JP3584415B2 - 地下構造物の浮き防止構造 - Google Patents

地下構造物の浮き防止構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下水位変動時に地下構造物の浮き上がりの防止をはかるための浮き防止構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の建築・土木構造物は、土地利用の要請の高度化、および技術面での進歩に伴い、地下や軟弱地盤上などの施工条件の悪い場所において建設されることが多くなってきている。しかし、このような場所においては、構造物の設計の基準となる外力が、実際には設計時の予測値を上回るような場合や、場所的な制約により外力に対する安全策を十分施すことが難しい場合も多く、これらのことが、施工中および施工後の構造物における安全性を確保する上での妨げとなっている。
【0003】
地下に構造物を建設する場合に必ず考慮しなければならない外力の一つに、地下水から地下構造物が受ける浮力がある。従来、地下構造物の浮力対策としては、地下構造物の底盤から下方の支持地盤に対してアンカーを打設することが行われてきた。図5は、地下構造物に浮力対策としてアンカーを設置した一例であり、図中、符号1は、地下構造物を、2は地下構造物1が設置された地盤を、4はアンカーを示す。これらのアンカーの設置本数や個々のアンカーの強度は、構造物の重量および設計時に想定した構造物が受ける浮力から決定され、このうち、構造物が受ける想定浮力は、設計時に想定した地下水位によって決められる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の浮力対策においては、単にアンカーが引き抜きに対する抵抗に関する機能を有するのみであり、地下水位が変動し、地下構造物に当初想定していたよりも大きな浮力が作用した場合に、当該地下構造物が浮き上がるという問題点があった。
また、既存地下構造物においては、地下水位が上昇し、新たにアンカーを打設することが必要になったとしても、スペース上の制約から必要本数を設置できないことも多かった。
以上のようなことから、浮力対策として単にアンカーだけを利用するのではなく、他対策も併用しながら地下構造物の浮き上がりを防止するような方策が望まれていた。
【0005】
上記の事情に鑑み、本発明では、地下水位変動時に当初想定浮力よりも大きな浮力が地下構造物に作用した場合にも対処可能であるような、地下構造物の浮き防止構造の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の地下構造物の浮き防止構造では、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の地下構造物の浮き防止構造は、地下構造物の底盤からその下方の地盤に向けてアンカーが打設され、前記底盤に該底盤下方の地盤中の地下水を該地下構造物内側の空間部に導入可能とする水抜き孔を有する貫通孔部が設けられ、前記水抜き孔を通る地下水の流通、遮断を行うバルブが設けられていることを特徴とする。
この地下構造物の浮き防止構造は、前記地下構造物に働く浮力が増大した場合に、該地下構造物底盤からその下方の地盤に設置された前記アンカーが、該地下構造物の浮き上がりを防止する抵抗となって作用すると同時に、前記バルブを開くことによって該底盤直下に作用する水圧を減圧し、該地下構造物に作用する浮力を弱め、浮き上がりを防止する働きがある。
【0007】
記に加え、請求項1記載の地下構造物の浮き防止構造は、前記貫通孔部が、内側に配置された内部貫通孔と、その外側に配置された外部貫通孔とに区画された二重管構造とされ、前記内部貫通孔内に前記アンカーの基端部が固定され、前記外部貫通孔が前記水抜き孔とされていることを特徴とする。
この地下構造物の浮き防止構造は、前記貫通孔部に前記アンカーと前記水抜き孔を同時に備えることにより、地下水位上昇時には、前記アンカーが該地下構造物の浮き防止の機能を果たすとともに、該水抜き孔から地下水を抜くことによって、前記アンカー基端部に直接作用する水圧を減じ、前記アンカーに加わる緊張力を減少させる。それと同時に、該地下構造物直下に作用する浮力を減少させる働きも行う。
【0008】
請求項2記載の地下構造物の浮き防止構造は、請求項1記載の地下構造物の浮き防止構造において、前記アンカーの緊張力を測定するセンサーと、該センサーの出力に基づき前記バルブの開閉を制御する制御装置とを備えてなることを特徴とする。
この地下構造物の浮き防止構造は、地下水位が上昇して該地下構造物に作用する浮力が増大し、その結果、該地下構造物底盤に設置されたアンカーに加わる緊張力の測定値が、あらかじめ設定された許容緊張力を越えた場合に、前記バルブを開放することによって、該地下構造物直下の水圧を減じ、アンカーの緊張力を弱める働きをする。このことによって、アンカーの破壊や該地下構造物の浮き上がりを防止すると同時に、該地下構造物に作用する浮力を減少させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を模式的に示すもので、本発明による浮き防止構造を備えた地下構造物の断面図を示している。図中、符号1は地下構造物であり、2は地下構造物1の周囲の地盤を示す。また、3は底盤に設けられた水抜き孔を有する貫通孔部であり、4は、地下構造物1の底盤から下方の地盤に向けて打設されたアンカーを示している。
【0010】
