JP3583494B2 - 血液駆出機能評価装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、生体の心臓の血液駆出機能を評価するための血液駆出機能評価装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体の心臓が備えている血液駆出機能は、生体に付与される運動負荷に応じて増大し、その運動負荷の付与が解消されると安静時の状態に向かって回復する性質がある。たとえば上記心臓の血液駆出量は1拍当たりの拍出量SV(Stroke Volume )×心拍数HR(Heart Rate)により決定されていることから、運動後の心拍数HRが運動前の安静時の値に向かって回復する状態を見れば、心臓の血液駆出機能が高いか否かを推定することができる。
【0003】
【発明が解決すべき課題】
ところで、心臓の疾患の一種に、無痛性心筋虚血(Silent Myocardinal Ischemia )と称されるものがある。このような疾患は無自覚であることから、精度の高い診断を可能とすることが望まれる。しかしながら、上記心筋虚血の場合には拍出量が低下する特性があるため、そのような診断に際して、前記のように心拍数HRを用いて心臓の血液駆出機能を判定しようとしても、正確な判定ができないという欠点があった。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、心臓の血液駆出機能を正確に評価できる血液駆出機能評価装置を提供することにある。
【0005】
本発明者等は、以上の事情を背景として研究を重ねるうち、生体の動脈から発生する脈波の形状のうちの収縮期面積が所謂拍出量に対応する点を利用し、生体の運動負荷を付与する前後における脈波の形状のうちの収縮期面積に関連する評価値の変化を用いると、心筋虚血の存在下であっても心臓の血液駆出機能を比較的正確に把握できる事実を見出した。本発明は、このような知見に基づいて為されたものである。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】
すなわち、上記目的を達成するための第1の発明の要旨とするところは、生体に運動負荷を与えることによりその生体の心臓の血液駆出機能を評価するための血液駆出機能評価装置であって、(a) 前記生体の動脈から心拍に同期して発生する圧脈波を検出するために上記生体に装着される圧脈波センサと、(b) 前記生体に運動負荷が与えられる前において上記圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第1指標値を決定する第1指標値決定手段と、(c) 前記生体に運動負荷が与えられた後において前記圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第2指標値を決定する第2指標値決定手段と、(d) 前記第2指標値を前記第1指標値と対比させて表示する表示手段とを、含むことにある。
【0007】
【作用】
このようにすれば、第1指標値決定手段により、前記生体に運動負荷が与えられる前において圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第1指標値が決定され、第2指標値決定手段により、前記生体に運動負荷が与えられた後において圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第2指標値が決定される。そして、表示手段により、第2指標値が第1指標値と対比させられた状態で表示される。
【0008】
【第1発明の効果】
したがって、本発明によれば、運動負荷付与後の脈波形状のうちの収縮期面積に対応する第2指標値が運動負荷付与前の脈波形状のうちの収縮期面積に対応する第1指標値に対比して表示されることから、その第2指標値の第1指標値に対する変化すなわち変化量、変化率、或いは回復曲線などに基づいて心臓の駆出機能が容易に評価され得る。また、その血液駆出機能の正確な評価によって、無痛性心筋虚血の診断が可能となる。
