JP3586122B2 - 構造物の減衰装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は建築物とその基礎、床板とスラブ、橋脚と橋桁、或いは陳列ケースとその支持台などのように、上部構造物と下部構造物との間に介装されて下部構造物に対する上部構造物の振動を吸収、減衰させる構造物の減衰装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
構造物の免震装置としては従来から種々の構造のものが開発されており、例えば、上部構造物と下部構造物との間にローラベアリングやアイソレータ等を介設してなる構造のものが広く知られている。そして、ローラべアリングからなる免震機構によれば、下部構造物の水平方向の振動をその転動によって吸収して上部構造物に振動波が伝達するのを抑制するものであり、アイソレータからなる免震機構は積層ゴムの剪断変形によって振動の伝達を抑制させるようにしている。
【0003】
一方、上記のような免震装置以外に、例えば、特公平3−69432号公報や特公平4−77112号公報に記載されているように、上記免震装置と共に或いは単独的に液体の粘性抵抗を利用した粘性ダンパーを構造物間に介在してその粘性抵抗によって振動エネルギーを吸収し、揺れを減衰させるようにした減衰装置が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の粘性ダンパーを用いた減衰装置によれば、粘性ダンパーの両端を上部構造物と下部構造物とに夫々連結することによって構成してなるものであるから、例えば、一方の構造物が地盤と一体の基礎であって他方の構造物が建物である場合、粘性ダンパーが地震の発生によって水平方向に揺れる基礎と一体的に水平移動するので、粘性ダンパーの最大ストローク長を建物に作用する最大の地震の振幅以上となるように設計しなければならず、従って、地震時における建物の最大水平変位量は、粘性ダンパーのストローク長に制約を受けるという問題点がある。
【0005】
さらに、粘性ダンパーは上述したように、その一端を上部構造物側に、他端を下部構造物側に固定してはじめて構造物の減衰装置としての機能を発揮するものであるから、減衰装置を構成するための粘性ダンパーの取付作業に著しい手間を要するばかりでなく施工費もコスト高になり、その上、構造物の構造によって取付位置が制限されるという問題点があり、又、粘性ダンパーとは別に上部構造物を支える支承部材を上下構造物間に介在させなければならない。
【0006】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、構造が簡単で取扱性に優れていると共に施工が容易に且つ正確に行え、さらに、構造物の振動変位量に制約を受けることなく減衰能を発揮することができる構造物の減衰装置を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る構造物の減衰装置は、上部板状体と下部板状体との間に軸芯を互いに平行にして一対のローラを転動自在に介在し、これらのローラの端面間に粘性ダンパーを介装して該粘性ダンパーの一端を一方のローラの端面外周部に、他端を他方のローラの端面外周部に夫々回動自在に連結し、上記一対のローラの転動により該粘性ダンパーを伸縮させて減衰能を発揮させるように構成している。
【0008】
上記請求項1に記載の減衰装置において、請求項2に係る発明は、上記一対のローラの端面に該端面の外周縁から外方に突出したフランジ部を一体に設け、これらのフランジ部の外周部間に粘性ダンパーを介装、連結していることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の減衰装置における上部板状体を上部構造物の下面に固着すると共に下部板状体を下部構造物の上面に固着した構造としている。
【0010】
さらに、請求項4に係る発明は、請求項1に記載の減衰装置を上部構造物と下部構造物との間に、上側の減衰装置のローラの軸芯と下側の減衰装置のローラの軸芯とを互いに直交させて上下2段に積層状態で介在させてなるものである。この場合、請求項5に記載したように、上側の減衰装置の下部板状体と下側の減衰装置の上部板状体とを共通した1枚の中間板状体から形成しておくことが望ましい。
【0011】
【作用及び効果】
基礎或いは陳列ケースの支持台等の下部構造物と建物或いは陳列ケース等の上部構造物との対向面に上記減衰装置の上下板状体をそれぞれ固着して下部構造物上にこの減衰装置を介して上部構造物を支持させた状態において、地震の発生により下部構造物が地震の揺れ方向に振動すると、上下板状体間に介在させているローラが下部板状体上を同一方向に転動する一方、上部板状体の下面に対しては相対的に同一距離だけ転動する。即ち、下部板状体が上部板状体に対してローラの転動を介して水平方向に揺動することにより振動エネルギーを吸収し、上部板状体側の振動を抑制する。
【0012】
さらに、上下板状体間に介在している一対のローラが上述したように転動すると、これらのローラの端面外周部間に介装、連結している粘性ダンパーが伸縮して粘性抵抗により振動エネルギーを吸収し、上部板状体側の上部構造物の揺れを急速に減衰させることができる。この粘性ダンパーは、ローラの転動時において伸縮して減衰能を発揮するように、その両端を上記一対のローラの端面外周部間に連結しているので、ローラの転動方向にこれらのローラと一体的に移動しながら伸縮することができ、且つ上下板状体がローラの転動方向にいくら相対的に往復移動しても、即ち、ローラが何回転しても粘性ダンパーは最小伸長から最大伸長を繰り返し行って制振作用を発揮することができる。
