JP3587161B2 - 水質制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水質制御方法に係わり、特に炉水に接している面の放射性物質の除去を行った原子炉炉内構造物及び配管の少なくとも一方への放射性物質の付着を低減させる水質制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水冷却型原子力発電プラント(以下、LWRプラントと呼ぶ。)において、保守,点検を行う際の作業員の放射線被曝低減は安全上重要な課題である。主な放射線源は、炉内構造物や配管の表面の酸化皮膜の成長時に酸化皮膜中に原子炉水中から取り込まれたCo−60,Co−58,Mn−54などの放射性物質である(これら原子炉水中のCo−60,Co−58,Mn−54は炉内,炉外構造物の腐食溶出により原子炉水中又は給水中に持ち込まれたCo,Ni,Feといった金属イオンが原子燃料の中性子照射に放射化することで生成される)。そこで、炉内構造物や配管表面の酸化皮膜を化学的あるいは物理的に除去すること(以下、除染と言う)により、炉内構造物や配管の表面の酸化皮膜中に取り込まれた放射性物質を除去し、作業員の放射線被曝を抑制することが行われている。
【0003】
除染後に再び炉内構造物や配管の表面の酸化皮膜に取り込まれることを抑制する方法としては、除染後の運転中に原子炉水中にZnを原子炉水中濃度が5から10ppb 程度になるように注入することで、放射性物質の付着を抑制出来ることが、(社)日本原子力学会「2000年春の年会」予稿集の1090ページに報告されている。また、高温の酸化性ガスに曝露して酸化皮膜を形成して放射性物質の付着を抑制する方法が特開平09−133784号公報に、Alイオンなどを5から1000ppb 添加した200から300℃の高温水に数百時間曝露して表面に成長速度の小さい酸化皮膜を形成することで放射性物質の付着を抑制する方法が特願昭62−24195号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
除染により放射線源の放射性物質が除去されるので、除去を行った直後の保守,点検作業時においては、作業員の放射線被曝が抑制される。しかし、炉内構造物や配管表面の酸化皮膜への放射性物質の取込み速度と、酸化皮膜の成長速度は各々式1,式2の関係があることから、除染により酸化皮膜が除去されると、酸化皮膜の成長速度が大きくなり、急速に炉内構造物や配管の表面の酸化皮膜に放射性物質が取り込まれることになる。
【0005】
dA/dt=α・(dm/dt)・C …(式1)
dm/dt=β・(1/t1/2) …(式2)
A:放射能付着量,α:定数,m:酸化皮膜量,t:時間、
C:原子炉水中の放射性物質の量,β:定数
(もしt>tならば1/t 1/2<1/t 1/2であるためdm/dt<dm/dtとなることから、dA/dt<dA/dtとなる。)
この除染後の急速な放射性物質の再付着が起こると、急速に放射線源の線量率が大きくなるため、次の保守,点検作業時における除染の放射線被曝低減にあたえる効果が小さくなる。
【0006】
これに対して、再び除染を行うことが考えられるが、被曝低減量に対する費用が高くなる。
【0007】
また、(社)日本原子力学会「2000年春の年会」予稿集の1090ページにて報告されている方法では、Znの放射化により放射性物質であるZn−65が生じ新たな放射線源になること、Zn−65の生成を抑制するためにその親核種であるZn−64を取り除く操作を行うと費用が高くなること、注入したZnイオンが原子炉水浄化系のイオン交換樹脂の負荷となり樹脂の性能低下を早めその交換費用の増加につながるといった問題がある。
【0008】
特開平9−133784号公報に開示された方法は、広い領域に適用する場合の高温ガス供給設備が大きくなる問題がある。また、特開昭62−24195号公報に開示された方法は、プラント運転時には高濃度のイオンを注入できないことや、プラント運転時以外に実施する場合は、高温高圧水を維持するためのヒータ設備が大きくなるといった問題があった。
【0009】
本発明の目的は、除染を行った原子炉炉内構造物及び配管表面への放射性物質の付着を抑制する水質制御方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
課題を解決するための実施態様は、核加熱停止中に原子炉炉内構造物の炉水に接している面若しくは配管の炉水に接している面の少なくとも何れかに付着した放射性物質の除去を実施した後でその除去を実施した後の定格出力運転を行う前の原子力プラントの原子炉水に、前記原子炉炉内構造物への放射性物質の付着抑制効果及び原子炉構造物の腐食低減効果のうち少なくとも何れかの効果をもつ金属の有機化合物錯体及び前記金属の酸化物の有機化合物錯体のうち少なくとも何れかを添加した後、前記有機化合物錯体を分解する。
【0011】
