JP3584462B2 - 漏洩磁束探傷方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、強磁性被検体の漏洩磁束探傷方法に関するものであり、さらに詳しくは、強磁性被検体を異なる2種の磁化条件で磁化し、それぞれの磁化条件下における強磁性被検体からの漏洩磁束の測定を行って2つの測定信号を得、強磁性体被検体上の同位置に対応する2つの測定信号同士を演算し、その結果に基づいて欠陥の判定を行なう漏洩磁束探傷法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄のような強磁性体の内部に存在する欠陥を検出する方法として、漏洩磁束探傷法が広く用いられている。その一例として、製鉄プラントにおける製鉄検査ラインに組み込まれている、磁気センサを利用した磁気探傷装置の構成を図5に示す。
【0003】
製品検査ラインを搬送ローラ21、22により、ほぼ一定速度Vで搬送される薄鋼帯23の搬送路に沿って磁気探傷装置24が配設されている。この磁気探傷装置24は、走行状態の薄鋼帯23に磁界を印加する磁化器25と、薄鋼帯23を挟んで磁化器25の対向位置に配設された磁気センサ26と、この磁気センサ26からの検出信号に基づいて薄鋼帯23の内部または表面の欠陥27を検出する信号処理装置28とで構成されている。
【0004】
薄鋼帯23に欠陥27が存在すると、この欠陥27に起因して薄鋼帯23内の磁力線が乱され、薄鋼帯23の外部に漏洩して漏洩磁束となる。磁気センサ26はこの漏洩磁束を検出する。漏洩磁束の強度は欠陥27の大きさに対応するので、磁気センサ26の検出信号の信号レベルで欠陥27の大きさが評価できる。
【0005】
以上のように、従来の、強磁性被検体の欠陥を、漏洩磁束を測定することによって検出する方法においては、磁気センサの検出信号の信号レベルによって欠陥の大きさを検出していた。しかしながら、磁気センサによって検出される磁気的な信号には、上記の欠陥に起因する漏洩磁束信号以外にも、強磁性被検体における局部的な磁気的特性変化、むらなどに起因する強磁性検体外部の磁束分布の乱れや、表面粗さにより生じる磁束分布の乱れが含まれる場合がある。この磁束分布の乱れは、欠陥検出という観点からすれば、不要な磁束(雑音磁束)である。
【0006】
このような雑音磁束による影響を避けるため、欠陥漏洩磁束に起因する信号と雑音磁束に起因する信号とで周波数が異なることを利用して、欠陥を判断する方法が用いられることがある。図6は欠陥信号と雑音磁束の、周波数特性の測定結果の一例を示す図である。すなわち、図6は、薄鋼板を一定速度で走行させた状態において、欠陥に起因する漏洩磁束を磁気センサで検出した場合の欠陥信号の周波数特性と、雑音磁束を磁気センサにより検出した場合の周波数特性を示している。
【0007】
図6に示されるように、一般に欠陥信号の方が雑音磁束よりも高い周波数分布を持っている。そこで、信号処理装置に遮断周波数fを有するハイパスフィルタを組み込むことにより、磁気センサから当該信号処理装置に出力された検出信号の内、欠陥信号を雑音磁束に比べて相対的に強調して抽出することが可能である。このように漏洩磁束探傷法において、欠陥検出能を上げるため、適当な定数を持つフィルターを使用する方式は実開昭61−119760号公報にも開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6に示すように、欠陥信号の周波数特性と雑音磁束の周波数特性は重なり合う部分もあるため、検出すべき欠陥が小さくて欠陥信号のレベルが小さい場合や、雑音磁束が大きい場合には、たとえ前記のようなハイパスフィルターを設けて欠陥信号を周波数弁別したとしても、欠陥を検出できるレベルまで、雑音磁束を除去することは困難であるという問題点がある。
【0009】
このような問題点を解決する方法として、発明者らは、強磁性被検体を異なる2種の磁化条件で磁化し、それぞれの磁化条件下における強磁性被検体からの漏洩磁束の測定を行って2つの測定信号を得、強磁性体被検体上の同位置に対応する2つの測定信号同士を演算し、その結果に基づいて欠陥の判定を行なうことにより、欠陥検出の際のS/N比を向上させる方法を発明し、平成11年特許願第29782号として特許出願した(以下、「先願発明」という)。先願発明の概要を図7に基づいて説明する。
