JP3588642B2 - 光ファイバ母材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、長さ方向の外径変動が良好に抑えられた光ファイバ母材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、多孔質の光ファイバ母材の製造にあたっては、例えば図5に示したように、中心部材1の両端にダミーロッドなどからなる余長部2,2を設け、この余長部2,2と一体化された上記中心部材1を回転させながら、その周囲の軸方向に、トラバース(往復動)するガラス微粒子生成用のバーナ3によって、ガラス微粒子(スート)を堆積させて所定外径のガラス微粒子の堆積層4を得ている。
【0003】
上記中心部材1は、その後除去されたり、或いはそのまま光ファイバのコア部(石英ガラス材料などの場合)として用いる場合があるものの、いずれにしても、上記したように、通常は、その両端にダミーロッドなどからなる余長部2,2が設けられ、この余長部2,2が回転チャックなどで把持されるようになっている。
【0004】
そして、この余長部2,2の形成にあたっては、一般に、中心部材1の端部(接続部)とほぼ同外径のダミーロッドを用いている。このように同外径のダミーロッドを用いるのは、当該余長部2,2の接続部分において、凹凸があると、ガラス微粒子の堆積に悪影響を与えるからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、実際のガラス微粒子の堆積状況を見ると、図5に示したように、ガラス微粒子の堆積層4の両端部分には、当該堆積層4がバーナ3のトラバースによって形成されることから、外径が次第に縮径する円錐形状の終端部4a,4aが生じる。すなわち、この終端部4a,4aの生成はどうしても避けることができず、これに伴って、その外径が所定の値より小さい、外径変動領域L(一方省略)がある程度の長さで生じる。
【0006】
この外径変動領域Lが、中心部材1側に入り込まないようにするためには、余長部2,2の長さを十分長くして、余分な堆積層(後に廃棄される堆積層部分)を長く形成すればよいわけであるが、そうすると、無駄なガラス微粒子の堆積量が増大するという問題が発生する。さらにまた、後に廃棄される余長部2,2のダミーロッドとしては、一般に石英ガラス棒などが使用されることが多いため、廃棄される石英ガラス棒の増大も避けられないという問題が生じる。
【0007】
このため、理想的には、ガラス微粒子の堆積にあたって、なるべく余長部2,2側への無駄なガラス微粒子の堆積量を少なく抑えて行うことが望ましいが、そうすると、図5に示したように、外径変動領域Lの一部(L)が、中心部材1側に入り込む恐れがある。このようにして外径変動領域Lの一部が中心部材1側に入り込むと、当然この部分では、ガラス微粒子の堆積量が少なくなるため、後述するように、得られた光ファイバの特性に悪影響を及ぼすようになる。
したがって、現状では、ある程度の無駄を覚悟して、ガラス微粒子の堆積を行っているのが実情である。
【0008】
しかし、昨今、コストダウンの要請から、母材径の大型化が図られる傾向にあり、上記のような従来方法による場合、外径変動領域Lがさらに長くなり、無駄となるガラス微粒子の堆積量が益々増え、また、廃棄される石英ガラス棒の量も増え、コストダウンの達成が困難な状況にある。
また、外径が大型化してくると、ガラス微粒子の堆積層4の終端部4a,4aが不安定になり易く、亀裂が生じたり、遂には、この亀裂によって、堆積の途中で堆積層4部分が割れるというような問題も発生している。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、その特徴とする点は、バーナの火炎中で生成させれたガラス微粒子を回転する中心部材の軸方向に堆積させて多孔質の光ファイバ母材を製造するにおいて、少なくとも前記中心部材の片端に当該中心部材と同外径部分から次第に拡径する太径の余長部を形成する光ファイバ母材の製造方法にある。なお、この余長部における平均外径変化率としては、前記中心部材の端部からの傾斜角をθとしたとき、tanθ≦2.5となるようにすることが望ましく、より好ましくは、0.6≦tanθ≦2.0の範囲がよい。
【0010】
【作用】
このような太径の余長部を設けることによって、外径変動領域の短縮化を図ることができる。その結果、無駄なガラス微粒子の堆積を最小限に抑えることができ、また、これによって、外径変動領域が中心部材側に入り込むことを容易に阻止することができ、中心部材の全長にわたって、均一な外径の多孔質の光ファイバ母材を得ることがてきる。さらに、余長部の次第に拡径するテーパー面が、ガラス微粒子の堆積層部分に対して、当該堆積層部分を安定して支持する壁面となるため、亀裂の発生なども効果的に防止することができる。
【0011】
【実施例】
図1〜図2は、本発明に係る光ファイバ母材の製造方法の一実施例を示したもので、本発明方法も、基本的な構成は、上記図5の場合と同様であるが、余長部2′,2′の形成において大きく異なっている。なお、本発明では、上記図5の場合と同一の構成部分には、同一の符号を付してある。
【0012】
この余長部2′,2′の形成にあたっては、中心部材1の両端部(片端のみの場合も可)に、当該中心部材1の端部とほぼ同一の外径を有する縮径部2a′から次第に拡径して太径部2b′に至る、円錐台形状の先端を備えたダミーロッドを接続してある。
【0013】
このような太径の余長部2′,2′を設けると、図2に示したように、円錐台形状の先端のテーパー面2c′が、次第に堆積されてくるガラス微粒子の堆積層4に対して、当該堆積層4の終端部4a′(一方省略)を支える壁面として機能するため、安定した堆積が得られるようになる。この結果、母材の大型化を図っても、堆積層4の終端部4a′において亀裂などの発生は効果的に防止される。
【0014】
