JP3586062B2 - 車両の車速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車速制御装置に係り、カーブ手前で車両を自動的に減速可能な車速制御装置に関する。
【0002】
【関連する背景技術】
近年、グローバルポジショニングシステム(GPS)等からの情報を用いて車両の現在走行位置を地図上で認識し、位置情報をディスプレイ上の画像によりドライバに伝達可能なナビゲーションシステムが多用されている。これにより、ドライバは特にナビゲータ(案内人)を必要とせずとも車両位置や車両の走行方向等を常に確実に把握することができる。
【0003】
さらに、最近では、このナビゲーションシステムからの種々の情報を用い、車両の運転操作性をより一層向上させるとともに車両を適正な走行状態に制御することが考えられている。
例えば、特開平6−36187号公報には、ナビゲーションシステムからの地図情報から車両前方のカーブでの適正旋回車速(カーブ進入速度)を求め、さらに、現在の車速とカーブまでの距離とからこの適正旋回車速となるまでに要求される減速度を求め、この減速度が予め設定された安全基準減速度(許容減速度)よりも大となったとき車両をカーブ手前で減速制御するよう構成された装置が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に開示された装置では、カーブ手前での車両の基準減速度(許容減速度)を主に安全性を考慮して路面状態に応じて設定するようにしている。
しかしながら、通常、車両の走行状態はドライバの嗜好に応じて異なるものであり、このことはカーブ手前での減速走行時においても同様であって、上記公報に開示された装置のように路面状態にのみ基づいて基準減速度を一様に設定することは運転者の意思に沿わない虞があり好ましいことではない。
【0005】
つまり、高速走行を好み「きびきび」した運転状態を好むドライバであればカーブ手前でもカーブに比較的接近するまで高速で走行する傾向にあり、この場合、上記のように一様に設定された基準減速度で減速制御するとなるとドライバは減速開始タイミングが早過ぎるような違和感を感じることになり好ましくなく、一方、低速走行を好み「ゆったり」した運転状態を好むドライバであればカーブのかなり手前で減速操作する傾向にあり、この場合、上記基準減速度で減速制御するとなると減速開始タイミングが遅過ぎるような違和感を感じることになりやはり好ましいことではないのである。
【0006】
本発明は、上述した事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、カーブ手前でドライバの意思に応じて違和感なく自動減速を実施可能な車両の車速制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明では、カーブ検出手段によって車両が走行する道路地図情報を出力する道路地図情報出力手段及び車両の現在位置を検出し出力する現在位置出力手段からの各出力情報に基づき車両前方の道路のカーブの存在を検出し、曲率半径検出手段によってカーブの曲率半径を検出し、ドライバ状態検出手段によってドライバの運転嗜好を検出し、車速検出手段によって車速を検出し、距離検出手段によってカーブの開始地点から車両までの距離を検出し、進入速度演算手段によって曲率半径情報に基づきカーブをトレース可能な車両のカーブ進入速度を演算し、減速開始距離設定手段によってドライバの運転嗜好情報、カーブ進入速度及び車速情報に基づきカーブに対し車両が減速を開始すべき減速開始距離を設定し、カーブに進入する前に距離が減速開始距離の範囲内となったとき、減速手段によってカーブ進入速度に向け車速を低減させ車両を減速制御することを特徴とする。
【0008】
従って、道路地図情報出力手段及び現在位置出力手段からの各出力情報に基づいて車両前方の道路のカーブの存在が検出されると、カーブの曲率半径に基づいてカーブをトレース可能な車両のカーブ進入速度が求められ、ドライバの運転嗜好、当該カーブ進入速度及び車速情報に基づきカーブに対し車両が減速を開始すべき減速開始距離が設定される。そして、カーブからの距離が上記減速開始距離の範囲内となるとカーブ進入速度に向けて車速が低減され、車両が減速制御される。
【0009】
つまり、本発明では、ドライバの運転嗜好を考慮してカーブ手前で減速を開始する距離、即ち減速開始距離が設定されることになり、例えば、ドライバが「きびきび」した運転状態を好む場合には、減速開始距離が短く設定され、ドライバの減速操作が尊重されて車両がカーブに比較的近い位置となるまで減速制御の実施が留保され、一方、ドライバが「ゆったり」した運転状態を好む場合には、減速開始距離が長く設定され、自動減速制御が優先されて車両がカーブから比較的遠い位置において減速制御が開始可能とされる。
【0010】
これにより、車両がカーブに進入する前においてカーブ進入速度に向けて減速制御が行われる際の減速開始タイミングがドライバの意思(運転能力)に応じた適度なものとされ、故にドライバが違和感を感じることが好適に防止されて良好な運転走行が維持可能とされる。
また、請求項2の発明では、カーブ検出手段によって車両が走行する道路地図情報を出力する道路地図情報出力手段及び車両の現在位置を検出し出力する現在位置出力手段からの各出力情報に基づき車両前方の道路のカーブの存在を検出し、曲率半径検出手段によってカーブの曲率半径を検出し、ドライバ状態検出手段によってドライバの運転嗜好を検出し、車速検出手段によって車速を検出し、距離検出手段によってカーブの開始地点から車両までの距離を検出し、進入速度演算手段によって曲率半径情報に基づきカーブをトレース可能な車両のカーブ進入速度を演算し、許容減速度設定手段によってドライバの運転嗜好情報に基づき車両の許容減速度を設定し、減速度演算手段によってカーブ進入速度、車速情報及び距離情報に基づき車両に要求される要求減速度を算出し、車両がカーブに進入する前に要求減速度が許容減速度を超えたとき、減速手段によってカーブ進入速度に向け許容減速度で車速を低減させ車両を減速制御することを特徴とする。
