JP3590693B2 - Frp格子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、FRP(繊維強化プラスチック)格子およびその製造方法に関し、さらに詳しくは土木分野や建築分野等で好適に用いられるFRP格子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)からなる格子部材は、メッキ工場や下水処理場などの耐触性および水はけ性が要求される箇所の床材や、軽量で強度が要求される高所工事用などの通路、バルコニーなどの床材、道路の側溝や枡などの蓋体、および壁材や天井材など多目的に土木分野や建築分野における部材として用いられている。
【0003】
GFRPはこれら分野に用いられている鉄に比べ、耐触性に優れ、錆びないという特徴は有するが、鉄に比べ弾性率が小さいので、GFRPで作られた格子部材は曲げ剛性が小さかったり剪断剛性が小さく、土木や建築分野の部材として用いると種々の問題が生じる。
【0004】
たとえば、道路の側溝の蓋として用いると、重量車両が上に乗ったとき、蓋の撓み量が大きくなり、GFRP格子蓋が大きく変形し、GFRP蓋縁側が持ち上がり、周囲のコンクリートとの間に大きな隙間や段差ができ、歩行中の人が挟まれたり、躓いてしまう。
【0005】
また、壁材や天井材に用いると、これらは地震の際、建物の変形を抑え、建物の耐震性向上に寄与するものであるが、剪断剛性が小さいので、地震に弱い建物となってしまう。GFRP部材の高さを大きくしたり格子バーの幅を大きくすることで、剛性を大きくすることが可能であるが、部材を組み込むスペースが大きくなったり、開口率が小さくなって、水はけが悪くなったりする。また、透視性が悪くなるので人間に圧迫感を与える、通気性が悪くなる、重くなるという問題もある。
【0006】
また、ガラス繊維と樹脂からなるGFRPは鉄に比べ軽量、高強度ではあるが、鉄のように塑性変形せず、一気に脆性的な破壊を起す。各種床材などに使用している際、補強繊維や樹脂が薬品や紫外線で劣化すると、強度劣化が進む。したがって、望ましくない破壊状態が突然生じるおそれがある。
【0007】
さらに、GFRP格子部材は鉄格子部材に比べ軽くはなっているが、一般に土木・建築職場は重労働を伴う職場であるので、取り扱う各種部材のより一層の軽量化要求が強い。
【0008】
また、このようなGFRP格子部材の製造方法として、予め補強繊維束に樹脂を含浸した状態(以下、ウエット状態という。)で引き揃えて、成形溝が格子状に並んだ成形型に積層した後、硬化・脱型する方法が採られてきた。しかしこの方法には、積層作業時間が樹脂のポットライフに制限され、大きな格子部材が製造できないという問題や、ウエット状態での補強繊維は表面が滑りやすく、積層作業時に十分な張力を加えられず成形型の成形溝の中で蛇行するため、格子部材の強度、剛性が低下するという問題があった。
【0009】
このような問題の解決策として、補強繊維束を樹脂含浸しない状態(以下、ドライ状態という。)で成形型に積層し、次いでこの成形型に樹脂を注入して補強繊維束に含浸させ硬化する方法が考えられる。しかしこの方法でも、成形溝の底面側にある補強繊維束まで含浸するのに時間がかかり、生産効率が落ちたり、繊維束内に残っている空気が抜け切らず樹脂硬化後にボイドとなって残り、格子部材の強度、剛性が低下するという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、このような現状に着目し、耐薬品性等に優れ、強度、剛性が高く、破壊の予知が可能で安全であり、かつ、一層の軽量化が可能なFRP格子を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の課題は、樹脂のポットライフ等に影響を受けないで任意の大きさで製造でき、かつ、ボイドレスで強度、剛性の高いFRP格子の製造用成形型および製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係るFRP格子は、補強繊維を層状に配置し、樹脂と複合してなるFRP格子であって、前記補強繊維は高引張弾性率補強繊維と低引張弾性率補強繊維とを含み、かつ、少なくとも外層が高引張弾性率補強繊維を含んでいることを特徴とするものからなる。
【0015】
