JP3594927B2 - 物性値の測定方法および走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、探針−試料間に作用する静電引力を検出することで、電気容量(C)や誘電率(ε)等の物性値の測定方法またはその方法を用いた走査型プローブ顕微鏡(S canning Probe Microscope、略称SPM)に関するものである。
【0002】
【従来技術】
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、略称AFM)は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の1つであり、原子オーダの分解能で試料表面を観察することができ、様々なSPM技術の基本となっている。通常のAFMで観察できる表面形状に加えて、試料表面近傍の電気容量(C)や誘電率(ε)等の物性値の分布も観察しようとする手法が走査型容量顕微鏡(Scanning Capacitance Microscope、略称SCM)である。AFMにおいて、電気容量(C)等を測定するには、電気容量センサーを探針近傍に取り付ける方法および静電引力を検出して測定する2種類の方式が提案されている。
【0003】
電気容量センサー方式の先行技術を述べる。
微小領域における探針−試料間の電気容量(C)を測定するには、RCA社によって民生品用途で開発されていた静電式ビデオディスク再生装置の静電容量センサー[R.C.Palmer,E.J.Denlinger,and H.KAwamoto,RCA Rev,43,194(1982)]を用いてMateyらによって始められた[J.R.Matey and J.Blanc,J.Appl.phys.47,1437(1985)]。Mateyらは探針−試料間の距離制御を行わなかったが、Williamsらは走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscopy、略称STM)を用いて探針−試料間を制御しながら、電気容量センサーによって微小領域における電気容量(C)を測定することに成功した[C.C.Williams,W.P.Hough,and S.A.Rishton,Appl.Phys.Lett.55,203(1989)]。また、BarretらはAFMを用いて、絶縁体であるシリコン酸化膜の上での電気容量(C)の測定を可能とした[R,C .Barrett and C.F.Quate,J.Appl.Phys.70 2725(1991)]。こうして、電気容量センサーをAFM探針近傍に取り付けたものが現在SCMとして市販されている製品の原型となっている。
【0004】
RCA社の電気容量センサーは、固定周波数で発振する発振器を備え、探針−試料間容量(C)およびセンサー内のインダクタンス(L)によって構成されるLC共振周波数が変化することによって、共振回路を通じて取り出される出力信号の振幅を振幅検出器を用いて検出する手法であった。これに対し、Choらは、探針−試料間容量(C)および外付けのセンサー内のインダクタンス(L)によって発振周波数が変化する周波数可変発振器を用い、出力信号の周波数を周波数検出器を用いて検出する電気容量センサーを提案した[Y,Cho,A,Kirihara,and T.Saeki,Rev.Sci.Instrum.67,2297(1996)]。
【0005】
いずれの電気容量センサーを用いても、実際の動作では浮遊容量の影響を避けるため、変調法を用いており、探針−試料間に交流電界を印加し、それによって変調された振幅もしくは周波数をロックインアンプを用いて検出している。そのため、実際に得られる画像は電気容量(C)の分布像ではなく、微分容量(∂C/∂V)の分布像である。この方法では、AFMの探針−試料間制御を利用しているが、電気容量検出は特別な電気容量センサーを必要とするため、装置構成が煩雑である。
【0006】
静電引力検出方式の先行技術を述べる。
電気容量センサーを用いずにAFMだけを用いて試料表面の電気容量(C)を検出する手法もMartinらによって提案された[Y.Martin,D.W.Abraham,and H.K.Wickramasinghe,Applp.phys.Lett.52,1103(1988)]。これは、探針−試料間に周波数f(角周波数ω=2πf)の交流電界Eを印加し、その2倍高調波成分の静電引力を検出する方法である。この測定原理は次のとおりである。探針−試料系を平行平板金属系と仮定し、静電容量を(C)とし、その平行平板に垂直方向をZ方向とすると、電圧Vを印加した際に、次の式1で表される静電引力Fが作用する。
【0007】
【数1】
【0008】
このとき、探針−試料間に印加される電圧Vを直流成分Vdcと交流成分Vacとに分けると、式2のとおりである。
V=Vdc+Vaccosωt …(2)
この電圧Vを印加すると、
【0009】
【数2】
となる。ここで、Vdc=0とした場合、
【0010】
【数3】
【0011】
となる。Vacの値は既知であるので、2倍高調波(2ω)成分を検出することで、∂C/∂z成分を検出することができる。つまり、電気容量(C)や誘電率(ε)等の物性値を測定することができる。
【0012】