これにより、放射性物質の付着抑制効果及び原子炉構造物の腐食低減効果のうち少なくとも何れかの効果をもつ金属を付着させることができ、原子炉構造物への放射性物質の再付着を抑制できる。また、金属酸化物を付着させることで、放射性物質の源である金属イオンの生成を抑制し、原子炉水中の放射性物質の量を減らすことで放射性物質の付着を抑制できる。
【0012】
課題を解決するための他の実施態様は、核加熱停止中に原子炉炉内構造物の炉水に接している面若しくは配管の炉水に接している面の少なくとも何れかに付着した放射性物質の除去を実施した後でその除去を実施した後の定格出力運転を行う前の原子力プラントの原子炉水に、原子炉構造物への放射性物質の付着抑制効果及び原子炉構造物の腐食低減効果のうち少なくとも何れかの効果をもつ金属のイオン又はコロイドのうち少なくとも何れかと、鉄の有機物錯体を注入し、前記鉄の有機化合物錯体を分解する。
【0013】
これにより、鉄の有機化合物錯体を分解することによって、鉄を析出することができ、炉水に注入した原子炉構造物への放射性物質の付着抑制効果及び原子炉構造物の腐食低減効果のうち少なくとも何れかの効果をもつ金属のイオン又はコロイドのうち少なくとも何れかが、鉄と共析させることが出来る。これにより、放射性物質の付着抑制効果及び原子炉構造物の腐食低減効果のうち少なくとも何れかの効果をもつ金属を付着させることができ、原子炉構造物への放射性物質の再付着を抑制できる。
【0014】
金属イオン有機化合物錯体の有機化合物錯体の分解は、金属イオン有機化合物錯体を添加した水を循環させながら紫外線を照射するか、あるいは不均一触媒に通水することにより実施できる。不均一触媒としてはRuやPtなどの貴金属を担持した活性炭触媒が挙げられる。
【0015】
鉄イオンの有機化合物錯体としては、シュウ酸錯体が好適である。なぜなら、シュウ酸は化学的な方法で放射性物質を除去する除染で使われていることから、シュウ酸使用後の材料の健全性が調べられていること、シュウ酸を使用して除染を行い、除染の工程にそのシュウ酸を分解する操作を炉内で実施する場合は、同じ操作を行うことからその除染工程の期間に付着操作を実施でき、付着操作に余分な時間を費やす必要がなくなるからである。
【0016】
鉄イオンのシュウ酸錯体の添加量は廃棄物発生量を少なくすることと、濃度が小さすぎるとFeの酸化物の析出が起こりにくいという観点から初期濃度が鉄の濃度で0.5ppm から100ppm とすることが望ましい。
【0017】
鉄イオンの析出は、NaCO,KOH,NaOHなどのアルカリをpHが5.5 以上とならない様に添加することにより促進できる。アルカリを入れると鉄イオンの溶解度が小さくなるためである。添加したアルカリが廃棄物となるためpHが5.5 以上とならない様に添加することで廃棄物発生量を抑制できる。
【0018】
配位子のシュウ酸といった有機化合物の分解は、酸化剤である過酸化水素を添加すると、その分解を促進することができる。
【0019】
鉄イオンのシュウ酸錯体を使って付着操作を行う場合で、特にシュウ酸を使用して除染を行い、除染の工程にそのシュウ酸を分解する操作を炉内で実施する場合は、その除染工程のシュウ酸を分解する工程で重ねて行うことが出来る。
【0020】
その実施開始時期は、シュウ酸の濃度が100ppm 以下、pHが4.0 以上になった時点が望ましい。その時期になると、除染により溶解させた放射性物質の量が十分少なくなっているからである。
【0021】
放射性物質の付着を抑制する効果のある金属又は金属酸化物として、Pt,Rh,Pd,Zr,Ti,Al,Znなどがあり、それらを単独あるいは混合して使用するのが望ましい。Pt,Rh,PdはH注入環境下で水素を分解し溶存酸素濃度を低下する効果があるので、それにより酸化皮膜の成長を抑制することで、放射性物質の付着を抑制する効果を及ぼすことが期待できる。Zr,Ti,Alは母材表面をZrO,TiO,Alなどの化合物として覆うことで、母材への酸素の拡散を抑制することにより、酸化皮膜の成長を抑制することで、放射性物質の付着を抑制する効果を及ぼすことが期待できる。Znは母材のFeあるいはCrと反応することで溶解しにくい形態の酸化皮膜を形成することにより、酸化皮膜の成長を抑制することで、放射性物質の付着を抑制する効果を及ぼすことが期待できる。
【0022】
原子炉構造物への放射性物質の付着抑制効果及び原子炉構造物の腐食低減効果のうち少なくとも何れかの効果をもつ金属としてはZnがあげられ、Znをイオンまたはコロイドの形態で原子炉水濃度が0.1ppb以上2ppb 以下となるように添加することが望ましい。原子炉水中のZn濃度が2ppb となるように注入すると、添加しない場合と比較して放射性物質の付着量を約1/2に低減できるからである。またこの濃度にすることで、注入するZnの量を減らすことが出来、Zn−65の生成を無視できるようになり、親物質のZn−64を除く操作をする必要がなくなる。また、原子炉水浄化系のイオン交換樹脂への負荷を低減できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
まず、実施の条件を見出すために発明者らが行った実験について説明する。本実験は、Feのシュウ酸有機化合物錯体の分解とそれに伴うFeの析出の条件を見出すために行った実験である。
