JP3597033B2 - ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素の結晶成長方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素の結晶成長方法に係わり、より詳しくはダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素を超高圧,高温下で合成するにおいて種結晶を効率よく規則的に配置することにより、機械的強度に優れ、粒度の揃った結晶を高い生産性で製造するダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素の結晶成長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
静水圧法でダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素を合成する場合、発生する核の数を制御し、相平衡線のごく近傍にある温度と圧力の下で結晶を成長させることが包有物の少ない、形の良い結晶を得る上で重要である。従って、種結晶を用いて発生する核の数を制御することは有効な手段である。
【0003】
しかし、たとえ核の数を制御し得ても、上記高圧相物質の安定領域側の相平衡線のごく近傍にある温度、圧力条件に保持する必要があるが、工業的な超高圧合成装置において反応部の温度、圧力条件を目的の値に制御することは容易でない。そのため、種結晶を用いても、粒度分布幅が小さく、結晶成長率が大きく、熱衝撃強度、圧壊強度その他の機械的特性に優れるダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素結晶を高い生産性を以て製造することは困難である。
【0004】
そこで、特開昭61−68395号公報および特開昭61−68398号公報に、反応部である種結晶の周囲の温度、圧力条件を制御するために、溶媒物質または原料物質(非ダイヤモンド炭素および低圧相窒化ホウ素)の板に特定の粒径の種結晶を規則的に配置させることが開示され、またそのための具体的方法として、例えば、溶媒物質または原料物質の板に凹孔を穿設し、その凹孔の中に種結晶を入れる方法などが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、板に穿設した凹孔に種結晶を配置するする方法では、凹孔に効率よく種結晶を入れるために種結晶を金属めっき(ダイヤモンドの場合)またはアルカリ金属や窒化物をコート(立方晶窒化ホウ素の場合)する必要があるが、金属めっきでは所定の合金組成にすることは難しく、また工程中に不純物が混入するために、そしてアルカリ金属や窒化物のコートではそれよりもさらに汚染されやすいために、合成結晶の品質を劣化させるという問題がある。
【0006】
また、凹孔径は種結晶の寸法より僅かに大きいので凹孔に入れた種結晶が板を積層して組立てる際にこぼれ落ちることがあった。
さらに、この方法では、溶媒物質または原料物質の板に凹孔の穿設する工程、種結晶に金属めっきする工程などが必要であり、効率的な生産ができないという問題があった。
【0007】
また、上記公報には、溶媒物質または原料物質の板に種結晶を圧入することも開示されているが、それを効率良く行う具体的方法は開示されていない。
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、溶媒物質または原料物質(非ダイヤモンド炭素および低圧相窒化ホウ素)の板に種結晶を効率良く規則的に配置して、工業的な超高圧合成装置において反応部の温度、圧力条件を目的の値に制御し、よって機械的強度に優れ、粒度の揃ったダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素結晶を高い生産性で製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を下記(1)により達成できることを見出した。
(1)非ダイヤモンド炭素又は低圧相窒化ホウ素からなる原料物質層と溶媒物質層とを積層し、かつ溶媒物質層に接するように複数の種結晶を配置し、ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素の安定領域の圧力・温度条件下でダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素の結晶を成長させる結晶成長方法において、種結晶を規則的に形成された孔を通すことにより粘着シート上に規則的に分布させ、その粘着シート上に規則的に分布させられた種結晶を溶媒物質板又は原料物質板の表面に転写・圧入することにより、溶媒物質板又は原料物質板上に種結晶を規則的に配置させ、この溶媒物質板又は原料物質板を上記溶媒物質層又は原料物質層として用いて上記結晶成長を行うことを特徴とする結晶成長方法。
