JP3597963B2 - コバルトブルー系顔料とその生成方法 - Google Patents

コバルトブルー系顔料とその生成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れた無機顔料として知られ、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物を主体とし、プラスチック、セラミック、塗料等の着色や蛍光体用として幅広く使用されているコバルトブルー系顔料とその生成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コバルトブルー系顔料は他の複合酸化物と同様に原料粒子間の固相反応によって生成される。この固相反応による複合酸化物の製造法は、原料を混合し、それを焼成して複合酸化物を生成させ、それを粉砕し微細化し、使用可能な顔料とする。出発原料はコバルト源として酸化物、水酸化物または炭酸塩など、アルミニウム源とし、酸化物、水酸化物などが用いられる。これらの出発原料を調合し、混合粉砕後、1200°C以上、3〜6時間焼成を行い、さらに、必要に応じて、湿式粉砕、乾式粉砕を行い製品とするものである。
【0003】
この従来法における固相反応は、ミクロ的に見ると、焼成時に原料粒子同士の接点から反応が開始し、相互の原子の拡散によって進行するので、それを促進させるために高温長時間の加熱を必要とする上、1つの粒子の中でも、接点からの距離の違いによって反応の程度が異なり、全体が均一な生成物を製造することは困難である。つまり、従来法によって得たコバルトブルー系顔料は、1200°C以上、3〜6時間焼成を行ったにもかかわらず不均一な反応生成物の集合体であり色・色調にばらつきが存在し安定な色調が得られ難い。
【0004】
また、図1に示すように、水酸化アルミニウムを加熱していくと、200°Cでギブサイトからベーマイト、さらに、500°C以上では遷移アルミナとなる。遷移アルミナは、温度が上がっていくとともにγ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナへと転移し、最終的に1000°Cでα−アルミナに転移する。従来法では、このα−アルミナへの転移温度に比べはるかに高い温度で焼成するため、微量の未反応アルミナが屈折率が1.64〜1.67の屈折率の低い遷移アルミナから、1.77の屈折率の高いα−アルミナに転移して顔料の不透明化を起こす。
【0005】
また、特開平2−283771号公報には、共沈法による原料調整方法が開示されている。この共沈法は、アルミニウム塩とコバルト塩の混合溶液をアルカリで中和し水酸化物として共沈させる原料調整法である。この共沈物を焼成することにより従来法の欠点である高温長時間焼成と反応の不均一性を克服し鮮明な色調のコバルトブルー系顔料を得ることができるという利点がある。しかし、共沈反応に時間がかかるばかりでなく、共沈殿物の水洗、乾燥、乾燥後の解砕などのかなり複雑な工程が必要となり生産コストが著しく高くなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、低温、短時間の固相反応によって、過剰な焼結状態を生じることのないようにし、かつ、透明性を阻害する原因である未反応のα−アルミナを含まない鮮明な色の透明性に優れた高品質のコバルトブルー系顔料の生成方法を確立することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、コバルト源として水酸化コバルトまたは塩基性炭酸コバルト、アルミニウム源として水酸化アルミニウム、γ−アルミナあるいは水酸化アルミニウムとγ−アルミナの混合物のいずれかよりなる出発原料を乾式で粉砕混合した後、加熱焼成してコバルトブルー系顔料を生成する方法において、出発原料の粉砕混合時にメカノケミカル効果を与えるのに充分なエネルギーを加えることによって、原料粉体を非晶質化、複合化させてコバルト、アルミニウムが均一に存在する二次粒子を形成させるような複合化処理を行うものである。
【0008】
一般に被粉砕物を粉砕機を用いて乾式で粉砕していくと、粉砕操作をいくら続けても、これ以上粉砕できない限界粒径に達する。粉砕物が限界粒径に近づくと著しく粉砕効率が悪くなるばかりでなく、逆粉砕と言われる造粒化が起こってくる。限界粒径に達した後も、粉砕操作を続けると各粒子にエネルギーが付加され、粒子の非晶質化(無定形化)、粉体の複合化が進行し、二次粒子が形成される。
【0009】
このような効果は、X線回折で確認される非晶質化(無定形化)の進行、TG−DTA/DSC熱分析での発熱、吸熱ピークの消滅や移動、また、比表面積の増加傾向から減少傾向への移行等に現われる。これらの効果は総称してメカノケミカル効果と呼ばれている。
【0010】
