JP3588919B2 - 高圧ナトリウムランプ,点灯装置および照明装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は1つの外管内に例えば2本の発光管を収容し、一方の発光管が点灯中のときは他方の発光管を待機させる高圧ナトリウム等の高圧ナトリウムランプ,点灯装置および照明装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプなどの高圧蒸気放電ランプは点灯中の金属蒸気圧が1気圧以上になるため放電開始電圧が非常に高い。したがって瞬時停電など一時的に電源の供給が断たれ、その後、瞬時に電源が復帰した場合に、再始動させるためには通常発光管がある程度冷えて内部の水銀や金属の蒸気圧が低くなるまで待たなければならない。例えば高圧ナトリウムランプの場合には約1分、メタルハライドランプの場合には約10分程度の時間を要する。
【0003】
このために、これらランプを道路照明やトンネル照明等に用いた場合は不便である。
【0004】
そこで上述の瞬時再始動を実現するため10kV以上の高圧の始動パルスを発光管の一対の電極管に印加する方法もある。しかし、これでは大型で高価なパルス発生装置が必要であり、しかも、その高圧パルスで絶縁破壊を起こさない特殊なランプ口金、例えばセラミックス製のピンタイプやランプ構造、例えば両口金構造にしなければならないので、従来の広く使用されている安価な照明器具に互換性がない。
【0005】
これを改善するため、米国特許第4287454号明細書には、1つの外管内に電気的に並列に接続された2本の発光管を収納して、瞬時停電など一時的に電源の供給が断たれてから再び瞬時に復帰した場合に待機側の発光管を点灯(瞬時再始動)させる高圧ナトリウムランプが提案されている。
【0006】
しかし、こうした高圧ナトリウムランプの瞬時再始動時の全光束は安定点灯時の全光束に対する比率で約10%程度であり、前述の10kV以上の高圧の始動パルスを発光管の一対の電極間に印加する方法の約90%程度に比較して極めて少なく、非常灯光源として使用する場合には数多く設置しなければならず、却ってコストアップを招くという課題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような瞬時再始動時の全光束の低さは発光金属の蒸気圧の低さ、すなわち待機側発光管中の発光金属の蒸気圧の低さによるものである。そしてこの発光金属の蒸気圧を高めるための熱源はもう一方のそれまで点灯していた発光管である。
【0008】
したがって、この熱源である点灯中の発光管の発生熱を停電前に効果的に待機側発光管に与熱することにより、瞬時再始動時のランプの全光束をアップさせることが可能になる。
【0009】
そこで、従来より本発明者らにより2本の発光管を覆う形で外管と発光管の間に石英製の中管を配置して点灯中の発光管により待機中の発光管を高効率で与熱することを提案している。
【0010】
しかし、これらのランプの点灯試験を繰り返す過程において、主な発光金属の凝縮箇所、つまり、待機中の発光管の最冷部である発光管の軸方向端部と、点灯中の発光管の最短距離がある一定値以上離間している場合には再始動時の全光束が急激に低くなってしまうことが発見された。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、瞬時再始動時の全光束の輝度を高めることができる高圧ナトリウムランプ,点灯装置および照明装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1の発明は、ナトリウム,水銀および希ガスを放電媒体として封入した気密容器およびこの気密容器内で放電を発生させる一対の電極とをそれぞれ有し、一方が点灯中に他方が待機すると共に、その一方と他方の軸方向両端部との最短距離が10mm未満で並設されている複数の電気的に並列接続した発光管と;複数の発光管を収容する中管;複数の発光管および中管を内蔵する外管と;外管内で複数の発光管を給電自在に支持する支持構体と;外管に装着されて支持構体に給電する受電部と;を具備していることを特徴とする。
【0013】
本請求項によれば、1つの外管内に収容されている例えば2本の発光管を、その一方と隣り合う他方の軸方向端部との最短距離が10mm未満で近接するように並設しているので、外管内で一方の発光管が点灯中のときは、この点灯中の発光管の発熱により、待機中の他方の発光管の最冷部を加熱することができる。
【0014】