このようなFRP格子においては、その開口率が65〜95%の範囲にあることが好ましい。また、格子の目を形成する枠の横断面形状が逆台形状であることが好ましい。さらに、格子の目を形成する枠の横断面に段部を有する形状とすることもできる。但し、格子の横断面形状は、これらの形状に限定されず、任意の形状を採ることが可能である。
【0016】
FRP格子を構成する樹脂としては、特に限定されないが、ビニルエステル樹脂であることが好ましい。また、上記高引張弾性率補強繊維が炭素繊維であり、高引張弾性率補強繊維の引張弾性率が低引張弾性率補強繊維のそれの少なくとも3倍であることが好ましい。さらに、上記外層の厚みが、全体厚みの少なくとも20%を占めていることが好ましい。
【0017】
また、このように構成されたFRP格子の重量は15kg/m2 以下とすることが好ましく、これによって剛性や強度を確保しつつ、軽量化要求に応えることができる。FRP格子の曲げ剛性は、用途にもよるが、少なくとも0.7×106 kgf・mm2 であることが好ましく、曲げ強度としては、少なくとも40kgf/mm2 であることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係るFRP格子の成形型は、補強繊維を層状に配置し、樹脂と複合してなるFRP格子の成形型であって、格子の目を形成する型の側壁に、成形型の厚み方向に延びる溝が設けられていることを特徴とするものからなる。このような成形型を用いて成形されたFRP格子は、格子の目を形成する枠の側面に、格子の厚み方向に延びる突条を有するものとなる。
【0019】
さらに、本発明に係るFRP格子の製造方法は、成形型内に補強繊維を層状に配置し、樹脂を注入してFRP格子を製造するに際し、前記補強繊維として、高引張弾性率補強繊維と低引張弾性率補強繊維とを用い、かつ、少なくとも外層に高引張弾性率補強繊維を配置することを特徴とする方法からなる。
【0020】
また、本発明に係るFRP格子の製造方法は、上述の、格子の目を形成する型の側壁に、成形型の厚み方向に延びる溝が設けられている成形型を用い、該成形型内に補強繊維を層状に配置し、樹脂を注入してFRP格子を製造することを特徴とする方法からなる。この場合にも、高引張弾性率補強繊維と低引張弾性率補強繊維とを用い、かつ、高引張弾性率補強繊維を少なくとも外層に配置することが好ましい。
【0021】
上記FRP格子の製造方法においては、樹脂としてビニルエステル樹脂を用いることが好ましい。また、高引張弾性率補強繊維として炭素繊維を用い、低引張弾性率補強繊維としてガラス繊維を用いることが好ましい。
【0022】
また、これらFRP格子の製造方法においては、成形を減圧下で行うことが好ましい。
【0023】
上記のような本発明に係るFRP格子を用いて、各種土木・建築用部材を構成できる。本発明に係るFRP格子は、たとえば、各種床材や高所工事用などの通路材(たとえば、足場材)、道路の側溝や枡などの蓋体(溝蓋、枡蓋)、各種壁材や天井材(たとえば、表面に化粧板等が配置される壁材や天井材のコア材)などに使用できる。さらに詳しく言えば、たとえば、水関係では、下水(汚水)処理場の床板や歩廊、レジャー施設、船舶の床板、海洋構造物等、薬品関係では、石油精製、薬品等の化学プラントの構築物内の床材、レーダー周辺等電波透過性を必要とする場所の床材、階段、壁材等、建築・橋梁関係では、高層建築物の歩廊、非常階段の踏み板やバルコニーの床、フェンス(たとえば、ベランダのフェンスや、一般的な柵用フェンスや仕切り)、ドアのコア材、駐車場の床材、吊橋や桟橋の歩廊、鉄橋等の点検歩廊、クリーンルームの床材や壁材、天井材、ヘリポートの敷板等があり、その他にも、メッキ槽、タワー廻りの床板、排水・排液溝の蓋体(たとえば、マンホールの蓋、溝蓋)等がある。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1および図2は、本発明の一実施態様に係るFRP格子を示している。図1において、1はFRP格子全体を示しており、該FRP格子1は、補強繊維を2方向に、かつ、層状に配置し、樹脂と複合したものからなる。すなわち、引揃えられた多数本の補強繊維を2方向に交互に積層して格子形状となし、それらを樹脂と複合してなるものである。また、繊維体積含有率は30%程度となるように設定する。本実施態様に係るFRP格子1は、たとえば、耐触性、水はけ性、耐久性などが要求される箇所用の部材として使用される。
【0025】
