JP3594040B2 - 磁気シールドｈｅｐａフィルタおよびこれを用いた磁気シールドルーム - Google Patents
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Description
【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばクリーンルーム内に天井仕上げ材として配設されかつクリーンルーム内の空気に混在している塵等の微少な異物を捕獲してその空気を清浄化するためのＨＥＰＡ（Ｈｉｇｈ Ｅｆｆｉｃｉｅｎｃｙ Ｐａｒｔｉｃｌｅ Ａｉｒ）フィルタに関し、特にクリーンルーム内で半導体を製造する際の露光工程を行う、電子ビームを用いた露光装置や高性能な電子顕微鏡等の磁気ノイズの影響を受けてはならない装置が、その周囲で発生した磁気ノイズを遮断してその影響を受けることのないようにするために磁気シールドＨＥＰＡフィルタおよびこれを用いた磁気シールドルームに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
現在、各種製品の生産装置はもとより家電製品までＩＣ化が進んでおり、これらのＩＣ化には多くの半導体素子が使用されている。そして、これらの半導体素子はきわめて高度に進歩し、この半導体素子の進歩により、今まで考えられなかったような例えば電子ビーム露光装置や高性能な電子顕微鏡あるいは生体磁気計測器等の超高性能の超精密機器が種々開発・実用化されている。このような超精密機器を製造するにあたっては、例えば塵等微小の異物でも超精密機器に混在しないようにしなければならないため、クリーンルーム内で超精密機器やその部品が製造されている。
【０００３】
ところで、このような超精密機器の高性能化に伴い、従来では問題とならなかった磁気が各種機器の性能に多大な影響を及ぼすようになってきている。すなわち、磁気がノイズとなって、電子ビーム露光装置や電子顕微鏡の歪みあるいはコンピュータ端末などのＣＲＴの動作不良などが生じるようになってきている。建物内部におけるこのような磁気ノイズの発生源としては、変圧器、幹線ケーブルあるいはＥＬＶ等の種々の機器がある。
【０００４】
そこで、外部からの磁気ノイズを遮断して内部に侵入しないようにした磁気シールドルームが種々提案されている。この磁気シールドルームは、透磁率の大きい材料を用いて６面体を構成するとともに、周囲の磁束を集めてこの６面体の中に磁気の低い空間を形成したものである。この磁気シールドルーム内に、電子ビーム露光装置等の磁気ノイズの影響を受けてはならない装置を設置することにより、これらの装置が外部からの磁気ノイズに影響されるのを防止している。
【０００５】
一方、例えば半導体製造工場等における作業工程のなかの露光工程では、電子ビーム露光装置等がクリーンルーム内部で部分的に採用されることが想定される。その場合、前述と同様に露光装置の周囲に発生している交流磁気をかなり低減することが求められる。そこで、従来は前述のような磁気シールド材で構成された６面体からなる磁気シールドルームをクリーンルーム内部に形成し、この磁気シールドルーム内に電子ビーム露光装置等を設置するようにしている。そして、クリーンルーム内部に電子ビーム露光装置等が設置された場合には、クリーンルーム内の空気環境の超清浄化を図る必要があるために、大量の空気が十分に循環できるように考慮されなければならない。
【０００６】
このようなことから、内部に磁気シールドルームが形成されたクリーンルームには、従来から、大量の空気循環を可能にするためにＨＥＰＡフィルタからなる天井の裏の空間に空気を送り込むための開口部と、室内空気を床のグレーチング゛の下の空間から吸い込むための開口部が設けられている。しかしながら、このような開口部が設けられた場合には、この開口部の磁気処理が必要となる。そのために、従来はクリーンルームの開口部に開口部シールドユニットを設けて開口部の磁気シールドを行っている。ただし、この場合、ＨＥＰＡフィルタ上部空間の壁、天井面および床のグレーチング下部空間の壁、天井面はすべて磁気シールド材で構成しなければならない。
【０００７】
図８は、このような開口部シールドユニットが開口部に設けられたクリーンルームを模式的に示す断面図である。図中、２１は磁気シールドルームが形成されたクリーンルーム、２２は磁気シールド材、２３は開口部、２４は開口部シールドユニット、２５は空気循環用ダクト、２６は送風機、２７はＨＥＰＡフィルタ、２８はグレーチングである。
【０００８】
図８に示すように、クリーンルーム２１内の空気は、送風機２６によってクリーンルーム２１下部に配設されたグレーチング２８の下の開口部シールドユニット２４から吸い込まれる。この吸い込まれ空気は空気循環用ダクト２５を通ってクリーンルーム２１の天井に配設されたＨＥＰＡフィルタ２７の上の開口部シールドユニット２４から再びクリーンルーム２１内に流入する。クリーンルーム２１内に流入した空気はＨＥＰＡフィルタ２７によって混在する塵等の異物が除去されて清浄化された後、電子ビーム露光装置等の各種装置が設置されている空間内に流入するようになる。
【０００９】
開口部シールドユニット２４は、図９に示すように磁気シールド材を格子状に組んだ角筒状に形成されていて、断面矩形の通路２９が所定数（図示例では９個）形成されている。図１０に示すように、このような開口部シールドユニット２４の磁気シールド性能は、開口部シールドユニット２４の長さＤと通路２９の断面の対角線の長さｄとの比（Ｄ／ｄ）の増大にともない増大しかつ上に凸の性能曲線となっている。
このように開口部シールドユニット２４を用いることにより、内部を磁気シールド化されたクリーンルームが簡単かつ効果的に形成されるようになる。
【００１０】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、既存のクリーンルームに対してもこのような開口部シールドユニット方式を採用することにより磁気シールド化することが考えられる。しかしながら、既存のクリーンルームに開口部シールドユニット２４を用いるようにするためには、内装および空調の大幅な解体・改修工事が必要となる。特に、天井（ＨＥＰＡフィルタ２７、サプライチャンバ等）の解体改修工事はかなりの手間と時間がかかるため、クリーンルーム２１の長期間の運転停止を余儀なくされるという問題がある。
【００１１】
また、従来のクリーンルームには、図１１に示すようなファン・フィルタ・ユニット方式（以下、ＦＦＵ方式という）のクリーンルーム２１がある。このＦＦＵ方式のクリーンルームにおいては、個々のＨＥＰＡフィルタ２７，２７，…の直上に、それぞれ小型の送風機２６ａ，２６ａ，…が搭載されているとともに、クリーンルーム内に空気流通路３０が形成されていて、これらの送風機２６ａ，２６ａ，…により、クリーンルーム内の空気が空気流通路３０を通して循環されるようになっている。このようなＦＦＵ方式のクリーンルーム２１に対しても、開口部シールドユニット方式を採用することにより磁気シールド化することが考えられる。しかし、個々のＨＥＰＡフィルタ２７直上に搭載されている送風機２６ａ，２６ａ，…が磁気発生源となることから、このような開口部シールドユニットを用いた方式をＦＦＵ方式のクリーンルームに採用することはできない。