このために、瞬時停電等で一時的に電源を喪失し、かつ瞬時に復帰したときには、待機中の発光管が瞬時点灯(再始動)し、その瞬時再始動時の全光束も例えば安定点灯時の全光束に対する比率で約20%程度に高めることができる。
【0015】
このような本発明の作用効果についての明確なメカニズムは不明であるが、次のように考えることができる。
【0016】
すなわち、発光管の管端には凝集したアマルガムがあり、そのアマルガム凝集箇所が最冷部であり、その最冷部温度によってナトリウムおよび水銀の蒸気圧が左右される。しかし、その緩衝ガスである水銀の蒸気圧によってアークの電位傾度が決まり、その電位傾度によって発生するエネルギーによりナトリウムの発光強度(その発光は原子が一定以上のエネルギーを受けた時にその電離により起こる現象である)が決まる。
【0017】
すなわち、発光管の全光束はナトリウムの蒸気圧と主に水銀蒸気圧によって決まるアークの電子傾度に依存していて、ナトリウム蒸気圧と水銀蒸気圧の2つの要因が複雑に絡み合っているのである。
【0018】
したがって、全光束は発光管端部の温度によって単純に増加するものではない。そこで本発明のように待機側発光管の管端ともう一方の発光管との最短距離(L)が10mm以上になると、その距離によって変化する放射熱による待機側発光管の管端の温度が低下して急激に光束が低下してしまうターニングポイントとなる最冷部温度になっているのではないかと考えられる。
【0019】
また、2本の発光管の外周を中管により囲むので、これら発光管を保温することができる。このために、ナトリウムの蒸気圧を高めることができるので、待機側発光管の再始動時の全光束を向上させることができる。
【0020】
請求項2の発明は、複数の発光管は、それぞれナトリウムアマルガムを含む放電媒体を封入され、アマルガムの全重量に対してナトリウム比が共に15重量%以上であることを特徴とする。
【0021】
本請求項によれば、各発光管の水銀アマルガムに対するナトリウム比が共に15重量%以上であるので、瞬時再始動時の全光束を安定点灯時の全光束に対する比率で、アマルガムナトリウム比が15重量%未満の場合の約10%程度から約20%程度に向上させることができた。
【0022】
請求項3の発明は、各発光管内には希ガスが10〜300torrで封入されており、2本の発光管の最短距離を2mm以下に設定していることを特徴とする。
【0023】
本請求項によれば、2本の発光管同士を、これらの最短距離が2mm以下になるように近接させているので、点灯中の発光管の発熱により待機中の発光管を効率的に加熱することができる。このために、ナトリウムの蒸気圧を高めることができるので、待機側発光管の瞬時再始動時の全光束を向上させることができる。
【0024】
請求項4の発明は、中管に光拡散手段を設けていることを特徴とする。
【0025】
本請求項によれば、中管に光拡散手段を設けたので、光拡散効果を奏することができる。
【0026】
請求項5の発明は、中管を石英ガラスまたは透光性セラミックスにより円筒に形成していることを特徴とする。
【0027】
本請求項によれば、中管が石英ガラス製、または透光性セラミックス製でも保温効果を有するので、請求項1の発明とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【0028】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれか一記載の高圧ナトリウムランプと;複数の発光管の各対の電極に電気的に並列に接続されて、これらに電力を安定的に給電して一方を点灯させるときには、他方を待機させる点灯回路と;を具備していることを特徴とする。
【0029】
請求項7の発明は、請求項1ないし5のいずれか一記載の高圧ナトリウムランプと;高圧ナトリウムランプを収容する器具本体と;を具備していることを特徴とする。
【0030】
したがって、請求項6の点灯装置と、請求項7の照明装置は、共に請求項1ないし5のいずれか一記載の高圧ナトリウムランプを有するので、これらランプとほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。なお、図1〜図7中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0032】
図1は本発明の第1の実施形態に係る高圧ナトリウムランプの正面図、図2はその側面図、これらの図において、高圧ナトリウムランプ1は硬質ガラス製で一端に口金2を設けた例えばT形の外管3内に、2本の発光管4,5を収容している。外管3内は例えば1/10000Torr程度の高真空に保たれる。口金2は、シェル2aとアイレット端子2bを有するねじ込み形口金である。
