JP3590883B2 - 紫外線発光デバイス及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は紫外線の発光、紫外線の照射及び紫外線による消去等に利用し、特にダイヤモンドのpn接合により、紫外線を発光する紫外線発光デバイス及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンド半導体は5.5eVという広いバンドギャップを持つ極めて特殊な半導体結晶であり、このバンドギャップが広いことから、シリコンデバイスにみられるような熱による半導体特性の変化が少ないため、かなりの高温で動作するデバイス作製が可能である。
【0003】
p型ダイヤモンド半導体に関しては非常に高品質なダイヤモンド半導体薄膜が得られている。その代表的な特性である正孔移動度は1500cm2 V−1s−1程度のものが再現性よく得られており、高速、大電流デバイスの作製に十分なものである。
【0004】
これに対してn型ダイヤモンド半導体に関しては、従来、適当なドナー原子が見いだされていないことから良質のn型のダイヤモンド半導体を得るのが困難であり、したがって、その応用に限界があり、特にpn接合を用いた実用デバイスは現在に至るまでまで作製できなかった。
【0005】
最近、このダイヤモンド半導体の応用に関する最大の解決課題となっていたn型ダイヤモンド半導体の合成が本発明者らにより提案された(特願平11−124682号)。
この提案では、マイクロ波プラズマCVDにおいてイオウ化合物、代表的には硫化水素を添加することによってダイヤモンド半導体結晶中にイオウ原子をドナーとして導入すことにより、良質なn型ダイヤモンド半導体が得られている。
その代表的な特性である電子移動度は約600cm2 V−1s−1であり、活性化エネルギー(不純物レベル)は0.38eV程度である。現在のところp型ダイヤモンド半導体のものには及ばないが、それでも十分にデバイスに適応することが期待できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、未だ良好なpn接合を形成したダイヤモンド半導体デバイスは得られておらず、またダイヤモンド半導体のpn接合を利用した半導体発光デバイスもない。
一方、半導体発光デバイスとしては紫外から赤外域までの広い波長範囲に渡って発光ダイオード(以下、「LED」と記す)、半導体レーザ(以下、「LD」と記す)を製作する努力が続けられているが、紫外線を発光する半導体発光デバイスは未だない。
【0007】
そこで、この発明は半導体のpn接合から紫外線が発光可能な紫外線発光デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の紫外線発光デバイスは、半導体pn接合に順方向電圧を印加することにより発光する発光デバイスにおいて、ダイヤモンド(100)基板上に、0.38eVのドナーレベルを有するイオウドープn型ダイヤモンド半導体結晶とp型ダイヤモンド半導体結晶とからなるpn接合を備えており、上記n型ダイヤモンド半導体結晶が、揮発性炭化水素とイオウ化合物と水素とから成る混合ガスを原料ガスとしたマイクロ波プラズマCVDによりエピタキシャル成長して形成されていて、紫外線を発光する。p型ダイヤモンド半導体結晶はホウ素をアクセプター原子としてドープしたp型ダイヤモンド半導体結晶であっても良い。
【0009】
p型ダイヤモンド半導体結晶はホウ素をドープした高圧合成ダイヤモンドであっても良く、また、天然のIIb型ダイヤモンドであってもよい。
ダイヤモンド(100)基板上に、揮発性炭化水素とイオウ化合物と水素とから成る混合ガスを原料ガスとしたマイクロ波プラズマCVDによりエピタキシャル成長して形成した0.38eVのドナーレベルを有するイオウドープn型ダイヤモンド半導体結晶とp型ダイヤモンド半導体結晶は、絶縁体のダイヤモンド(100)基板面に積層した構造を有していても良い。また、ドナー原子濃度は、1013/cm3 〜1021/cm3 の範囲であることが好ましい。
【0010】
本発明の紫外線発光デバイスは、良質なpn接合を有し、順方向電圧の印加により紫外線が発光する。
【0011】
本発明の紫外線発光デバイスの製造方法は、第1工程としてメタンとジボランと水素との混合ガスを原料ガスとする、圧力が30〜60Torr且つ基板温度が700℃〜1100℃のマイクロ波プラズマCVD法により、絶縁体ダイヤモンド(100)基板面にp型ダイヤモンド半導体結晶層を形成し、第2工程としてメタンと硫化水素と水素との混合ガスを原料ガスとする、圧力が30〜60Torr且つ基板温度が700℃〜1100℃のマイクロ波プラズマCVD法により、ドナー原子がイオウであるn型ダイヤモンド半導体結晶層を上記p型ダイヤモンド半導体結晶層上に形成することを特徴とする。
前記第1工程において、ジボランのホウ素原子数とメタンの炭素原子数との比は20〜20000ppmの範囲でマイクロ波プラズマCVDを行うことが好ましい。
また、第2工程において、硫化水素のイオウ原子数とメタンの炭素原子数との比は1000〜10000ppmの範囲でマイクロ波プラズマCVDを行うことが好ましい。
【0012】