【0009】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2の発明の要旨とするところは、生体に運動負荷を与えることによりその生体の心臓の血液駆出機能を評価するための血液駆出機能評価装置であって、(a) 前記生体の動脈から心拍に同期して発生する圧脈波を検出するために上記生体に装着される圧脈波センサと、(b) 前記生体に運動負荷が与えられる前において上記圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第1指標値を決定する第1指標値決定手段と、(c) 前記生体に運動負荷が与えられた後において前記圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第2指標値を決定する第2指標値決定手段と、(d) 前記第1指標値と第2指標値との変化に基づいて前記心臓の血液駆出機能を評価する評価手段とを、含むことにある。
【0010】
【作用】
このようにすれば、第1指標値決定手段により、前記生体に運動負荷が与えられる前において圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第1指標値が決定され、第2指標値決定手段により、前記生体に運動負荷が与えられた後において圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第2指標値が決定される。そして、評価手段により、第1指標値と第2指標値との変化に基づいて前記心臓の血液駆出機能が評価される。
【0011】
【第2発明の効果】
したがって、本発明によれば、運動負荷付与前後の各脈波形状のうちの収縮期面積に対応する第1指標値および第2指標値の変化に基づいて心臓の駆出機能が評価されることから、正確に血液駆出機能を評価できる。また、その血液駆出機能の正確な評価によって、無痛性心筋虚血の診断が可能となる。
【0012】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記評価手段は、前記第1指標値と第2指標値との間の変化量或いは変化率が予め設定された判断基準値を超えたか否かに基づいて前記心臓の血液駆出機能を判定するものである。このようにすれば、第1指標値と第2指標値との間の変化量或いは変化率が判断基準値を超えたか否かを判定するだけでよいので、複雑な判定アルゴリズムが不要となる利点がある。
【0013】
また、好適には、前記評価手段は、前記第2指標値の第1指標値に向かって回復する回復時間或いは回復率に基づいて前記心臓の血液駆出機能を判定するものである。このようにすれば、前記第2指標値の第1指標値に向かって回復する回復状態に基づいて評価されるので、血液駆出機能の評価が一層正確となる。
【0014】
また、好適には、前記圧脈波センサにより検出される圧脈波を、その圧脈波センサが装着された部位と生体の大動脈との間の脈波信号の伝達函数に基づいてその大動脈内の波形に変換する波形変換手段がさらに含まれる。このようにすれば、大動脈内の波形を用いて第1指標値および第2指標値が一層正確に決定されることから、血液駆出機能の評価精度が高められる利点がある。
【0015】
また、好適には、前記生体の血圧値をカフを用いて測定する血圧測定手段と、その生体に運動負荷が与えられる前および後において、前記圧脈波センサにより検出される圧脈波の大きさと前記血圧測定手段により測定された血圧値とを対応させることにより、その圧脈波と生体の血圧値との間の対応関係を予め決定し、その対応関係を用いて前記圧脈波センサにより検出される圧脈波を較正する圧脈波較正手段とがさらに含まれる。このようにすれば、生体に運動負荷が与えられる前および後において圧脈波が生体の血圧値を表す波形に較正されるので、第1指標値および第2指標値の運動負荷前後に発生する相対差が解消され、血液駆出機能の評価精度が一層高められる利点がある。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明が適用された血液駆出機能評価装置8の構成を説明する図である。
【0017】
図1において、血液駆出機能評価装置8は、ゴム製袋を布製帯状袋内に有してたとえば患者の上腕部12に巻回されるカフ10と、このカフ10に配管20を介してそれぞれ接続された圧力センサ14、切換弁16、および空気ポンプ18とを備えている。この切換弁16は、カフ10内への圧力の供給を許容する圧力供給状態、カフ10内を徐々に排圧する徐速排圧状態、およびカフ10内を急速に排圧する急速排圧状態の3つの状態に切り換えられるように構成されている。