このFRP格子1の各格子バーの横断面形状、つまり、格子の目を形成する枠の横断面形状は、図2に示すように、逆台形状に形成されている。そして、各格子バーは、両最外層に高引張弾性率補強繊維を含む層2a、2b、中央層に低引張弾性率補強繊維を含む層3を配置した、実質的に2種の層の3層構造に構成されている。
【0026】
最外層2a、2bに使用する補強繊維としては、マルチフィラメントからなる炭素繊維や炭化ケイ素繊維、金属繊維などの高強度・高弾性率繊維が好ましい。なかでも、炭素繊維は耐薬品性、耐水性などに優れ、軽量、高強度、高弾性率で、又、樹脂含浸性、樹脂との接着性なども良く、上記高引張弾性率補強繊維を含む層の補強繊維として最適である。但し、二種以上の補強繊維、たとえば炭素繊維とガラス繊維を含む層としてもよい。
【0027】
中央層3に使用する補強繊維としては、たとえばガラス繊維を使用できる。但し、この層においても、二種以上の補強繊維、たとえばガラス繊維と炭素繊維を含む層としてもよい。このような補強繊維の繊維束からなる層は、いずれも樹脂で複合されてなる。
【0028】
このように、本発明に係るFRP格子1は、外層に(本実施態様では最外層に)高引張弾性率補強繊維、内層(中央層)に低引張弾性率補強繊維を配してなるので、長期の使用による部材の劣化や過大な荷重がかかった時などに、繊維破断による大きな破壊を生じる前に、まず、外層と内層との界面に発生する剪断応力で層間剥離を起す。さらに荷重が増大し繊維を破断するようになると、大きな破壊に至る。
【0029】
上記層間剥離は、繊維が破断するときのような破壊モードではなく、単に部材の剛性が低下し、破損の感知は可能であるが脆性的で致命的破壊は生じないモードである。したがって、この層間剥離は、危険予知モードとしては最適なものである。
【0030】
この層間剥離を起こす応力は、2種類の補強繊維層における補強繊維の引張弾性率およびFRP部材の曲げ中心軸からの距離に左右される。
【0031】
たとえば、高引張弾性率補強繊維を有する層の厚みが全体厚みの1/3を越えると、剥離後のFRP部材の曲げ強度が初期強度の約半分となり、剥離後の部材の残存強度としては低すぎることになる。また、1/5(20%)未満の場合には、2種の引張弾性率の異なる補強繊維を有する層間に発生する剪断応力が小さく、破壊がいきなり繊維破断モードとなる可能性が高くなり、破壊予知の効果がなくなるおそれがある。したがって、上記最外層の厚みとしては、全体厚みの少なくとも1/5(20%)を占めていることが望ましく、より好ましくは1/5〜1/3の範囲が望ましい。
【0032】
また、2種類の補強繊維の引張弾性率の差が大きい程、荷重がかかったときの層間剪断応力は大きくなるが、その差が余り大きすぎると、低荷重で剥離が発生してしまい、格子部材として成立しなくなるので、高引張弾性率補強繊維は低引張弾性率補強繊維の3倍以上、より好ましくは3〜7倍の範囲の引張弾性率を有することが望ましい。
【0033】
また、本発明に係るFRP格子は、外層に内層よりも引張弾性率の高い繊維を使用するため、高剛性となり、各格子バーの幅を小さくすることが可能になり、開口率を従来のGFRP製のものに比べ10〜20%大きくすることが可能である。その結果、容易に、開口率65〜95%のFRP格子を構成できる。
【0034】
さらに、開口率を大きくとれる結果、使用する材料が少なくて済み、全容積も小さくなる。さらに、補強繊維束に炭素繊維を含む場合、炭素繊維の比重はガラス繊維の比重より小さいこともあり、部材全体の重量を大幅に軽減できる。
【0035】
使用する樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂など熱硬化性樹脂が主に用いられるが、なかでもビニルエステル樹脂は耐薬品性、耐候性などに優れているので好ましい。
【0036】
なお、このマトリックス樹脂は熱硬化性樹脂に限定する必要はなく、ナイロン樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂など熱可塑性樹脂であってもよく、また、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物であってもよい。
【0037】
このような樹脂は、予め繊維束に含浸させておき、それを引き揃えて形状を賦型してもよいし、ドライで賦型したプリフォームに後で樹脂を含浸させてもよい。また、繊維と樹脂を複合した後に、ボイドをなくすために、真空チャンバ内で脱泡することも可能である。つまり、樹脂の硬化や固化を、減圧下で行うのである。
