JP3595064B2 - R−t−b系異方性磁石用合金粉末の製造方法と検査用合金 - Google Patents

R−t−b系異方性磁石用合金粉末の製造方法と検査用合金 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、水素化・再結晶処理によるR−T−B系異方性ボンド磁石用合金粉末の製造方法に活用可能な新規に知見した検査用合金に係り、該異方性ボンド磁石用合金粉末の製造に際して、新規に知見した該合金粉末の水素化途中の中間段階相を有する検査用合金を製造工程途中で取り出して、RFe14B微粒子の生成や異方化の過程を検証しながら、適正な合金相組織に調整することが可能なR−T−B系異方性磁石用合金粉末の製造方法と検査用合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
R−T−(M)−B系異方性ボンド磁石粉末の製造方法には、水素化・再結晶処理による製造方法として、例えば特開平1−132106号公報に開示されている。
すなわち、かかる水素化・再結晶処理法とは、R−T−(M)−B系原料合金鋳塊または粉末を、Hガス雰囲気またはHガスと不活性ガスの混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持して上記合金の鋳塊または粉末にHを吸蔵させた後、Hガス圧力13Pa(1×10−1Torr)以下の真空雰囲気、又はHガス分圧13Pa(1×10−1Torr)以下の不活性ガス雰囲気になるまで温度500℃〜1000℃で脱H処理し、ついで冷却する工程を言い、該公報には水素化・再結晶処理で得られた粉末を粉砕後に樹脂配合して成形してR−T−B系異方性ボンド磁石を得ることが開示されている。
【0003】
また、水素化処理法による種々のヒートパターンが開示され、さらにインゴットの均質化処理を付加することも提案されており、例えば、インゴットを600℃〜1200℃で均質化して合金粉末をH中またはHと不活性ガスの混合雰囲気中で500℃〜1000℃に保持してHを吸蔵させ、その後、500℃〜1000℃で真空脱気して、冷却する方法が提案(特開平2−4901号公報)されている。
【0004】
このような水素化・再結晶処理法で製造されたR−T−B系合金磁石は、大きな保磁力と磁気異方性を有する。これは上記処理によって、非常に微細な再結晶粒径、実質的には0.1μm〜1μmの平均再結晶粒径を持つ組織となり、磁気的には正方晶RFe14B系化合物の単磁区臨界粒径に近い結晶粒径となっており、なおかつこれらの極微細結晶がある程度結晶方位を揃えて再結晶しているためである。この結晶方位は原料合金粉末と同じ方位を水素化・再結晶処理後も継承していることが考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平1−132106号公報及び特開平2−4901号公報に開示される水素化処理法により得られたR−T−(M)−B系磁石用合金粉末の磁気的性質は、特に磁化において、原料インゴットの1.2MA/mでの磁化と比較して0.1T程度低くなる。すなわち、異方化度が処理によって低下してしまうという欠点があった。
【0006】
また、特開平4−141502号公報に開示される原料インゴットの粉砕工程を、密閉容器内で水素による合金の自然崩壊で行う方法では、水素粉砕した際に合金中に生成した不安定なRH2+X(0≦X≦1)が大気中に暴露された時、大気と反応して酸化する傾向が極めて強いため、合金粉末の酸化が回避できず、粉末が酸化すると、それに伴い水素化処理して得た磁石粉末の異方度が低下する傾向があるため、異方化度の向上が望めなかった。
【0007】
すなわち、水素化・再結晶処理法で製造した粉末を原料とするR−T−B系ボンド磁石は、処理に用いる合金鋳塊の組織と粉砕方法によって、水素化・再結晶処理法で製造した粉末の磁化が低下してしまうという欠点があった。
【0008】
従来、水素化・再結晶処理法は、RFe14B系化合物相の水素化、相分解、脱水素化、及び再結合の各工程の英語の頭文字を並べて、HDDR処理法と呼ばれておりり、確かに、R−T−(M)−B系合金をHDDR処理することで異方性磁石粉末が得られるが、本当にH.D.D.R.の各工程から成り立つのか、その異方化の機構は未だ明らかにされていないのが現状である。
【0009】
従って、当該処理の最適化を図り優れた特性のR−T−B系合金粉末を得ようとする試みは、近年多数の提案がされているが、諸条件を設定してこれを実施して確かめる試行錯誤に近く、処理条件が最適か否かの推定や判断するための指標すらなく、困難を究めている。
【0010】