【0009】
また、本発明の好ましい態様として下記を挙げることができる。
(2)円周面に規則的に孔を形成した回転ドラム状の容器内に種結晶を入れ、その回転ドラムを粘着シートに沿って回転させて、回転ドラム内から種結晶をその規則的に形成した孔を通して粘着シート上に付着させることにより、粘着シート上に種結晶を規則的に分布させる(1)記載の結晶成長方法。
【0010】
(3)種結晶を溶媒物質板又は原料物質板の表面に転写・圧入した後、溶媒物質板又は原料物質板を粘着シートから分離する(1)又は(2)記載の結晶成長方法。
(4)溶媒物質板の種結晶を規則的に配置させた面に、原料物質板を積層する(1),(2)又は(3)記載の結晶成長方法。
【0011】
(5)溶媒物質板の種結晶を規則的に配置させた面に、もう1枚の溶媒物質板を配置し、その積層体に原料物質板をさらに積層する(1)〜(4)のいずれかに記載の結晶成長方法。
(6)溶媒物質板が鉄,コバルト,ニッケルから選択された金属製である(1)〜(5)のいずれかに記載の結晶成長方法。
【0012】
(7)孔が種結晶1粒のみ通り2粒同時に通ることのない寸法であり、かつ相互に等間隔に形成されている(1)〜(6)いずれかに記載の結晶成長方法。
(8)粘着シートの厚みが用いる種結晶の平均粒径の半分以下である(1)〜(7)のいずれかに記載の結晶成長方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
原料物質としては、ダイヤモンドの場合は、非ダイヤモンド炭素、具体的には、グラファイト、不定形炭素などが用いられる。立方晶窒化ホウ素の場合は、低圧相窒化ホウ素、具体的には六方晶窒化ホウ素などが用いられる。
溶媒物質としては、ダイヤモンドの場合は、鉄、コバルト、ニッケルなどの周期律表VIII属の金属や、クロム、タンタルなど通常ダイヤモンド合成において溶媒金属として使用されているものを広く用いることができる。立方晶窒化ホウ素の場合は、リチウムその他のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、およびこれらの窒化物(Li3N, Ca3N2 など)、複合窒化物(LiCaBN2, Li3BN2 など)などを広く用いることができる。
【0014】
また、ダイヤモンドの場合、溶媒金属への炭素の溶解性の制御、あるいはダイヤモンド種と炭素との接触の抑制、さらには酸素や窒素がダイヤモンドに侵入するのを防ぐ固定化剤として他の金属または化合物を、溶媒金属重量に基づき、50重量%以下程度の範囲で添加することかできる。かかる金属としてはMg, Ca, Ti, Zr, V, Nb, Zn, Y, Mo, W, Cu, Au, Ag, Si, B, Al, Ge, In, Sm, Pbおよびカーバイド、ボライドなどを挙げることができる。立方晶窒化ホウ素の場合、結晶の過度の成長速度を抑え、形状のよい結晶を得るために原料系中にSi, Mo, Zr, Ti, Al, Sn, Pt, Pb, B, Cなどおよびこれらの珪化物、硼化物、窒化物を少量添加することができる。
【0015】
原料物質層と溶媒物質層を積層し、種結晶を溶媒物質層に接して配置する態様としては、原料物質層と溶媒物質層の接触境界面に種結晶を配置する態様のほか(特開昭61−68395号公報および特開昭61−68398号公報)、原料物質層どうしの間に種結晶を配置しかつその原料物質板の少なくとも一方の原料物質層に原料物質層を積層する態様でもよい(特許第2546558号)。積層は繰り返してもよく,その回数も限定されない。
【0016】
本発明では、少なくとも種結晶を圧入する原料物質層又は溶媒物質層を原料物質板又は溶媒物質板とするものであり、残りの原料物質層又は溶媒物質層は箔状、粉末状などの物質を用いて結晶合成装置内に原料物質層又は溶媒物質層を形成してもよいが、すべての原料物質層又は溶媒物質層を原料物質板又は溶媒物質板とすることが、積層組立の簡易さという生産性の点から好ましい。そこで、以下では、本発明をすべての原料物質層及び溶媒物質層に原料物質板及び溶媒物質板を用いる場合を参照して説明する。(箔状、粉末状などの物質を用いて原料物質層及び溶媒物質層を構成する場合は、以下の説明における原料物質板及び溶媒物質板を箔状、粉末状などの物質を用いて形成すればよい。)
従って、本発明では、種結晶は原料物質板と溶媒物質板のいずれでも、圧入できるものであれば圧入して本発明を適用できる。種結晶は少なくとも溶媒物質板と接触する必要があるが、原料物質板に完全に圧入した場合でもその圧入面に溶媒物質板が配置されれば足り、厳密な意味で種結晶と原料物質板が接触しなくてもよい。しかし、種結晶を溶媒物質板と接触させるために、また圧入し易さのために、溶媒物質板、特に溶媒金属板に圧入することが実用的に好適である。