【0011】
従って、道路地図情報出力手段及び現在位置出力手段からの各出力情報に基づいて車両前方の道路のカーブの存在が検出されると、カーブの曲率半径に基づいてカーブをトレース可能な車両のカーブ進入速度が求められ、ドライバの運転嗜好に基づいて車両の許容減速度が設定される。そして、カーブ進入速度、車速情報及びカーブからの距離情報に基づき算出され車両に要求される要求減速度が上記許容減速度を超えるとカーブ進入速度に向けて車速が低減され、車両が減速制御される。
【0012】
つまり、当該請求項2の発明では、ドライバの運転嗜好を考慮して許容減速度が設定されることになり、例えば、ドライバが「きびきび」した運転状態を好む場合には、許容減速度が大きく設定され、ドライバの減速操作が尊重されて車両が比較的カーブ近傍になるまで減速制御の実施が留保され、一方、ドライバが「ゆったり」した運転状態を好む場合には、許容減速度が小さく設定され、自動減速制御が優先されて比較的早期に減速制御が開始可能とされる。
【0013】
これにより、車両がカーブに進入する前においてカーブ進入速度に向けて減速制御が行われる際の減速開始タイミングと減速度とがドライバの意思(運転能力)に応じた適度なものとされ、故にドライバが違和感を感じることが好適に防止されて良好な運転走行が維持可能とされる。
また、請求項3の発明では、ドライバ状態検出手段は、加速操作手段による加速操作量を検出する加速操作検出手段、操舵操作手段による操舵操作量を検出する操舵操作検出手段及び制動操作手段による制動操作量を検出する制動操作検出手段からの各操作情報に基づきドライバの運転嗜好を検出することを特徴とする。
【0014】
従って 、別途ドライバ状態検出手段を設けることなく、加速操作検出手段、操舵操作検出手段、制動操作検出手段によってドライバの運転嗜好が容易且つ確実に検出可能とされる。
また、請求項4の発明では、ドライバ状態検出手段は車両が通過した過去の複数のカーブのカーブ間車速を記憶するカーブ間車速情報記憶手段を含んでおり、該カーブ間車速情報記憶手段からの情報に基づきドライバの運転嗜好を検出することを特徴とする。
【0015】
従って、ドライバの運転嗜好が過去の複数のカーブのカーブ間車速情報に基づいて検出されることになり、例えば、ドライバがカーブ間を過去に高速で走行していたような場合には、ドライバは「きびきび」した運転状態を好んでいるとみなされ、一方、ドライバがカーブ間を低速で走行していたような場合には、ドライバは「ゆったり」した運転状態を好んでいるとみなされる。故に、別途ドライバ状態検出手段を設けることなく、ドライバの運転嗜好がやはり容易に検出可能とされる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態としての実施例を説明する。
図1を参照すると、本発明に係る車速制御装置を含む車両(乗用車等)の制御系の概略構成がブロック図で示されている。同図に示すように、車両に搭載されたエンジン1は、電子コントロールユニット(ECU)10に電気的に接続されており、当該ECU10からの出力信号に応じて運転制御される。
【0017】
エンジン1は、例えばガソリンエンジンであって、その出力軸は自動変速機2、駆動軸3を介して駆動輪4に接続されている。
自動変速機2は、図示しない複数組のプラネタリギヤの他、油圧クラッチや油圧ブレーキ等の複数の油圧摩擦係合要素を内蔵しており、これら複数の油圧摩擦係合要素の係合の組合せに応じて変速段が決定されるよう構成されている。詳しくは、当該自動変速機2には、複数のソレノイドバルブを備えた変速制御ユニット(共に図示せず)が設けられており、これら複数のソレノイドバルブがECU10に電気的に接続されている。そして、ECU10からそれぞれ対応するソレノイドバルブに向けて出力信号(シフト信号)が供給されると、対応するソレノイドバルブが各々開閉弁して所定の油圧摩擦係合要素が作動し変速が行われる。より詳しくは、当該自動変速機2にあっては、変速段(目標変速段)は予め設定された変速マップから車速Vとアクセル開度θTHに基づいて決定され、これに応じたシフト信号が変速制御ユニットに供給されて変速が実施される。
【0018】
なお、エンジン1及び自動変速機2の構成等については公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
ECU10は、図示しない入出力装置、多数の制御プログラムを内蔵した記憶装置(不揮発性RAM,ROM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えている。そして、その入力側には、上記駆動輪4等の各車輪の車輪回転速度NHを検出する複数の車輪速センサ20、車両の操舵を行う操舵装置、即ちハンドル(操舵操作手段)24のハンドル角θHを検出するハンドル角センサ(操舵操作検出手段)26、車両に作用する横方向の加速度(横加速度Gy)を検出する横Gセンサ30、車両に作用する前後方向の加速度(前後加速度Gx)を検出する前後Gセンサ32等の各種センサ類が接続されている。なお、後述するように、車輪速センサ20により検出される車輪回転速度NHからは車速Vが算出される。
【0019】
また、車両には、上記エンジン1への燃料供給量を調節して車両の加速操作を行うアクセルペダル36や、上記駆動輪4等の車輪に制動力を作用させるブレーキペダル(制動操作手段)40が設けられており、ECU10の入力側には、アクセルペダル(加速操作手段)36の操作量、即ちアクセル開度θAを検出するアクセル開度センサ(加速操作検出手段)38、ブレーキペダル40の操作量を検出するブレーキセンサ(制動操作検出手段)42も接続されている。
【0020】