この発明は、水素化・再結晶処理法の現状に鑑み、その異方化の機構を明らかにすることを目的とするとともに、当該処理条件の最適化を図ったR−T−(M)−B系合金粉末の製造方法の提供を目的とし、また、かかる処理条件等の最適化を図る上で不可欠の指標となり得るものを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、水素化・再結晶処理法における合金の異方化の機構を明らかにせんと、水素化された合金組織について、詳細に調査、鋭意検討を加えた結果、水素化された合金内には、水素化時間とともに消失する未知相の中間段階相(Intermediate Hydrogenation Phase、以下IHまたはIH相と略称する時がある)があることを知見した。
【0012】
発明者らが水素化途中の合金内に新規に知見した中間段階相は、R−T−(M)−B系合金を溶体化後粉砕し、粉末とした後、真空中で昇温し、水素を導入して水素化し、水素化処理中に取出して急冷した検査用合金により確認できるもので、発明者らは、NdFeB系合金の場合、中間段階の組織は母相と同方位のNdFe14B微粒子やNdHを含む粗大なα−Fe及びFeB粒子、α−FeとNdHからなるラメラ状組織に加えて、中間段階相が多量に存在するもので、この中間段階相は水素化時間の延長により消失することを知見した。
【0013】
また、発明者らは、かかる新規な中間段階相について詳細に検討を加えたところ、中間段階相は、NdFe14Bと類似構造を持ち、この二者が結晶方位関係を持つもので、a軸長がNdFe14B相とほぼ同じでc軸長が約1/3の正方晶であり、NdFe14B微粒子生成や異方化の機構と深く関連しており、当該水素化・再結晶処理法の処理条件等の最適化を図る上で不可欠の指標となり得ることを知見した。
【0014】
さらに、発明者らは、中間段階相は、水素化によるNdFe14B相の未分解領域とラメラ状のNdH+α−Fe混合組織を挟んで接しており、中間段階相と未分解領域のNdFe14B相とは方位関係を保持するが、ラメラ組織の各相と未分解領域相との方位関係はなく、また、ラメラと反対側でα−FeとFeBとNdHとからなる領域と接し、ここでは先の未分解領域相と方位関係を保持しているNdFe14B相の微結晶を含有していることから、中間段階相は、水素化分解反応のフロンティア部分に存在し、また、水素化・分解反応を完結させると、フロンティアは消滅し、中間段階相もなくなるもので、中間段階相は、次の脱水素工程を経て保磁力と残留磁化の高い異方性の集合組織を得るために必要な条件であることを知見した。
【0015】
また、発明者らは、中間段階相内部には、必ず格子整合したNdFe14B構造の微結晶相が存在し、球状のNdH相も分散していることを高分解能透過型電子顕微鏡により確認した。従って、中間段階相の存在だけを確認することによって、望ましい中間段階組織となっていることを保証できることを知見した。
【0016】
すなわち、発明者らは、異方性の集合組織を作る工程で最も重要なものは、前記の中間段階相にRFe14B相の微結晶を均一に分散させる第一段階であり、中間段階相を取り出して確認することでこれらの現象を検証できることを知見し、この発明を完成した。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明による中間段階相の詳細を説明し、その役割について詳述し、さらに、水素化・再結晶処理法の本質について説明する。
R−Fe−B系合金は、鋳造後はRFe14B相、RFe相(B濃度が6at%を超える場合のみ)、α−Fe相、Rリッチ相、M−B相(Mを添加した場合に限る)、などからなる。これに均質化熱処理を施すと、α−Fe相の体積比率は減少するが、相の構成自体は変化しない。均質化した合金を水素雰囲気中、850℃前後で保持すると、RFe14B相に水素が固溶した相が出現するが、この相は熱力学的には準安定相であり、中間段階相に変態する。
【0018】
この中間段階相は、水素化初期の試料を油中に焼き入れることにより室温に取り出すことができ、発明者らが初めて発見したものである。
その構造は正方晶と考えられ、a軸はRFe14Bと同じ、c軸はRFe14B相の3分の1である。組成は、R含有量がRFe14B相よりも低く、分析結果では0.5から3at%の程度である。これに対し、Fe+Coは90%以上になっている。
中間段階相は、RとFeとCoとBとMを含み、その組成を原子比率で表すとき、
R: 0.01〜10%、Fe+Co: 70〜99%、M: 0.01〜10%、B: 残部である。
【0019】
この中間段階相は、内部に格子整合したRFe14B相の微結晶を内在させており、多くの場合、数個のRFe14B微結晶と球状のRH微結晶を含む。中間段階相は水素化による分解がまだ起こっていないRFe14B相の未分解領域とラメラ状のRH+α−Fe混合組織を挟んで接している。中間段階相と未分解領域のRFe14B相とは方位関係を保持しており、c軸方向が一致している。ラメラ組織の内部にはRFe14B微結晶は見つかっておらず、ラメラ組織の各相と未分解領域のRFe14B相との方位関係はない。中間段階相はラメラ組織と反対側にはα−FeとFeBとRHとからなる領域と接しており、α−Fe相とFeB相からなる部分は未分解領域のとRFe14B相と方位関係を保持しているRFe14B相の微結晶を含有している。
【0020】