本発明の紫外線発光デバイスの製造方法によれば良質なpn接合を有する紫外線発光デバイスが製造できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図8に基づきこの発明による好適な実施の形態を説明する。
ダイヤモンドのバンドギャップは5.5eV(225nm)であり、紫外線領域のエネルギー幅である。
さらに図1及び図2に示すように、ドナー原子としてイオウをドープしたn型ダイヤモンド半導体のカソードルミネッセンス及びフォトルミネッセンスから、5.22eV(237.7nm)に発光ピークを有していることが分かる。また良質のp型ダイヤモンド半導体においても同様の発光ピークを有することが分かる。
したがって紫外線発光材料としてダイヤモンド半導体が最適である。
【0014】
図3(a)〜(c)はこの発明に係るダイヤモンド半導体のpn接合を利用して紫外線を発光する紫外線発光デバイスの概略断面図である。なお、図中、矢印はpn接合からの紫外線発光を示す。
図3(a)を参照すると、この発明の紫外線発光デバイス10は、ホウ素をドープした高圧合成ダイヤモンド又は天然のIIb型ダイヤモンドから形成されたp型ダイヤモンド半導体結晶2上に、例えばプラズマCVD法によってドナー原子となるイオウをドープしたn型ダイヤモンド半導体結晶層4を成長させてpn接合6を形成したものである。
【0015】
ホウ素ドープした高圧合成ダイヤモンドは、例えば50kbar、1500℃以上の超高圧高温法により作製可能であり、また天然に産出するIIb型と呼ばれるダイヤモンド結晶はホウ素を含みp型のダイヤモンド半導体である。
【0016】
図3(b)に示す紫外線発光デバイス20は、通常の合成ダイヤモンド又は天然ダイヤモンドから形成した絶縁体ダイヤモンド基板3上に、例えばプラズマCVD法で形成されたホウ素ドープしたp型ダイヤモンド半導体結晶層5と、この上に例えばプラズマCVD法によってイオウドープしたn型ダイヤモンド半導体結晶層7を成長させて、pn接合8を形成したものである。
図3(c)に示す紫外線発光デバイス30は図3(b)に示した紫外線発光デバイス20の導電型を逆にして形成されたものである。
【0017】
p型ダイヤモンド半導体結晶層5は厚さが1μm程度であるが、1nm程度以上であればよい。またドープされたホウ素濃度は1013cm−3以上であればよく、上限は1021cm−3程度である。
ホウ素ドープした高圧合成ダイヤモンド又は天然のIIb型ダイヤモンドで形成されたp型ダイヤモンド半導体結晶では、厚さが500μm程度であるが、形成可能な厚さでもよい。また、ホウ素濃度はp型ダイヤモンド半導体を呈すればよく、1013cm−3以上であればよい。
【0018】
また、n型ダイヤモンド半導体結晶層4,7は厚さが1μm程度であるが、1nm程度以上であればよい。またドナーとしてドープされたイオウ濃度は1013cm−3以上であり、上限は1021cm−3程度である。
【0019】
図3(a)〜(c)中、11,13,21,23,31,33は電極を示す。これらの電極はダイヤモンド上にチタン(Ti)を蒸着し、そのチタンの酸化防止のため、さらにその上に金(Au)を蒸着し電極としたものである。
なお、図3(b)、(c)の電極23,33は絶縁体ダイヤモンド基板の裏面側(露出側)に形成されていてもよい。
【0020】
次に、この発明の紫外線発光デバイスの特性について説明する。
図4は図3(b)で示したダイヤモンド半導体デバイスにおける不純物の深さ方向の分析結果を示す図である。
紫外線発光デバイス20を二次イオン質量分析法(以下、「SIMS」と称する。)で分析し、その深さ方向プロファイルは、第一層の表面からイオウドープしたn型ダイヤモンド半導体結晶層7と、第二層のホウ素ドープしたp型ダイヤモンド半導体結晶層5と、図中矢印で示した範囲の絶縁体ダイヤモンド基板3とが図4に示されている。なお、図4中、a、bで示したプロファイルはバックグラウンドである。
【0021】
ダイヤモンドの場合、その結晶中を異種原子、例えばホウ素(B)、イオウ(S)などが極めて拡散しにくいという特徴を有しており、これがpn接合の形成には有利に働き、図4に示すように、界面の不純物濃度の変化が極めて急峻である。すなわち、p型ダイヤモンド半導体結晶層とn型ダイヤモンド半導体結晶層とが原子オーダーで切り替わってpn接合が形成されている。
したがって本発明の紫外線発光デバイスで形成されたpn接合は、非常に良質かつ原子オーダーで急峻である。
【0022】
図5はこの発明に係るダイヤモンド半導体pn接合に順方向に電流を流したときの発光スペクトルを示す図である。
室温で紫外線領域の237nm(5.23eV)に強い発光を示し、同時に可視領域にもブロードな発光が生じているが、その強度は237nmのピークよりかなり弱い。
したがって、ダイヤモンド半導体のpn接合界面から紫外線が発光する。
【0023】
なお、この発明の紫外線発光デバイスは順方向には電流が流れるが、逆方向には電流が流れない良好な整流特性を有している。また400℃、500℃という高温においても良好な整流特性を有する。
【0024】
次に、この発明の紫外線発光デバイスの製造方法について説明する。
この発明の紫外線発光デバイスは気相合成法により製造可能である。気相合成法としては、原料ガスを活性化する方法に応じ、電気、熱及び光エネルギーの少なくともいずれかを利用すればよいが、本実施形態では電気エネルギー及び熱エネルギーを利用したマイクロ波プラズマCVD法による例を示す。なお、イオウドープn型ダイヤモンド半導体は、本発明者らによる特願平11−124682号に開示した製造方法により製造する。