【0017】
種結晶を粘着シート上に規則的に付着させるため、規則的に形成された孔を通して種結晶を粘着シート上に移行させる。この目的で用いる規則的に形成された孔を有する手段としては、単なる篩いのような手段を用いても本発明を実施することができ、特に限定されないが、効率を考慮すると、図1に示す如く、円周面1に規則的に孔2を形成した回転ドラム状の容器3内に種結晶4を入れ、その回転ドラム3を粘着シート5に沿って回転させて、回転ドラム3内から種結晶4をその規則的に形成した孔2を通して粘着シート5上に付着させることにより、粘着シート5上に種結晶4を規則的に分布させることが好適である。回転ドラムを用いれば高速かつ連続的に粘着シート上に種結晶を規則的に分布して付着させることができる。
【0018】
種結晶の寸法は限定されないが、通常は20〜200μm 程度の粒径のものが用いられる。20μm より小さいと、発生する圧力に変動があった場合溶解消失することはがあり、200μm より大きいと、接合表面積が大きくなり不純物を取り込み易い。本発明において種結晶にめっきすることは不要であるが、溶媒物質その他の物質でめっきして種結晶の形状に丸みを持たせたり、帯電防止性を付与してもよい。
【0019】
規則的に形成した孔を形成した部分を便宜のために篩部と称するが、篩部の目開きは、種結晶の寸法によって決める。種結晶のより僅かに大きい寸法の孔にすることが好ましい。孔の形状も特に限定するわけではなく、丸孔でも、メッシュ孔でもよい。図2に孔パターンの例を示し、図中のdが種結晶の寸法を表すが、例えば、種結晶がメッシュサイズ#140/170(106〜90μm 径)ならば、#140より1〜3段粗いサイズがよく、例えば、#100相当の目開き直径(d=150μm )あるいは#120相当の目開き直径(d=125μm )とする孔とするとよい。また、種結晶がメッシュサイズ#325/400(最大約50μm 径)ならば、例えば、#200相当の目開き直径(d=80μm )あるいは#230相当の目開き直径(d=63μm )とする孔とするとよい。
【0020】
また、孔の配置パターンは特に限定するわけではないが、図2の如く、孔を相互に等間隔に形成すると、結晶成長後の結晶寸法が一様になり、粒度を揃える上で好ましい。
図2において、dは孔径、aは孔間隔である。孔間隔aを規定して成長させる結晶の寸法の上限を決めることができる。孔間隔aは、成長させて得ようとする結晶の粒子径以上の間隔が必要とされるが、品質(なるべく高密度に成長させる)と生産性の両面から、得ようとする結晶の粒径の1.0〜2.0倍位が好ましい。
【0021】
成長させる結晶の大きさや成長倍率は、種結晶の大きさや所望の結晶の寸法に依存するが、一般的には、種結晶の5倍以上、特に5〜10倍に成長させることが好適である。種結晶の寸法より5倍以上大きく成長させることにより、種結晶を用いても機械的強度に優れた結晶を得ることができるからである。また、接合部表面には不純物が多く、機械的強度も弱くなるので、種結晶の寸法を相対的に小さくする方が有利である。
【0022】
回転ドラムを回転させて粘着シート上に、篩部の孔ごとに種結晶を1個づつ付着させるために、篩部(回転ドラムの円周面)の厚さは20〜50μm 程度が好適である。この篩部の厚さは、篩部の強度、孔内に入った種結晶の安定性、粘着シートに付着すべきでない余分の種結晶の除去され易さなどを考慮して決める。篩部(回転ドラムの円周面)の材質は特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼製とし、フォトエッチング法、レーザービーム加工などで所望の孔を形成することができる。
【0023】
粘着シートに種結晶を付着させた後、種結晶を粘着シート上から溶媒物質板又は原料物質板、例えば、溶媒金属板上に転写・圧入させる。粘着シートの種結晶が付着した面に溶媒物質板又は原料物質板を重ねて配置し、任意にバックアップテープで溶媒物質板又は原料物質板を種結晶が付着した粘着テープに固定し、粘着シートおよびあればバックアップテープごと種結晶を溶媒物質板又は原料物質板に押圧して、種結晶を溶媒物質板又は原料物質板に圧入する。圧入のプレス圧力は、板の材質、種結晶の寸法などに依存するが、要は、種結晶を溶媒物質板又は原料物質板に圧入した後溶媒物質板又は原料物質板から粘着シートおよびあればバックアップテープを剥離するときに種結晶が粘着シートあるいはバックアップテープに移行しない程度に圧入されていればよく、この場合には種結晶を圧入した溶媒物質板又は原料物質板を他の原料物質板又は溶媒物質板と積層組立する際にも種結晶が溶媒物質板又は原料物質板から剥落することはない。
【0024】
