JP3596142B2 - 建材面材用積層シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固化後のセメントコンクリート壁面に石膏系接着剤で接着施工したり、セメントコンクリートの直打ち込みでセメントコンクリート壁面に施工する建築物の外壁、内壁または間仕切り壁などに使用される合成樹脂発泡体からなるボードまたはパネルなどの建材と、セメントコンクリート壁面との間に介在させる面材に好適な積層シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の建材面材用の積層シートとしては、例えばセメントペーストと反応しやすい石灰質、苦土質、珪酸質などの無機質粉末をセルロース繊維に定着担持せしめた無機質シートの片面にポリエチレンフィルムをラミネートしたもの(特公平2−16275号)が知られている。
【0003】
上記のごとき従来の建材面材用積層シートは、無機質シートとセメントペーストまたは石膏系接着剤との界面において強固な接着状態が得られるため、セメントコンクリート面との接合を強固にすることができ大きい接着強度を得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、住宅における冷暖房の省エネルギーの要求の高まりに対応して、合成樹脂発泡体からなる断熱材用のボードやパネルの合成樹脂発泡体層の厚さが増してきた。合成樹脂発泡体層の厚さが増すと、合成樹脂発泡体層が内包している歪み応力が大きくなるため、その応力に負けてボードやパネルに反りが生じやすくなる。
【0005】
上記した従来の面材用積層シートの場合、セメントコンクリートや石膏系接着剤との接着性は良好であるが、高湿度条件下での使用や面材上の結露によって無機質シートが吸湿して、面材として要求される引張強度や寸法安定性が低下してしまい、合成樹脂発泡体層が内包している歪み応力に負けてボードやパネルに反りが生じるという問題がある。一方、湿潤時の物性低下を抑制するために、無機質シートに合成樹脂を含浸あるいは塗布して耐水性を持たせることも考えられるが、この場合にはセメントコンクリートや石膏系接着剤との接着力が低下してしまう。
【0006】
上述したように、上記した従来の面材用積層シートにおいては、ボードやパネルなどの合成樹脂発泡体層の反りを抑制するための湿潤時の強度維持と、セメントコンクリートや石膏系接着剤との良好な接着性とを両立させることができないという不都合があった。
【0007】
そこで本発明は、上記事情に鑑み、石膏系接着剤またはセメントコンクリートとの接着性が良好で、しかも引張強度および寸法安定性の面で湿潤による影響を受けにくい、新規かつ改良された建材面材用積層シートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、上記した従来の面材用積層シートにおける無機質シートを、石膏系接着剤またはセメントコンクリートとの接着性が良好な固着シートと、セルロース繊維を主体とする補強シートとに分けて、両シートを熱融着性樹脂接着層で接着するとともに、補強シートを水分の影響から遮断することによって、上記の目的を達成できることを見いだしたものである。
【0009】
すなわち本発明は、図1に示す参照番号を用いて説明すると、合成樹脂発泡体からなるボードあるいはパネルのごとき建材とセメントコンクリート壁面との間に介在させる面材であって、石灰質、苦土質または珪酸質のいずれか一種または二種以上の成分を含有する天然または人工の鉱物粉体を含む固着シート層1の裏面に熱融着性樹脂接着層2を介してセルロース繊維を主体とする補強シート層3を積層するとともに、この補強シート層の裏面に接着層4を介して合成樹脂フィルム5を積層したシートからなり、前記補強シート層を前記熱融着性樹脂接着層と前記接着層を介した前記合成樹脂フィルムとで挟むことにより前記補強シート層を水分の影響から遮断して面材としての強度を維持できるようにしたことを特徴とする建材面材用積層シートである。
【0010】
このように構成した本発明の建材面材用積層シートを、石膏系接着剤またはセメントコンクリートと合成樹脂発泡体からなるボードあるいはパネルのごとき建材との間に介在させて使用する際には、固着シート層1が石膏系接着剤またはセメントコンクリートと接し、合成樹脂フィルム5が建材と接するようにする。
【0011】
すると、石膏系接着剤またはセメントコンクリートとの接着を担当する固着シート層1には、石膏またはセメントペーストと反応しやすい鉱物粉体、すなわち石灰質、苦土質または珪酸質のいずれか一種または二種以上の成分を含有する天然または人工の鉱物粉体を含有しているため、石膏系接着剤またはセメントコンクリートとの良好な接着がもたらされる。一方、補強シート層3は面材内の引張りや圧縮による変形に対する抵抗力および寸法安定性を担当するが、この補強シート層3の表裏両側にはそれぞれ熱融着性樹脂接着層2と合成樹脂フィルム5とが存在するため、補強シート層3への水分の浸透が遮断され、湿潤による物性低下を抑制することができる。その結果、補強シート層3が担当する面材の補強および寸法安定性が湿潤によって低下する事態の発生が未然に回避されることになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明による建材面材用積層シートの一実施形態を示す断面図である。本発明による建材面材用積層シートは、図1に示すように、固着シート層1を有しており、固着シート層1の裏面には熱融着性樹脂接着層2を介して補強シート層3が積層されている。更に、補強シート層3の裏面には接着層4を介して合成樹脂フィルム5が積層されている。