【0013】
上記減衰装置は、上下板状体間に一対のローラを介在し、これらのローラの端面上における外周部間に粘性ダンパーを連結してなるものであるから、装置全体がユニット化して構造が極めて簡素であり、安価に製作することができるばかりでなく、運搬その他の取扱いが容易となり、その上、上下構造物の対向面間の所望位置に簡単且つ正確に配設することができ、施工作業も容易で施工費を低減させることができる。
【0014】
この粘性ダンパーのストロークの大小は、ローラ間の距離、ピストンロッドの長さ及びローラに対する粘性ダンパーの取付位置によって決まり、また、粘性ダンパーが発揮する減衰力はピストンロッドの伸縮速度、即ち、本発明においては該ピストンロッドがローラの端面上における外周部に回動自在に連結しているので、ローラの回転角及び回転角速度によって決定される。従って、請求項2に記載したように、上記一対のローラの端面に該端面の外周縁から外方に突出したフランジ部を一体に設け、これらのフランジ部の外周部間に粘性ダンパーを介装、連結しておくことによって減衰力を一層大きくすることができ、構造物の揺れをより短時間で確実に抑止することができる。
【0015】
さらに、請求項3に係る発明は、粘性ダンパーによって連結した一対のローラを挟み込むように介装している上下板状体を上部構造物と下部構造物間に介在させて、上部板状体を上部構造物の下面に固着する一方、下部板状体を下部構造物の上面に固着した構造としている。従って、地震が発生して下部構造物がローラの転動方向に振動すると、粘性ダンパーが最小伸長と最大伸長間において振動の大小に応じた伸縮幅で伸縮を繰り返し、上下構造物の相対変位に制約を受けることなく下部構造物から上部構造物へ伝達する振動エキルギーを確実に吸収することができ、粘性ダンパーのストローク長は、上部構造物の最大変位量に何等の制約を受けることがない。
【0016】
また、請求項4に係る発明によれば、上記減衰装置を互いにそのローラの軸芯を直交させた状態にして上下に積層しておくことにより、前後左右の揺れを確実に吸収、減衰させることができる。この場合、請求項5に記載したように、上側の減衰装置の下部板状体と下側の減衰装置の上部板状体とを共通した1枚の中間板状体によって共用させれば、高さの低い構造が一層簡素化された減衰装置を構成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は一部を断面した減衰装置Aの正面図であって、鋼板等の一定厚みを有する金属板よりなる平面矩形状の上下板状体1、2と、これらの上下板状体1、2間に軸芯を互いに平行にして転動自在に介在している左右一対の金属製のローラ3、4と、一端を一方のローラ3の端面外周部に回動自在に連結し、他端を他方のローラ4の端面外周部に回動自在に連結した粘性ダンパー5とから構成している。
【0018】
上記上部板状体1と下部板状体2との対向面は、互いに平行で平坦な案内面1a、2aに夫々形成されてあり、これらの上下案内面1a、2aに接して上記ローラ3、4がその長さ方向を上下板状体1、2の前後方向に向けて転動可能に上下板状体1、2間に挟持状態に介在して免震機構を構成している。一対のローラ3、4は同一径であってその長さ方向の両端面に大径のフランジ部3a、4aを夫々一体に設けてあり、これらのフランジ部3a、4aを図2に示すように、上下板状体1、2の前後端面から前後方向に夫々突出させた状態となるように一対のローラ3、4を配設している。
【0019】
なお、この大径のフランジ部3a、4aは必ずしも円形状に形成しておく必要はなく、ローラ3、4の端面の一部から外周方に向かって所望の突出長でもって突設してなる周縁部材の形状としておいてもよい。また、ローラ3、4が常に軸芯を平行にした状態で上下板状体1、2の案内面1a、2aに接して転動させるために、これらのローラ3、4の一部に大径リング部を設ける一方、上下板状体1、2の案内面1a、2aに該大径リング部を案内する直状溝を形成したり、或いは、ローラ3、4の一部の外周面に歯車を形成又は一体に設けておき、この歯車を上下板状体1、2の案内面1a、2aに設けたラックに噛合させた構造、さらには、図2に示すように、ローラ3、4の両端部に周溝3b、4bを設けておき、この周溝3b、4bを上下板状体1、2の両端縁部に敷設したレール11、11に係合させながらローラ3、4を転動させるようにしておいてもよい。こうすることによって、ローラ間隔を一定に保持できるだけでなく、ローラがスリップするのを防止できる。又、ローラ3、4間にこれらのローラ3、4に平行して同一径の中間ローラ10(図3、図4に示す)を配設しておいてもよい。こうすることによって、粘性ダンパー5のストローク長を長くすることができ、減衰性能を増大できる。
【0020】