このように従来の開口部シールドユニットを用いた方式では、既存のクリーンルームの磁気シールド化に対して柔軟にかつ容易に対応することはできなかった。
【００１２】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、既存のクリーンルームに対しても磁気シールド化を柔軟にかつ容易に対応することのできる磁気シールドＨＥＰＡフィルタおよびこれを用いた磁気シールドルームを提供することである。
【００１３】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項１の発明は、磁気シールド材化された筒状のフィルタフレームと、このフィルタフレームにその内部に位置して蛇行状に折り重ねられて取り付けられ、空気に混在している微小な異物を捕獲するろ材と、前記フィルタフレームにその内部に位置し、かつ前記ろ材の折り重ね部分の間にジグザグに折られてスリットを形成するように取り付けられ、磁気シールド材化された平板状のセパレータとからなることを特徴としている。
【００１４】
また請求項２の発明は、前記フィルタフレーム自体および前記セパレータ自体をそれぞれパーマロイや珪素鋼板等の磁気シールド材から形成することにより、前記フィルタフレームおよび前記セパレータのそれぞれの磁気シールド材化が行われていることを特徴としている。
【００１５】
更に請求項３の発明は、前記フィルタフレームおよび前記セパレータをそれぞれ非磁気シールド材で形成するとともに、これらの非磁気シールド材の表面に例えばアモルファス等の磁気シールド材を付けることにより、前記フィルタフレームおよび前記セパレータのそれぞれの磁気シールド材化が行われていることを特徴としている。
【００１６】
更に請求項４の発明は、前記フィルタフレームの外側面の所定位置に磁気シールド部材が取り付けられていることを特徴としている。
【００１７】
更に請求項５の発明は、室の天井にＨＥＰＡフィルタが配設されているとともに室の床部にグレーチングが配設されており、室内の空気がグレーチングを通って室の天井に送られ更に前記ＨＥＰＡフィルタを通って再び室内に送られるようになっているクリーンルームに形成される磁気シールドルームにおいて、前記ＨＥＰＡフィルタが請求項１ないし４のいずれか１記載の磁気シールドＨＥＰＡフィルタによって形成されているとともに、前記室の側壁に磁気シールド材が設けられ、更に前記グレーチングの下または上に、空気流通可能な開口を有する磁気シールドユニットが設けられていることを特徴としている。
【００１８】
【作用】
このような構成をした本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタにおいては、フィルタフレームおよびセパレータが磁気シールド材化されることにより、磁気シールドＨＥＰＡフィルタはフィルタ機能に加え、それ自体で磁気シールド機能を有するようになる。その場合、セパレータはジグザグに折られてスリットが形成される。
【００１９】
また、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタをクリーンルームのＨＥＰＡフィルタとして単に用いることにより、天井面において従来のクリーンルームの磁気シールドルームのシールド効果と同様の効果を得ることができる磁気シールドルームを簡単に形成されるようになる。
【００２０】
特に、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタが従来の磁気シールド機能を有さないＨＥＰＡフィルタと形状的に同一に形成することにより、磁気シールドＨＥＰＡフィルタはクリーンルームの周辺部との取り合いや納まり等の点で一切変更する必要がなくなる。これにより、天井面に関しては、従来のクリーンルームのＨＥＰＡフィルタを本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタに単に交換するだけで、既存クリーンルームの磁気シールド化が更に一層簡単に行われるようになる。したがって、天井の大幅な解体・改修工事が必要なくなるため、クリーンルームの長期間の運転停止が確実に阻止される。このようにして、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタにより、既存のどのようなクリーンルームに対しても磁気シールド化が柔軟にかつ容易に対応可能となるとともに、既存クリーンルームの局所的な磁気シールド化および磁気シールド空間の移設も容易に対応することができるようになる。
【００２１】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
図１は本発明にかかる磁気シールドＨＥＰＡフィルタの一実施例を部分的に切り欠いて示す斜視図である。
【００２２】
図１に示すように、本実施例の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１は、矩形断面の角筒状のフィルタフレーム２、このフィルタフレーム２内に蛇行状に何重にも折り重ねられて配設されたガラス繊維製ろ材シート３およびこのろ材シート３の折り重ねられた部分の間に配設されたセパレータ４から構成されている。
【００２３】
フィルタフレーム２はパーマロイや珪素鋼板等の平板状の磁気シールド材から形成されていて、それ自体磁気シールド材化されている。なお、従来のようにフィルタフレーム２をアルミ板で形成し、このアルミ板の表面にアモルファスシートのような箔状磁気シールド材を付けることにより、フィルタフレーム２を磁気シールド材化することもできる。
【００２４】
また、セパレータ４も同様にパーマロイや珪素鋼板等の平板状の磁気シールド材を所定回数ジグザグに折られて形成されていて、それ自体磁気シールド材化されている。なお、従来のようにセパレータ４をアルミ板またはＳＵＳ板で形成して、このアルミ板またはＳＵＳ板の表面にアモルファスシートのような箔状磁気シールド材を付けることにより、セパレータ４を磁気シールド材化することもできる。
【００２５】
このようにフィルタフレーム２およびセパレータ４を磁気シールド材化された磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１は、ジグザグに折られた磁気シールド材のセパレータ４によりスリットが形成され、それ自体で磁気シールド機能を有している。また、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１は、図１１に示す従来のＨＥＰＡフィルタ２７と同じ形状に形成されている。
