JP3584661B2 - 厚板圧延におけるキャンバ制御方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚板圧延におけるキャンバの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、板材の圧延においては、圧延材の幅方向の両端部の硬度差、或いは圧延機の圧延材幅方向両端部の伸び率(ミル定数)の差、等その他のさまざまな要因により、圧延材の幅方向両端部の厚みに差が生じ、この厚みの差によってキャンバと称する曲がりが発生することがある。
【0003】
この板材のキャンバは歩留りの低下をもたらすばかりでなく、キャンバが大きい場合には、圧延ロールやサイドガイドを傷つけたり、これら設備を破損したりすることもある。
【0004】
このキャンバの発生を防止する方法として、従来種々の方法が提案されており、例えば特開昭63−90309号公報に開示されるように、圧延完了後の圧延板のキャンバ曲率を求め、このキャンバを解消し得る左右のロール開度差に応じて圧延機のロール圧下設定値を修正し、これにより以後の圧延においてキャンバの発生を防止するようにした方法、が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のキャンバ制御方法においては、圧延完了後の圧延材のキャンバ曲率を求めてこれに基づき、ロール圧下設定値を修正するようにしているため、検出したキャンバに関する情報を次の圧延対象の圧延材にしか反映することができず、検出した情報を圧延中の圧延材に対しては反映させることができない。また、差荷重,レベリング量,キャンバ量等の測定誤差,或いはキャンバモデル,ウェッジモデルの精度等、に伴うロール圧下設定値の修正に対する影響が大きいため、充分な効果を得ることができない。
【0006】
これに対して例えば特開昭61−147913号公報に開示されるように、圧延材のオフセンタ(蛇行)に起因して発生する圧延ロール左右の圧延荷重差に基づき、圧延パス毎の圧延材の板厚,板幅,予測クラウンに応じて最適ゲインを選択しながら、圧延ロールのロール圧下位置を修正することにより蛇行を制御し、間接的にキャンバを抑止する方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、この方法の場合には、左右の圧延ロールの圧延荷重差を制御入力とし、基本的にはワークサイド側及びドライブサイド側のうちの荷重の大きい方のロール間開度を閉める制御を行っているが、圧延材のキャンバ量を圧延荷重差から間接的に検出しており、キャンバ量を制御入力としてはいない。そのため、例えば図7(a)に示すように、ワークサイド側の板厚が厚くドライブサイド側の板厚が薄いようなキャンバがもともと生じている圧延材を圧延した場合には、圧延材の幅方向単位長さ当たりの圧延荷重の分布はドライブサイド側の方が大きくなる。よって、図7(b)に示すように、ロール開度は、ドライブサイド側で閉じる方向、ワークサイド側で開く方向に制御される。そのため、さらにキャンバを助長することになるという問題がある。
【0008】
図8は、差荷重及びキャンバ量の実測値に基づいてこれらの相関関係を表したものであり、図8に示すように、ワークサイド側の荷重からドライブサイド側の荷重を減算した値を差荷重とし、圧延ラインと圧延材とのワークサイド側へのキャンバ量を正値とし、ドライブサイド側へのキャンバ量を負値とすると、キャンバ量と差荷重とは比例関係にあることがわかる。つまり、差荷重の大きいサイド側に向かって曲がりが生じることがわかるが、図8中に記号Aで示すようにキャンバ量と差荷重とが逆相関となり、差荷重が大きいサイド側とは逆側に向かって曲がりが生じることがある。
【0009】
そのため、差荷重に基づいてロール開度差を調整した場合には、記号Aの状態でキャンバが生じている場合には、キャンバを助長することになるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、厚板圧延においてキャンバを助長することなく、的確に抑制することの可能な厚板圧延におけるキャンバ制御方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る厚板圧延におけるキャンバ制御方法は、圧延ロールの左右の圧延荷重差を減少させるように左右のロール開度差を調整するようにした厚板圧延におけるキャンバ制御方法において、厚板圧延機出側での圧延材について、当該圧延材の搬送ラインのどちら側に向かってキャンバが生じているかを検出し、これに基づき次パスにおける圧延材のキャンバの曲がり状況を予測し、次パスにおいて圧延を行う際に、予測したキャンバの曲がり状況に基づくキャンバの凸部側と前記圧延荷重差に基づくロール開度の閉じ側とが同じ側であるとき、前記圧延荷重差に基づくロール開度差の制御を禁止するようにしたことを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、例えばオフセンタ計等によって、ある圧延パスにおける厚板圧延機出側での圧延材のキャンバが検出され、例えばこれに基づくキャンバ曲率をもとに、圧延材が圧延材の搬送ラインを基準としたときこの搬送ラインのどちら側の方向に向かって曲がっているかが検出される。そして、このキャンバがどちら側の方向に向かって曲がっているかというキャンバの曲がり状況と、例えば圧延材の搬送方向の長さ及び予測される次パスでの圧延材の長さ等をもとに、次パスにおけるキャンバの曲がり状況が検出される。そして、次パスにおいて圧延荷重差に基づきロール開度差を調整する際に、ロール開度を閉じる側と、検出したキャンバの曲がり状況に基づくキャンバの凸部側とが同じ側であるときには、ロール開度の制御が禁止されてロール開度の調整が行われない。
【0013】