【0025】
図6はこの実施形態で使用したマイクロ波プラズマCVD装置の概略構成図である。
図6に示すように、マイクロ波プラズマCVD装置40は、例えば2.45GHzのマイクロ波発生装置41と、アイソレータ及びパワーモニター43と、チューナー45とを有し、マイクロ波が照射される反応管47と、この反応管47を真空排気する真空ポンプ(図示しない)と、反応管47に原料ガスである混合ガス又はパージ用ガスを切り換えて供給するガス供給ライン49と、複数の光学窓51,51と、反応管内に設けられた基板ホルダー53と、この基板ホルダー53上に設置された絶縁体ダイヤモンド基板55を加熱又は冷却する温度制御システム57とを備え、基板上にガスが供給されてマイクロ波プラズマ59が発生するようになっている。なお、基板温度は光高温計でモニターしている。
【0026】
次に、n型ダイヤモンド半導体結晶の成長条件の一例を図7に示す。
図7を参照すると、本実施形態ではアルカン、アルケン等の揮発性炭化水素/イオウ化合物/水素の混合ガスを原料ガスとして使用する。
炭化水素はダイヤモンドの構成元素である炭素のソースとして、イオウ化合物はドナー原子のソースとして、また水素はキャリアガスとして使用している。
【0027】
イオウ化合物としては、例えば硫化水素(H2 S)、二硫化炭素(CS2 )等の無機イオウ化合物、低級アルキルメルカプタン等の有機イオウ化合物が挙げられるが、硫化水素が最も好ましい。
したがって、混合ガスとしては、メタン/硫化水素/水素を使用するのが好ましい。
【0028】
混合ガス中の揮発性炭化水素の濃度は0.1%〜5%、好ましくは0.5%〜3.0%で使用するのがよい。
混合ガス中のイオウ化合物の濃度は1ppm〜2000ppm、好ましくは5ppm〜200ppmで使用するのがよい。
【0029】
本実施形態ではメタン濃度1%、硫化水素10〜100ppmである。硫化水素の濃度が増加するとキャリア濃度が増加するが、この範囲では移動度は硫化水素の添加量が50ppmで最大となるところから50ppmが最も好ましい。
【0030】
全ガス流量は装置の規模、例えば反応管部の体積、供給ガス流量及び排気量等によるが、本実施形態では200ml/minである。
ガス流量は各ガス種に対応したマスフローコントローラで制御するが、硫化水素の添加量は、例えば100ppm硫化水素/水素の混合ガスボンベを用い、キャリア水素で希釈してマスフローコントローラで流量制御して所定の添加量の割合に制御している。
【0031】
本実施形態では100ppm硫化水素/水素の混合ガスボンベを使用する。硫化水素濃度を50ppmに設定しているので、全流量が200ml/minの場合、キャリア水素ガスを100ml/minとして100ppm硫化水素/水素の混合ガスボンベから100ml/minを流すと全体で硫化水素濃度が50ppmに設定できる。
【0032】
マイクロ波プラズマCVDでは気圧がだいたい30〜60Torr内であり、本実施形態では40Torrとした。マイクロ波放電では比較的高い圧力でグロー放電を維持する。
ダイヤモンドを析出する基板の温度は700℃〜1100℃とするが、本実施形態では830℃である。
また絶縁体ダイヤモンド基板の(100)面にダイヤモンド半導体層をホモエピタキシャル成長させる。
【0033】
次に、p型ダイヤモンド半導体結晶の成長条件の一例を図8に示す。
図8を参照して、本実施形態では混合ガスとしてCH4 /B2 H6 /H2 を使用するのが好ましい。ホウ素化合物のジボラン(B2 H6 )はアクセプター原子のソースとして使用している。
混合ガス中のCH4 は1.0%、B2 H6 は0.1〜100ppm、B/C比は20〜20000ppmである。
【0034】
本実施形態では100ppmジボラン(B2 H6 )/水素の混合ガスボンベを使用し、反応管に導入するジボラン濃度を50ppmに設定する。
全ガス流量は200〜500ml/minであるが、本実施形態ではn型ダイヤモンド半導体のプロセスと連続させるため、全ガス流量を200ml/minにしている。
【0035】
成長圧力は40〜50Torrであるが、n型ダイヤモンド半導体のプロセスと連続させるため同じ圧力の40Torrに設定する。
基板温度は700℃〜950℃であるが、n型ダイヤモンド半導体のプロセスと連続させるため同じ温度の830℃である。
【0036】
次に、図3(b)に示した構造の紫外線発光デバイスの製造方法について説明する。
先ず、基板ホルダーに表面を洗浄処理した(100)絶縁体ダイヤモンド基板を設置して、ガス供給ラインから水素パージを数回繰り返し真空容器内の窒素や酸素を除去後、基板ホルダーを加熱しつつ基板表面温度が830℃となるように制御するとともに40Torrに圧力制御する。なお、基板表面温度は例えば光高温計で測定する。
【0037】
次に、40Torrの圧力制御の下にマイクロ波放電させるとともに、ガス供給ラインでパージ用水素ガスと混合ガスとを切り換えて、反応管にメタン1%/ジボラン50ppm/水素の混合ガス200ml/minを導入すると、基板上方にプラズマが発生し、このプラズマ流が絶縁体ダイヤモンド基板に供給され、p型ダイヤモンド半導体結晶層がエピタキシャル成長する。