【0024】
実験は、図9に示すように、放射性物質の付着抑制効果又は腐食低減効果のある金属又は金属酸化物を付着させる付着処理装置210を、付着処理を施す対象部位であるテフロン管2に接続部X1及びX2を介して接続し、付着処理を実施する実験である。まず、装置について説明する。テフロン管2は、循環ポンプ3,系統水のpHや導電率を測定するための水質測定装置15,系統水を所定の温度に上げたり常温まで冷却するための加熱冷却器16,系統水量調整の調整しろであるサージタンク17と直列した閉ループとなるように配管12で接続されている。本実験において系統水の所定の温度は90℃である。付着処理装置210は、配管12にバルブ6を設置し、その上流側と下流側を接続するように配管13を設置し、配管13に上流側からバルブ4a,付着処理終了後に系統水を浄化させるための水質浄化装置5及びバルブ4bを設置している。また、配管12に流量調整バルブ8を設置し、その上流側と下流側を接続するように配管14を設置し、配管14に上流側からバルブ9a,Ruを担持した活性炭触媒を使用した有機化合物分解装置10及びバルブ9bを設置し、バルブ9aと有機化合物分解装置10の間にHタンク21,H注入ポンプ22及びバルブ23からなるH注入装置20を接続している。更に配管12にFeのシュウ酸錯体溶液を入れたタンク31,薬液注入ポンプ32及びバルブ33からなるFeのシュウ酸錯体注入装置30と、pH調整剤を入れたタンク41,薬液注入ポンプ42及びバルブ43からなるpH調整剤注入装置40を接続している。本実験においては、pH調整剤として、KOHを用いる。pH調整剤としてはその他にNaOHやNaCOなどを用いることが出来る。
【0025】
加えて配管12には有機化合物分解時に発生するガスを抜くためのベント11と、系統への給水,配管12を流れる溶液の水質分析のための溶液のサンプリング及び付着処理終了後に系統の溶液の廃水に用いる給廃水バルブ7を接続している。尚、水質浄化装置5は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合して充填したイオン交換樹脂塔を使用している。
【0026】
本実験では、この装置を用いて、Feのシュウ酸錯体の系統への添加量及び系統水のpH値を変化(pH調整剤の添加量を変えることによって変化させる)させて複数回実験を行うことで、系統水のFe濃度、系統水のpH値及び系統水のシュウ酸濃度と系統水のFe析出の有無との関係を調べた。Fe析出の有無は系統水を給廃水バルブ7からサンプリングすることによって判断した。
【0027】
付着処理装置210の運転を説明する。
(1−1)給廃水バルブ7から系統に水を給水する。
(1−2)バルブ4a,4b,9a,9b,33,43,23を閉、バルブ6,バルブ8を開にして循環ポンプ3で系統水を循環させ、加熱冷却器16で系統水の温度を90℃まで昇温させる。
(1−3)系統水の温度が90℃に達したら、Feのシュウ酸錯体注入装置30において、バルブ33を開き、薬液注入ポンプ32を起動して、Feのシュウ酸錯体を系統に添加し、添加終了後薬液注入ポンプ32を停止し、バルブ33を閉じる。これにより、系統水のシュウ酸濃度を調整する。系統水のシュウ酸濃度は水質測定装置15で測定する。同様に、pH調整剤注入装置40からpH調整剤であるKOHを注入し系統水のpHを調整する。系統水のpHは水質測定装置15により測定する。
(1−4)各種の試薬が系統に均一に混合したらバルブ9a,9bを開き、流量調整バルブ8で流量を調整して、有機化合物分解装置10に系統水を通水させる。均一に混合したか否かの判断は水質測定装置15にて測定している導電率の変化から判断する。更にH注入装置20のバルブ23を開き、H注入ポンプ22を起動してHを添加してシュウ酸を分解する。
(1−5)シュウ酸の分解が終了したら、H注入ポンプ22を停止し、バルブ23を閉じる。シュウ酸分解の進行状況は、給廃水バルブ7から系統水をサンプリングして分析することにより監視する。また、系統水をサンプリングして分析によりFe析出の有無を判断する。
(1−6)加熱冷却器16で系統水を常温(30℃程度)に冷却する。
(1−7)冷却終了後、バルブ4a,4bを開き、バルブ6を閉じて、水質浄化装置5に系統水を通水して、廃水ができる不純物濃度レベルまで、系統水を浄化する。本実験ではシュウ酸濃度は検出限界以下まで浄化した。
(1−8)浄化終了後、給廃水バルブ7から系統水を廃水する。
(1−9)テフロン管2を取り外し、接水面へのFeの付着の状態を目視にて調べる。
【0028】
本実験より得られた、Feの析出の有無について、Fe濃度とpHの関係を図2に、Fe濃度とシュウ酸濃度の関係を図3に示す。図2及び図3において、
Feの析出が観測された場合を●、Feの析出が観測されなかった場合を○で示す。図2及び図3から、Feの析出はFe濃度が0.5ppm 以上、pHが5.7以上、シュウ酸濃度が100ppm 以下で生じていることが分かる。従って、付着処理装置1を運転する場合、Feのシュウ酸錯体のFe濃度が0.5ppm以上となるようにシュウ酸錯体を添加することが望ましい。また、廃棄物発生量低減と時間短縮の観点からFe濃度100ppm 以下とすることが望ましい。pHが5.7 以上とならない範囲では、KOH水溶液やNaOH水溶液などのアルカリ性水溶液を添加すれば、系統水のpHを上げることが出来るため、より速くFeを析出開始させることができる。