【0033】
発光管4,5は、図3に示すように多結晶アルミナまたは単結晶アルミナなどの透光性セラミックチューブからなる気密容器であるバルブのチューブ本体aと、その軸方向両端部bとを一体的に形成してセミクローズド形状に形成している。また、両端部bの貫通孔cに、ニオビウム(Nb)またはこれとジルコニウム(Zr)との合金等からなる各電気導入体6,7の端部を気密に挿入して封着剤dにより封着し、これら各電気導入体6,7の内端部に主電極8,8をそれぞれ固着して電気的に接続している。
【0034】
各発光管4,5には、適量のナトリウムと水銀(Hg)とキセノンガス(Xe)等の希ガスとを封入して、バルブの軸方向一端部にはHgアマルガムが溜められて最冷部となるアマルガム溜を形成するようになっている。
【0035】
そして、図1,2に示すように2本の発光管4,5同士は平行な2平面内でそれぞれX状に交差するように並設されると共に、一方の発光管、例えば4と、他方の発光管5の軸方向両端部同士の最短距離Lが10mm未満で近接するように、図中上下一対の絶縁固定バンド9a,9bにより固定されている。
【0036】
これらの各発光管4,5の各電気導入体6,7の外面には、図1に示すようにニオビウムやタンタルなどの耐熱性金属からなるコネクタ10a,10bをスポット溶接等により電気的かつ機械的に接続している。
【0037】
各コネクタ10a,10bは図1中左右一対のサポートワイヤ11a,11bに、スポット溶接等により電気的かつ機械的に接続されている。これにより各コネクタ10a,10bを介して各サポートワイヤ11a,11bに、各発光管4,5の各電気導入体6,7を電気的に接続すると共に、各発光管4,5を各サポートワイヤ11a,11bにより機械的に支持させている。
【0038】
サポートワイヤ11a,11bは導電ワイヤからなり、上端部が絶縁ブリッジ12cで相互に連結されており、これら上端部は弾性板12a,12bを介して外管3のトップ部内面に弾性的に係止されている。
【0039】
サポートワイヤ11a,11bの下端部は、ステム封着支持線13a,13bに溶接されており、これらステム封着支持線13a,13bは外管3のステム14に封着されている。これらステム封着支持線13a,13bは外部導線15a,15bにより口金2のシェル2aおよびアイレット端子2bに接続されている。
【0040】
そして、各発光管4,5の外面には、軸方向に沿って始動補助のための近接導体16をそれぞれ設けている。これら近接導体16は例えばクランク状に折曲されてその一部を各発光管4,5の外面に添設し、それぞれ上下両端部をサポートワイヤ11a,11bに溶接している。
【0041】
そして、このように並設された2本の発光管4,5のほぼ全長を、例えば透光性石英ガラスまたは透光性セラミックスにより円筒状に形成された中管17により覆っており、一方の発光管、例えば4の点灯時に、その発熱により、待機中の発光管5のアマルガム溜近傍の最冷部となる軸方向端部を効率的に予熱させると共に、その保温性を高めるようになっている。
【0042】
したがって、これら発光管4,5の最冷部となる端部を少なくとも覆うように中管17を構成してもよい。中管17は図1中、上下一対の固定バンド9a,9bにより一対のサポートワイヤ11a,11bに固定される。なお、図1中、18,19はバリウムゲッターである。
【0043】
図4はこのような構成の高圧ナトリウムランプ1の点灯装置20の回路図である。点灯装置20は交流電源21に接続されたチョークコイル形安定器22と公知であるから詳しい構成を省略したが、前記安定器22に関連して設けられた始動パルス発生装置23を備えている。すなわち、始動パルス発生装置23の作動により、点灯装置20の両端に始動用のパルス電圧を発生させるものである。なお、始動パルス発生装置23としては、別個にパルストランスを有し、このトランスの出力をランプに印加するようなものであっても良い。このようなものも当該技術分野では周知である。
【0044】
このような点灯装置20は、高圧ナトリウムランプ1の始動時には電源電圧にパルスを重畳して高圧ナトリウムランプ1に印加する。この場合、交流電圧の正および負にそれぞれ高圧パルスが加えられる。つまり始動パルスは半サイクル毎に交互に発生する。そして、ランプ1においては、近接導体16に負のパルスが加えられた時に、この近接導体16側にある発光管4または5が始動し易い性質があるので、例えば口金2のアイレット端子2bに正のパルスが印加された場合は、一方の近接導体16がマイナスとなり、したがってこれに接近している発光管4が始動する。