よって、例えばもともとワークサイド側に向かってキャンバが生じドライブサイド側に凸部が生じている圧延材に対して圧延を行う場合等に、実際にはドライブサイド側の板厚がより薄いにも係わらず荷重配分がずれることによってドライブサイド側の圧延荷重がより大きくなるような場合等には、圧延荷重がより大きい側のロール開度を閉じるように制御を行うから、ドライブサイド側のロール開度を閉じることになるが、ロール開度を閉じる側つまりドライブサイド側と、予測したキャンバの凸部側つまりドライブサイド側とが同じ側であるから、ロール開度差の制御が禁止される。よって、板厚がより薄いドライブサイド側のロール開度が閉じることが回避されるから、キャンバが助長されることはない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の厚板圧延におけるキャンバ制御方法を適用した厚板圧延機の一例を示す概略構成図である。
【0015】
この厚板圧延機100は可逆式の圧延機であって、上下一対のワークロール1と、当該ワークロールの上下にそれぞれ上下のバックアップロール2を有し、上下ワークロール1の圧延荷重は、上下バックアップロールによって決定されるようになっている。この上下バックアップロール2は、バックアップロール2の両端にそれぞれ設けられ且つ個別に圧下量を調整可能な圧下装置3により制御され、固定支持された上バックアップロール2に対して、上下方向に移動可能に指示された下バックアップロール2のロール軸が左右の圧下装置3により上下方向に移動制御されることによって、上下バックアップロール2間の間隙が変化し、これに押されて、ワークロール1間のロールギャップが変化するようになっている。また、厚板圧延機100を挟んで一方の側、例えば図1において右側には、圧延ラインセンタを中心として圧延材のセンタとの位置のずれ量を検出する例えば下部光源方式のCCDラインセンサ等で形成されるキャンバ計4が配設されている。
【0016】
このキャンバ計4は、例えば、CCDラインセンサで検出可能な幅方向中央部が圧延ラインのセンタと一致するように配置され、圧延材Tはその中央部が圧延ラインのセンタと一致するように搬送されていることから、例えばCCDラインセンサの検出可能範囲において、検出した圧延材Tの位置が右寄り或いは左寄りに位置する場合にはキャンバが生じているとして検出することができるようになっている。
【0017】
前記圧下装置3は、自動板厚制御処理を行うAGC部5aを備えた制御用計算機5により制御され、このAGC部5aでは、例えば上バックアップロール2のロール軸の左右両端に設けられたロードセル6等の荷重センサによって検出されるワークロール1による圧延荷重と、例えば下バックアップロール2を上下方向に移動させる圧下用電動機の速度実績値と、等から求めたゲージメータ板厚H及び予め設定された目標板厚h0 の差である板厚偏差ΔHを求め、この板厚偏差ΔHが零となるように、前記圧下装置3を制御してワークロール1間のロールギャップを調整するようになっている。
【0018】
また、制御用計算機5では、キャンバ制御処理を行い、図1において左から右側へ圧延材Tが移動して圧延が行われるパス、つまり、キャンバ計4で圧延後の圧延材Tの形状を計測する状態となるパスをiパスとすると、iパスにおける圧延時には、ワークロール1に配設されたパルスジェネレータ7からの回転パルス信号に基づき、キャンバ計4からの検出値をもとに圧延材Tのキャンバ量を検出し、例えば圧延材Tがワークロール1に噛込まれた時点からの回転パルスのカウント数等に基づき、圧延材Tにおけるキャンバ量を検出したキャンバ検出位置を求める。そして、キャンバ量をもとにキャンバ曲率を検出し、この操作を繰り返すことにより、圧延材Tの搬送方向所定間隔毎のキャンバ曲率の変化状況を検出する。
【0019】
そして、圧延材Tがワークロール1に噛込まれた時点から噛出される時点までのパルスジェネレータ7からの回転パルス信号をもとに、iパスにおける圧延後の圧延材T(i)の搬送方向の長さを検出し、これと、予測される圧延荷重等に基づいて(i+1)パスによる圧延後の圧延材T(i+1)の長さ(予測長さ)を予測し、この予測長さに基づいて(i+1)パスにおける圧延材T(i+1)のキャンバ曲率の変化状況を予測する。
【0020】
そして、(i+1)パスにおいて圧延を実行するときには、ロードセル6からの荷重検出信号をもとに左右の差荷重を求め、これに基づき左右の差荷重を減少し得るロール開度差を求める。また、パルスジェネレータ7からの回転パルスのカウント値をもとに、圧延材T(i+1)でのワークロール1による圧延位置を検出し、予測した圧延材(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況から検出した現在の圧延位置のキャンバ曲率を求め、このキャンバ曲率とロール開度差とをもとに、求めたロール開度差に応じてロール開度差を調整した場合に、キャンバを助長させるかどうかを判定し、キャンバが助長されるときにはロール開度差の制御を行わない。
【0021】
次に、上記実施の形態の動作を図2及び図3に示す、制御用計算機5におけるキャンバ処理の処理手順の一例を示すフローチャートに基づいて説明する。
制御用計算機5では、AGC部5aにより自動板厚制御処理が実行され、ロードセル6等の荷重センサによって検出されるワークロール1による圧延荷重と、圧下装置3の圧下用電動機の速度実績値等とから求めたゲージメータ板厚H及び予め設定された目標板厚h0 の差である板厚偏差ΔHが求められ、これに応じて圧下装置3が制御されて圧延材Tの板厚が均一となるように制御される。
【0022】
また、制御用計算機5ではキャンバ制御処理が実行され、図1において、左側から右側へと圧延材Tを搬送するiパスの圧延時には、iパスにおけるキャンバ処理が例えば予め設定した所定周期で実行され、図2のフローチャートに示すように、キャンバ計4からの検出信号に基づき、iパスにおける圧延後の圧延材Tの板幅中心と圧延ラインのセンタとのずれ量であるキャンバ量が、例えば圧延ラインと圧延材とのワークサイド側へのキャンバ量を正値とし、ドライブサイド側へのキャンバ量を負値として算出される(ステップS1)。また、予め圧延材T(i)がワークロール1に噛込まれた時点でカウントを開始したパルスジェネレータ7からのパルス信号のパルスカウント値を読み込まれる。
【0023】