上記粘性ダンパー5は、両開口端が端面板5b、5bによって密閉されているシリンダ5aと、このシリンダ5a内に封入されている粘性オイル等の粘性液体5cと、シリンダ5aに摺動自在に内装され且つ厚さ方向に貫通したオリフィス5eを穿設しているピストン体5dと、このピストン体5dと一体の所定長さを有するピストンロッド5fとからなり、この粘性ダンパー5を上記上下板状体1、2の前後端面側に夫々配設してシリンダ5aの一端を一方のローラ3の大径フランジ部3aにおける端面外周部にピン6によって回動自在に連結し、シリンダ5aの他方の端面板5bを貫通して外部に突出しているピストンロッド5fの先端を他方のローラ4の大径フランジ部4aにおける端面外周部にピン7によって回動自在に連結している。
【0021】
このように、粘性ダンパー5を左右一対のローラ3、4間に介装してその両端をローラ3、4の大径フランジ部3a、4aに連結する場合、一対のローラ3、4が転動した際に粘性ダンパー5の粘性抵抗による減衰能を発揮させるように、即ち、ローラ3、4の転動によって粘性ダンパー5(ピストンロッド5f)が伸縮するように、その両端連結位置を設定する。その連結位置は、ローラ3、4の中心を結ぶ線を一辺とした平行四辺形の上記中心線を結んだ辺に平行な辺の両端以外の部分であれば、粘性ダンパー5を作動させることができるが、粘性ダンパー5のストロークを最大にして粘性ダンパー5の作動を最大限まで発揮させるために、図1においては、一対のローラ3、4の中心を結ぶ線上において最も距離が短くなる両ローラ3、4の大径フランジ部3a、4aの対向外端部に粘性ダンパー5の両端部を上述したようにピン6、7によって連結した構造としている。勿論、上記距離が最も長くなる両ローラ3、4の大径フランジ部3a、4a外端部に連結しておいてもよく、要するに上記ローラ3、4の中心を結ぶ線の長さの中央点に対して点対称となる大径フランジ部3a、4a外端部に連結しておけばよい。
【0022】
このように構成した減衰装置Aは図3、図4に示すように、上部構造物8と下部構造物9との上下対向面間に介在し、上部板状体1を上部構造物8の下面に、下部板状体2を下部構造物9の上面にそれぞれ固着した状態で使用される。この場合、下部構造物9が基礎や橋脚であると上部構造物8は建物や橋桁であり、上部構造物8が陳列ケースや展示ケースであると下部構造物9は床面上に固定した台である。また、地震や風圧等による揺れは前後左右方向に発生するので、減衰装置A、Aを、上段側の減衰装置Aのローラ3、4と下段側の減衰装置Aのロラ3、4とを互いに直交する方向に向けた状態で積層した構造とする。
【0023】
減衰装置A、Aを上下2段に配する場合、下段側の減衰装置Aの上部板状体1と上段側の減衰装置Aの下部板状体2とが重なり合うので、これらの上下板状体1、2を一体化した構造、即ち、上下板状体として共用し得る1枚の中間板状体12によって構成しておくことが望ましい。このように構成すると、減衰装置全体の高さを低くすることができると共に装置全体を一層簡易化することができる。また、上下構造物8、9の対向面間の複数個所に減衰装置Aを介在、配設しておいてもよい。
【0024】
次に、上記減衰装置Aの作用を述べるが、上段側と下段側の減衰装置は同じ作用を行うので、図においてローラ3、4が左右方向に転動するように配した下段側の減衰装置Aの作用を説明する。この場合、中間板状体12が上部板状体1となるので、理解を容易にするために上部板状体1として説明する。
【0025】
今、地震が発生して下部構造物9が左右に揺れると、該下部構造物9と一体の下部板状体2が同一方向に一体的に振動する。この下部板状体2の振動によって左右一対のローラ3、4が下部板状体2の案内面1a上を転動し、その転動によって上部板状体1がローラ3、4の転動距離の2倍だけ下部板状体2に対して反対方向に相対移動し、下部構造物9の振動エネルギーを吸収して上部構造物8の揺れを抑制する。即ち、ローラ3、4の転動によって免震作用が行われる。
【0026】
一方、上部構造物8が例えば右方向に振動した場合、上記一対のローラ3、4が図1に示す状態から図5に示すように、互いに中心間の距離を一定に保持したまゝ右回り方向に転動する。そうすると、一方のローラ3の大径フランジ部3aの外端部に粘性ダンパー5のシリンダ5aの一端を連結している連結ピン6が該ローラ3の中心O1回りに下方に移行する一方、他方のローラ4の大径フランジ部4aの外端部に粘性ダンパー5のピストンロッド5fを連結している連結ピン7は上記連結ピン6とは反対方向に該ローラ4の中心O2回りに上方に移行してピストンロッド5fが伸長し、ピストン体5dがその伸長量に応じてシリンダ5a内を一端から他端側に向かって摺動する。
【0027】
ピストン体5dが摺動すると、該ピストン体5dによってシリンダ5a内の粘性液体5cが圧縮されると共に該圧縮力によってピストン体5dに穿設しているオリフィス5eを通じて粘性液体5cがピストン体5dによって区画される一方のシリンダ室から他方のシリンダ室内に流出し、このピストン体5dの圧縮時に発生する粘性抵抗によって振動エネルギーを吸収すると共にローラ3、4の転動により下部構造物9の振動が上部構造物8に伝達するのを抑制できる。
【0028】
地震時の想定最大水平振幅は略30cm内外であり、その最大水平振幅時に転動する一対のローラ3、4の水平距離は15cm内外であるから、ローラの半径を5cm以上にしておけば、水平方向の往復振動に対してローラ3、4が180 度以下の回転角度でもって往復転動することになり、この往復転動によってシリンダ5a内でピストン体5dが往復動して粘性ダンパー5が伸縮し、その時の粘性抵抗によって上述したように振動エネルギーを吸収し、地震が収まった時には上部構造物8の揺れを短時間で解消するものである。勿論、ローラ3、4が180 度以上の角度や数回転する場合があっても粘性ダンパー5のピストンロッド5fは伸縮を繰り返しながら減衰作用を発揮することができる。
