JP3585356B2 - 放射線検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線計数率を測定する放射線検出装置に関し、特に放射線を検出した後に生じる放射線測定部の不感時間による放射線の数え落としの補正に関する。
【0002】
【従来の技術】
放射線計数率を測定するために用いられている放射線検出装置は、一般には、放射線と物質との相互作用により生じる電離現象や発光現象を利用する。放射線検出装置は例えば、電離により生じた電荷を電界をかけて収集したり、発光を光電子増倍管などで検知することにより、電気的なパルスを生成し、これを電気回路にて計数して放射線計数率を求める。
【0003】
例えば、半導体放射線検出器では、半導体中に電荷空乏層を設け、放射線の通過によって空乏層内に生じる電荷を収集してパルス出力を得る。電荷の発生位置は一点ではなく放射線の通過経路に沿って分布することと、半導体内での電荷の移動速度に応じてパルスはある程度の時間幅を有する。そのため、1発目の放射線による電荷収集中に2発目の放射線が入射した場合、両放射線によるパルスを2つのものとして区別できず、入射した放射線数よりも検知される出力パルス数が少ないことが起こり得る。つまり、ある程度の時間(分解時間)以内で時間的に近接して入射した放射線は数え落とされる可能性がある。
【0004】
また、GM管等の計数管においては、放射線によって生じたイオンが、電極間の電界を弱め、放電が起こりにくくなるという現象が生じる。特に、陽イオンは電子に比べて質量が大きく移動度が小さいのでスイープされるまでの時間が長くなる。このような現象によって、GM管等においても、それ以下の時間間隔で入射した放射線が数え落とされる分解時間が存在する。
【0005】
測定によって得られた計数率をN、分解時間をτとすると、放射線検出装置が計数動作不能である時間(不感時間)はNτとなり、その測定時間に占める割合は、計数率Nが大きいほど高くなる。つまり、強い放射線試料の測定において特に数え落としの割合が大きくなるわけである。
【0006】
数え落としのない真の計数率をN0とすると、従来は以下の式を用いてN0を求めることにより、数え落としの補正を行っていた。
【0007】
N0=N+NN0τ ………(1)
N0=N/(1−Nτ) ………(2)
なお、数え落としの影響を受けた測定値Nは(1)式を変形して得られる次式で表現される。
【0008】
N=N0/(1+N0τ) ………(3)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上式は、放射線が一定時間間隔で入射するという前提の下で成り立つものである。つまり、計測時間中に計数率が変化する場合には、一般には誤差が大きくなるという問題があった。このことを具体的な数値例を用いて示す。
【0010】
ここで分解時間をτ=1.0×10−4[秒]とすると、(3)式からN0=1.0×103[cps]の場合の測定値N=9.1×102[cps]、N0=1.0×104[cps]の場合はN=5.0×103[cps]となる。これらNに対し(2)式により補正を行うと、当然のことながらそれぞれN0=1.0×103[cps]、N0=1.0×104[cps]という正しい値が得られる。
【0011】
さて、問題となるのは測定時間中に計数率が変化する場合である。例えば、測定時間の半々においてそれぞれN0=1.0×103[cps]、N0=1.0×104[cps]となる場合を考える。この場合は容易に分かるように測定時間全体では、
N0=5.5×103[cps] ………(4)
となる。しかし、測定時間全体での測定値Nは、
N=9.1×102×0.5+5.0×103×0.5
≒3.0×103[cps] ………(5)
となる。この値を(2)式に代入して補正を行うと、
N0=4.3×103[cps] ………(6)
となる。この値は(4)式で示される正しい値に対し大きな誤差を有している。このように計数率が測定時間内に変化する場合に対する従来の補正方法は、上述のような単純な場合に対する理論的な計算によっても正しい結果をもたらさない。これは、(2)式が非線形であることに起因するものである。