【００２６】
図２は、磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１を図１１に示すＦＦＵ方式のクリーンルームに適用して形成された磁気シールドルームを模式的に示す断面図である。
図２に示すように、クリーンルーム５の天井には、所定数の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１，１，…が天井仕上げ材として配設されている。その場合、天井フレームの形態によっては、隣接する磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１，１の相互の取付間隔が広くなって、そこでの磁気シールド効果が低下してしまう恐れがある。したがって、このような場合には、図３に示すように磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１のフィルタフレーム２の側面に磁気シールドパッキン６を取り付けるとともに互いの磁気シールドパッキン６を当接させることにより、隣接する磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１，１間の間隙を遮断して、磁気的な接続を図るようにしている。この磁気シールドパッキン６は、磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１の取付時に邪魔にならないよう、クッション性の高いスポンジ等を芯材としてこの芯材を磁気シールドシートで覆うことにより形成されている。これにより、磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１，１間の間隔が広い場合でもそこでの磁気シールド効果が確実に得られるようになる。
【００２７】
また、これらの磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１，１，…とグレーチング７との間のクリーンルーム５の側壁には、パーマロイや珪素鋼板等の平板状の磁気シールド材８，８，…が貼り付けられている。更に、グレーチング７の下には、パーマロイや珪素鋼板等の平板状の磁気シールド材からなり、例えば図４に示すような所定数の貫通孔９，９，…を有する磁気シールドユニット１０が貼り付けられている。なお、磁気シールドユニット１０の貫通孔９に代えて、線状の磁気シールド材を網状にあるいは格子状に配設することにより磁気シールドユニット１０を形成することもできる。また、図２および図３中、１１は空気流通路、１２は小型送風機、１３は天井フレーム、１４はシーラントである。
【００２８】
こうして、ＦＦＵ方式のクリーンルーム５内に、上部の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１、側部の磁気シールド材８および下部の磁気シールドユニット１０により囲まれた磁気シールドルームが形成される。
【００２９】
このように構成された本実施例の磁気シールドルームが形成されたクリーンルーム５においては、磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１により、その天井面が前述の図８に示す開口部シールドユニット方式のクリーンルームの場合と同様のシールド効果を得ることができる。しかも、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１が従来の磁気シールド機能を有さないＨＥＰＡフィルタ２７と形状的に同一に形成されているので、磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１はクリーンルーム５の周辺部との取り合いや納まり等の点で一切変更する必要がなくなる。これにより、天井面に関しては、従来のクリーンルームのＨＥＰＡフィルタを本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタに単に交換するだけで、磁気シールド化を簡単に施すことができるようになる。したがって、天井の大幅な解体改修工事が必要なくなるため、クリーンルーム５の長期間の運転停止を確実に阻止することができる。このようにして、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１により、既存のＦＦＵ方式のクリーンルームに対しても磁気シールド化を柔軟にかつ容易に対応することができるようになるとともに、既存クリーンルームの局所的な磁気シールド化および磁気シールド空間の移設も容易に対応することができるようになる。
【００３０】
図５は本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタの他の実施例を示す分解斜視図であり、図６はこの実施例の磁気シールドＨＥＰＡフィルタを用いた磁気シールドルームの天井取付断面図である。
【００３１】
図５に示すように、この実施例の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１は、前述の従来の磁気シールド機能を有さないＨＥＰＡフィルタ２７からなる非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体２７ａが用いられ、非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体２７ａのフィルタフレーム２７ｂに磁気シールドユニット１５が取り付けられて構成されている。磁気シールドユニット１５は、パーマロイや珪素鋼板等の平板状の磁気シールド材から形成された矩形断面の角筒状のフィルタフレーム１６と、このフィルタフレーム１６内に網状あるいは格子状に配設された磁気シールド材１７とから構成されている。フィルタフレーム１６が、非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体２７ａのフィルタフレーム２７ｂに取り付けられるようになっている。なお、フィルタフレーム１６および網状あるいは格子状の磁気シールド材１７に代えて、図６に部分的に示すように平板状の磁気シールド材に所定数の貫通孔１８，１８，…を設けるとともに平板状の磁気シールド材の周縁部を折り曲げて非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体２７ａのフィルタフレーム２７ｂへの取付部２７ｃを形成することにより、磁気シールドユニット１５を構成することもできる。
【００３２】
