JP3594573B2 - 地中管補修方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は下水管等の地中管を内側から補修する地中管補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
老朽化や地震及び地盤沈下などにより下水管等の地中管の本体にひび割れが生じたり、接続部がずれてしまったりした場合には早急にひび割れた部分や接続部を補修しなければならない。雨水や地下水の侵入の増加は下水等の処理施設に大きな負担をもたらし、また、下水の地中への浸出は公害を引き起こす。
【0003】
そこで、地面を掘り返さずに地中管を補修する方法として図13及び図14に示す方法が採用されている。
【0004】
この補修方法では、先ず未硬化の熱硬化性合成樹脂を含んだ筒状体Aを地中管B内に引き込む。次に筒状体Aの開口からこの筒状体A内に袋状の不透水性の膜状体Cを水圧(矢印参照)により反転させながら挿入する(図13)。膜状体Cが後端部Dまで反転して筒状体Aがほぼ全長にわたって地中管Bの内面に押し付けられた状態となったら、膜状体C内の水を加熱し、筒状体Aの熱硬化性合成樹脂を硬化させる(図14)。その後、膜状体C内の水を回収し、筒状体A及び膜状体Cを地中管Bの両端位置で切断加工して補修を完了する。
【0005】
膜状体は切断加工前に抜き取られることもあるが、ここでは内側の不透水性の層として内張り構造の一部を構成することとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この補修方法では補修完了まで長時間にわたって地中管を不使用状態にしておかなければならない。また、補修工事現場では反転のための水圧管理が煩雑であって一定の水圧を常に確保することがなかなか困難である。したがって、この補修方法では均一な品質の内張り構造を提供しにくい。
【0007】
そこで、本発明は補修工事に要する時間を短縮でき、しかも常に一定の品質の内張り構造を得ることのできる地中管補修方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明の地中管補修方法は、外側に不透水性層を有する樹脂吸収層に、未硬化の硬化性合成樹脂を含んだ筒状体を地中管内に引き込み、不透過性の膜状体を介してこの筒状体の内側に流体圧を作用させ、前記硬化性合成樹脂を硬化させて内張りを行うことにより前記地中管内面を全体的に又は長い範囲にわたって補修する地中管補修方法において、前記硬化性合成樹脂を含んだ前記筒状体を形成してから、この筒状体内に前記膜状体を反転して配置し、その後、前記筒状体を前記膜状体とともに前記地中管内に引き込むものである。
【0009】
膜状体は、加圧流体を用いたり反転具を用いたりして筒状体内に反転配置することができる。
【0010】
膜状体の内部の空気を抜くことにより、さらに優れた効果の達成が可能となる。
【0011】
硬化性合成樹脂が熱硬化性の場合には、膜状体の後端部(反転前の状態において)にサーモホースを取り付けてから、この膜状体を筒状体内に反転して配置することが好ましい。
【0012】
また、膜状体の反転作業には、後端部に不透過性の膜状体の差込み口を有し、先端部に膜状体の先端を固定するための取付け口を備えた圧力容器と、反転しながら延びる膜状体が内側に配置されるように未硬化の硬化性合成樹脂を含んだ筒状体を支える支持装置、とから構成された、反転配置装置を使用できる。
【0013】
取付け口が支持装置を兼ねるように構成してもよい。
【0014】
【作用】
膜状体を筒状体内に予め配置しておくので、補修工事現場においては、膜状体を反転させて筒状体内に挿入するという工程が削除される。
【0015】
また、反転という手段を用いることによって、膜状体を配置するに先立って硬化性合成樹脂を含ませた筒状体を形成しておくことができるようになる。本発明では、膜状体の配置に先立って硬化性合成樹脂を含んだ筒状体を形成している。
【0016】
膜状体の内部の空気を抜いておけば、筒状体及び膜状体をコンパクトに折り畳んだり、ロ−ル状にしておくことも可能となる。また、膜状体内に地中管内面への押付けのための水を入れたときに、水の上側に大量の空気が残存して空気だまりが生じるということがない。
【0017】
膜状体の後端部にサーモホースを取り付けておけば、筒状体内に膜状体を反転配置する際にサーモホースも同時に配置される。