【0029】
ローラ3、4の転動によって伸縮するピストンロッド5fの伸縮長、即ち、粘性ダンパー5のストロークの変動は、例えば、ローラ3、4の半径を10cmとした場合、図7に示すように、ローラ3、4の回転角によって0〜40cmの範囲内で伸縮を繰り返すことになる。なお、図6に示すように粘性ダンパー5として、そのシリンダ5a内にオリフィス5eを貫設している一対のピストン体5d、5dを設けておき、これらのピストン体5d、5dのロッドを一対のローラ3、4の端面上における外周部に回動自在に連結した構造としておいてもよい。
【0030】
また、図8は構造物に作用する減衰力を示すもので、同図において、同一径であるローラ3、4の半径をr1、ローラ3、4の中心から粘性ダンパー5の連結部までの半径をr2、上部板状体1に対するローラ3、4の接点A、Bにおいて上部板状体1(上部構造物8)にそれぞれ作用する減衰力をF1、F2、粘性ダンパー5が発揮する減衰力Pの水平、垂直成分を夫々P1、P2とすると、ローラ3、4と上部板状体1との接点A、Bにおけるモーメントの釣り合いより、(1) 式及び(2) 式が求められ、構造物に作用する減衰力は(3) 式により表される。
【0031】
【数1】
【0032】
【数2】
【0033】
【数3】
【0034】
(1) 、(2) 式を(3) 式に代入すると(4) 式が求まる。
【0035】
【数4】
【0036】
また、粘性ダンパー5が発揮する減衰力はピストン体5dの速度によって定まるため、ローラ3、4の回転角及び回転角速度の関数として求められる。よって、ローラ3、4に大径フランジ部3a、4aを設けて該大径フランジ部3a、4a間に粘性ダンパー5を連結することにより構造物に作用する減衰力はr2/r1 倍となる。
【0037】
上記減衰装置Aにおいて、上下板状体1、2のローラ案内面1a、2aが互いに平行な平坦面である場合には、この減衰装置Aと共に図9に示すように、鋼板とゴム製弾性板とを交互に積層してなる複数のアイソレータ13を上下構造物8、9の対向面間に介在してもよい。
【0038】
さらに、このようなアイソレータ13を採用することなく、減衰装置Aにおける上下板状物1、2のローラ案内面1a、2aを上側のローラ案内面1aにおいては上向き凹弧面に、下側のローラ案内面2aにおいては下向き凹弧面に形成しておいてもよく、このように構成すると、地震が収まった時にはローラ3、4を介して上部構造物8を元の位置に確実に復帰させることができる。さらに、上下板状体1、2のローラ案内面1a、2aが互いに平行な平坦面である場合において、軸芯が上下に偏心しているローラ部を一体的に形成してなる一対のローラを平行に配して中心が下側に偏心しているローラ部を上部板状物1のローラ案内面1aに、中心が上側に偏心しているローラ部を下部板状物2のローラ案内面2aに、それぞれ接して転動させるように構成しておいてもよく、このように構成した場合においても、上述したように地震が収まった時にはローラ3、4を介して上部構造物を元の位置に確実に復帰させることができる。
【0039】
また、上記実施例においては、一対のローラ3、4の端面外周部間を粘性ダンパー5によって連結しているが、3本以上のローラを並設して隣接するローラの端面外周部間を各々粘性ダンパーによって連結した構造としてもよく、この場合においても、少なくとも1本以上のローラを大径に形成して上部板状物の下面に形成した上向き凹弧面と下部板状物の上面に形成した下向き凹弧面との間に介在させておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】粘性ダンパーを断面した減衰装置の正面図、
【図2】上部板状体を取り外した状態の平面図、
【図3】上下構造物間に介在した使用状態を示す正面図、
【図4】上部構造物を取り除いた状態の平面図、
【図5】減衰作用を説明するための正面図、
【図6】粘性ダンパーの変形例を示す一部を断面した正面図、
【図7】ローラの回転角と粘性ダンパーのストロールとの線図、
【図8】減衰力を説明するための簡略図、
【図9】アイソレータと共に用いた状態の一部を断面した簡略正面図。
【符号の説明】
1 上部板状体
2 下部板状体
1a、2a 上下案内面
3、4 ローラ
3a、4a 大径のフランジ部
5 粘性ダンパー
8 上部構造物
9 下部構造物
A 減衰装置
【発明の属する技術分野】
本発明は建築物とその基礎、床板とスラブ、橋脚と橋桁、或いは陳列ケースとその支持台などのように、上部構造物と下部構造物との間に介装されて下部構造物に対する上部構造物の振動を吸収、減衰させる構造物の減衰装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
構造物の免震装置としては従来から種々の構造のものが開発されており、例えば、上部構造物と下部構造物との間にローラベアリングやアイソレータ等を介設してなる構造のものが広く知られている。そして、ローラべアリングからなる免震機構によれば、下部構造物の水平方向の振動をその転動によって吸収して上部構造物に振動波が伝達するのを抑制するものであり、アイソレータからなる免震機構は積層ゴムの剪断変形によって振動の伝達を抑制させるようにしている。