【0029】
なお、付着処理の終了判定は、腐食低減効果を及ぼす金属イオンあるい腐食低減効果を及ぼす金属を含むコロイドの付着量を実測することで行うこともできる。この場合は付着処理装置1あるいはそれとは別にラインを構成し、付着処理を行う部位と類似の状態の試験片を設置し、付着処理実施時に逐次それを取出し付着量を分析することで、付着量を直接判定できる。これによれば、付着量を直接判定できるため、上記運転方法において付着量が運転方法の(1−5)の時点で付着量が不足している場合は、(1−3)に戻って付着処理を行うことができる。また、付着量が所定の量を超えた場合や、特に時間的な制約がある場合は、分解途中で(1−5)以降を実施することにより、付着量の超過を防ぐことができる。
【0030】
以上の実験により、Feのシュウ酸錯体を水に添加し、シュウ酸を分解した場合にFeが析出して管の接水面に付着する事が確認された。これにより、Zn等の放射性物質の付着を抑制する効果のある金属をシュウ酸錯体として添加した場合、同様に接水面に付着する事が十分考えられる。また、Zn等の放射性物質の付着を抑制する効果のある金属を金属イオンまたは金属コロイドの状態でFeのシュウ酸錯体と水に添加し、Feのシュウ酸錯体からFeを析出させることで、金属イオンまたは金属コロイドを共沈させることができる事も十分考えられる。
【0031】
以上の実験を踏まえ、以下実施例を説明する。
(実施例1)
本実施例は、LWRプラントの一つである沸騰水型原子力プラント(以下、BWRプラントと言う)において、シュウ酸を除染剤として使用し、そのシュウ酸を分解する工程がある化学除染作業に次いで、付着処理装置1を使って化学除染後のBWRプラントの配管に付着処理を行う実施例である。付着処理装置1は、図1に示すように、付着処理装置210に、更に放射性物質付着抑制試薬を入れたタンク51,薬液注入ポンプ52及びバルブ53からなる放射性物質付着抑制試薬注入装置50を接続した装置である。この付着処理装置1を用いて、原子力プラントの炉水へ放射性物質の付着を抑制する効果のある金属のイオンとFeのシュウ酸錯体を注入する。
【0032】
まず、装置について説明する。付着処理装置1は、放射性物質付着処理装置50以外は、付着処理装置210と同じであるのでここでは説明を省略する。付着処理装置1は、図4に示すように、付着処理を施す対象部位であるBWRプラントの再循環配管108及び再循環ポンプ105に接続部X1及びX2を介して接続する。バルブ114とバルブ115により圧力容器101内に薬液が入らないように閉じ、バルブ110,111,18,19を開いて付着処理装置1と再循環配管108と再循環ポンプ105の間に循環ループを形成する。
【0033】
本実施例において系統水の所定の温度は90℃である。本実施例においては、pH調整剤として、KOHを用いる。また、本実施例においては、放射性物質付着抑制試薬として、Znを用いる。放射性物質付着抑制試薬としては、Znの他に、放射性物質の付着を抑制する効果のある金属又は金属酸化物として、Pt,Rh,Pd,Zr,Ti,Al及びそれらの酸化物などがあり、それらを単独あるいは混合して使用することができる。Znは母材のFeあるいはCrと反応することで溶解しにくい形態の酸化皮膜を形成することにより、酸化皮膜の成長を抑制することで、放射性物質の付着を抑制する効果がある。Pt,Rh,PdはH 注入環境下で水素を分解し溶存酸素濃度を低下する効果があるので、それにより酸化皮膜の成長を抑制することで、放射性物質の付着を抑制する効果がある。Zr,Ti,Alは母材表面をZrO,TiO,Alなどの化合物として覆うことで、母材への酸素の拡散を抑制することにより、酸化皮膜の成長を抑制することで、放射性物質の付着を抑制する効果がある。
【0034】
次に、実施方法について説明する。まず、化学除染を実施する。化学除染装置は、化学除染装置と除染部位の間で除染剤を循環させるポンプ,除染剤を所定の温度に加熱及び冷却する加熱冷却器,溶解させた放射性物質を取る水質浄化装置(陽イオン交換樹脂塔及び陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合した混床樹脂塔),酸化除染剤を注入する装置及び還元除染剤を注入する装置からなる。これは付着処理装置1と同様の装置で、付着処理装置とは注入する薬液が異なるものである。従って、実施例では付着処理装置1を化学除染装置として使用する。即ち、付着処理装置1の各部は以下の通り化学除染装置として流用される。ポンプ3がポンプに、加熱冷却器16が加熱冷却器に、水質浄化装置15が水質浄化装置に、放射性物質付着抑制試薬注入装置50が酸化除染剤を注入する装置に、シュウ酸錯体注入装置30及びpH調整剤注入装置40が還元除染剤を注入する装置に流用される。なお、付着処理装置1とは別に化学除染装置を設けても良い。