さらに、ECU10の入力側には、ナビゲーションシステム(以下、ナビシステムと略す)50も接続されている。この、ナビシステム(カーブ検出手段)50は、グローバルポジショニングシステム(GPS、現在位置出力手段)52からの位置情報や、上記車輪速センサ20及びハンドル角センサ26等からの車両情報に基づき、車両の現在位置を地図データ部(道路地図情報出力手段)54に記憶された道路地図上で把握し出力する装置であるが、その構成については公知であるためここではその詳細についての説明は省略する。
【0021】
一方、ECU10の出力側には、上記エンジン1、自動変速機2の他、駆動輪4等の車輪に制動力を付加するブレーキ装置60が接続されている。
ブレーキ装置60は、図示しないが、主として油圧マスタシリンダ、当該油圧マスタシリンダを作動させる電動アクチュエータ及び油圧マスタシリンダに高圧油路で接続され、油圧により車輪に設けられたディスクブレーキ(またはドラムブレーキ)を制動作動させるブレーキアクチュエータ等から構成されており、実際には、ECU10は上記電動アクチュエータに接続されている。従って、ECU10から駆動信号が電動アクチュエータに供給されると、油圧マスタシリンダが自動で作動して高圧の油圧が発生し、この高圧の油圧によりブレーキアクチュエータが作動しディスクブレーキ(またはドラムブレーキ)が制動力を発生する。なお、油圧マスタシリンダには、通常の車両と同様に電動アクチュエータのみならず上記ブレーキペダル40も連結されており、これにより当然ながらドライバの操作(意思)によってもディスクブレーキ(またはドラムブレーキ)を制動作動可能である。
【0022】
さらに、ECU10の出力側には、表示・音声ガイド装置70が接続されている。詳しくは、表示・音声ガイド装置70は、スピーカ(図6中符号72)と、運転席前部のウィンドウシールド上に互いに頂点を外方向に向けた三角表示灯(または矢印表示灯)を投影するヘッドアップディスプレイ(HUD)(図6中符号74)とから構成されている。
【0023】
以下、このように構成された車両の制御系のうち本発明に係る車速制御装置のシステム構成及び作用について説明する。
図2を参照すると、ECU10により実行される走行補助システムの制御内容がブロック図で示されており、以下、図2を参照して車速制御装置を含む走行補助システムの制御手順を説明する。
【0024】
この走行補助システムは、主として車両前方のカーブ状況をドライバに知らせる表示・音声ガイドシステム部と、車両前方のカーブ状況に応じてトラクションコントロールシステム(TCL制御部)や自動ブレーキシステム等の減速手段を作動させる車速制御システム部(車速制御装置)とから構成されている。なお、TCL制御は、アクセルペダル36が操作されている場合であっても車速Vが車両状態(横加速度Gy等)に応じて予め設定された設定車速Vsとなるようアクセル操作を自動的に実施し、例えばカーブ路等において車両を安定したトレース状態に保持するシステムである。
【0025】
先ず、表示・音声ガイドシステム部について説明する。
ナビシステム50からの車両位置情報がECU10に入力し、車両前方にカーブ路があることが認識されると、カーブ状態認識部100において、そのカーブ路が右カーブであるのか左カーブであるのか、及びカーブ路が単独カーブであるのか複合カーブ(例えば、S字カーブ)であるのかがナビシステム50からの情報に基づき判別され認識される。
【0026】
そして、同時に、前方カーブR算出部(曲率半径検出手段)102において、そのカーブ路の曲率半径R(或いは曲率)がやはりナビシステム50からの情報に基づき算出される。詳しくは、ここでは、例えば地図上のカーブ形状をカーブの開始地点、終了地点及び中間地点より円近似することによって曲率半径Rを求める。カーブ路が複合カーブである場合には、それぞれのカーブ毎に曲率半径Rが算出される。
【0027】
このようにしてナビシステム50からの情報に基づきカーブ路のカーブ状態が認識され、カーブ路の曲率半径Rが算出されると、カーブ状態情報については表示・音声ガイド出力部106に供給され、カーブ路の曲率半径R情報については、曲率変化判定部108及びR難易度判定部110に供給される。
曲率変化判定部108では、上記のように算出されたカーブ路の曲率半径R情報がさらに細かく演算処理される。つまり、一のカーブ路での曲率半径Rの変化が演算処理され、曲率半径Rが次第に大きく緩くなるカーブであるのか、或いは小さくきつくなるカーブであるのかが判定される。
【0028】
ここでは、先ず、曲率半径変化量ΔRを次式(1)に基づき算出する。
曲率半径変化量ΔR=(基準点R0−距離dc前方のR1)/(基準点R0)…(1)
ここに、基準点R0は、図3に示すように、カーブの開始地点でのカーブ中央の曲率半径を示し、距離dc前方のR1は、基準点R0から距離dcだけ前方の地点でのカーブ中央の曲率半径を示している。なお、距離dcは任意に決定された値である。
【0029】
そして、図4に示すような距離dcと曲率半径変化量ΔRとの関係を表すグラフ上において、曲率半径変化量ΔRが所定値ΔR1以上となったか否かを判別する。この結果、曲率半径変化量ΔRが所定値ΔR1以上となった場合には、カーブ路が次第にきつくなると判定する。一方、距離dc前方においても曲率半径変化量ΔRが所定値ΔR1に満たなければ、カーブ路は全体として略同一の曲率半径Rを有していると判定する。
【0030】
そして、このように求められた曲率変化情報は、上記カーブ状態情報と同様に表示・音声ガイド出力部106に供給される。
また、R難易度判定部110では、上記のように算出されたカーブ路の曲率半径R情報に基づき、曲率半径Rの難易度が判定される。即ち、曲率半径Rが大きく旋回時にハンドル24の操作量が小さくてよいのか(Easy)、ある程度ハンドル24の操作量が必要なのか(Mid)、或いは曲率半径Rが小さく旋回時に大きくハンドル24を操作しなければならないのか(Hard)が判定される。
【0031】
