JP3594833B2 - タイヤの空気圧低下警報方法およびその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はタイヤの空気圧低下警報方法およびその装置に関する。さらに詳しくは、前輪と後輪のトレッド幅(左右のタイヤ位置の車軸間隔)の差が大きい、たとえばトラックやバスなどの車両におけるタイヤの空気圧低下を検出するタイヤの空気圧低下警報方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、タイヤの空気圧の低下を車輪速の相対比較によって検出する装置が提案されている(特公平5−55322号公報など)。これによると、検出の精度を向上するために、対角の車輪速の和同士の比較をもちいたり、外乱要因の少ない車両の直進時のみに判定するなどが行なわれている。ところが、このばあい、減圧の検出機会が減ってしまうため、旋回中も判定を実施する必要があり、さらに進んで、判定値に横方向加速度を導入した関数として、旋回中の外乱(影響)を補正する方法が提案されている(特開平6−8713号公報、特表平8−501040号公報および特開平8−164720号公報など)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記横方向加速度による補正は、たとえば乗用車のような前輪と後輪のトレッド幅の差が小さいばあいについては問題はない。しかしながら、後輪を複輪とすることが多いトラックやバスなどのような前輪と後輪のトレッド幅の差が大きい車両では、判定誤差を補正しきれず、判定精度を向上させることが難しいという問題がある。
【0004】
本発明は、叙上の事情に鑑み、タイヤの空気圧判定の精度を向上させることができるタイヤ空気圧低下警報方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のタイヤの空気圧低下警報方法は、タイヤの回転数を検出し、当該検出された回転数に基づいて、タイヤの空気圧が低下しているか否かを判定し、タイヤの内圧が低下しているばあいに、警報を発生する空気圧低下警報方法であって、2つの対角和の差を比較することによりタイヤの減圧を検知する判定値を算出する式において、車両の前輪および後輪のトレッド幅の差に関する補正項を設けることを特徴とする。
また本発明のタイヤの空気圧低下警報装置は、タイヤの回転数を検出し、当該検出された回転数に基づいて、タイヤの空気圧が低下しているか否かを判定し、タイヤの内圧が低下しているばあいに、警報を発生する空気圧低下警報装置であって、各タイヤの車輪速を検出するための速度検出手段と、該速度検出手段で検出される車輪速から求められる回転数に基づいて前輪タイヤの回転数と後輪タイヤの回転数との2つの対角和の差を比較する減圧判定値を演算処理する判定手段とからなり、該判定手段における減圧判定値に車両の前輪および後輪のトレッド軸幅の差に関する補正項が含まれてなることを特徴とする。
さらに、前記補正項が、車両の前輪および後輪のトレッド幅の差を旋回半径の2倍で除算する補正項であることを特徴とする。
【0006】
また本発明のタイヤの空気圧低下警報装置は、タイヤの回転数を検出し、当該検出された回転数に基づいて、タイヤの空気圧が低下しているか否かを判定し、タイヤの内圧が低下しているばあいに、警報を発生する空気圧低下警報装置であって、各タイヤの車輪速を検出するための速度検出手段と、該速度検出手段で検出される車輪速から求められる回転数に基づいて前輪タイヤの回転数と後輪タイヤの回転数との2つの対角和の差を比較する減圧判定値を演算処理する判定手段とからなり、該判定手段における減圧判定値に車両の前輪および後輪のトレッド軸幅の差に関する補正項が含まれてなることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、前後輪のトレッド幅が大きく異なるトラックやバスなどの車両のばあい、車両のトレッド幅を含む関数で減圧判定値を補正して、タイヤの空気圧の減圧判定の精度を向上させている。
【0008】
以下、添付図面に基づいて、本発明のタイヤの空気圧低下警報方法およびその装置を説明する。
【0009】
図1は本発明のタイヤの空気圧低下警報装置の電気的構成を示すブロック図、図2は車輪タイヤの旋回半径を求めるための説明図、図3は40m、110mおよび150mの旋回半径で旋回したばあいのDEL値と横Gの関係を示す図、図4は図3におけるDEL値と旋回半径の逆数の関係を示す図、図5はトレッド幅の差を補正項として入れたときの判定値と旋回半径の逆数の関係を示す図である。
【0010】
図1に示すように、本発明の一実施の形態にかかわるタイヤの空気圧低下警報装置は、たとえば4輪車両にそなえられた4つのタイヤW、W、WおよびWの空気圧が低下しているか否かを検出するもので、各タイヤW、W、WおよびWにそれぞれ関連して設けられた通常の車輪速センサー1を備えている。車輪速センサー1の出力は制御ユニット2に与えらえる。制御ユニット2には、空気圧が低下したタイヤWを知らせるための液晶表示素子、プラズマ表示素子またはCRTなどで構成された表示器3が接続されている。なお、4は初期化スイッチである。
【0011】