そして、算出したキャンバ量と例えば前回読み込んだキャンバ量とをもとに、この時点におけるキャンバ曲率が算出され、算出されたキャンバ曲率とパルスカウント値とが所定の記憶領域に格納される(ステップS2)。
【0024】
このキャンバ曲率は、例えば圧延材Tがワークサイド側に向かって曲がり、ドライブサイド側に凸部が形成されているときを正値、逆にドライブサイド側に向かって曲がり、ワークサイド側に凸部が形成されているときを負値とする。
【0025】
この操作を圧延材T(i)のiパスにおける搬送方向後端がキャンバ計4を通過するまで繰り返し行い、図4(a)に示すような圧延材T(i)の搬送方向におけるキャンバ曲率の変化状況が検出される。そして、圧延材T(i)の後端におけるキャンバ曲率が検出されこれが所定の記憶領域に格納されると(ステップS3)、次に、圧延材T(i)の後端部がワークロール1から噛出された時点におけるパルスカウント値と、ワークロール1の円周等とに基づき、圧延材T(i)の搬送方向の長さL(i)が算出される(ステップS4)。
【0026】
そして、検出した圧延材T(i)の搬送方向の長さL(i)と、次パス(i+1)で予測される圧延荷重とをもとに、(i+1)パスでの圧延後の圧延材T(i+1)の長さL(i+1)を予測し、予測した長さL(i+1)と、ステップS2の処理で検出した圧延材T(i)におけるキャンバ曲率の変化状況とをもとに、圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況を予測し、圧延材T(i+1)における各位置とキャンバ曲率とを対応させてこれを所定の記憶領域に格納する(ステップS5)。
【0027】
例えば図4(a)に示す圧延材T(i)のキャンバ曲率の変化状況を圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況に変換した場合、図4(b)に示すように、圧延材T(i)とT(i+1)との長さの比に応じて圧延材T(i)の各位置におけるキャンバ曲率の変化状況が圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率として変換される。
【0028】
次に、(i+1)パスにおける圧延を実行する際には、図3のi+1パスにおけるキャンバ制御処理を所定の周期で実行し、まず、左右のロードセル6からの検出信号をもとに、ワークサイド側の荷重からドライブサイド側の荷重を減算して左右の圧延荷重差である差荷重Pdfを算出する(ステップS11)。次いで、次式(1)に基づいて、差荷重Pdfを減少し得るロール開度差Sdf(=ワークサイド側のロール開度SWS−ドライブサイド側のロール開度SDS)を算出する(ステップS12)。
【0029】
Sdf=−α×Pdf ……(1)
なお、式中のαは、制御ゲインであって、圧延材の曲がり易さに応じて板厚,板幅毎にテーブルが形成されている。
【0030】
次いで、この時点におけるパルスジェネレータ7からのパルス信号のカウント値をもとに、圧延材T(i+1)における現在の圧延位置を検出する(ステップS13)。そして、所定の記憶領域に保持している圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況を参照して現在の圧延位置におけるキャンバ曲率を検出し、検出したキャンバ曲率と、ロール開度差Sdfとをもとに、ロール開度差Sdfに基づいて圧延ロールのロール開度差を調整した場合にキャンバを助長させるか否かを、次の開度差制御禁止条件を満足するか否かに基づき判定する。つまり、キャンバ曲率が正値であり、且つロール開度差Sdfが正値であるか、すなわち、圧延材のドライブサイド側がキャンバの凸部側であり、且つドライブサイド側のロール開度を閉じる制御であるか、又は、キャンバ曲率が負値であり、且つロール開度差が負値であるか、すなわち、圧延材のワークサイド側がキャンバの凸部側であり、且つワークサイド側のロール開度を閉じる制御であるか否か、を判定する(ステップS14)。
【0031】
そして、この開度差制御禁止条件を満足する場合には、ロール開度差の調整を行うとキャンバが助長されるとしてロール開度差の調整を行わずにそのまま処理を終了する。
【0032】
一方、前記開度差制御禁止条件を満足しない場合には、ロール開度差の調整を行った場合でも、キャンバを助長させることはないとして、ロール開度差Sdfをもとに、荷重が大きい側の圧延ロールのロール開度を閉じ、荷重が小さい側のロール開度を開けるように、AGC部5aにおける自動板厚制御処理において設定した目標ロール開度を補正する(ステップS15)。これにより、ロール開度差に応じて補正された目標ロール開度に基づいて圧下装置3が制御される。
【0033】
したがって、例えば、ロードセル6からの検出信号をもとに検出した差荷重に基づいて前記(1)式から算出したロール開度差Sdfが図5(a)に示すようにロール開度差Sdf=0を挟んで正値側及び負値側に交互に変化し、圧延材T(i+1)上の位置t1 〜t2 間でロール開度差Sdfが正値となり、位置t2 〜t3 間で負値となる圧延材T(i+1)に対して圧延を行うものとする。
【0034】
このとき、iパスにおいて検出したキャンバ曲率の変化状況をもとに予測した(i+1)パスにおける圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況によれば、図5(b)に示すようにキャンバ曲率が負値であるとすると、ワークサイド側が凸部側となるキャンバが生じた圧延材T(i+1)に対して、圧延を行うことになる。
【0035】
このとき、図5(b)に示すように、予測した圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況によれば、圧延材T(i+1)では、全体にわたってワークサイド側が凸部となって曲がっているから、ワークサイド側のロール開度を閉じると、ワークサイド側がより圧延されることになってドライブサイド側への曲がりを助長することになる。よって、図5(a)に示す差荷重に基づくロール開度差Sdfに基づいてロール開度差を調整した場合、ドライブサイド側を閉じるように制御される位置t2 〜t3 間でキャンバを助長することになる。
