JP3597083B2 - マヨネーズ様食品の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は特定の方法で得られた大豆蛋白を卵の代りに乳化剤として用いる粘度安定性のすぐれたマヨネーズ様食品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年健康のためコレステロールを含まない食品に対するニーズが高まってきており、マヨネーズについても乳化剤として卵を用いない大豆蛋白を用いたマヨネーズ様食品の開発がこれまでにも試みられてきた。すなわちアルコール変性された大豆蛋白質をプロテアーゼで三塩化酢酸可溶化率15〜35%になるまで分解して可溶化し、不溶物を分離して精製大豆蛋白質を得た後、この精製大豆蛋白質に油脂、食酢、調味料等を混合乳化することからなるマヨネーズ様食品の製造法(特開昭56−26171)や、アルコール変性された大豆蛋白質の水分散液に中性又はアルカリ性プロテアーゼを作用させ三塩化酢酸可溶化率約8〜15%になるまで部分加水分解を行わせ、酵素の失活後不溶物を除去して精製大豆蛋白質を得た後、この精製大豆蛋白質に該大豆蛋白の含有量が組成物の全重量に対して乾物として約0.5%をこえ且つ2.5重量%未満となる様に油脂、食酢、調味料等を混合し乳化することからなる、スクイズ性のすぐれたマヨネーズ様食品の製造法(特開昭56−158073)が提案されている。
【0003】
しかしながら、これらの提案の方法で製造されたマヨネーズ様食品では、製造直後および製造後時間経過が少ない時点では粘度が高く、プラスチック容器などのチューブから押出した時に保型性を有しているが、製造後数ヵ月経過した後では製造直後と比較した粘度減少率が大きいために粘度が低くなり、チューブから押出した時に保型性を有しておらず、商品としての価値が低下する。製造後数ヵ月経過した後の粘度を高く維持するためには、製造直後の粘度をより高くする必要があるが、その場合は粘度が高すぎるために製造時に容器への充填不良が発生するなど、製造に支障をきたすことになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、製造後数ヵ月経過した後でも製造直後と比較して粘度減少率が小さく、チューブから押出した時に保型性を有するマヨネーズ様食品の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、脱脂大豆を含水アルコールで洗浄することによって得られる溶剤変性した濃縮大豆蛋白を弱アルカリ性水溶液に分散させ、蛋白質加水分解酵素を作用させたのち、加熱して酵素分解反応を停止し、該加熱状態を維持したまま均質化処理を行って得られる精製大豆蛋白を使用することによって前記目的を達成できることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0006】
すなわち本発明は、脱脂大豆を含水アルコールで洗浄することによって得られる溶剤変性した濃縮大豆蛋白を弱アルカリ性水溶液に分散させ、蛋白質加水分解酵素を作用させたのち、加熱して酵素分解反応を停止し、該加熱状態を維持したまま均質化処理を行って精製大豆蛋白を得る第一工程と、この精製大豆蛋白に油脂、食酢、調味料等を混合し乳化する第二工程よりなる、製造後数ヵ月経過した後でも製造直後と比較した粘度減少率が小さいためにチューブから押出した時の保型性を有するマヨネーズ様食品の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の方法を詳述すれば次の通りである。まず、脱脂大豆は原料丸大豆を脱皮してまたはそのまま圧扁し、溶剤により油を抽出した残渣として得ることができるが、該方法に限定されるものではない。この脱脂大豆は、50〜80W/W%(重量/重量%を示す。以下同じ)の含水アルコール(アルコールとしては一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールが用いられる。食品製造および取扱い的見地からはエタノールが最も好ましい)で公知の方法(浸漬、フラッシング等)により前記不純物を洗浄し乾燥する。得られる濃縮大豆蛋白は通常65〜75W/W%の蛋白質を含み、このうち水溶性蛋白質はNSIとして5〜10であるから、ネイティブな蛋白質に比べて強度にアルコール変性を受けている。また脱脂大豆中の有臭成分や色素成分はほぼ完全に除かれている。
【0008】
本発明では、この原料(前記溶剤変性した濃縮大豆蛋白)を5〜20倍重量の水に分散させたのち、アンモニア、カセイソーダ、炭酸ナトリウム、好ましくはアンモニアでpH7.5〜9.0好ましくはpH7.5〜8.5に調整する。該溶液を攪拌しながら蛋白質加水分解酵素例えばニュートラーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー(株)製、商品名)、アルカラーゼ(同、商品名)などを加えて酵素分解をする。pHが7.5〜9.0の範囲をはずれると、酵素の加水分解効率が低下する。