これらのことから、水素化初期の反応は水素が合金表面から内部に向かって拡散するに従い、水素を固溶したRFe14B相がまずRに富んだ中間段階相に変態すると考えられる。この時、部分的にCo+M元素の比率が高い領域が組成の熱揺らぎにより形成され、その領域でRFe14B微結晶が変態せずに取り残され、Rに富んだ中間段階相からRが排出されてRHが球状粒子となって析出し、ついで中間段階相がα−FeとFeB相とに分解すると考えられる。
【0021】
中間段階相はこのようにして水素化分解反応のフロンティア部分に存在し、合金全体が水素化・分解反応を完了するまでは水素ガス中で焼き入れることにより、室温にクウェンチして観察することができる。
【0022】
クウェンチ過程で、未分解領域と中間段階相との境界部分は中間段階相中のR含有量が高いために不安定となり、α−FeとRHとのラメラ組織に分解してしまうと考えられる。
あるいは、別の考え方として、分解反応のフロンティアに近い未分解のRFe14B相の水素含有量が室温付近の平衡水素含有量よりも高くなっているので、冷却過程でこの部分が分解し、RHとα−Feとのラメラ組織に変態するとも考えられる。水素化・分解反応を完結させると、フロンティアは消滅し、中間段階相もなくなる。
中間段階相を完全に分解させてしまうことは、次の脱水素工程を経て保磁力と残留磁化の高い異方性の集合組織を得るために必要な条件である。
【0023】
次に、脱水素工程に移る。水素ガスの圧力をRHの平衡水素圧力よりも低くすると、RHが水素を放出し、金属Rが生成する。この状態は不安定であり、すぐに周囲の相と反応して、RFe14B相が形成される。この時、組織中に微細に分散したRFe14B微結晶が核となって結晶粒成長が進行するため、微細で方位が揃ったRFe14Bの集合組織が形成される。
【0024】
未分解領域のRFe14Bが中間段階相を経ずに直接α−Fe+RH+FeB+RFe14Bに分解するのであれば、分解前にRFe14B相中にRおよびBなど構成元素の大きな組成変動が生じなければならず、それらの中にRFe14Bが組織中に均質に取り残された組織を作りうるメカニズムが存在しないため、最終製品において均質な異方性の集合組織を得ることができなくなり、等方性の組織となるか、または保磁力とHkの低い、異方性磁石としては低特性の合金組織となる。
【0025】
したがって、中間段階相の役割は、
(1)もとのRFe14B相の方位関係をそのまま受け継ぐマトリックス相として機能する。
(2)もとの方位を保ったRFe14B微結晶が均質に分散した状態が維持されることを助ける。
【0026】
以上に詳述したごとく、例えば、異方性Nd−Fe−B磁性合金を得る手段としてのHDDR工程は、従来考えられていたような水素化・分解と脱水素・再結合という2段階の工程ではなく、(1)中間段階相中に格子整合したNdFe14B微結晶を作る工程、(2)中間段階相を完全に分解させる工程、(3)脱水素してもとの方位を持った無数のNdFe14B結晶からなる集合組織を作る工程の3段階からなっているといえる。
従って、異方性の集合組織を作る工程で最も本質的なのは、中間段階相中にNdFe14B相の微結晶を均一に分散させる第一段階であるといえる。
【0027】
以下に、中間段階相の利用方法について説明する。
まず、水素化・分解反応のごく初期段階において、合金の一部分を炉外に取り出して走査型電子顕微鏡などで観察することにより、水素化が正しい条件で行われているか否かを判定できる。
【0028】
すなわち、異方性集合組織を得るためには、もとの方位を記憶しているRFe14B微結晶が均質に分散した水素化組織を形成させることが必須であるが、この微結晶を観察するには加速電圧300kV〜400kV程度の高性能な超高分解能の透過型電子顕微鏡が必要で、しかも、試料の方位を例えばRFe14Bのc軸と電子線の方向が平行になるよう調節しないと観察できない。しかし、中間段階相(IH)の中には、このようなRFe14B微結晶が均質に分散しているのであるから、IH相の存在を確認すれば事足りる。中間段階相は数百nmの大きさがあり、走査型電子顕微鏡で観察可能であり、方位を合わせることも不必要である。従って、判定に要する時間を大幅に削減できる。
【0029】
また、中間段階相の利用方法として、水素化・分解反応が完了すると中間段階相は全てが分解しているので、水素化・分解反応工程の終了点の判定に中間段階相の存在が認められないという条件を用いることができる。
【0030】
以下に、上述のこの発明による中間段階相を利用した種々の製造方法、調整方法、手法などを説明する。以下、RにNdを用いた例で説明する。
まず、異方性集合組織を有するNd−T−B系異方性磁石用合金の微細組織調整法として、
(1)NdFe14B化合物を主相とする合金を水素雰囲気中で熱処理し、合金中に含まれるNdFe14B相を、a軸がもとのNdFe14B相と同じでc軸が3分の1でかつもとのNdFe14B相とc軸の方位を同じくする正方晶構造の中間段階相と、未分解のNdFe14B相と、NdH相と、α−Feと、FeBとの5相混合組織に分解する工程、