【0003】
一方、上記のような免震装置以外に、例えば、特公平3−69432号公報や特公平4−77112号公報に記載されているように、上記免震装置と共に或いは単独的に液体の粘性抵抗を利用した粘性ダンパーを構造物間に介在してその粘性抵抗によって振動エネルギーを吸収し、揺れを減衰させるようにした減衰装置が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の粘性ダンパーを用いた減衰装置によれば、粘性ダンパーの両端を上部構造物と下部構造物とに夫々連結することによって構成してなるものであるから、例えば、一方の構造物が地盤と一体の基礎であって他方の構造物が建物である場合、粘性ダンパーが地震の発生によって水平方向に揺れる基礎と一体的に水平移動するので、粘性ダンパーの最大ストローク長を建物に作用する最大の地震の振幅以上となるように設計しなければならず、従って、地震時における建物の最大水平変位量は、粘性ダンパーのストローク長に制約を受けるという問題点がある。
【0005】
さらに、粘性ダンパーは上述したように、その一端を上部構造物側に、他端を下部構造物側に固定してはじめて構造物の減衰装置としての機能を発揮するものであるから、減衰装置を構成するための粘性ダンパーの取付作業に著しい手間を要するばかりでなく施工費もコスト高になり、その上、構造物の構造によって取付位置が制限されるという問題点があり、又、粘性ダンパーとは別に上部構造物を支える支承部材を上下構造物間に介在させなければならない。
【0006】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、構造が簡単で取扱性に優れていると共に施工が容易に且つ正確に行え、さらに、構造物の振動変位量に制約を受けることなく減衰能を発揮することができる構造物の減衰装置を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る構造物の減衰装置は、上部板状体と下部板状体との間に軸芯を互いに平行にして一対のローラを転動自在に介在し、これらのローラの端面間に粘性ダンパーを介装して該粘性ダンパーの一端を一方のローラの端面外周部に、他端を他方のローラの端面外周部に夫々回動自在に連結し、上記一対のローラの転動により該粘性ダンパーを伸縮させて減衰能を発揮させるように構成している。
【0008】
上記請求項1に記載の減衰装置において、請求項2に係る発明は、上記一対のローラの端面に該端面の外周縁から外方に突出したフランジ部を一体に設け、これらのフランジ部の外周部間に粘性ダンパーを介装、連結していることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の減衰装置における上部板状体を上部構造物の下面に固着すると共に下部板状体を下部構造物の上面に固着した構造としている。
【0010】
さらに、請求項4に係る発明は、請求項1に記載の減衰装置を上部構造物と下部構造物との間に、上側の減衰装置のローラの軸芯と下側の減衰装置のローラの軸芯とを互いに直交させて上下2段に積層状態で介在させてなるものである。この場合、請求項5に記載したように、上側の減衰装置の下部板状体と下側の減衰装置の上部板状体とを共通した1枚の中間板状体から形成しておくことが望ましい。
【0011】
【作用及び効果】
基礎或いは陳列ケースの支持台等の下部構造物と建物或いは陳列ケース等の上部構造物との対向面に上記減衰装置の上下板状体をそれぞれ固着して下部構造物上にこの減衰装置を介して上部構造物を支持させた状態において、地震の発生により下部構造物が地震の揺れ方向に振動すると、上下板状体間に介在させているローラが下部板状体上を同一方向に転動する一方、上部板状体の下面に対しては相対的に同一距離だけ転動する。即ち、下部板状体が上部板状体に対してローラの転動を介して水平方向に揺動することにより振動エネルギーを吸収し、上部板状体側の振動を抑制する。
【0012】
さらに、上下板状体間に介在している一対のローラが上述したように転動すると、これらのローラの端面外周部間に介装、連結している粘性ダンパーが伸縮して粘性抵抗により振動エネルギーを吸収し、上部板状体側の上部構造物の揺れを急速に減衰させることができる。この粘性ダンパーは、ローラの転動時において伸縮して減衰能を発揮するように、その両端を上記一対のローラの端面外周部間に連結しているので、ローラの転動方向にこれらのローラと一体的に移動しながら伸縮することができ、且つ上下板状体がローラの転動方向にいくら相対的に往復移動しても、即ち、ローラが何回転しても粘性ダンパーは最小伸長から最大伸長を繰り返し行って制振作用を発揮することができる。
【0013】
上記減衰装置は、上下板状体間に一対のローラを介在し、これらのローラの端面上における外周部間に粘性ダンパーを連結してなるものであるから、装置全体がユニット化して構造が極めて簡素であり、安価に製作することができるばかりでなく、運搬その他の取扱いが容易となり、その上、上下構造物の対向面間の所望位置に簡単且つ正確に配設することができ、施工作業も容易で施工費を低減させることができる。
【0014】