【0036】
しかしながら、図3のフローチャートに示すように、キャンバ曲率が負値であり、且つロール開度差が負値であるとき、すなわち、圧延材のワークサイド側がキャンバの凸部側であり且つワークサイド側のロール開度を閉じる制御である場合には、目標ロール開度を補正しない。よって、t2 〜t3 間でキャンバが助長されることはない。
【0037】
一方、位置t1 〜t2 間は、キャンバ曲率が負値であり、ロール開度差Sdfが正値であるから、ロール開度差Sdfに応じてロール開度差が調整され、これにより、キャンバが修正される。
【0038】
したがって、図5(c)に示すように、位置t1 〜t2 間は、ワークサイド側のロール開度を開けドライブサイド側を閉じるように制御を行うが、この位置では圧延材T(i+1)のワークサイド側がキャンバの凸部側となっているから、ドライブサイド側への曲がりが助長されることはない。また、位置t2 〜t3 間では、差荷重に基づくロール開度差Sdfによれば、ワークサイド側のロール開度を閉じるように制御を行うことになり、これによりドライブサイド側への曲がりがさらに助長されることになるが、位置t2 〜t3 間では、ロール開度差を調整しないから、キャンバが助長されることはない。
【0039】
同様に、例えば図6(a)に示すように、圧延材T(i+1)の差荷重に基づくロール開度差Sdfの変化状況が正値となる圧延材T(i+1)に対して圧延を行う場合、予測した圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況が図6(b)に示すように、キャンバ曲率が負値から正値へと変化している場合には、図6(a)に示すロール開度差Sdfによれば、ワークサイド側のロール開度を開け、ドライブサイド側のロール開度を閉じるように制御を行うことになる。
【0040】
このとき、位置t11〜t12間はキャンバ曲率が負値でありワークサイド側がキャンバの凸部側となり、且つドライブサイド側のロール開度を閉じるように制御を行うから、前記開度差制御禁止条件を満足しないので、ロール開度差Sdfに基づきドライブサイド側を閉じるようにロール開度差の調整を行う。
【0041】
一方、位置t12〜t13間はキャンバ曲率が正値でありドライブサイド側がキャンバの凸部側となり、且つドライブサイド側のロール開度を閉じるように制御を行うから、前記開度差制御禁止条件を満足することになる。よって、ロール開度差の調整を行わない。
【0042】
よって、図6(a)及び(b)に示すようなキャンバ曲率及びロール開度差Sdfとなる圧延材T(i+1)に対しては、図6(c)に示すようにロール開度差Sdfが調整されることになり、キャンバ曲率が負値となる位置t11〜t12間はドライブサイド側のロール開度を閉じてキャンバを抑制し、キャンバ曲率が正値となる位置t12〜t13間はロール開度差が調整されることを禁止する。よって、差荷重に基づくロール開度差Sdfに基づいてロール開度差を調整したときキャンバを助長することになる場合には、ロール開度差を調整しないから、キャンバが助長されることを回避することができる。
【0043】
したがって、圧延材T(i+1)の実際のキャンバの発生状況に応じてキャンバを修正することができるから、より高精度にキャンバの修正を行うことができ、製品の格落ちを低減することができると共に、歩留りの向上を図ることができ、また、キャンバによる設備の破損を回避することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態においては、キャンバ曲率を用いていて制御を行っているが、このキャンバ曲率はキャンバの発生方向、正値であるか負値であるかを検出することだけに用いるものであり、キャンバ曲率の絶対値を制御に用いるわけではないから、精度的に問題はない。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る厚板圧延におけるキャンバ制御方法によれば、厚板圧延機出側での圧延材について、搬送ラインを基準としてどちら側に向かってキャンバが生じているかを検出し、これに基づき次パスにおける圧延材のキャンバの曲がり状況を予測し、次パスにおいて圧延を行う際に、予測したキャンバの曲がり状況に基づくキャンバの凸部側と前記圧延荷重差に基づくロール開度の閉じ側とに基づいてキャンバが助長されると予測されるときには、圧延荷重差に基づくロール開度差の制御を禁止するようにしたから、キャンバが助長されることを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における厚板圧延におけるキャンバ制御方法を適用した厚板圧延機の一例を示す概略構成図である。
【図2】制御用計算機における、iパスにおける圧延実行時のキャンバ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】制御用計算機における、(i+1)パスにおける圧延実行時のキャンバ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図5】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図6】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図7】従来の問題点の説明に供する説明図である。
【図8】差荷重とキャンバ量との相関関係を表す関係図である。
【符号の説明】
1 ワークロール
3 圧下装置
4 キャンバ計
5 制御用計算機
6 ロードセル
7 パルスジェネレータ
100 厚板圧延機
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚板圧延におけるキャンバの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、板材の圧延においては、圧延材の幅方向の両端部の硬度差、或いは圧延機の圧延材幅方向両端部の伸び率(ミル定数)の差、等その他のさまざまな要因により、圧延材の幅方向両端部の厚みに差が生じ、この厚みの差によってキャンバと称する曲がりが発生することがある。