このメカノケミカル効果自体は、久保輝一郎著「無機物のメカノケミストリー」総合技術出版(1987)にも記載されているように公知の事実であり、粉体の表面改質、高温超伝導物質の生成等に適応することが知られているが、これを複合酸化物顔料、とくに、コバルトブルー系顔料の製造に適用すること、また、これによって得られたコバルトブルー系顔料がとくに透明性に優れたものであることは全く知られていない。
【0011】
本発明による複合化処理した粉体が、多元素が所定の割合で均一に共存する二次粒子が形成されていることは電子顕微鏡観察(SEM観察・EDX分析)により確認でき、また、複合化処理時の機械的エネルギーによって複合化処理前に比べ試料の非晶質化が進むことはX線回折により、そのピークの線幅が複合化処理前に比べ広くなり、結晶の無定形化が進んでいることにより確認できる。
【0012】
原料粒子が複合化された二次粒子は、焼成による反応の出発点である原料粒子間の接点数が著しく増加している上にそれぞれの二次粒子中の原料比率が均一になっており、加えて、複合化処理時の機械的エネルギーによって反応促進の要因のーつである非晶質化が進んでいるので、従来法では、十分な発色に至るためには、1200°C以上で3時間以上の焼成が必要であったのが、焼成温度が100〜400°C程度低温かつ短時間で、すなわち、850〜1050°C、1時間程度の焼成で十分な発色に至る。また、得られる焼成物の過剰な焼結を防止できるので粉砕工程の簡略化が可能である。
【0013】
本発明によるコバルトブルー系顔料は、従来から使用されているコバルトブルー系顔料にはない透明性の高いもので、特に、コバルト源として水酸化コバルトまたは塩基性炭酸コバルト、アルミニウム源として水酸化アルミニウム、γ−アルミナもしくは、水酸化アルミニウムとγ−アルミナの混合物を出発原料にし、900〜1000°Cで焼成した時、顕著に現われる。従来法では、充分に発色させるためには、1200°C以上、好ましくは1250°C以上かつ3時間以上という高温長時間の焼成が必要なために、微量の未反応のアルミニウムが、1000°Cで屈折率の低い遷移アルミナから屈折率の高いα−アルミナに転移し、得られる顔料は未反応の屈折率の高いα−アルミナを含むために透明性が損なわれる。しかし、本発明によって得たコバルトブルー系顔料は、未反応のアルミニウムが、屈折率の低い遷移アルミナから屈折率の高いα−アルミナに転移する温度以下の焼成条件で充分に発色し、透明性を阻害するα−アルミナの生成を防止できるために優れた透明性を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、複合化処理のためには摩砕効果の比較的高い振動ミル、アトライター、遊星ボールミル等の高エネルギー型ミルのような粉砕機を乾式で利用するのが好ましいが、転動ボールミル等の低エネルギー型のミルでも高エネルギー型ミルに比べ長時間の複合化処理を行うことによって充分な効果が現れる。
【0015】
また、粉砕媒体としては、ロッド、シリンダー、ボールいずれの形状の粉砕媒休も使用可能であるが、粉砕媒体の材質は、粉砕媒体の摩耗による不純物の混入や処理効率を考慮し、α−アルミナ、ジルコニア、鉄などの中から適当な材質を選定する。
【0016】
さらに、媒体、ポットの壁等への付着防止や複合化処理効率の向上のために、0.05〜5.0重量%の液体助剤を添加することもできる。一般的に粉砕助剤として広く使われているものを、同時添加(連続式のミルであれば滴下になる)することによりこれらの効果が期待できる。例えば、水、グリコール類、アミノエタノール類、アルコール類等が液体助剤として使用され、特にグリコール類ではエチレングリコール、プロピレングリコール等、アミノエタノール類ではトリエタノールアミン、アルコール類では、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、へキサノール等が特に効果が高い。
【0017】
【実施例】
以下の実施例において得た複合化処理粉体の電子顕微鏡観察には、S−2300型走査電子顕微鏡/(株)日立製作所製、EDX元素分布分析には走査電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線マイクロアナライザーEMAX−3700/(株)堀場製作所製、実施例において得た複合化処理粉体及び顔料のX線回折線測定にはRAD−III/理学電機(株)製を用いた。
【0018】