【0045】
逆に、口金2のシェル2aに正のパルスが印加された場合は、他方の近接導体16がマイナスとなり、したがってこれに接近している発光管5が始動する。
【0046】
このように、近接導体16に正のパルスが印加される確率は50%ずつであり、したがって始動時に各発光管4,5が始動する確率は50%ずつになる。この比率は、点灯回数が増えるに応じて均等化されることになり、したがって、一方の発光管4または5が偏って集中的に始動されることがなくなる。
【0047】
このため、一方の発光管4または5の使用頻度が高くなるのが防止され、一方の発光管4または5で気密性を保持できなくなったり、ナトリウムの消失が進んでランプ電圧の上昇が発生したり、早期に劣化する等の不具合がなくなり、実質的に1本の発光管を収容したランプに比べて寿命が2倍に延びることになる。
【0048】
そして、一方の発光管、例えば4の点灯時に一瞬の停電によりこれが消灯し、この停電が瞬時に復帰した時には、それまで点灯せず待機していた圧力の低い方の発光管5が瞬時に点灯(再始動)する。この場合、この他方の発光管5の最冷部のある端部は上記一方の発光管4の点灯時に予熱されており、若干内部圧力が上がっているので、瞬時再始動時の全光束も安定点灯時の全光束のほぼ20%程度に向上する。
【0049】
次の表1は次の供試ランプについて、発光管4,5間の最短距離Lを10〜0.5mmまで種々変えて瞬時再始動させたときの全光束規格値を示している。この点灯試験の結果、最短距離Lが10mm以上になると、全光束が急激に低下してしまうことが判明した。
【0050】
【表1】
【0051】
(供試ランプ)
発光管4,5の仕様
チューブa:透光性アルミナセラミックスから成り、内径φ5.5mm、肉厚0.7mm、端部焼狭長4.2mm、全長81mmのセミクローズド形状
電気導入体6,7:ニオビウム+1%ジルコニウム製
電極8:タングステン製、0.75mmのウェルズにφ0.25mmのマンドレルコイルと、φ0.1mmのフィラメントコイルからなるインナーコイルを巻き付け、さらにその外側にφ0.45mmのアウターコイルを巻き付けている。
封入金属:ナトリウム7.5wt%の水銀アマルガム20mg
封入ガス:常温で約200torrのキセノン
封着剤d:酸化アルミニウム、酸化カルシウムを主成分とし、酸化イットリウム、酸化ストロンチウムを添加したガラスソルダー
電極間距離57mm定格ランプ電力:110W
【0052】
外管3仕様
2本の発光管4,5をセラミックス製ホルダー(図1,2中9a,9b)を使用してクロス角度を固定してX状にクロスして配置し、それを覆う形で石英から成る中管17(内径φ28mm等、肉厚1.5mm)を設置している。
【0053】
また、表1中、全光束規格値は最短距離Lが0.5mmの場合の各光束を100%としたときの規格値であって、全光束規格値が同じ100%であっても、全光束の絶対値はみな同数値ではなく、中管17の直径が小さい程全光束は高い。
【0054】
さらに、表1中、Laは図5に示すように2本の発光管4,5同士間の水平方向の距離を,Lbは垂直方向の距離を、γは発光管4,5の半径をそれぞれ示している。
【0055】
したがって、最短距離Lは次の数(1)式で求めることができる。
【0056】
【数1】
L={(2r+La)2+(2r+Lb)2}1/2−2r ……(1)
【0057】
図6は2本の発光管4,5間の最短距離L(mm)と上記瞬時最始動時の全光束規格値との相対関係を、中管17の内径を種々変えた場合について示しており、最短距離Lが10mm以上になると、中管17の内径の如何に拘らず、全光束が急激に低下することを示している。
【0058】
この現象の明確なメカニズムは不明であるが、次のように考えることができる。つまり、発光管4,5の管端には凝集したアマルガムがあり、そのアマルガム凝集箇所が最冷部である。この最冷部温度によってナトリウムおよび水銀の蒸気圧が決まるが、その緩衝ガスである水銀の蒸気圧によってアークの電位傾度が決まり、その電子傾度によって発生するエネルギーでナトリウムの発光強度(その発光は原子が一定以上のエネルギーを受けた時にその電離により起こる現象である)が決まる。
【0059】
すなわち全光束はナトリウムの蒸気圧と主に水銀蒸気圧によって決まるアークの電位傾度に依存していて、ナトリウム蒸気圧と水銀蒸気圧の2つの要因が複雑に絡み合っているのである。
【0060】