この粘性ダンパーのストロークの大小は、ローラ間の距離、ピストンロッドの長さ及びローラに対する粘性ダンパーの取付位置によって決まり、また、粘性ダンパーが発揮する減衰力はピストンロッドの伸縮速度、即ち、本発明においては該ピストンロッドがローラの端面上における外周部に回動自在に連結しているので、ローラの回転角及び回転角速度によって決定される。従って、請求項2に記載したように、上記一対のローラの端面に該端面の外周縁から外方に突出したフランジ部を一体に設け、これらのフランジ部の外周部間に粘性ダンパーを介装、連結しておくことによって減衰力を一層大きくすることができ、構造物の揺れをより短時間で確実に抑止することができる。
【0015】
さらに、請求項3に係る発明は、粘性ダンパーによって連結した一対のローラを挟み込むように介装している上下板状体を上部構造物と下部構造物間に介在させて、上部板状体を上部構造物の下面に固着する一方、下部板状体を下部構造物の上面に固着した構造としている。従って、地震が発生して下部構造物がローラの転動方向に振動すると、粘性ダンパーが最小伸長と最大伸長間において振動の大小に応じた伸縮幅で伸縮を繰り返し、上下構造物の相対変位に制約を受けることなく下部構造物から上部構造物へ伝達する振動エキルギーを確実に吸収することができ、粘性ダンパーのストローク長は、上部構造物の最大変位量に何等の制約を受けることがない。
【0016】
また、請求項4に係る発明によれば、上記減衰装置を互いにそのローラの軸芯を直交させた状態にして上下に積層しておくことにより、前後左右の揺れを確実に吸収、減衰させることができる。この場合、請求項5に記載したように、上側の減衰装置の下部板状体と下側の減衰装置の上部板状体とを共通した1枚の中間板状体によって共用させれば、高さの低い構造が一層簡素化された減衰装置を構成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は一部を断面した減衰装置Aの正面図であって、鋼板等の一定厚みを有する金属板よりなる平面矩形状の上下板状体1、2と、これらの上下板状体1、2間に軸芯を互いに平行にして転動自在に介在している左右一対の金属製のローラ3、4と、一端を一方のローラ3の端面外周部に回動自在に連結し、他端を他方のローラ4の端面外周部に回動自在に連結した粘性ダンパー5とから構成している。
【0018】
上記上部板状体1と下部板状体2との対向面は、互いに平行で平坦な案内面1a、2aに夫々形成されてあり、これらの上下案内面1a、2aに接して上記ローラ3、4がその長さ方向を上下板状体1、2の前後方向に向けて転動可能に上下板状体1、2間に挟持状態に介在して免震機構を構成している。一対のローラ3、4は同一径であってその長さ方向の両端面に大径のフランジ部3a、4aを夫々一体に設けてあり、これらのフランジ部3a、4aを図2に示すように、上下板状体1、2の前後端面から前後方向に夫々突出させた状態となるように一対のローラ3、4を配設している。
【0019】
なお、この大径のフランジ部3a、4aは必ずしも円形状に形成しておく必要はなく、ローラ3、4の端面の一部から外周方に向かって所望の突出長でもって突設してなる周縁部材の形状としておいてもよい。また、ローラ3、4が常に軸芯を平行にした状態で上下板状体1、2の案内面1a、2aに接して転動させるために、これらのローラ3、4の一部に大径リング部を設ける一方、上下板状体1、2の案内面1a、2aに該大径リング部を案内する直状溝を形成したり、或いは、ローラ3、4の一部の外周面に歯車を形成又は一体に設けておき、この歯車を上下板状体1、2の案内面1a、2aに設けたラックに噛合させた構造、さらには、図2に示すように、ローラ3、4の両端部に周溝3b、4bを設けておき、この周溝3b、4bを上下板状体1、2の両端縁部に敷設したレール11、11に係合させながらローラ3、4を転動させるようにしておいてもよい。こうすることによって、ローラ間隔を一定に保持できるだけでなく、ローラがスリップするのを防止できる。又、ローラ3、4間にこれらのローラ3、4に平行して同一径の中間ローラ10(図3、図4に示す)を配設しておいてもよい。こうすることによって、粘性ダンパー5のストローク長を長くすることができ、減衰性能を増大できる。
【0020】
上記粘性ダンパー5は、両開口端が端面板5b、5bによって密閉されているシリンダ5aと、このシリンダ5a内に封入されている粘性オイル等の粘性液体5cと、シリンダ5aに摺動自在に内装され且つ厚さ方向に貫通したオリフィス5eを穿設しているピストン体5dと、このピストン体5dと一体の所定長さを有するピストンロッド5fとからなり、この粘性ダンパー5を上記上下板状体1、2の前後端面側に夫々配設してシリンダ5aの一端を一方のローラ3の大径フランジ部3aにおける端面外周部にピン6によって回動自在に連結し、シリンダ5aの他方の端面板5bを貫通して外部に突出しているピストンロッド5fの先端を他方のローラ4の大径フランジ部4aにおける端面外周部にピン7によって回動自在に連結している。
【0021】
