JP3588997B2 - 薄膜太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

薄膜太陽電池およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンなどの四族元素を主成分とするアモルファス薄膜半導体などを光電変換層とし、単位太陽電池が基板の裏面電極を介して直列接続されてなり、光が透過できる部分を有する薄膜太陽電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は既に特開平6-342924号公報において、プラスチックフィルム基板などのように薄くて加工の容易なフィルムを基板として用いて薄膜太陽電池を形成する場合には、基板の両面に電極を形成し、基板を貫通する接続部を形成することにより単位太陽電池が直列接続され、発電面積が直列接続用の電極により縮小されない太陽電池が形成できることを開示した。
【0003】
図3は本出願人による従来の薄膜太陽電池を示し、(a)は透視平面図であり、(b)は(a)におけるCC’断面図である。フィルム状の基板1に先ず、直列用孔H1が開けられ、第一電極層2(基板のこの面を第1面とする)、および反対側面(裏面とする)に第三電極層3が形成された後、集電孔H2が開けられる。さらに第1面には光電変換層4および透明な第二電極層5が形成される。そして、裏面に第四電極層6が形成される。第三電極層3および第四電極層6全体を裏面電極層ということにする。最後に、第1面の3層を線状に除去し分離線L1とし、裏面電極層も同様に分離線L2をいれて、複数の単位太陽電池の個別化と単位太陽電池の直列接続が完成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の薄膜太陽電池を窓や天窓などの採光部に用いる場合、孔や分離部からの漏れ光では不足であるような多量の採光が求められる場合がある。
上記の薄膜太陽電池において、光入射側から入射した光の一部を基板を通して反対側に透過させるためには、不透明な部分を減らし、また透過率の高い基板を用いる必要がある。
【0005】
しかし、透過率が高い絶縁性基板を用いた場合、レーザー加工により太陽電池の個別化と直列接続化を行う際に、加工する反対側面側の層に損傷を与えてしまう。
このような場合の製造方法としては、既にレーザー光に絶縁性基板を透過しない波長のレーザーを使う製造方法が、本出願人により特開平8-56005 号公報において開示されている。この製造方法では加工する面の反対側面側の層に損傷を与えずに太陽電池は作製可能であるが、各電極層には、電極の抵抗は出力電力の損失を大きくするので抵抗の低い金属層を用いているため、透光性を保つことができない。各電極層をZnO、ITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電層を用いて、透光性を持たせることは可能であるが、透明導電層のシート抵抗や広がり抵抗は金属層より大きく太陽電池のフィルファクタ−(曲線因子)が低下してしまう。
【0006】
上述の実情に立脚し、本発明の目的は、透光性を有し、かつ発電量が透光部に当てた面積分以上には低下しない薄膜太陽電池およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、絶縁性基板の一面上に光電変換層を挟んで基板側に第一電極層、反対側に透明な第二電極層が設けられ、基板の他面(裏面とする)上に裏面電極層が設けられ、裏面電極層と第二電極層とが基板を貫通する集電孔の内壁面で接続されてなる単位太陽電池が基板を共通にして複数個形成されており、単位太陽電池の第一電極層の延長部が、隣接単位太陽電池の裏面電極層の延長部と基板を貫通する直列用孔の内壁面で接続されている薄膜太陽電池において、前記第一電極層の除去された部分および裏面電極層の除去された部分とから形成された透光窓を備えた構成とする。
【0008】
上記の透光窓を有する薄膜太陽電池の製造方法において、薄膜太陽電池の直列接続形成後に前記透光窓を形成すると良い。
【0009】
前記透光窓は、前記絶縁性基板での透過率が20%以下であるような波長のレーザー光を用いてレーザー光入射側の電極層を除去することによって形成されると良い。
前記透光窓は、前記絶縁性基板での透過率が80%以上であるような波長のレーザー光を用いて基板両面の電極層を同時に除去することによって形成されると良い。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、上記のように、基板の両面に光を殆ど透過させない第一電極層の除去された部分と裏面電極層の除去された部分とが重なった部分を、光が透過する透光窓としている。従って、基板は透光性であることになるが、一般に”透光性”が単に無色透明なガラスのような場合を意味することが多いので、誤解のないように、”透光性”を用いずに単に絶縁性の基板とした。
【0011】
本発明に用いることのできる絶縁性の基板は、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)PET(ポリエチレンテレフタレート)のような可視光が90% 以上透過する無色透明な材料のフィルムであり、また、ポリイミドフィルムは光が散乱しない(または濁っていないという意味で”透明な”と言うこともある)茶色であり、厚さ50μmでの530nmにおける光透過率は20% 以下である。他にも、アラミドフィルムでは、”透明な”黄色で同じく光透過率は90% 以上のもの、”透明な”茶色で光透過率は20%以下ものなどを挙げることができる。また、光が散乱する、例えば乳白色の樹脂フィルムを用いることも可能である。