(2)水素ガス中で熱処理することにより中間段階相をさらにα−FeとFeBとに分解させ、中間段階相の体積比率を5%以下にすることにより、もとの合金中に存在したNdFe14B相の部分を実質的に未分解NdFe14Bとα−FeとNdHとFeBとの4相組織とする工程、
(3)水素ガス分圧を10kPa以下に下げて熱処理し、体積比率で95%以上をNdFe14B相に再結合させる工程、
(4)室温まで冷却し、大気中に取り出す工程、
からなる製造方法がある。
【0031】
また、上述の微細組織調整法において、工程(1)で、中間段階相がそれと格子整合した未分解のNdFe14B相の微結晶をその中に多数分散して含有するマトリックスとなっているミクロ組織を作ることを特徴とする製造方法がある。具体的には、下記のa,b工程からなる。
(a)水素分圧50Pa以下で760℃〜870℃に昇温した後、10kPa〜1000kPaの水素ガス圧力とし、15分〜2時間保持する。
(b)水素分圧10kPa〜500kPaで600℃〜750℃の温度範囲を10℃/分〜200℃/分の昇温速度で通過させ、760℃〜870℃で15〜2時間保持する。
【0032】
上記の微細組織調整法において、温度範囲は760℃〜900℃。時間は15分〜6時間の条件で、工程(2)を工程(1)よりも高い水素分圧下(最高100kPa)で行い、中間段階相の分解を促進する製造方法も有用である。
【0033】
別のNd−T−B系異方性磁石用合金の微細組織調整法として、
(1)NdFe14B化合物を主相とする合金を水素ガス中で熱処理し、合金中に含まれるNdFe14B相から、a軸がもとのNdFe14B相と同じでc軸が3分の1でかつもとのNdFe14B相とc 軸の方位を同じくする正方晶相(IH)の中に格子が整合した直径5nm〜100nmのNdFe14B相微結晶と球状のNdHとが分散した組織とする工程、
(2)水素ガス中で熱処理することにより前記正方晶相(IH)をさらにα−FeとFeBとに分解させ、正方晶相(IH)の体積比率を5%以下にすることにより、もとの合金中に存在したNdFe14B相の部分を実質的にNdFe14B微結晶がα−FeとFeB相中に微細に分散した部分とNdHからなる組織とする工程、
(3)水素ガス分圧を10kPa以下に下げて熱処理し、体積比率で95%以上をNdFe14B相に再結合させる工程、
(4)室温まで冷却し、大気中に取り出す工程、
からなる製造方法がある。
【0034】
さらに、Nd−T−B系異方性磁石用合金の微細組織調整法として、
(1)NdFe14B化合物を主相とする合金を水素ガス中で熱処理し、合金中に含まれるNdFe14B相の周りに、a軸がもとのNdFe14B相と同じでc軸が3分の1でかつもとのNdFe14B相とc 軸の方位を同じくする正方晶相(IH)の中に格子が整合した直径5nm〜100nmのNdFe14B相微結晶と球状のNdHとが分散した組織を形成する工程、
(2)水素ガス中で熱処理する事によりIH相に取り囲まれた直径120nm以上のNdFe14B相の領域を体積比率で合金の5%以下とする工程、
(3)水素ガス中で熱処理することによりIHをさらにα−FeとFeBとに分解させ、IHの体積比率を合計で5%以下にすることにより、もとの合金中に存在したNdFe14B相の部分を実質的にNdFe14B微結晶がα−FeとFeB相中に微細に分散した部分とNdHからなる組織とする工程、
(4)水素ガス分圧を10kPa以下に下げて熱処理し、体積比率で95%以上をNdFe14B相に再結合させる工程、
(5)室温まで冷却し、大気中に取り出す工程、
からなる製造方法がある。
【0035】
水素中熱処理工程を開始するにあたり、開始点では、合金の大部分は未分解のNdFe14B相になっていることが異方性集合組織を最終的に得るために必須である。
従って、熱処理温度までの昇温工程には次の注意が必要である。すなわち、600℃〜750℃の温度域では、100Pa以上の水素ガス圧力下ではNdFe14B相は安定ではなく、FeBとNdHとα−Feに完全に分解する傾向にある。そこで、この温度域をNdFe14Bを分解せずに昇温するための方法として、次の2つのプロセスが提案できる。
(1)水素圧力を50Pa以下にする。(この場合、水素ガスは760℃以上に合金温度が到達した後に系内に導入される。)
(2)昇温速度を充分早くする。(この際、最低10℃/min以上が必要である。上限は設備の能力と合金の総熱容量のバランスにより定まり、通常200℃/min以上は困難であるし、意味がない。)
【0036】
よって、NdFe14B微結晶からなる集合組織を得る異方性ハード磁性合金組織の調整方法として、