このように、粘性ダンパー5を左右一対のローラ3、4間に介装してその両端をローラ3、4の大径フランジ部3a、4aに連結する場合、一対のローラ3、4が転動した際に粘性ダンパー5の粘性抵抗による減衰能を発揮させるように、即ち、ローラ3、4の転動によって粘性ダンパー5(ピストンロッド5f)が伸縮するように、その両端連結位置を設定する。その連結位置は、ローラ3、4の中心を結ぶ線を一辺とした平行四辺形の上記中心線を結んだ辺に平行な辺の両端以外の部分であれば、粘性ダンパー5を作動させることができるが、粘性ダンパー5のストロークを最大にして粘性ダンパー5の作動を最大限まで発揮させるために、図1においては、一対のローラ3、4の中心を結ぶ線上において最も距離が短くなる両ローラ3、4の大径フランジ部3a、4aの対向外端部に粘性ダンパー5の両端部を上述したようにピン6、7によって連結した構造としている。勿論、上記距離が最も長くなる両ローラ3、4の大径フランジ部3a、4a外端部に連結しておいてもよく、要するに上記ローラ3、4の中心を結ぶ線の長さの中央点に対して点対称となる大径フランジ部3a、4a外端部に連結しておけばよい。
【0022】
このように構成した減衰装置Aは図3、図4に示すように、上部構造物8と下部構造物9との上下対向面間に介在し、上部板状体1を上部構造物8の下面に、下部板状体2を下部構造物9の上面にそれぞれ固着した状態で使用される。この場合、下部構造物9が基礎や橋脚であると上部構造物8は建物や橋桁であり、上部構造物8が陳列ケースや展示ケースであると下部構造物9は床面上に固定した台である。また、地震や風圧等による揺れは前後左右方向に発生するので、減衰装置A、Aを、上段側の減衰装置Aのローラ3、4と下段側の減衰装置Aのロラ3、4とを互いに直交する方向に向けた状態で積層した構造とする。
【0023】
減衰装置A、Aを上下2段に配する場合、下段側の減衰装置Aの上部板状体1と上段側の減衰装置Aの下部板状体2とが重なり合うので、これらの上下板状体1、2を一体化した構造、即ち、上下板状体として共用し得る1枚の中間板状体12によって構成しておくことが望ましい。このように構成すると、減衰装置全体の高さを低くすることができると共に装置全体を一層簡易化することができる。また、上下構造物8、9の対向面間の複数個所に減衰装置Aを介在、配設しておいてもよい。
【0024】
次に、上記減衰装置Aの作用を述べるが、上段側と下段側の減衰装置は同じ作用を行うので、図においてローラ3、4が左右方向に転動するように配した下段側の減衰装置Aの作用を説明する。この場合、中間板状体12が上部板状体1となるので、理解を容易にするために上部板状体1として説明する。
【0025】
今、地震が発生して下部構造物9が左右に揺れると、該下部構造物9と一体の下部板状体2が同一方向に一体的に振動する。この下部板状体2の振動によって左右一対のローラ3、4が下部板状体2の案内面1a上を転動し、その転動によって上部板状体1がローラ3、4の転動距離の2倍だけ下部板状体2に対して反対方向に相対移動し、下部構造物9の振動エネルギーを吸収して上部構造物8の揺れを抑制する。即ち、ローラ3、4の転動によって免震作用が行われる。
【0026】
一方、上部構造物8が例えば右方向に振動した場合、上記一対のローラ3、4が図1に示す状態から図5に示すように、互いに中心間の距離を一定に保持したまゝ右回り方向に転動する。そうすると、一方のローラ3の大径フランジ部3aの外端部に粘性ダンパー5のシリンダ5aの一端を連結している連結ピン6が該ローラ3の中心O1回りに下方に移行する一方、他方のローラ4の大径フランジ部4aの外端部に粘性ダンパー5のピストンロッド5fを連結している連結ピン7は上記連結ピン6とは反対方向に該ローラ4の中心O2回りに上方に移行してピストンロッド5fが伸長し、ピストン体5dがその伸長量に応じてシリンダ5a内を一端から他端側に向かって摺動する。
【0027】
ピストン体5dが摺動すると、該ピストン体5dによってシリンダ5a内の粘性液体5cが圧縮されると共に該圧縮力によってピストン体5dに穿設しているオリフィス5eを通じて粘性液体5cがピストン体5dによって区画される一方のシリンダ室から他方のシリンダ室内に流出し、このピストン体5dの圧縮時に発生する粘性抵抗によって振動エネルギーを吸収すると共にローラ3、4の転動により下部構造物9の振動が上部構造物8に伝達するのを抑制できる。
【0028】
地震時の想定最大水平振幅は略30cm内外であり、その最大水平振幅時に転動する一対のローラ3、4の水平距離は15cm内外であるから、ローラの半径を5cm以上にしておけば、水平方向の往復振動に対してローラ3、4が180 度以下の回転角度でもって往復転動することになり、この往復転動によってシリンダ5a内でピストン体5dが往復動して粘性ダンパー5が伸縮し、その時の粘性抵抗によって上述したように振動エネルギーを吸収し、地震が収まった時には上部構造物8の揺れを短時間で解消するものである。勿論、ローラ3、4が180 度以上の角度や数回転する場合があっても粘性ダンパー5のピストンロッド5fは伸縮を繰り返しながら減衰作用を発揮することができる。
【0029】
ローラ3、4の転動によって伸縮するピストンロッド5fの伸縮長、即ち、粘性ダンパー5のストロークの変動は、例えば、ローラ3、4の半径を10cmとした場合、図7に示すように、ローラ3、4の回転角によって0〜40cmの範囲内で伸縮を繰り返すことになる。なお、図6に示すように粘性ダンパー5として、そのシリンダ5a内にオリフィス5eを貫設している一対のピストン体5d、5dを設けておき、これらのピストン体5d、5dのロッドを一対のローラ3、4の端面上における外周部に回動自在に連結した構造としておいてもよい。