【0035】
化学除染では、酸化除染剤として過マンガン酸カリウムを、還元除染剤としてシュウ酸とヒドラジンを使用する。化学除染は次の手順で行う。
(2−1)加熱冷却器16で系統水の温度を所定の温度に加熱する。
(2−2)所定の濃度になるように、放射性物質付着抑制試薬注入装置50から過マンガン酸カリウムを系内に注入し、所定の時間,除染部位に暴露する。
(2−3)シュウ酸錯体注入装置30よりシュウ酸を添加することにより、過マンガン酸カリウムを、2価のマンガンイオンに還元し、酸化除染剤を分解する。
(2−4)所定の濃度になるようにpH調整剤注入装置40よりヒドラジンを系内に注入し、所定の時間,除染部位に暴露する。暴露している間に、水質浄化装置5に系統水を循環させて、溶解させた放射性物質を除去する。
(2−5)還元除染剤を除染剤分解装置で分解する。この期間に放射性物質をとる浄化装置(陽イオン交換樹脂塔)に系統水を循環させて、溶解させた放射性物質を除去する。
(2−6)還元除染剤分解終了後、水質浄化装置5に系統水を循環させて残留するイオンを除去する。
(2−7)(2−2)から(2−6)の操作を2乃至3回繰り返す。
(2−8)(2−7)において(2−2)から(2−6)をくり返し行う際の、最後の繰り返し行程の(2−5)の途中から、(2−9)を実施する。(2−5)においてシュウ酸分解により生じる炭酸によりpHが低下している可能性が有るので、(2−5)においてシュウ酸が100ppm 以下あるいは、pHが4.0 以上になった時点から(2−9)を開始する。
【0036】
これは、次の理由による。付着処理を実施すると、水中の放射性イオンも付着するので、その濃度を十分低くする必要がある。本実施例で示した化学除染方法において、還元剤を分解するとき、その水中の放射性イオンの濃度は還元剤の濃度におよそ比例して減少する。廃棄物管理施設の廃棄物受入基準においては、シュウ酸はキレート剤であるために、シュウ酸をイオン交換樹脂で除去する場合、10ppm 以下で通水しなければならないというルールが有るため、還元剤の分解は10ppm 以下になるまで分解する必要がある。分解にかかる時間は、単位時間あたりに分解処理する液量を一定とすると、
(所用時間)∝ln{(初期濃度)/(最終濃度)}
であるので、例えば、シュウ酸の初期濃度を2000ppmとすると、2000ppmから200ppm に分解する時間と200ppm から20ppm に分解する時間は同じになる。
【0037】
以上のことから、放射性物質の再付着防止の観点から、系統水中の放射能濃度が1/10以下になることが望ましく、分解処理短縮の観点から全シュウ酸を分解するのにかかる時間の1/2から1/3の時間で付着処理することが望ましい。これは系統水中のシュウ酸の濃度が100から200ppm の時期である。シュウ酸の濃度が100から200ppm のころpHは約4となる。
【0038】
(2−5)においては、既に系統水は付着処理を行うに十分な温度(所定の温度)まで昇温している。化学除染の最後の行程と付着処理の最初の行程をオーバーラップさせることにより、処理時間の時間短縮を図ることが出来る。また、更には、鉄イオンのシュウ酸錯体の注入量を低減できる。除染の場合と異なるのは、(2−5)の工程では放射性物質をとる浄化装置(陽イオン交換樹脂塔)に系統水を循環させて、溶解させた放射性物質を除去するが、付着操作を行う時は浄化装置を通水しないという点である。すなわち、所定の時期になったら、(2−9)以降の操作を行う。
(2−9)Feのシュウ酸錯体注入装置30において、バルブ33を開き、薬液注入ポンプ32を起動して、Feのシュウ酸錯体を系統に添加し、添加終了後薬液注入ポンプ32を停止し、バルブ33を閉じる。これにより、系統水のシュウ酸濃度を調整する。系統水のシュウ酸濃度は水質測定装置15で測定する。同様に、pH調整剤注入装置40からpH調整剤であるKOHを注入し系統水のpHを調整する。系統水のpHは水質測定装置15により測定する。同様に、放射性物質付着抑制試薬注入装置50から放射性物質付着抑制試薬であるZnを系統に添加する。
(2−10)各種の試薬が系統に均一に混合したらバルブ9a,9bを開き、流量調整バルブ8で流量を調整して、有機化合物分解装置10に系統水を通水させる。均一に混合したか否かの判断は水質測定装置15にて測定している導電率の変化から判断する。更にH注入装置20のバルブ23を開き、H注入ポンプ22を起動してHを添加してシュウ酸を分解する。
(2−11)シュウ酸の分解が終了したら、H注入ポンプ22を停止し、バルブ23を閉じる。シュウ酸分解の進行状況は、給廃水バルブ7から系統水をサンプリングして分析することにより監視する。また、系統水をサンプリングして分析によりFe析出の有無を判断する。
(2−12)加熱冷却器16で系統水を常温(30℃程度)に冷却する。
(2−13)冷却終了後、バルブ4a,4bを開き、バルブ6を閉じて、水質浄化装置5に系統水を通水して、廃水ができる不純物濃度レベルまで、系統水を浄化する。本実験ではシュウ酸濃度は検出限界以下まで浄化した。