ここでは、曲率半径Rに基づき、予め図5に示すような難易度判定マップが設けられており、当該難易度判定マップより車両前方のカーブ路の曲率半径Rに対応した難易度(EasyまたはMidまたはHard)が判定される。つまり、車両前方のカーブ路の曲率半径Rが大きく緩ければ「Easy」と判定され、曲率半径Rがそれほど大きくない場合には「Mid」と判定され、曲率半径Rが小さくきつければ「Hard」と判定される。
【0032】
ところで、本システムでは、スポーティ度判定部(ドライバ状態検出手段)120において、車両走行のスポーティ度が判別される。スポーティ度とは、つまり、ドライバの車両運転状態(ドライバの運転嗜好)が「きびきび」したものであるのか「ゆったり」したものであるのかを示す指標である。このスポーティ度は、アクセルペダル36の操作速度、ハンドル24の操作速度、ブレーキペダル40の操作速度等から容易に求めることができる。
【0033】
つまり、スポーティ度判定部120では、アクセル開度センサ38により検出されるアクセル開度θAの変化速度ΔθA、ハンドル角センサ26により検出されるハンドル角θTHの変化速度ΔθTH、ブレーキセンサ42により検出されるブレーキペダル40の操作量の変化速度を演算処理して所定期間記憶し、これらの記憶値に応じてスポーティ度を決定する。即ち、これらアクセル開度変化速度ΔθA、ハンドル角変化速度ΔθTH、ブレーキペダル操作変化速度の記憶値がそれぞれ大きければ、ドライバが「きびきび」運転を好んでいるとみなしてスポーティ度を大と判別する。一方、アクセル開度変化速度ΔθA、ハンドル角変化速度ΔθTH、ブレーキペダル操作変化速度の記憶値がそれぞれ小さければ、ドライバが「ゆったり」運転を好んでいるとみなしてスポーティ度を小と判別する。
【0034】
また、このスポーティ度は、横Gセンサ30からの横加速度Gy情報と前後Gセンサ32からの前後加速度Gx情報とからも求めることができる。
この場合、スポーティ度は、以下のようにして規定される。
先ず横加速度Gy情報に基づいてタイヤ負荷度が次式(2)から算出される。
(タイヤに作用する水平力)/(タイヤの最大グリップ力) …(2)
ここに、タイヤに作用する水平力は横加速度Gyの関数として求められる。また、タイヤの最大グリップ力はタイヤの特性値である。
【0035】
さらに、前後加速度Gx情報に基づいてエンジン負荷度が次式(3)から算出される。
(前後加速度Gx)/(発生可能な最大加速度) …(3)
ここに、発生可能な最大加速度は車両重量とエンジン1の特性とに基づく値である。
【0036】
そして、これらタイヤ負荷度情報及びエンジン負荷度情報から頻度分布を求め、タイヤ負荷度及びエンジン負荷度が共に大きくなる頻度が高い程ドライバは「きびきび」運転を好んでいるとみなしてスポーティ度を大と判定し、一方、タイヤ負荷度及びエンジン負荷度が共に小さい場合の頻度が高ければ、ドライバは「ゆったり」運転を好んでいるとみなしてスポーティ度を小と判定する。
【0037】
このようにしてスポーティ度が決定されると、当該スポーティ度情報も上記R難易度判定部110に供給される。そして、このスポーティ度情報に基づいて、上記図5中に斜線で示した領域、即ち「Easy」と「Mid」とが重なる部分及び「Mid」と「Hard」とが重なる部分の難易度判定が行われる。
つまり、スポーティ度が大であり、ドライバが「きびきび」運転を好んでいる場合には、「Easy」と「Mid」とが重なる部分の難易度は「Easy」と判定され、「Mid」と「Hard」とが重なる部分では「Mid」と判定される。即ち、ドライバが「きびきび」運転を好んでいる場合には、ドライバの道路状況に対する適応性(レスポンス)は良くドライバは機敏な動作が可能とみなすことができ、この場合には、多少カーブ路の曲率が大きくても難易度は小さい側(「Easy」及び「Mid」)に判定するのである。
【0038】
一方、スポーティ度が小であり、ドライバが「ゆったり」運転を好んでいる場合には、「Easy」と「Mid」とが重なる部分の難易度は「Mid」と判定され、「Mid」と「Hard」とが重なる部分では「Hard」と判定される。即ち、ドライバが「ゆったり」運転を好んでいる場合には、ドライバの道路状況に対する適応性(レスポンス)はそれほど高くないとみなすことができ、この場合には、多少カーブ路の曲率が小さいと思われる場合であっても安全性を考慮して難易度は大きい側(「Mid」及び「Hard」)に判定する。
【0039】
なお、当該スポーティ度情報に基づき、上記自動変速機2の変速制御用の変速マップ上の変速タイミングも補正変更される。つまり、「きびきび」運転では比較的車速Vが大きくなるまで低速段が保持されるように変更され、「ゆったり」運転では比較的車速Vが小さい時点で高速段に変速されるように変更される。しかしながら、当該変速制御に関してはここでは直接関係ないため詳細な説明は省略する。
【0040】
そして、当該曲率半径Rの難易度情報についても表示・音声ガイド出力部106に供給される。
なお、難易度情報を車速Vと曲率半径Rとに基づいて求めるようにしてもよい。
以上のようにして、カーブ状態情報、曲率変化情報及びR難易度情報が表示・音声ガイド出力部106に供給されると、表示・音声ガイド出力部106では、これらカーブ状態情報、曲率変化情報及びR難易度情報を表示・音声ガイド装置70に出力する。
【0041】
図6を参照すると、表示・音声ガイド装置70における音声出力及び表示出力の一例が示されている。
例えば、車両前方のカーブ路が右単独カーブ路であって、曲率半径変化量ΔRが小さく、難易度が小さい場合には、スピーカ72から「Easy Right.」のように音声出力するとともに、HUD74の右側の三角表示灯を緑色で点灯または点滅させる。
【0042】
また、例えば、図7に示すように、カーブ路が右カーブC1から左カーブC2に連続的に移行する複合カーブ路(S字カーブ路)で、難易度が最初の右カーブC1では小さく後の左カーブC2では大きい場合には、スピーカ72から「EasyRight to Hard Left.」のように音声出力するとともに、HUD74の右側の三角表示灯を先ず緑色で点灯または点滅させ、最初の右カーブ進入後、HUD74の左側の三角表示灯を今度は赤色で点灯または点滅させる。