このように構成された本実施例の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１は、前述の図２に示すクリーンルーム５の場合と同様に、天井仕上げ材として取り付けられる。その場合、図６に示すように小型送風機１２と非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体２７ａとの間に、磁気シールドユニット１５が位置するようになる。また、図示しないが前述の図２に示すクリーンルーム５の場合と同様に、側部に磁気シールド材８を貼り付けるとともに、グレーチング７に図４または図５に示すような磁気シールドユニット１０，１５を貼り付けることにより、磁気シールドルームが形成される。
【００３３】
この実施例における磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１および磁気シールドルームも、前述の実施例の磁気シールドＨＥＰＡフィルタおよび磁気シールドルームと同様の作用効果を奏する。
【００３４】
なお、図８に示すクリーンルームの場合にも、図７に示すように本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１を用いるとともに、側部に磁気シールド材８を貼り付けかつグレーチング７の下に磁気シールドユニット１０を貼り付けることにより、同様の磁気シールドルームを形成することができる。この場合には空気循環用ダクト２５の開口部２３に、開口部シールドユニット２４を設ける必要はない。
【００３５】
また、チューブ方式等の他のクリーンルームにも本発明を適用することができることは言うまでもない。
【００３６】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタによれば、フィルタフレームおよびセパレータを磁気シールド材化しているので、ＨＥＰＡフィルタを、それ自体で磁気シールド機能を有する磁気シールドＨＥＰＡフィルタに簡単にすることができる。
【００３７】
また、本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタを用いた磁気シールドルームによれば、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタをクリーンルームのＨＥＰＡフィルタとして単に用いているので、天井面において磁気シールドルームを簡単に形成することができるとともに、従来のクリーンルームの磁気シールドルームのシールド効果と同様の効果を得ることができる。
【００３８】
特に、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタを従来の磁気シールド機能を有さないＨＥＰＡフィルタと形状的に同一に形成することにより、磁気シールドＨＥＰＡフィルタをクリーンルームの周辺部との取り合いや納まり等の点で一切変更しなくて済むようになる。これにより、天井面に関しては、従来のクリーンルームのＨＥＰＡフィルタとの互換性を持たせることができ、ＨＥＰＡフィルタを本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタに単に交換するだけで、既存クリーンルームの局所的な磁気シールド化を更に一層簡単に行うことができる。したがって、天井の大幅な解体改修工事が必要なくなるため、既存クリーンルームの長期間の運転停止を確実に阻止できる。
【００３９】
このようにして、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタと、グレーチングの磁気シールドユニットとにより、既存のどのようなクリーンルームに対しても磁気シールド化を柔軟にかつ容易に対応できるようになるとともに、既存クリーンルームの局所的な磁気シールド化および磁気シールド空間の移設も容易に対応することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明にかかる磁気シールドＨＥＰＡフィルタの一実施例を部分的に切り欠いて示す斜視図である。
【図２】図１に示す磁気シールドＨＥＰＡフィルタを用いたＦＦＵ方式の磁気シールドルームを模式的に示す断面図である。
【図３】図２に示す磁気シールドルームの互いに隣接する磁気シールドＨＥＰＡフィルタ間の接続部を示す図である。
【図４】図２に示す磁気シールドルームに用いられる磁気シールドユニットを示し、（ａ）は斜視図、（ｂ）は（ａ）におけるＩＶＢーＩＶＢ線に沿う断面図である。
【図５】本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタの他の実施例を示す分解斜視図である。
【図６】図５に示す磁気シールドＨＥＰＡフィルタを用いた磁気シールドルームにおける互いに隣接する磁気シールドＨＥＰＡフィルタ間の接続部を示す図である。
【図７】図１または図５に示す磁気シールドＨＥＰＡフィルタを用いた他の磁気シールドルームを模式的に示す断面図である。
【図８】従来の開口部シールドユニットを用いた方式の磁気シールドルームを模式的に示す断面図である。
【図９】図８に示す従来の磁気シールドルームに用いられている開口部シールドユニットを示す斜視図である。
【図１０】図９に示す開口部シールドユニットの磁気シールド性能曲線を示す図である。
【図１１】従来のＦＦＵ方式のクリーンルームを模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
１…磁気シールドＨＥＰＡフィルタ、２…フィルタフレーム、３…ガラス繊維製ろ材シート、４…セパレータ、５…クリーンルーム、６…磁気シールドパッキン、７…グレーチング、８…磁気シールド材、９…貫通孔、１０…磁気シールドユニット、１１…空気流通路、１２…小型送風機、１３…天井フレーム、１４…シーラント、１５…磁気シールドユニット、１６…フィルタフレーム、１７…磁気シールド材、１８…貫通孔、２７ａ…非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体、２７ｂ…フィルタフレーム
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばクリーンルーム内に天井仕上げ材として配設されかつクリーンルーム内の空気に混在している塵等の微少な異物を捕獲してその空気を清浄化するためのＨＥＰＡ（Ｈｉｇｈ Ｅｆｆｉｃｉｅｎｃｙ Ｐａｒｔｉｃｌｅ Ａｉｒ）フィルタに関し、特にクリーンルーム内で半導体を製造する際の露光工程を行う、電子ビームを用いた露光装置や高性能な電子顕微鏡等の磁気ノイズの影響を受けてはならない装置が、その周囲で発生した磁気ノイズを遮断してその影響を受けることのないようにするために磁気シールドＨＥＰＡフィルタおよびこれを用いた磁気シールドルームに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