【0018】
反転配置装置の圧力容器内を加圧すると膜状体が先端側から反転して、取付け口又はその他の支持装置に支えられた筒状体内に配置される。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図1乃至図12を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、未硬化の硬化性合成樹脂を含み、工場内で反転手段により予め袋状の膜状体1が挿入された筒状体3は下水管5(地中管)内に引き込まれて配置されている。
【0021】
マンホ−ル7内には水圧タワ−9が設置されていて、筒状体3の後端3aはこの水圧タワ−9の下端部9aに取り付けられている。膜状体1は筒状体3よりも長く形成されていて、筒状体3の後端3aから外部に延びるこの膜状体1の後部分1aは水圧タワ−9内に通された状態となっている。水圧タワ−9の上端部9bは朝顔状に開いていて、この上端部9bの周縁に膜状体1の後端1bが取り付けられている。
【0022】
なお、膜状体1を筒状体3と同じ程度の長さに形成し、後端を水圧タワ−9の下端部9aに水密に取り付けることも可能である。
【0023】
膜状体1は後端部1cにサーモホ−ス11が連結されて工場内において筒状体3内に挿入されるので、膜状体1内にはサーモホ−ス11が配置された状態となっている。
【0024】
なお、工事現場作業中に膜状体1が筒状体3に対してずれることがないように予め膜状体1と筒状体3を連結しておくことが好ましい。
【0025】
そして、後端1bから膜状体1内に水を入れ、図2に示すようにこの膜状体1を介して筒状体3を下水管5の内面に押し付ける。この状態で膜状体1内の水の中に吸上げホ−ス13を配置し、この吸上げホ−ス13から水を吸い上げボイラ−(図示せず)で加熱する。加熱された水はサーモホ−ス11から再び膜状体1内に戻され(矢印参照)、筒状体3内の熱硬化性合成樹脂を硬化させる。
【0026】
なお、水に代えて空気、蒸気を用いる場合もある。
【0027】
熱硬化性合成樹脂が硬化するのを待って膜状体1内の水を吸い上げて排水を行い、その後筒状体3並びに膜状体1の下水管5の両端位置での切断加工及びサーモホ−ス11の回収を行って図3に示すような内張り構造を構成し、下水管5の全体的にわたる補修を完了する。密封機能が低下していた下水管5の接続部15はこの筒状体3及び膜状体1によって補修される。
【0028】
なお、膜状体1は最終的に除去される場合もある。
【0029】
図4は水圧タワ−を用いない場合の一実施例を説明する図である。
【0030】
筒状体3’内に袋状の膜状体1’を反転手段によって挿入した後、これらの筒状体3’及び膜状体1’の両端部に栓16,18を取り付ける(ここでは膜状体1’の後端部は切断されることとなる)。栓16には供給ホ−ス20が取り付けられ、栓18には排出ホ−ス22が取り付けられている。そして、筒状体3’及び膜状体1’を下水管5内に引き込み、供給ホ−ス20から水を供給して筒状体3’を下水管5の内面に押し付ける。この状態で栓18に設けられたバルブ(図示せず)を開き、排出ホ−ス22から水を流出させてボイラ−(図示せず)で加熱する。加熱された水を供給ホ−ス20から再び供給して筒状体3’内の熱硬化性合成樹脂を硬化させる。
【0031】
なお、供給ホ−ス20及び排出ホ−ス22は補修工事現場で取り付けてもよい。また、水に代えて空気、蒸気を用いる場合もある。
【0032】
図5は水圧タワーを用いない場合の他の実施例を説明する図である。
【0033】
筒状体3”内に膜状体1”を、後端部1c’にサーモホース11’を連結して反転手段によって挿入した後、これらの筒状体3”及び膜状体1”の開口部に栓29を取り付ける。栓29にはサーモホース11’及び供給ホース24、そして排出ホース26が取り付けられている。筒状体3”及び膜状体1”を下水管5内に引き込み、供給ホース24からサーモホース11’を通して水を供給する。その後、排出ホース26から水を流出させてボイラー(図示せず)で加熱し、加熱された水をサーモホース11’から再び供給する(矢印参照)。
【0034】
筒状体3,3’,3”は、図6に詳細に示すようにガラス繊維やポリエステル繊維等の繊維層17(樹脂吸収層)の外側にポリエチレン、ポリウレタン又はナイロン製等の不透水性のフィルム層19を備えたものであり、繊維層17は不飽和ポリエステル樹脂あるいはエポキシ樹脂等の熱硬化性合成樹脂を過飽和状態で含浸している。硬化性合成樹脂として熱硬化性のものを用いたが、図4に示す場合には常温硬化性や紫外線硬化性のものを用いることも可能であり、この場合には筒状体3’を下水管5の内面に押し付けるために、水と空気、蒸気を併用することもできる。
