JP3592670B2 - 調理具およびその調理具の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、調理具、特に、電磁調理器に好適に用いられる、調理具、および、その調理具の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電磁調理器で調理するために用いられる、電磁調理鍋等の調理具は、熱伝導性に優れ、かつ、軽量であり、しかも、錆びないという理由などから、その調理具本体が、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、アルミ)からなっていた。そして、その底部に設けられた凹部にぴったりと嵌まるように形成された、磁性体からなる金属板、例えば、ステンレス鋼製の金属板を嵌め込んでいた。ところが、電磁調理器によって、調理具が加熱されると、アルミが熱膨張して、調理具本体の底部に嵌め込まれた前記金属板が外れてしまうおそれがあった。そこで、例えば、図17および図18に示されるような、調理具11が提案された。これは、アルミ製の調理具本体12の底部13に、磁性体からなる金属板14をインサートするようにして鋳造することにより、前記金属板14が外れないようにしたものである。そして、この調理具11は、調理具本体12の底部13の外面13aと、前記金属板14に形成された凸部14aとを分断する、溝15を備えていた。すなわち、この溝15は、調理具本体12の底部13の外面13aに露出する、前記金属板14に形成された凸部14aの両側に形成されており、その底面15aでは、前記金属板14の一部が露出していた。このように前記金属板14を、調理具本体12の底部13の外面13aから露出させることによって、調理具を電磁調理器で調理するために用いることができた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来の調理具11においては、アルミ製の調理具本体12を、前記金属板14をインサートするように鋳造した際に、前記金属板14が載せられる鋳型Gと、前記金属板14との間に部分的にできる僅かな隙間からアルミが浸入し、脱型後、溝15の底面15aとなる金属板14の一部が、アルミの薄膜によって被われることがあった。しかし、このアルミの薄膜は、切削機械等で簡単に削り取ることができず、溝15に沿って順次手作業で剥がし落とさなければならないので大変面倒であり、生産性が悪かった。
【0004】
この発明は、上記した従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、生産性に優れる調理具、および、その調理具の製造方法を提供することにある。
【0005】
また、この発明の他の目的は、調理具本体と、その調理具本体にインサートされる、磁性体からなる金属板との、一体性に優れる調理具、および、その調理具の製造方法を提供することにある。
【0006】
また、この発明の更なる他の目的は、加熱効率のよい調理具、および、その調理具の製造方法を提供することにある。
【0007】
また、この発明の更なる他の目的は、調理具本体の底部の変形が少ない調理具、および、その調理具の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る調理具、および、その調理具の製造方法は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る調理具は、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、アルミ)により鋳造される調理具本体と、その調理具本体の底部に、前記鋳造の際にインサートされる、磁性体からなる金属板と、を備える。そして、前記金属板は、前記調理具本体の底部と係合する、複数の係合孔部を有し、これら係合孔部は、前記金属板の一面側から凹んで、その他面側に突き出る凹形突部と、その凹形突部を、前記金属板の厚み方向と直交する方向に開口する開口部とを備えている。また、前記金属板は、その一面側が、前記調理具本体の底部の外面側に露出し、前記金属板の一面と、前記金属板の各係合孔部を通るようにして露出形成された、前記調理具本体の底部の外面とが、面一となって連続している。そして、前記複数の係合孔部の一部または全部は、その開口部が、前記金属板の厚み方向と直交する方向で、かつ、前記調理具本体の底部の中央を中心とする周方向に開口しているとともに、その凹形突部が、前記調理具本体の底部の中央に向かう方向に渡っている。これによれば、金属板をインサートするようにして、調理具本体を鋳造した際に、金属板の一面側が、アルミの薄膜で被われる場合であっても、このアルミの薄膜は、前記金属板の一面とともに、前記調理具本体の底部の外面を、切削機械等で切削することで、削り取られる。