(2−14)浄化終了後、給廃水バルブ7から系統水を廃水する。
【0039】
図4は沸騰水型原子炉の再循環配管108及び再循環ポンプ105を対象部位とした例であるが、その他の配管や原子炉炉内構造物に対しても同様に循環ループを形成することで上記の操作を実施できる。
【0040】
実施例1で挙げた化学除染を行うと、母材表面の酸化被膜が溶解除去される。その後に、実験で見出された条件を用いて腐食抑制効果を及ぼす金属,金属酸化物の付着処理を行うと、図5の左上に示す図のように母材表面に、腐食抑制効果を及ぼす金属,金属酸化物を付着させることができる。
【0041】
図5に示す現象の詳細を以下に説明する。まず、腐食抑制効果を及ぼす金属,金属酸化物のイオンまたは、コロイドは鉄酸化物の析出に伴い、イオンは金属,酸化物または水酸化物として共沈すると考えられる。腐食抑制効果を及ぼす金属としてあげられるZn,Al,Zr,Ti,Pt,Rh,Pdは各々Zn2+イオン,Al3+イオン,ZrO2+イオン,TiO2+イオン,Pt(OH) 2+イオン,Rh(NO 3+イオン,Pd2+イオンとして添加されると、鉄酸化物の析出に伴い、各々、ZnOまたはZn(OH),Al(OH)またはAlOOH,ZrO(OH)またはZrO,TiO(OH)またはTiO,PtまたはPtO,RhまたはRh,PdまたはPdOとして共沈すると考えられる。
【0042】
付着処理後、プラント起動により、高温高圧水に曝露されと付着させた腐食抑制効果を及ぼす金属,金属酸化物は溶解,再析出を起こすと考えられる。腐食抑制効果を及ぼす金属,金属酸化物は、下記の3種類で母材に腐食抑制効果を及ぼすと考えられる。
(1)その金属,金属酸化物のみで緻密な酸化被膜をつくって腐食抑制効果を及ぼす。
(2)母材の酸化被膜成長時に、FeやCrと化学反応して緻密な酸化被膜をつくって腐食抑制効果を及ぼす。
(3)母材の酸化被膜成長時に、FeやCrと酸化還元反応して金属として付着し、水素注入環境下で水素を酸化する触媒として働き、腐食電位を低下させることで腐食抑制効果を及ぼす。
(1)のケースとしてAl,Zr,Tiが挙げられる(図5の右上)。付着処理により付着したこれらの金属酸化物は、溶解,再析出することにより母材の表面に各々Al,ZrO,TiOの酸化膜を作ると考えられる。これらの酸化物により表面が覆われることで母材への酸素の拡散が抑制され、母材の腐食が抑制されると考えられる。
(2)のケースとしてZnが挙げられる(図5の左下)。付着処理により付着したZnはZnイオンとして溶解し、母材の腐食により生じたFeイオンやCrイオンと化学反応してZnFeやZnCrなどの酸化物を生成して析出すると考えられる。これらの化合物により表面が覆われることで母材への酸素の拡散が抑制され、母材の腐食が抑制されると考えられる。
(3)のケースとしてPt,Rh,Pdが挙げられる(図5の右下)。付着処理により付着したPt,Rh,PdはPtイオン,Rhイオン,Pdイオンとして溶解し、母材の腐食により生じたFeイオンやCrイオンと酸化還元反応して各々、Pt,Rh,Pd金属として再析出すると考えられる。これらの金属は、水素注入環境下、特にH/Oのモル比が2以上の環境で、腐食電位を大きく低下させることが知られている。腐食電位の低下に伴い母材表面は腐食しにくくなると考えられる。
【0043】
炉水中の放射性の金属イオンは母材の進行に伴い付着するので、以上により母材の腐食が抑制されると、放射性物質の付着量は抑制されると考えられる。
【0044】
付着処理後、LWRプラントを再起動し、高温高圧水に曝すと、付着した放射性物質の付着を抑制する効果のある金属又は金属酸化物(本実施例ではZnを使用している)が溶解し、再析出,フェライト化反応,酸化還元反応などにより、付着処理を施した原子炉炉内構造物及び配管の表面を覆い、酸化皮膜の成長を抑制し、放射能蓄積を抑制する。
(実施例2)
本実施例は、Feのシュウ酸錯体を分解させながら添加することにより付着処理する例である。図6に本実施例で用いる付着処理装置80を示す。付着処理装置80は、付着処理装置1と、Feのシュウ酸錯体注入装置30をバルブ9aと有機物化合物分解装置10の間の配管に接続した点で異なる構成を有する。それ以外の箇所は付着処理装置80と同じである。本実施例における装置の構成は、付着処理装置80を図4に示した付着処理装置1と同様に、沸騰水型原子炉の再循環配管108、及び再循環ポンプ105を対象部位として、接続点X1及びX2を介して対象部位と接続する。沸騰水型原子炉の各部の構成は実施例2と同様である。実施例2と同様に化学除染を行った後、以下の手順で付着処理装置80の運転を行う。
(3−1)給廃水バルブ7から系統に水を給水する。
(3−2)バルブ4a,4b,9a,9b,33,43,53,23を閉、バルブ6,バルブ8を開にして循環ポンプ3で系統水を循環させ、加熱冷却器16で系統水を所定の温度まで昇温する。
(3−3)系統水の温度が90℃に達したら、バルブ9a,9bを開き流量調整バルブ8で流量を調整して、有機化合物分解装置10に系統水を通水する。
