JP3593895B2 - 電気モータにおけるステータの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気モータ(電動機)におけるステータの製造方法に関するものである
【0002】
【従来の技術】
電気モータの一つとして、ステータにてコイルとティース部を電気絶縁性を有する樹脂により一体的にモールドするようにしたものがあり、例えば特開平7−231637号公報に示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した公報に示されている電気モータにおいては、ティース部(ステータ鉄心)に絶縁体(絶縁層)を介してコイル(巻線)が施されているため、コイルとティース部間での絶縁性は十分に確保し得るものの、絶縁体の介装によってステータにおけるコイルの占積率が低下し、所期のモータ特性が得られないことがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題に対処するため、電磁鋼板を軸方向に積層してブロック状に構成したティース部のコイル装着部位にて同ティース部両側面に樹脂が流入する軸方向の溝を形成する工程と、前記ティース部のコイル装着部に対応する形状の冶具に銅線を所定の回数巻き付けた後切り取ってコイルを形成する工程と、この工程にて形成したコイルをプレス式の成形冶具にセットして所定の形状に圧縮成形する工程と、この工程にて圧縮成形された成形コイルを前記ティース部に装着する工程と、この工程にて前記成形コイルを装着された前記ティース部を円筒状の磁性体により構成したヨーク部の内周壁に周方向に等間隔にて嵌合して複数個組付ける工程と、この工程にて前記ヨーク部に組付けられた前記複数のティース部の内端面に当接する中子を同ヨーク部内にその底部にて液密的にセットした状態にて同ヨーク部の上端開口から接着性と電気絶縁性を有する液状の樹脂モールド材を流し込み加熱硬化させた後に前記中子を前記ヨーク部から取り出す工程からなる電気モータにおけるステータの製造方法を提供するものである。
【0005】
【発明の作用・効果】
上記した本発明によるステータの製造方法によれば、前記コイルの圧縮成形工程にて各テイース部に装着される成形コイルがその占積率を高める形状に変形するため、当該ステータを採用した電気モータの小型化を図りながらモータ特性を向上させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明による電気モータ50を備えたラック・ピニオン型のステアリング装置を示していて、このステアリング装置においては、車両の左右方向に延在して配設されて車体(図示省略)に組付けられるハウジング10に対して入力軸20、操舵軸30、ボールスクリュー機構40及び電動モータ50等が組付けられている。
【0007】
入力軸20は、ハウジング10に回転可能かつ軸方向へ移動不能に組付けられており、ハウジング10から突出した外端部にて自在継手,中間シャフト,自在継手,ステアリングメインシャフト等を介してステアリングホイール(全て図示省略)にトルク伝達可能に連結されるようになっている。また、入力軸20は、内端部に形成したピニオン(図示省略)にて操舵軸30の一側外周に形成したラック歯31と操舵力伝達可能に係合していて、その回転によって操舵軸30を車両の左右方向(操舵軸の軸方向)へ移動させるようになっている。
【0008】
操舵軸30は、ラックバーともよばれるものであり、ピニオンに対応した部位(ラック歯31を形成した部位の背面部)をピニオンに対向して設けた周知のラックガイド11(ハウジング10に組付けられている)にて操舵軸30の径方向に移動可能に弾性支持されるとともに、左端部をエンドストッパ12(ハウジング10に組付けられている)によって操舵軸30の径方向に移動不能に固定支持された状態で、車両の左右方向(操舵軸の軸方向)へ移動可能かつ回転不能に組付けられていて、ハウジング10を貫通しており、左右両端にてタイロッド32,33とナックルアーム(図示省略)を介して転舵輪(図示省略)に操舵力伝達可能に連結されるようになっている。また、操舵軸30には、ボールスクリュー機構40のねじ軸41が一体的に形成されていて、このねじ軸41の外周には螺旋溝が形成されている。
【0009】
ボールスクリュー機構40は、操舵軸30の弾性支持部(ラックガイド11によって支持されている部分)と固定支持部(エンドストッパ12によって支持されている部分)間にて電気モータ50における回転軸51の回転を操舵軸30の軸方向変位に変換して伝達する回転変位変換手段であり、操舵軸30に対して同軸的に設けられていて、操舵軸30に一体的に形成したねじ軸41と、このねじ軸41の外周にて電気モータ50の回転軸51に操舵軸回りに回転可能(回転軸51と一体回転可能)かつ操舵軸方向へ移動不能に組付けたナット42と、このナット42とねじ軸41間にて薄肉円筒状のケージ43によって回転自在に保持されてねじ軸41外周に形成した螺旋溝とナット42の内周に形成した螺旋溝間に介装された多数のボール44によって構成されている。