【0009】
また、調理具本体と金属板とを一体成型する際に、溶解したアルミが、係合孔部の開口部を通って、凹形突部内へと流れ込む。そして、その凹形突部は、その内側に流れ込んだ前記溶解したアルミと、その外側で、前記凹形突部を囲む前記溶解したアルミとによって挟まれるようにして、調理具本体の底部内に埋設される。したがって、係合孔部は、調理具本体の底部に、強固に固着される。
【0010】
また、この調理具が用いられる電磁調理器には、加熱コイルがトッププレートの下で、例えば、渦巻き状に巻かれるようにして配備されているようなものがある。このような電磁調理器に、調理具を、その調理具本体の底部の中央が、渦巻き状に巻かれた加熱コイルの中央の真上に位置するように置いて、前記加熱コイルに交番電流を流すと、前記加熱コイルの周りには、磁力線が発生する。このとき、前記磁力線の方向は、調理具本体の底部の中央に向かう方向に渡された凹形突部の、渡り方向にほぼ沿う方向となるので、凹形突部を介して、前記金属板に磁力線を効率よく通すことが可能になる。
【0011】
また、請求項に記載の発明に係る調理具のように、前記金属板には、その厚み方向に貫通し、かつ、前記調理具本体の底部の中央位置に配される、貫通部が設けられているのが望ましい。金属板をインサートするようにして、調理具本体を鋳造すると、前記金属板の貫通部に溶解したアルミが流れ込み、その調理具本体の底部の中央位置は、調理具本体のアルミだけで構成されることになるので、加熱された際に、調理具本体の底部の中央の熱膨張による変形を抑えることが可能になる。また、この調理具が用いられる電磁調理器には、例えば、加熱コイルがトッププレートの下で、渦巻き状に巻かれるようにして配備されているとともに、その渦巻き状に巻かれた加熱コイルの中央に、温度センサーを設置するための空間を備えているようなものがある。この場合、前記加熱コイルに交番電流を流しても、前記空間中央の真上付近は、磁力線が弱かったり、あるいは、磁力線が届かなかったりするので、調理具本体の底部の中央位置が、アルミからなる調理具本体だけで構成されていても、調理具の加熱性にそれほど影響しない。
【0012】
また、請求項に記載の発明に係る調理具の製造方法は、前記金属板をインサートするようにして、前記調理具本体を鋳造し、前記金属板の一面とともに、前記金属板の各係合孔部を通るようにして露出形成された、調理具本体の底部の外面を切削することで、前記金属板の一面と、前記調理具本体の底部の外面とを面一にする。これによれば、前記金属板の一面とともに、前記金属板の各係合孔部を通るようにして露出形成された、調理具本体の底部の外面を、それら金属板の一面と、調理具本体の底部の外面とが面一になるように切削することにより、調理具本体を鋳造する際に、金属板の一面側が、アルミの薄膜で被われても、そのアルミの薄膜を、前記切削と同時に削り取ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る調理具、および、調理具の製造方法の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1ないし図5は、本発明に係る調理具、および、その調理具の製造方法の第一の実施の形態を示す。図中符号1は、電磁調理器(図示なし)に好適に用いられる、食物を煮たり炒めたりするための、電磁調理器用鍋類等の電磁調理器用の調理具である。この調理具1は、アルミニウムまたはアルミニウム合金により鋳造される調理具本体2と、この調理具本体2の底部3に、前記鋳造の際にインサートされる、磁性体からなる金属板4とを備える。
【0015】