しかしながら、この方式では、電気容量センサーを用いた方式とは異なり、変調法を用いていないため、浮遊容量の影響が無視できず、感度が低いという問題がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、特別な電気容量センサーを用いずに、たとえば静電引力を検出することで、試料の電気容量(C)や誘電率(ε)等の物性値を測定する方法およびその方法を実施する走査型プローブ顕微鏡を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、試料に探針を近接または接触させ、探針と試料との間に角周波数ωで振動する交番電圧を印加し、それによって誘起される静電引力のうち、角周波数n×ω(nは自然数であり、n≧3)で振動する交番力を、探針−試料間相互作用による力を検出する力検出手段によって検出することにより、電気容量(C)や誘電率(ε)等の物性値を測定するようにしたことを特徴とする物性値の測定方法である。
【0015】
従来の静電引力検出方式では、前述のように変調法を用いていないために微分容量(∂C/∂V)像ではなく、電気容量(C)像を観察しており、浮遊容量の影響がある。本発明では、この問題を解決するために、角周波数ωの交流電圧Vを探針と試料との間に印加している。この場合、探針−試料系を平行平板金属系と仮定し、静電容量を(C)とし、平行平板に垂直な座標軸をzとすると、∂C/∂zは定数ではなく、印加する電圧Vによって変調されているため、
【0016】
【数4】
【0017】
で表されるように、角周波数ωで変調されていると考える。このため、静電引力は、
【0018】
【数5】
となり、
【0019】
【数6】
となる。したがって3倍高調波(3ω)成分
【0020】
【数7】
【0021】
が存在するため、3倍高調波(3ω)成分を検出することで、微分容量(∂C/∂V)像に相当する情報を得ることができる。
【0022】
本発明の実施の他の形態では、角周波数ωの4倍以上の高調波成分を検出することによっても、試料3の物性値を測定することができる。
【0023】
また本発明は、探針と試料との間に角周波数ωで振動する交番電圧を印加し、それによって誘起される角周波数2ωで振動する交番力をも検出することにより、電気容量(C)や誘電率(ε)等の物性値を測定するようにしたことを特徴とする。
【0024】
また本発明は、角周波数成分抽出手段によって抽出される角周波数は、探針と試料とを含む機械的共振部の共振角周波数と同一値または近似した値に選ばれることを特徴とする。
【0025】
本発明に従えば、静電引力による探針と試料とを含む機械的共振部の振動が共振現象によって大きく増幅されるため、力検出手段によって、高感度で物性値の測定が可能となる。
【0026】
また本発明は、探針は、試料から離間しており、試料に周期的に接触し、または接触したままであることを特徴とする。
【0027】
本発明に従えば、探針と試料とは、図1〜図5および図9〜図14に関連して後述されるように、離間するように構成されてもよく、または図6〜図8に関連して後述されるように接触したままであってもよく、さらにまた本発明の実施の他の形態では、探針と試料とは、たとえば探針の振動によって周期的に試料に接触するように構成されてもよい。
【0028】
また本発明は、探針と試料とを近接または接触して試料の物性値を測定する測定装置において、
探針と試料との間に角周波数の交番電圧を印加する発振器15,24と、
探針−試料間相互作用による静電引力を検出する力検出手段と、
力検出手段の出力に含まれるn×ω(nは自然数であり、n≧3)で振動する高調波成分を抽出する高調波成分抽出手段とを含むことを特徴とする測定装置である。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、走査型プローブ顕微鏡であるダイナミックモードAFMにおける本発明の実施の一形態を示すブロック図である。探針1を備えたカンチレバー2の変位はレーザーダイオード4、フォトダイオード5、差動増幅器6からなる変位検出装置によって検出することができる。駆動手段である圧電素子7に固定発振器8からの信号を印加することで、探針1を備えたばね力を有するカンチレバー2の振動を励起することができる。
【0030】
固定発振器8の角周波数ω1に同期した振動成分の振幅は、探針1と試料3との相互作用による力に対応しており、この振幅を、ロックインアンプ9を用いて電圧に変換して検出することができる。探針1がカンチレバー2に充分近づくと、この振幅が減少するが、フィードバック回路10を用いて、高域遮断フィルタ11および高圧増幅器12を通じて駆動される圧電素子を用いるXYZ方向駆動機構13によって、ロックインアンプ9の出力が予め定める設定値となるように、Z方向の試料位置を調節することで、この振幅を一定に保つことができる。
【0031】
この図1に示される走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡AFMであり、前述のカンチレバーは、先端に探針1を備え、圧電素子7によって実現される駆動手段によって、試料3に近接/離反する方向に固定発振器8の角周波数ω1で振動させられる。レーザダイオード4からの光がカンチレバー2の背面に照射され、その反射光は受光素子であるフォトダイオード5によって受光される。フォトダイオード5は、一対、設けられ、各出力は差動増幅器6に与えられ、これによってカンチレバー2の周期的変位を表す信号が得られ、この信号は、ロックインアンプ9に前述のように与えられる。