現在、各種製品の生産装置はもとより家電製品までＩＣ化が進んでおり、これらのＩＣ化には多くの半導体素子が使用されている。そして、これらの半導体素子はきわめて高度に進歩し、この半導体素子の進歩により、今まで考えられなかったような例えば電子ビーム露光装置や高性能な電子顕微鏡あるいは生体磁気計測器等の超高性能の超精密機器が種々開発・実用化されている。このような超精密機器を製造するにあたっては、例えば塵等微小の異物でも超精密機器に混在しないようにしなければならないため、クリーンルーム内で超精密機器やその部品が製造されている。
【０００３】
ところで、このような超精密機器の高性能化に伴い、従来では問題とならなかった磁気が各種機器の性能に多大な影響を及ぼすようになってきている。すなわち、磁気がノイズとなって、電子ビーム露光装置や電子顕微鏡の歪みあるいはコンピュータ端末などのＣＲＴの動作不良などが生じるようになってきている。建物内部におけるこのような磁気ノイズの発生源としては、変圧器、幹線ケーブルあるいはＥＬＶ等の種々の機器がある。
【０００４】
そこで、外部からの磁気ノイズを遮断して内部に侵入しないようにした磁気シールドルームが種々提案されている。この磁気シールドルームは、透磁率の大きい材料を用いて６面体を構成するとともに、周囲の磁束を集めてこの６面体の中に磁気の低い空間を形成したものである。この磁気シールドルーム内に、電子ビーム露光装置等の磁気ノイズの影響を受けてはならない装置を設置することにより、これらの装置が外部からの磁気ノイズに影響されるのを防止している。
【０００５】
一方、例えば半導体製造工場等における作業工程のなかの露光工程では、電子ビーム露光装置等がクリーンルーム内部で部分的に採用されることが想定される。その場合、前述と同様に露光装置の周囲に発生している交流磁気をかなり低減することが求められる。そこで、従来は前述のような磁気シールド材で構成された６面体からなる磁気シールドルームをクリーンルーム内部に形成し、この磁気シールドルーム内に電子ビーム露光装置等を設置するようにしている。そして、クリーンルーム内部に電子ビーム露光装置等が設置された場合には、クリーンルーム内の空気環境の超清浄化を図る必要があるために、大量の空気が十分に循環できるように考慮されなければならない。
【０００６】
このようなことから、内部に磁気シールドルームが形成されたクリーンルームには、従来から、大量の空気循環を可能にするためにＨＥＰＡフィルタからなる天井の裏の空間に空気を送り込むための開口部と、室内空気を床のグレーチング゛の下の空間から吸い込むための開口部が設けられている。しかしながら、このような開口部が設けられた場合には、この開口部の磁気処理が必要となる。そのために、従来はクリーンルームの開口部に開口部シールドユニットを設けて開口部の磁気シールドを行っている。ただし、この場合、ＨＥＰＡフィルタ上部空間の壁、天井面および床のグレーチング下部空間の壁、天井面はすべて磁気シールド材で構成しなければならない。
【０００７】
図８は、このような開口部シールドユニットが開口部に設けられたクリーンルームを模式的に示す断面図である。図中、２１は磁気シールドルームが形成されたクリーンルーム、２２は磁気シールド材、２３は開口部、２４は開口部シールドユニット、２５は空気循環用ダクト、２６は送風機、２７はＨＥＰＡフィルタ、２８はグレーチングである。
【０００８】
図８に示すように、クリーンルーム２１内の空気は、送風機２６によってクリーンルーム２１下部に配設されたグレーチング２８の下の開口部シールドユニット２４から吸い込まれる。この吸い込まれ空気は空気循環用ダクト２５を通ってクリーンルーム２１の天井に配設されたＨＥＰＡフィルタ２７の上の開口部シールドユニット２４から再びクリーンルーム２１内に流入する。クリーンルーム２１内に流入した空気はＨＥＰＡフィルタ２７によって混在する塵等の異物が除去されて清浄化された後、電子ビーム露光装置等の各種装置が設置されている空間内に流入するようになる。
【０００９】
開口部シールドユニット２４は、図９に示すように磁気シールド材を格子状に組んだ角筒状に形成されていて、断面矩形の通路２９が所定数（図示例では９個）形成されている。図１０に示すように、このような開口部シールドユニット２４の磁気シールド性能は、開口部シールドユニット２４の長さＤと通路２９の断面の対角線の長さｄとの比（Ｄ／ｄ）の増大にともない増大しかつ上に凸の性能曲線となっている。
このように開口部シールドユニット２４を用いることにより、内部を磁気シールド化されたクリーンルームが簡単かつ効果的に形成されるようになる。
【００１０】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、既存のクリーンルームに対してもこのような開口部シールドユニット方式を採用することにより磁気シールド化することが考えられる。しかしながら、既存のクリーンルームに開口部シールドユニット２４を用いるようにするためには、内装および空調の大幅な解体・改修工事が必要となる。特に、天井（ＨＥＰＡフィルタ２７、サプライチャンバ等）の解体改修工事はかなりの手間と時間がかかるため、クリーンルーム２１の長期間の運転停止を余儀なくされるという問題がある。
【００１１】
また、従来のクリーンルームには、図１１に示すようなファン・フィルタ・ユニット方式（以下、ＦＦＵ方式という）のクリーンルーム２１がある。このＦＦＵ方式のクリーンルームにおいては、個々のＨＥＰＡフィルタ２７，２７，…の直上に、それぞれ小型の送風機２６ａ，２６ａ，…が搭載されているとともに、クリーンルーム内に空気流通路３０が形成されていて、これらの送風機２６ａ，２６ａ，…により、クリーンルーム内の空気が空気流通路３０を通して循環されるようになっている。このようなＦＦＵ方式のクリーンルーム２１に対しても、開口部シールドユニット方式を採用することにより磁気シールド化することが考えられる。しかし、個々のＨＥＰＡフィルタ２７直上に搭載されている送風機２６ａ，２６ａ，…が磁気発生源となることから、このような開口部シールドユニットを用いた方式をＦＦＵ方式のクリーンルームに採用することはできない。
このように従来の開口部シールドユニットを用いた方式では、既存のクリーンルームの磁気シールド化に対して柔軟にかつ容易に対応することはできなかった。
【００１２】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、既存のクリーンルームに対しても磁気シールド化を柔軟にかつ容易に対応することのできる磁気シールドＨＥＰＡフィルタおよびこれを用いた磁気シールドルームを提供することである。