【0003】
この板材のキャンバは歩留りの低下をもたらすばかりでなく、キャンバが大きい場合には、圧延ロールやサイドガイドを傷つけたり、これら設備を破損したりすることもある。
【0004】
このキャンバの発生を防止する方法として、従来種々の方法が提案されており、例えば特開昭63−90309号公報に開示されるように、圧延完了後の圧延板のキャンバ曲率を求め、このキャンバを解消し得る左右のロール開度差に応じて圧延機のロール圧下設定値を修正し、これにより以後の圧延においてキャンバの発生を防止するようにした方法、が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のキャンバ制御方法においては、圧延完了後の圧延材のキャンバ曲率を求めてこれに基づき、ロール圧下設定値を修正するようにしているため、検出したキャンバに関する情報を次の圧延対象の圧延材にしか反映することができず、検出した情報を圧延中の圧延材に対しては反映させることができない。また、差荷重,レベリング量,キャンバ量等の測定誤差,或いはキャンバモデル,ウェッジモデルの精度等、に伴うロール圧下設定値の修正に対する影響が大きいため、充分な効果を得ることができない。
【0006】
これに対して例えば特開昭61−147913号公報に開示されるように、圧延材のオフセンタ(蛇行)に起因して発生する圧延ロール左右の圧延荷重差に基づき、圧延パス毎の圧延材の板厚,板幅,予測クラウンに応じて最適ゲインを選択しながら、圧延ロールのロール圧下位置を修正することにより蛇行を制御し、間接的にキャンバを抑止する方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、この方法の場合には、左右の圧延ロールの圧延荷重差を制御入力とし、基本的にはワークサイド側及びドライブサイド側のうちの荷重の大きい方のロール間開度を閉める制御を行っているが、圧延材のキャンバ量を圧延荷重差から間接的に検出しており、キャンバ量を制御入力としてはいない。そのため、例えば図7(a)に示すように、ワークサイド側の板厚が厚くドライブサイド側の板厚が薄いようなキャンバがもともと生じている圧延材を圧延した場合には、圧延材の幅方向単位長さ当たりの圧延荷重の分布はドライブサイド側の方が大きくなる。よって、図7(b)に示すように、ロール開度は、ドライブサイド側で閉じる方向、ワークサイド側で開く方向に制御される。そのため、さらにキャンバを助長することになるという問題がある。
【0008】
図8は、差荷重及びキャンバ量の実測値に基づいてこれらの相関関係を表したものであり、図8に示すように、ワークサイド側の荷重からドライブサイド側の荷重を減算した値を差荷重とし、圧延ラインと圧延材とのワークサイド側へのキャンバ量を正値とし、ドライブサイド側へのキャンバ量を負値とすると、キャンバ量と差荷重とは比例関係にあることがわかる。つまり、差荷重の大きいサイド側に向かって曲がりが生じることがわかるが、図8中に記号Aで示すようにキャンバ量と差荷重とが逆相関となり、差荷重が大きいサイド側とは逆側に向かって曲がりが生じることがある。
【0009】
そのため、差荷重に基づいてロール開度差を調整した場合には、記号Aの状態でキャンバが生じている場合には、キャンバを助長することになるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、厚板圧延においてキャンバを助長することなく、的確に抑制することの可能な厚板圧延におけるキャンバ制御方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る厚板圧延におけるキャンバ制御方法は、圧延ロールの左右の圧延荷重差を減少させるように左右のロール開度差を調整するようにした厚板圧延におけるキャンバ制御方法において、厚板圧延機出側での圧延材について、当該圧延材の搬送ラインのどちら側に向かってキャンバが生じているかを検出し、これに基づき次パスにおける圧延材のキャンバの曲がり状況を予測し、次パスにおいて圧延を行う際に、予測したキャンバの曲がり状況に基づくキャンバの凸部側と前記圧延荷重差に基づくロール開度の閉じ側とが同じ側であるとき、前記圧延荷重差に基づくロール開度差の制御を禁止するようにしたことを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、例えばオフセンタ計等によって、ある圧延パスにおける厚板圧延機出側での圧延材のキャンバが検出され、例えばこれに基づくキャンバ曲率をもとに、圧延材が圧延材の搬送ラインを基準としたときこの搬送ラインのどちら側の方向に向かって曲がっているかが検出される。そして、このキャンバがどちら側の方向に向かって曲がっているかというキャンバの曲がり状況と、例えば圧延材の搬送方向の長さ及び予測される次パスでの圧延材の長さ等をもとに、次パスにおけるキャンバの曲がり状況が検出される。そして、次パスにおいて圧延荷重差に基づきロール開度差を調整する際に、ロール開度を閉じる側と、検出したキャンバの曲がり状況に基づくキャンバの凸部側とが同じ側であるときには、ロール開度の制御が禁止されてロール開度の調整が行われない。
【0013】
よって、例えばもともとワークサイド側に向かってキャンバが生じドライブサイド側に凸部が生じている圧延材に対して圧延を行う場合等に、実際にはドライブサイド側の板厚がより薄いにも係わらず荷重配分がずれることによってドライブサイド側の圧延荷重がより大きくなるような場合等には、圧延荷重がより大きい側のロール開度を閉じるように制御を行うから、ドライブサイド側のロール開度を閉じることになるが、ロール開度を閉じる側つまりドライブサイド側と、予測したキャンバの凸部側つまりドライブサイド側とが同じ側であるから、ロール開度差の制御が禁止される。よって、板厚がより薄いドライブサイド側のロール開度が閉じることが回避されるから、キャンバが助長されることはない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の厚板圧延におけるキャンバ制御方法を適用した厚板圧延機の一例を示す概略構成図である。