次に、図3を参照して、本発明に従い種結晶を配置する好適な工業的方法の例を説明する。
ステンレス鋼製回転ドラム11は、図1に示した如く、円周面に所定の孔径dおよび孔間隔aで多数の孔を形成した篩部を構成している。この篩部はドラムの円周面全体とせず、溶媒金属板の寸法に合わせて複数に分けてドラムの円周面に形成したり、あるいは篩部はドラムの円周面全体とし、粘着テープ(一次テープ)側の選択的領域に粘着剤を形成して、余分な種結晶が無駄に廃棄されない工夫をしてもよい。一次テープ供給ロール12より一次テープ13が巻き出され、回転ドラム11の円周面に沿って移動するとき、ドラム11の回転に従い篩部の孔を通して種結晶が一次テープ13の粘着面に規則的な孔の配置に対応して付着する。14は一次テープ13の離型紙(セパレータ)の巻取りロールである。回転ドラム11で種結晶を付着された一次テープ13の種結晶付着面に溶媒金属板15を重ね、さらにその上にバックアップテープ16を供給して、溶媒金属板15を一次テープ13とバックアップテープ16で挟む。この積層構造のテープをプレス部17でプレスし、種結晶を溶媒金属板15に圧入させる。圧入後、一次テープ13の裏面に一次テープ剥離用のクラフトテープ18を当て、一次テープ剥離用クラフトテープ18を下方向に、バックアップテープ16を上方向に、それぞれ巻取りロール19,20を用いて巻き取ることにより、種結晶を圧入した溶媒金属板15を一次テープ13およびバックアップテープ16から分離する。
【0025】
一次テープとしては、ポリエステルその他のプラスチックテープを基材とした市販の粘着テープを好適に使用できる。テープの厚みの下限はテープが切れなければよい。テープの厚みの上限は種結晶のサイズの2分の1以下、さらには3分の1以下が好ましい。テープが厚すぎると圧入時に種結晶がテープに埋まり溶媒物質や原料物質の板に深く埋め込まれず、圧入不良になるおそれがあるからである。このような観点から、テープ厚みは5〜100μm が好ましく、さらには8〜15μm がよい。またテープの粘着力は20〜150g程度が好ましい。テープの粘着力が20g/cm未満では種結晶を固定する力が弱く、150g/cmを越えるとテープが切れ易い。
【0026】
バックアップテープは、一般に厚み100μm 以上の紙、ポリ塩化ビニルその他のテープを基材とし、粘着力が10〜100g/cmの、市販の粘着テープを好適に使用できる。バックアップテープの粘着力は、10g/cm未満では固定力不足であり、100g/cmより強いと後で剥がしにくい。
一次テープ剥離用クラフトテープは、市販のものでよく、粘着力を一次テープよりも強くすればよい。
【0027】
このように、本発明に従い、規則的に孔を形成した篩部を用いて種結晶を一旦粘着シートに規則的に付着させ、その後溶媒物質板又は原料物質板に種結晶を転写・圧入する方法によれば、最終的に目的の場所に種結晶を高い割合で確実に埋め込むことができ、しかも高速に作業できるので、処理能率が従来と比較して顕著に改良される。
【0028】
種結晶を圧入した溶媒物質板又は原料物質板を用い、原料物質板と溶媒物質板と種結晶を積層し組み立てる際の寸法や配置などは、公知の条件を採用できる。組立後、ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素の安定領域の温度・圧力条件下でダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素の結晶成長を行う。ダイヤモンドの安定領域の温度・圧力条件は、一般に、1300〜1900℃の温度、4.5〜7.0GPaである。結晶成長時間は約10〜60分が代表的である。立方晶窒化ホウ素の安定領域の温度・圧力条件は、一般に、1250〜1850℃の温度、4.5〜7.0GPaである。結晶成長時間は約10〜30分が代表的である。
【0029】
上記のような反応系において、その反応によって生成が期待し得るダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素の総成長量に対し、種結晶1個当たりの平均成長希望量と種結晶の数の積が一致するように種結晶の数を決めてやれば、狙った粒度のダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素の結晶粒を分布狭く得ることがてきる。上記期待し得る総成長量を系統的に知るには、最終荷重を種々変えたダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素の合成を行い、成長量を求めておけばよい。ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素の量を多く取るためには、合成装置の許される範囲内で最終荷重を高くすればよいが、但し、種結晶密度が高くなり過ぎると成長した粒子が干渉し合うようになる。なお、粒度分布を狭くする方法として、反応部の温度分布および圧力分布を考慮して、水平方向および上下方向の種結晶配列の間隔、種結晶の大きさなどを適宜変えることが有効である。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