【0035】
膜状体1,1’,1”はポリエチレン、ポリウレタン又はナイロン製等の不透水性のフィルムであり、内側にガラス繊維やポリエステル繊維等の繊維層21が付加形成されていて、図に示すように工場内において筒状体3,3’,3”内に膜状体1,1’,1”が内側となるように、すなわち繊維層17と繊維層21とが接触するように反転しながら挿入される。膜状体1,1’,1”を反転させるためには水又は空気、場合によっては水と空気などの流体の圧力を利用すればよいが、図7に示す反転具23をシリンダ(図示せず)で前進させ、折曲げ部25を先端環状体27で押していってもよい(図6の仮想線参照)。
【0036】
流体の圧力を利用する場合には図8に示す反転配置装置が用いられる。
【0037】
工場内に設置されたこの反転配置装置の圧力容器28の後端部にはスリット状の差込み口30が設けられ、先端部32には取付け口33が構成されている。圧力容器28の後方に構成された収容室34内には不透過性の膜状体1,1”が折り畳まれて収容されていて、この膜状体1,1”の先端を差込み口30から圧力容器28内に挿入して、取付け口33にまで到達させる。取付け口33の外側には固定装置35が構成されていて、膜状体1,1”の先端を取付け口33の外側に折り返し、未硬化の熱硬化性合成樹脂を含んだ筒状体3,3”の後端をかぶせた後に、この固定装置35のボルト37を締め付ける。ボルト37の締付けによって固定装置35の環状締付け部材39が膜状体1,1”の先端及び筒状体3,3”の後端を取付け口33に固定する。
【0038】
圧力容器28に形成されている供給口41から加圧流体をこの圧力容器28内に供給すると、膜状体1,1”が先端側から反転して筒状体3,3”内に挿入される。膜状体1,1”の後端部にはサーモホース11,11’が取り付けられていて、このサーモホース11,11’は膜状体1,1”の反転挿入の際に膜状体1,1”内に同時に挿入されることとなる。
【0039】
圧力容器28の後方の収容室34内にはまた、速度調整ローラ43,45が設けられ、速度調整ローラ43がモータ47によって所定速度で回転して膜状体1,1”及びサーモホース11,11’の繰出し速度を規制しているので、膜状体1,1”の反転速度が大きくなり過ぎることはない。
【0040】
差込み口30には内側にゴム製のシール部材49が取り付けられていて、このシール部材49は膜状体1,1”、次いでサーモホース11,11’に密着して圧力容器28内の加圧流体が差込み口30から漏れるのを防止している。
【0041】
なお、圧力容器28の先端部32は、取付けリング51をはずして交換できるので、膜状体1,1”の径に対応した取付け口を準備することができる。また、図中53は膜状体1,1”及びサーモホース11,11’が垂れ下がるのを防止する支持ローラ、55は膜状体1,1”及びサーモホース11,11’の載置台である。
【0042】
なお、この反転配置装置を用いて図4に示す方法を実施する場合には、膜状体1’の後端部にサーモホースは取り付けない。また、図1に示す方法を実施する場合には、膜状体1を反転挿入した後に筒状体3の後端側を多少切り取る。
【0043】
膜状体1,1’,1”に形成された繊維層21は、当初は合成樹脂を含浸していないが、筒状体3,3’,3”内に挿入されると繊維層17から熱硬化性合成樹脂を吸収する。なお、繊維層21に多少熱硬化性合成樹脂を含ませておくことも可能であり、また、膜状体1,1’,1”に図9に示すように繊維層を付加しないでおくこともできる。さらに、膜状体1’,1”は膜状体1の場合と同様に最終的に除去されることもある。
【0044】
筒状体3,3”内に膜状体1,1”を挿入した後、又は筒状体3’内に膜状体1’を挿入し栓16,18を取り付けた後、図1、図4及び図5の場合とは異なりこの膜状体1,1’,1”内の空気を抜けば、図10及び図11に示すように膜状体1,1’,1”及び筒状体3,3’,3”をコンパクトに巻いたり折り畳んだりすることができるので、補修工事現場への運搬作業がきわめて簡単となる。そして、下水管5の断面形状は必ずしも円形ではないので、下水管5の内面全周に筒状体3,3’,3”を押し付けるために通常は非圧縮性の流体である水を用いることとなるが、膜状体1,1’,1”内の空気を抜いておけば図12に示すような空気だまり31が生じることがなく、膜状体1,1’,1”の全周が水と接する状態となる。そこで、水を加熱すれば筒状体3,3’,3”内の熱硬化性合成樹脂の硬化はすべての部分で等しく進行する。