水素分圧50Pa以下で760℃〜870℃に昇温した後、10kPa〜800kPaの水素ガス圧力とし、15分〜30時間保持した後、合金の一部をサンプリングポートより取り出し、合金中に含まれるNdFe14B相の周りに、α−FeとNdHからなる周期50nm〜300nm厚さ100nm〜2000nmのラメラ組織を介して、a軸がもとのNdFe14B相と同じでc 軸が3分の1でかつもとのNdFe14B相とc 軸の方位を同じくする正方晶相(IH)と中に格子が整合した直径5nm〜100nmのNdFe14B相微結晶と球状のNdHとが分散した組織となっていることを確認した後、水素分圧を10kPa以下に下げて合金中から水素ガスを分離し、直径0.05μm〜1μmのNdFe14B微結晶からなる集合組織を得る方法がある。
【0037】
さらに、別のNdFe14B微結晶からなる集合組織を得る異方性ハード磁性合金組織の調整方法として、
水素分圧10kPa〜500kPaで600℃〜750℃の温度範囲を10℃/分〜200℃/分の昇温速度で通過させ、760℃〜870℃で15〜60分保持した後、合金の一部をサンプリングポートより取り出し、合金中に含まれるNdFe14B相の周りに、α−FeとNdHからなる周期50nm〜300nm厚さ100nm〜2000nmのラメラ組織を介して、a軸がもとのNdFe14B相と同じでc 軸が3分の1でかつもとのNdFe14B相とc 軸の方位を同じくする正方晶相(IH)と中に格子が整合した直径5nm〜100nmのNdFe14B相微結晶と球状のNdHとが分散した組織となっていることを確認した後、水素分圧を10kPa以下に下げて合金中から水素ガスを分離し、直径0.05μm〜1μmのNdFe14B微結晶からなる集合組織を得る方法がある。
【0038】
この発明のR−T−B系異方性磁石用合金粉末の製造方法において、RFe14B化合物を主相とする合金の組成としては、R:10〜20at%、T:67〜85at%、B:4〜10at%、M:10at%以下を主成分とする合金が好ましい。
この発明に使用する原料合金に用いるRすなわち希土類元素は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luが包括され、このうち少なくとも1種以上で、Pr、Ndのうち少なくとも1種または2種をRのうち50at%以上含有する必要がある。Rの50at%以上をPr、Ndの1種または2種とするのは50at%未満では充分な磁化が得られないためである。
【0039】
Rは、10at%未満ではα−Fe相の析出により保磁力が低下し、また20at%を超えると、目的とする正方晶NdFe14B型化合物以外に、Rリッチの第2相が多く析出し、この第2相が多すぎると合金の磁化が低下する。従ってRの範囲は10〜20at%とする
【0040】
Tは鉄族元素であって、Fe、Coを包含する。Tは、67at%未満では低保磁力、低磁化の第2相が析出して磁気的特性が低下し、85at%を超えるとα−Fe相の析出により保磁力、角型性が低下するため、67〜85at%とする。
また、Feのみでも必要な磁気的性質は得られるが、Coの添加は、キュリー温度の向上、すなわち耐熱性の向上に有用であり、必要に応じて添加できる。FeとCoの原子比において、Feが50%以下となるとNdFe14B型化合物の飽和磁化そのものの減少量が大きくなってしまうため、Tのうち原子比でFeを50%以上とした。
【0041】
Bは、正方晶NdFe14B型結晶構造を安定して析出させるためには必須である。添加量は、4at%以下ではR17相が析出して保磁力を低下させ、また減磁曲線の角型性が著しく損なわれる。また、10at%を超えて添加した場合は、磁化の小さい第2相が析出して粉末の磁化を低下させる。従って、Bは、4〜10at%とした。
【0042】
また、このほかの添加元素としては、水素化・再結晶処理後も磁気特性を向上させる目的で異方性とするには水素化時に母相の分解反応を完全に終了させずに、母相、すなわちR14B相を安定化して故意に残存させるのに有効な元素が望まれる。特に顕著な効果を持つものとして、Al、Ti、V、Cr、Ni、Ga、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、Wがある。
前記添加元素は、全く添加しなくてもよいが、添加する場合は10at%を超えると強磁性でない第2相が析出して磁化を低下させるため、添加量は10at%以下とする。
【0043】
この発明において、中間段階相を得る方法としては、合金全体が水素化・分解反応を完了するまでは水素ガス中で焼き入れることにより、室温にクウェンチして観察することができる。急冷方法と好ましい条件としては、
(a)水素ガス圧力を水素化時と同一に保持したまま、合金の一部(好ましくは重量10g以下)を10℃〜60℃の油中に焼き入れする方法、
(b)別チャンバー中に合金の一部を移した後、水素ガスジェット中で急冷する方法、
(c)別チャンバー中に合金の一部を移した後、ヘリウムガスジェット中で急冷する方法、などがある。この時の冷却速度は10℃/min以上、好ましくは100℃/min以上が適している。
【0044】
【実施例】
実施例1