【0043】
また、例えば、上記図3に示すように、カーブ路が右単独カーブで、最初は曲率半径Rが大きく難易度が小さいものの曲率半径変化量ΔRが大きい場合には、スピーカ72から「Easy and Hard Right.」のように音声出力するとともに、HUD74の右側の三角表示灯を緑色で点灯または点滅させた後赤色で点灯または点滅させる。或いは、HUD74の右側の三角表示灯を緑色、赤色の順に交互に点灯または点滅させる。
【0044】
このように、カーブ状態情報、曲率変化情報及びR難易度情報をカーブ路手前でドライバに対し予め表示或いは音声のみならず表示と音声の両方で確実に知らしめることにより、ドライバはカーブ路走行時の運転操作度合を予測でき、実際にカーブ路を走行する際には急激なハンド操作等することなくスムース且つ安全にカーブ路走行することが可能となる。
【0045】
次に、本発明に係る車速制御システム部について説明する。
ナビシステム50からの車両位置情報がECU10に入力し、車両前方にカーブ路があることが認識されると、カーブ進入までの距離算出部(距離検出手段)104において、カーブ路に進入するまでの距離、即ちカーブまでの距離dが、上記ナビシステム50からの情報に基づき算出される。そして、この距離情報dはTCL実施判定部130に供給される。
【0046】
また、旋回最大横G設定部124において、スポーティ度判定部120からの上記スポーティ度情報に基づき、カーブ路走行時の旋回最大横Gが設定される。つまり、ここでは、カーブ路走行時に遠心力により発生する車両の横加速度Gyの最大許容横加速度Gymaxを設定する。
スポーティ度が大で、ドライバが「きびきび」運転を好んでいる場合には、最大許容横加速度Gymaxは比較的大きな値Gymax1(例えば、0.7G)とされ、一方、ドライバが「ゆったり」運転を好んでいる場合には、最大許容横加速度Gymaxはやや小さな値Gymax2(例えば、0.5G)とされる。つまり、ドライバが「きびきび」運転を好んでいるような場合には、ドライバはハンドル24を強く握りながらきびきび操作する傾向にあり、横加速度Gyが比較的大きくてもドライバはハンドル24を充分に操作可能とみなして最大許容横加速度Gymaxを大きな値Gymax1とし、一方、ドライバが「ゆったり」運転を好んでいる場合には、ドライバはハンドル24を軽く握りながら緩やかに操作する傾向にあり、横加速度Gyが大きくなるとドライバはハンドル24を充分に操作しきれないとみなして最大許容横加速度Gymaxを小さな値Gymax2とするのである。
【0047】
旋回最大横G設定部124において最大許容横加速度Gymaxが設定されると、当該最大許容横加速度Gymax及び上記前方カーブR算出部120において算出された曲率半径Rとに基づき、旋回最大車速推定部(カーブ進入速度演算手段)126において、カーブ路走行時の旋回最大車速(カーブ進入速度)Vmaxが推定される。
【0048】
ここでは、旋回最大車速Vmaxは次式(4)乃至(6)から算出され推定される。
Gy=γ・V …(4)
γ=V・θTH/(1+A・V2)・l …(5)
R=(1+A・V2)・l/θTH …(6)
ここに、γはヨーレイト、Aはスタビリティファクタ、lはホイールベースである。
【0049】
具体的には、上式(4)乃至(6)からヨーレイトγとハンドル角θTHを消去して車速Vについて解き、これに最大許容横加速度Gymax1,Gymax2と上記曲率半径Rとを代入してそれぞれ旋回最大車速Vmax1,Vmax2を求める。そして、このように推定された旋回最大車速Vmax1,Vmax2は、上記距離情報dと同様、TCL実施判定部130に供給される。
【0050】
さらに、スポーティ度判定部120からの上記スポーティ度情報に基づき、最大減速G設定部(許容減速度設定手段)128において、カーブ路進入前の最大減速Gが設定される。つまり、カーブ路走行に入る前にはドライバは通常は車両を減速させるが、このとき発生する車両の前後加速度Gxの最大許容前後加速度Gxmaxが設定される。この最大許容前後加速度Gxmaxは、TCL実施判定部130におけるTCL制御を実施するか否かの判別の判別閾値に適用される。
【0051】
スポーティ度が大で、ドライバが「きびきび」運転を好んでいる場合には、最大許容前後加速度Gxmaxは比較的大きな値Gxmax1(例えば、1.0G)とされ、一方、ドライバが「ゆったり」運転を好んでいる場合には、最大許容前後加速度Gxmaxはやや小さな値Gxmax2(例えば、0.7G)とされる。つまり、ドライバが「きびきび」運転を好んでいるような場合には、ドライバは大きな制動力を比較的急激に車両に付加させる傾向にあり、ドライバはカーブ路進入直前に大きな前後加速度Gxを発生させながらも充分に制動を実施可能とみなして最大許容前後加速度Gxmaxを大きく値Gxmax1とする。即ち、この場合には、ドライバによる制動を優先してTCL制御(減速制御)が簡単には実施されないようにするのである。
【0052】
一方、ドライバが「ゆったり」運転を好んでいる場合には、ドライバは緩やかに制動力を車両に付加させる傾向にあり、ドライバは通常はカーブ路進入のかなり手前で減速し、カーブ路進入直前では大きな前後加速度Gxを発生させることが困難であるとみなして最大許容前後加速度Gxmaxを小さく値Gxmax2とする。即ち、この場合にはTCL制御(減速制御)が比較的容易に実施されるようにするのである。
【0053】
当該最大許容前後加速度情報GxmaxについてもTCL実施判定部130に供給される。
また、車速算出部(車速検出手段)132において、車輪速センサ20からの車輪回転速度情報NHに基づき現在の車速Vが算出される。そして、当該車速情報VについてもTCL実施判定部130に供給される。
【0054】