【0012】
本発明は上記問題点を解消するためになされたもので、放射線測定部の不感時間に起因する数え落としに対する補正の精度が向上した放射線検出装置を提供することを目的とし、放射線管理等における安全性の向上を図る。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る放射線検出装置は、互いに異なる感度で放射線を検知しそれぞれ放射線計数率を出力する複数の放射線測定部と、前記放射線測定部の不感時間に起因する放射線の数え落としを補正した放射線計数率である不感補正計数率を求める計数率補正演算部とを有し、前記計数率補正演算部は、前記各放射線測定部からの前記放射線計数率を比較して前記不感補正計数率を求めることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、放射線測定部は1つの放射線を検出するとその後、短時間であるが放射線を検出することができない不感時間を伴う。ここでいう不感時間とは、複数の放射線が入射しても単一のイベントとしかカウントされない時間間隔である。よって検出器が放射線に全く反応しないといった狭義の不感時間のみならず、検出器の状態が先の放射線の入射した状態からの回復が十分でないといった原因で出力パルス波高が不十分であり電気回路のパルス計数動作が行われないというような分解時間まで含まれる。
【0015】
本発明では、放射線測定部は感度の異なるものが少なくとも2つ備えられる。本発明の好適な態様は、前記複数の放射線測定部において、放射線を検知する有感領域の大きさが互いに異なることにより前記感度が相違するものである。例えば、放射線測定部が半導体放射線検出器を採用する場合には、有感領域の大きさは検出部を構成する半導体基板の面積に応じたものとなる。放射線測定部の感度を相違させる手段は上述のような有感領域の大きさによるものだけに限られず、例えば検出部に印加する電圧を相違させたり、異なる検出機構を用いる等の方法によることも可能である。
【0016】
複数の放射線測定部は互いに異なる感度を有するため、同一放射線環境下に置かれていても放射線の計数頻度が異なる。そのため測定時間に対する不感時間の割合も異なり、よって、両者の数え落としの程度も相違する。本発明では、これら複数の放射線測定部から得られる放射線計数率を比較して、数え落としを補正した放射線計数率である不感補正計数率を求める。一般に放射線密度が高く、また放射線測定部の感度が高いほど数え落としの割合が増大する。そこで例えば、各放射線測定部の放射線計数率を感度に基づいて規格化すると、それらの差異は放射線密度に応じて拡大する。本発明ではそのような差異から不感補正計数率を求める。本発明によれば、複数の放射線計数率を比較して不感補正計数率を定める過程において、数え落としの上記非線形性の影響を相殺または緩和する作用を得ることができる。
【0017】
本発明に係る放射線検出装置は、前記計数率補正演算部が、前記複数の放射線測定部からそれぞれ出力される前記放射線計数率同士の比を求め、当該放射線計数率の比に基づいて前記不感補正計数率を求めることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、複数の放射線測定部からの放射線計数率同士の比を求める。この測定により得られた比には、それに対応する理論値を求めることができる。その理論値は、真の放射線計数率に対して単調な関数(すなわち単調減少関数または単調増加関数のいずれか)で表されるので、測定により得られた比に対して真の放射線計数率として採用すべき不感補正計数率を一意に定めることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態であるγ線用サーベイメータの概略のブロック図である。本装置は、それぞれ放射線を検知・計数して放射線計数率を出力する2つの放射線測定部2、4を有する。放射線測定部2、4から出力されたそれぞれ放射線計数率は、演算回路6に入力される。演算回路6での処理結果、例えば放射線計数率等の測定結果は表示部8に表示される。放射線測定部2、4はそれぞれ半導体検出器10、12を有する。
【0021】