【0032】
XYZ方向駆動機構13によって、水平な図1の紙面に垂直である仮想平面内のXY方向へ試料3の表面上を走査しながら、試料3の上面の凹凸に応じて探針1と試料3とを結ぶ仮想直線の延びる図1の上下方向であるZ方向の試料位置を調節する。ロックインアンプ9の出力は、探針1と試料3との相互作用による力に対応し、この力に対応した電圧が、予め定める設定値となるように、フィードバック回路10の出力が得られる。駆動機構13は、Z方向の移動を行う。フィードバック回路10からのZ方向駆動用の制御電圧を、表示手段に表面形状像14として表示することができる。
【0033】
固定発振器15から角周波数ωの交流電圧を探針1−試料3間に印加し、すなわち試料3と接地間に印加し、角周波数ωを逓倍器16を用いて逓倍して得られた参照信号Vrefに同期した静電引力の3倍高調波(3ω)成分を、ロックインアンプ17を用いて検出することで、微分容量(∂C/∂V)像18が得られる。ロックインアンプ17は、逓倍器16からの出力である参照信号Vrefに同期した差動増幅器6の出力成分を取り出して抽出し、表示手段に与え、微分容量像18を得る。本発明の実施の他の形態では、逓倍器16とロックインアンプ17との組合せは、角周波数3ωの成分を通過するバンドパスフィルタによって実現されてもよい。
【0034】
図2は、図1に示される実施の形態における角周波数を説明するためのスペクトル図である。図2に示すように、探針1とカンチレバー2とを含む機械的共振部には、共振現象によって振幅が大きく増幅される周波数(共振周波数)があり、ダイナミックモードでは、固定発振器8の周波数はカンチレバー2の1次自由共振角周波数(ω1)に設定している。3ωが2次自由共振角周波数(ω2)に一致するように(ω2=3ω)、ωを設定することで、静電引力によるカンチレバーの振動が共振現象によって大きく増幅されるため、高感度で物性値の測定が可能となる。
【0035】
たとえばカンチレバー2が短冊形であり、1次自由共振角周波数ω1が30kHzであり、2次自由共振角周波数ω2が189kHzであるとする。この場合、ωを63kHzとし、これと位相同期した189kHzの振幅位相特性をロックインアンプ17等を用いて位相検波することで、表示手段によって微分容量(∂C/∂V)像が得られる。
【0036】
図3は、図1および図2に示される実施の形態において、探針1を接地電位とし、Siのp型半導体である試料3に固定発振器15から電圧Vを印加した場合の容量変化のグラフである。太い線41は試料3にドープされた不純物濃度が高い場合を示し、細い線42は低い場合に相当する。容量(C)は試料3に印加した電圧Vが正電圧側に振れたときに大きくなり、負電圧側に振れたときに小さくなる。つまり、微分容量(∂C/∂V)の符号は正となり、その絶対値│∂C/∂V│の大きさから不純物濃度を知ることができる。
【0037】
また図4は、図1および図2に示される実施の形態において、探針1を接地電位とし、Siのn型半導体である試料3に固定発振器15から電圧Vを印加した場合の容量変化のグラフである。太い線43は、試料3にドープされた不純物濃度が高い場合を示し、細い線44は、低い場合に相当する。容量(C)は試料に印加した電圧Vが正電圧側に振れたときに小さくなり負電圧側に振れたときに大きくなる。つまり、微分容量(∂C/∂V)の符号は負となり、その絶対値│∂C/∂V│の大きさから不純物濃度を知ることができる。
【0038】
図3および図4において、固定発振器15から前述のように角周波数ωの信号45が探針1−試料3間に印加されて入力されるとき、ロックインアンプ17の3倍高調波3ωの成分である波形46,47;48,49の振幅位相特性が検出され、その振幅に依存した試料3のドープされた不純物濃度を検出することができる。
【0039】
試料3は前述のようにたとえばSi半導体であり、その表面には、SiO2が形成されている。本発明の実施の他の形態では、カンチレバー2は剛性であってもよいが、ばね力を前述のように有することによって、感度の向上を図ることができる。像14,18は、液晶パネルまたは陰極線管などによって実現される表示手段によって表示され、これらの参照符号14,18を用いて表示手段を表すことがあり、このことは後述の参照符25,36に関しても同様である。
【0040】
図5は、ダイナミックモードAFMにおける本発明の実施のさらに他の形態を示すブロック図である。図5の実施の形態の図1〜図4の実施の形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。探針1を備えたカンチレバー2の変位はレーザーダイオード4、フォトダイオード5、差動増幅器6からなる変位検出装置によって検出することができる。差動増幅器6の出力であるカンチレバー2の変位信号を振幅制御回路19によって振幅を増幅または減衰し、さらに位相シフト回路20によって再び圧電素子7を駆動することで、いわば自励発振ループを形成することができ、カンチレバー2の1次自由共振角周波数(ω1)で発振させ続けることができる。
【0041】