【0018】
圧力センサ14は、カフ10内の圧力を検出してその圧力を表す圧力信号SPを静圧弁別回路22および脈波弁別回路24にそれぞれ供給する。静圧弁別回路22はローパスフィルタを備え、圧力信号SPに含まれる定常的な圧力すなわちカフ圧を表すカフ圧信号SKを弁別してそのカフ圧信号SKをA/D変換器26を介して電子制御装置28へ供給する。
【0019】
上記脈波弁別回路24はバンドパスフィルタを備え、圧力信号SPの圧力振動成分である脈波信号SM1 を周波数的に弁別してその脈波信号SM1 をA/D変換器30を介して電子制御装置28へ供給する。
【0020】
上記電子制御装置28は、CPU29,ROM31,RAM33,および図示しないI/Oポート等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU29は、ROM31に予め記憶されたプログラムに従ってRAM33の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行することにより、I/Oポートから駆動信号を出力して切換弁16および空気ポンプ18を制御する。
【0021】
圧脈波検出プローブ34は、前記カフ10が装着された患者の上腕部12の動脈下流側の部位において、容器状を成すハウジング36の開口端が体表面38に対向する状態で装着バンド40により手首42に着脱可能に取り付けられるようになっている。ハウジング36の内部には、ダイヤフラム44を介して圧脈波センサ46が相対移動可能かつハウジング36の開口端からの突出し可能に設けられており、これらハウジング36およびダイヤフラム44等によって圧力室48が形成されている。この圧力室48内には、空気ポンプ50から調圧弁52を経て圧力エアが供給されることにより最適押圧力PHDP に保持されるようになっており、これにより、圧脈波センサ46は圧力室48内の圧力に応じた押圧力PHDで前記体表面38に押圧される。
【0022】
上記圧脈波センサ46は、たとえば、単結晶シリコン等から成る半導体チップの平坦な押圧面54に多数の半導体感圧素子(図示せず)が配列されて構成されており、手首42の体表面38の撓骨動脈56上に押圧されることにより、撓骨動脈56から発生して体表面38に伝達される圧力振動波すなわち圧脈波を検出し、その圧脈波を表す圧脈波信号SM2 をA/D変換器58を介して電子制御装置28へ供給する。
【0023】
また、前記電子制御装置28のCPU29は、ROM31に予め記憶されたプログラムに従って、空気ポンプ50および調圧弁52へ駆動信号を出力し、圧力室48内の圧力すなわち圧脈波センサ46の皮膚に対する押圧力を調節する。これにより、連続圧脈波測定に際しては、圧力室48内の圧力変化過程で逐次得られる圧脈波に基づいて橈骨動脈56の管壁の一部が平坦となるまで押圧するための圧脈波センサ46の最適押圧力PHDP が決定され、圧脈波センサ46の最適押圧力PHDP を維持するように調圧弁52が制御される。
【0024】
図2は、上記血液駆出機能評価装置8における電子制御装置28の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図において、血圧測定手段62は、カフ10の圧迫圧力の緩やかな変化過程においてカフ10の圧力振動として得られた脈波の大きさの変化に基づいてオシロメトリック法により患者の最高血圧値PBPSYS および最低血圧値PBPDIA を測定する。或いは、この血圧測定手段62は、カフ10の圧迫圧力の緩やかな変化過程においてマイクロホンを用いて検出されるコロトコフ音の発生および消滅に基づいて患者の最高血圧値PBPSYS および最低血圧値PBPDIA を測定する。
【0025】