【0010】
製品検査ラインを、搬送ローラ21、22によりほぼ一定速度Vで搬送される薄鋼帯等の強磁性被検体23の搬送路に沿って、漏洩磁束探傷装置24が配設されている。この漏洩磁束探傷装置24は、走行状態の強磁性被検体23の表面近傍に配設された磁気センサ26aと、磁気センサ26aから強磁性検体23の走行方向に一定距離離れた位置に配設された磁気センサ26bと、磁気センサ26a、26bに対して、それぞれ強磁性被検体23を挟んで反対側に設置され、強磁性被検体23に磁界を印加する磁化器25a、25bと、磁気センサ26a、26bからの検出信号に基づいて、強磁性被検体23の内部または表面の欠陥27を検出する信号処理装置28とで構成されている。
【0011】
強磁性被検体23に欠陥27が存在すると、この欠陥27に起因する漏洩磁束により強磁性被検体23の周囲の磁場が乱される。磁気センサ26a、26bはこの磁場の変化を検出する。磁場変化によって生じる信号の強さは欠陥27の規模などに対応するが、磁化器25a、25bによる磁界の大きさは異なっているため、磁気センサ26aと磁気センサ26bが検出する信号の強さには差がある。一方、強磁性被検体23の表面粗さ等の外乱による磁場の変化は、あまり磁界の強さの影響を受けないので、磁気センサ26aの検出する信号と磁気センサ26bの検出する信号では差が少ない。そこで磁気センサ26aと磁気センサ26bの出力を演算することにより、外乱による磁場の変化を消去し、欠陥の信号を強調することができる。
【0012】
図8に、先願発明における信号処理の様子を示す。(a)は磁気センサ26aの出力で、印加する磁界が強い方の信号とする。(b)は磁気センサ26bの出力で印加する磁界が弱い方の出力とする。それぞれ欠陥部と雑音部があるが、欠陥部と雑音部の出力比が異なっている。よって、(a)の信号の雑音部の平均値を(b)の信号の雑音の平均値で割った比をkとするとき、(b)の信号にkを掛けて(a)の信号より差し引くことにより、雑音部の信号を相殺して、欠陥部がより強調された(c)の信号を得ることができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このように、先願発明においては、片方の磁気センサからの信号に予め定められた係数を掛けて、他の信号から差し引くことにより雑音信号を低減させていた。そして、この係数は、いくつかの欠陥サンプルを探傷実験し、サンプル全部の欠陥が平均的に強調されるように決定し、決定後は固定値として扱っていた。
【0014】
しかしながら強磁性被検体が長く、探傷を連続的に行うとき(例えば強磁性体金属帯製造ラインでの探傷等)には、磁気センサと強磁性被検体の距離(以後リフトオフと呼ぶ)や強磁性被検体と磁化器との距離が変化する場合がある。このような距離変動が発生すると、2種の磁化条件が変動し、磁気センサの出力も変動する。また、強磁性体金属帯の材質的な分布(板厚変動、粒径分布等)により、磁気センサの出力が変動する場合もある。これらの場合に、予め決定された固定係数を一方の磁気センサの出力に掛け、他方のセンサの出力から差し引く方法では、十分に雑音信号を消去できない場合が生じる。
【0015】
その例を図9に示す。(a)は強い磁化の方の磁気センサ出力であり、リフトオフが設定値に一致している場合の信号である。(a’)は強い磁化の方の磁気センサ出力であり、リフトオフが設定値より10%大きくなった場合の信号である。(a’)における雑音信号のレベルは、(a)の雑音信号のレベルに比してX%低下している。
【0016】
(b)は弱い磁化の方の磁気センサ出力であり、リフトオフが設定値に一致している場合の信号である。(b’)は弱い磁化の方の磁気センサ出力であり、リフトオフが設定値より10%大きくなった場合の信号である。(b’)における雑音信号のレベルは、(b)の雑音信号のレベルに比してY%低下している。図の場合Y>Xである。
【0017】
よって、(a)の信号と(b)の信号とで信号処理を行なう場合は、条件が設定値に一致しているので、雑音信号がうまく相殺され、(c)に示すように雑音レベルが低下してS/N比が向上する。これに対して、(a’)の信号と(b’)の信号とで信号処理を行なう場合は、雑音信号のレベルの比が設定値と異なっているので、雑音信号が相殺されずに残り、(c’)に示すように、S/N比の向上度が低下してしまう。