TCL実施判定部130では、上述のように求められた旋回最大車速Vmax、最大許容前後加速度Gxmax、距離情報d及び車速VよりTCL制御を実施するか否かの判別を行う。このTCL実施判定部130では、先ず、TCL実施判定部130内の減速G演算部(減速度演算手段)131において、旋回最大車速Vmax、現在の車速V及びカーブ路の開始位置からの距離dに基づき現時点で車両に要求される減速G(要求減速度)が演算される。
【0055】
ここで、図8を参照すると、旋回最大車速Vmax及び最大許容前後加速度Gxmaxにおける距離情報dと車速Vとの関係が示されており、以下同図を参照してTCL制御の実施判定方法を説明する。
図8中、実線が、スポーティ度が大でドライバが「きびきび」運転を好んでいる場合、即ち旋回最大車速Vmax1及び最大許容前後加速度Gxmax1(例えば、1.0G)である場合の距離dと車速Vとの関係を示しており、一点鎖線が、スポーティ度が小でドライバが「ゆったり」運転を好んでいる場合、即ち旋回最大車速Vmax2及び最大許容前後加速度Gxmax2(例えば、0.7G)である場合の距離dと車速Vとの関係を示している。
【0056】
図8中に破線で示すように、車両が車速Vを略一定のままにカーブ路に接近すると(矢印で示す)、カーブ路の開始位置までの距離dが大側から小側に移行する。そして、ドライバが「きびきび」運転を好んでいると判定されている場合であれば、距離d1、車速V1において上記「きびきび」運転に対応する実線を横切ることになる。
【0057】
しかしながら、このように破線が実線を横切った後、車速Vが当該車速V1よりも大きいままに距離dがさらにカーブ路に接近してしまうと、車速Vを旋回最大車速Vmax1にまで低下させるためには上記最大許容前後加速度Gxmax1(例えば、1.0G)より大きな減速G(要求減速度)を必要とすることになり、もはや良好な走行状態を維持することが不可能となる。そこで、このように距離dと車速Vとの関係(破線)が最大許容前後加速度Gxmax1(例えば、1.0G)での距離dと車速Vとの関係(実線)を超えたとき、即ち、減速G(要求減速度)が最大許容前後加速度Gxmax1を超えたときには、TCL制御(減速制御)が必要と判定する。これにより、TCL制御部134に向けてTCL開始信号が出力され、TCL制御部(減速手段)134においてTCL制御(減速制御)が開始される。詳しくは、TCL制御部134では、エンジン1に向けて制御信号が供給され、燃料制限制御等の運転制御が実施される。
【0058】
実際には、ここでは、最大許容前後加速度Gxmax1(例えば、1.0G)に対応する実線上を変化する車速Vを目標にTCL制御を行う。このようにTCL制御による減速制御が実施されると、実際の距離dと車速Vとの関係(破線)が、図8に示すように実線に沿い変化することになり、車両は、カーブ路手前から減速Gが最大許容前後加速度Gxmax1(例えば、1.0G)を超えることなく旋回最大車速(カーブ進入速度)Vmax1まで違和感なく良好に減速することになる。
【0059】
なお、現実には、図8に示すように、TCL制御部134に向けてTCL開始信号が出力された後、制御遅れによりオーバシュートが発生するが、このオーバシュート量は実質的に制御上問題のない範囲に抑えられている。
また、ドライバが「ゆったり」運転を好んでいると判定されている場合であれば、破線は距離d2、車速V2において、上記「ゆったり」運転に対応する一点鎖線を横切ることになる。従って、この場合には、この時点、即ち、上記同様に減速G(要求減速度)が最大許容前後加速度Gxmax2を超えた時点でTCL制御が必要と判定する。つまり、「ゆったり」運転の場合には、このようにカーブ路からかなり手前の距離d2(d2>d1)の位置でTCL制御が必要と判別され、ドライバの意思に即して「きびきび」運転の場合よりも早い時点でTCL制御(減速制御)が開始される。これにより、実際の距離dと車速Vとの関係(二点鎖線)は図8中に示すように一点鎖線に沿い変化することになり、車両は、カーブ路の充分手前から減速Gが最大許容前後加速度Gxmax2(例えば、0.7G)を超えることなく旋回最大車速(カーブ進入速度)Vmax2までやはり違和感なく良好に減速することになる。
【0060】
ところで、当該図8は、TCL制御(減速制御)を開始すべき距離(減速開始距離)をドライバの運転状態毎に車速Vに応じて設定する手段(減速開始距離設定手段)として機能するマップとみなすこともできる。つまり、図8を用いれば、「きびきび」運転に対応する実線、或いは「ゆったり」運転に対応する一点鎖線から、車速Vに応じた減速開始距離をそれぞれ一義に求めることができる。例えば、ドライバが「きびきび」運転を好んでいる場合であれば、上記車速V1に対しては減速開始距離を距離d1のように、また一方、ドライバが「ゆったり」運転を好んでいる場合には、上記車速V2に対しては減速開始距離を距離d2のように求めることができる。
【0061】
従って、上記減速G(要求減速度)と最大許容前後加速度Gxmaxとの比較のみならず現在の距離dと減速開始距離とを比較することによってもTCL制御の実施判定を行うことが可能である。即ち、現在の距離dが減速開始距離の範囲内となったときにTCL制御が必要と判定することもでき、このようにしてTCL制御の実施判定を行ってもよい。
【0062】
ところで、車両が高速で走行しているような場合には、アクセルペダル24を戻しても車速Vは低下せず、ブレーキペダル40を操作し制動力を発生させないと車両は減速しない。しかしながら、アクセルペダル24が戻され且つブレーキペダル40の操作量が足りないような場合には、カーブ路が接近してもTCL制御だけではもはや車両を減速させることはできない。そこで、このような場合には、自動ブレーキ制御部(減速手段)136において、自動ブレーキ制御を実施し、ブレーキ装置60により自動的に制動力を発生させて車両を減速させる。この場合にも、上記TCL制御の場合と同様に、最大許容前後加速度Gxmax1(例えば、1.0G)または最大許容前後加速度Gxmax2(例えば、0.7G)に対応する実線或いは一点鎖線上を変化する車速Vを目標に自動ブレーキ制御を行う。なお、当該自動ブレーキ制御を上記TCL制御と併せて実施するようにすればより効果的である。