また、一方で、上記のようなテーパー面2c′があると、従来の中心部材1と同一径のダミーロッドを用いた場合に比較して、図2に示したように、堆積層4の終端部4a′における外側の距離が短くなるため、結果として、外径変動領域L(一方省略)の長さも短くなる。このことは、言い換えれば、外径変動領域Lが中心部材1側に入り込まないようにするにおいて、余長部2′のダミーロッド側への無駄なガラス微粒子の堆積がより少なくて済み、かつまた、より短い石英ガラス棒などのダミーロッドで対応することができることを意味する。
つまり、大幅な製造コストのコストダウンが可能となる。
【0015】
この余長部2′,2′の次第に拡径するテーパー面2c′の傾斜角、すなわち中心部材1の端部からの傾斜角をθとしたとき、その平均外径変化率は、本発明者等の種々の実験によると、tanθ≦2.5となるように設定するとよく、特に好ましくは、0.6≦tanθ≦2.0の範囲がよいことが判った。
【0016】
因みに、外径が20mmの中心部材に、太径部の外径が23mmで、その平均外径変化率がtanθ=約1.5であるダミーロッドを接続し、この両端部を把持して、外径が180mmの多孔質の光ファイバ母材を製造したところ、その外径変動領域の長さは、120mm程度で短かった。この結果、余長部でのガラス微粒子の堆積長さをそれほど長くしなくとも、外径変動領域が中心部材側に入り込むことはなく、中心部材のほぼ全長にわたって、均一な外径を有する多孔質の光ファイバ母材を得ることができた。
このことを、図示すると、図3〜図4の如くで、本例では、図3の曲線aから、得られる母材の外径変化が、中心部材の全長にわたって、ほぼ均一であることが判る。また、この光ファイバ母材から得られた光ファイバにあっても、図4の特性線a′から、カットオフ波長(λ)の長手方向の相対変化が殆どないことが判る。つまり、中心部材の端部においても、所定のガラス微粒子が堆積されているため、コア部とクラッド部の構成比が中心部材の中程の部分と変わりなく、ほぼ全長にわたって、ほぼ同一の値が得られているのである。
【0017】
しかし、上記と同サイズのダミーロッドを接続し、上記と同様の条件で、多孔質の光ファイバ母材を製造しようとした場合でも、接続部分における平均外径変化率が2.5を越えると、堆積の途中で母材の終端部に亀裂が生じて、割れてしまうことが多くなり、また、平均外径変化率が3.0を越えるようになると、堆積の途中で半数以上の母材に亀裂が生じて、割れてしまうことが見られた。
【0018】
さらに、従来の方法によって、外径が20mmの中心部材に、外径が20mmの同外径のダミーロッドを接続したもので、外径が180mmの多孔質の光ファイバ母材を製造したところ、外径変動領域が200mm以上と長くなり、余長部での長いガラス微粒子の堆積が必要とされ、外径の変動が中心部材側に及んでいることが見られた。
このことも、また、上記図3〜図4から明らかである。つまり、本例では、図3の曲線bから、得られる母材の外径変化が、中心部材の端部において、大きく変化していることが判る。また、この外径変動領域が中心部材側に入り込んだ光ファイバ母材から得られた光ファイバにあっては、図4の特性線b′から、カットオフ波長(λ)の長手方向の相対変化が極めて大きいことが判る。つまり、中心部材の端部においては、所定のガラス微粒子が堆積されていないため、コア部とクラッド部の構成比が中心部材の中程の部分と大きく変わり、両端部において、大きく特性変化が見られるのである。
【0019】
なお、上記説明では、中心部材1をコア部として利用し、ガラス微粒子の堆積された層をクラッド部とする場合であったが、本発明は、これに限定されず、ガラス微粒子の堆積終了後、中心部材1を取り去り、コラプス工程を経て、光ファイバを得る場合にも応用することが可能である。
【0020】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る光ファイバ母材の製造方法によると、太径の余長部を設けることによって、外径変動領域の短縮化を図ることができる。
その結果、無駄なガラス微粒子の堆積を最小限に抑えることができ、また、これによって、外径変動領域が中心部材側に入り込むことを容易に阻止することができ、中心部材の全長にわたって、均一な外径の多孔質の光ファイバ母材を得ることがてきる。つまり、ガラス微粒子の無駄、余長部に用いられるダミーロッドの無駄を効果的に低減させることができ、材料面からの大幅なコストダウンが可能となる。
【0021】
また、一方、余長部の次第に拡径するテーパー面が、ガラス微粒子の堆積層部分に対して、当該堆積層部分を安定して支持する壁面となるため、亀裂の発生なども効果的に防止することができる。つまり、亀裂などの発生によって、作業の無駄が低減されるため、工程面からの大幅なコストダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ファイバ母材の製造方法の一実施例を示した部分縦断側面図である。
【図2】図1の要部を示した部分拡大縦断側面図である。
【図3】本発明方法と従来方法により得られた各多孔質の光ファイバ母材の外径変化量を示したグラフである。
【図4】本発明方法と従来方法により得られた各光ファイバ母材からの光ファイバにおけるカットオフ波長(λ)の長手方向の相対変化を示したグラフである。
【図5】従来の光ファイバ母材の製造方法を示した部分縦断側面図である。
【符号の説明】
1 中心部材
2′ 余長部
3 バーナ
4 ガラス微粒子堆積層
4a′ 終端部
θ 中心部材の端部からの傾斜角

Claims (1)

  1. バーナの火炎中で生成されたガラス微粒子を回転する中心部材の軸方向に堆積させて多孔質の光ファイバ母材を製造するにおいて、少なくとも前記中心部材の片端に当該中心部材と同外径部分から次第に拡径する太径の余長部を形成すると共に、前記余長部における平均外径変化率が、前記中心部材の端部からの傾斜角をθとしたとき、0.6≦tanθ≦2.0となるようにしたことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
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