【0018】
同様に強磁性被検体と磁化器との距離が変化することに伴う磁化条件の変動や、強磁性被検体の材質的な変動により、出力信号が変動すると、図9で説明したように、十分な効果が得られなくなることがある。
【0019】
本発明は、先願発明のこのような問題点を改良するためになされたもので、磁気センサーや磁化器と強磁性体の間の距離が変化した場合や、強磁性体に材質的な変化があった場合においても、それに追随して雑音信号を低減させることができ、微小な欠陥をS/N比よく検出できる漏洩磁束探傷方法を提供することを課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、強磁性被検体を異なる2種の磁化条件で磁化し、それぞれの磁化条件下における強磁性被検体からの漏洩磁束の測定を行って2つの測定信号を得、強磁性体被検体上の同位置に対応する2つの測定信号同士を演算し、その結果に基づいて欠陥の判定を行なう漏洩磁束探傷方法であって、前記演算時に、強磁性被検体の探傷方向に沿った雑音信号レベルの変化の周期より短い一定領域毎における各測定信号の代表値を求め、その代表値の比を使用して2つの信号の信号値強度を調整するための係数を求め、求められた係数を用いて、雑音部の信号を相殺するように、2つの測定信号同士の演算を行うことを特徴とする漏洩磁束探傷方法(請求項1)である。
【0021】
本手段においては、強磁性被検体の一定領域における各測定信号の代表値を、演算時にリアルタイムで求めておく。欠陥は滅多に発生しないので、これら各測定信号の代表値は、雑音信号のレベルを表すものとなる。時刻tにおける、第1の測定信号の代表値をA(t)、第2の測定信号の代表値をB(t)とし、k(t)=A(t)/B(t)を求めると、この値k(t)が2つの検出信号の雑音信号のレベル比を示すものとなる。よって、第2の測定信号にk(t)を掛けたものを第1の測定信号から差し引くことにより、常に雑音信号を相殺することができる。
【0022】
k(t)は、あるサンプリング間隔毎(被検体の所定走行距離毎、一定時間毎等)に測定信号をサンプリングした結果に基づいて基づいて定められるが、このサンプリング間隔は、雑音レベルの変動要因となる現象の周期を求め、その周期より短い間隔に設定する。
【0023】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記一定領域における各測定信号の代表値として、各領域内における各信号レベルの2乗平均の平方根を用いることを特徴とするもの(請求項2)である。
【0024】
信号レベルの2乗平均の平方根(Root Mean Square:RMS)は、信号レベルの大きさを表すものとして最も一般的であるが、発明者らの実験によると、前記一定領域における各測定信号の代表値としてRMSを用いると、雑音信号の相殺についても、最も有効であることが分かった。
【0025】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段であって、求められた測定信号の代表値が所定範囲を外れた場合には、所定範囲を外れる前の代表値を使用することを特徴とするもの(請求項3)である。
【0026】
前記のように、欠陥は滅多に発生しないので、強磁性被検体の一定領域における各測定信号の代表値は、雑音信号のレベルを表すものとなる。しかしながら、場合によっては、強磁性被検体の一定領域における各測定信号の代表値に欠陥信号が含まれることがあり、このような場合には雑音レベルを表すものとならないことがある。そのような場合には、求められた測定信号の代表値が、定常の範囲から大きく外れるので、求められた測定信号の代表値が所定範囲を外れた場合には、その値を採用せず、所定範囲を外れる前の代表値を代わりに使用することにすれば、欠陥信号を含んだ部分が、雑音信号のレベルを表す信号として使用されるのを防止することができる。
【0027】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段又は第2の手段であって、求められた測定信号の代表値が所定範囲を外れた場合には、信号値強度を調整するための係数として、前記代表値の代わりに、予め定められた値を用いることを特徴とするもの(請求項4)である。