【0014】
固着シート層1に含有させる鉱物粉体は、石膏またはセメントペーストと反応しやすいものであればよく、例えば、炭酸カルシウム、ドロマイト、高炉スラグ、フライアッシュ、活性白土、タルク等の石灰質、苦土質または珪酸質のいずれか一種または二種以上の成分を含有する天然または人工の鉱物粉体が使用できる。
【0015】
鉱物粉体として石灰質または苦土質を用いた場合、石膏との反応でカルシウムまたはマグネシウムの硫酸塩水和物が生成するものと考えられ、この硫酸塩水和物により石膏と固着シート層1中の鉱物粉体との良好な結合や固着シート層1内での結合が達成されると推定される。一方、セメントペーストとの反応では、カルシウムまたはマグネシウムのカルボアルミネート水和物が生成することにより良好な結合力が発現するものと考えられる。
【0016】
鉱物粉体として珪酸質を用いた場合、石膏との反応としては、溶出したSiO2 とカルシウムイオンと水分とにより水和物が生成され付着力が発現すると考えられる。一方、セメントペーストとの反応では、セメントペーストからのアルカリ刺激によるCaO−SiO2 −Al2 O3 ・H2 O等の水和物が生成して結合力を生じると考えられる。
【0017】
固着シート層1としては、例えば、セルロース繊維を主体とする繊維物質25〜70重量%および石膏またはセメントペーストと反応しやすい前記鉱物粉体75〜30重量%に湿潤紙力増強剤をセルロース繊維に対して0.3〜1.5重量%添加して抄造したシートが好ましく使用できる。鉱物粉体の混合比率を75〜30重量%の範囲とすることにより石膏系接着剤またはセメントコンクリートとの良好な接着性が得られる。鉱物粉体の混合比率が75重量%を超えると、繊維物質の混合比率が25重量%より減少するため、固着シート層自体の強度が低下し、一方、鉱物粉体の混合比率が30重量%未満では湿潤時の寸法変化率が大きくなる傾向がみられる。湿潤紙力増強剤は湿潤時の紙力を維持する目的で添加することが望ましく、セルロース繊維に対して0.3〜1.5重量%程度の添加により良好な湿潤時の紙力維持が達成できる。
【0018】
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン変性ポリアクリルアマイド樹脂などを用いることができる。また、固着シート層1の表面に印刷を施す場合には、印刷インクの滲みを防止するために、アルキルケテンダマー、アクリル系、アルケニル無水コハク酸、スチレン系などの中性サイズ剤を添加することが好ましい。
【0019】
この固着シート層1におけるセルロース繊維を主体とする繊維物質としては、セルロース繊維の他に、湿潤時の強度をより一層向上させるために湿熱溶融性ポリビニルアルコール繊維(以下PVA繊維とする)を配合してもよく、また湿潤時の寸法安定性をより一層向上させるためにガラス繊維を配合してもよい。PVA繊維を配合する場合には固着シート層全量に対して3〜10重量%程度、ガラス繊維を配合する場合には固着シート層全量に対して3重量%程度をそれぞれ使用することが好ましく、これらPVA繊維とガラス繊維を同時に使用することもできる。
【0020】
一方、補強シート層3は面材用積層シート全体の強度を維持する機能を有するものであり、本発明ではセルロース繊維を主体として抄造されたシートを使用する。好ましい補強シート層としては、例えば、セルロース繊維55〜75重量%、ガラス繊維25〜10重量%およびPVA繊維20〜15重量%からなる繊維混合物に湿潤紙力増強剤をセルロース繊維に対して0.3〜1.5重量%添加して抄造したシートが挙げられる。ガラス繊維は補強シート層の寸法安定性を向上させるために、上記の範囲で配合することが望ましく、またPVA繊維は補強シート層の強度を向上させるために上記の範囲で配合することが望ましい。PVA繊維を20重量%を超えて配合すると、シート抄造時に抄紙機の系内のPVA繊維による汚れやドライヤー表面へのシートの居着きや汚れの発生を招く傾向があるため望ましくない。
【0021】
補強シート層3における湿潤紙力増強剤は、前述の固着シート層1における湿潤紙力増強剤と同様の目的で添加することが望ましく、固着シート層で用いたものと同様の湿潤紙力増強剤を使用することができる。
【0022】