(3−4)Feのシュウ酸錯体注入装置30において、バルブ33を開き、薬液注入ポンプ32を起動して、Feのシュウ酸錯体を系統に添加し、Feのシュウ酸錯体の所定量を系統に添加開始する。また、H注入装置20のバルブ23を開き、H注入ポンプ22を起動してHを添加してシュウ酸を分解する。同様に、放射性物質付着抑制試薬注入装置50から放射性物質付着抑制試薬であるZnを系統に添加する。
(3−5)水質測定装置15及び給廃水バルブ7からの系統水のサンプリングにより、系統水の水質を分析する。これにより、シュウ酸の付着状況を判断する。また、pHが5.5 以上とならない範囲で、pH調整剤注入装置40からpH調整剤であるKOHを注入し系統水のpHを調整する。
(3−6)各試薬の添加が終わったら、各試薬の注入ポンプを止め、各バルブを閉にする。
(3−7)加熱冷却器16で系統水を常温(30℃程度)に冷却する。
(3−8)冷却終了後、バルブ4a,4bを開き、バルブ6を閉じて、水質浄化装置5に系統水を通水して、廃水ができる不純物濃度レベルまで、系統水を浄化する。シュウ酸濃度は検出限界以下まで浄化する。
(3−9)浄化終了後、給廃水バルブ7から系統水を廃水する。
【0045】
実施例1は、予め、各試薬を系統に添加し、均一に混合した後に分解を行うことにより付着処理する例であるのに対し、本実施例は、逐次、腐食低減効果を及ぼす金属イオンあるい腐食低減効果を及ぼす金属を含むコロイドを共沈させるために添加するFeのシュウ酸錯体を分解させながら添加することにより付着処理する例である。特に放射性物質の付着を抑制する効果又は腐食低減効果のある、金属又は金属酸化物の付着量に応じて付着処理する場合、本実施例によれば、所定の付着量に達した時点で各試薬の添加を停止することができるので、実施例1の場合と比較して添加する試薬の量を低減することができる。
(実施例3)
本実施例は、除染を行った後の原子力プラント運転期間中に、放射性物質付着抑制試薬を原子炉水中に添加する実施例である。装置構成は、図7に示すように、沸騰水型原子炉の給水系配管に放射性物質付着抑制試薬注入装置50を接続し、再循環配管108に原子炉水をサンプリングするためのサンプリング弁113を接続している。放射性物質付着抑制試薬注入装置50は再循環配管108に接続してもよい。また、サンプリング弁113は原子炉水浄化系配管の浄化装置(図示せず)の上流に接続してもよい。サンプリング弁からサンプリングしたZnイオンまたはコロイドの濃度が所定の濃度となるように放射性物質付着抑制試薬注入装置50からZnイオンまたはZnコロイドの注入量を調整する。図8にこの条件でZnイオンの放射性物質付着抑制効果を計測した実験結果を示す。これは原子炉水を模擬した水質(溶存酸素(DO)200ppb 、温度288℃)に調整した高温高圧水循環ループにCo−58イオンを一定濃度となるように添加し、更にZnイオンを2ppb 添加した場合と添加しない場合の2種類の条件として、その中にステンレス鋼を1000時間浸漬した場合のCo−58付着量を比較したものである。付着量はZnイオンを2ppb 添加するだけで添加しない場合の約1/2にまで減少することがわかる。従って、Zn添加量を原子炉水Zn濃度が2ppb となるように調整することで、放射能付着を抑制することができる。
【0046】
以上、述べた各実施例によれば、除染を行った原子炉炉内構造物表面あるいは配管表面に放射性物質の付着を抑制する効果又は腐食低減効果のある、金属又は金属酸化物を付着させることができ、放射性物質の急速な再付着を抑制でき、保守,点検作業時においては、作業員の放射線被曝が抑制できる。
【0047】
また、シュウ酸を除染剤として使用し、そのシュウ酸を分解する工程のある化学除染において付着処理を行う実施例によれば、同じ装置で化学除染と付着処理ができ、更に化学除染の工程とオーバーラップさせることができる。そのため、オーバーラップさせない場合に比べ、付着処理に要する時間を短縮する事が出来る。
【0048】
放射性物質の付着を抑制する効果又は腐食低減効果のある、金属又は金属酸化物として挙げた、PtやRh,Pdなどの貴金属は腐食電位を下げる効果があるので、応力腐食割れ(SCC)の抑制に効果を発揮することが期待できる。
【0049】
除染を行った以降の運転中に放射性物質の付着を抑制する効果又は腐食低減効果のある、金属イオン又は金属コロイドを原子炉水中に添加することで、放射性物質の急速な再付着を抑制できる。更に、保守,点検作業時においては、作業員の放射線被曝が抑制できる。
【0050】
またZnイオンまたはZnコロイドの添加量が少ないので、試薬の費用を低減でき且つ、原子炉水浄化系のイオン交換樹脂への負荷を小さくすることが出来る。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、除染を行った原子炉炉内構造物及び配管表面への放射性物質の付着を抑制する水質制御方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に用いる付着処理装置を表わす図。
【図2】Feのシュウ酸錯体溶液のシュウ酸を触媒分解させたときのFeの析出の有無についてのFe濃度と、pHの関係を表わす図。