また、実施例において得た顔料は以下の手順にしたがって展色を行った。2〜3mmφのガラスビーズ45.0gを投入した容量70mlのガラス容器中に顔料試料4.0g、アクリルラッカー30.0g、シンナー2.0gを加えた後、ぺイントシェイカー(レッド デヴィル社製)を用いて15分振動撹拌し展色用試料を得た。この試料を、150μmアプリケーターを用い黒帯アート紙に展色を行った。測色は、分光光度計(カラコムシステム/大日精化工業(株)製)によって黒帯アート紙の白色部分について行った。測色結果は、L*a*b*表色系を用いて示した。L*a*b*表色系では、明度をL*、色相と彩度を示す色度をa*、b*で表わしている。a*、b*は色の方向を表わしており、+a*は赤方向、−a*は緑方向、+b*は黄方向、−b*は青方向を示しており数値の絶対値が大きくなるにしたがって鮮やかな色となる。透明度は、黒帯アート紙の白色部分を測定しLw、aw、bwの値を測定し、次に黒帯アート紙の黒色部分を測定しLb、ab、bbの値を測定した。この2つの色差ΔEを以下の式によって算出し透明性の指標とした。このΔEは値が大きいほど透明度が大きいことを示している。
【数1】
Figure 0003597963
【0019】
実施例1
出発原料として、水酸化コバルト、水酸化アルミニウムをアルミニウム1モルに対しコバルトのモル数が0.30となるように調合した。この試料200gをアルミナ製25mmφの玉石を5kg投入した容量3lのナイロンポットを使用し振動ミル(MB−1型/中央化工機(株)製)を用いて、常温条件下で、3時間、乾式複合化処理した。
【0020】
複合化処理前試料のEDX元素分布分析による元素分布の結果を図2に、複合化処理後試料のEDX元素分布分析による元素分布の結果を図3に模式的に示す。また、複合化処理前試料のX線回折線を図4に、複合化処理後試料のX線回折線を図5に示す。図2より、複合化処理前には水酸化コバルト粒子と水酸化アルミニウム粒子の単なる混合物であったのが、図3より、複合化処理後試料はコバルトとアルミニウムが均一に分布した粒子になっていることがわかる。図5のX線回折線を見ると、図4のX線回折線に比べピークの幅が広くかつ強度も弱い。これは複合化処理により出発原料の非晶質化(結晶の無定形化)が進んだためによるものである。つまり、粉砕混合物は、非晶質化が進行した水酸化コバルトと水酸化アルミニウムが所定の割合で均一に存在する二次粒子からなっていることがわかる。
【0021】
この粉砕混合物に950°C、30分の焼成を行うと濃い青の発色をした。この焼成物は、低温かつ短時間で焼成したために粒成長や著しい焼結をおこしておらず、焼成前後の粒径はほぼ同じであった。焼成後湿式粉砕を行わずすぐに乾式粉砕を行いコバルトブルー系顔料を得た。
【0022】
この顔料についてX線回折線測定を行った。X線回折線を図6に示す。この顔料のX線回折線には、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物のX線回折ピークのみ認められ、酸化コバルト、α−アルミナは認められなかった。つまり、コバルトは、全て反応して複合酸化物として存在し、微量の未反応のアルミニウムは、非晶質の屈折率の低い遷移アルミナとして存在していることがわかった。
【0023】
この顔料の展色の結果をL*a*b*表色系で表わすと、L*=35.09、a*=28.11、b*=−68.57となった、また、透明性の指標であるΔEは53.43の高い値を示した。この顔料は酸化コバルトが存在せず、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物のみが存在するために、明るく赤みを帯びた青味の濃いコバルトブルー系顔料の顔料であることがわかった。加えて、微量の未反応のアルミニウムは非晶質の屈折率の低い遷移アルミナとして存在しているために透明性に優れた特徴をもつことがわかった。
【0024】
比較例1
出発原料として、水酸化コバルト、水酸化アルミニウムを実施例1と同様にアルミニウム1モルに対しコバルトのモル数が0.30となるように調合し、この試料200gをアルミナ製25mmφの玉石を4kg、水を1.11投入した容量3.5lのアルミナポットを使用し湿式転動ボールミルを用いて、常温下で、24時間、湿式粉砕混合し、110°Cで乾燥させた。
【0025】
この混合物についてSEM観察、EDX元素分布分析及びX線回折線測定を行った。図7に、湿式粉砕混合後試料のEDX元素分布分析による元素分布の結果を模式的に示す。図7より、湿式粉砕混合後試料はコバルトとアルミニウムが同時に分布する粒子は存在しないことがわかる。湿式粉砕混合後のX線回折線は実施例1の複合化処理前のX線回折線と同じくピークの幅が狭くかつ強度も強い。これは出発原料の非晶質化が進行していないことがわかった。実施例1と同様の950°C、30分の焼成では青の発色を全くしていない黒色となった。充分に発色させるためには、1200°C以上、好ましくは1250°C、3時間程度焼成する必要があるので1250°C、3時間の焼成を行った。得た焼成物は、焼結が進み、粒成長しているために湿式粉砕を行わなければならなかった。湿式粉砕処理後、乾燥し、さらに乾式粉砕を行いコバルトブルー系顔料を得た。