固着シート層1と補強シート層3とを接着する熱融着性樹脂接着層2は、固着シート層1を通って浸透する水分から補強シート層3を遮蔽する機能も有している。この熱融着性樹脂接着層2の厚さは特に規定されないが、薄すぎてはピンホールが多くなり防水機能が低下し、厚すぎては建材面材用積層シートとして可撓性に乏しくなり加工時の取り扱いが不便になる。従ってその厚さは、防水機能を維持しかつ可撓性が乏しくならない範囲で適宜選定すればよい。熱融着性樹脂接着層2の素材としては、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が使用できる。
【0023】
補強シート層3の裏面に積層される接着層4と合成樹脂フィルム5は、補強シート層3の裏面から接触する水分を遮蔽するために設けられている。接着層4は補強シート層3と合成樹脂フィルム5を接着する機能を有し、防水機能の有無は問わない。接着層4の素材としては、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱融着性樹脂のほか、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート、エポキシ系樹脂、アクリル−ブタジエン共重合物などが使用できる。
【0024】
一方、合成樹脂フィルム5は防水機能を備えていなければならず、また接着層4が熱融着性樹脂の場合には、接着層4の保護層の役割もする。合成樹脂フィルムの素材としては、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリカーボネート等が使用できる。
【0025】
接着層4を、防水機能を備えかつ傷つきに対する十分な強さを有している熱融着性樹脂で形成した場合には、図2に示すように合成樹脂フィルム5を省略することができる。すなわち、図2に示す実施形態においては、図1における接着層4と合成樹脂フィルム5の2層に代えて、防水機能を有しかつ傷つきにくい熱融着性樹脂接着層6の1層を補強シート層3の裏面に積層している。
【0026】
固着シート層1、補強シート層3および合成樹脂フィルム5を熱融着性樹脂層2と接着層4を介して積層する方法としては、熱融着性樹脂接着層2および接着層4に使用する素材の種類に応じて各種のラミネート法を採用することが可能である。すなわち、熱融着性樹脂接着層2と接着層4が低密度ポリエチレン等の熱融着性樹脂の場合には、これを溶融して固着シート層1と補強シート層3と合成樹脂フィルム5とを貼り合わせる方法(エキストルージョンラミネート法)を用いることができる。また、熱融着性樹脂接着層2と接着層4が低融点の樹脂からなる場合には、これを補強シート層3および合成樹脂フィルム5の表面に塗布した後、固着シート層1、補強シート層3および合成樹脂フィルム5を上から順に重ね、加熱加圧して貼り合わせる方法(ホットラミネート法)を用いることができる。さらに、接着層4が水やメチルエチルケトン等の溶剤に溶解する樹脂からなる場合には、これを合成樹脂フィルム5の表面に塗布した後、半乾きになった状態でその上に補強シート層3を重ね、加熱乾燥加圧して貼り合わせる方法(ドライラミネート法を)を用いることができる。
【0027】
なお、図1に示す面材用積層シートの実施形態においては、補強シート層3の裏面に接着層4を介して合成樹脂フィルム5を積層しているが、合成樹脂フィルム5の代わりに防食処理済みの金属箔(図示せず)を用い、これを接着層4を介して補強シート層3の裏面に積層するようにしてもよい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例について記述する。
【0029】
実施例1
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を叩解機を用いて濾水度350mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ18.7重量%、平均粒径14μmの炭酸カルシウム粉末75重量%、湿熱溶融性PVA繊維3.3重量%、繊維径6μmで繊維長3mmのガラス繊維3重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して1.5重量%、アルキルケテンダイマー系中性サイズ剤をセルロースパルプに対して0.3重量%添加して、ポリアクリルアマイド系結合助剤を固形分に対して0.2重量%添加した後、試験用手抄き角形シートマシン(250mm×250mm)を用いて、シート坪量が100g/m2 になるように炭酸カルシウム内填紙を抄造し、これを固着シート層とした。
【0030】
次に、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を叩解機を用いて濾水度650mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ58重量%、湿熱溶融性PVA繊維17重量%、繊維径9.9μmで繊維長6mmのガラス繊維25重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して1.0重量%添加した後、試験用手抄き角形シートマシン(250mm×250mm)を用いて、シート坪量が30g/m2 になるようにガラス繊維混抄紙を抄造し、これを補強シート層とした。