これら半導体検出器は、有感面に平行な面状のPN接合を内部に有した半導体をセンサとして用いる。PN接合には逆バイアス電圧が印加され電荷空乏層が形成され、その電荷空乏層においてγ線が電子とホールの対を生成すると、それらが半導体中の電位勾配に応じて移動し電流を生じ、これらがそれぞれパルス状の電気信号として出力される。
【0022】
半導体検出器10、12にはそれぞれ増幅器14が接続される。増幅器14で増幅された電気信号は、各増幅器14にそれぞれ接続されたスケーラ16に入力される。スケーラ16は入力される電気信号のうち所定の閾値を超えるイベントをもって放射線検出信号であるパルス信号を計数する。
【0023】
放射線測定部2、4それぞれのスケーラ16から出力される放射線計数率は、演算回路6に入力される。本装置は、この演算回路6が、放射線測定部2、4の不感時間に起因する放射線の数え落としを補正する処理を行う。つまり、演算回路6は計数率補正演算部としての機能を有し、不感時間に起因する数え落としが補正された不感補正計数率を求めることができる。この補正された計数率は例えば適当な放射線線量の単位に換算され、表示部8に測定結果として表示される。本装置の特徴の一つは、放射線測定部2、4が異なる感度を有することである。具体的には、半導体検出器10は、有感面積が10mm角(以下、10mm□と表示する)、すなわち100mm2であり、一方、半導体検出器12は、有感面積が3mm角(以下、3mm□と表示する)、すなわち9mm2に構成される。これにより両半導体検出器10、12は基本的にはそれらの面積比に応じた感度比を有する。
【0024】
この感度の違いにより、基本的には放射線測定部2、4からそれぞれ出力される放射線計数率の比は、半導体検出器10、12に同一密度の放射線を照射した場合には半導体検出器10、12の面積比に等しくなるはずである。しかし、一般に、感度に起因する計数率の違いにより、放射線測定部2と放射線測定部4とでは、測定時間に占める不感時間の割合が異なり、それらから出力される計数率の比は面積比にはならない。具体的には、感度の高い放射線測定部2の不感時間の割合は、感度の低い放射線測定部4より大きくなる。そのため、比(放射線測定部2の計数率/放射線測定部4の計数率)は、通常は放射線の密度の増大につれて100/9から低下していく。
【0025】
図2は、放射線密度が増大した場合の数え落としに起因する計数効率の低下の様子を説明するグラフである。ここで計数効率とは半導体検出器の有感面積に入射した放射線のうち計数された放射線の数の割合のことである。計数効率をηで表すと、
η=N/N0 ………(7)
で表され、(3)式より、
η=1/(1+N0τ) ………(8)
となる。
【0026】
ここで以下の説明において、半導体検出器の有感面積の違いを明確にするために、1mm2当たりの真の計数率(これは放射線密度に相当する)をn0[cps/mm2]、数え落としの影響を受けた計数率をn[cps/mm2]、また半導体検出器の有感面積をS[mm2]で表すことにする。すると、(8)式は、
η=1/(1+n0Sτ) ………(9)
となる。図2は、S=100[mm2](以下S1とおく)の半導体検出器10と、S=9[mm2](以下S2とおく)の半導体検出器12とについて、(9)式により得られるηを、横軸にn0をとってプロットしたものである。ここで分解時間τ=1×10−5[秒]に設定されている。図に示され、また(9)式からも容易に理解されるように、放射線密度n0が増大すると計数効率ηは減少し、その減少は有感面積の大きい半導体検出器10を有する放射線測定部2に対応する曲線50の方が、放射線測定部4に対応する曲線52よりも早い段階で顕著となる。曲線50、52相互の間には、曲線50を半導体検出器10と半導体検出器12の面積比に応じた量だけ右にシフトさせたものが曲線52になるという関係がある。
【0027】
さて、放射線密度n0が一定又は安定しているような場合、例えば半減期の長い放射の線源の強度測定のような場合には、従来より(9)式に基づいて精度のよい補正が行われていた。しかし、この従来の補正は上述したようにn0が測定時間内に変化する場合には誤差が大きくなるという問題を有する。
【0028】