酵素分解の温度および時間は任意に選べるが、長時間の酵素分解による苦味の発生を抑制し、分解時間をできるだけ短縮するためにその酵素の至適温度が好ましい。
【0009】
実際の酵素分解工程の条件は、分解前の蛋白分散液の濃度、pH、酵素の種類、力価、原料蛋白に対する添加量、分解時間および温度などのいずれの条件によっても酵素分解の速さが影響されるため、反応物を経時的にサンプリングし、その5%三塩化酢酸水溶液による蛋白質の可溶率(TCA可溶率)が8〜35%、好ましくは15〜25%になるように反応時間を設定する。TCA可溶率は8%以下では、溶解性が低くなる。また、35%を超えると苦味の発生を伴うことがあり、好ましくない。本発明における酵素分解反応の概略的な温度および時間は、ニュートラーゼの場合には50±2℃で約1時間、またアルカラーゼの場合には50±2℃で約1時間である。
【0010】
この酵素分解反応は、酵素の失活温度以上(通常90℃以上)に加熱して停止し、次いで不溶物を除去することなく、その温度を維持した状態でホモジナイザーを用い100kg/cm2以上、好ましくは1000〜2000kg/cm2の圧力下で均質化および微粒子化処理する。100kg/cm2未満では均質化処理が不十分である。酵素の失活操作とそれに続く均質化処理は、UHT(高温瞬間殺菌機)としてAUHT(岩井機械(株)製、商品名)による高温短時間処理と高圧ホモジナイザーとしてナノマイザーシステム((株)ナノマイザー製、商品名)を組み合わせることが有利である。
【0011】
濃縮大豆蛋白の水分散液の蛋白質加水分解酵素の反応を停止したのち、均質化処理を行わない場合、含んでいる水不溶性多糖類(俗称オカラ)が食品中でザラツキの原因となるため、食品原料として供するには支障をきたす場合がある。
【0012】
均質化処理後に得られた精製大豆蛋白溶液またはこれを噴霧乾燥した精製大豆蛋白粉末からマヨネーズ様食品は次の様にして製造される。精製大豆蛋白溶液またはこれを噴霧乾燥した精製大豆蛋白粉末を水に還元したものに食塩、グルタミン酸ナトリウム、核酸系調味料、砂糖、天然エキス等の調味料、香辛料を加え、さらに必要に応じて増粘安定剤を分散溶解させる。食用油中にはあらかじめ天然色素、香料等を溶解させておくことができる。こうして得られた大豆蛋白溶液と食用油とをパドルミキサー、ホモミキサー、コロイドミル等の乳化機を用いて乳化する。次に食酢を加え、さらに乳化機を用いて乳化する。
【0013】
このようにして得られたマヨネーズ様食品は、粘度安定性がすぐれており、製造後数ヵ月経過した後でも製造直後と比較した粘度減少率が小さいためにチューブから押出した時の保型性を有する。
【0014】
【実施例】
以下の実施例および比較例において、%の単位は特にことわらないかぎり重量基準である。
実施例1
低変性脱脂大豆5kgを60W/W%の含水エタノール35kgに浸漬し、50℃で60分間洗浄を行った。これを濾別し、減圧乾燥機にて70℃で乾燥したのち粉砕して濃縮大豆蛋白3.4kgを得た。このものの分析値は水分:7.0%、粗蛋白質:65.8%、NSI:8であった。次にこの全量をジャケット付きタンクに移し、34リットルの温水を加え攪拌、分散し、アンモニア液でpH8.0に調整し、液温を50℃とした。
アルカラーゼ(0.6L)10.2gを加えて50℃で60分間作用させ、その後AUHTで125℃にて5秒間加熱処理して反応停止した。この時、TCA可溶率は18%であった。それに続いてナノマイザーシステムで1000kg/cm2にて均質化処理を行い、次に噴霧乾燥して3.2kgの精製大豆蛋白Aを得た。これは、大豆臭もなく、色調も明るい白色で水に対する分散性および溶解性の高いものであった。分析値は、水分:6.0%、粗蛋白質:65.3%、NSI:72であった。
この精製大豆蛋白Aを用いて、次の配合に従ってマヨネーズ様食品Aを製造した。
綿実サラダ油 550g
食酢 70g
調味料 50g
香辛料 5g
精製大豆蛋白A 20g
増粘安定剤 5g
天然色素 2g
水 298g
調味料、香辛料、精製大豆蛋白A、増粘安定剤はあらかじめ水に分散溶解し、これにあらかじめ天然色素を溶解させておいた綿実サラダ油を滴加してホモミキサーで乳化させ、次いで食酢を添加してさらに乳化を続けマヨネーズ様食品Aを1kg得た。
【0015】
比較例1
実施例1と同様の方法により濃縮大豆蛋白を得、酵素分解反応を行い、加熱処理にて酵素反応を停止した。次に遠心分離によって不溶物を除去し、噴霧乾燥して2.1kgの精製大豆蛋白Bを得た。分析値は、水分:6.0%、粗蛋白質:73.3%、NSI:86であった。