調理具本体2は、平面視円形状であって、その上部内側に、蓋(図示なし)を載せる段部2aが設けられている。また、その底部3の外面3a側の外周寄り位置には、下方に突出する、平面視リング状の突出部Tが設けられているので、調理具1を電磁調理器のトッププレートに載せたときに、調理具本体2の底部3の外面3aと、電磁調理器のトッププレートの上面とが接触しないようになっている。なお、この突出部Tの高さ寸法Hは、1〜2ミリメートルの高さが好ましいが、これに限定されない。
【0016】
磁性体からなる金属板4は、例えば、フェライト系ステンレス鋼(SUS430あるいはSUS434等)からなる、平面視円形状の金属板である。この金属板4は、そのほぼ全域に、調理具本体2の底部3と係合する、複数の係合孔部5、5を有している(図示実施の形態においては、図4に明示されるように、環状に並ぶ係合孔部5、5群が、同心円状に複数列配置されることにより、前記係合孔部5、5は、金属板4のほぼ全域に設けられている)。この係合孔部5は、金属板4の一面4a側から離れるほど狭まるように、例えば縦断面台形状に凹んで(円弧状あるいはその他の形状で凹んでも構わない。)、その他面4b側に突き出る、平面視長方形状の凹形突部6と、この凹形突部6を、金属板4の厚み方向と直交する方向に開口する二つの開口部7、7とを備える。図示実施の形態においては、詳しく述べると、前記係合孔部5は、その開口部7、7が、前記金属板4の厚み方向と直交する方向で、かつ、前記調理具本体2の底部3の中央に向かう方向(もしくはその反対方向)に開口しているとともに、その凹形突部6が、前記調理具本体2の底部3の中央を中心とする周方向に渡っている。そして、金属板4は、その一面4a側の、前記係合孔部5、5を除くほぼ全域が、調理具本体2の底部3の外面3a側に露出し、かつ、金属板4の一面4aと、前記金属板4の各係合孔部5、5を通るようにして露出形成された、調理具本体2の底部3の外面3a、3aとが、同一面となっている。また、金属板4は、その外周縁部4cが、調理具本体2の底部3に埋設されており、各係合孔部5、5とともに、調理具本体2の底部3と係合している。
【0017】
次に、以上の構成からなる、第一の実施の形態に示す、電磁調理鍋等の調理具1の製造方法について説明する。まず、磁性体からなる金属板4をインサートするようにして、調理具本体2の鋳造を行う。すなわち、磁性体からなる金属板4を、磁力によって吸着固定させることができる鋳型(図示なし)に載せて、その鋳型に溶解したアルミを流し込むと、その溶解したアルミは、係合孔部5の二つの開口部7、7を通って、凹形突部6内へと流れ込む。このように、溶解したアルミが凹形突部6内へと流れ込むと、その凹形突部6は、その内側に流れ込んだ前記溶解したアルミと、その外側で、前記凹形突部6を囲む前記溶解したアルミとによって挟まれるようにして、調理具本体2の底部3内に埋設される。したがって、係合孔部5は、調理具本体2の底部3に、強固に固着される。また、前記金属板4の係合孔部5を通るようにして、前記調理具本体2の底部3の外面3aが露出形成され、かつ、この外面3aと、前記金属板4の一面4aとが、平面状に面一となって連続する。ところが、前記溶解したアルミは、前記金属板4が載せられる鋳型と、前記金属板4との間に部分的にできる僅かな隙間から浸入する場合があり、この場合、脱型後、前記金属板4の一面4a、すなわち、係合孔部5の周囲は、アルミの薄膜によって被われてしまう。
【0018】
このような場合には、金属板4の一面4aとともに、この金属板4の各係合孔部5、5を通るようにして露出形成された、調理具本体2の底部3の外面3aを切削する。この切削によって、金属板4の一面4aと、調理具本体2の底部3の外面とが、面一となって連続する平面が形成されるとともに、金属板の一面側を被う、アルミの薄膜を、切削と同時に削り取ることができる。(図2において、切削前の状態を二点鎖線で示す)。その後、必要であれば、アルミの薄膜が削り取られた金属板の一面4aと、調理具本体2の底部3の外面3aを含めた、調理具1の外面全体を、耐熱塗料等で塗装をする。なお、鋳造の際に、金属板4の一面4aが、アルミの薄膜で被われなければ、金属板4の一面4とともに、調理具本体2の底部3の外面3aを切削する必要はない。
【0019】