【００１３】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項１の発明は、磁気シールド材化された筒状のフィルタフレームと、このフィルタフレームにその内部に位置して蛇行状に折り重ねられて取り付けられ、空気に混在している微小な異物を捕獲するろ材と、前記フィルタフレームにその内部に位置し、かつ前記ろ材の折り重ね部分の間にジグザグに折られてスリットを形成するように取り付けられ、磁気シールド材化された平板状のセパレータとからなることを特徴としている。
【００１４】
また請求項２の発明は、前記フィルタフレーム自体および前記セパレータ自体をそれぞれパーマロイや珪素鋼板等の磁気シールド材から形成することにより、前記フィルタフレームおよび前記セパレータのそれぞれの磁気シールド材化が行われていることを特徴としている。
【００１５】
更に請求項３の発明は、前記フィルタフレームおよび前記セパレータをそれぞれ非磁気シールド材で形成するとともに、これらの非磁気シールド材の表面に例えばアモルファス等の磁気シールド材を付けることにより、前記フィルタフレームおよび前記セパレータのそれぞれの磁気シールド材化が行われていることを特徴としている。
【００１６】
更に請求項４の発明は、前記フィルタフレームの外側面の所定位置に磁気シールド部材が取り付けられていることを特徴としている。
【００１７】
更に請求項５の発明は、室の天井にＨＥＰＡフィルタが配設されているとともに室の床部にグレーチングが配設されており、室内の空気がグレーチングを通って室の天井に送られ更に前記ＨＥＰＡフィルタを通って再び室内に送られるようになっているクリーンルームに形成される磁気シールドルームにおいて、前記ＨＥＰＡフィルタが請求項１ないし４のいずれか１記載の磁気シールドＨＥＰＡフィルタによって形成されているとともに、前記室の側壁に磁気シールド材が設けられ、更に前記グレーチングの下または上に、空気流通可能な開口を有する磁気シールドユニットが設けられていることを特徴としている。
【００１８】
【作用】
このような構成をした本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタにおいては、フィルタフレームおよびセパレータが磁気シールド材化されることにより、磁気シールドＨＥＰＡフィルタはフィルタ機能に加え、それ自体で磁気シールド機能を有するようになる。その場合、セパレータはジグザグに折られてスリットが形成される。
【００１９】
また、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタをクリーンルームのＨＥＰＡフィルタとして単に用いることにより、天井面において従来のクリーンルームの磁気シールドルームのシールド効果と同様の効果を得ることができる磁気シールドルームを簡単に形成されるようになる。
【００２０】
特に、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタが従来の磁気シールド機能を有さないＨＥＰＡフィルタと形状的に同一に形成することにより、磁気シールドＨＥＰＡフィルタはクリーンルームの周辺部との取り合いや納まり等の点で一切変更する必要がなくなる。これにより、天井面に関しては、従来のクリーンルームのＨＥＰＡフィルタを本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタに単に交換するだけで、既存クリーンルームの磁気シールド化が更に一層簡単に行われるようになる。したがって、天井の大幅な解体・改修工事が必要なくなるため、クリーンルームの長期間の運転停止が確実に阻止される。このようにして、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタにより、既存のどのようなクリーンルームに対しても磁気シールド化が柔軟にかつ容易に対応可能となるとともに、既存クリーンルームの局所的な磁気シールド化および磁気シールド空間の移設も容易に対応することができるようになる。
【００２１】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
図１は本発明にかかる磁気シールドＨＥＰＡフィルタの一実施例を部分的に切り欠いて示す斜視図である。
【００２２】
図１に示すように、本実施例の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１は、矩形断面の角筒状のフィルタフレーム２、このフィルタフレーム２内に蛇行状に何重にも折り重ねられて配設されたガラス繊維製ろ材シート３およびこのろ材シート３の折り重ねられた部分の間に配設されたセパレータ４から構成されている。
【００２３】
フィルタフレーム２はパーマロイや珪素鋼板等の平板状の磁気シールド材から形成されていて、それ自体磁気シールド材化されている。なお、従来のようにフィルタフレーム２をアルミ板で形成し、このアルミ板の表面にアモルファスシートのような箔状磁気シールド材を付けることにより、フィルタフレーム２を磁気シールド材化することもできる。
【００２４】
また、セパレータ４も同様にパーマロイや珪素鋼板等の平板状の磁気シールド材を所定回数ジグザグに折られて形成されていて、それ自体磁気シールド材化されている。なお、従来のようにセパレータ４をアルミ板またはＳＵＳ板で形成して、このアルミ板またはＳＵＳ板の表面にアモルファスシートのような箔状磁気シールド材を付けることにより、セパレータ４を磁気シールド材化することもできる。
【００２５】
このようにフィルタフレーム２およびセパレータ４を磁気シールド材化された磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１は、ジグザグに折られた磁気シールド材のセパレータ４によりスリットが形成され、それ自体で磁気シールド機能を有している。また、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１は、図１１に示す従来のＨＥＰＡフィルタ２７と同じ形状に形成されている。
【００２６】
図２は、磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１を図１１に示すＦＦＵ方式のクリーンルームに適用して形成された磁気シールドルームを模式的に示す断面図である。