制御ユニット2は、外部装置との信号の受け渡しに必要なI/Oインターフェイス2aと、演算処理の中枢として機能するCPU2bと、該CPU2bの制御動作プログラムが格納されたROM2cと、前記CPU2bが制御動作を行なう際にデータなどが一時的に書き込まれたり、その書き込まれたデータなどが読み出されるRAM2dとから構成されている。本実施の形態における判定手段は、前記制御ユニット2に含まれている。
【0012】
前記車両速度センサー1では、タイヤWの回転数に対応したパルス信号(以下、車輪速パルスという)が出力される。またCPU2bでは、車輪速センサー1から出力された車輪速パルスに基づき、所定のサンプリング周期ΔT(sec)、たとえばΔT=1秒ごとに各タイヤWの回転数Nが算出される。
【0013】
まず、図2に示すように、タイヤの車輪速はそれぞれ、つぎのように表される。
【0014】
V1=R1(dθ/dt)
V2=R2(dθ/dt)
V3=R3(dθ/dt)
V4=R4(dθ/dt)
Ri:各車輪位置での旋回半径
dθ/dt:車両の旋回角速度
ここで、
R1=((R−Tf/2)+WB0.5
R2=((R+Tf/2)+WB0.5
R3=(R−Tr/2)
R4=(R+Tr/2)
Tf:前輪のトレッド幅
Tr:後輪のトレッド幅
WB:ホイールベース
R:車両の旋回半径
なお、車両の旋回半径Rは、後輪駆動のばあい、従動輪の旋回外側車輪と内側車輪の車輪速からつぎのように求められる。
【0015】
1/R=(V1−V2)/(V1+V2)×(2/Tf)
ただし、旋回中は、旋回内側車輪から外側車輪へ荷重移動があるので、内側車輪の動荷重半径は大きく、外側車輪の動荷重半径は小さくなるので、測定された車輪速は、正確な車輪速度よりズレるため、より正確な旋回半径をえるためには、実測によって、実旋回半径と計算旋回半径の関係を求めておいて、補正を行なうのが好ましい。
【0016】
またタイヤWの空気圧低下の検出のための減圧判定値(DEL値)は、前輪タイヤと後輪タイヤとの2つの対角和の差を比較するものであって、対角線上にある一対の車輪からの信号の合計から対角線上にある他の一対の車輪からの信号の合計を引算し、その結果と2つの合計の平均値との比率として、つぎの式(1)から求められる(たとえば特公平5−55322号公報参照)。
【0017】
【数1】
Figure 0003594833
【0018】
ここで、Rが充分大きいばあい、
R1−R2≒−Tf
R3−R4≒−Tr
R1+R2+R3+R4≒4×R
と考えられるので、式(1)はつぎの式(2)に近似的に表現できる。
【0019】
【数2】
Figure 0003594833
【0020】
従来では、通常の車両のばあい、Tf≒Trであるため、トレッド幅の差=0となり、DEL値=0となる。しかし、トラックやバスなど後輪車輪に複輪をもつ車両では、車両の車幅が長手方向に一定であるにもかかわらず、複輪のトレッド幅がタイヤの幅の2倍だけ小さくなっている。このため、トレッド幅の差が大きいトラックやバスなどのばあい、DEL値はシフトし、減圧検出に大きな影響を与えることが、この式(2)からわかる。現実の車両では、車輪速は直接測定することはできず、各車輪の1秒あたりの回転数をもとに、つぎのように計算されている。
【0021】
V1=R1×(dθ/dt)=N1×2π×r1
V2=R2×(dθ/dt)=N2×2π×r2
V3=R3×(dθ/dt)=N3×2π×r3
V4=R4×(dθ/dt)=N4×2π×r4
ここで、Ni:各車輪の1秒あたりの回転数
ri:各車輪の動荷重半径
Ri:各車輪位置での旋回半径
dθ/dt:車両の旋回角速度
各車輪の動荷重半径は、初期化によって一定値になっているため、r1=r、r2=r、r3=rおよびr4=rとすると、Vi=2πr×NiとなりDEL値は、つぎの式(3)に変換される。
【0022】
【数3】
Figure 0003594833
【0023】
このDEL値はタイヤの回転数で表される。このDEL値は、タイヤが正常空気圧で、スリップや、左右輪での荷重移動がなければ、すなわち動荷重半径rに変動がなければ、式(1)と一致するが、いずれか1個のタイヤが減圧すると、回転数NiがNi+ΔN、動荷重半径rがr−Δrとなるため、DEL値が変動する。
【0024】
たとえば、1のタイヤが減圧すると、N1→N1+ΔNとなり、前記式(3)はつぎの式(4)に変換される。
【0025】
【数4】
Figure 0003594833
【0026】
ここで、ΔNは、N1+N2+N3+N4に比べて非常に小さいので、
N1+N2+N3+N4+ΔN≒N1+N2+N3+N4
とおくと、前記式(4)はさらにつぎの式(5)のように変換される。
【0027】
【数5】
Figure 0003594833
【0028】
したがって、式(5)から、トレッド幅の差に起因するDEL値も減圧判定値に含め、タイヤの減圧判定の精度を向上させる必要があることがわかる。
【0029】
つぎに本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
実施例
前輪の2輪が操舵輪であり、後輪の4輪(複輪)が駆動輪である2−D・4の車両のばあい、前輪(操舵輪)のトレッド軸に比べて、後輪の駆動輪のトレッド軸が195mm短くなっている。