1次自由共振角周波数ω1は、探針1と試料3との相互作用による力に対応して変化し、この周波数の変化を、周波数検出回路57を用いて電圧に変換して検出することができる。探針1が試料3に充分近づくと、引力によって角周波数ω1が減少し、また斥力によって増加するが、フィードバック回路10を用いて、高域遮断フィルタ11および高圧増幅器12を通じて駆動される圧電素子を用いるXYZ方向駆動機構13によって、周波数検出回路57の出力が予め定める設定値となるように、Z方向の試料位置を調節することで、この周波数を一定に保つことができる。
【0042】
差動増幅器6の出力は位相同期ループ回路によって実現される周波数検出回路57に与えられる。XYZ方向駆動機構13によって、水平な図1の紙面に垂直である仮想平面内のXY方向へ試料3の表面上を走査しながら、試料3の上面の凹凸に応じて探針1と試料3とを結ぶ仮想直線の延びる図1の上下方向であるZ方向の試料位置を調節する。周波数検出回路57の出力は、探針1と試料3との相互作用による力に対応し、この力に対応した電圧が、予め定める設定値となるように、フィードバック回路10の出力が得られる。駆動機構13は、Z方向の移動を行う。フィードバック回路10からのZ方向駆動用の制御電圧を、表示手段に表面形状像14として表示することができる。
【0043】
固定発振器15から角周波数ωの交流電圧を探針1−試料3間に印加し、角周波数ωを逓倍器16を用いて逓倍して得られた参照信号Vrefに同期した静電引力の3倍高調波(3ω)成分を、ロックインアンプ17を用いて検出することで、微分容量(∂C/∂V)像18が得られる。ロックインアンプ17は、逓倍器16からの出力である参照信号Vrefに同期した差動増幅器6または周波数検出回路57の出力成分を取り出して抽出し、表示手段に与え、微分容量像18を得る。本発明の実施の他の形態では、逓倍器16とロックインアンプ17との組合せは、角周波数3ωの成分を通過するバンドパスフィルタによって実現されてもよい。
【0044】
角周波数3ωの成分を抽出する信号は、差動増幅器6の出力または周波数検出回路57の出力であるが、これはスイッチ58によって切り替えることができる。スイッチ58を差動増幅器6の出力側に切り替えると、図1の実施例と同様に、3ωが2次自由共振角周波数(ω2)に一致するように(ω2=3ω)、ωを設定することで、静電引力によるカンチレバーの振動が共振現象によって大きく増幅されるため、高感度で物性値の測定が可能となる。
【0045】
また、周波数検出回路57の出力は探針1と試料3との相互作用による力に対応しているため、スイッチ58を周波数検出回路57の出力側に切り替えると、周波数検出回路57の出力における3倍高調波(3ω)成分を、ロックインアンプ17を用いて検出することでも、微分容量(∂C/∂V)像18が得ることができる。このとき、フィードバック回路10を用いて、高域遮断フィルタ11および高圧増幅器12を通じて圧電素子を用いるXYZ方向駆動機構13を駆動することによって周波数検出回路57の出力が予め定める設定値となるように、Z方向の試料位置を調節しているが、この距離制御の応答帯域は約1kHz程度であるため、クロストークを防ぎ、正しい表面形状像14を得るためには、角周波数ωを約1kHz以上に設定する必要がある。また、周波数検出回路57の周波数検出応答帯域は通常約10kHz程度であり、3ωが約10kHz以下となるように角周波数ωを設定する必要がある。
【0046】
この走査型プローブ顕微鏡である原子間力顕微鏡において、カンチレバー2からの発振信号である差動増幅器6の出力信号は、圧電素子7を駆動制御する信号に対して90度の位相遅れを生じる。この差動増幅器6の出力は、振幅制御回路19によって増幅または減衰されて前述のように位相シフト回路20に与えられ、ここで位相が90度遅延されるとともに、反転され、このようにして圧電素子7に位相シフト回路20からの信号が正帰還される。したがってカンチレバー2の機械的発振動作が継続される。周波数検出回路57は、差動増幅器6の出力の周波数に対応した電圧を導出する。
【0047】
図6は、コンタクトモードAFMにおける本発明の実施の一形態を示すブロック図である。図6の実施の形態の図1〜図4の実施の形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。探針1は試料3の表面に接触している。探針1を備えたカンチレバー2の変位はレーザーダイオード4、フォトダイオード5、差動増幅器6からなる変位検出装置によって検出することができる。探針1がカンチレバー2に接触すると、ばね力を有するカンチレバー2のたわみが、この変位検出装置によって検出され、フィードバック回路10を用いて、高域遮断フィルタ11および高圧増幅器12を通じて駆動されるXYZ方向駆動機構13によって、差動増幅器6の出力が予め定める設定値となるように、Z方向の試料位置を調節することで、この振幅を一定に保つことができる。XYZ方向駆動圧電素子13によってXY方向へ走査しながら、試料の凹凸に応じてZ方向の試料3の位置を調節し、フィードバック回路10からのZ方向駆動用の制御電圧を、表面形状像14として表示することができる。この図6の実施の形態では、前述の圧電素子7は省略され、カンチレバー2の基端部は固定位置に固定される。
【0048】
固定発振器15から角周波数ωの交流電圧を探針1−試料3間に印加し、角周波数ωを逓倍器16を用いて逓倍して得られた参照信号Vrefに同期した静電引力の3倍高調波(3ω)成分を、ロックインアンプ17を用いて検出することで、微分容量(∂C/∂V)像18が得られる。ロックインアンプ17は、逓倍器16からの出力である参照信号Vrefに同期した差動増幅器6の出力成分を取り出して抽出し、表示手段に与え、微分容量像18を得る。本発明の実施の他の形態では、逓倍器16とロックインアンプ17との組合せは、角周波数3ωの成分を通過するバンドパスフィルタによって実現されてもよい。