この顔料についてX線回折線測定を行った。X線回折線を図8に示す。この顔料のX線回折線には、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物、酸化コバルト、α−アルミナのX線回折ピークが認められた。コバルトは、一部が複合酸化物となり未反応のものが酸化コバルトとして存在し、微量の未反応のアルミニウムは、結晶性が高く屈折率の高いα−アルミナとして存在していることがわかった。
【0026】
この顔料の展色の結果をL*a*b*表色系で表わすと、L*=33.96、a*=19.38、b*=−59.83となった。また、透明性の指標であるΔEは28.26の値を示した。この顔料は、青色顔料として使用するには適当であるが、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物の他、実施例1で得た顔料に比べ焼成温度が高すぎるため、α−アルミナも共存するために、実施例1で得た顔料に比べ緑味を帯び白くくすみ、かつ、透明性に乏しいコバルトブルー系顔料の顔料であることがわかった。
【0027】
比較例2
実施例1と同条件で出発原料を調合し、同条件で乾式複合化処理を行った。得た複合化処理粉体に800°C、2時間の焼成を行うと黒っぽい青の発色をした。この焼成物は、実施例1と同様に、低温かつ短時間で焼成したために粒成長や著しい焼結をおこしておらず、焼成前後の粒径はほぼ同じであった。焼成後湿式粉砕を行わずすぐに乾式粉砕を行いコバルトブルー系顔料を得た。
【0028】
得た顔料についてX線回折線測定を行った。この顔料のX線回折線には、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物、酸化コバルトのX線回折ピークが認められ、アルミナのX線回折ピークは認められなかった。コバルトは、一部が複合酸化物となり未反応のものが酸化コバルトとして存在しており、微量の未反応のアルミニウムは、非晶質の屈折率の低い遷移アルミナとして存在していることがわかった。
【0029】
この顔料の展色結果をL*a*b*表色系で示すと、L*=24.21、a*=10.39、b*=−40.53となった。この顔料は、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物の他、酸化コバルトが共存するために実施例1で得た顔料に比べ、かなり緑味を帯び青みに乏しいため青色顔料として使用するには適しない。つまり、800°Cでは焼成温度が低すぎるため発色不良となり、青色顔料として使用するのに適当である発色を得るには、少なくとも850°C以上の焼成が必要なことがわかった。
【0030】
比較例3
実施例1と同条件で出発原料を調合し、同条件で乾式複合化処理を行った。得た複合化処理粉体に1100°C、30分の焼成を行うと濃い青の発色をした。この焼成物は、短時間で焼成したために粒成長や著しい焼結をおこしておらず、焼成前後の粒径はほぼ同じであった。焼成後湿式粉砕を行わずすぐに乾式粉砕を行いコバルトブルー系顔料を得た。
【0031】
得た顔料についてX線回折線測定を行った。この顔料のX線回折線には、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物、α−アルミナのX線回折ピークが認められ、酸化コバルトのX線回折ピークは認められなかった。コバルトは、すべてが複合酸化物として存在しており、微量の未反応のアルミニウムは、屈折率の高いα−アルミナとして存在していることがわかった。
【0032】
この顔料の展色結果をL*a*b*表色系で示すと、L*=33.14、a*=20.18,b*=−60.83となった。また、透明性の指標であるΔEは36.68の値を示した。この顔料は、青色顔料として使用するには適当であるが、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物の他、実施例1で得た顔料に比べ焼成温度が高すぎるため、α−アルミナも共存するために、緑味を帯び白くくすみ、かつ、透明性に乏しいコバルトブルー系顔料の顔料であることがわかった。
【0033】
実施例2
出発原料として、塩基性炭酸コバルト、γ−アルミナをアルミニウム1モルに対しコバルトのモル数が0.30となるように調合した。この試料を、実施例1と同条件で乾式複合化処理を行った。この混合物についてSEM観察、EDX元素分布分析及びX線回折線測定を行った結果、この混合物は、実施例1と同様に、結晶性を乱された状態のコバルトとアルミニウムが所定の割合で均一に存在する二次粒子からなっていた。
【0034】
この粉砕混合物に950°C、30分の焼成を行うと濃い青の発色をした。この焼成物は、低温かつ短時間で焼成したために粒成長や著しい焼結をおこしておらず、焼成前後の粒径はほぼ同じであった。焼成後湿式粉砕を行わずすぐに乾式粉砕を行いコバルトブルー系顔料を得た。
【0035】