この第一の実施の形態に示す調理具によれば、調理具本体2を鋳造した際に、金属板4の一面4a側の係合孔部の周囲が、アルミの薄膜で被われる場合であっても、このアルミの薄膜は、金属板4の一面4aとともに、調理具本体2の底部3の外面3aを、切削機械等で切削して削り取ればよいので、生産性に優れる。また、金属板4は、そのほぼ全域が、調理具本体2の底部3の外面3a側に露出していても、そのほぼ全域で、各係合孔部5、5が、調理具本体2の底部3に固着されるとともに、金属板4の外周縁部4cも、調理具本体2の底部3に埋設されるので、一体性に優れる。さらに、係合孔部5は、その凹形突部6が、調理具本体2の底部3内で、その底部3を構成するアルミに挟まれるようにして埋設されて、調理具本体2の底部3と、強固に固着しているので、調理具本体2と、その調理具本体2にインサートされる、磁性体からなる金属板4との、一体性に優れる。そして、金属板4は、係合孔部5、5を除くそのほぼ全域が、調理具本体3の底部3の外面3a側に露出しているので、電磁調理器で、調理具1を加熱する際の熱効率が良い。
【0020】
また、この第一の実施の形態に示す調理具の製造方法によれば、金属板4の一面4aとともに、調理具本体2の底部3の外面3aを、それら金属板4の一面4aと、調理具本体2の底部3の外面3aとが面一になるように切削することにより、金属板4の一面4aが、アルミの薄膜で被われても、そのアルミの薄膜を、前記切削と同時に削り取ることができるので、生産性に優れる。
【0021】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、磁性体からなる金属板4が有する複数の係合孔部5、5は、図6ないし図10に示される、第二の実施の形態のような構成からなってもよい。すなわち、第二の実施の形態の調理具1は、第一の実施の形態の調理具1と同様に、環状に並ぶ係合孔部5、5群が、同心円状に複数列配置されることにより、前記係合孔部5、5は、金属板4のほぼ全域に設けられている。この係合孔部5は、金属板4の一面4aから離れるほど孔径が小さくなるように形成されて、その他面4b側に突き出る、平面視円形状の孔付き突部8となっており、その孔付き突部8の、前記他面4b側に突き出た先端側には、金属板4の厚み方向に貫通する貫通孔9が明けられている。そして、金属板4をインサートするようにして、調理具本体2の鋳造を行うと、貫通孔9から溶解したアルミは、孔付き突部8内に流れ込む。そして、その孔付き突部8は、その内側に流れ込んだ前記溶解したアルミと、その外側で、孔付き突部8を囲む前記溶解したアルミとによって挟まれるようにして、調理具本体2の底部3内に埋設される。したがって、係合孔部5は、調理具本体2の底部3に、強固に固着される。このように、係合孔部5の形状、構造は、適宜に変更でき、特定の形状、構造に限定されない。
【0022】
また、磁性体からなる金属板4が有する複数の係合孔部5、5は、図11ないし図16に示される、第三の実施の形態のような構成からなってもよい。すなわち、第三の実施の形態の調理具1は、第一の実施の形態と同様に、環状に並ぶ係合孔部5、5群が、同心円状に複数列配置されることにより、前記係合孔部5、5は、金属板4のほぼ全域に設けられている。この係合孔部5は、第一の実施の形態の調理具1の係合孔部5と同形状であって、例えば、平面視長方形状の凹形突部6と、二つの開口部7、7とを備える。そして、前記複数の係合孔部5、5の一部(図示実施の形態において、前記係合孔部5、5群が同心円状に4列配置されているが、その内の中心から3列までを形成する係合孔部5、5)は、その二つの開口部7、7が、金属板4の厚み方向と直交する方向で、かつ、調理具本体2の底部3の中央を中心とする周方向に開口しているとともに、その凹形突部6が、いずれも前記調理具本体2の底部3の中央に向かう方向(係合孔部5の長手方向と同じ方向でもある)に渡っている。また、同心円状に4列配置されている内の最外列を形成する他の係合孔部5、5は、その二つの開口部7、7が、金属板4の厚み方向と直交する方向で、かつ、調理具本体2の底部3の中央に向かう方向(もしくはその反対方向)に開口しているとともに、凹形突部6が、前記調理具本体2の底部3の中央を中心とする周方向に渡っている。なお、複数の係合孔部5、5は、その全部が同じように、すなわち、その二つの開口部7、7が、金属板4の厚み方向と直交する方向で、かつ、調理具本体2の底部3の中央を中心とする周方向に開口しているとともに、その凹形突部6が、いずれも前記調理具本体2の底部3の中央に向かう方向に渡っているように設けられていてもよい。
【0023】