【0015】
この厚板圧延機100は可逆式の圧延機であって、上下一対のワークロール1と、当該ワークロールの上下にそれぞれ上下のバックアップロール2を有し、上下ワークロール1の圧延荷重は、上下バックアップロールによって決定されるようになっている。この上下バックアップロール2は、バックアップロール2の両端にそれぞれ設けられ且つ個別に圧下量を調整可能な圧下装置3により制御され、固定支持された上バックアップロール2に対して、上下方向に移動可能に指示された下バックアップロール2のロール軸が左右の圧下装置3により上下方向に移動制御されることによって、上下バックアップロール2間の間隙が変化し、これに押されて、ワークロール1間のロールギャップが変化するようになっている。また、厚板圧延機100を挟んで一方の側、例えば図1において右側には、圧延ラインセンタを中心として圧延材のセンタとの位置のずれ量を検出する例えば下部光源方式のCCDラインセンサ等で形成されるキャンバ計4が配設されている。
【0016】
このキャンバ計4は、例えば、CCDラインセンサで検出可能な幅方向中央部が圧延ラインのセンタと一致するように配置され、圧延材Tはその中央部が圧延ラインのセンタと一致するように搬送されていることから、例えばCCDラインセンサの検出可能範囲において、検出した圧延材Tの位置が右寄り或いは左寄りに位置する場合にはキャンバが生じているとして検出することができるようになっている。
【0017】
前記圧下装置3は、自動板厚制御処理を行うAGC部5aを備えた制御用計算機5により制御され、このAGC部5aでは、例えば上バックアップロール2のロール軸の左右両端に設けられたロードセル6等の荷重センサによって検出されるワークロール1による圧延荷重と、例えば下バックアップロール2を上下方向に移動させる圧下用電動機の速度実績値と、等から求めたゲージメータ板厚H及び予め設定された目標板厚h0 の差である板厚偏差ΔHを求め、この板厚偏差ΔHが零となるように、前記圧下装置3を制御してワークロール1間のロールギャップを調整するようになっている。
【0018】
また、制御用計算機5では、キャンバ制御処理を行い、図1において左から右側へ圧延材Tが移動して圧延が行われるパス、つまり、キャンバ計4で圧延後の圧延材Tの形状を計測する状態となるパスをiパスとすると、iパスにおける圧延時には、ワークロール1に配設されたパルスジェネレータ7からの回転パルス信号に基づき、キャンバ計4からの検出値をもとに圧延材Tのキャンバ量を検出し、例えば圧延材Tがワークロール1に噛込まれた時点からの回転パルスのカウント数等に基づき、圧延材Tにおけるキャンバ量を検出したキャンバ検出位置を求める。そして、キャンバ量をもとにキャンバ曲率を検出し、この操作を繰り返すことにより、圧延材Tの搬送方向所定間隔毎のキャンバ曲率の変化状況を検出する。
【0019】
そして、圧延材Tがワークロール1に噛込まれた時点から噛出される時点までのパルスジェネレータ7からの回転パルス信号をもとに、iパスにおける圧延後の圧延材T(i)の搬送方向の長さを検出し、これと、予測される圧延荷重等に基づいて(i+1)パスによる圧延後の圧延材T(i+1)の長さ(予測長さ)を予測し、この予測長さに基づいて(i+1)パスにおける圧延材T(i+1)のキャンバ曲率の変化状況を予測する。
【0020】
そして、(i+1)パスにおいて圧延を実行するときには、ロードセル6からの荷重検出信号をもとに左右の差荷重を求め、これに基づき左右の差荷重を減少し得るロール開度差を求める。また、パルスジェネレータ7からの回転パルスのカウント値をもとに、圧延材T(i+1)でのワークロール1による圧延位置を検出し、予測した圧延材(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況から検出した現在の圧延位置のキャンバ曲率を求め、このキャンバ曲率とロール開度差とをもとに、求めたロール開度差に応じてロール開度差を調整した場合に、キャンバを助長させるかどうかを判定し、キャンバが助長されるときにはロール開度差の制御を行わない。
【0021】
次に、上記実施の形態の動作を図2及び図3に示す、制御用計算機5におけるキャンバ処理の処理手順の一例を示すフローチャートに基づいて説明する。
制御用計算機5では、AGC部5aにより自動板厚制御処理が実行され、ロードセル6等の荷重センサによって検出されるワークロール1による圧延荷重と、圧下装置3の圧下用電動機の速度実績値等とから求めたゲージメータ板厚H及び予め設定された目標板厚h0 の差である板厚偏差ΔHが求められ、これに応じて圧下装置3が制御されて圧延材Tの板厚が均一となるように制御される。
【0022】
また、制御用計算機5ではキャンバ制御処理が実行され、図1において、左側から右側へと圧延材Tを搬送するiパスの圧延時には、iパスにおけるキャンバ処理が例えば予め設定した所定周期で実行され、図2のフローチャートに示すように、キャンバ計4からの検出信号に基づき、iパスにおける圧延後の圧延材Tの板幅中心と圧延ラインのセンタとのずれ量であるキャンバ量が、例えば圧延ラインと圧延材とのワークサイド側へのキャンバ量を正値とし、ドライブサイド側へのキャンバ量を負値として算出される(ステップS1)。また、予め圧延材T(i)がワークロール1に噛込まれた時点でカウントを開始したパルスジェネレータ7からのパルス信号のパルスカウント値を読み込まれる。
【0023】
そして、算出したキャンバ量と例えば前回読み込んだキャンバ量とをもとに、この時点におけるキャンバ曲率が算出され、算出されたキャンバ曲率とパルスカウント値とが所定の記憶領域に格納される(ステップS2)。
【0024】
このキャンバ曲率は、例えば圧延材Tがワークサイド側に向かって曲がり、ドライブサイド側に凸部が形成されているときを正値、逆にドライブサイド側に向かって曲がり、ワークサイド側に凸部が形成されているときを負値とする。
【0025】