この顔料についてX線回折線測定を行った。この顔料のX線回折線には、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物のX線回折ピークのみ認められ、酸化コバルト、α−アルミナは認められなかった。つまり、コバルトは、全て反応して複合酸化物として存在し、微量の未反応のアルミニウムは、非晶質の屈折率の低い遷移アルミナとして存在していることがわかった。
【0036】
この顔料の展色の結果をL*a*b*表色系で表わすと、L*=34.63、a*=27.98,b*=−67.40となった、また、透明性の指標であるΔEは52.64の高い値を示した。この顔料は酸化コバルトが存在せず、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物のみが存在するために、明るく赤みを帯びた青味の濃いコバルトブルー系顔料の顔料であることがわかった。加えて、微量の未反応のアルミニウムは非晶質の屈折率の低い遷移アルミナとして存在しているために透明性に優れた特性をもつことがわかった。
【0037】
比較例4
出発原料として、A)水酸化コバルト、α−アルミナ、B)酸化コバルト、水酸化アルミニウム、C)酸化コバルト、α−アルミナのそれぞれをアルミニウム1モルに対しコバルトのモル数が0.30となるように調合した。これらの試料を、実施例1と同条件で乾式複合化処理を行った。この混合物についてSEM観察、EDX元素分布分析及びX線回折線測定を行った結果、この混合物は、実施例1と同様に、結晶性を乱された状態のコバルトとアルミニウムが所定の割合で均一に存在する二次粒子からなっていた。得た複合化処理粉体に実施例1と同様の950°C、30分の焼成を行うとA)、B)、C)とも黒っぽい青の発色で青色顔料として使用するには適しない。950°Cでは焼成温度が低すぎるため発色不良となるため青色顔料として使用するのに適当である発色を得るには、実施例1に比べ高温長時間のA)1100°C、2時間、B)1100°C、1時間、C)1150°C、2時間の焼成が必要であった。充分な発色を得たA)からC)の顔料のX線回折線には、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物、酸化コバルト、α−アルミナのX線回折ピークが認められた。コバルトは、一部が複合酸化物となり未反応のものが酸化コバルトとして存在し、微量の未反応のアルミニウムは、結晶性が高く屈折率の高いα−アルミナとして存在していることがわかった。
【0038】
これらの顔料の展色結果を表1に示す。これらの顔料は、青色顔料として使用するには適当であるが、コバルト・アルミニウムのスピネル型複合酸化物の他、実施例1で得た顔料に比べ焼成温度が高すぎるためα−アルミナも共存するために、緑味を帯び白くくすみ、かつ、透明性に乏しいコバルトブルー系顔料の顔料であることがわかった。
【表1】
Figure 0003597963
【0039】
【発明の効果】
従来にはない透明性に優れた高品質のコバルトブルー系顔料を、コストを上昇させることなく得ることができ、これによって従来のコバルトブルー系顔料が制限されていた蛍光体用等の用途へも高品質の顔料を安価で供給可能となる。
【0040】
【図面の簡単な説明】
【図1】水酸化アルミニウム、γ−アルミナの温度による相変化を示す。
【図2】複合化処理前試料のEDX元素分布分析による元素分布の模式図を示す。
【図3】複合化処理後試料のEDX元素分布分析による元素分布の模式図を示す。
【図4】複合化処理前試料のX線回折線を示す。
【図5】複合化処理後試料のX線回折線を示す。
【図6】実施例1により得た顔料のX線回折線を示す。
【図7】湿式粉砕処理後試料のEDX元素分布分析による元素分布の模式図を示す。
【図8】比較例1により得た顔料のX線回折線を示す。

Claims (2)

  1. コバルト源として水酸化コバルトまたは塩基性炭酸コバルトと、アルミニウム源として水酸化アルミニウムあるいはγ−アルミナよりなる出発原料を乾式で粉砕混合した後、加熱焼成したコバルトブルー系顔料であって、
    出発原料の粉砕混合時にメカノケミカル効果を与えるのに充分なエネルギーを加えて、コバルトおよびアルミニウムが均一に存在する二次粒子とし、この二次粒子を加熱焼成後、透明性に優れたものとしたことを特徴とするコバルトブルー系顔料。
  2. コバルト源として水酸化コバルトまたは塩基性炭酸コバルトと、アルミニウム源として水酸化アルミニウムあるいはγ−アルミナよりなる出発原料を乾式で粉砕混合した後、加熱焼成するコバルトブルー系顔料の生成方法であって、
    出発原料の粉砕混合時にメカノケミカル効果を与えるのに充分なエネルギーを加えてコバルトおよびアルミニウムが均一に存在する二次粒子とし、次いで、この二次粒子を850〜1050°Cの温度範囲で加熱して透明性に優れたものすることを特徴とするコバルトブルー系顔料の生成方法。
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