本装置の演算回路6は、感度の異なる複数の半導体検出器からの計数率を利用して、この数え落とし補正の精度を改善した補正処理を行う。以下、本装置におけるこの補正処理を説明する。
【0029】
演算回路6は、放射線測定部2、4からそれぞれ出力された計数率Nをそれぞれの半導体検出器10、12の有感面積Sで除して、nを求める。以下、放射線測定部2の計数率に対応するnをn1、放射線測定部4の計数率に対応するnをn2と表す。ここで注意すべきことは、n1、n2はある測定時間における平均の計数率であるということである。つまり、上記問題に対する従来の補正処理との違い、すなわち本装置の効果を示すために、以下の説明は、測定時間中に計数率が変化する場合を前提としている。もちろん、その特殊な場合として、測定時間にわたって計数率が一定である場合に対しても本装置の補正処理は有効である。
【0030】
さて、従来の補正は既に述べたように、測定時間中に計数率が変化する場合、図2に示されるような計数効率の非線形的な特性によって誤差が大きくなるという問題があった。本装置は、放射線測定部2から得られる計数率N1(又はn1)と、放射線測定部4から得られる計数率N2(又はn2)というそれぞれ上記非線形性の影響を受ける2つの測定値を用いて、互いの非線形性の影響の緩和を図るものである。つまり、本装置の原理は、各測定値は共通の計数率変化の影響を受けたものであるので、N1とN2の比較、又はn1とn2の比較に基づいて、それぞれの測定値が受けた非線形性の影響を部分的にではあるがキャンセルできるというものである。ここで2つの放射線測定部から得られる測定値の比較は、各測定値が計数率変化の影響を“同様に”受けていることから、数学的には両者の差又は比という形で取り扱うことができる。
【0031】
具体的な処理内容について述べる。第一の方法は、次の(10)式で定義されるn1とn2との比rに基づいて不感補正計数率n0を求めるものである。
【0032】
r=n1/n2 ………(10)
このrが、(3)式から得られ次の(11)式に示される理論値r0により近似されるとしてn0を求める。
【0033】
r0=(1+n0S2τ)/(1+n0S1τ) ………(11)
すなわち、
r=r0 ………(12)
を解くことにより、測定値n1、n2に基づいた比rから、数え落としのない計数率n0を求めることができる。ちなみに(12)式を解くと次式が得られる。
【0034】
n0=(1−r)/τ(rS1−S2) ………(13)
第二の方法は、上記第一の方法と基本的には同様であるが、比をN1とN2とに基づいて定義する点が異なる。つまり、この場合は、次の(14)式で定義されるN1とN2との比Rを用いる。
【0035】
R=N1/N2 ………(14)
ここで
R=(S1/S2)r ………(15)
を(13)式に代入すると、次の(16)式で表される不感補正計数率n0のRを用いた表現形式が得られる。
【0036】
n0=(S1−RS2)/τS1S2(R−1) ………(16)
第三の方法も、上記方法と基本的には同様であるが、不感補正計数率n0がN1とN2の差及びn1とn2の差を含んだ形の式から求められる点が異なる。この場合は、n0は次の(17)式で表される。
【0037】
n0=(n2−n1)/τ(n1S1−n2S2)
=(n2−n1)/τ(N1−N2) ………(17)
このように、演算回路6においては、N1とN2の比/差、又はn1とn2の比/差といった、2つの放射線測定部からの計数率の比較に基づいて不感時間の補正が行われた計数率n0が求められる。以下、この補正により得られたn0を、n0の真値と区別するため、nCORと表すことにする。
【0038】
次に本装置の補正処理例を示す。ここでは、解決しようとする従来の問題に対する効果を示すため、測定時間中に放射線密度が変化する場合を取り扱う必要がある。単純のため、測定時間は、放射線密度n0=n0Aの期間tAと、放射線密度n0=n0Bの期間tBとの2つからなるものとする。この場合、n0は、測定時間(tA+tB)中の平均値で表される。以下、そのn0の平均値を〈n0〉と表記する。すなわち、
〈n0〉=(n0AtA+n0BtB)/(tA+tB) ………(18)