この操作を圧延材T(i)のiパスにおける搬送方向後端がキャンバ計4を通過するまで繰り返し行い、図4(a)に示すような圧延材T(i)の搬送方向におけるキャンバ曲率の変化状況が検出される。そして、圧延材T(i)の後端におけるキャンバ曲率が検出されこれが所定の記憶領域に格納されると(ステップS3)、次に、圧延材T(i)の後端部がワークロール1から噛出された時点におけるパルスカウント値と、ワークロール1の円周等とに基づき、圧延材T(i)の搬送方向の長さL(i)が算出される(ステップS4)。
【0026】
そして、検出した圧延材T(i)の搬送方向の長さL(i)と、次パス(i+1)で予測される圧延荷重とをもとに、(i+1)パスでの圧延後の圧延材T(i+1)の長さL(i+1)を予測し、予測した長さL(i+1)と、ステップS2の処理で検出した圧延材T(i)におけるキャンバ曲率の変化状況とをもとに、圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況を予測し、圧延材T(i+1)における各位置とキャンバ曲率とを対応させてこれを所定の記憶領域に格納する(ステップS5)。
【0027】
例えば図4(a)に示す圧延材T(i)のキャンバ曲率の変化状況を圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況に変換した場合、図4(b)に示すように、圧延材T(i)とT(i+1)との長さの比に応じて圧延材T(i)の各位置におけるキャンバ曲率の変化状況が圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率として変換される。
【0028】
次に、(i+1)パスにおける圧延を実行する際には、図3のi+1パスにおけるキャンバ制御処理を所定の周期で実行し、まず、左右のロードセル6からの検出信号をもとに、ワークサイド側の荷重からドライブサイド側の荷重を減算して左右の圧延荷重差である差荷重Pdfを算出する(ステップS11)。次いで、次式(1)に基づいて、差荷重Pdfを減少し得るロール開度差Sdf(=ワークサイド側のロール開度SWS−ドライブサイド側のロール開度SDS)を算出する(ステップS12)。
【0029】
Sdf=−α×Pdf ……(1)
なお、式中のαは、制御ゲインであって、圧延材の曲がり易さに応じて板厚,板幅毎にテーブルが形成されている。
【0030】
次いで、この時点におけるパルスジェネレータ7からのパルス信号のカウント値をもとに、圧延材T(i+1)における現在の圧延位置を検出する(ステップS13)。そして、所定の記憶領域に保持している圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況を参照して現在の圧延位置におけるキャンバ曲率を検出し、検出したキャンバ曲率と、ロール開度差Sdfとをもとに、ロール開度差Sdfに基づいて圧延ロールのロール開度差を調整した場合にキャンバを助長させるか否かを、次の開度差制御禁止条件を満足するか否かに基づき判定する。つまり、キャンバ曲率が正値であり、且つロール開度差Sdfが正値であるか、すなわち、圧延材のドライブサイド側がキャンバの凸部側であり、且つドライブサイド側のロール開度を閉じる制御であるか、又は、キャンバ曲率が負値であり、且つロール開度差が負値であるか、すなわち、圧延材のワークサイド側がキャンバの凸部側であり、且つワークサイド側のロール開度を閉じる制御であるか否か、を判定する(ステップS14)。
【0031】
そして、この開度差制御禁止条件を満足する場合には、ロール開度差の調整を行うとキャンバが助長されるとしてロール開度差の調整を行わずにそのまま処理を終了する。
【0032】
一方、前記開度差制御禁止条件を満足しない場合には、ロール開度差の調整を行った場合でも、キャンバを助長させることはないとして、ロール開度差Sdfをもとに、荷重が大きい側の圧延ロールのロール開度を閉じ、荷重が小さい側のロール開度を開けるように、AGC部5aにおける自動板厚制御処理において設定した目標ロール開度を補正する(ステップS15)。これにより、ロール開度差に応じて補正された目標ロール開度に基づいて圧下装置3が制御される。
【0033】
したがって、例えば、ロードセル6からの検出信号をもとに検出した差荷重に基づいて前記(1)式から算出したロール開度差Sdfが図5(a)に示すようにロール開度差Sdf=0を挟んで正値側及び負値側に交互に変化し、圧延材T(i+1)上の位置t1 〜t2 間でロール開度差Sdfが正値となり、位置t2 〜t3 間で負値となる圧延材T(i+1)に対して圧延を行うものとする。
【0034】
このとき、iパスにおいて検出したキャンバ曲率の変化状況をもとに予測した(i+1)パスにおける圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況によれば、図5(b)に示すようにキャンバ曲率が負値であるとすると、ワークサイド側が凸部側となるキャンバが生じた圧延材T(i+1)に対して、圧延を行うことになる。
【0035】
このとき、図5(b)に示すように、予測した圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況によれば、圧延材T(i+1)では、全体にわたってワークサイド側が凸部となって曲がっているから、ワークサイド側のロール開度を閉じると、ワークサイド側がより圧延されることになってドライブサイド側への曲がりを助長することになる。よって、図5(a)に示す差荷重に基づくロール開度差Sdfに基づいてロール開度差を調整した場合、ドライブサイド側を閉じるように制御される位置t2 〜t3 間でキャンバを助長することになる。
【0036】
しかしながら、図3のフローチャートに示すように、キャンバ曲率が負値であり、且つロール開度差が負値であるとき、すなわち、圧延材のワークサイド側がキャンバの凸部側であり且つワークサイド側のロール開度を閉じる制御である場合には、目標ロール開度を補正しない。よって、t2 〜t3 間でキャンバが助長されることはない。
【0037】