図3に示した装置構成を用いて溶媒金属板にダイヤモンド種結晶を圧入した。ダイヤモンド種結晶として、#325/400(粒径50〜30μm )のダイヤモンドを用いた。溶媒金属板として、直径28mm、厚さ0.25mmのFe58−Ni42合金(原子%組成)を用いた。
【0031】
回転ドラムの篩部に形成した孔は、図2に示したように等間隔に配置し、孔径70μm 、孔間隔700μm とした。
テープの構成は下記の組合せとした。
種結晶の溶媒金属板への圧入のためのプレス荷重は、8トン/板とした。
【0032】
図3に示した装置を用い、上記の条件で、ダイヤモンド種結晶を規則的に圧入した溶媒金属板を得た。
このようにしてダイヤモンド種結晶を規則的に圧入した溶媒金属板において、種結晶は平均98%の高い確率で所定の配置に埋め込まれていた。なお、従来の凹孔に種結晶を入れる作業では、作業の丁寧さに依存するが、組立時の溢れも入れると当社の平均で約80%であった。しかも、この種結晶配置の作業効率(時間として)も、従来の凹孔に種結晶を入れる作業と比較して、種結晶に金属めっきする工程の時間を除いても、30分の1に短縮できた。
【0033】
内径28mm、高さ38mmのろう石製容器内に、上記のダイヤモンド種結晶圧入溶媒金属板(直径28mm、厚さ0.25mm)と、同じ直径で厚さ1.6mmの黒鉛板とを、交互に複数層に積層配置して反応部を組み立てた。この積層体の上下両端を黒鉛板とし、さらに鉄製キャップで蓋をし、ベルト型超高圧合成装置に装着した。
【0034】
ベルト型超高圧合成装置で、加圧するともに、反応部に通電し「直接」加熱した。反応条件としては、先ず圧力を5.0GPaとし、次いで1450℃に昇温し、20分間保持した。
その結果、約5gのダイヤモンドが得られたが、そのうち48%が425〜300μm の粒度に集中していた。(規則配置をしない種子法を使わない自然核での成長では30%程度の集中である)
上記425〜300μm の粒子より384〜322μm の粒度のものを篩い出し、この中で形がブロッキーな粒子を選別して、さらに1.2T(テスラ)の棒磁石につかない磁性の弱い粒子について単粒圧壊強度を調べた。強度は熱処理しない生の粒子および1000℃真空中で1時間焼成した粒子について測定した。測定値は50粒の平均値を示す。
【0035】
その結果、生の粒子で25.5kgf、焼成後の粒子で24.0kgfの単粒圧壊強度が示された。
(実施例2)
外径28mm、内径26mm、長さ38mmの黒鉛製円筒の中に、反応物質として直径26mm、厚さ1.4mmの六方晶窒化ホウ素(hBN)とLiCaBN2 との混合形成板(hBN:LiCaBN2 =100:15重量比)、および同径の厚さ100μm の銅板を交互に積層して組み込んだ。この銅板には予め粒度60〜80μm の立方晶窒化ホウ素を実施例1と同様の方法にて規則的に配置して埋め込んである。ただし、粒子の間隔は400μm とした。この積層体を詰めた黒鉛円筒の上下端に黒鉛板をかぶせ(hBNとLiCaBN2 の混合物は電気を通さないので、黒鉛で周囲を包囲した)、内径28mmのろう石製スリーブに入れ、鉄製キャップで蓋をして、実施例1と同じ装置にて圧力5.7GPa、温度1450℃で15分間保持した。加熱は黒鉛円筒へ通電して行った。
【0036】
その結果、7.3gのcBNが得られた。45%が250〜300μmに集中していた。この粒度の中で、形がブロッキーで茶色透明な粒子率は約80%であった。
従来は、厚さ100μmの銅板に80μmの貫通穴をあけ、粒径60〜80μmの種結晶を1個づつ固定しているが、同様な積層体での収量は5.2gであった。
【0037】
これは実施例の方が種結晶の固定率が高いために生じた相違である。
(比較例)
実施例1と同種、同径の溶媒板に孔径120μm 、深さ120μm ,孔間隔700μm の規則的な孔をあけ、この中にNiを厚さ20μm で電解コートした#270/325のダイヤモンド種結晶を手で振動を与えながら落とし込んだ。この種結晶を落とし込んだ金属板と直径28mm、厚さ1.6mmの黒鉛板を交互に積層し、実施例1と同じ組数となる積層体を作成した。
【0038】
実施例1と同様にして、1450℃の温度、5.0GPaの圧力に20分間保持した。
以上の操作に要した時間はめっき時間も入れると合計90分間であり、実施例1の場合の3分間と比較して、非常に効率の悪いものであった。