である。一方、(13)、(16)、(17)式で表されるnCORは、上述したようにN1、N2等の測定値がすでに測定時間中の時間的変化を含んだものであるので、改めて平均処理をする必要はない。
【0039】
図3は、本装置による補正結果を示すグラフである。ここでは、tAとtBの時間比率tB/tA、及びn0Aを固定することにより、横軸に真値〈n0〉の変化に対応する変数としてn0Bを採用している。縦軸は、次式で定義される補正率θである。
【0040】
θ=nCOR/〈n0〉 ………(19)
なお、この図ではtB/tA=1、n0A=1.0×104[cps/mm2]、τ=1×10−5[秒]である。曲線60が(19)式で表される本装置によるθのグラフである。同図には、比較のため放射線測定部2、4それぞれの計数率に対し(2)式を用いた従来の補正を行った場合の補正率θも併せて示されている。具体的には曲線62が、放射線測定部2からの計数率N1、n1のみを用いた従来補正の結果であり、
θ=n1/{(1−N1τ)〈n0〉} ………(20)
で計算される結果がプロットされている。また曲線64が、放射線測定部4からの計数率N2、n2のみを用いた従来補正の結果であり、
θ=n2/{(1−N2τ)〈n0〉} ………(21)
で計算される結果がプロットされている。
【0041】
補正率θは、基本的には1に近いことが望ましい。本装置によるθと従来の補正によるθとはともに、n0Bがn0Aに近い範囲では、ほぼ1となり良好な補正が行われることが分かる。なお、このn0B〜n0Aなる範囲は従来の補正処理が有効な範囲であるが、詳細に検討すると、本装置のθ(曲線60)は、従来例によるいずれのθ(曲線62、64)よりも、n0Bがn0B=n0Aから離れるときのθ=1からの減少が緩やかでより1に近いθが得られ、より好ましい補正が行われていることが分かる。例えば、本装置では、n0B=8.0×102〜2.0×104[cps/mm2]の範囲において、θ=1.0(±6%)に維持されるが、同様の補正精度は、従来の曲線62ではn0B=6.0×103〜1.7×104[cps/mm2]、また従来の曲線64ではn0B=4.0×103〜2.0×104[cps/mm2]という本装置よりはるかに狭い範囲でしか得られない。
【0042】
例えば、±6%の精度が得られる範囲は、本装置ではn0Bとn0Aとの比が10倍以上となる範囲である。通常の測定間隔では、この程度の放射線密度の時間的な変化、つまりダイナミックレンジに対応できれば、十分であると考えられる。
【0043】
また、従来のθは、n0Bがn0B=n0Aから離れると、減少するのに対し、本装置では、n0B<〜1.0×103[cps/mm2]の範囲では、θが1から増加するという特徴を示す。このことは、従来装置、本装置ともθが1から離れ補正精度が劣化するという意味では同じである。しかし、本装置のこの範囲での特性は、nCOR、すなわち補正により得られたn0が真値よりも大きく評価され、放射線管理を安全側に導く点で、従来装置とは異なる、より好ましい特徴であるということができる。
【0044】
図4は、本装置による補正結果を示す他のグラフである。ここでは、n0A、n0Bを固定する一方で、比tB/tAを変化させる。つまり横軸に真値〈n0〉の変化に対応する変数として比tB/tAを採用している。縦軸は、図3と同様である。なお、この図ではn0A=1.0×104[cps/mm2]、n0B=1.0×103[cps/mm2]、τ=1×10−5[秒]である。曲線70が、tB/tAに対し(18)、(19)式を用いて算出したθをプロットしたものである。また、図4には比較のため図3同様、従来の補正による補正率θも併せて示されている。具体的には曲線72がそれぞれ、放射線測定部2からの計数率N1、n1のみを用いた従来補正によるθであり、曲線74が、放射線測定部4からの計数率N2、n2のみを用いた従来補正によるθである。なお、図4の比tB/tA=1におけるθの値は、図3のn0B=1.0×103[cps/mm2]における値に対応している。
【0045】