【0063】
以上、説明したように、本発明の車速制御装置では、ドライバの車両運転状態(ドライバの運転嗜好)を示すスポーティ度に応じ、ドライバが「きびきび」した運転状態を好む場合には最大減速G、即ち最大許容前後加速度Gxmaxを最大許容前後加速度Gxmax1とし、一方、ドライバが「ゆったり」した運転状態を好む場合には最大許容前後加速度Gxmax2と設定するようにしており、そして、減速G(要求減速度)がこれら最大許容前後加速度Gxmax1,Gxmax2を超えたとき、或いはカーブ路の開始位置からの距離dが最大許容前後加速度Gxmax1,Gxmax2毎に車速Vに応じて設定される減速開始距離の範囲内となったときにTCL制御または自動ブレーキ制御を開始するようにしている。
【0064】
従って、車速制御装置を有した車両ではカーブ路への進入前にTCL制御部134、或いは自動ブレーキ制御部136において減速制御が実施されることになるのであるが、この際の減速開始タイミングが、最大許容前後加速度(許容減速度)Gxmaxに応じ、ドライバが「きびきび」した運転状態を好む場合には比較的遅くカーブ路に近いタイミングとされ、一方、ドライバが「ゆったり」した運転状態を好む場合には比較的早くカーブ路よりもかなり手前のタイミングとされ、ドライバの意思(運転能力)に応じたものとされる。故に、本発明の車速制御装置によれば、カーブ路手前での自動減速時においてドライバが違和感を感じることが好適に防止されることになり、良好な運転状態が維持可能とされる。
【0065】
なお、上記実施例では、スポーティ度、つまりドライバの車両運転状態(ドライバの運転嗜好)に基づいて最大許容横加速度Gymaxを比較的大きな値Gymax1(例えば、0.7G)と値Gymax2(例えば、0.5G)との2値に設定し、最大許容前後加速度Gxmaxを比較的大きな値Gxmax1(例えば、1.0G)と値Gxmax2(例えば、0.7G)の2値に設定するようにしたが、最大許容横加速度Gymax及び最大許容前後加速度Gxmaxをドライバの車両運転状態(ドライバの運転嗜好)に応じて可変させて設定するようにしてもよい。つまり、上記各2値に限ることなくこれら2値間のスポーティ度に応じた補間値を採用してTCL実施判定部130においてTCL制御を実施するか否かの判別を行うようにしてもよい。このようにすれば、より一層きめ細かな車速制御を実現可能となる。
【0066】
また、上記実施例では、スポーティ度判定部120においてスポーティ度を判定し、その判定結果に応じて最大許容横加速度Gymaxを求めて旋回最大車速Vmaxを推定するとともに、最大許容前後加速度Gxmaxを設定するようにしたが、ドライバの車両運転状態(ドライバの運転嗜好)は上記スポーティ度という概念以外の手段を用いても求めることができる。
【0067】
つまり、他の実施例として、例えば、上記のようなスポーティ度という概念を一切用いることなく(図2中のスポーティ度判定部120を実施せず)、ECU10の記憶装置(カーブ間車速情報記憶手段)に記憶された過去の複数のカーブ間車速(カーブ路の終了地点から次のカーブ路の開始地点までの平均車速)に基づいてドライバの車両運転状態(ドライバの運転嗜好)を推定することもできる。つまり、過去のカーブ間車速が大である場合には、通常ドライバは「きびきび」した運転状態を望んでいるとみなすことができ、一方、過去のカーブ間車速が小である場合には、通常ドライバは「ゆったり」した運転状態を望んでいるとみなすことができ、これに基づいてドライバの車両運転状態(ドライバの運転嗜好)を推定することも可能である。
【0068】
この場合、カーブ間車速と最大許容横加速度Gymax及び最大許容前後加速度Gxmaxとの関係を予めマップとして設定し記憶しておき、このマップからカーブ間車速、即ち上記車両運転状態の推定結果に応じた最大許容横加速度Gymaxや最大許容前後加速度Gxmaxを読み出すようにすればよい。
【0069】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の請求項1の車両の車速制御装置によれば、ドライバの運転嗜好を考慮してカーブ手前で減速を開始する距離、即ち減速開始距離が設定されることになり、例えば、ドライバが「きびきび」した運転状態を好む場合には、減速開始距離が短く設定され、ドライバの減速操作が尊重されて車両がカーブに比較的近い位置となるまで減速制御の実施が留保され、一方、ドライバが「ゆったり」した運転状態を好む場合には、減速開始距離が長く設定され、自動減速制御が優先されて車両がカーブから比較的遠い位置において減速制御が開始可能とされる。
【0070】
従って、車両がカーブに進入する前においてカーブ進入速度に向けて減速制御が行われる際の減速開始タイミングをドライバの意思(運転能力)に応じた適度なものにでき、ドライバが違和感を感じることを好適に防止して良好な運転走行を維持することができる。
また、請求項2の車両の車速制御装置によれば、ドライバの運転嗜好を考慮して許容減速度が設定されることになり、例えば、ドライバが「きびきび」した運転状態を好む場合には、許容減速度が大きく設定され、ドライバの減速操作が尊重されて車両が比較的カーブ近傍になるまで減速制御の実施が留保され、一方、ドライバが「ゆったり」した運転状態を好む場合には、許容減速度が小さく設定され、自動減速制御が優先されて比較的早期に減速制御が開始可能とされる。
【0071】
従って、車両がカーブに進入する前においてカーブ進入速度に向けて減速制御が行われる際の減速開始タイミングと減速度とをドライバの意思(運転能力)に応じた適度なものにでき、ドライバが違和感を感じることを好適に防止して良好な運転走行を維持することができる。
また、請求項3の車両の車速制御装置によれば、別途ドライバ状態検出手段を設けることなく、加速操作検出手段、操舵操作検出手段、制動操作検出手段によってドライバの運転嗜好を容易且つ確実に検出することができる。