【0038】
所定膜厚になったらガス供給ラインを切り換えて、反応管にメタン1%/硫化水素50ppm/水素の混合ガス200ml/minを導入し、発生したプラズマ流が、成長したp型ダイヤモンド半導体層上に供給され、n型ダイヤモンド半導体層がエピタキシャル成長する。
【0039】
所定膜厚になったら、ガス供給ラインを水素パージに切り換えるとともに、マイクロ波放電を停止し、基板加熱を停止又は冷却する。
最後に室温に戻ったら、常圧復帰した反応管の基板ホルダーから、絶縁体ダイヤモンド基板上にp型ダイヤモンド半導体結晶層とn型ダイヤモンド半導体結晶層とが積層した紫外線発光デバイスを取り出し、電極を蒸着する。
【0040】
このようにして製造した紫外線発光デバイスでは、高品質のp型ダイヤモンド半導体と最適なドナーとなるイオウをドープした高品質のn型ダイヤモンド半導体とでpn接合を形成しているので、良質なpn接合デバイスができ、順電流を流すとpn接合界面から紫外線が発光する。
したがって、pn接合界面から紫外線が発光する非常に良好な紫外線発光デバイスを作製することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の紫外線発光デバイスでは、良質かつ急峻なpn接合を有し、順方向電圧の印加によりpn接合から紫外線が発光するという効果を有する。
また、この発明の紫外線発光デバイス製造方法では、良質かつ急峻なpn接合を有する紫外線発光デバイスの製造ができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るイオウドープによるn型ダイヤモンド半導体のカソードルミネッセンスのスペクトルを示す図である。温度は112K、試料はイオウドープ(100)ダイヤモンド、ホール移動度が580cm2 V−1s−1のものである。なお、励起エネルギーは25kVである。
【図2】この発明に係るイオウドープによるn型ダイヤモンド半導体のフォトルミネッセンスのスペクトルを示す図であり、(a)は硫化水素50ppm添加、(b)は硫化水素100ppm添加したn型ダイヤモンド半導体のスペクトルを示す。なお、温度は77K、励起レーザは211.3nmである。
【図3】この発明に係るpn接合を形成した紫外線発光デバイスの概略断面図であり、(a)はp型ダイヤモンド半導体結晶上にn型ダイヤモンド半導体結晶層を成長させて形成した紫外線発光デバイス、(b)は絶縁体ダイヤモンド基板上にp型ダイヤモンド半導体結晶層とn型ダイヤモンド半導体結晶層とを積層させて形成した紫外線発光デバイス、(c)は(b)と逆導電型に形成した紫外線発光デバイスを示す図である。
【図4】図3(b)で示した紫外線発光デバイスにおける不純物の深さ方向分析結果を示す図である。
【図5】この発明に係るダイヤモンド半導体pn接合に順方向に電流を流したときの発光スペクトルを示す図である。
【図6】本実施形態で使用したマイクロ波プラズマCVD装置の概略構成図である。
【図7】本発明に係るn型ダイヤモンド半導体結晶の成長条件の一例を示す図である。
【図8】本発明に係るp型ダイヤモンド半導体結晶の成長条件の一例を示す図である。
【符号の説明】
2 p型ダイヤモンド半導体結晶
4,7 n型ダイヤモンド半導体結晶層
6,8,12 pn接合
5 p型ダイヤモンド半導体結晶層
10,20,30 紫外線発光デバイス
11,13,21,23,31,33 電極
40 マイクロ波プラズマCVD装置
41 マイクロ波発生装置
45 チューナー
47 反応管
49 ガス供給ライン
51 光学窓
53 基板ホルダー
55 絶縁体ダイヤモンド基板
57 温度制御システム
59 マイクロ波プラズマ
【発明の属する技術分野】
この発明は紫外線の発光、紫外線の照射及び紫外線による消去等に利用し、特にダイヤモンドのpn接合により、紫外線を発光する紫外線発光デバイス及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンド半導体は5.5eVという広いバンドギャップを持つ極めて特殊な半導体結晶であり、このバンドギャップが広いことから、シリコンデバイスにみられるような熱による半導体特性の変化が少ないため、かなりの高温で動作するデバイス作製が可能である。
【0003】
p型ダイヤモンド半導体に関しては非常に高品質なダイヤモンド半導体薄膜が得られている。その代表的な特性である正孔移動度は1500cm2 V−1s−1程度のものが再現性よく得られており、高速、大電流デバイスの作製に十分なものである。
【0004】
これに対してn型ダイヤモンド半導体に関しては、従来、適当なドナー原子が見いだされていないことから良質のn型のダイヤモンド半導体を得るのが困難であり、したがって、その応用に限界があり、特にpn接合を用いた実用デバイスは現在に至るまでまで作製できなかった。
【0005】
最近、このダイヤモンド半導体の応用に関する最大の解決課題となっていたn型ダイヤモンド半導体の合成が本発明者らにより提案された(特願平11−124682号)。
この提案では、マイクロ波プラズマCVDにおいてイオウ化合物、代表的には硫化水素を添加することによってダイヤモンド半導体結晶中にイオウ原子をドナーとして導入すことにより、良質なn型ダイヤモンド半導体が得られている。