圧脈波センサ46は、患者のカフ10が装着される部位たとえば上腕よりも動脈下流側の部位たとえば手首に押圧されることによりその手首の撓骨動脈から発生する圧脈波を検出する。圧脈波較正手段64は、たとえば圧脈波センサ46により検出される圧脈波の上ピーク値PHpk と血圧測定手段62により測定された最高血圧値PBPSYS との間、圧脈波センサ46により検出される圧脈波の面積の重心値と血圧測定手段62により測定された平均血圧値PBPMEANとの間、圧脈波センサ46により検出される圧脈波の下ピーク値PLpk と血圧測定手段62により測定された最低血圧値PBPDIA との間の少なくとも2箇所を対応させることにより、圧脈波PM と実際の血圧値との間の対応関係を生体に所定の運動負荷が与えられる前および後においてそれぞれ決定し、その対応関係を用いて圧脈波センサ46により検出される圧脈波を較正する。これにより、較正後の圧脈波は動脈内の血圧波形を示すことになる。上記対応関係は、たとえば図3に示すものであり、PBP=A・PM +B式により表される。但し、Aは傾きを示す定数、Bは切片を示す定数である。
【0026】
上記圧脈波センサ46と圧脈波較正手段64との間には、好適には、その圧脈波センサ46が装着された部位と生体の大動脈との間の脈波信号の伝達函数TFに基づいて、その圧脈波センサ46により検出される圧脈波を大動脈内の波形に変換する波形変換手段66が設けられる。大動脈内の波形に変換された圧脈波には、その立ち上がり点、上ピーク点、大動脈弁閉鎖に関連して発生する切痕(Dicrotic Notch)DNなどが一層明確に表れる。
【0027】
運動負荷装置68にはよく知られたトレッドミルが用いられるが、エルゴメータなどの他の装置が用いられてもよい。この運動負荷装置68に設定される運動強度および運動時間は、被検者の安全を確保できる範囲で運動負荷が大きくなるように、被検者の年齢、体力、体調などに応じて決定される。
【0028】
第1指標値決定手段70は、運動負荷装置68によって生体に運動負荷が与えられる前において圧脈波センサ46により検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第1指標値EV1 を決定する。この第1指標値EV1 は、上記圧脈波の形状の各特徴値を図4に示すように定義すると、切痕DNの圧力値Pdnと上ピーク点の圧力値(最高血圧値)PHpk との比Pdn/PHpk 、切痕DNの圧力値Pdnと下ピーク点の圧力値(最低血圧値)PLpk との比Pdn/PLpk 、切痕DNの圧力値Pdnと脈圧PP(=PHpk −PLpk )との比Pdn/PP、脈圧PPと下ピーク点の圧力値PLpk との比PP/PLpk などの第1グループから選択されてもよいし、心電波形のQ波から圧脈波の立ち上がり点までの時間間隔PEP(前駆出期間:Pre−ejection period )と圧脈波の立ち上がり点から切痕DNまでの駆出期間ET(=LVET:Left Ventricular Ejection Time)との比PEP/ET、圧脈波の立ち上がり点から上ピーク点までの時間間隔Tpkと駆出期間ETとの比Tpk/ET、圧脈波の立ち上がりの傾斜の最大値(dP/dt) max などの第2グループから選択されてもよい。
【0029】
図4の斜線に示す圧脈波の収縮期面積は心臓の拍出量SV(Stroke Volume )に比例すると考えられることから、下ピーク点の圧力値PLpk に対して切痕DNの圧力値Pdnがどの程度高いかという指標を用いて上記収縮期面積を示すために前記第1グループの指標値EVが設定される。また、駆出期間ETが小さい程上ピーク点の圧力値PHpk が上昇しないと考えられることから、その駆出期間ETがどの程度長いかという指標を用いて上記収縮期面積を示すために前記第2グループの指標値EVが設定される。いずれにしても、上記第1グループおよび第2グループの指標値は、圧脈波の形状の収縮期面積に対応するものであり、心臓の実際の拍出量SVを間接的に表すものである。
【0030】
第2指標値決定手段72は、運動負荷装置68によって前記生体に運動負荷が与えられた後において圧脈波センサ46により検出される脈波の形状の収縮期面積に対応する第2指標値EV2 を決定する。この第2指標値EV2 は前記第1指標値EV1 と同じ種類のものであって、前記第1グループまたは第2グループ内から選択される。
【0031】