【0031】
最後に、ラミネート試験機によって、まず固着シート層と補強シート層を溶融した低密度ポリエチレンを熱融着性樹脂接着層として積層し、次いで、この補強シート層側に溶融した低密度ポリエチレンを接着層として高密度ポリエチレンフィルムを積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0032】
実施例2
実施例1と同じ濾水度350mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ40重量%、平均粒径14μmの炭酸カルシウム粉末50重量%、湿熱溶融性PVA繊維7重量%、繊維径6μmで繊維長3mmのガラス繊維3重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤の添加量をセルロースパルプに対して0.3重量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法でシート坪量が100g/m2 になるように炭酸カルシウム内填紙を抄造し、これを固着シート層とした。
【0033】
次に、実施例1と同じ濾水度650mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ72重量%、湿熱溶融性PVA繊維18重量%、繊維径9.9μmで繊維長6mmのガラス繊維10重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して1.5重量%添加して、実施例1と同様にシート坪量が30g/m2 になるようにガラス繊維混抄紙を抄造し、これを補強シート層とした。
【0034】
最後に、ラミネート試験機によって、まず固着シート層と補強シート層を溶融した低密度ポリエチレンを熱融着性樹脂接着層として積層し、次いでこの補強シート層側に溶融した低密度ポリエチレンを接着層として高密度ポリエチレンフィルムを積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0035】
実施例3
繊維配合を実施例2と同じにして、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤の添加量をセルロースパルプに対して1.5重量%に変更し、シート坪量が80g/m2 になるように炭酸カルシウム内填紙を実施例1と同様の方法で抄造し、これを固着シート層とした。
【0036】
次に、実施例1と同じ濾水度650mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ60重量%、湿熱溶融性PVA繊維15重量%、繊維径9.9μmで繊維長6mmのガラス繊維25重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して0.5重量%添加して、シート坪量が40g/m2 になるようにガラス繊維混抄紙を抄造し、これを補強シート層とした。
【0037】
最後に、ラミネート試験機によって、まず固着シート層と補強シート層を溶融した低密度ポリエチレンを熱融着性樹脂接着層として積層し、次いでこの補強シート層側に溶融した低密度ポリエチレンを接着層として高密度ポリエチレンフィルムを積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0038】
実施例4
実施例1と同じ濾水度350mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ57重量%、平均粒径14μmの炭酸カルシウム粉末30重量%、湿熱溶融性PVA繊維10重量%、繊維径6μmで繊維長3mmのガラス繊維3重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤の添加量をセルロースパルプに対して0.5重量%に変更し、シート坪量が80g/m2 になるように炭酸カルシウム内填紙を実施例1と同様の方法で抄造し、これを固着シート層とした。
【0039】
次に、実施例1と同じ濾水度650mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ72重量%、湿熱溶融性PVA繊維18重量%、繊維径9.9μmで繊維長6mmのガラス繊維10重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して1.5重量%添加して、シート坪量が40g/m2 になるようにガラス繊維混抄紙を抄造し、これを補強シート層とした。
【0040】
最後に、ラミネート試験機によって、まず固着シート層と補強シート層を溶融した低密度ポリエチレンを熱融着性樹脂接着層として積層し、次いでこの補強シート層側に溶融した低密度ポリエチレンを接着層として高密度ポリエチレンフィルムを積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0041】