【0045】
なお、ここでは栓29は工事現場で筒状体3”及び膜状体1”の開口部に取り付けられる。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の補修方法を用いれば短時間で補修工事を完了でき、しかも内張り構造に品質のばらつきが生じることを防止できる。
【0047】
さらに、膜状体を配置するに先立って硬化性合成樹脂を含ませた筒状体を形成しておくので、筒状体の形成と膜状体の配置とを同時に行い、その後硬化性合成樹脂を含ませる手段に比して十分かつ均一に硬化性合成樹脂を含ませることができ、その結果、筒状体したがって内張り構造の品質を向上させることができる。
【0048】
膜状体の内部の空気を抜けば、筒状体及び膜状体をコンパクトに折り畳んだり、ロ−ル状にしておくこともできるので、補修工事現場へきわめて簡単に運搬することが可能となり、また、膜状体内に水を入れ、熱硬化性合成樹脂を硬化させて内張りを行う場合には、熱硬化性合成樹脂の硬化状態が部分的に異なってしまうことを防止できるので、優れた品質の内張り構造を提供できる。
【0049】
後端部にサーモホースを取り付けて膜状体を反転配置すれば、サーモホースを配置するための特別の工程が不必要となり、また、サーモホースの配置時にこのサーモホースによって膜状体を傷付けるおそれもない。
【0050】
膜状体の差込み口と取付け口を備えた圧力容器と、支持装置と、から構成された反転配置装置を用いることにより、本発明を効果的に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る地中管補修方法において筒状体及び膜状体を下水管内に引き込んだ状態を示す図である。
【図2】膜状体内に水圧を加え、加熱水を供給している状態を示す図である。
【図3】補修工事が終了した状態を示す図である。
【図4】水圧タワ−を用いない場合の一実施例を説明する図である。
【図5】水圧タワ−を用いない場合の他の実施例を説明する図である。
【図6】膜状体を筒状体内に反転させて挿入している状態を概念的に示す図である。
【図7】反転具の斜視図である。
【図8】反転配置装置を示す図である。
【図9】膜状体に繊維層を付加しないものを用いた場合を示す図である。
【図10】膜状体及び筒状体をロ−ル状に巻いているところを概念的に示す図である。
【図11】膜状体及び筒状体を折り畳んだ状態を示す図である。
【図12】空気だまりの発生状態を示す図である。
【図13】従来の地中管補修方法において膜状体の反転挿入を開始した状態を示す図である。
【図14】膜状体の反転挿入を完了した状態を示す図である。
【符号の説明】
1,1’,1”,C 膜状体
3,3’,3”,A 筒状体
5,B 下水管(地中管)
11,11’ サーモホース
17 繊維層(樹脂吸収層)
19 不透水性のフィルム層
28 圧力容器
30 差込み口
33 取付け口(支持装置)

Claims (3)

  1. 外側に不透水性層を有する樹脂吸収層に、未硬化の硬化性合成樹脂を含んだ筒状体を地中管内に引き込み、不透過性の膜状体を介してこの筒状体の内側に流体圧を作用させ、前記硬化性合成樹脂を硬化させて内張りを行うことにより前記地中管内面を全体的に又は長い範囲にわたって補修する地中管補修方法において、
    前記硬化性合成樹脂を含んだ前記筒状体を形成してから、この筒状体内に前記膜状体を反転して配置し、その後、前記筒状体を前記膜状体とともに前記地中管内に引き込むことを特徴とする地中管補修方法。
  2. 前記筒状体内に配置された前記膜状体の内部の空気を抜いて、この筒状体をこの膜状体とともに前記地中管内に引き込むことを特徴とする請求項1記載の地中管補修方法。
  3. 前記硬化性合成樹脂は熱硬化性であり、前記膜状体は後端部にサーモホースが取り付けられてから前記筒状体内に反転して配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の地中管補修方法。
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