【0049】
図7は、図6に示される実施の形態における各周波数を説明するためのスペクトル図である。この図7に示すように、探針1が試料3の表面と接触した状態において、探針1とカンチレバー2とを含む機械的共振部には、その探針1−試料3間相互作用によって決まる接触共振角周波数(ωc)があるため、3ωがωcに一致するように固定発振器15の角周波数ωを設定することで、静電引力によるカンチレバー2の振動が共振現象によって大きく増幅される。そのため、高感度で物性値の測定が可能となる。
【0050】
図8は、コンタクトモードAFMにおける本発明の実施のさらに他の形態を示すブロック図である。図8の実施の形態の図1〜図5の実施の形態に対応する部分には、同一の参照符を付す。探針1は、試料3の表面に接触している。探針1を備えたカンチレバー2の変位はレーザーダイオード4、フォトダイオード5、差動増幅器6からなる変位検出装置によって検出することができる。探針1がカンチレバー2に接触すると、ばね力を有するカンチレバー2のたわみが、この変位検出装置によって検出され、フィードバック回路10を用いて、高域遮断フィルタ11および高圧増幅器12を通じて駆動されるXYZ方向駆動機構13によって、差動増幅器6の出力が予め定める設定値となるように、Z方向の試料位置を調節することで、このたわみを一定に保つことができる。XYZ方向駆動圧電素子13によってXY方向へ走査しながら、試料の凹凸に応じてZ方向の試料3の位置を調節し、フィードバック回路10からのZ方向駆動用の制御電圧を、表面形状像14として表示することができる。
【0051】
接触共振周波数は、探針1−試料3間相互作用によって決まるため、探針と試料との接触状態や、試料表面の弾性定数や表面下の構造によって変動する。このため、差動増幅器6の出力であるカンチレバーの変位信号を振幅制御回路19によって増幅または減衰し、さらに位相シフト回路20によって再び圧電素子7を駆動することで、いわば自励発振ループを形成することができる。この場合、カンチレバー2の接触共振周波数が変化した場合でも、カンチレバー2を常に接触共振周波数で発振させ続けることが可能となる。このため、たとえば、位相同期ループ回路によって実現される周波数検出回路21によって、カンチレバー2の接触共振周波数の変化に対応した電圧を得ることができる。このとき、この電圧の変化を接触共振周波数像25として画像化することで、試料の試料表面の弾性定数や表面下の構造に関する情報を得ることができる。
【0052】
電圧可変発振器24の制御電圧切替スイッチ23によって、予め定める一定の直流電圧を出力する固定電圧直流電源22により電圧可変発振器24を制御し、角周波数ωの交流電圧を探針1−試料3間に印加する。電圧可変発振器24の出力を逓倍器16に与えて、角周波数ωを逓倍器16を用いて逓倍して得られた参照信号を得る。この参照信号をロックインアンプ17に与え、したがってこの逓倍器16の参照信号に同期した静電引力の3倍高調波(3ω)成分を、ロックインアンプ17を用いて検出することで、微分容量(∂C/∂V)像18が得られる。本発明の実施の他の形態では、逓倍器16とロックインアンプ17との組合せは、角周波数3ωの成分を通過するバンドパスフィルタによって実現されてもよい。
【0053】
電圧可変発振器24の制御電圧切替スイッチ23を、周波数検出回路21側に切り替えることによって、この電圧の変化によって電圧可変発振器24を利用することで、カンチレバー2の接触共振周波数と同一の値をωとし、そのωの変化に対応して3倍高調波(3ω)成分を得ることができる。このようにして、ωを接触共振周波数と一致するように制御することが可能となる。こうして試料3の物性値測定の安定性を高めることができる。
【0054】
この走査型プローブ顕微鏡である原子間力顕微鏡において、カンチレバー2からの発振信号である差動増幅器6の出力信号は、圧電素子7を駆動制御する信号に対して90度の位相遅れを生じる。この差動増幅器6の出力は、振幅制御回路19によって増幅または減衰されて前述のように位相シフト回路20に与えられ、ここで位相が90度遅延されるとともに、反転され、このようにして圧電素子7に位相シフト回路20からの信号が正帰還される。したがってカンチレバー2の機械的発振動作が継続される。周波数検出回路21は、増幅回路19の出力の周波数に対応した電圧を導出する。
【0055】
図9は、本発明の実施のさらに他の形態の構成を示すブロック図である。この実施の形態は、前述の図1〜図4の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。この図9に示される実施の形態は、探針1と試料3間に流れるトンネル電流の大きさを一定に保つことにより、探針1−試料3間相互作用を一定に保つようにした構成を有する。試料3から探針1を備えたカンチレバー2へと流れる電流は電流−電圧変換回路30によって検出され、フィードバック回路10を用いて、高域遮断フィルタ11および高圧増幅器12を通じて駆動されるXYZ方向駆動機構13によってZ方向の試料位置を調節し、このトンネル電流値を予め定める設定値に一定に保つことができる。XYZ方向駆動機構13によってXY方向へ走査しながら、試料3の凹凸に応じてZ方向の試料3位置を調節し、フィードバック回路10からのZ方向駆動用の制御電圧を、表面形状像14として表示することができる。この図8の実施の形態では、前述の圧電素子7は省略され、カンチレバー2の基端部は固定位置に固定される。