【0012】
以下実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
実施例1
図1は本発明に係る透光窓を有する薄膜太陽電池を示し、(a)は透視平面図であり、(b)は(a)におけるAA’断面図である。基板1としては、本実施例では膜厚50μm のポリイミドフィルムを用いた。これら基板、膜厚などは、必要な透光性により決定されるものであり本実施例に限定されるものではない。先ず、基板1に直列用孔H1を形成した。その後、第一電極層2(第1面とする)におよび反対側面(裏面)に第三電極層3としてAgをスパッタにより数百nm厚で形成した。これらの電極層としては、Al層やAg層と透明電極層との多層層を用いることができる。層の形成順は、第一電極層2、第三電極層3のどちらが先でもよいが、好ましくは第一電極層2を先に形成する方が良い。
【0013】
次に、直列用孔H1から適当な距離を隔てて集電用孔H2を多数開けた。なお、この場合の集電用孔H2の形状は必ずしも円である必要はなく、広がり抵抗を小さくして太陽電池の特性を向上させるためには、面積は出来るだけ小さく、しかも周辺の長さが出来る限り長くなる形状が良い。
次に、YAGレーザーにより、透光窓のために第一電極層2の一部を長方形に除去し(除去部分W1)、および直列接続を形成するための幅の狭い分離線L3を形成した。除去部分W1の形状は長方形に限らず任意とすることができる。
【0014】
次に、光電変換層4を形成した。光電変換層4として、この実施例では、グロー放電分解により堆積される水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)系の材料を用いてn-i-p 接合を形成した。その上に第二電極層5として透明電極層を形成した。この透明電極層にはITO、ZnOなどの酸化物導電層を用いることができるが、本実施例ではスパッタによるITO層の例を示した。このとき、層形成時にマスクで覆うなどして直列用孔H1には層が形成されないようにした。
【0015】
次に裏面に金属層などからなる第四電極層6を最終的に形成する。本実施例では金属材料としてNiを用い、スパッタにより成層した。他の金属材料を用い、また他の成層方法によっても良い。
最後に、YAGレーザーにより、直列接続を作製するために第一電極層2上にに先に形成した分離線L3の内側で光電変換層4と第二電極層5を除去し、また、第一電極層2上に先に形成した除去部分W1と同じ形状に、裏面の裏面電極層(第三電極層3、第四電極層6)を除去し除去部分W2とした。除去部分W2は発電面積に無関係なので、除去部分W1より大きくてもよいが、透光部分の損失とならないように除去部分W1内に掛かからないようにすることが好ましい。
【0016】
このようにして製造された薄膜太陽電池は、第一電極層2の除去部分W1と裏面電極層の除去部分W2により、入射した(太陽)光の一部は透明電極層である第二電極層5および光電変換層4を透過して裏面側に至る。即ち除去部分W1と除去部分W2の重なり部分が透光窓である。光電変換層4を透過した光は赤みを帯びるので、白色光が必要であれば除去部分W1の光電変換層4(および第二電極層5)を同様に除去すればよい。
【0017】
このようにして作製された薄膜太陽電池は、各電極層に金属層を用いているため、ジュール損失による特性低下は見られず、太陽電池の発電有効面積の減少(除去部分W1の面積の総和に等しい)分の出力低下のみであった。また、除去部分W1の面積を変えることにより任意に透光性を変化させることができ、除去部分W1の形状を任意の模様などに形成することも可能であり、意匠性を高めることができる。
実施例2
図2は本発明に係る裏面電極の透光部分が単位太陽電池の分離線と重なる薄膜太陽電池を示し、(a)は透視平面図であり、(b)は(a)におけるBB’断面図である。
【0018】
製造方法は実施例1と同じであるが、直列接続を形成するためにYAGレーザーなどにより形成する第一電極層2の分離線L1に対向する裏面の同一位置に第三電極層3、第四電極層6に分離線L1と同じ形状の分離線L4を形成することにより、その分離線L1、L2自身を透光窓として用い、入射した光の一部を裏面側に透過させることが可能となった。
【0019】
なお、基板両面の電極の分離線L1、L2が一致したので、単位太陽電池の直列接続を形成するため、裏面電極層の延長部を隣接する直列用孔H1に延長してある。
本実施例では入射した光の一部を裏面側に透過させるために分離線L1、L2自体を用いているので、従来の方法で作製した太陽電池と同じ出力が得られ、且つ光を透過させることも可能となった。しかし、分離線L1、L2自体を透光窓として用いているため、形状を自由に変化させたり、透光窓の面積を任意に変えることは困難であるが、実施例1と組み合わせることにより、任意に透光量を変化させることが可能となる。
実施例3
実施例1、2では絶縁性の基板1としてポリイミドフィルムを用いたが、ポリイミド基板は、例えばYAGレーザーの第二高調波である530nm 付近での透過率は20%以下程度である。従って、可視光の透過は基板の透過率によって定まってしまう。
【0020】
本実施例では、透光窓の光透過量を改善するために、基板として透過率が高い材料、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)を用いた薄膜太陽電池の製造方法について説明する。PENの透過率は可視域で約80%以上と高いため、YAGレーザー(第2高調波)などにより、例えば第三電極層3および第四電極層6(裏面電極層)を加工しようとするとその反対側面側の第一電極層などに損傷を来してしまい、太陽電池特性が低下してしまう。そこで、基板の透過率が20%以下となる、YAGレーザーの第四高調波またはエキシマレーザーなどの紫外レーザーを電極層除去加工に用いることにより、反対側面側の損傷を防ぐことを可能とした。