【0010】
電気モータ50は、ボールスクリュー機構40を介して操舵軸30に軸方向の操舵助勢力を付与するものであり、操舵軸30に対して同軸的に組付けられていて、ハウジング10にボール軸受13,14を介して回転可能かつ軸方向へ移動不能に組付けた筒状の回転軸(出力軸)51と、ハウジング10の一部をも構成するステータ52を備えており、その回転出力を周知の操舵トルクセンサ(図示省略)や回転軸51の回転を検出するセンサS等からの信号に基づいて制御装置(図示省略)によって制御されるようになっている。
【0011】
回転軸51は、図1及び図2に示したように、磁性材によって段付円筒状に形成した軸本体51aと、この軸本体51aの外周に等間隔にて配置されて固着された16個の永久磁石51bによって構成されている。各永久磁石51bは、軸方向に長い形状であって、内周側(一つ飛びにS極とされている)を内周に向けて凸となる弧形状に形成され、また外周側(一つ飛びにN極とされている)を回転軸51の回転中心を中心とする円弧形状に形成されており、周方向の両端部が中央部より薄肉とされている。
【0012】
ステータ52は、電磁鋼板を軸方向にて積層してブロック状に構成した18個のティース部52aと、各ティース部52aに装着されたコイル52bと、これら各コイル52bとティース部52aを内部に収容するヨーク部52cを備えている。各ティース部52aは、図2及び図3に示したように、内周側に周方向に延びる磁極部52a1を有するとともに外周側に周方向に突出する突出部52a2(突出量は0.3〜1.0mm程度)を有していて、磁極部52a1と突出部52a2間がコイル装着部位52a3とされており、突出部52a2にてヨーク部52cに設けたアリ溝52c1に嵌合されてヨーク部52cに組付けられるようになっている。また、コイル装着部位52a3の周側面には樹脂(電気絶縁性を有する周知の樹脂)の流通を許容する溝部52a4が長手方向に形成されている。ヨーク部52cは、磁路形成体として機能しかつハウジング等構造体として利用可能な磁性体によって構成されていて、その素材としては例えば電磁鋼板材或いは低炭素鋼材のS10CまたはS15Cの鋼管が採用されている。
【0013】
このステータ52は、図4〜図9にて概略的に示した各工程を経て製作されていて、図4に示したコイル巻き付け工程では、ティース部52aのコイル装着部位52a3に似せて形成した治具101にリール102から導出された巻線(直径が略2.9mmで外周に絶縁被膜が施されている銅線)が必要ターン数巻き付けられて切り取られ、図5に示したように治具101から取り外される。なお、治具101にコイル52bの複数個分のターン数を巻き付けて切り取り、治具101から取り外した後に必要ターン数毎に切り取って図5に示したコイル52bを得るようにすることも可能である。
【0014】
図6に示したプレス成形工程では、図5に示したコイル52bがプレス式の成形治具103にセットされて、所定形状に圧縮成形される。この圧縮成形によってコイル52bの各線は線間の隙間が殆どなくなる程に変形して非円形とされ、図2に示したように組付けられた状態でのコイル52bの占積率を高められている。図7に示したコイル挿入装着工程では、図6に示したプレス成形工程にて圧縮成形された成形コイル52bがブロック状に構成したティース部52aにその突出部52a2側から挿入装着される。
【0015】
図8に示したコイル付ティース部52aのヨーク部52cへの嵌合工程では、各ティース部52aがその突出部52a2にてヨーク部52cの内周に形成したアリ溝52c1に嵌合されてヨーク部52cに組付けられる。なお、全てのティース部52aがヨーク部52cに嵌合されて組付けられることにより、この嵌合工程が完了する。
【0016】
図9に示したモールド工程では、全てのコイル付ティース部52aを組付けて嵌合工程を完了したヨーク部52cに中子104を一体的に設けた底板105をボルト106を用いてセットした後に、上方開口から接着性と電気絶縁性を有する液状の樹脂モールド材107を流し込み、その後に樹脂モールド材107を加熱硬化させ、最後に底板105と中子104を取り外すことにより、全てのコイル付ティース部52aとヨーク部52cが電気絶縁性を有する樹脂にて固着一体化されてステータ52が製作される。なお、大量生産時には生産性のよい射出成形のモールド工程が採用される。
【0017】
上記のように構成した本実施形態の電動式パワーステアリング装置においては、操舵力が入力軸20のピニオンから操舵軸30のラック歯31形成部位に直接伝達されるとともに、電気モータ50の出力が制御装置(図示省略)の制御下にてボールスクリュー機構40を介して操舵軸30のねじ軸41形成部位に伝達され、この電気モータ50の出力(操舵助勢力)によって操舵トルクが的確に助勢される。