【0056】
固定発振器15から角周波数ωの交流電圧を探針1−試料3間に印加し、角周波数ωを逓倍器16を用いて逓倍して得られた参照信号に同期した静電引力の3倍高調波(3ω)成分を、ロックインアンプ17を用いて検出して振幅を求めることで、微分容量(∂C/∂V)像18が得られる。本発明の実施の他の形態では、逓倍器16とロックインアンプ17との組合せは、角周波数3ωの成分を通過するバンドパスフィルタによって実現されてもよい。
【0057】
さらに、3ωが1次自由共振角周波数(ω1)に一致するように(ω1=3ω)、ωを設定することで、静電引力によるカンチレバーの振動が共振現象によって大きく増幅されるため、高感度で物性値の測定が可能となる。
【0058】
図10は、本発明の実施のさらに他の形態の構成を示すブロック図である。この図7の実施の形態は、ダイナミックモードAFMにおける構成例であり、前述の図1〜図4に実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。探針1と試料3との間に、異なる角周波数成分ωA,ωB(ただしωA>ωB)を有する複数の交番電圧を印加し、それによって誘起される角周波数│(m−n)×ωA±n×ωB│(m>n)で振動する交番力を検出する。n,mは自然数である。固定発振器26,27は、それぞれ角周波数ωA,ωBの信号を導出し、これらの角周波数ωA,ωBの信号を、それぞれVAcosωAt,VBcosωBtと表されるとする。これらを加算器28で加算した信号Vは、
V = VAcosωAt+VBcosωB …(9)
【0059】
【数8】
【0060】
であるので、∂C/∂zがzに関して定数と考えることができる実施の形態では、単一の角周波数ωの電圧を印加した場合に2倍高調波を検出する測定の代りに(ωA+ωB)または(ωA−ωB)の周波数成分をロックインアンプ17によって検出すればよい。VA,VBは既知であるので、∂C/∂zを求めることができることになる。
【0061】
また、∂C/∂zが定数ではなく、印加する電圧Vによって変調されていると考えることができる実施の形態では、
【0062】
【数9】
【0063】
となるため、単一の角周波数ωの電圧を印加した場合に3倍高調波を検出する測定の代りに|ωA+(ωA+ωB)|および|ωB+(ωA+ωB)|ならびに|ωA+(ωA−ωB)|および|ωB−(ωA−ωB)|である4通り、つまり2ωA±ωB、│ωA±2ωB│の4通りの周波数のいずれかの周波数成分をロックインアンプ17で検出すればよいことになる。
【0064】
図10において、探針1を備えたカンチレバー2の変位はレーザーダイオード4、フォトダイオード5、差動増幅器6からなる変位検出装置によって検出することができる。圧電素子7に固定発振器8からの信号を印加することで、探針1を備えたばね力を有するカンチレバー2の振動を励起して発振することができる。
【0065】
固定発振器8の角周波数ω1に同期した振動成分の振幅を、ロックインアンプ9を用いて電圧に変換して検出することができる。固定発振器8の角周波数は、カンチレバー2の1次自由共振角周波数(ω1)に設定している。探針1がカンチレバー2に充分近づくと、この振幅が減少するが、フィードバック回路10を用いて、高域遮断フィルタ11および高圧増幅器12を通じて駆動される圧電素子を用いるXYZ方向駆動機構13によって、高圧増幅器12の出力が予め定める設定値となるように、Z方向の試料位置を調節し、この振幅を一定に保つことができる。
【0066】
加算器28の交流電圧を前述のように探針1−試料3間に印加し、また周波数変換器29によって得られる2ωA±ωB、│ωA±2ωB│のうちの1つの所望の周波数の参照信号と周波数が同一である信号成分の振幅および位相を、ロックインアンプ17を用いて検出することで、微分容量(∂C/∂V)像18が得られる。本発明の実施の他の形態では、周波数変換器29とロックインアンプ17との組合せは、角周波2ωA±ωB、│ωA±2ωB│のうちの1つの所望の周波数の成分を通過するバンドパスフィルタによって実現されてもよい。
【0067】
たとえば、2ωA−ωBが2次自由共振角周波数(ω2)に一致するようにωA、ωBを設定することで、静電引力によるカンチレバー2の振動が共振現象によって大きく増幅されるため、高感度で物性値の測定が可能になる。たとえばカンチレバーが短冊形であり、1次自由共振角周波数ω1が30kHzであり、2次自由共振角周波数ω2が189kHzであるとする。たとえばωAを5.189MHz、ωBを10.189MHzとすると、2ωA−ωBが189kHzとなり、MHz帯域という高周波信号に対する電気容量(C)や誘電率(ε)等の物性値をより低い周波数帯域の信号の検出によって行うことができる。
【0068】