この精製大豆蛋白Bを用いて実施例1と同様の方法で、次の配合に従ってマヨネーズ様食品Bを1kg得た。ここで、精製大豆蛋白Bの配合量は、実施例1における精製大豆蛋白Aの配合量と、粗蛋白質含有量が等しくなるように調整した。
綿実サラダ油 550g
食酢 70g
調味料 50g
香辛料 5g
精製大豆蛋白B 17.8g
増粘安定剤 5g
天然色素 2g
水 300.2g
【0016】
(評価)
マヨネーズ様食品Aおよびマヨネーズ様食品Bを250gづつプラスチック容器に充填し、製造直後および20℃3ヵ月保存後の粘度測定とチューブから押出した時の保型性評価を行った。その結果を第1表に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
即ちマヨネーズ様食品Bのように均質化処理を行わず遠心分離によって不溶物を除去した精製大豆蛋白を用いて製造したものは、製造後数ヵ月経過した後では製造直後と比較した粘度減少率が大きいためにチューブから押出した時の保型性を有せず、逆にマヨネーズ様食品Aのように均質化処理を行った精製大豆蛋白を用いて製造したものは、製造後数ヵ月経過した後でも製造直後と比較した粘度減少率が小さいためにチューブから押出した時の保型性を有する。
【0019】
【発明の効果】
本発明によるマヨネーズ様食品は、製造後数ヵ月経過した後でも製造直後と比較して粘度減少率が小さく、チューブから押出した時に保型性を有している。
Claims (12)
- 脱脂大豆を含水アルコールで抽出して得た濃縮大豆蛋白を、弱アルカリ性水溶液に分散させ、蛋白質加水分解酵素を作用させたのち、加熱して酵素分解反応を停止し、不溶物を除去することなく、均質化処理を行って精製大豆蛋白を得る第一工程と、
この精製大豆蛋白に油脂、食酢、調味料を混合し乳化する第二工程、
を有するマヨネーズ様食品の製造方法。 - 脱脂大豆を含水アルコールで抽出して得た濃縮大豆蛋白を、弱アルカリ性水溶液に分散させ、蛋白質加水分解酵素を作用させたのち、加熱して酵素分解反応を停止し、不溶物を除去することなく、均質化および微粒子化処理を行って精製大豆蛋白を得る第一工程と、
この精製大豆蛋白に油脂、食酢、調味料を混合し乳化する第二工程、
を有するマヨネーズ様食品の製造方法。 - 均質化処理が、100kg/cm 2 以上の圧力下で均質化するものである請求項1または2に記載のマヨネーズ様食品の製造方法。
- 濃縮大豆蛋白を弱アルカリ性水溶液に分散させた分散液のpHが7.5から9.0である請求項1から3のいずれか1項に記載のマヨネーズ様食品の製造方法。
- 濃縮大豆蛋白を弱アルカリ性水溶液に分散させ、蛋白質加水分解酵素を作用させたのち、加熱して酵素分解反応を停止する時期が、5%三塩化酢酸水溶液による蛋白質の溶解率(TCA可溶率)が8〜35%である請求項1から4のいずれか1項に記載のマヨネーズ様食品の製造方法。
- 脱脂大豆を含水アルコールで抽出して得た濃縮大豆蛋白を、弱アルカリ性水溶液に分散させ、蛋白質加水分解酵素を作用させたのち、加熱して酵素分解反応を停止し、不溶物を除去することなく、均質化処理を行って得た精製大豆蛋白を含有したことを特徴とするマヨネーズ様食品。
- 脱脂大豆を含水アルコールで抽出して得た濃縮大豆蛋白を、弱アルカリ性水溶液に分散させ、蛋白質加水分解酵素を作用させたのち、加熱して酵素分解反応を停止し、不溶物を除去することなく、均質化および微粒子化処理を行って得た精製大豆蛋白を含有したことを特徴とするマヨネーズ様食品。
- 均質化処理が、100kg/cm 2 以上の圧力下で均質化するものである請求項6または7に記載のマヨネーズ様食品。
- 濃縮大豆蛋白を弱アルカリ性水溶液に分散させた分散液のpHが7.5から9.0である請求項6から8のいずれか1項に記載のマヨネーズ様食品。
- 濃縮大豆蛋白を弱アルカリ性水溶液に分散させ、蛋白質加水分解酵素を作用させたのち、加熱して酵素分解反応を停止する時期が、5%三塩化酢酸水溶液による蛋白質の溶解率(TCA可溶率)が8〜35%である請求項6から9のいずれか1項に記載のマヨネーズ様食品。
- 脱脂大豆を含水アルコールで抽出して得た濃縮大豆蛋白を、弱アルカリ性水溶液に分散させ、蛋白質加水分解酵素を作用させたのち、加熱して酵素分解反応を停止し、不溶物を除去することなく、均質化処理を行って得た精製大豆蛋白からなるマヨネーズ様食品の乳化剤。
- 脱脂大豆を含水アルコールで抽出して得た濃縮大豆蛋白を、弱アルカリ性水溶液に分散させ、蛋白質加水分解酵素を作用させたのち、加熱して酵素分解反応を停止し、不溶物を除去することなく、均質化処理を行って得た精製大豆蛋白を用いることを特徴とするマヨネーズ様食品の粘度安定化方法。
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