【0018】
ところで、本実施形態の電気モータ50においては、ティース部52aにおけるコイル装着部位52a3の両周側面に溝部52a4がそれぞれ長手方向に形成されているため、図9に示したモールド工程にてコイル52bとティース部52aを接着性と電気絶縁性を有する樹脂により一体的にモールドするとき、樹脂が上記した溝部52a4に流通してコイル52bとティース部52a間に的確に流れ込むため、コイル52bとティース部52a間に樹脂による絶縁層が形成されて、コイル52bとティース部52a間での絶縁性を十分に確保することができるとともに、樹脂モールド前にティース部52aとコイル52b間に絶縁体を介在させないことにより、ステータ52におけるコイル52bの占積率を高めることができて、モータ特性を向上させることができる。
【0019】
また、本実施形態においては、ティース部52aの溝部52a4に流通して固着固化した樹脂によってティース部52aの径内方への移動が規制されて、ティース部52aのヨーク部52cからの脱落が防止される。
【0020】
また、本実施形態においては、ティース部52aに挿入装着される成形コイルとして、図6に示したプレス式の成形治具103によって所定形状に圧縮成形された成形コイル52bが採用されているため、ステータ52におけるコイルの占積率を高めることができて、電気モータ50の小型化を図りながらモータ特性を向上させることができる。
【0021】
また、上記のように構成した本実施形態の電動式パワーステアリング装置においては、電気モータ50のヨーク部52cが電動式パワーステアリング装置のハウジング10の一部としても利用できて、電動式パワーステアリング装置をシンプルかつ小型に構成できるとともに、ヨーク部52cでの渦電流損(鉄損量)を利用してステアリングのプリロードトルク(負荷)を発生させることができて、車両の適切な走行安定性(逆入力によるふらつき防止)を確保することが可能である。
【0022】
上記実施形態においては、電動式パワーステアリング装置に採用される電気モータ50に本発明を実施したが、本発明はステータにてコイルとティース部を電気絶縁性を有する樹脂により一体的にモールドするようにした種々な電気モータに実施し得るものであり、上記実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電動式パワーステアリング装置の一実施形態を示す全体図である。
【図2】図1に示した電気モータの回転軸とステータの構成を示す断面図である。
【図3】ティース部の拡大端面図である。
【図4】ステータの製作工程におけるコイル巻き付け工程を概略的に示す図である。
【図5】図4のコイル巻き付け工程にて製作されたコイルの斜視図である。
【図6】ステータの製作工程におけるプレス成形工程を概略的に示す図である。
【図7】ステータの製作工程におけるコイル挿入装着工程を概略的に示す図である。
【図8】ステータの製作工程におけるコイル付ティース部のヨーク部への嵌合工程を概略的に示す図である。
【図9】ステータの製作工程におけるモールド工程を概略的に示す図である。
【符号の説明】
10…ハウジング、11…ラックガイド、12…エンドストッパ、13,14…ボール軸受、20…入力軸、30…操舵軸、40…ボールスクリュー機構、41…ねじ軸、42…ナット、43…ケージ、44…ボール、50…電気モータ、51…回転軸、51a…軸本体、51b…永久磁石、52…ステータ、52a…ティース部、52a1…磁極部、52a2…突出部、52a3…コイル装着部、52a4…溝部、52b…コイル、52c…ヨーク部、52c1…アリ溝、103…プレス式の成形治具。

Claims (1)

  1. 電磁鋼板を軸方向に積層してブロック状に構成したティース部のコイル装着部位にて同ティース部両側面に樹脂が流入する軸方向の溝を形成する工程と、前記ティース部のコイル装着部に対応する形状の冶具に銅線を所定の回数巻き付けた後切り取ってコイルを形成する工程と、この工程にて形成したコイルをプレス式の成形冶具にセットして所定の形状に圧縮成形する工程と、この工程にて圧縮成形された成形コイルを前記ティース部に装着する工程と、この工程にて前記成形コイルを装着された前記ティース部を円筒状の磁性体により構成したヨーク部の内周壁に周方向に等間隔にて嵌合して複数個組付ける工程と、この工程にて前記ヨーク部に組付けられた前記複数のティース部の内端面に当接する中子を同ヨーク部内にその底部にて液密的にセットした状態にて同ヨーク部の上端開口から接着性と電気絶縁性を有する液状の樹脂モールド材を流し込み加熱硬化させた後に前記中子を前記ヨーク部から取り出す工程からなる電気モータにおけるステータの製造方法。
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