また、金属板4には、その厚み方向に貫通し、かつ、調理具本体2の底部3の中央位置に配される、例えば平面視円形状の貫通部Kが設けられている。この貫通部Kの大きさは、例えば直径が20ミリから40ミリの範囲が好ましいが、その数値に限定されない。そして、この金属板4をインサートするようにして、調理具本体2を鋳造することにより、前記貫通部Kには、溶解したアルミが流れ込み、その調理具本体2の底部3の中央位置は、調理具本体2のアルミだけで構成されることになるので、加熱された際に、調理具本体2の底部3の中央の熱膨張による変形を抑えることが可能になる。
【0024】
また、第一の実施の形態の調理具1においては、その底部3の外面3a側の外周寄り位置には、リング状に突出する突出部Tを設けたが、図11、図12および図16に明示するように、この第三の実施の形態に示される調理具1においては、調理具本体2の底部3の外面3a側には、そのような突出部Tを設けないため、この底部3の外面3aと、電磁調理器のトッププレートPの上面とが接触するように平らになってる。このように平らにすることで、電磁調理器DのトッププレートPに、調理具1を置くと、調理具1の金属板4と、前記トッププレートP下に配備された加熱コイルNとの距離が、突出部Tを設けた場合と比べて近くなるので、金属板4に磁力線Jが通り易くなる。このように、調理具本体2の底部3の外面3a側には、突出部Tを必ずしも設ける必要はない。
【0025】
次に、この第三の実施の形態の調理具1の作用効果について説明する。図16において符号Dは、電磁調理器である。この電磁調理器Dは、加熱コイルNがトッププレートPの下で、例えば、渦巻き状に巻かれるようにして配備されている。この電磁調理器Dに、調理具1を、その調理具本体2の底部3の中央が、渦巻き状に巻かれた加熱コイルNの中央の真上に位置するように置いて、前記加熱コイルNに交番電流を流すと、前記加熱コイルNの周りには、磁力線Jが発生する。このとき、前記磁力線Jの方向は、図中矢印で示されるように、調理具本体2の底部3の中央に向かう方向に渡された凹形突部6の、渡り方向にほぼ沿う方向となるので、凹形突部6を介して、磁性体からなる前記金属板4に磁力線Jを効率よく通すことが可能になる。よって、調理具本体2の底部3の中央に向かう方向に渡された凹形突部6を介して、金属板4に前記磁力線Jを効率よく通すことができるので、調理具1の加熱効率を向上させることができる。
【0026】
また、電磁調理器Dの渦巻き状に巻かれた加熱コイルNは、その中央に空間N1を備えており、その空間N1には、温度センサーSが設置されている。このため、前記加熱コイルNに交番電流を流しても、前記空間N1中央の真上付近は、磁力線Jが弱かったり、あるいは、磁力線Jが届かなかったりするので、調理具本体2の底部3の中央位置が、アルミだけで構成されていても、調理具2の加熱性にそれほど影響しない。よって、金属板4に、調理具本体2の底部3の中央位置に配される、貫通部Kを設けることで、調理具本体2の底部3の中央をアルミで構成し、この調理具2の加熱性をそれほど下げることなく、しかも、熱膨張による、調理具本体2の底部3の中央の変形を抑えることができるようになる。
【0027】
また、磁性体からなる金属板4は、フェライト系ステンレス鋼からなるものに限られず、鉄、あるいは、鉄の合金等からなる金属板であってもよい。
【0028】
また、調理具本体2の形状も、平面視円形状以外の、四角形状、長方形状、楕円形状あるいはその他の形状であってもよく、金属板4の形状も、同様に、平面視円形状以外の、四角形状、長方形状、楕円形状あるいはその他の形状であってもよい。
【0029】
また、調理具1は、フライパンと称される、長い柄のついた、鍋底が浅い電磁調理器用鍋類であってもよく、スパゲティ等の麺類を茹でるのに好適に用いられる、鍋底が深い電磁調理器用鍋類であってもよく、また、鍋物料理に似合う土鍋のような形状の調理具であってもよく、あるいは、たこ焼きを作るのに好適に用いられる、半球状の窪みを上部に複数備える、電磁調理器用の調理具その他の調理具であってもよいなど、特に限定されない。
【0030】
【発明の効果】
請求項1に記載された調理具によれば、金属板をインサートするようにして、調理具本体を鋳造した際に、金属板の一面側の係合孔部の周囲が、アルミの薄膜で被われる場合であっても、このアルミの薄膜は、前記金属板の一面とともに、前記調理具本体の底部の外面を、切削機械等で切削して削り取ればよいので、生産性に優れる。