図11は、本発明の実施のさらに他の形態の構成を示すブロック図である。この実施の形態は、前述の図1〜4の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。注目すべきはこの実施の形態では、マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路52が備えられ、フィードバック回路10およびロックインアンプ17の出力が与えられる。処理回路52は、切換えスイッチ54を介して高圧増幅器12を動作制御する。切換えスイッチ54は、高域遮断フィルタ11の出力と、処理回路52からの出力とを切換えて高圧増幅器12に与える。処理回路52には、メモリ53が接続される。固定発振器8と圧電素子7との間には、スイッチ59が介在される。固定発振器15と試料3との間には、スイッチ60が介在される。切換えスイッチ54およびスイッチ59,60のオン/オフは、処理回路52によって制御される。
【0069】
図12は、図11の実施の形態における動作を説明するための図である。前述の図1の実施の形態では、探針1−試料3間相互作用を一定に保つようにして61のように走査することによって得られた表面形状を記録し、そこから規定の距離だけ変化させた軌跡に沿って、再び探針または試料を走査することによって表面形状の影響を受けないようにする。たとえば図1の実施の形態によって、図12(a)の試料3表面の物性値が異なるA1部分とB1部分とを有する試料3上で探針1を離間させて走査し、試料3の表面形状の測定と同時に物性値を測定する。その結果、図12(b)のような表面形状の正常な画像とともに、図12(c)のような物性値の分布を表す誤った画像が得られてしまう場合がある。つまり、図12(c)のように表面形状の変化に伴い、この試料表面の本来の物性値の分布とは無関係な信号55,56が物性値の分布として得られてしまうことになる。この問題は、図11の実施の形態によって解決される。
【0070】
図13は、図11および図12に示される実施の形態における処理回路52の動作を説明するためのフローチャートである。図11におけるスイッチ54は、高域遮断フィルタ11の出力信号側に、予め切り替えられている。ステップs1からステップs2に移り、先ず図14に示すように、スイッチ59を入にし、スイッチ60を切にする。カンチレバー2を固定発振器8により、共振角周波数ω1で振動させ、試料3の表面形状を測定し、フィードバック回路10から得られた表面形状を、ステップs3においてメモリ53に記憶しておく。
【0071】
次に、ステップs4で、その表面形状から決められた距離L1を加算もしくは減算する。ステップs5において、図11におけるスイッチ54を処理回路52の出力信号側に切り替え、また、図15に示すように、スイッチ59を切にし、スイッチ60を入にし、ステップs4の演算結果によって高圧増幅器12を動作制御することで、図11に示される実施の形態によれば、図12(d)のように、本来の物性値の分布とは無関係な信号55,56が含まれないような物性値の分布が得られる。
【0072】
図16は、本発明の実施のさらに他の形態の構成を示すブロック図である。この図16の実施の形態は、前述の図1〜図4の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。特にこの実施の形態では、探針1と試料3との間に作用する静電引力を打ち消すことにより、探針1と試料3との仕事関数に関する情報を得るよう構成される。固定発振器31によって出力された角周波数ωpの交流電圧Vpは、加算器32において反転増幅器35からの出力である電圧(Vdc)と加算されて試料1へ印加される。探針1と試料3の材料が異なる場合など、仕事関数の差である電圧(Vcpd)が存在し、静電引力は、
【0073】
【数10】
【0074】
となる。ロックインアンプ33によって角周波数ωpの成分を検出し、フィードバック回路34および反転増幅器35によって、
Vcpd+Vdc=0 …(13)
となるような電圧Vdcを調節することが可能である。このとき、
Vdc=−Vcpd …(14)
となり、探針1と試料3の仕事関数の差を打ち消しながら、それに必要となる電圧を画像化することで、表面電位像36を得ることができる。
【0075】
固定発振器15から角周波数ωの交流電圧も加算器32を通じて探針1−試料3間に印加し、角周波数ωを逓倍器16を用いて逓倍して得られた参照信号に同期した静電引力の3倍高調波(3ω)成分を、ロックインアンプ17を用いて検出することで、微分容量(∂C/∂V)像18が得られる。本発明の実施の他の形態では、逓倍器16とロックインアンプ17との組合せは、角周波数3ωの成分を通過するバンドパスフィルタによって実現されてもよい。
【0076】
たとえば、図1の実施例と同様に、3ωが2次自由共振角周波数(ω2)に一致するように(ω2=3ω)、ωを設定することで、静電引力によるカンチレバーの振動が共振現象によって大きく増幅されるため、高感度で物性値の測定が可能となる。
【0077】
【発明の効果】
本発明により、AFMを用いて、たとえば静電引力検出方式により、探針を備えたカンチレバーの試料の電気容量(C)や誘電率(ε)に関する情報を正確に測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態における振幅を検出して探針−試料間距離制御をおこなうダイナミックモードAFMにおける静電引力検出方式で使用する場合の全体の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の実施の形態における短冊形カンチレバー2の1次自由共振角周波数と2次自由共振角周波数の位置を示すスペクトル図である。