また、以上の如くして合成されたダイヤモンド粒子の収量は3.8〜4.2gであった(実施例1の75〜85%の収量)。これは種結晶の充填効率が実施例1より低いためである。
【0039】
粒度の集中度は実施例1と同様であった。
また、実施例1と同様に単粒圧壊強度を調べた結果、生の粒子は22.1kgf、焼成後の粒子は19.8kgfであり、実施例1の場合よりも強度が若干低下していた。これは、種結晶をニッケルコートして不純物が混入したためである。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、溶媒物質または原料物質の板に種結晶を効率良く規則的に配置して、工業的な超高圧合成装置において反応部の温度、圧力条件を目的の値に制御し、よって機械的強度に優れ、粒度の揃ったダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素結晶を高い生産性で製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】円周面に規則的な孔(篩部)を形成した回転ドラムに種結晶を入れて、粘着テープに種結晶を規則的に付着させる様子を示す図である。
【図2】篩部の規則的の例として等間隔に形成した孔のパターンを示す図である。
【図3】本発明に従い溶媒金属板に種結晶を規則的に圧入する工業的方法を説明する図である。
【符号の説明】
3…回転ドラム状容器
4…種結晶
5…粘着シート
d…孔径
a…孔間隔
11…ステンレス鋼製回転ドラム
12…一次テープ供給ロール
13…一次テープ
14…一次テープの離型紙(セパレータ)の巻取りロール
15…溶媒金属板
16…バックアップテープ
17…プレス部
18…一次テープ剥離用クラフトテープ
19,20…巻取りロール
Claims (6)
- 非ダイヤモンド炭素又は低圧相窒化ホウ素からなる原料物質層と溶媒物質層とを積層し、かつ溶媒物質層に接するように複数の種結晶を配置し、ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素の安定領域の圧力・温度条件下でダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素の結晶を成長させる結晶成長方法において、
種結晶を規則的に形成された孔を通すことにより粘着シート上に規則的に分布させ、その粘着シート上に規則的に分布させられた種結晶を溶媒物質板又は原料物質板の表面に転写・圧入することにより、溶媒物質板又は原料物質板上に種結晶を規則的に配置させ、この溶媒物質板又は原料物質板を上記溶媒物質層又は原料物質層として用いて上記結晶成長を行うことを特徴とする結晶成長方法。 - 円周面に規則的に孔を形成した回転ドラム状の容器内に種結晶を入れ、その回転ドラムを粘着シートに沿って回転させて、回転ドラム内から種結晶をその規則的に形成した孔を通して粘着シート上に付着させることにより、粘着シート上に種結晶を規則的に分布させる請求項1記載の結晶成長方法。
- 種結晶を溶媒物質板又は原料物質板の表面に転写・圧入した後、溶媒物質板または原料物質板を粘着シートから分離する請求項1又は2記載の結晶成長方法。
- 溶媒物質板の種結晶を規則的に配置させた面に、もう1枚の溶媒物質板を配置し、その積層体に原料物質板をさらに積層する請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶成長方法。
- 孔が種結晶1粒のみ通り2粒同時に通ることのない寸法であり、かつ相互に等間隔に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶成長方法。
- 前記粘着シートの厚みが用いる種結晶の平均粒径の半分以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶成長方法。
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JP370398A JP3597033B2 (ja) | 1998-01-12 | 1998-01-12 | ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素の結晶成長方法 |
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JP370398A JP3597033B2 (ja) | 1998-01-12 | 1998-01-12 | ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素の結晶成長方法 |
Publications (2)
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