Nd13Fe62.2Co10.88.9GaZr0.1合金を溶体化した後、粉砕して粗粉砕粉とした。この粉末を1Pa以下の真空中で850℃まで昇温後、純度99.9999%以上のHガスを導入した100kPaのH雰囲気で、種々の時間水素化し、取り出した試料を油中に焼き入れることにより室温まで急冷し、検査用合金を得た。得られた合金を電子線が透過する厚さにまで加工し、加速電圧300kv〜400kvで透過型電子顕微鏡を用いて観察した。
【0045】
上記により得られた試料の透過型電子顕微鏡観察結果の模式図を図1に示す。30〜60分水素化した試料内には、残存NdFe14B相(母相)と同方位のNdFe14B微粒子や、NdHを含む粗大なα−Fe及びFeB粒子、α−FeとNdHからなるラメラ状組織に加えて、未知相が多量に残存することが分かった。また、この未知相は水素化時間の延長により消失することが分かった。従って、この未知相を中間段階相(IH:Intermediate Hydrogenation Phase)と称することとした。
【0046】
図2は、実施例1の検査用合金の中間段階相(IH)と残存母相からの電子線回折像写真であり、母合金のc軸方向と平行に電子線を入射した場合を示す。中間段階相は、NdFe14Bと類似構造を持ち、この二者が結晶方位関係を持つことがわかる。
【0047】
また、図3は、母合金のc軸方向と垂直に電子線を入射した場合の電子線回折像写真を示し、Aは残存NdFe14B微結晶、Bは中間段階相を示す。図3より、C軸方向の回折スポットの周期が、中間段階相ではNdFe14B相の3倍になっており、実空間では中間段階相のc軸の長さがNdFe14B相の3分の1であることが分かる。
これらより、IHの構造は、a軸長がNdFe14Bとほぼ同じで、c軸長が約1/3の正方晶であると判断される。なお、図中では、両者の回折の消滅則の違いにより、a軸長が異なっているように見えている。
【0048】
図4は、実施例1の検査用合金において、中間段階相中に存在するNdFe14B微結晶を示す超高分解能透過型電子顕微鏡写真である。図4より、二つの相の格子が整合していることが分かる。
【0049】
図5は、実施例1の検査用合金において、中間段階相が、α−FeとFeBに分解した後のα−Fe中に存在するNdFe14B微結晶を示す超高分解能透過型電子顕微鏡写真である。また、NdFe14B微結晶の電子線回折像写真を併せて写し込んである。
【0050】
図6は、実施例1の検査用合金において、中間段階相が、α−FeとFeBに分解した後の、FeBに存在するNdFe14B微結晶を示す超高分解能透過型電子顕微鏡写真である。また、FeBに存在するNdFe14B微結晶の電子線回折像写真を併せて写し込んである。
【0051】
図7は、実施例1の検査用合金の組織の一部を示す超高分解能透過型電子顕微鏡写真である。背景の大部分は中間段階相(IH)で、そのほか、写真左にラメラ組織(l)とα−Fe(f)、及び中間段階相中に分散した直径100〜200nmの球状NdH(nh)と数nmの残存NdFe14B微結晶(nf)が認められる。なお、図6は、合金の組織において、分解した部分のみを撮影したものなので、未分解のNdFe14B相(母相)は写っていない。
【0052】
以上の結果から、中間段階相の構造は正方晶と考えられ、a軸はNdFe14Bと同じ、c軸はNdFe14B相の3分の1である。組成はNd含有量がNdFe14B相よりも低く、分析結果では0.5から3at%の程度である。これに対し、Fe+Coは90%以上になっている。ただし、Bの分析ができていないので正しい百分率にはなっていない。
【0053】
実施例2
高周波誘導溶解法によって溶製して得られた表1の組成No.1〜4の鋳塊を、1100℃、24時間、Ar雰囲気中で焼鈍し、この鋳塊を300μm以下まで粗粉砕した。
粗粉砕粉を圧力容器中に入れ、1Pa以下にまで真空排気した。その後、純度99.999%以上の水素ガスを導入して容器内の圧力を水素分圧50Pa以下となし、760℃〜870℃に昇温した後、10kPa〜800kPaの水素ガス圧力とし、15分〜30分間保持した後、合金の一部をサンプリングポートより取り出し、油中に焼き入れ、急冷して検査用合金を得た。得られた合金をEDX機能付き走査型電子顕微鏡を用いて検査した。
【0054】
検査用合金中に含まれるNdFe14B相の周りに、α−FeとNdHからなる周期50nm〜300nm厚さ100nm〜2000nmのラメラ組織を介して、Nd含有10at%以下の広範囲のNd−Fe−Co−Ga相(Bは本方法で判別できない)が存在し、さらに、ラメラ組織とは反対側にFe−Co合金相、および軽元素を多く含むことから、FeB相と判別される相との粒子(300nm〜800nm)が存在する組織であることを確認した。
【0055】
その後、水素分圧を10kPa以下に下げて合金中から水素ガスを分離し、直径0.05μm〜1μmのNdFe14B微結晶からなる集合組織を得る異方性ハード磁性合金組織に調整した。
【0056】
実施例3
高周波誘導溶解法によって溶製して得られた表1の組成No.1の鋳塊を、1100℃、24時間、Ar雰囲気中で焼鈍し、この鋳塊を300μm以下まで粗粉砕した。