したがって、全光束は各発光管4,5の端部の温度によって単純に増加するものではない。そこで上述のように待機側発光管、例えば4と、もう一方の発光管、例えば5の最短距離(L)が10mm以上になると、その距離によって変化する放射熱による待機側発光管4の管端の温度が低下して急激に光束が低下してしまうターニングポイントとなる最冷部温度になっているのではないと考えられる。
【0061】
また、表1で示す試験を中管17の内径をφ22mmからφ35mmまで変えて行ったが、ターニングポイントになる距離に大差はなく、これらの範囲の内径の中管17では待機側発光管4の管端の温度に及ぼす影響力は中管17との距離より点灯側発光管4との距離の方が強いと考えられる。
【0062】
さらに、この点灯側発光管5からの放射熱はそのチューブ温度により決まるが、実用上ランプ効率とアルミナの使用限界温度の兼ね合いからランプ電力に拘らずほぼ一定なので、上述のターニングポイントになる距離はランプ電力には関係なくほぼ一定と考えられる。
【0063】
なお、本実施形態では2本の発光管4,5を、X状にクロス配置した場合の一例について示したが、ほぼ平行に配置した場合にも当然上記光束向上効果は得られた。
【0064】
また、本実施形態では中管17として石英ガラス製のものを示したが、透光性セラミックス製でもよく、さらに、中管17に、拡散効果をもたらすために石英ガラスや透光セラミックスにブラストやふっ酸等の化学処理を施して半透明化させたものでも当然同様の効果は得られる。
【0065】
図7は本発明の第2の実施形態の照明装置31を示しており、これは上記した実施形態の高圧ナトリウムランプ1を光源として照明器具本体32内に収容している。
【0066】
つまり、照明装置31は照明器具本体32の内面に反射面32aを有すると共に、下面または一側面が開口されたハウジング構造をなしている。開口下面には前面ガラス33を設けてもよい。この照明器具本体32の側壁にはソケット34が取り付けられており、このソケット34内には高圧ナトリウムランプ1の口金2がねじ込まれて照明器具本体32に取り付けられている。
【0067】
ソケット34は、照明器具本体32に取り付けられた、または器具本体32の外部に設置された図2で示す点灯装置20を介して商用電源35に接続されるようになっている。この実施形態によれば、瞬時再始動時の相対光束を向上させることができる高圧ナトリウムランプ1を具備しているので、照明装置31としてもこれとほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
なお、上記実施形態では本発明を高圧ナトリウムランプに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばメタルハライドランプにも適用することができる。
【0069】
そして、本願第3の実施形態は上記各発光管4,5内に封入された水銀アマルガムに対するナトリウム(Na)比を15重量%以上に設定していることに特徴がある。
【0070】
図8に示すように、この実施形態によれば、水銀アマルガムに対するNa比を15重量%以上に設定することにより瞬時再始動時の相対光束(%)を安定点灯時の全光束に対して約20%程度に向上させることができる。また、この実施形態では発光管4,5内に始動ガスを10〜300torrで封入し、発光管4,5同士の最短距離Lを2mm以下に設定している。
【0071】
さらに、点灯中の発光管、例えば4からの熱伝導をできる限り少なくするために2本の発光管4または5を支持兼電気導入の役割をする電気導入体6,7の直径を2mm以下にする。2本の発光管4または5の始動性を容易にするために設けられている近接補助導体16が一端のみランプの他の金属部分に接している場合、金属に接していないもう一端の寿命中や製造工程での浮きを防止するためにその一端を発光管4または5に対して垂直に折り曲げ、その先端を中管17に接触させてもよい。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように本願の請求項1によれば、1つの外管内に収容されている例えば2本の発光管を、その一方と隣り合う他方の軸方向端部との最短距離が10mm未満で近接するように並設しているので、外管内で一方の発光管が点灯中のときは、この点灯中の発光管の発熱により、待機中の他方の発光管の最冷部を加熱することができる。
【0073】
このために、瞬時停電等で一時的に電源を喪失し、かつ瞬時に復帰したときには、待機中の発光管が瞬時点灯(再始動)し、その瞬時再始動時の全光束も例えば安定点灯時の全光束に対する比率で約20%程度に高めることができる。