【0030】
また、図8は構造物に作用する減衰力を示すもので、同図において、同一径であるローラ3、4の半径をr1、ローラ3、4の中心から粘性ダンパー5の連結部までの半径をr2、上部板状体1に対するローラ3、4の接点A、Bにおいて上部板状体1(上部構造物8)にそれぞれ作用する減衰力をF1、F2、粘性ダンパー5が発揮する減衰力Pの水平、垂直成分を夫々P1、P2とすると、ローラ3、4と上部板状体1との接点A、Bにおけるモーメントの釣り合いより、(1) 式及び(2) 式が求められ、構造物に作用する減衰力は(3) 式により表される。
【0031】
【数1】
【0032】
【数2】
【0033】
【数3】
【0034】
(1) 、(2) 式を(3) 式に代入すると(4) 式が求まる。
【0035】
【数4】
【0036】
また、粘性ダンパー5が発揮する減衰力はピストン体5dの速度によって定まるため、ローラ3、4の回転角及び回転角速度の関数として求められる。よって、ローラ3、4に大径フランジ部3a、4aを設けて該大径フランジ部3a、4a間に粘性ダンパー5を連結することにより構造物に作用する減衰力はr2/r1 倍となる。
【0037】
上記減衰装置Aにおいて、上下板状体1、2のローラ案内面1a、2aが互いに平行な平坦面である場合には、この減衰装置Aと共に図9に示すように、鋼板とゴム製弾性板とを交互に積層してなる複数のアイソレータ13を上下構造物8、9の対向面間に介在してもよい。
【0038】
さらに、このようなアイソレータ13を採用することなく、減衰装置Aにおける上下板状物1、2のローラ案内面1a、2aを上側のローラ案内面1aにおいては上向き凹弧面に、下側のローラ案内面2aにおいては下向き凹弧面に形成しておいてもよく、このように構成すると、地震が収まった時にはローラ3、4を介して上部構造物8を元の位置に確実に復帰させることができる。さらに、上下板状体1、2のローラ案内面1a、2aが互いに平行な平坦面である場合において、軸芯が上下に偏心しているローラ部を一体的に形成してなる一対のローラを平行に配して中心が下側に偏心しているローラ部を上部板状物1のローラ案内面1aに、中心が上側に偏心しているローラ部を下部板状物2のローラ案内面2aに、それぞれ接して転動させるように構成しておいてもよく、このように構成した場合においても、上述したように地震が収まった時にはローラ3、4を介して上部構造物を元の位置に確実に復帰させることができる。
【0039】
また、上記実施例においては、一対のローラ3、4の端面外周部間を粘性ダンパー5によって連結しているが、3本以上のローラを並設して隣接するローラの端面外周部間を各々粘性ダンパーによって連結した構造としてもよく、この場合においても、少なくとも1本以上のローラを大径に形成して上部板状物の下面に形成した上向き凹弧面と下部板状物の上面に形成した下向き凹弧面との間に介在させておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】粘性ダンパーを断面した減衰装置の正面図、
【図2】上部板状体を取り外した状態の平面図、
【図3】上下構造物間に介在した使用状態を示す正面図、
【図4】上部構造物を取り除いた状態の平面図、
【図5】減衰作用を説明するための正面図、
【図6】粘性ダンパーの変形例を示す一部を断面した正面図、
【図7】ローラの回転角と粘性ダンパーのストロールとの線図、
【図8】減衰力を説明するための簡略図、
【図9】アイソレータと共に用いた状態の一部を断面した簡略正面図。
【符号の説明】
1 上部板状体
2 下部板状体
1a、2a 上下案内面
3、4 ローラ
3a、4a 大径のフランジ部
5 粘性ダンパー
8 上部構造物
9 下部構造物
A 減衰装置
Claims (5)
- 上部板状体と下部板状体との間に軸芯を互いに平行にして一対のローラを転動自在に介在し、これらのローラの端面間に粘性ダンパーを介装して該粘性ダンパーの一端を一方のローラの端面外周部に、他端を他方のローラの端面外周部に夫々回動自在に連結し、上記一対のローラの転動により該粘性ダンパーを伸縮させて減衰能を発揮させるように構成したことを特徴とする構造物の減衰装置。
- 一対のローラの端面に該端面の外周縁から外方に突出したフランジ部を一体に設け、これらのフランジ部の外周部間に粘性ダンパーを介装、連結していることを特徴とする請求項1に記載の減衰装置。
- 上部板状体を上部構造物の下面に固着すると共に下部板状体を下部構造物の上面に固着していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造物の減衰装置。
- 上部構造物と下部構造物の間に減衰装置を上側の減衰装置のローラの軸芯と下側の減衰装置のローラの軸芯とを互いに直交させて上下2段に積層状態で介在させていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の構造物の減衰装置。
- 上側の減衰装置の下部板状体と下側の減衰装置の上部板状体とは共通した1枚の中間板状体によって形成していることを特徴とする請求項4に記載の構造物の減衰装置。
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