実施例5
繊維配合を実施例4と同じにして、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤の添加量をセルロースパルプに対して1.0重量%に変更し、シート坪量が60g/m2 になるように炭酸カルシウム内填紙を実施例1と同様の方法で抄造し、これを固着シート層とした。
【0042】
次に、実施例1と同じ濾水度650mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ68重量%、湿熱溶融性PVA繊維17重量%、繊維径9.9μmで繊維長6mmのガラス繊維15重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して1.0重量%添加して、シート坪量が40g/m2 になるようにガラス繊維混抄紙を抄造し、これを補強シート層とした。
【0043】
最後に、ラミネート試験機によって、まず固着シート層と補強シート層を溶融した低密度ポリエチレンを熱融着性樹脂接着層として積層し、次いでこの補強シート層側に溶融した低密度ポリエチレンを接着層として高密度ポリエチレンフィルムを積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0044】
実施例6
実施例1と同じ濾水度350mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ40重量%、平均粒径14μmの炭酸カルシウム粉末50重量%、湿熱溶融性PVA繊維7重量%、繊維径6μmで繊維長3mmのガラス繊維3重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤の添加量をセルロースパルプに対して1.0重量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法でシート坪量が60g/m2 になるように炭酸カルシウム内填紙を抄造し、これを固着シート層とした。
【0045】
次に、実施例1と同じ濾水度650mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ65重量%、湿熱溶融性PVA繊維15重量%、繊維径9.9μmで繊維長6mmのガラス繊維20重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して1.0重量%添加して、実施例1と同様にシート坪量が30g/m2 になるようにガラス繊維混抄紙を抄造し、これを補強シート層とした。
【0046】
最後に、ラミネート試験機によって、まず固着シート層と補強シート層を溶融した低密度ポリエチレンを熱融着性樹脂接着層として積層し、次いでこの補強シート層側に低密度ポリエチレンからなる熱融着性樹脂層を積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0047】
実施例7
実施例1と同じ濾水度350mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ57重量%、平均粒径14μmの炭酸カルシウム粉末30重量%、湿熱溶融性PVA繊維10重量%、繊維径6μmで繊維長3mmのガラス繊維3重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤の添加量をセルロースパルプに対して1.0重量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法でシート坪量が80g/m2 になるように炭酸カルシウム内填紙を抄造し、これを固着シート層とした。
【0048】
次に、実施例1と同じ濾水度650mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ75重量%、湿熱溶融性PVA繊維15重量%、繊維径9.9μmで繊維長6mmのガラス繊維10重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して1.0重量%添加して、実施例1と同様にシート坪量が40g/m2 になるようにガラス繊維混抄紙を抄造し、これを補強シート層とした。
【0049】
最後に、ラミネート試験機によって、まず固着シート層と補強シート層を溶融した低密度ポリエチレンを熱融着性樹脂接着層として積層し、次いでこの補強シート層側に低密度ポリエチレンからなる熱融着性樹脂層を積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0050】
比較例1