その代表的な特性である電子移動度は約600cm2 V−1s−1であり、活性化エネルギー(不純物レベル)は0.38eV程度である。現在のところp型ダイヤモンド半導体のものには及ばないが、それでも十分にデバイスに適応することが期待できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、未だ良好なpn接合を形成したダイヤモンド半導体デバイスは得られておらず、またダイヤモンド半導体のpn接合を利用した半導体発光デバイスもない。
一方、半導体発光デバイスとしては紫外から赤外域までの広い波長範囲に渡って発光ダイオード(以下、「LED」と記す)、半導体レーザ(以下、「LD」と記す)を製作する努力が続けられているが、紫外線を発光する半導体発光デバイスは未だない。
【0007】
そこで、この発明は半導体のpn接合から紫外線が発光可能な紫外線発光デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の紫外線発光デバイスは、半導体pn接合に順方向電圧を印加することにより発光する発光デバイスにおいて、ダイヤモンド(100)基板上に、0.38eVのドナーレベルを有するイオウドープn型ダイヤモンド半導体結晶とp型ダイヤモンド半導体結晶とからなるpn接合を備えており、上記n型ダイヤモンド半導体結晶が、揮発性炭化水素とイオウ化合物と水素とから成る混合ガスを原料ガスとしたマイクロ波プラズマCVDによりエピタキシャル成長して形成されていて、紫外線を発光する。p型ダイヤモンド半導体結晶はホウ素をアクセプター原子としてドープしたp型ダイヤモンド半導体結晶であっても良い。
【0009】
p型ダイヤモンド半導体結晶はホウ素をドープした高圧合成ダイヤモンドであっても良く、また、天然のIIb型ダイヤモンドであってもよい。
ダイヤモンド(100)基板上に、揮発性炭化水素とイオウ化合物と水素とから成る混合ガスを原料ガスとしたマイクロ波プラズマCVDによりエピタキシャル成長して形成した0.38eVのドナーレベルを有するイオウドープn型ダイヤモンド半導体結晶とp型ダイヤモンド半導体結晶は、絶縁体のダイヤモンド(100)基板面に積層した構造を有していても良い。また、ドナー原子濃度は、1013/cm3 〜1021/cm3 の範囲であることが好ましい。
【0010】
本発明の紫外線発光デバイスは、良質なpn接合を有し、順方向電圧の印加により紫外線が発光する。
【0011】
本発明の紫外線発光デバイスの製造方法は、第1工程としてメタンとジボランと水素との混合ガスを原料ガスとする、圧力が30〜60Torr且つ基板温度が700℃〜1100℃のマイクロ波プラズマCVD法により、絶縁体ダイヤモンド(100)基板面にp型ダイヤモンド半導体結晶層を形成し、第2工程としてメタンと硫化水素と水素との混合ガスを原料ガスとする、圧力が30〜60Torr且つ基板温度が700℃〜1100℃のマイクロ波プラズマCVD法により、ドナー原子がイオウであるn型ダイヤモンド半導体結晶層を上記p型ダイヤモンド半導体結晶層上に形成することを特徴とする。
前記第1工程において、ジボランのホウ素原子数とメタンの炭素原子数との比は20〜20000ppmの範囲でマイクロ波プラズマCVDを行うことが好ましい。
また、第2工程において、硫化水素のイオウ原子数とメタンの炭素原子数との比は1000〜10000ppmの範囲でマイクロ波プラズマCVDを行うことが好ましい。
【0012】
本発明の紫外線発光デバイスの製造方法によれば良質なpn接合を有する紫外線発光デバイスが製造できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図8に基づきこの発明による好適な実施の形態を説明する。
ダイヤモンドのバンドギャップは5.5eV(225nm)であり、紫外線領域のエネルギー幅である。
さらに図1及び図2に示すように、ドナー原子としてイオウをドープしたn型ダイヤモンド半導体のカソードルミネッセンス及びフォトルミネッセンスから、5.22eV(237.7nm)に発光ピークを有していることが分かる。また良質のp型ダイヤモンド半導体においても同様の発光ピークを有することが分かる。
したがって紫外線発光材料としてダイヤモンド半導体が最適である。
【0014】
図3(a)〜(c)はこの発明に係るダイヤモンド半導体のpn接合を利用して紫外線を発光する紫外線発光デバイスの概略断面図である。なお、図中、矢印はpn接合からの紫外線発光を示す。
図3(a)を参照すると、この発明の紫外線発光デバイス10は、ホウ素をドープした高圧合成ダイヤモンド又は天然のIIb型ダイヤモンドから形成されたp型ダイヤモンド半導体結晶2上に、例えばプラズマCVD法によってドナー原子となるイオウをドープしたn型ダイヤモンド半導体結晶層4を成長させてpn接合6を形成したものである。
【0015】
ホウ素ドープした高圧合成ダイヤモンドは、例えば50kbar、1500℃以上の超高圧高温法により作製可能であり、また天然に産出するIIb型と呼ばれるダイヤモンド結晶はホウ素を含みp型のダイヤモンド半導体である。
【0016】