【0028】
前記のように、求められた測定信号の代表値が、定常の範囲から大きく外れた場合は、測定信号の中に欠陥信号値が含まれている場合が多い。よって、これらの場合は、測定信号の代表値から求められた信号値強度を調整するための係数を使用せず、従来技術における場合と同じように、予め定められた係数を使用する。これにより、欠陥信号を含んだ部分が、雑音信号のレベルを表す信号として使用されるのを防止することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の1例である漏洩磁束探傷装置の構成を示すブロック図である。図1において、1は薄鋼板、2a、2bは搬送ローラ、3は漏洩磁束探傷装置、4a、4bは磁化器、5a、5bは磁気センサ、6は信号処理装置、7a、7bは代表値演算装置、8は演算装置、9は探傷結果演算装置、10は欠陥である。
【0030】
この製品検査ラインでは、薄鋼板1は搬送ローラ2a、2bによって搬送され、その搬送路に沿って漏洩磁束探傷装置3が設置されている。この漏洩磁束探傷装置3は、主に磁化器4a、4b、磁気センサ5a、5b、信号処理装置6から構成されている。磁化器4a、4bは電磁石等からなり、薄鋼板1を磁化する。磁気センサ5a、5bは、薄鋼板1から漏洩する磁束を検出するもので、それぞれの薄鋼板1との距離であるリフトオフはL1、L2とする。
【0031】
磁化器4a、磁気センサ5aにより、薄鋼板1はある磁化状態にて探傷される。磁化器4b、磁気センサ5bにより、薄鋼板1は、磁化器4a、磁気センサ5aとは異なる磁化レベルで探傷される。磁気センサ5a、5bの出力は信号処理装置6に入力され、そこで処理が施される。信号処理装置6内では、磁気センサ5aからの信号出力の、ある領域の代表値Aを代表値演算装置7aで求め、磁気センサ4bからの信号出力の、前記ある領域と同一領域の代表値Bを代表演算装置7bで求める。そして、これらの比k=A/Bを演算装置8で求める。探傷結果演算装置9は、この比を用いて薄鋼板1上の同一位置からの信号同士で、(磁気センサ4aの出力)−k×(磁気センサ4bの出力)の演算を行い、これにより雑音信号を低減し、相対的に欠陥を強調する。
【0032】
代表値を計算する一定領域の定め方として以下のものが考えられる。
(1) 薄鋼板上の一次元領域(長さ)…各組のセンサが薄鋼板の所定領域長さにおいて検出した信号に基づいて、各組毎の値を計算する。
(2) 鋼板上の二次元領域(面積)…横方向に並べられた複数組のセンサが、薄鋼板の所定領域長さにおいて検出した信号に基づいて、複数組に共通の値を計算する。
【0033】
いずれの場合にも、薄鋼板の所定長さは、雑音信号レベルの変化の周期に対応する長さより短い範囲としなければならない。また、磁気センサ5a、5bは、通常、薄鋼板1の進行方向に対して離れた位置に設けられているので、両者の検出位置を合わせるために、上流側にある磁気センサの信号を遅延させて比を求める必要がある。
【0034】
図2は本発明の他の実施の形態の例である漏洩磁束探傷装置の構成を示すブロック図である。以下の図において、番号の若い前出の図に示された構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。図2において、4は磁化器である。
【0035】
図2に示す実施の形態が図1に示すものと異なる点は、磁化器が1つであり、磁気センサー5a、5bに共通とされていることのみであるので、共通する部分の説明を省略し、異なる部分のみについて説明を行う。磁気センサ5a、5bは、薄鋼板1の走行方向に関して、磁化器4の磁極間中心線に対して対称とならないように設置する。この実施の形態においては、磁気センサ5aが磁化器4の磁極に近い位置、磁気センサ5bは磁化器4の磁極に遠い位置に設置されている。よって、磁気センサ5aは、磁化強度が大きい薄鋼板1の部分からの漏洩磁束を、磁気センサ5bは、磁化強度が小さい薄鋼板1の部分からの漏洩磁束を、それぞれ検出していることになる。
また、各実施の形態において、磁気センサのリフトオフは、個々に調整できるようにしてもよいし、2つまとめて調整できるようにしてもよい。
【0036】