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を叩解機を用いて濾水度350mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ38.3重量%、平均粒径14μmの炭酸カルシウム粉末50重量%、湿熱溶融性PVA繊維6.7重量%、繊維径6μmで繊維長3mmのガラス繊維5重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して1.5重量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法でシート坪量が100g/m2 になるように炭酸カルシウム内填紙を抄造し、これを固着シート層とした。
【0051】
次に、ラミネート試験機によって、固着シート層の片面に溶融した低密度ポリエチレンを接着層として高密度ポリエチレンフィルムを積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0052】
比較例2
実施例1と同じ濾水度350mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ85重量%、湿熱溶融性PVA繊維15重量%を水に分散して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して1.5重量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法でシート坪量が300g/m2 になるように紙を抄造しこれを固着シート層とした。
【0053】
次に、ラミネート試験機によって、固着シート層の片面に溶融した低密度ポリエチレンを接着層として高密度ポリエチレンフィルムを積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0054】
比較例3
実施例1と同じ濾水度650mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ56重量%、湿熱溶融性PVA繊維14重量%、繊維径9.9μmで繊維長6mmのガラス繊維30重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して1.5重量%添加した後、試験用手抄き角形シートマシン(250mm×250mm)を用いて、シート坪量が50g/m2 になるようにガラス繊維混抄紙を抄造し、これを補強シート層とした。
【0055】
次に、ラミネート試験機によって、補強シート層を溶融した低密度ポリエチレンを接着層として高密度ポリエチレンフィルムを積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0056】
比較例4
実施例1と同じ濾水度650mlc.s.f.に叩解したセルロースパルプ60重量%、湿熱溶融性PVA繊維15重量%、繊維径9.9μmで繊維長6mmのガラス繊維25重量%を混合して水懸濁液とし、これにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤をセルロースパルプに対して0.5重量%添加した後、試験用手抄き角形シートマシン(250mm×250mm)を用いて、シート坪量が40g/m2 になるようにガラス繊維混抄紙を抄造し、これを補強シート層とした。
【0057】
次に、ラミネート試験機によって、補強シート層を溶融した低密度ポリエチレンを接着層として高密度ポリエチレンフィルムを積層して、建材面材用積層シートを得た。
【0058】
建材面材用積層シートの物性試験
上述のようにして得られた実施例1〜7および比較例1〜4について、湿潤時引張り強さ、湿潤時寸法変化率および接着力(石膏系接着剤とセメントコンクリートの2種)をそれぞれ測定した。
【0059】
ここで、湿潤時引張強さの測定は、JIS P8135に準拠して行った。
【0060】
また、湿潤時寸法変化率の測定は次の方法を採用した。即ち、手抄きした試料を長さ24cm×3cmに切り出し、試料に約20cmの間隔で印を付け、その印の間の距離(a)をノギスで0.01mmの精度で測定する。この試料を20℃の水中に15分浸漬した後、試料に付着した余分な水分をティッシュペーパーで払拭して取り除く。この試料を平坦なガラス板上に載置し、その状態で試料上の印の間の距離(b)をノギスで0.01mmの精度で測定する。こうして測定された距離a、bから湿潤寸法変化率(={(b−a)/a}×100%)を算出する。
【0061】
また、石膏系接着剤に対する接着力の測定は次の方法を採用した。即ち石膏系接着剤粉100重量部に対し、水38重量部を加え、よく混練した後、これを直径3.5cm×高さ3.0cmに円柱状に成形し、建材面材用積層シートの接着面に加圧機で高さ1.5cmになるまで押し付ける。接着後、気温20℃、湿度65%の条件下で3日間養生し次いで引張強さ試験機を用いて石膏系接着剤と建材面材用積層シートとの接着面に10mm/分の速さで90°引張荷重を加え、石膏系接着剤と建材面材用積層シートとの付着力を測定する。この付着力を単位面積(1cm2 )当たりの力に換算し、これを石膏系接着剤に対する接着力とする。
【0062】