【0021】
実施例1、2における電極層の除去部分の形成に、紫外レーザー加工を適用することにより、高い透過性の絶縁性基板が使用可能となり、同じ透光部面積当たりの透光量の多く、且つ特性低下の少ない薄膜太陽電池を作製することができた。
実施例4
実施例1では(図1参照)、第一電極層2の除去部分W1の形成と、第三電極層3および第四電極層6の除去部分W2の形成とは別工程で行って、透光窓を完成させたが、この実施例では、両除去部分W1、W2の形成を同時に行うことができる。
【0022】
先ず、絶縁性の基板1に透過率の高いPENなどのフィルムを用いて従来方法と同様に薄膜太陽電池を形成した。但し、単位太陽電池の個別化と直列接続を形成するために用いるレーザー光は実施例3で使用した紫外レーザーを用いた。
この直列接続の完成した薄膜太陽電池に透光窓を形成するために、第二電極層2側または裏面電極層(第三電極層3および第四電極層6)側のどちらか一方から、絶縁性基板1に対する透過率が80%以上と高いYAGレーザーなどにより加工する。このようにすれば、例えば、第二電極層2側から照射されたレーザー光は絶縁性基板1を透過して裏面の第三電極層3および第四電極層6も同時に除去することができる。
【0023】
本方法によれば、薄膜太陽電池は従来の製造工程に1回のレーザー加工工程を追加するだけで透光窓の形成が可能である。また、一度の加工ですむことから生産性の向上が期待でき、より透光性の高い且つ特性低下の少ない薄膜太陽電池を作製することが可能となる。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、絶縁性基板の一面上に光電変換層を挟んで基板側に第一電極層、反対側に透明な第二電極層が設けられ、基板の他面(裏面とする)上に裏面電極層が設けられ、裏面電極層と第二電極層とが基板を貫通する集電孔の内壁面で接続されてなる単位太陽電池が基板を共通にして複数個形成されており、単位太陽電池の第一電極層の延長部が、隣接単位太陽電池の裏面電極層の延長部と基板を貫通する直列用孔の内壁面で接続されている薄膜太陽電池において、前記第一電極層の除去された部分および裏面電極層の除去された部分とから形成された透光窓を備えた構成としたため、この薄膜太陽電池を入射光の一部を透過させるので、窓や天窓などの屋外光を取り入れたい場所へ設置できる。
【0025】
また、透光窓として第一電極層および第三電極層を除去した部分を用いたので、各電極層として従来通りの金属層を用いることができるので、シート抵抗の増加などはなく、特性低下を防ぐことが可能となり、従来の高効率は保持されている。
また、上記の電極層の除去にはレーザー加工を適用したので、従来の製造工程とは独立に、任意の形状の透光窓を形成することができ、光透過量の異なる薄膜太陽電池の製造は容易である。また、任意の形状の透光窓意匠性を高める。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る透光窓を有する薄膜太陽電池を示し、(a)は透視平面図であり、(b)は(a)におけるAA’断面図
【図2】本発明に係る裏面電極の透光部分が単位太陽電池の分離線と重なる薄膜太陽電池を示し、(a)は透視平面図であり、(b)は(a)におけるBB’断面図
【図3】本出願人による従来の薄膜太陽電池を示し、(a)は透視平面図であり、(b)は(a)におけるCC’断面図
【符号の説明】
1 基板
第一電極層
第三電極層
4 光電変換層
第二電極層
第四電極層
H1 直列用孔
H2 集電孔
L1 分離線
L2 分離線
L3 分離線
L4 分離線
W1 除去部分
W2 除去部分

Claims (4)

  1. 絶縁性基板の一面上に光電変換層を挟んで基板側に第一電極層、反対側に透明な第二電極層が設けられ、基板の他面(裏面とする)上に裏面電極層が設けられ、裏面電極層と第二電極層とが基板を貫通する集電孔の内壁面で接続されてなる単位太陽電池が基板を共通にして複数個形成されており、単位太陽電池の第一電極層の延長部が、隣接単位太陽電池の裏面電極層の延長部と基板を貫通する直列用孔の内壁面で接続されている薄膜太陽電池において、前記第一電極層の除去された部分および裏面電極層の除去された部分との重なりから形成された透光窓を備えたことを特徴とする薄膜太陽電池。
  2. 請求項1に記載の薄膜太陽電池の製造方法において、薄膜太陽電池の直列接続形成後に前記透光窓を形成することを特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
  3. 前記透光窓は、前記絶縁性基板での透過率が20%以下であるような波長のレーザー光を用いてレーザー光入射側の電極層を除去することによって形成されることを特徴とする請求項2に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  4. 前記透光窓は、前記絶縁性基板での透過率が80%以上であるような波長のレーザー光を用いて基板両面の電極層を同時に除去することによって形成されることを特徴とする請求項2に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
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