評価手段74は、第1指標値決定手段70により決定された第1指標値EV1 と第2指標値決定手段72により決定された第2指標値EV2 との変化に基づいて心臓の血液駆出機能を評価する。たとえば、評価手段74は、上記第1指標値EV1 と第2指標値EV2 との間の変化量ΔEV(=EV1 −EV2 )或いは変化率EV1 /EV2 が予め設定された判断基準値を超えたか否かに基づいて心臓の血液駆出機能を判定する。或いは、評価手段74は、運動負荷付与終了後において第2指標値EV2 の第1指標値EV1 に向かって回復する回復時間TR或いは単位時間当たりの回復率ΔEV2 に基づいて心臓の血液駆出機能を判定する。
【0032】
表示手段76は、第2指標値決定手段72により決定された第2指標値EV2 を第1指標値決定手段70により決定された第1指標値EV1 と対比させて表示器32に表示させる。図5乃至図7はその表示例である。図5では、第1指標値EV1 を100%とした場合の第2指標値EV2 の割合(%)が円グラフ状に表示されている。ここでは、第2指標値EV2 は100%として示される第1指標値EV1 と対比させられている。図6では、第2指標値EV2 の第1指標値EV1 に対する割合EV2 /EV1 (%)が運動負荷付与終了後の時間経過に伴う変化としてトレンド表示されている。ここでは、上記割合EV2 /EV1 (%)は100%として表示されるEV2 /EV1 (EV1 =EV2 )と対比させられる。図7では、最高血圧値PSYS 、心電波形のS波およびT波の振幅、心拍数HR、圧脈波の指標値EVの絶対値が4本の各軸にそれぞれ表示されるとともに、各軸の表示点が直線によって接続されている。図7の実線は運動負荷付与前の値を示し、破線は運動負荷付与後の値を示している。ここでは、運動負荷付与後の指標値EV2 は運動負荷付与前の指標値EV1 に対比して表示される。上記図5乃至図7はいずれも、血液駆出機能が低下した場合を示している。
【0033】
図8は、上記電子制御装置28の制御作動の要部を説明するフローチャートである。図8のステップSA1(以下、ステップを省略する。)では、血液駆出機能評価装置8の起動操作が図示しない操作釦により行われたか否かが判断される。このSA1の判断が否定されるうちは待機させられるが、肯定されると前記血圧測定手段62に対応するSA2においてカフ10による血圧測定が実行される。図9のA時点はこの状態を示している。
【0034】
このSA2では、血圧測定のためにカフ10が最高血圧値よりも充分に高い値(たとえば180mmHg)まで昇圧させられた後、空気ポンプ18を停止させ且つ切換弁16を徐速排気側へ切り換えることによりカフ10を2乃至3mmHg/sec程度の速度で徐速降下させ、その徐速変化過程で逐次得られる脈波信号SM1 が表す脈波の振幅の変化に基づいて、良く知られたオシロメトリック方式の血圧値決定アルゴリズムに従って最高血圧値PBPSYS 、平均血圧値PBPMEAN、および最低血圧値PBPDIA が測定されるとともに、脈波間隔に基づいて脈搏数などが決定されるのである。そして、その測定された血圧値および脈搏数などが表示器32に表示されるとともに、切換弁16が急速排圧状態に切り換えられてカフ10内が急速に排圧される。図9のB時点はこの状態を示している。
【0035】
次いで、前記圧脈波較正手段64に対応するSA3では、圧脈波センサ46からの圧脈波の大きさ(絶対値すなわち圧脈波信号SM2 の大きさ)と上記SA2において測定されたカフ10による血圧値PBPSYS 、PBPDIA との間の対応関係が求められる。すなわち、圧脈波センサ46からの圧脈波が1拍読み込まれ且つその圧脈波の最高値PHpk および最低値PLpk が決定されるとともに、それら圧脈波の最高値PHpk および最低値PLpk とSA2にてカフ10により測定された最高血圧値PBPSYS および平均血圧値PBPMEANまたは最低血圧値PBPDIA とに基づいて、図3に示す圧脈波の大きさPM と血圧値との間の対応関係が決定される。このため、これ以後において読み込まれる圧脈波信号SM2 は上記対応関係により較正され、動脈内の血圧値を示す波形とされる。
【0036】