図1における貫通孔部3およびアンカー4の基端部を拡大して図示したものが図2である。図中、符号5は地下構造物1の底盤であり、底盤5を貫通して二重管6が設置されている。この二重管6は、径の異なる内管6aと外管6bとを同一軸線上に配置したもので、内側の内部貫通孔7とその外側の外部貫通孔8とに区画されている。内部貫通孔7の中空部にはアンカー4の基端部が、外部貫通孔8内には取水スクリーン10が、それぞれ設けられており、外部貫通孔8は、地盤2中の地下水が取水スクリーン10から流入し、バルブ11を通って地下構造物1内部の空間部に流出するための水抜き通路とされている。この構成のもとに、バルブ11の開閉を調節することによって、地下構造物1の底面に作用する水圧を減圧することが可能となっている。
【0011】
貫通孔部3とアンカー4の基端部を底盤5に設置する際の手順は以下のとおりである。まず、図3(a)に示すように、二重管6を底盤5に設置する。このとき、二重管6に設けられた取水スクリーン10から、地盤2中の地下水を取水できるように設置を行う。つぎに、二重管6の内部貫通孔7の中空部を図3(b)に示すように削孔し、この部分を基端部として、下方の地盤2に向けてアンカー4を打設する。ついで、図2のように二重管6の地下構造物1内部側の一端にバルブ11および頭部キャップ12を設け、図2に示すような貫通孔部3が形成される。
【0012】
この地下構造物の浮き防止構造においては、地盤2中の地下水位が上昇し、地下構造物1に作用する浮力が増大した場合、アンカー4が抵抗となることによって、地下構造物1に作用する力の釣合いを保つことができる。また、バルブ11を開放することで、貫通孔部3に設けられた水抜き孔から、地盤2中の地下水を地下構造物1の内側に、矢印20に示すような方向に流通させ、地下構造物1の底面に作用する水圧を減圧し、地下構造物1自体にかかる浮力を弱めることが可能である。
【0013】
また、バルブ11の開閉を操作する際には、アンカー4に緊張力を測定するセンサーを設置しておき、緊張力がある一定値に達した時点で、バルブ11を開放し地下水圧の減圧を行うことが好適である。地下構造物に作用する浮力の増加分を、アンカー4による抵抗力のみに負担させると、浮力の増加によってアンカー4の緊張力もまた増大する。したがって、アンカー4の緊張力がアンカーの耐力を越える前にバルブ11を開放することによって、アンカー4の破壊、および地下構造物1の浮き上がりの防止が可能となる。具体的には、図4に示すように、地下構造物1に、アンカー4の緊張力の測定およびバルブ11の開閉の制御を行う制御装置30を設け、あらかじめ定めておいた許容緊張力をアンカー4の緊張力が越えた場合に、貫通孔3から地下水を抜き減圧を行えばよい。また、アンカー4の緊張力や地下構造物1の荷重などから地下構造物1に作用する浮力を推定し、この浮力が別途定めた構造物の許容浮力を越えるような場合に減圧するようにしてもよい。また、以上に述べたようなバルブ11の開閉の制御方法は、自動計測、制御システムとして行ってもよい。
【0014】
貫通孔部3の構造は、上記実施形態によれば、二重管構造となっている。貫通孔部3を二重管構造とすることにより、アンカー4と水抜き孔を別々に設置する場合に比べて、施工が簡便であり、場所的にも有利である。
【0015】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、地下構造物の底盤にアンカーを設置すると同時に、水抜き孔を設け地下水圧を減圧することで地下構造物に作用する浮力を減少させ、地下構造物の浮きを防止するものである。したがって、地下水位が変動し地下構造物に当初想定したよりも大きな浮力が加わるような場合にも、アンカーの他に減圧を併用することで対処が可能となる。また、一時的な地下水位上昇による浮力の増加があっても、地下水圧の減圧により対処でき、新たにアンカーを設置する必要がなくなる。さらに、場所などの制約によりアンカーによる浮力対策が十分行えないような既存構造物に本発明を適用することも効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す地下構造物の断面図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施形態の要部を拡大して示した断面図である。
【図3】図2に示した本発明の浮き防止構造を施工する際の、手順を示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す地下構造物の断面図である。
【図5】従来の地下構造物の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 地下構造物
2 地下構造物1周囲の地盤
3 貫通孔部
4 アンカー
6 二重管
7 内部貫通孔
8 外部貫通孔
11 バルブ
30 制御装置

Claims (2)

  1. 地下構造物の底盤からその下方の地盤に向けてアンカーが打設され、前記底盤に該底盤下方の地盤中の地下水を該地下構造物内側の空間部に導入可能とする水抜き孔を有する貫通孔部が設けられ、前記水抜き孔を通る地下水の流通、遮断を行うバルブが設けられ、
    前記貫通孔部が、内側に配置された内部貫通孔と、その外側に配置された外部貫通孔とに区画された二重管構造とされ、前記内部貫通孔内に前記アンカーの基端部が固定され、前記外部貫通孔が前記水抜き孔とされていることを特徴とする地下構造物の浮き防止構造。
  2. 請求項1記載の地下構造物の浮き防止構造において、前記アンカーの緊張力を測定するセンサーと、該センサーの出力に基づき前記バルブの開閉を制御する制御装置とを備えてなることを特徴とする地下構造物の浮き防止構造。
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