図２に示すように、クリーンルーム５の天井には、所定数の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１，１，…が天井仕上げ材として配設されている。その場合、天井フレームの形態によっては、隣接する磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１，１の相互の取付間隔が広くなって、そこでの磁気シールド効果が低下してしまう恐れがある。したがって、このような場合には、図３に示すように磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１のフィルタフレーム２の側面に磁気シールドパッキン６を取り付けるとともに互いの磁気シールドパッキン６を当接させることにより、隣接する磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１，１間の間隙を遮断して、磁気的な接続を図るようにしている。この磁気シールドパッキン６は、磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１の取付時に邪魔にならないよう、クッション性の高いスポンジ等を芯材としてこの芯材を磁気シールドシートで覆うことにより形成されている。これにより、磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１，１間の間隔が広い場合でもそこでの磁気シールド効果が確実に得られるようになる。
【００２７】
また、これらの磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１，１，…とグレーチング７との間のクリーンルーム５の側壁には、パーマロイや珪素鋼板等の平板状の磁気シールド材８，８，…が貼り付けられている。更に、グレーチング７の下には、パーマロイや珪素鋼板等の平板状の磁気シールド材からなり、例えば図４に示すような所定数の貫通孔９，９，…を有する磁気シールドユニット１０が貼り付けられている。なお、磁気シールドユニット１０の貫通孔９に代えて、線状の磁気シールド材を網状にあるいは格子状に配設することにより磁気シールドユニット１０を形成することもできる。また、図２および図３中、１１は空気流通路、１２は小型送風機、１３は天井フレーム、１４はシーラントである。
【００２８】
こうして、ＦＦＵ方式のクリーンルーム５内に、上部の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１、側部の磁気シールド材８および下部の磁気シールドユニット１０により囲まれた磁気シールドルームが形成される。
【００２９】
このように構成された本実施例の磁気シールドルームが形成されたクリーンルーム５においては、磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１により、その天井面が前述の図８に示す開口部シールドユニット方式のクリーンルームの場合と同様のシールド効果を得ることができる。しかも、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１が従来の磁気シールド機能を有さないＨＥＰＡフィルタ２７と形状的に同一に形成されているので、磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１はクリーンルーム５の周辺部との取り合いや納まり等の点で一切変更する必要がなくなる。これにより、天井面に関しては、従来のクリーンルームのＨＥＰＡフィルタを本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタに単に交換するだけで、磁気シールド化を簡単に施すことができるようになる。したがって、天井の大幅な解体改修工事が必要なくなるため、クリーンルーム５の長期間の運転停止を確実に阻止することができる。このようにして、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１により、既存のＦＦＵ方式のクリーンルームに対しても磁気シールド化を柔軟にかつ容易に対応することができるようになるとともに、既存クリーンルームの局所的な磁気シールド化および磁気シールド空間の移設も容易に対応することができるようになる。
【００３０】
図５は本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタの他の実施例を示す分解斜視図であり、図６はこの実施例の磁気シールドＨＥＰＡフィルタを用いた磁気シールドルームの天井取付断面図である。
【００３１】
図５に示すように、この実施例の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１は、前述の従来の磁気シールド機能を有さないＨＥＰＡフィルタ２７からなる非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体２７ａが用いられ、非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体２７ａのフィルタフレーム２７ｂに磁気シールドユニット１５が取り付けられて構成されている。磁気シールドユニット１５は、パーマロイや珪素鋼板等の平板状の磁気シールド材から形成された矩形断面の角筒状のフィルタフレーム１６と、このフィルタフレーム１６内に網状あるいは格子状に配設された磁気シールド材１７とから構成されている。フィルタフレーム１６が、非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体２７ａのフィルタフレーム２７ｂに取り付けられるようになっている。なお、フィルタフレーム１６および網状あるいは格子状の磁気シールド材１７に代えて、図６に部分的に示すように平板状の磁気シールド材に所定数の貫通孔１８，１８，…を設けるとともに平板状の磁気シールド材の周縁部を折り曲げて非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体２７ａのフィルタフレーム２７ｂへの取付部２７ｃを形成することにより、磁気シールドユニット１５を構成することもできる。
【００３２】
このように構成された本実施例の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１は、前述の図２に示すクリーンルーム５の場合と同様に、天井仕上げ材として取り付けられる。その場合、図６に示すように小型送風機１２と非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体２７ａとの間に、磁気シールドユニット１５が位置するようになる。また、図示しないが前述の図２に示すクリーンルーム５の場合と同様に、側部に磁気シールド材８を貼り付けるとともに、グレーチング７に図４または図５に示すような磁気シールドユニット１０，１５を貼り付けることにより、磁気シールドルームが形成される。
【００３３】
この実施例における磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１および磁気シールドルームも、前述の実施例の磁気シールドＨＥＰＡフィルタおよび磁気シールドルームと同様の作用効果を奏する。
【００３４】