【0031】
また、係合孔部は、その凹形突部が、調理具本体の底部と、強固に固着しているので、調理具本体と、その調理具本体にインサートされる、磁性体からなる金属板との、一体性に優れる。
【0032】
また、調理具本体の底部の中央に向かう方向に渡された凹形突部を介して、前記金属板に電磁調理器の加熱コイルから発生する磁力線を効率よく通すことができるので、調理具の加熱効率を向上させることができる。
【0033】
また、請求項に記載された調理具によれば、加えて、前記金属板に、調理具本体の底部の中央位置に配される、貫通部を設けることで、この調理具の加熱性をそれほど下げることなく、しかも、熱膨張による、調理具本体の底部の中央の変形を抑えることができる。
【0034】
また、請求項に記載された調理具の製造方法によれば、金属板の一面とともに、調理具本体の底部の外面を、それら金属板の一面と、調理具本体の底部の外面とが面一になるように切削することにより、調理具本体を鋳造する際に、金属板の一面が、アルミの薄膜で被われても、そのアルミの薄膜を、前記切削と同時に削り取ることができるので、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る調理具の第一の実施の形態の縦断面図である。
【図2】同じく、要部拡大縦断面図である。
【図3】同じく、底面図である。
【図4】調理具が備える金属板の拡大平面図である。
【図5】図4における、A−A線による拡大断面図である。
【図6】この発明に係る調理具の第二の実施の形態の縦断面図である。
【図7】同じく、要部拡大縦断面図である。
【図8】同じく、底面図である。
【図9】調理具が備える金属板の拡大平面図である。
【図10】図9における、B−B線による拡大断面図である。
【図11】この発明に係る調理具の第三の実施の形態の縦断面図である。
【図12】同じく、要部拡大縦断面図である。
【図13】同じく、底面図である。
【図14】調理具が備える金属板の拡大平面図である。
【図15】図14における、L−L線による拡大断面図である。
【図16】電磁調理器に調理具を載せた状態の斜視図である。
【図17】従来の調理具を示す底面図である。
【図18】図17における、C−C線による拡大断面図である。
【符号の説明】
1 調理具
2 調理具本体
4 金属板
3 調理具本体の底部
5 係合孔部
3a 底部の外面
4a 金属板の一面
4b 金属板の他面
6 凹形突部
7 開口部
K 貫通部

Claims (3)

  1. アルミニウムまたはアルミニウム合金により鋳造される調理具本体と、
    その調理具本体の底部に、前記鋳造の際にインサートされる、磁性体からなる金属板と、を備える調理具であって、
    前記金属板は、前記調理具本体の底部と係合する、複数の係合孔部を有し、これら係合孔部は、前記金属板の一面側から凹んで、その他面側に突き出る凹形突部と、その凹形突部を、前記金属板の厚み方向と直交する方向に開口する開口部とを備えており、
    また、前記金属板は、その一面側が、前記調理具本体の底部の外面側に露出し、
    前記金属板の一面と、前記金属板の各係合孔部を通るようにして露出形成された、前記調理具本体の底部の外面とが、面一となって連続しており、
    前記複数の係合孔部の一部または全部は、その開口部が、前記金属板の厚み方向と直交する方向で、かつ、前記調理具本体の底部の中央を中心とする周方向に開口しているとともに、その凹形突部が、前記調理具本体の底部の中央に向かう方向に渡っていることを特徴とする調理具。
  2. 前記金属板には、その厚み方向に貫通し、かつ、前記調理具本体の底部の中央位置に配される、貫通部が設けられていること特徴とする請求項1に記載の調理具。
  3. 請求項1または2に記載の調理具の製造方法であって、
    前記金属板をインサートするようにして、前記調理具本体を鋳造し、
    前記金属板の一面とともに、前記金属板の各係合孔部を通るようにして露出形成された、調理具本体の底部の外面を切削することで、前記金属板の一面と、前記調理具本体の底部の外面とを面一にすることを特徴とする調理具の製造方法。
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