【0038】
このように製造されたFRP格子は、軽量でありながら優れた機械的特性を有することができる。すなわち、重量が15kg/m2 以下であり、かつ、曲げ剛性が少なくとも0.7×106 kgf・mm2 であるFRP格子や、重量が15kg/m2 以下であり、かつ、曲げ強度が少なくとも40kgf/mm2 であるFRP格子を実現できる。
【0039】
図3は、別の実施態様に係るFRP格子10を示している。
本実施態様においては、互いに交又するように2方向に配置されている各格子バーの、交点間のピッチが縦横互いに異なるピッチとされている。なお、図示は省略するが、交点間のピッチは一定であってもよく、途中で変化するタイプのものであってもよい。
【0040】
また、図1、図3に示したFRP格子1、10は、補強繊維を2方向に層状に配置し、実質的に直交する方向に延びる格子バーを有する構成に形成したが、3方向以上、たとえば、さらに斜めに延びる補強繊維、格子バーを有する構成としてもよい。さらに、図2には3層構成のFRPを示したが、他の断面層状構成とすることもできる。たとえば、内層を低引張弾性率補強繊維を含む2層構成とし、両最外層に高引張弾性率補強繊維を含む層を配置することもできる。また、耐電蝕性を付与するためや、最外層高引張弾性率繊維層を保護する目的などで、表面にGFRP層などの薄い層を設けることも可能である。
【0041】
また、格子の目を形成する枠、つまり、格子バーの横断面形状については、図2に示したような逆台形状のものに限られず、台形、矩形、楕円、多角形、つづみ形等任意の形状が可能であり、さらには単純な形状の断面に限らず、複雑な特殊形状の断面とすることも可能である。
【0042】
さらに、図2に示した実施態様では、高引張弾性率補強繊維を含む補強繊維2a、2bを両最外層に配置したが、この態様に限定されるものではない。たとえば図4(A)に示すように、中央層20に対し、両外側に高引張弾性率補強繊維を含む補強繊維21a、21bを配置し、さらにその外側に別の層22a、22bを配置する構成としてもよい。
【0043】
また、(B)に示すように、図2に示した態様に比べ、一方の最外層としてのみ高引張弾性率補強繊維を含む補強繊維24を配置し、残りは全て別の補強繊維23とする構成としてもよい。同様に(C)に示すように、(A)に示した態様に比べ、一方の外層としてのみ高引張弾性率補強繊維を含む補強繊維26を配置し、その両側に別の補強繊維25、27を配置する構成としてもよい。
【0044】
さらに(D)に示すように、図2に示した態様に比べ、中央にも高引張弾性率補強繊維を含む補強繊維2cを配置し、その両側に別の補強繊維3a、3bが配置され、最外層に補強繊維2a、2bが配置される構成としてもよい。
【0045】
すなわち、本発明に係るFRP格子においては、少なくとも一層の外層が、高引張弾性率補強繊維を含む補強繊維を用いて構成されていればよい。
【0046】
さらにまた、(E)に示すように、格子断面に段差を有する構造としてもよい。図示例では、図2に示した態様に比べ、高引張弾性率補強繊維を含む補強繊維28部を大きくし、中央層3との間に段部29を形成してある。
【0047】
上記のようなFRP格子は、少なくとも2方向に延びる格子成形溝を有する成形型を用いて成形される。
たとえば、図1および図2に示したFRP格子1を成形するための成形型は、図5に示すようなものである。成形型30には、2方向(本実施態様では互いに直交する2方向)に延びる成形溝31が形成されている。各成形溝31の横断面は、図2に示した逆台形状に対応する形状に形成されている。
【0048】
このような成形型30内に、たとえば図2に示したような補強繊維2b、3、2aが、順に層状に配置され、樹脂が注入されてFRP格子が成形される。補強繊維2a、2bは高引張弾性率補強繊維を含み、かつ、それら補強繊維2a、2bが外層に配置される。成形を減圧下で行えば、効率よく脱気でき、ボイドレスのFRP格子を得ることができる。
【0049】
成形型として、図6に示すような型を用いることもできる。図6に示す成形型40においては、成形溝41の側壁41aに、つまり、格子の目を形成する型の側壁41aに、成形型40の厚み方向に延びる溝42が刻設されている。溝42は、全ての側壁に設けてもよく、一部の側壁のみに設けてもよい。溝42は、本実施態様ではV溝に形成されているが、溝42の横断面形状としては、U字状、円弧状、角形状、台形状等任意の形状が可能である。