図3(b)に示す紫外線発光デバイス20は、通常の合成ダイヤモンド又は天然ダイヤモンドから形成した絶縁体ダイヤモンド基板3上に、例えばプラズマCVD法で形成されたホウ素ドープしたp型ダイヤモンド半導体結晶層5と、この上に例えばプラズマCVD法によってイオウドープしたn型ダイヤモンド半導体結晶層7を成長させて、pn接合8を形成したものである。
図3(c)に示す紫外線発光デバイス30は図3(b)に示した紫外線発光デバイス20の導電型を逆にして形成されたものである。
【0017】
p型ダイヤモンド半導体結晶層5は厚さが1μm程度であるが、1nm程度以上であればよい。またドープされたホウ素濃度は1013cm−3以上であればよく、上限は1021cm−3程度である。
ホウ素ドープした高圧合成ダイヤモンド又は天然のIIb型ダイヤモンドで形成されたp型ダイヤモンド半導体結晶では、厚さが500μm程度であるが、形成可能な厚さでもよい。また、ホウ素濃度はp型ダイヤモンド半導体を呈すればよく、1013cm−3以上であればよい。
【0018】
また、n型ダイヤモンド半導体結晶層4,7は厚さが1μm程度であるが、1nm程度以上であればよい。またドナーとしてドープされたイオウ濃度は1013cm−3以上であり、上限は1021cm−3程度である。
【0019】
図3(a)〜(c)中、11,13,21,23,31,33は電極を示す。これらの電極はダイヤモンド上にチタン(Ti)を蒸着し、そのチタンの酸化防止のため、さらにその上に金(Au)を蒸着し電極としたものである。
なお、図3(b)、(c)の電極23,33は絶縁体ダイヤモンド基板の裏面側(露出側)に形成されていてもよい。
【0020】
次に、この発明の紫外線発光デバイスの特性について説明する。
図4は図3(b)で示したダイヤモンド半導体デバイスにおける不純物の深さ方向の分析結果を示す図である。
紫外線発光デバイス20を二次イオン質量分析法(以下、「SIMS」と称する。)で分析し、その深さ方向プロファイルは、第一層の表面からイオウドープしたn型ダイヤモンド半導体結晶層7と、第二層のホウ素ドープしたp型ダイヤモンド半導体結晶層5と、図中矢印で示した範囲の絶縁体ダイヤモンド基板3とが図4に示されている。なお、図4中、a、bで示したプロファイルはバックグラウンドである。
【0021】
ダイヤモンドの場合、その結晶中を異種原子、例えばホウ素(B)、イオウ(S)などが極めて拡散しにくいという特徴を有しており、これがpn接合の形成には有利に働き、図4に示すように、界面の不純物濃度の変化が極めて急峻である。すなわち、p型ダイヤモンド半導体結晶層とn型ダイヤモンド半導体結晶層とが原子オーダーで切り替わってpn接合が形成されている。
したがって本発明の紫外線発光デバイスで形成されたpn接合は、非常に良質かつ原子オーダーで急峻である。
【0022】
図5はこの発明に係るダイヤモンド半導体pn接合に順方向に電流を流したときの発光スペクトルを示す図である。
室温で紫外線領域の237nm(5.23eV)に強い発光を示し、同時に可視領域にもブロードな発光が生じているが、その強度は237nmのピークよりかなり弱い。
したがって、ダイヤモンド半導体のpn接合界面から紫外線が発光する。
【0023】
なお、この発明の紫外線発光デバイスは順方向には電流が流れるが、逆方向には電流が流れない良好な整流特性を有している。また400℃、500℃という高温においても良好な整流特性を有する。
【0024】
次に、この発明の紫外線発光デバイスの製造方法について説明する。
この発明の紫外線発光デバイスは気相合成法により製造可能である。気相合成法としては、原料ガスを活性化する方法に応じ、電気、熱及び光エネルギーの少なくともいずれかを利用すればよいが、本実施形態では電気エネルギー及び熱エネルギーを利用したマイクロ波プラズマCVD法による例を示す。なお、イオウドープn型ダイヤモンド半導体は、本発明者らによる特願平11−124682号に開示した製造方法により製造する。
【0025】
図6はこの実施形態で使用したマイクロ波プラズマCVD装置の概略構成図である。
図6に示すように、マイクロ波プラズマCVD装置40は、例えば2.45GHzのマイクロ波発生装置41と、アイソレータ及びパワーモニター43と、チューナー45とを有し、マイクロ波が照射される反応管47と、この反応管47を真空排気する真空ポンプ(図示しない)と、反応管47に原料ガスである混合ガス又はパージ用ガスを切り換えて供給するガス供給ライン49と、複数の光学窓51,51と、反応管内に設けられた基板ホルダー53と、この基板ホルダー53上に設置された絶縁体ダイヤモンド基板55を加熱又は冷却する温度制御システム57とを備え、基板上にガスが供給されてマイクロ波プラズマ59が発生するようになっている。なお、基板温度は光高温計でモニターしている。
【0026】
次に、n型ダイヤモンド半導体結晶の成長条件の一例を図7に示す。
図7を参照すると、本実施形態ではアルカン、アルケン等の揮発性炭化水素/イオウ化合物/水素の混合ガスを原料ガスとして使用する。
炭化水素はダイヤモンドの構成元素である炭素のソースとして、イオウ化合物はドナー原子のソースとして、また水素はキャリアガスとして使用している。
【0027】
イオウ化合物としては、例えば硫化水素(H2 S)、二硫化炭素(CS2 )等の無機イオウ化合物、低級アルキルメルカプタン等の有機イオウ化合物が挙げられるが、硫化水素が最も好ましい。