さらに、一定領域の信号の代表値が所定範囲を外れた場合は、その中に欠陥等の異常信号が含まれているとして、その代表値を使用しないようにすることもできる。その第1の方法は、その代表値を使用する代わりに、所定範囲を外れる前の領域の信号の代表値を使用する方法である。その第2の方法は、代表値の比を求めず、予め定められた値を、代表値の比の代わりに使用する方法である。この第2の方法は、一定領域の信号の代表値が所定範囲を外れた場合には、その範囲に限り従来の方法を使用するものである。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を、薄鋼板中の微小な内部介在物をオンラインで検出する装置に適用した実施例について、図3を参照して説明する。図3に示す装置は、図1に示したものとほぼ同じ構成であるが、信号処理を計算機を用いてディジタル処理により行っている点が異なっている。図3において、11は遅延回路、12はプリアンプ、13はバンドパスフィルター、14はA/D変換器、15は計算機である。
【0038】
製品検査ラインを搬送される薄鋼板の厚さは1mmである。また、この薄鋼板1は搬送ローラ2a、2bによりほぼ一定速度V=30m/minで搬送されている。各磁気センサ5a、5bは、それぞれリフトオフ1.0mmの位置に設置した。図示していないが、複数個の磁気センサ5a、5bが板幅方向に直線的に5mmピッチで配列されており、200組400個の磁気センサにて1m幅を探傷する。磁気センサ4aの列と5bの列との距離は1mとした。磁化器4a、4bと薄鋼板1との距離はそれぞれ5mmとし、磁化器4aの磁化力は4000AT、磁化器4bの磁化力は1000ATとした。
【0039】
磁気センサ5aの出力は、遅延回路11によって、薄鋼板1が磁気センサ5aと5bの間を走行する時間である2秒遅延される。その後プリアンプ12にて100倍に増幅され、バンドパスフィルター13(200Hz−800Hz)で高周波側と低周波側がカットされる。一方、磁気センサ5bの出力は、遅延回路11を経ずにプリアンプ12、バンドパスフィルタ13により同様の処理を受ける。処理された信号は、A/D変換器14にてディジタル化され、計算機15のメモリーに格納される。格納された磁気センサ5aの探傷データをVa(t)とし、磁気センサ5bの探傷データをVb(t)とする。
【0040】
計算機15は、これらのデータから、薄鋼板1の一定領域のRMSを求める。Va(t)のRMS値をRa、Vb(t)のRMS値をRbとする。そして、以下の計算を行って出力V(t)を求め、この大きさから欠陥の有無と大きさを判定する。
V(t)=Va(t)−Vb(t)*Ra/Rb
得られたV(t)は、磁気センサ5a、5bのリフトオフ変動、磁化器4a、4bと薄鋼板1の間の距離の変動、薄鋼板1の材質の影響を受けにくく、常に欠陥を強調する信号となっている。
【0041】
図4に、この実施例における信号波形の例を示す。(a)は磁気センサ5aの出力信号Va(t)(遅延回路11を通ったもの)、(b)は磁気センサ5bの出力信号Vb(t)である。各信号について、薄鋼板1の一定走行距離毎(あるいは一定時間毎)に計算機のメモリーに格納された信号を用いてRMSを計算する。図においては、各領域を領域1〜領域5で表している。そしてそれぞれの領域における磁気センサ5aの出力信号(遅延回路11を通ったもの)のRMS値をRMSa−1〜RMSa−5、磁気センサ5bの出力信号のRMS値をRMSb−1〜RMSb−5で示している。(c)は出力信号V(t)を示している。V(t)の値は、
V(t)=Va(t)−Vb(t)*RMSa−j/RMSb−j(j=1〜5)
として算出されたものである。
【0042】
(c)の雑音信号レベルに注目すると、(a)や(b)の雑音信号レベルが変化した場合でもほとんど変化せず、雑音信号の相殺がうまく働いていることを示している。領域2と領域5に同じ形状の欠陥があるが、(c)においては、両者ともS/N≒5の信号として検出されている。
【0043】