【0031】
図3は、この車両で、40m、110mおよび150mの旋回半径Rでそれぞれ旋回したばあいの、前輪と複輪のうち、内側後輪との前記式(3)から算出したRawDEL値と横G(横方向加速度)LatGの関係を示している。なお、図3中のT1aは40mの左旋回、T1bは40mの右旋回、Tは110mの左旋回、およびTは150mの左旋回を示している。
【0032】
前後軸のトレッド幅に差のほとんどない乗用車のばあい、データ点は、前記式(2)からほぼ原点を通る直線上に分布するが、本実施例では、前後軸のトレッド幅に差があるため、各旋回半径条件の中で、横Gの変化に対して、RawDEL値が変化せずほぼ一定で、むしろRawDEL値は旋回半径に依存しているように見える。このため、このRawDEL値を旋回半径Rの逆数で整理すると、図4のようになり、全てのデータ点は、同一直線上に存在しているように見える。
【0033】
そこで、前記式(2)にしたがい、トレッド幅の差(195mm)から生じるDEL値を計算して、図4に書き込むと、直線Lのようになり、実測値と良く一致していることがわかる。
【0034】
したがって、本発明では、つぎの式(6)による補正式により、補正を行なうと、図5のようにCorDEL値はほぼゼロとなり、CorDEL値はトレッドの差による影響をほとんど受けないため、CorDEL値がゼロからシフトすることにより、タイヤの減圧を判定できる。
【0035】
【数6】
Figure 0003594833
【0036】
ここで、aは理論と実際の差を補正するための係数であり、前記係数aは、つぎのようにして求めることができる。まず、旋回半径を、ある速度で惰行走行する。これは、旋回中の駆動力による旋回内側駆動輪のスリップの影響をなくすためである。ついで、このときのRawDEL値を、横軸に横Gをとりプロットし、横G=0のときのRawDEL値を求める。これは、旋回中の荷重移動によるRawDEL値への影響をなくすためである。なお、本実施例における図3のばあいでは、RawDEL値が荷重移動の影響をほとんど受けておらず、横Gに対して、RawDEL値が一定(水平)になっている。
【0037】
つぎに、これを様々な旋回半径で実施し、前記求めたRawDEL値を、横軸に(トレッド幅の差)/(旋回半径の逆数×2)をとって、プロットする。そして最小2乗法により算出される回帰直線の傾きから係数aを求める。本実施例では、a=1.2019であった。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、車両のトレッド幅の差に関する補正項を設けることにより、空気圧の減圧判定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤの空気圧低下警報装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】車輪タイヤの旋回半径を求めるための説明図である。
【図3】40m、110mおよび150mの旋回半径で旋回したばあいのDEL値と横Gの関係を示す図である。
【図4】図1におけるDEL値と旋回半径の逆数の関係を示す図である。
【図5】トレッド幅の差を補正項として入れたときの判定値と旋回半径の逆数の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 車輪速センサー
2 制御ユニット
3 表示器
4 初期化スイッチ

Claims (6)

  1. タイヤの回転数を検出し、当該検出された回転数に基づいて、タイヤの空気圧が低下しているか否かを判定し、タイヤの内圧が低下しているばあいに、警報を発生する空気圧低下警報方法であって、2つの対角和の差を比較することによりタイヤの減圧を検知する判定値を算出する式において、車両の前輪および後輪のトレッド幅の差に関する補正項を設けることを特徴とするタイヤの空気圧低下警報方法。
  2. 前記補正項が、車両の前輪および後輪のトレッド幅の差を旋回半径の2倍で除算する補正項である請求項1記載のタイヤの空気圧低下警報方法。
  3. 3軸以上の車軸を有する多軸車両において、複数の車軸の組み合わせに適用する請求項1または2記載のタイヤの空気圧低下警報方法。
  4. タイヤの回転数を検出し、当該検出された回転数に基づいて、タイヤの空気圧が低下しているか否かを判定し、タイヤの内圧が低下しているばあいに、警報を発生する空気圧低下警報装置であって、各タイヤの車輪速を検出するための速度検出手段と、該速度検出手段で検出される車輪速から求められる回転数に基づいて前輪タイヤの回転数と後輪タイヤの回転数との2つの対角和の差を比較する減圧判定値を演算処理する判定手段とからなり、該判定手段における減圧判定値に車両の前輪および後輪のトレッド幅の差に関する補正項が含まれてなるタイヤの空気圧警報装置。
  5. 前記補正項が、車両の前輪および後輪のトレッド幅の差を旋回半径の2倍で除算する補正項である請求項4記載のタイヤの空気圧低下警報装置。
  6. 3軸以上の車軸を有する多軸車両において、複数の車軸の組み合わせに適用する請求項4または5記載のタイヤの空気圧低下警報装置。
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