各曲線70〜74は、比tB/tAが0に近いほどθは1に近く良好である。これは、tB/tAが0に近いほど、従来補正が有効である一定放射線密度(n0=tAで一定)という条件に近くなるからである。しかし、比tB/tAが大きくなり異なる放射線密度同士の平均の効果が無視できなくなるにつれ、各補正によるθは少なくとも図3に示されるn0B=1.0×103[cps/mm2]における値にまでは変化する。そして、さらに比tB/tAが大きくなり、∽に近づくにつれて、再び一定放射線密度(n0=tBで一定)という条件に近くなり、各θは再び1に近づく。
【0046】
このように、図3に示した本装置の良好な補正率は、比tB/tA=1においてのみ成立するものではなく、いかなる比tB/tAにおいても成立するものである。
【0047】
また、例えば従来の補正による補正率θの低下は、比tB/tAの限られた狭い範囲でしか無視できない。つまり、残りの大抵の場合は、補正率が大きく低下する。そのため、例えば、バースト状の放射線、すなわち短時間tεだけ極めて強い放射線が発生され、残りの時間は低い放射線密度であるような場合には、〈n0〉は低くしか評価されず安全管理上問題がある。これを従来の補正方法により精度よく捉えようとすると、測定時間をtε程度まで十分に短くしなければならない。これに対し、本装置では、このようなバースト状放射線に対しては、その持続時間が如何なるものであっても、補正率θは1程度以上となり、放射線量が過小評価されることがないので安全である。
【0048】
本装置の演算回路6は、以上説明したような補正処理を行い、その結果を表示部8に表示する。またそれを図示しない記録装置に入力し記録してもよい。
【0049】
なお、上記装置は、放射線測定部を2つのみ備えるものであったが、本発明は、互いに異なる感度を有する放射線測定部を3つ以上備える構成をも含むものである。例えば、そのような構成において、放射線測定部の組み合わせごとに異なる、良好な補正率θを得られる〈n0〉の範囲を、測定された計数率に応じて切り替え選択して使用することにより、より広範な範囲で良好な数え落とし補正を行うことができる。
【0050】
【発明の効果】
このように、本発明の放射線検出器によれば、異なる感度の複数の放射線測定部を有し、計数率補正演算部が、各放射線測定部からの放射線計数率を比や差といった形で比較して、不感時間に起因する放射線の数え落としが補正された不感補正計数率を求める。これにより、各放射線計数率が含む数え落としの影響が、キャンセルされ、放射線計数率の精度向上、又は過小評価が回避されるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態であるγ線用サーベイメータの概略のブロック図である。
【図2】放射線密度が増大した場合の数え落としに起因する計数効率の低下の様子を説明するグラフである。
【図3】本装置による補正率θを示すグラフであり、時間平均される2つの強度の放射線の一方の強度を横軸にとって表示したものである。
【図4】本装置による補正率θを示すグラフであり、2つの強度の放射線の時間比を横軸にとって表示したものである。
【符号の説明】
2,4 放射線測定部、6 演算回路、8 表示部、10,12 半導体検出器、14 増幅器、16 スケーラ。
Claims (3)
- 放射線の計数率を測定する放射線検出装置において、
互いに異なる感度で放射線を検知しそれぞれ放射線計数率を出力する複数の放射線測定部と、
前記放射線測定部の不感時間に起因する放射線の数え落としを補正した放射線計数率である不感補正計数率を求める計数率補正演算部と、を有し、
前記計数率補正演算部は、前記各放射線測定部からの前記放射線計数率を比較して前記不感補正計数率を求めること、
を特徴とする放射線検出装置。 - 請求項1記載の放射線検出装置において、
前記複数の放射線測定部は、放射線を検知する有感領域の大きさが互いに異なることにより、前記感度が相違することを特徴とする放射線検出装置。 - 請求項1記載の放射線検出装置において、
前記計数率補正演算部は、
前記複数の放射線測定部からそれぞれ出力される前記放射線計数率同士の比を求め、
当該放射線計数率の比に基づいて前記不感補正計数率を求めること、
を特徴とする放射線検出装置。
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