【0074】
また、2本の発光管の外周を中管により囲むので、これら発光管を保温することができる。このために、ナトリウムの蒸気圧を高めることができるので、待機側発光管の再始動 時の全光束を向上させることができる。
【0075】
請求項2によれば、各発光管の水銀アマルガムに対するナトリウム比が共に15重量%以上であるので、瞬時再始動時の全光束を安定点灯時の全光束に対する比率で、アマルガムナトリウム比が15重量%未満の場合の約10%程度から約20%程度に向上させることができた。
【0076】
請求項3によれば、2本の発光管同士を、これらの最短距離が2mm以下になるように近接させているので、点灯中の発光管の発熱により待機中の発光管を効率的に加熱することができる。このために、ナトリウムの蒸気圧を高めることができるので、待機側発光管の瞬時再始動時の全光束を向上させることができる。
【0077】
請求項4によれば、中管に光拡散手段を設けたので、光拡散効果を奏することができる。
【0078】
請求項5によれば、中管が石英ガラス製、または透光性セラミックス製でも保温効果を有するので、請求項1の発明とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
請求項6の点灯装置と、請求項7の照明装置は、共に請求項1ないし5のいずれか一記載の高圧放電ランプを有するので、これらランプとほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る高圧ナトリウムランプの正面図。
【図2】図2の側面図。
【図3】図1で示す各発光管の部分縦断面図。
【図4】図1で示す高圧ナトリウムランプの点灯装置の回路図。
【図5】図1で示す2本の発光管同士間の最短距離を示す模式図。
【図6】図1で示す高圧ナトリウムランプの瞬時再始動時の相対光束を示すグラフ。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る照明装置の構成図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る高圧ナトリウムランプの瞬時再始動時の相対光束を示すグラフ。
【符号の説明】
1 高圧ナトリウムランプ
2 口金
3 外管
4,5 発光管
6,7 電気導入体
8 電極
9a,9b 固定バンド
10a,10b コネクタ
11a,11b サポートワイヤ
16 近接導体
17 中管
20 点灯装置
23 始動パルス発生装置
31 照明装置
32 照明器具本体
Claims (7)
- ナトリウム,水銀および希ガスを放電媒体として封入した気密容器およびこの気密容器内で放電を発生させる一対の電極とをそれぞれ有し、一方が点灯中に他方が待機すると共に、その一方と他方の軸方向両端部との最短距離が10mm未満で並設されている複数の電気的に並列接続した発光管と;複数の発光管を収容する中管;複数の発光管および中管を内蔵する外管と;外管内で複数の発光管を給電自在に支持する支持構体と;外管に装着されて支持構体に給電する受電部と;を具備していることを特徴とする高圧ナトリウムランプ。
- 複数の発光管は、それぞれナトリウムアマルガムを含む放電媒体が封入され、アマルガムの全重量に対してナトリウム比が共に15重量%以上であることを特徴とする請求項1記載の高圧ナトリウムランプ。
- 各発光管内には希ガスが10〜300torrで封入されており、2本の発光管の最短距離を2mm以下に設定していることを特徴とする請求項1または2記載の高圧ナトリウムランプ。
- 中管に光拡散手段を設けていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の高圧ナトリウムランプ。
- 中管を石英ガラスまたは透光性セラミックスにより円筒に形成していることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一記載の高圧ナトリウムランプ。
- 請求項1ないし5のいずれか一記載の高圧ナトリウムランプと;複数の発光管の各対の電極に電気的に並列に接続されて、これらに電力を安定的に給電して一方を点灯させるときには、他方を待機させる点灯回路と;を具備していることを特徴とする点灯装置。
- 請求項1ないし5のいずれか一記載の高圧ナトリウムランプと;高圧ナトリウムランプを収容する器具本体と;を具備していることを特徴とする照明装置。
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