上記のようにして圧脈波血圧対応関係が決定されると、続くSA4において、運動負荷の付与に先立って所定数の複数の圧脈波が順次読み込まれる。そして、前記波形変換手段66に対応するSA5において、上記SA4により順次読み込まれた圧脈波に対して波形変換処理が施されることにより大動脈内の波形に復元される。たとえば、この波形変換処理では、大動脈から圧脈波センサ46が装着された部位へ伝播する圧脈波の伝達函数TFで圧脈波信号SM2 を除することにより、その圧脈波信号SM2 が大動脈内の波形に変換される。上記伝達函数TFは、たとえば大動脈内に挿入されるカテーテルと上記圧脈波センサ46とを用いて予め実験的に求められる。
【0037】
次いで、前記第1指標値決定手段70に対応するSA6では、運動負荷が付与される前の圧脈波の形状の収縮期面積に対応する前記第1指標値EV1 が決定される。続くSA7では、運動負荷装置68によって生体に対する運動負荷の付与が終了したか否かが、その運動負荷装置68からの出力信号などに基づいて判断される。このSA7の判断が否定された場合は、SA8において運動負荷装置68による運動負荷の付与作動の許可を出力する。これにより、運動負荷装置68は、医療従事者による起動動作に応答して、予め設定された運動強度および運動時間に基づいて生体に運動負荷を付与する。図9のC時点はこの状態を示している。
【0038】
以上のステップが繰り返し実行されるうち、運動負荷装置68による運動負荷の付与作動が終了すると、上記SA7の判断が肯定されるので、SA9において第2指標値EV2 が決定されたか否かが判断される。当初はこのSA9の判断が否定されるので、前記SA2が再び実行されることによりカフ10による血圧測定が開始される。図9のD時点はこの血圧測定の開始状態を示し、E時点は終了状態を示している。次いで、SA3乃至SA5が再び順次実行されることにより、運動負荷が付与された後の圧脈波が読み込まれ且つ波形変換されるとともに、前記第2指標値決定手段72に対応するSA6において運動負荷が付与された後の圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第2指標値EV2 が第1指標値EV1 と同様にして決定される。
【0039】
上記のようにして、運動負荷の付与が終了し且つ第2指標値EV2 が決定されると、続くSA7およびSA9の判断が肯定される。第9図のF時点はこの状態を示している。これにより、前記評価手段74に対応するSA10において、上記第1指標値EV1 および第2指標値EV2 の相対的な変化に基づいて心臓の血液駆出機能が評価される。たとえば、SA10において、運動負荷前の所定数の圧脈波の平均値として算出された第1指標値EV1 と運動負荷後の所定数の圧脈波の平均値として算出された第2指標値EV2 との間の変化量ΔEV(=EV1 −EV2 )或いは変化率EV1 /EV2 が予め設定された判断基準値を超えた場合には正常と判定するが超えない場合には心臓の血液駆出機能低下を判定する。或いは、SA10において、運動負荷付与終了後において第2指標値EV2 が第1指標値EV1 に向かって回復する回復時間TRが予め設定された判断基準値より短い場合、或いは単位時間当たりの回復率(傾斜値)ΔEV2 が予め設定された判断基準値を超えた場合には正常と判定するが、反対の場合には心臓の血液駆出機能低下と判定する。心臓の血液駆出機能が正常である場合には、運動負荷が与えられると圧脈波の形状の収縮期面積が増大する一方、運動負荷の付与が終了すると速やかに運動負荷の付与前の状態に向かって回復するからである。
【0040】
次いで、前記表示手段76に対応するSA11では、上記の評価結果が表示器32の画面に表示されるとともに、たとえば図5乃至図7に例示する表示、すなわち運動負荷後の第2指標値EV2 を運動負荷前の第1指標値EV1 と対比させることにより、第2指標値EV2 の第1指標値EV1 に対する変化を容易に把握できるようにする表示が表示器32に行われる。
【0041】
上述のように、本実施例によれば、第1指標値決定手段70に対応するSA6により、前記生体に運動負荷が与えられる前において圧脈波センサ46により検出される脈波の形状の収縮期面積に対応する第1指標値EV1 が決定され、第2指標値決定手段72に対応するSA6により、前記生体に運動負荷が与えられた後において圧脈波センサ46により検出される脈波の形状の収縮期面積に対応する第2指標値EV2 が決定される。そして、表示手段76に対応するSA11により、第2指標値EV2 が第1指標値EV1 と対比させられた状態で表示される。したがって、その第2指標値EV2 の第1指標値EV1 に対する変化すなわち変化量、変化率、或いは回復曲線などに基づいて心臓の駆出機能が容易に評価され得る。また、その血液駆出機能の正確な評価によって、無痛性心筋虚血の診断が可能となる。
