JP3593998B2 - フォトダイオードチップ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信システムの送信装置等に用いられるフォトダイオードチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバを用いる光通信のための半導体レーザ装置は、たとえば図4のようにレーザダイオードチップ1Aおよびモニタ用のフォトダイオードッチップ1Bがヘッダ2上にマウントされ、リード3を通じて外部の駆動回路およびモニタ回路(図示せず)に接続されている。キャップ4は透光性の窓5を有しており、レーザダイオードチップ1Aとフォトダイオードチップ1Bとを気密シールするために用いられる。ここで、ハウジング8にフェルール7を介して挿通された光ファイバ6にレーザダイオードチップ1Aからの光を効率よく入射するために、レンズホルダ10に固定した集光レンズ9が用いられている。図4のような形状をコアキシャルタイプと呼ぶ。
【0003】
図5の装置は、バタフライタイプと呼ばれるもので、ハウジング8が矩形となっている。基本的には、図3と機能は同じであるが、ハウジング8の中にレーザ駆動回路やモニタ回路用のIC(集積回路)チップなどを配置するような使い方もできる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
半導体レーザ装置は、温度変動などにより発光強度が不安定になりやすく、このためフォトダイオードチップ1Bで発光光をモニタし、外部の電子回路でモニタ光のレベルが常に一定になるよう、半導体レーザ1Aに流す平均電流をコントロールしている。ところが、100Mbps付近以上の高速でより安定な動作をさせる為には、平均電流のコントロールでは不十分であり、発光の最小値と最大値とを検出して、この双方のレベルをコントロールする必要がある。
【0005】
しかしながら従来の半導体レーザ装置では、通常のフォトダイオードチップ1Bを用いているため、いわゆる裾引き現象があり、最小値と最大値とを正確に知ることができず、実用に供することが難しかった。裾引き現象は、フォトダイオードのpn接合から離れたところに照射された光による光電流が応答速度の遅い成分となってしまうために生じる。応答速度の遅い成分のため、レーザ光の光強度の変化を正確に検出できない事態となる。図6にその様子を示す。ファトダイオードチップ1Bについては、半導体基板11上にエピタキシャル成長層12が形成され、金属元素の拡散によって層12とは逆の導電型の拡散領域13が形成される。層12と領域13との境界部分がpn接合といわれ、この部分に照射された光が主に光電流に寄与する。光電流は電極14、15を通じて、外部にモニタ用の信号として取り出される。
【0006】
ここで、符号16はレーザダイオードチップ1Aより放射された光ビームの広がりを示すものである。このビームのうち領域13およびそのごく近傍(たとえば3〜5μm)で吸収された光によるキャリアは、pn接合に印加された電界によって高速に、かつ効率よく分離されて光電流に寄与するが、それより外側では、電界が印加されていないので吸収された光は非常に応答速度の遅い光電流を発生してしまう。そうすると、デジタル信号光のモニタにおいては、パルス波形の歪みが出て(特に矩形パルスの立ち下がり部分がμsecの尾をひく)、最大値と最小値との検出が正確にできず、高速且つ安定な変調ができないという問題が生じる。
【0007】
このため、従来の半導体レーザ装置では、フォトダイオードチップ1Bを実装する位置を微細に制御して、半導体レーザチップ1Aの後端面から出た光がフォトダイオードチップ1Bの受光窓内にだけ入射するよう調整しなければならなかった。そして、実装位置を微細に制御するためには実装時間が長くなるなどの問題があり、量産性を損ねていた。
【0008】
半導体レーザ装置は光通信に必須のものであるにもかかわらず、このような困難性を有し、必ずしも全ての用途に使えないため、光通信システムの急速な普及を阻害している。本発明は、かかる問題点を解決することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るフォトダイオードチップは、第1の導電型である半導体層の一部に、第2の導電型である第1の領域を設けることにより形成された第1のpn接合部を有する上面入射型のフォトダイオードチップであって、光の入射により発生した光電流を外部回路に取り出すために第1のpn接合部に形成された電極と、第2の導電型である第2の領域を第1の領域を取り囲むように上記半導体層に設けることにより形成された第2のpn接合部とを有し、第2のpn接合部はチップ端面に達しており、第2の領域には電極の形成がないことを特徴とする。
【0010】
