面上に、アクリル系樹脂からなるべ一スレジンにフッ素系樹脂を分散した潤滑塗装膜が被着・形成されたものであって、
    上記フッ素系樹脂として、前記アクリル系樹脂の軟化温度より低い融点を有する樹脂が採用されていることを特徴とするエアー動圧軸受装置。
  2. 前記フッ素系樹脂が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする清求項1記載のエアー動圧軸受装置。
  3. 前記フッ素系樹脂がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、かつ
    前記アクリル系樹脂からなるべ一スレジンには、当該べ一スレジンの軟化点をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点より高くする無機フィラーが添加されていることを特徴とする請求項1記載のエアー動圧軸受装置。
  4. 前記アクリル系樹脂が熱硬化性樹脂からなることを特徴とする清求項1又は2記載のエアー動圧軸受装置。
  5. 前記フッ素系樹脂が、潤滑塗装膜の膜厚の1/10以下の径を有する粒子からなり、ベースレジンに対して2〜20体積%の割合で添加されていることを特徴とする請求項1記載のエアー動圧軸受装置。
  6. 軸部材及び軸受部材にそれぞれ設けられた動圧面どうしを対向配置することにより動圧軸受部を形成し、当該動圧軸受部内の空気に動圧を発生させることによって上記軸部材と軸受部材とを相対回転可能に支承するエアー動圧軸受装置の製造方法において、
    上記軸部材又は軸受部材の動圧面を含む表面上に、アクリル系樹脂からなるべ一スレジンにフッ素系樹脂を分散した塗料を用いて潤滑塗装膜を被着・形成するものであって、
    上記フッ素系樹脂として、前記アクリル系樹脂の軟化温度より低い融点を有する樹脂を用いるようにしたことを特徴とするエアー動圧軸受装置の製造方法。
  7. 前記フッ素系樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いるとともに、
    前記アクリル系樹脂からなるべ一スレジンに、当該べ一スレジンの軟化点をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点より高くする無機フィラーを添加するようにしたことを特徴とする請求項6記載のエアー動圧軸受装置の製造方法。
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