粗粉砕粉を圧力容器中に入れ、1Pa以下にまで真空排気した。その後、純度99.999%以上の水素ガスを導入して容器内の圧力を水素分圧130kPaで600℃〜750℃の温度範囲を20℃/minの昇温速度で通過させ、850℃で30分保持した後、サンプリングポートより取り出し、急冷して検査用合金を得た。得られた合金をEDX機能付き走査型電子顕微鏡で検査した。
【0057】
検査用合金中に含まれるNdFe14B相の周りに、α−FeとNdHからなる周期50nm〜300nm厚さ100nm〜2000nmのラメラ組織を介して、Nd含有10at%以下の広範囲のNd−Fe−Co−Ga相(Bは本方法で判別できない)が存在し、さらに、ラメラ組織とは反対側にFe−Co合金相、および軽元素を多く含むことから、FeB相と判別される相との粒子(300nm〜800nm)が存在する組織であることを確認した。
【0058】
その後、水素分圧を10kPa以下に下げて合金中から水素ガスを分離し、直径0.05μm〜1μmのNdFe14B微結晶からなる集合組織を得た。
【0059】
実施例4
高周波誘導溶解法によって溶製して得られた表1の組成No.4の鋳塊を、1100℃、24時間、Ar雰囲気中で焼鈍し、この鋳塊を300μm以下まで粗粉砕した。
粗粉砕粉を圧力容器中に入れ、1Pa以下にまで真空排気した。その後、純度99.999%以上の水素ガスを導入して容器内の圧力を水素分圧50Pa以下となし、850℃に昇温した後、130kPaの水素ガス圧力とし、30分保持した。その結果、組織は、a軸がもとのNdFe14B相と同じでc軸が3分の1でかつもとのNdFe14B相とc軸の方位を同じくする正方晶構造の中間段階相(IH)と、未分解のNdFe14B相と、NdH相と、α−Feと、FeBとの5相混合組織に分解された。(中間段階相がそれと格子整合した未分解のNdFe14B相の微結晶をその中に多数分散して含有するマトリックスとなっているミクロ組織が得られた。)
【0060】
次いで、前記工程より高い水素分圧180kPaで850℃〜875℃の温度範囲で2時間保持した。その結果、中間段階相をさらにα−FeとFeBとに分解させ、その体積比率を5%以下にすることにより、もとの合金中に存在したNdFe14B相の部分を実質的に未分解NdFe14Bとα−FeとNdHとFeBとの4相組織が得られた。
【0061】
さらに、水素ガス分圧を10kPa以下に下げて825℃×1時間の条件で、熱処理し、その後、平均冷却速度13℃/minの条件で、室温まで冷却し、大気中に取り出したところ、体積比率で95%以上がNdFe14B相に再結合していた。
【0062】
実施例5
高周波誘導溶解法によって溶製して得られた表1の組成No.4の鋳塊を、1100℃、24時間、Ar雰囲気中で焼鈍した。この鋳塊を圧力容器中に入れ、1Pa以下にまで真空排気した。その後、純度99.999%以上の水素ガスを導入して容器内の圧力を200kPaとし、10時間、100℃で保持した。得られた粗粉砕粉を、容器内の圧力を水素分圧90kPaで600℃〜750℃の温度範囲を15℃/分の昇温速度で通過させ、830℃で45分保持した。
その結果、組織は、正方晶相の中間段階相と中に格子が整合した直径5nm〜100nmのNdFe14B相微結晶と球状のNdHとが分散した組織であった。
【0063】
次いで、前記工程より高い水素分圧150kPaで825℃〜850℃の温度範囲で3時間保持した。その結果、中間段階相がα−FeとFeBとに分解して体積比率が5%以下となり、もとの合金中に存在したNdFe14B相の部分が実質的にNdFe14B微結晶がα−FeとFeB相中に微細に分散した部分とNdHからなる組織となった。
【0064】
さらに、水素ガス分圧を10kPa以下に下げて825℃〜850℃の条件で、熱処理し、その後、平均冷却速度5℃/minの条件で、室温まで冷却し、大気中に取り出したところ、体積比率で95%以上がNdFe14B相に再結合していた。
【0065】
実施例6
高周波誘導溶解法によって溶製して得られた表1の組成No.4の鋳塊を、1100℃、24時間、Ar雰囲気中で焼鈍した。この鋳塊を圧力容器中に入れ、1Pa以下にまで真空排気した。その後、純度99.999%以上の水素ガスを導入して容器内の圧力を200kPaとし、10時間、100℃で保持した。合金は水素吸蔵により崩壊し、粗粉砕された。得られた粗粉砕粉を、容器内の圧力を水素分圧10Pa以下とし、825℃に昇温した後、80kPaの水素ガス分圧とし、20分〜40分保持した。その結果、合金中に含まれるNdFe14B相の周りに、正方晶相の中間段階相(IH)と中に格子が整合した直径5nm〜100nmのNdFe14B相微結晶と球状のNdHとが分散した組織を得た。
【0066】
次いで、水素分圧120kPa、850℃で90分保持することにより、中間段階相に取り囲まれた直径120nm以上のNdFe14B相の領域を体積比率で合金の5%以下となした。
【0067】
さらに、水素ガス分圧を200kPa以下とし、温度範囲は860℃〜880℃、1時間の条件で熱処理し、その後、Arガス2気圧、ファン冷却の条件で、室温まで冷却し、大気中に取り出したところ、体積比率で95%以上がNdFe14B相に再結合していた。