【0042】
また、本実施例によれば、評価手段74に対応するSA10により、第1指標値EV1 と第2指標値EV2 との変化に基づいて前記心臓の血液駆出機能が評価されるので、熟練を要することなく正確に血液駆出機能を評価できる。また、その血液駆出機能の正確な評価によって、無痛性心筋虚血の診断が可能となる。
【0043】
また、本実施例によれば、評価手段74に対応するSA10は、前記第1指標値EV1 と第2指標値EV2 との間の変化量或いは変化率が予め設定された判断基準値を超えたか否かに基づいて前記心臓の血液駆出機能を判定するものであるので、複雑な判定アルゴリズムが不要となる利点がある。
【0044】
また、本実施例によれば、評価手段74に対応するSA10は、前記第2指標値EV2 の第1指標値EV1 に向かって回復する回復時間或いは回復率に基づいて前記心臓の血液駆出機能を判定するものであるので、血液駆出機能の評価が一層正確となる。
【0045】
また、本実施例によれば、圧脈波センサ46により検出される圧脈波を、その圧脈波センサ46が装着された部位と生体の大動脈との間の脈波信号の伝達函数TFに基づいてその大動脈内の波形に変換する波形変換手段66がさらに含まれているので、大動脈内の波形を用いて第1指標値EV1 および第2指標値EV2 が一層正確に決定されることから、血液駆出機能の評価精度が高められる利点がある。
【0046】
また、本実施例によれば、生体の血圧値をカフ10を用いて測定する血圧測定手段62と、その生体に運動負荷が与えられる前および後において、前記圧脈波センサ46により検出される圧脈波の大きさと血圧測定手段62により測定された血圧値とを対応させることにより、圧脈波と生体の血圧値との間の対応関係を図に示すように予め決定し、その対応関係を用いて圧脈波センサ46により検出される圧脈波を較正する圧脈波較正手段64とがさらに含まれることから、生体に運動負荷が与えられる前および後において圧脈波が生体の血圧値を表す波形に較正されるので、第1指標値EV1 および第2指標値EV2 の運動負荷前後に発生する相対差が解消され、血液駆出機能の評価精度が一層高められる利点がある。
【0047】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0048】
たとえば、前述の実施例では、撓骨動脈56内の圧脈波から大動脈内の圧脈波に変換するための波形変換手段66が設けられていたが、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0049】
また、前述の実施例では、評価手段74および表示手段76が共に備えられていたが、いずれか一方が設けられていれば、本発明の目的が達成され得る。
【0050】
また、前述の実施例の圧脈波センサ46は、撓骨動脈56内の圧脈波を検出するために手首に装着されていたが、足背動脈内の圧脈波或いは頚動脈内の圧脈波を検出するために、足或いは首に装着されていても差支えない。
【0051】
また、前述の実施例では、指標値EVは前記第1グループ或いは第2グループから選択された1種類が用いられていたが、複数種類の指標値EVが同時に用いられ、それら複数種類の指標値EVに基づく判定に基づいて綜合的に判定をするようにしてもよい。
【0052】
また、前述の実施例の血液駆出機能評価装置8では、たとえば、指標値EVとして、心電波形のQ波から圧脈波の立ち上がり点までの時間間隔PEP(前駆出期間:Pre−ejection period )と圧脈波の立ち上がり点から切痕DNまでの駆出期間ET(=LVET:Left Ventricular Ejection Time)との比PEP/ETが用いられる場合や、心筋虚血判定の補助的な情報として心電波形のR波の大きさ、STレベルを用いる場合などには、心電波形を検出するための心電波形検出装置が必要に応じて設けられる。