本実施例においては、1領域の大きさを以下のようにして決定した。すなわち、このラインでは薄鋼板1の形状変化、振動などで5Hz周期にてリフトオフが1mmア0.1mm程度変動しているため、その変動より短い周期でRMS比を求める必要がある。薄鋼板速度V=30m/minなので、5Hzは100mmの鋼板移動距離にあたる。そこで計算領域を走行方向50mm×幅200mm(200ch)とした。50mm分のデータを探傷し、計算機15のメモリーに格納する毎に、それらのデータについてRMSを計算している。そして、これを使用して前述の式に基づいて、雑音信号の相殺を行っている。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1に係る発明においては、2つのセンサからの信号の代表値の比をリアルタイムで算出し、この比に基づいて雑音の相殺を行っているので、センサーのリフトオフ等で、各センサー間でS/N比が変動した場合であっても、微小な欠陥をS/N比良く検出することができる。
【0045】
請求項2に係る発明においては、各測定信号の代表値としてRMSを用いているので、雑音信号を効果的に相殺することができる。
【0046】
請求項3に係る発明においては、求められた測定信号の代表値が所定範囲を外れた場合には、その値を採用せず、所定範囲を外れる前の代表値を代わりに使用しているので、欠陥信号を含んだ部分が、雑音信号のレベルを表す信号として使用されるのを防止することができる。
【0047】
請求項4に係る発明においては、求められた測定信号の代表値が所定範囲を外れた場合には、予め定められた係数を使用ようにしているので、欠陥信号を含んだ部分が、雑音信号のレベルを表す信号として使用されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例である漏洩磁束探傷装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の実施の形態の例である漏洩磁束探傷装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例である漏洩磁束探傷装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す実施例における信号波形の例を示す図である。
【図5】従来の磁気探傷装置の構成を示すブロック図である。
【図6】欠陥信号と雑音磁束の周波数特性を示す図である。
【図7】先願発明の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図8】先願発明における信号処理の様子を示す図である。
【図9】先願発明において、磁気センサのリフトオフが変化した場合の信号変化を示す図である。
【符号の説明】
1…薄鋼板、2a、2b…搬送ローラ、3…漏洩磁束探傷装置、4a、4b…磁化器、5a、5b…磁気センサ、6…信号処理装置、7a、7b…代表値演算装置、8…演算装置、9…探傷結果演算装置、10…欠陥、11…遅延回路、12…プリアンプ、13…バンドパスフィルター、14…A/D変換器、15…計算機
Claims (4)
- 強磁性被検体を異なる2種の磁化条件で磁化し、それぞれの磁化条件下における強磁性被検体からの漏洩磁束の測定を行って2つの測定信号を得、強磁性体被検体上の同位置に対応する2つの測定信号同士を演算し、その結果に基づいて欠陥の判定を行なう漏洩磁束探傷方法であって、前記演算時に、強磁性被検体の探傷方向に沿った雑音信号レベルの変化の周期より短い一定領域毎における各測定信号の代表値を求め、その代表値の比を使用して2つの信号の信号値強度を調整するための係数を求め、求められた係数を用いて、雑音部の信号を相殺するように、2つの測定信号同士の演算を行うことを特徴とする漏洩磁束探傷方法。
- 請求項1に記載の漏洩磁束探傷方法であって、前記一定領域における各測定信号の代表値として、各領域内における各信号レベルの2乗平均の平方根を用いることを特徴とする漏洩磁束探傷方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の漏洩磁束探傷方法であって、求められた測定信号の代表値が所定範囲を外れた場合には、所定範囲を外れる前の代表値を使用することを特徴とする漏洩磁束探傷方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の漏洩磁束探傷方法であって、求められた測定信号の代表値が所定範囲を外れた場合には、信号値強度を調整するための係数として、前記代表値の代わりに、予め定められた値を用いることを特徴とする漏洩磁束探傷方法。
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