【0068】
【表1】
Figure 0003595064
【0069】
【発明の効果】
この発明は、R−T−(M)−B系合金を粗粉末とした後、真空中を昇温し、水素を導入して水素化し、水素化処理中に取出して急冷した検査用合金を特徴とし、この検査用合金より確認できる中間段階相は、母相と同方位のRFe14B微粒子やRHを含む粗大なα−Fe及びFeB粒子、α−FeとRHからなるラメラ状組織に加えて、Rが10at%以下のFeリッチ合金相が多量に存在するもので、このFeリッチ合金相は水素化時間の延長により消失するものであるが、対象とする合金粉末の水素化途中でこのFeリッチ合金相、すなわち中間段階相を有する検査用合金を取り出ことにより、RFe14B微粒子の生成や異方化の過程を検証しながら、適正な合金相組織に調整、すなわち、最適条件を設定して水素化処理で、前記の中間段階相にRFe14B相の微結晶を均一に分散させることが可能で、脱水素後に、保磁力と残留磁化の高い異方性の集合組織を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による検査用合金の透過型電子顕微鏡観察結果の模式図である。
【図2】この発明による検査用合金の中間段階相中(IH)およびその中に残存したNdFe14B微結晶の電子線回折像写真である。
【図3】母合金のc軸方向と垂直に電子線を入射した場合の電子線回折像写真を示し、Aは残存NdFe14B微結晶、Bは中間段階相を示す。
【図4】この発明による検査用合金の中間段階相中の残存NdFe14B微結晶の超高分解能透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】中間段階相がα−FeとFeBに分解した後の、α−Fe中に存在するNdFe14B微結晶を示す超高分解能透過型電子顕微鏡写真と電子線回折像写真である。
【図6】中間段階相がα−FeとFeBに分解した後の、FeBに存在するNdFe14B微結晶を示す超高分解能透過型電子顕微鏡写真と電子線回折像写真である。
【図7】水素化・分解反応初期段階の検査用合金の透過型電子顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. Fe14B化合物を主相とする合金を、水素分圧50Pa以下で760℃〜870℃に昇温した後、10kPa〜800kPaの水素ガス圧力とし、15分〜30時間保持した後、合金の一部をサンプリングポートより取り出し、室温に急冷して合金中に含まれるRFe14B相の周りに、α−FeとRHからなる周期50nm〜300nm厚さ100nm〜2000nmのラメラ組織を介して、R濃度が10at%以下のFeリッチ中間段階相(IH)が存在し、さらにその外側にα−FeとFeB相からなる領域が存在する組織となっていることを確認した後、水素分圧を10kPa以下に下げて合金中から水素ガスを分離し、直径0.05μm〜1μmのRFe14B微結晶からなる異方性集合組織を有する磁石用合金粉末を得るR−T−B系異方性磁石用合金粉末の製造方法。
  2. Fe14B化合物を主相とする合金を、水素分圧10kPa〜500kPaで600℃〜750℃の温度範囲を10℃/分〜200℃/分の昇温速度で通過させ、760℃〜870℃で15〜120分保持した後、合金の一部をサンプリングポートより取り出し、室温に急冷して合金中に含まれるRFe14B相の周りに、α−FeとRHからなる周期50nm〜300nm厚さ100nm〜2000nmのラメラ組織を介して、R濃度が10at%以下のFeリッチ中間段階相(IH)が存在し、さらにその外側にα−FeとFeB相からなる領域が存在する球状のRHとが分散した組織となっていることを確認した後、水素分圧を10kPa以下に下げて合金中から水素ガスを分離し、直径0.05μm〜1μmのRFe14B微結晶からなる異方性集合組織を有する磁石用合金粉末を得るR−T−B系異方性磁石用合金粉末の製造方法。
  3. 請求項1に記載のR−T−B系異方性磁石用合金粉末の製造方法において組織を確認するための検査用合金であって、RFe14B化合物を主相とする合金を、水素分圧50Pa以下で760℃〜870℃に昇温した後、10kPa〜800kPaの水素ガス圧力とし、15分〜60分保持した後、合金の一部をサンプリングポートより取り出し、室温まで急冷した検査用合金。
  4. 請求項2に記載のR−T−B系異方性磁石用合金粉末の製造方法において組織を確認するための検査用合金であって、RFe14B化合物を主相とする合金を、水素分圧10kPa〜500kPaで600℃〜750℃の温度範囲を10℃/分〜200℃/分の昇温速度で通過させ、760℃〜870℃で15〜60分保持した後、合金の一部をサンプリングポートより取り出し、室温まで急冷した検査用合金。
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