【0053】
その他、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である血液駆出機能評価装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の実施例の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図3】図1の実施例において用いられる対応関係を例示する図である。
【図4】図1の実施例において用いられる圧脈波の波形の特徴値を説明する図である。
【図5】図1の実施例の表示器において第1指標値に対比して第2指標値が表示される例を示す図である。
【図6】図1の実施例の表示器において第1指標値に対比して第2指標値が表示される例を示す図である。
【図7】図1の実施例の表示器において第1指標値に対比して第2指標値が表示される例を示す図である。
【図8】図1の実施例の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図9】図8の制御作動を説明するタイムチャートである。
【符合の説明】
46:圧脈波センサ(脈波センサ)
62:血圧測定手段
64:圧脈波較正手段
66:波形変換手段
70:第1指標値決定手段
72:第2指標値決定手段
74:評価手段
76:表示手段
Claims (6)
- 生体に運動負荷を与えることにより該生体の心臓の血液駆出機能を評価するための血液駆出機能評価装置であって、
前記生体の動脈から心拍に同期して発生する圧脈波を検出するために該生体に装着される圧脈波センサと、
前記生体に運動負荷が与えられる前において該圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第1指標値を決定する第1指標値決定手段と、
前記生体に運動負荷が与えられた後において前記圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第2指標値を決定する第2指標値決定手段と、
前記第2指標値を前記第1指標値と対比させて表示する表示手段と
を、含むことを特徴とする血液駆出機能評価装置。 - 生体に運動負荷を与えることにより該生体の心臓の血液駆出機能を評価するための血液駆出機能評価装置であって、
前記生体の動脈から心拍に同期して発生する圧脈波を検出するために該生体に装着される圧脈波センサと、
前記生体に運動負荷が与えられる前において該圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第1指標値を決定する第1指標値決定手段と、
前記生体に運動負荷が与えられた後において前記圧脈波センサにより検出される圧脈波の形状の収縮期面積に対応する第2指標値を決定する第2指標値決定手段と、
前記第1指標値と第2指標値との変化に基づいて前記心臓の血液駆出機能を評価する評価手段と
を、含むことを特徴とする血液駆出機能評価装置。 - 前記評価手段は、前記第1指標値と第2指標値との間の変化量或いは変化率が予め設定された判断基準値を超えたか否かに基づいて前記心臓の血液駆出機能を判定するものである請求項2の血液駆出機能評価装置。
- 前記評価手段は、前記第2指標値の第1指標値に向かって回復する回復時間或いは回復率に基づいて前記心臓の血液駆出機能を判定するものである請求項2の血液駆出機能評価装置。
- 前記圧脈波センサにより検出される圧脈波を、該圧脈波センサが装着された部位と生体の大動脈との間の伝達函数に基づいて該大動脈内の波形に変換する波形変換手段を含むものである請求項2乃至4のいずれかの血液駆出機能評価装置。
- 前記生体の血圧値をカフを用いて測定する血圧測定手段と、
該生体に運動負荷が与えられる前および後において、前記圧脈波センサにより検出される圧脈波の大きさと前記血圧測定手段により測定された血圧値とを対応させることにより、該圧脈波と生体の血圧値との間の対応関係を予め決定し、その対応関係を用いて前記圧脈波センサにより検出される圧脈波を較正する圧脈波較正手段と
を、さらに含むものである請求項2の血液駆出機能評価装置。
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