【図3】Feのシュウ酸錯体溶液のシュウ酸を触媒分解させたときのFeの析出の有無についてのFe濃度と、シュウ酸濃度の関係を表わす図。
【図4】実施例1を表わす図。
【図5】付着処理を施した後の付着物の挙動を表わす図。
【図6】実施例2を表わす図。
【図7】実施例3を表わす図。
【図8】高温高圧水でのステンレス鋼へのCo−58付着のZn注入効果を表わす図。
【図9】実験に用いた付着処理装置を表す図。
【符号の説明】
1…付着処理装置、2…テフロン管、3…循環ポンプ、4a…配管バルブ、4b,6,9a,9b,18,19,23,33,43,53,106,107,110,111,112,114,115…バルブ、5,15…水質浄化装置、7…給廃水バルブ、8…流量調整バルブ、10…有機化合物分解装置、11…ベント、12,13,14…配管、16…加熱冷却器、17…サージタンク、20…H注入装置、21…Hタンク、22…H注入ポンプ、30…Feのシュウ酸錯体注入装置、31…シュウ酸錯体溶液を入れたタンク、32,42,52…薬液注入ポンプ、40…pH調整剤注入装置、41…pH調整剤を入れたタンク、50…放射性物質付着処理装置、51…放射性物質付着抑制試薬を入れたタンク、101…圧力容器、102…主蒸気配管、103…給水配管、104…原子核燃料、105…再循環ポンプ、108…再循環配管、109…ジェットポンプ、113…サンプリング弁。

Claims (11)

  1. 核加熱停止中に原子炉炉内構造物の炉水に接している面若しくは配管の炉水に接している面の少なくとも何れかに付着した放射性物質の除去を実施した後でその除去を実施した後の定格出力運転を行う前の原子力プラントの原子炉水に、前記炉内構造物への放射性物質の付着抑制効果及び原子炉構造物の腐食低減効果のうち少なくとも何れかの効果をもつ金属の有機化合物錯体及び前記金属の酸化物の有機化合物錯体のうち少なくとも何れかを添加し、この添加後、前記有機化合物錯体を分解する水質制御方法であって、
    前記放射性物質を除去する工程が、シュウ酸を除染剤として使用し前記シュウ酸を分解する工程を含むものであり、前記シュウ酸分解行程と前記有機化合物錯体を分解する行程とを少なくとも一部重複させて実施する行程を含むことを特徴とする水質制御方法。
  2. 核加熱停止中に原子炉炉内構造物の炉水に接している面若しくは配管の炉水に接している面の少なくとも何れかに付着した放射性物質の除去を実施した後でその除去を実施した後の定格出力運転を行う前の原子力プラントの原子炉水に、前記構造物への放射性物質の付着抑制効果及び前記構造物の腐食低減効果のうち少なくとも何れかの効果をもつ金属のイオン又はコロイドのうち少なくとも何れかと、鉄の有機物錯体を注入し、前記鉄の有機化合物錯体を分解することを特徴とする水質制御方法。
  3. 請求項2において、前記有機物錯体を分解することによって、鉄を水酸化鉄又は鉄酸化物として析出させ、前記金属のイオン又はコロイドと共沈させて、前記金属もしくは前記金属の酸化物を前記原子炉構造物に付着させることを特徴とする水質制御方法。
  4. 請求項2または3において、鉄の有機化合物錯体がシュウ酸錯体であることを特徴とする水質制御方法。
  5. 請求項4において、前記原子炉水の前記シュウ酸錯体の濃度が、鉄濃度として0.5ppm以上100ppm 以下であることを特徴とする水質制御方法。
  6. 請求項2乃至5の何れかにおいて、Na2CO3,KOH及びNaOHのうち少なくとも何れかを、前記原子炉水のpHが5.5 以下の範囲で前記原子炉水に添加することを特徴とする水質制御方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれかにおいて、原子炉水に添加した有機化合物錯体を、紫外線照射又は不均一触媒への通水によって分解することを特徴とする水質制御方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれかにおいて、前記原子炉水に過酸化水素を添加して有機化合物を分解することを特徴とする水質制御方法。
  9. 請求項2乃至請求項8のいずれかにおいて、前記放射性物質除去する工程が、シュウ酸を除染剤として使用し前記シュウ酸を分解する工程を含むものであり、前記行程と前記有機化合物錯体を分解する行程とを少なくとも一部重複させて実施する行程を含むことを特徴とする水質制御方法。
  10. 請求項1または請求項9において、前記重複させて実施する行程を、前記原子炉水のシュウ酸濃度が100ppm 以下若しくは溶液のpHが4以上の少なくとも何れかの条件を満たす時点で実施することを特徴とする水質制御方法。
  11. 請求項1乃至請求項10のいずれかにおいて、前記原子炉構造物への放射性物質の付着抑制効果及び原子炉構造物の腐食低減効果のうち少なくとも何れかの効果をもつ金属は、Pt,Rh,Pd,Zr,Ti,Al又はZnの少なくとも1種類の金属であることを特徴とする水質制御方法。
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