したがって、混合ガスとしては、メタン/硫化水素/水素を使用するのが好ましい。
【0028】
混合ガス中の揮発性炭化水素の濃度は0.1%〜5%、好ましくは0.5%〜3.0%で使用するのがよい。
混合ガス中のイオウ化合物の濃度は1ppm〜2000ppm、好ましくは5ppm〜200ppmで使用するのがよい。
【0029】
本実施形態ではメタン濃度1%、硫化水素10〜100ppmである。硫化水素の濃度が増加するとキャリア濃度が増加するが、この範囲では移動度は硫化水素の添加量が50ppmで最大となるところから50ppmが最も好ましい。
【0030】
全ガス流量は装置の規模、例えば反応管部の体積、供給ガス流量及び排気量等によるが、本実施形態では200ml/minである。
ガス流量は各ガス種に対応したマスフローコントローラで制御するが、硫化水素の添加量は、例えば100ppm硫化水素/水素の混合ガスボンベを用い、キャリア水素で希釈してマスフローコントローラで流量制御して所定の添加量の割合に制御している。
【0031】
本実施形態では100ppm硫化水素/水素の混合ガスボンベを使用する。硫化水素濃度を50ppmに設定しているので、全流量が200ml/minの場合、キャリア水素ガスを100ml/minとして100ppm硫化水素/水素の混合ガスボンベから100ml/minを流すと全体で硫化水素濃度が50ppmに設定できる。
【0032】
マイクロ波プラズマCVDでは気圧がだいたい30〜60Torr内であり、本実施形態では40Torrとした。マイクロ波放電では比較的高い圧力でグロー放電を維持する。
ダイヤモンドを析出する基板の温度は700℃〜1100℃とするが、本実施形態では830℃である。
また絶縁体ダイヤモンド基板の(100)面にダイヤモンド半導体層をホモエピタキシャル成長させる。
【0033】
次に、p型ダイヤモンド半導体結晶の成長条件の一例を図8に示す。
図8を参照して、本実施形態では混合ガスとしてCH4 /B2 H6 /H2 を使用するのが好ましい。ホウ素化合物のジボラン(B2 H6 )はアクセプター原子のソースとして使用している。
混合ガス中のCH4 は1.0%、B2 H6 は0.1〜100ppm、B/C比は20〜20000ppmである。
【0034】
本実施形態では100ppmジボラン(B2 H6 )/水素の混合ガスボンベを使用し、反応管に導入するジボラン濃度を50ppmに設定する。
全ガス流量は200〜500ml/minであるが、本実施形態ではn型ダイヤモンド半導体のプロセスと連続させるため、全ガス流量を200ml/minにしている。
【0035】
成長圧力は40〜50Torrであるが、n型ダイヤモンド半導体のプロセスと連続させるため同じ圧力の40Torrに設定する。
基板温度は700℃〜950℃であるが、n型ダイヤモンド半導体のプロセスと連続させるため同じ温度の830℃である。
【0036】
次に、図3(b)に示した構造の紫外線発光デバイスの製造方法について説明する。
先ず、基板ホルダーに表面を洗浄処理した(100)絶縁体ダイヤモンド基板を設置して、ガス供給ラインから水素パージを数回繰り返し真空容器内の窒素や酸素を除去後、基板ホルダーを加熱しつつ基板表面温度が830℃となるように制御するとともに40Torrに圧力制御する。なお、基板表面温度は例えば光高温計で測定する。
【0037】
次に、40Torrの圧力制御の下にマイクロ波放電させるとともに、ガス供給ラインでパージ用水素ガスと混合ガスとを切り換えて、反応管にメタン1%/ジボラン50ppm/水素の混合ガス200ml/minを導入すると、基板上方にプラズマが発生し、このプラズマ流が絶縁体ダイヤモンド基板に供給され、p型ダイヤモンド半導体結晶層がエピタキシャル成長する。
【0038】
所定膜厚になったらガス供給ラインを切り換えて、反応管にメタン1%/硫化水素50ppm/水素の混合ガス200ml/minを導入し、発生したプラズマ流が、成長したp型ダイヤモンド半導体層上に供給され、n型ダイヤモンド半導体層がエピタキシャル成長する。
【0039】
所定膜厚になったら、ガス供給ラインを水素パージに切り換えるとともに、マイクロ波放電を停止し、基板加熱を停止又は冷却する。
最後に室温に戻ったら、常圧復帰した反応管の基板ホルダーから、絶縁体ダイヤモンド基板上にp型ダイヤモンド半導体結晶層とn型ダイヤモンド半導体結晶層とが積層した紫外線発光デバイスを取り出し、電極を蒸着する。
【0040】
このようにして製造した紫外線発光デバイスでは、高品質のp型ダイヤモンド半導体と最適なドナーとなるイオウをドープした高品質のn型ダイヤモンド半導体とでpn接合を形成しているので、良質なpn接合デバイスができ、順電流を流すとpn接合界面から紫外線が発光する。
したがって、pn接合界面から紫外線が発光する非常に良好な紫外線発光デバイスを作製することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の紫外線発光デバイスでは、良質かつ急峻なpn接合を有し、順方向電圧の印加によりpn接合から紫外線が発光するという効果を有する。