本発明の構造によれば、モニタ用のフォトダイオードチップには無効とすべきキャリアの捕獲構造が設けられているため、レーザダイオードチップからのモニタ光をフォトダイオードチップに入射しても、光電流信号の裾引きなどを生じることがない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面の図1,図2および図3を参照して本発明の一実施形態を説明する。本実施形態では、本発明のフォトダイオードについて、当該フォトダイオードが好適に適用される半導体レーザ装置を用いて説明する。
【0012】
図1は本実施形態の半導体レーザ装置の要部を示した一部破砕断面を含む側面図であり、図2は要部の拡大図である。図1(b)として拡大して図示のように、従来と異なる点は、モニタ用フォトダイオードチップ1Bとして、受光領域であるpn接合の外部に入射した光によって発生した光電流を無効にする構造を有するタイプ(電荷捕獲型フォトダイオードチップと呼ぶ)を用いたことである。
【0013】
図1のように、ヘッダ2にはレーザダイオードチップ1Aがマウントされると共に、その背部にフォトダイオードチップ1Bがマウントされ、これにレンズホルダ10とハウジング8が一体化されている。そして、ハウジング8にはフェルール7によって光ファイバ6が挿通され、光ファイバ6の光入射端面とレーザダイオードチップ1の発光面が、レンズ9および窓5を挟んで対向している。
【0014】
フォトダイオードチップ1Bは、受光領域であるpn接合領域の周囲に入射した光により発生した光電流を無効にする構造を有する(電荷捕獲型フォトダイオードチップ)。図2にその構造の一例を示す。この構造では、エピタキシャル層12に、それぞれ同じ導電型を持った領域13と領域17とが金属元素の熱拡散によって形成されている。これにより、領域13とエピタキシャル層12との界面に受光領域である第1のpn接合領域が形成される。また、領域17とエピタキシャル層12との界面には、受光領域の周囲に入射した光により発生した光電流を無効にするための第2のpn接合領域が形成される。ここで、図2に示す通り、領域17に電極は設けられておらず、また、領域17はフォトダイオードチップ1Bの端面にまで達している。そのため、第2のpn接合領域もまた、フォトダイオードチップ1Bの端面まで達することとなる。レーザダイオードチップ1Aからの光が領域17に照射された場合であっても、領域17及び第2のpn接合領域で発生した光キャリアは、領域13の方には流れず、第2のpn接合界面近傍、又は、チップ端面に露出した第2のpn接合領域で消滅してしまう。具体的には、本出願人による特願平2−230206号にその詳細が示されている。
【0015】
このような改良されたフォトダイオードチップ1Bをモニタに用いると、レーザダイオードチップ1Aからのモニタ光ビームが広がった状態でも、領域17及び第2のpn接合領域で発生した光キャリアを第2のpn接合界面近傍、又は、チップ端面に露出した第2のpn接合領域で消滅させることができる。そのため、光電流の裾引きが低減される。したがって、レーザダイオードチップ1Aから放出されるレーザ光の光強度変化を高応答速度にて検出する可能となる。また、フォトダイオードチップ1Bを実装する際、レーザダイオードチップ1Aとの相対位置の精度を高度に保つ必要はないので、非常に簡単に、安価な半導体レーザ装置が得られる。
【0016】
上述のフォトダイオードチップ1Bを用い、図1に示す半導体レーザ装置を製作した。半導体レーザチップ1Aは、活性層としてInGaAsPを有し、波長1.3μmのレーザ光を放出する。裾引き現象のない改良されたフォトダイオードチップ1Bは、InP基板とInP基板上にエピタキシャル成長されたInGaAs層を有する。InGaAsエピタキシャル層には、Znの熱拡散による直径300μm程度の受光領域としてのpn接合が形成されている。また、同じくZnの熱拡散により電荷捕獲領域が形成されている。また、このチップ1Bには、SiN膜による接合部分のパッシベーション、及び、受光部分及び電荷捕獲領域全面に反射防止膜がそれぞれ形成されている。フォトダイオードチップ1Bは、Fe製のCDレーザ用ヘッダにマウントされ、Au線によりリードと電気的に接続されている。
【0017】
次に、窒素ガス中で平窓キャップ4で封止する。集光レンズ9としては非球面レンズを用い、これをステンレスのレンズホルダ10に固定し、上方からモニタTVで監視しながら半導体レーザチップ1Aの発光部がレンズ中心位置に見えるようにセットしYAG溶接により図中のAの部分で固定する。さらに、光ファイバ6をフェルール7を介して固定したハウジング8とレンズホルダ10とを接近させ、光ファイバ6からの光強度をモニタしその値が最大となるように、図中のBの部分でYAG溶接する。
【0018】