一方、位置t1 〜t2 間は、キャンバ曲率が負値であり、ロール開度差Sdfが正値であるから、ロール開度差Sdfに応じてロール開度差が調整され、これにより、キャンバが修正される。
【0038】
したがって、図5(c)に示すように、位置t1 〜t2 間は、ワークサイド側のロール開度を開けドライブサイド側を閉じるように制御を行うが、この位置では圧延材T(i+1)のワークサイド側がキャンバの凸部側となっているから、ドライブサイド側への曲がりが助長されることはない。また、位置t2 〜t3 間では、差荷重に基づくロール開度差Sdfによれば、ワークサイド側のロール開度を閉じるように制御を行うことになり、これによりドライブサイド側への曲がりがさらに助長されることになるが、位置t2 〜t3 間では、ロール開度差を調整しないから、キャンバが助長されることはない。
【0039】
同様に、例えば図6(a)に示すように、圧延材T(i+1)の差荷重に基づくロール開度差Sdfの変化状況が正値となる圧延材T(i+1)に対して圧延を行う場合、予測した圧延材T(i+1)におけるキャンバ曲率の変化状況が図6(b)に示すように、キャンバ曲率が負値から正値へと変化している場合には、図6(a)に示すロール開度差Sdfによれば、ワークサイド側のロール開度を開け、ドライブサイド側のロール開度を閉じるように制御を行うことになる。
【0040】
このとき、位置t11〜t12間はキャンバ曲率が負値でありワークサイド側がキャンバの凸部側となり、且つドライブサイド側のロール開度を閉じるように制御を行うから、前記開度差制御禁止条件を満足しないので、ロール開度差Sdfに基づきドライブサイド側を閉じるようにロール開度差の調整を行う。
【0041】
一方、位置t12〜t13間はキャンバ曲率が正値でありドライブサイド側がキャンバの凸部側となり、且つドライブサイド側のロール開度を閉じるように制御を行うから、前記開度差制御禁止条件を満足することになる。よって、ロール開度差の調整を行わない。
【0042】
よって、図6(a)及び(b)に示すようなキャンバ曲率及びロール開度差Sdfとなる圧延材T(i+1)に対しては、図6(c)に示すようにロール開度差Sdfが調整されることになり、キャンバ曲率が負値となる位置t11〜t12間はドライブサイド側のロール開度を閉じてキャンバを抑制し、キャンバ曲率が正値となる位置t12〜t13間はロール開度差が調整されることを禁止する。よって、差荷重に基づくロール開度差Sdfに基づいてロール開度差を調整したときキャンバを助長することになる場合には、ロール開度差を調整しないから、キャンバが助長されることを回避することができる。
【0043】
したがって、圧延材T(i+1)の実際のキャンバの発生状況に応じてキャンバを修正することができるから、より高精度にキャンバの修正を行うことができ、製品の格落ちを低減することができると共に、歩留りの向上を図ることができ、また、キャンバによる設備の破損を回避することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態においては、キャンバ曲率を用いていて制御を行っているが、このキャンバ曲率はキャンバの発生方向、正値であるか負値であるかを検出することだけに用いるものであり、キャンバ曲率の絶対値を制御に用いるわけではないから、精度的に問題はない。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る厚板圧延におけるキャンバ制御方法によれば、厚板圧延機出側での圧延材について、搬送ラインを基準としてどちら側に向かってキャンバが生じているかを検出し、これに基づき次パスにおける圧延材のキャンバの曲がり状況を予測し、次パスにおいて圧延を行う際に、予測したキャンバの曲がり状況に基づくキャンバの凸部側と前記圧延荷重差に基づくロール開度の閉じ側とに基づいてキャンバが助長されると予測されるときには、圧延荷重差に基づくロール開度差の制御を禁止するようにしたから、キャンバが助長されることを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における厚板圧延におけるキャンバ制御方法を適用した厚板圧延機の一例を示す概略構成図である。
【図2】制御用計算機における、iパスにおける圧延実行時のキャンバ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】制御用計算機における、(i+1)パスにおける圧延実行時のキャンバ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図5】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図6】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図7】従来の問題点の説明に供する説明図である。
【図8】差荷重とキャンバ量との相関関係を表す関係図である。
【符号の説明】
1 ワークロール
3 圧下装置
4 キャンバ計
5 制御用計算機
6 ロードセル
7 パルスジェネレータ
100 厚板圧延機
Claims (1)
- 圧延ロールの左右の圧延荷重差を減少させるように左右のロール開度差を調整するようにした厚板圧延におけるキャンバ制御方法において、厚板圧延機出側での圧延材について、当該圧延材の搬送ラインのどちら側に向かってキャンバが生じているかを検出し、これに基づき次パスにおける圧延材のキャンバの曲がり状況を予測し、次パスにおいて圧延を行う際に、予測したキャンバの曲がり状況に基づくキャンバの凸部側と前記圧延荷重差に基づくロール開度の閉じ側とが同じ側であるとき、前記圧延荷重差に基づくロール開度差の制御を禁止するようにしたことを特徴とする厚板圧延におけるキャンバ制御方法。
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JPH10244307A JPH10244307A (ja) | 1998-09-14 |
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