なお、図８に示すクリーンルームの場合にも、図７に示すように本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ１を用いるとともに、側部に磁気シールド材８を貼り付けかつグレーチング７の下に磁気シールドユニット１０を貼り付けることにより、同様の磁気シールドルームを形成することができる。この場合には空気循環用ダクト２５の開口部２３に、開口部シールドユニット２４を設ける必要はない。
【００３５】
また、チューブ方式等の他のクリーンルームにも本発明を適用することができることは言うまでもない。
【００３６】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタによれば、フィルタフレームおよびセパレータを磁気シールド材化しているので、ＨＥＰＡフィルタを、それ自体で磁気シールド機能を有する磁気シールドＨＥＰＡフィルタに簡単にすることができる。
【００３７】
また、本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタを用いた磁気シールドルームによれば、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタをクリーンルームのＨＥＰＡフィルタとして単に用いているので、天井面において磁気シールドルームを簡単に形成することができるとともに、従来のクリーンルームの磁気シールドルームのシールド効果と同様の効果を得ることができる。
【００３８】
特に、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタを従来の磁気シールド機能を有さないＨＥＰＡフィルタと形状的に同一に形成することにより、磁気シールドＨＥＰＡフィルタをクリーンルームの周辺部との取り合いや納まり等の点で一切変更しなくて済むようになる。これにより、天井面に関しては、従来のクリーンルームのＨＥＰＡフィルタとの互換性を持たせることができ、ＨＥＰＡフィルタを本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタに単に交換するだけで、既存クリーンルームの局所的な磁気シールド化を更に一層簡単に行うことができる。したがって、天井の大幅な解体改修工事が必要なくなるため、既存クリーンルームの長期間の運転停止を確実に阻止できる。
【００３９】
このようにして、この磁気シールドＨＥＰＡフィルタと、グレーチングの磁気シールドユニットとにより、既存のどのようなクリーンルームに対しても磁気シールド化を柔軟にかつ容易に対応できるようになるとともに、既存クリーンルームの局所的な磁気シールド化および磁気シールド空間の移設も容易に対応することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明にかかる磁気シールドＨＥＰＡフィルタの一実施例を部分的に切り欠いて示す斜視図である。
【図２】図１に示す磁気シールドＨＥＰＡフィルタを用いたＦＦＵ方式の磁気シールドルームを模式的に示す断面図である。
【図３】図２に示す磁気シールドルームの互いに隣接する磁気シールドＨＥＰＡフィルタ間の接続部を示す図である。
【図４】図２に示す磁気シールドルームに用いられる磁気シールドユニットを示し、（ａ）は斜視図、（ｂ）は（ａ）におけるＩＶＢーＩＶＢ線に沿う断面図である。
【図５】本発明の磁気シールドＨＥＰＡフィルタの他の実施例を示す分解斜視図である。
【図６】図５に示す磁気シールドＨＥＰＡフィルタを用いた磁気シールドルームにおける互いに隣接する磁気シールドＨＥＰＡフィルタ間の接続部を示す図である。
【図７】図１または図５に示す磁気シールドＨＥＰＡフィルタを用いた他の磁気シールドルームを模式的に示す断面図である。
【図８】従来の開口部シールドユニットを用いた方式の磁気シールドルームを模式的に示す断面図である。
【図９】図８に示す従来の磁気シールドルームに用いられている開口部シールドユニットを示す斜視図である。
【図１０】図９に示す開口部シールドユニットの磁気シールド性能曲線を示す図である。
【図１１】従来のＦＦＵ方式のクリーンルームを模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
１…磁気シールドＨＥＰＡフィルタ、２…フィルタフレーム、３…ガラス繊維製ろ材シート、４…セパレータ、５…クリーンルーム、６…磁気シールドパッキン、７…グレーチング、８…磁気シールド材、９…貫通孔、１０…磁気シールドユニット、１１…空気流通路、１２…小型送風機、１３…天井フレーム、１４…シーラント、１５…磁気シールドユニット、１６…フィルタフレーム、１７…磁気シールド材、１８…貫通孔、２７ａ…非磁気シールドＨＥＰＡフィルタ本体、２７ｂ…フィルタフレーム
Claims (5)
- 磁気シールド材化された筒状のフィルタフレームと、このフィルタフレームにその内部に位置して蛇行状に折り重ねられて取り付けられ、空気に混在している微小な異物を捕獲するろ材と、前記フィルタフレームにその内部に位置し、かつ前記ろ材の折り重ね部分の間にジグザグに折られてスリットを形成するように取り付けられ、磁気シールド材化された平板状のセパレータとからなることを特徴とする磁気シールドＨＥＰＡフィルタ。
- 前記フィルタフレーム自体および前記セパレータ自体をそれぞれパーマロイや珪素鋼板等の磁気シールド材から形成することにより、前記フィルタフレームおよび前記セパレータのそれぞれの磁気シールド材化が行われていることを特徴とする請求項１記載の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ。
- 前記フィルタフレームおよび前記セパレータをそれぞれ非磁気シールド材で形成するとともに、これらの非磁気シールド材の表面に例えばアモルファス等の磁気シールド材を付けることにより、前記フィルタフレームおよび前記セパレータのそれぞれの磁気シールド材化が行われていることを特徴とする請求項１記載の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ。
- 前記フィルタフレームの外側面の所定位置に磁気シールド部材が取り付けられていることを特徴とする請求項１ないし３のいずれか１記載の磁気シールドＨＥＰＡフィルタ。
- 室の天井にＨＥＰＡフィルタが配設されているとともに室の床部にグレーチングが配設されており、室内の空気がグレーチングを通って室の天井に送られ更に前記ＨＥＰＡフィルタを通って再び室内に送られるようになっているクリーンルームに形成される磁気シールドルームにおいて、
前記ＨＥＰＡフィルタが請求項１ないし４のいずれか１記載の磁気シールドＨＥＰＡフィルタによって形成されているとともに、前記室の側壁に磁気シールド材が設けられ、更に前記グレーチングの下または上に、空気流通可能な開口を有する磁気シールドユニットが設けられていることを特徴とする磁気シールドルーム。
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