さらに別の実施形態を図3に示す。ここでは、波長1.55μmのInGaAs系半導体レーザチップ1AがAuSn共晶半田を用いてSiサブマウント20上に実装されている。Siサブマウント20は半導体レーザチップ1Aと金属パッケージ2の電気的な絶縁を確保することを目的としている。Siサブマウント20はSnPb半田によって金属パッケージ2の所定の位置に実装されている。半導体レーザチップ1Aの後ろ端面から出た光を受けることができる位置には、上述のフォトダイオードチップ1Bが実装されている。
【0019】
このフォトダイオードチップ1Bは、先の実施形態に示したように、受光窓の外側に入射した光によって発生した電荷を捕獲してしまう構造を持っている。従ってフォトダイオードチップ1Bを実装する位置の制限が従来のフォトダイオードチップに比較して緩い。これは、使用する金属パッケージ2の設計自由度を上げることに寄与している。このフォトダイオードチップ1Bはアルミナセラミックで作られたサブマウント21の上にAuSn共晶半田で金属パッケージ2に固定されている。半導体レーザチップ1A及びフォトダイオードチップ1Bの電極は各々金線によって所定の外部電極8に電気的に接続されている。
【0020】
半導体レーザチップ1Aの前端面から出た光を所定の光ファイバ6に結合するための球レンズ5が固定された金属のキャップ19を、プロジェクション溶接により上記の半導体レーザチップ1Aが実装された金属性のパッケージ2に固定する。さらに、光ファイバ6が固定されたホルダ8を同様に金属性のパッケージ2にプロジェクション溶接によって固定する。キャップ19及びホルダ8を固定する際には調芯装置により半導体レーザチップ1Aから出た光が光ファイバ6に効率よく入射するよう調整されている。また、金属性パッケージ2とキャップ19で封止された半導体レーザチップ1Aのある空間には、窒素等の不活性気体が乾燥状態で充填されており、低温環境下に置かれた場合でも、半導体素子表面に結露しない状態になっている。なお、ここで述べた半導体材料や、パッケージ材料、サブマウント材料などは一例であり、使用状態によっては他の材料を選択できるものであることは当然である。
【0021】
このようにして、改良されたフォトダイオードチップをモニタに用いた半導体レーザ装置は、正確にレーザ光の発光状態をモニタできるため、高速まで、かつ高温まで安定した駆動ができる。さらに、フォトダイオードの実装位置の制限が緩やかになるため、容易に実装でき、また反射防止を施された電荷捕獲領域で不要な光を吸収してしまうため、半導体レーザの動作を不安定にする反射光や散乱光を発生せず動作の安定化にも効果がある。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、半導体レーザ装置に本発明に係るフォトダイオードチップを用いれば、高速動作でも、また高温環境下でも正確にレーザ光の発光波形を検知し、安定した動作ができ、さらに、フォトダイオードの実装位置の制限が緩やかになるため、容易に実装でき、また反射防止を施された電荷捕獲領域で不要な光を吸収してしまうため、半導体レーザの動作を不安定にする反射光や散乱光を発生せず動作も安定化された半導体レーザ装置を供給できる。特に現在、光化が進められている通信網のうち、高速データ通信や一般家庭に関わる光加入者系の光機器の構成要素として不可欠のものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のフォトダイオードチップが用いられた半導体レーザ装置の断面図である。
【図2】本実施形態に用いる電荷捕獲型フォトダイオードチップの断面図である。
【図3】本実施形態の構成を示す他の半導体レーザ装置の断面図である。
【図4】従来の半導体レーザ装置の断面図である。
【図5】従来の半導体レーザ装置の他の断面図である。
【図6】従来のフォトダイオードの断面図である。
【符号の説明】
1…フォトダイオードチップ、2…ヘッダ、3…リード、4…キャップ、5…窓、6…光ファイバ、7…フェルール、8…ハウジング、9…集光レンズ、10…レンズホルダ、11…半導体基板、12…エピタキシャル成長層、13…拡散領域、14,15…電極、17…拡散領域、19…キャップ、20…サブマウント。

Claims (1)

  1. 第1の導電型である半導体層の一部に第2の導電型である第1の領域を設けることにより形成された第1のpn接合部を有する上面入射型のフォトダイオードチップであって、
    光の入射により発生した光電流を外部回路に取り出すために前記第1のpn接合部に形成された電極と、
    第2の導電型である第2の領域を前記第1の領域を取り囲むように前記半導体層に設けることにより形成された第2のpn接合部と、
    を有し、前記第2のpn接合部はチップ端面に達しており、前記第2の領域には電極の形成がないことを特徴とするフォトダイオードチップ。
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