更に、セメントコンクリートに対する接着力の測定は次の方法を採用した。即ち、普通ポルトランドセメント粉100重量部に対し、標準砂200重量部と水65重量部とを加え、JIS R5201に準拠して混練する。接着面を上向きにした建材面材用積層シートの上に、直径5cm×高さ10cmの円筒状の型枠を載置し、その型枠内に混練後のセメントペーストを流し込み、建材面材用積層シートを接着した円柱状試験体を製作する。この円柱状試験体を気温20℃、湿度80〜90%の条件下で3日間養生し、次いで、引張強さ試験機を用いてセメントコンクリートと建材面材用積層シートとの接着面に10mm/分の速さで90°引張荷重を加え、セメントコンクリートと建材面材用積層シートとの付着力を測定する。この付着力を単位面積(1cm2 )当たりの力に換算し、これをセメントコンクリートに対する接着力とする。
【0063】
これらの測定結果を表1にまとめて示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1中の「湿潤時寸法変化率」の欄において、「+」は寸法が増加したことを意味する。
【0066】
表1から明らかなように、比較例1および2では、補強シート層がないため湿潤時引張強さが小さく、湿潤時寸法変化率が大きく、また比較例3および4では、固着シート層がないため石膏系接着剤に対する接着力が弱いのに対して、実施例1〜7では、湿潤による引張強さおよび寸法変化率の変動が少なく、好ましい湿潤時引張強さである3.5kg/15mm以上、および好ましい湿潤時寸法変化率である0.15%以下を維持することができ、しかも石膏系接着剤およびセメントコンクリートに対する接着力が強いことがわかる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の建材面材用積層シートは、石膏系接着剤またはセメントコンクリートとの接着性を担当する固着シート層と、面材の引張強さおよび寸法安定性を担当する補強シート層とを熱融着性樹脂接着層により接着積層するとともに、補強シート層の裏面に接着層を介して合成樹脂フィルムまたは防食処理済みの金属箔を積層することで補強シート層への水分の侵入を遮断できる構成として、補強シート層の引張強さや寸法安定性が湿潤によって低下する事態の発生を未然に回避できる構成としたものである。その結果、石膏系接着剤またはセメントコンクリートとの接着性が良好で、しかも引張強さおよび寸法安定性の面で湿潤による影響を受けにくい建材面材用積層シートを提供することが可能となる。
【0068】
また接着層と合成樹脂フィルムの2層に代えて、防水機能を有する傷つきにくい熱融着性樹脂層の1層を補強シート層の裏面に設けることもでき、この場合にも上記と同様な作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による建材面材用積層シートの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明による建材面材用積層シートの別な実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1……固着シート層
2……熱融着性樹脂接着層
3……補強シート層
4……接着層
5……合成樹脂フィルム
6……熱融着性樹脂層
Claims (5)
- 合成樹脂発泡体からなるボードあるいはパネルのごとき建材とセメントコンクリート壁面との間に介在させる面材であって、石灰質、苦土質または珪酸質のいずれか一種または二種以上の成分を含有する天然または人工の鉱物粉体を含む固着シート層(1)の裏面に熱融着性樹脂接着層(2)を介してセルロース繊維を主体とする補強シート層(3)を積層するとともに、この補強シート層の裏面に接着層(4)を介して合成樹脂フィルム(5)を積層したシートからなり、前記補強シート層を前記熱融着性樹脂接着層と前記接着層を介した前記合成樹脂フィルムとで挟むことにより前記補強シート層を水分の影響から遮断して面材としての強度を維持できるようにしたことを特徴とする建材面材用積層シート。
- 前記補強シート層(3)の裏面に積層した前記接着層(4)と前記合成樹脂フィルム(5)の2層に代えて、熱融着性樹脂接着層(6)の1層を前記補強シート層の裏面に積層したことを特徴とする請求項1記載の建材面材用積層シート。
- 前記合成樹脂フィルム(5)に代えて、防食処理済みの金属箔を積層したことを特徴とする請求項1記載の建材面材用積層シート。
- 前記固着シート層(1)は、セルロース繊維を主体とする繊維物質25〜70重量%および前記鉱物粉体75〜30重量%に湿潤紙力増強剤をセルロース繊維に対して0.3〜1.5重量%添加して抄造したシートからなることを特徴とする請求項1記載の建材面材用積層シート。
- 前記補強シート層(3)は、セルロース繊維55〜75重量%、ガラス繊維25〜10重量%およびPVA繊維20〜15重量%からなる繊維混合物に湿潤紙力増強剤をセルロース繊維に対して0.3〜1.5重量%添加して抄造したシートからなることを特徴とする請求項1記載の建材面材用積層シート。
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