【0072】
また、請求項4の車両の車速制御装置によれば、ドライバの運転嗜好が過去の複数のカーブのカーブ間車速情報に基づいて検出されることになり、例えば、ドライバがカーブ間を過去に高速で走行していたような場合には、ドライバは「きびきび」した運転状態を好んでいるとみなされ、一方、ドライバがカーブ間を低速で走行していたような場合には、ドライバは「ゆったり」した運転状態を好んでいるとみなされる。従って、別途ドライバ状態検出手段を設けることなく、ドライバの運転嗜好をやはり容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車速制御装置を含む車両の制御系を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る車速制御装置の制御手順を示すブロック図である。
【図3】曲率が変化する単独カーブの開始地点での曲率半径R0と距離dc前方での曲率半径R1とを示す図である。
【図4】図2中の曲率変化判定部での判定方法を説明する図である。
【図5】カーブの難易度を設定するための難易度判定マップを示す図である。
【図6】図2中の表示・音声ガイド装置の詳細を示す図である。
【図7】複合カーブであるS字カーブを示す図である。
【図8】旋回最大車速Vmax及び最大許容前後加速度Gxmaxにおける距離情報dと車速Vとの関係を示し、TCL制御の実施判定方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 エンジン
10 電子コントロールユニット(ECU)
20 車輪速センサ
24 ハンドル(操舵操作手段)
26 ハンドル角センサ(操舵操作検出手段)
30 横Gセンサ
32 前後Gセンサ
36 アクセルペダル(加速操作手段)
38 アクセル開度センサ(加速操作検出手段)
40 ブレーキペダル(制動操作手段)
42 ブレーキセンサ(制動操作検出手段)
50 ナビゲーションシステム(カーブ検出手段)
52 グローバルポジショニングシステム(GPS、現在位置出力手段)
54 地図データ部(道路地図情報出力手段)
102 前方カーブR算出部(曲率半径検出手段)
104 距離算出部(距離検出手段)
120 スポーティ度判定部(ドライバ状態検出手段)
124 旋回最大横G設定部
126 旋回最大車速推定部(進入速度演算手段)
128 最大減速G設定部(許容減速度設定手段)
130 TCL実施判定部
131 減速G演算部(減速度演算手段)
132 車速算出部(車速検出手段)
134 TCL制御部(減速手段)
136 自動ブレーキ制御部(減速手段)
Claims (4)
- 車両が走行する道路地図情報を出力する道路地図情報出力手段と、
車両の現在位置を検出し出力する現在位置出力手段と、
前記道路地図情報出力手段及び前記現在位置出力手段からの各出力情報に基づき車両前方の道路のカーブの存在を検出するカーブ検出手段と、
前記カーブの曲率半径を検出する曲率半径検出手段と、
ドライバの運転嗜好を検出するドライバ状態検出手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
前記カーブの開始地点から車両までの距離を検出する距離検出手段と、
前記曲率半径情報に基づき、前記カーブをトレース可能な車両のカーブ進入速度を演算する進入速度演算手段と、
前記ドライバの運転嗜好情報、前記カーブ進入速度及び前記車速情報に基づき、前記カーブに対し車両が減速を開始すべき減速開始距離を設定する減速開始距離設定手段と、
前記カーブに進入する前に前記距離が前記減速開始距離の範囲内となったとき、前記カーブ進入速度に向け車速を低減させ車両を減速制御する減速手段と、
を備えたことを特徴とする車両の車速制御装置。 - 車両が走行する道路地図情報を出力する道路地図情報出力手段と、
車両の現在位置を検出し出力する現在位置出力手段と、
前記道路地図情報出力手段及び前記現在位置出力手段からの各出力情報に基づき車両前方の道路のカーブの存在を検出するカーブ検出手段と、
前記カーブの曲率半径を検出する曲率半径検出手段と、
ドライバの運転嗜好を検出するドライバ状態検出手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
前記カーブの開始地点から車両までの距離を検出する距離検出手段と、
前記曲率半径情報に基づき、前記カーブをトレース可能な車両のカーブ進入速度を演算する進入速度演算手段と、
前記ドライバの運転嗜好情報に基づき、車両の許容減速度を設定する許容減速度設定手段と、
前記カーブ進入速度、前記車速情報及び前記距離情報に基づき車両に要求される要求減速度を算出する減速度演算手段と、
車両が前記カーブに進入する前に前記要求減速度が前記許容減速度を超えたとき、前記カーブ進入速度に向け前記許容減速度で車速を低減させ車両を減速制御する減速手段と、
を備えたことを特徴とする車両の車速制御装置。 - 車両の加速操作を行う加速操作手段と、車両の操舵を行う操舵操作手段と、車両の制動を行う制動操作手段と、前記加速操作手段による加速操作量を検出する加速操作検出手段と、前記操舵操作手段による操舵操作量を検出する操舵操作検出手段と、前記制動操作手段による制動操作量を検出する制動操作検出手段とをさらに有し、
前記ドライバ状態検出手段は、前記加速操作検出手段、前記操舵操作検出手段及び前記制動操作検出手段からの各操作情報に基づき前記ドライバの運転嗜好を検出することを特徴とする、請求項1または2記載の車両の車速制御装置。 - 前記ドライバ状態検出手段は、車両が通過した過去の複数のカーブのカーブ間車速を記憶するカーブ間車速情報記憶手段を含み、該カーブ間車速情報記憶手段からの情報に基づき前記ドライバの運転嗜好を検出することを特徴とする、請求項1または2記載の車両の車速制御装置。
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