【0050】
このように側壁41aに成形型40の厚み方向に延びる溝42を設けておくと、ドライ状態の補強繊維束が成形溝41に積層された状態の成形型40に樹脂を注入する際に、樹脂が溝42を通って成形溝41の底面41bあるいは底面近くまですぐに到達するため、補強繊維への樹脂の含浸が速くなる。また、樹脂含浸後も補強繊維内に残っている空気がこの溝42を通って抜けやすくなり、FRP格子のボイドが低減できる。
【0051】
さらに、樹脂注入後の成形型40を真空チャンバー等の中に入れ、成形を減圧下で行えば、一層ボイドレスなFRP格子を得ることができる。
【0052】
このようなFRP格子製造用成形型の溝42としては、樹脂の入りやすさ、空気の抜けやすさから、図6に示したように成形溝底面41bに対し略垂直方向に設けてあることが好ましいが、斜め方向に設けてあっても構わない。また、溝42の大きさとしては、いくらでも構わないが、幅10mm以下、深さ5mm以下とするのが好ましい。幅が10mmを超えると、積層した補強繊維が溝42に沿って曲り、溝42を塞いでしまうおそれがあるため、上記した効果が十分に得られない。また、溝42の深さが5mmを超えると、この溝42に入って硬化した樹脂の重量が増え、FRP格子として十分な軽量化効果が得られなくなるおそれがある。
【0053】
また、溝42は、成形溝41の側壁41aの底面41b部から上面まで貫通して設けてあるのが好ましいが、上記の効果が得られれば途中で切れていても構わない。さらに、溝42は、それぞれの格子部の成形溝の側壁に1本以上あればよいが、それぞれの格子の各辺の成形溝の側壁に1本以上あればより効果が大きい。ただし、このときそれぞれの格子の各辺の成形溝の側壁に5本以上の溝42を設けると、この溝に入って硬化した樹脂により、軽量化効果が得られなくなるおそれがあるので注意が必要である。
【0054】
上記のような成形型40を用いて成形したFRP格子は、たとえば図7に示すようになる。FRP格子50の各格子部の側面には、図6に示した溝42に対応して、格子の厚み方向に延びる突条51が形成されている。突条51の大きさや長さ、横断面形状は、上述した溝42のそれらに対応したものとなる。このようなFRP格子50は、軽量、高剛性、高強度特性に加え、ボイドレスの高品質なものとなる。
【0055】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
実施例1
格子状に成形溝を配置した、寸法が縦、横それぞれ1,007mm、厚みが50mm、格子間のピッチが40mmの成形型に、引き揃えられた炭素繊維の補強繊維(A)およびガラス繊維の補強繊維(B)を所定の厚みになるように2方向にA/B/Aの積層構成にて積層し、次いで積層した繊維に樹脂を注入、含浸、硬化させた。硬化後成形品を取り出し、40mmの厚みに面加工し、さらに1,007mm長×407mm幅に切り出した。格子部断面は図2に示したものである。格子の目を形成する枠の横断面の寸法は、上面幅4.5mm、下面幅2.5mm、厚みが40mmであった。
この成形品を、両端単純支持し(スパン間隔600mm)、中央集中荷重にて曲げ試験を行った。
【0056】
結果を表1に示すが、成形品の重量当たりの強度、剛性ともに従来のGFRP製の格子に比べ大幅にすぐれていた。また、破壊モードも層間破壊が先行し、安全性の高いものであった。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のFRP格子は、軽量でありながら、優れた曲げ剛性や曲げ強度等の機械的特性を有する。また、本発明のFRP格子によれば、外層に高引張弾性率補強繊維を含む層を有するので、長期の使用下で材料が劣化したとき、あるいは過大な荷重がかかったときなどに、引張弾性率の異なった2種の補強繊維の層間で剥離が発生し、繊維の破断による大きな破壊に至る前に予知が可能となり、安全上すぐれた部材を実現できる。
【0059】
また、外層に高引張弾性率の補強繊維を使用するため、部材剛性が高くなり、格子バーの幅を小さくできるので、開口率を大きくとることができ、水はけ性、透視性、通気性などが大幅に向上し、FRP格子としての性能が向上する。
【0060】
また、材料使用量が少なくなるので大幅に軽量化を促進できる。さらには、使用材料低減により材料コストが下がり、同時に作業時間も少なくなって、従来品に比べコスト的にも安いものができることになる。
【0061】