【図3】図1の実施の形態において探針1を接地電位とし、p型半導体である試料3に電圧を印加した場合の容量変化のグラフである。
【図4】図1の実施の形態において探針1を接地電位とし、n型半導体である試料3に電圧を印加した場合の容量変化のグラフである。
【図5】本発明の実施の他の形態における、周波数を検出して探針−料間距離制御をおこなうダイナミックモードAFMにおける静電引力検出方式で使用する場合の全体の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の他の形態のコンタクトモードAFMにおける固定発振器を用いた静電引力検出方式で使用する全体の構成を示すブロック図である。
【図7】図5の実施の形態における短冊形カンチレバー2の1次および2次の自由共振角周波数と1次接触共振角周波数の位置を示すスペクトル図である。
【図8】本発明の実施の他の形態のコンタクトモードAFMにおける電圧可変発振器24を用いた静電引力検出方式で使用する全体の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の他の形態の探針1と試料3間に流れる電流の大きさを一定に保つことにより、探針1−試料3間相互作用を一定に保つようにする場合の全体の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の他の形態の探針1−試料3間に異なる角周波数成分ωA、ωB(ただしωA>ωB)を有する複数の交番電圧を印加する電気容量(C)や誘電率(ε)等の複数の物性値を測定する場合の全体の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施のさらに他の形態の構成を示すブロック図である。
【図12】図11の動作を説明するための図である。
【図13】図11および図12に示される実施の形態における処理回路52の動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】図11および図12に示される実施の形態における図13のステップs2の第1回走査の動作を説明するための簡略化したブロック図である。
【図15】図11および図12に示される実施の形態における図13のステップs5の第2回走査の動作を説明するための簡略化したブロック図である。
【図16】本発明の実施の他の形態の探針1と試料3との間に作用する静電引力や変位電流を打ち消すことにより、探針1と試料3との仕事関数に関する情報を得るようにする全体の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 探針
2 カンチレバー
3 試料
4 レーザーダイオード
5 フォトダイオード
6 差動増幅器
7 圧電素子
8 固定周波数発振器
9 ロックインアンプ
10 フィードバック回路
11 高域遮断フィルタ
12 高圧増幅器
13 XYZ駆動機構
14 表面形状像
15 固定発振器
16 逓倍器
17 ロックインアンプ
18 微分容量像
19 振幅制御回路
20 位相シフト回路
21 周波数検出器
22 電圧発生器
23 スイッチ
24 電圧可変発振器
25 接触共振周波数像
26,27 固定発振器
28 加算器
29 周波数変換器
30 電流−電圧変換器
31 固定発振器
32 加算器
33 ロックインアンプ
34 フィードバック回路
35 反転増幅器
36 表面電位像
52 処理回路
53 メモリ
54 スイッチ
57 周波数検出回路
58 スイッチ
59 スイッチ
60 スイッチ
Claims (5)
- 試料に探針を近接または接触させ、探針と試料との間に角周波数ωで振動する交番電圧を印加し、それによって誘起される静電引力のうち、角周波数n×ω(nは自然数であり、n≧3)で振動する交番力を、探針−試料間相互作用による力を検出する力検出手段によって検出することにより、電気容量(C)や誘電率(ε)等の物性値を測定するようにしたことを特徴とする物性値の測定方法。
- 探針と試料との間に角周波数ωで振動する交番電圧を印加し、それによって誘起される角周波数2ωで振動する交番力をも検出することにより、電気容量(C)や誘電率(ε)等の物性値を測定するようにしたことを特徴とする、請求項1記載の物性値の測定方法。
- 探針と試料との間に印加された交番電圧によって誘起され、角周波数成分抽出手段によって抽出される交番力の角周波数が、探針と試料とを含む機械的共振部の共振角周波数と同一値または近似した値に選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の測定方法。
- 探針は、試料から離間しており、試料に周期的に接触し、または接触したままであることを特徴とする請求項1〜3のうちの1つに記載の測定方法。
- 探針と試料とを近接または接触して試料の物性値を測定する測定装置において、
探針と試料との間に角周波数の交番電圧を印加する発振器15,24と、
探針−試料間相互作用による静電引力を検出する力検出手段と、
力検出手段の出力に含まれるn×ω(nは自然数であり、n≧3)で振動する高調波成分を抽出する高調波成分抽出手段とを含むことを特徴とする測定装置。
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