また、この発明の紫外線発光デバイス製造方法では、良質かつ急峻なpn接合を有する紫外線発光デバイスの製造ができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るイオウドープによるn型ダイヤモンド半導体のカソードルミネッセンスのスペクトルを示す図である。温度は112K、試料はイオウドープ(100)ダイヤモンド、ホール移動度が580cm2 V−1s−1のものである。なお、励起エネルギーは25kVである。
【図2】この発明に係るイオウドープによるn型ダイヤモンド半導体のフォトルミネッセンスのスペクトルを示す図であり、(a)は硫化水素50ppm添加、(b)は硫化水素100ppm添加したn型ダイヤモンド半導体のスペクトルを示す。なお、温度は77K、励起レーザは211.3nmである。
【図3】この発明に係るpn接合を形成した紫外線発光デバイスの概略断面図であり、(a)はp型ダイヤモンド半導体結晶上にn型ダイヤモンド半導体結晶層を成長させて形成した紫外線発光デバイス、(b)は絶縁体ダイヤモンド基板上にp型ダイヤモンド半導体結晶層とn型ダイヤモンド半導体結晶層とを積層させて形成した紫外線発光デバイス、(c)は(b)と逆導電型に形成した紫外線発光デバイスを示す図である。
【図4】図3(b)で示した紫外線発光デバイスにおける不純物の深さ方向分析結果を示す図である。
【図5】この発明に係るダイヤモンド半導体pn接合に順方向に電流を流したときの発光スペクトルを示す図である。
【図6】本実施形態で使用したマイクロ波プラズマCVD装置の概略構成図である。
【図7】本発明に係るn型ダイヤモンド半導体結晶の成長条件の一例を示す図である。
【図8】本発明に係るp型ダイヤモンド半導体結晶の成長条件の一例を示す図である。
【符号の説明】
2 p型ダイヤモンド半導体結晶
4,7 n型ダイヤモンド半導体結晶層
6,8,12 pn接合
5 p型ダイヤモンド半導体結晶層
10,20,30 紫外線発光デバイス
11,13,21,23,31,33 電極
40 マイクロ波プラズマCVD装置
41 マイクロ波発生装置
45 チューナー
47 反応管
49 ガス供給ライン
51 光学窓
53 基板ホルダー
55 絶縁体ダイヤモンド基板
57 温度制御システム
59 マイクロ波プラズマ
Claims (9)
- 半導体pn接合に順方向電圧を印加することにより発光する発光デバイスにおいて、
ダイヤモンド(100)基板上に、0.38eVのドナーレベルを有するイオウドープn型ダイヤモンド半導体結晶とp型ダイヤモンド半導体結晶とからなるpn接合を備えており、
上記n型ダイヤモンド半導体結晶が、揮発性炭化水素とイオウ化合物と水素とから成る混合ガスを原料ガスとしたマイクロ波プラズマCVDによりエピタキシャル成長して形成されたことを特徴とする、紫外線発光デバイス。 - 前記p型ダイヤモンド半導体結晶は、ホウ素をドープしたp型ダイヤモンド半導体結晶であることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光デバイス。
- 前記ホウ素をドープしたp型ダイヤモンド半導体結晶は、高圧合成ダイヤモンドであることを特徴とする、請求項2に記載の紫外線発光デバイス。
- 前記p型ダイヤモンド半導体結晶は、天然のIIb型ダイヤモンド結晶であることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光デバイス。
- 絶縁体のダイヤモンド(100)基板に、0.38eVのドナーレベルを有するイオウドープn型ダイヤモンド半導体結晶とp型ダイヤモンド半導体結晶とが積層され、
前記n型ダイヤモンド半導体結晶が、揮発性炭化水素とイオウ化合物と水素とから成る混合ガスを原料ガスとしたマイクロ波プラズマCVDによるエピタキシャル成長にて形成された構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発光デバイス。 - 前記0.38eVのドナーレベルを有するイオウドープn型ダイヤモンド半導体結晶のドナー原子濃度が、1013/cm3 〜1021/cm3 の範囲であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の紫外線発光デバイス。
- 第1工程としてメタンとジボランと水素との混合ガスを原料ガスとする、圧力が30〜60Torr且つ基板温度が700℃〜1100℃のマイクロ波プラズマCVD法により、絶縁体ダイヤモンド(100)基板面にp型ダイヤモンド半導体結晶層を形成し、第2工程としてメタンと硫化水素と水素との混合ガスを原料ガスとする、圧力が30〜60Torr且つ基板温度が700℃〜1100℃のマイクロ波プラズマCVD法により、ドナー原子がイオウであるn型ダイヤモンド半導体結晶層を上記p型ダイヤモンド半導体結晶層上に形成することを特徴とする、紫外線発光デバイス製造方法。
- 前記第1工程において、前記ジボランのホウ素原子数と前記メタンの炭素原子数との比が20〜20000ppmの範囲でマイクロ波プラズマCVDを行うことを特徴とする、請求項7に記載の紫外線発光デバイス製造方法。
- 前記第2工程において、前記硫化水素のイオウ原子数と前記炭化水素の炭素原子数との比が1000〜10000ppmの範囲でマイクロ波プラズマCVDを行うことを特徴とする、請求項7に記載の紫外線発光デバイス製造方法。
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