また、外層、とくに最外層を炭素繊維を有する層とすれば、耐薬品性、耐水性等の一層の向上をはかることができる。
【0062】
さらに、本発明に係る、格子の目を形成する型の側壁に成形型の厚み方向に延びる溝を有する成形型を用いれば、補強繊維をドライ状態で成形型内に積層できるので、生産効率が良く、任意の大きさのFRP格子を容易に製造できる。さらに、ボイドレスにすることができるので、一層強度、剛性の高いFRP格子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係るFRP格子の部分斜視図である。
【図2】図1のFRP格子の拡大部分横断面図である。
【図3】本発明の別の実施態様に係るFRP格子の部分斜視図である。
【図4】本発明に係るFRP格子のさらに別の実施態様に係る部分横断面図である。
【図5】図1、図2に示したFRP格子製造用の成形型の部分斜視図である。
【図6】本発明に係る別のFRP格子製造用の成形型の部分斜視図である。
【図7】図6の成形型を用いて成形したFRP格子の部分斜視図である。
【符号の説明】
1、10、50 FRP格子
2a、2b、21a、21b、24、26、28 高引張弾性率補強繊維を含む外層
3、3a、3b、20、23、25 低引張弾性率補強繊維を含む中央層(内層)
22a、22b、27 その他の外層
29 段部
30、40 成形型
31、41 成形溝
41a 側壁
41b 成形溝底面
42 溝
51 突条
Claims (19)
- 補強繊維を層状に配置し、樹脂と複合してなるFRP格子であって、前記補強繊維は高引張弾性率補強繊維と低引張弾性率補強繊維とを含み、かつ、少なくとも外層が高引張弾性率補強繊維を含んでいることを特徴とするFRP格子。
- 開口率が65〜95%の範囲にある、請求項1のFRP格子。
- 格子の目を形成する枠の横断面形状が逆台形状である、請求項1または2のFRP格子。
- 格子の目を形成する枠の横断面に段部を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載のFRP格子。
- 格子の目を形成する枠の側面に、格子の厚み方向に延びる突条を有する、請求項1ないし4のいずれかに記載のFRP格子。
- 樹脂がビニルエステル樹脂である、請求項1ないし5のいずれかに記載のFRP格子。
- 高引張弾性率補強繊維が炭素繊維であり、低引張弾性率補強繊維がガラス繊維である、請求項1ないし6のいずれかに記載のFRP格子。
- 高引張弾性率補強繊維の引張弾性率が低引張弾性率補強繊維のそれの少なくとも3倍である、請求項1ないし7のいずれかに記載のFRP格子。
- 外層の厚みが全体厚みの少なくとも20%を占めている、請求項1ないし8のいずれかに記載のFRP格子。
- 重量が15kg/m 2 以下であり、かつ、曲げ剛性が少なくとも0.7×10 6 kgf・mm 2 である、請求項1ないし9のいずれかに記載のFRP格子。
- 重量が15kg/m 2 以下であり、かつ、曲げ強度が少なくとも40kgf/mm 2 である、請求項1ないし10のいずれかに記載のFRP格子。
- 請求項1ないし11のいずれかに記載のFRP格子を有する土木・建築用部材。
- 補強繊維を層状に配置し、樹脂と複合してなるFRP格子の成形型であって、格子の目を形成する型の側壁に、成形型の厚み方向に延びる溝が設けられていることを特徴とする、FRP格子の成形型。
- 成形型内に補強繊維を層状に配置し、樹脂を注入してFRP格子を製造するに際し、前記補強繊維として、高引張弾性率補強繊維と低引張弾性率補強繊維とを用い、かつ、少なくとも外層に高引張弾性率補強繊維を配置することを特徴とする、FRP格子の製造方法。
- 請求項13の成形型内に補強繊維を層状に配置し、樹脂を注入してFRP格子を製造することを特徴とする、FRP格子の製造方法。
- 成形を減圧下で行う、請求項14または15のFRP格子の製造方法。
- 樹脂としてビニルエステル樹脂を用いる、請求項14ないし16のいずれかに記載のFRP格子の製造方法。
- 高引張弾性率補強繊維と低引張弾性率補強繊維とを用い、かつ、高引張弾性率補強繊維を少なくとも外層に配置する、請求項15ないし17のいずれかに記載のFRP格子の製造方法。
- 高引張弾性率補強繊維として炭素繊維を用い、低引張弾性率補強繊維としてガラス繊維を用いる、請求項14または18のFRP格子の製造方法。
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