JP3583347B2 - 差圧・圧力発信器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気圧を基準圧としてプロセス流体やタンク内の圧力を測定する差圧・圧力発信器に関し、特に大気圧側を覆うカバーの取付構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種プロセス流体の圧力等を測定するために用いられるこの種の差圧・圧力発信器の利用方法としては、▲1▼プロセス流体の2点間の圧力差を利用して測定する方法、▲2▼真空圧を基準圧として測定する方法、▲3▼大気圧を基準圧として測定する方法の3種類があり、本発明は特に▲3▼の大気圧を基準圧として測定する差圧・圧力発信器に関する。
【0003】
大気圧を基準圧として測定する場合は、発信器本体に取付けられる2つのシールダイアフラムのうちの一方を大気圧に開放し、他方にプロセス流体圧を導くことにより測定するもので、例えば、石油精製プラントにおける高温反応塔等の密閉タンクにおいては、タンク内圧を大気圧との圧力差によって検出することにより、液面高さやタンク内圧を測定している。
【0004】
図5は従来の大気圧基準型の差圧・圧力発信器の一部を破断して示す正面図で、発信器本体2と、ヘッダー3と、発信器本体2の両側面に複数個のボルト4およびナット5によって共締め固定された大気圧側と測定圧側のカバー6,7等で差圧・圧力発信器1を構成している。発信器本体2は圧肉の円板状に形成されて大気圧側の側面8に大気圧側のシールダイアフラム9が外周部を溶接することによって配設され、これを前記大気圧側カバー6によって保護している。大気圧側カバー6とシールダイアフラム9との間には大気圧室10が形成されており、この大気圧室10をカバー6に形成した大気開放用溝11によって外部に連通させている。したがって、大気圧側シールダイアフラム9には大気圧Poが加わる。
【0005】
一方、発信器本体2の測定圧側の側面12には、測定圧側シールダイアフラム13が同じく外周部を溶接することによって配設され、これを前記測定圧側カバー7によって覆っている。この測定圧側カバー7には、プロセス流体14を前記測定圧側シールダイアフラム13に導く配管15が接続されている。
【0006】
大気圧側シールダイアフラム9に大気圧Poが加わり、測定圧側シールダイアフラム13にプロセス流体圧P1を導くと、両ダイアフラム9,13はその圧力に応じて変位し、この変位が封入液16a,16bを介して図示しない半導体圧力センサ等の圧力検出手段に伝達され、その差圧(P1−Po)が検出される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の大気圧基準型の差圧・圧力発信器1においては、大気圧側のシールダイアフラム9を破損や塵埃、虫の付着等から保護するためにカバー6によって覆っている。しかしながら、従来のカバー6はシールダイアフラム9と近接して取付けられているので、大気に開放される隙間17が非常に狭く、この隙間17に小さなゴミが侵入したり、虫が侵入して巣を作ったりすると、大気圧室10を塞いでしまうため、測定誤差が生じるという問題があった。
また、隙間が詰まった場合、その詰まったものを取り除くためにはボルト4を外してカバー6を発信器本体2から外すかまたはナット5を緩めてカバー6を発信器本体2から離間させて詰まったものを取り除くしかなく、その作業が煩わしいという問題があった。特に、詰まったものを取り除いた後、ナット5を締め付けてカバー6,7を固定したとき、締め具合が緩いと発信器本体2とカバー7との間のシール性が低下するため、プロセス流体14が漏洩するおそれがある。
【0008】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡単な構造で大気圧側のカバーの取付け、取外し作業を容易に行うことができ、またゴミ、虫等がカバーの内部に侵入したとしても容易に取り除くことができるようにした差圧・圧力発信器を提供することにある。
【0009】
上記目的を達成するために第1の発明は、発信器本体の大気圧側シールダイアフラムをカバーで覆った差圧・圧力発信器において、前記カバーを、前記大気圧側シールダイアフラムを覆うカバー本体と、前記発信器本体に固定され前記カバー本体を前記発信器本体から離間させて支持し、前記発信器本体の大気圧側の側面と前記カバー本体との間に隙間を形成する支持部とで構成したものである。
【0010】
第2の発明は上記第1の発明において、カバー本体の少なくとも一部をメッシュ構造としたものである。
【0012】
本発明においては、カバー本体と発信器本体との間に適宜な隙間が形成されているので、小さなゴミはこの隙間から落下して内部に留まらない。虫の場合は出入りが容易で内部に巣を作りにくい。また、ゴミや虫が内部に入ったとしてもカバーを外さないで隙間からゴミや虫を除去することができる。支持部による固定構造としては、係合部と係止部の係合や止めねじ等が考えられる。
メッシュ構造はカバー内部の視認が容易で、ゴミや虫が侵入しているか否かを容易に確認できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明を受圧アダプタを備えた大気圧基準型の差圧・圧力発信器に適用した一実施の形態を示す断面図、図2は基準圧側カバーの斜視図である。なお、従来技術で示した構成部材と同一のものについては同一符号をもって示し、その説明を適宜省略する。
【0014】
プロセス流体の性質によっては標準的なダイアフラムでは腐食等の問題が起きることがある。これを解決するためにプロセス流体の容器、配管等にアダプタを介して差圧・圧力発信器を取付け、このアダプタに設けた耐腐食性の接液ダイアフラムによってプロセス流体圧を受け、その変位を圧力伝達媒体を介して発信器のシールダイアフラムに伝えるようにしている。また、特に高温のプロセス流体から発信器を保護する場合も同様な構造のアダプタを用いており、本発明においてはこのようなアダプタを受圧アダプタと称する。
【0015】
図1において、差圧・圧力発信器20は、発信器本体2とアダプタ取付部材22を備え、このアダプタ取付部材22に受圧アダプタ23を着脱可能に取付けている。前記発信器本体2は、検出器ボディ24とヘッダー3とからなり、検出器ボディ24の測定圧側の側面12と大気圧側の側面8に前記アダプタ取付部材22とカバー27がそれぞれ取付けられている。
【0016】
前記検出器ボディ24は、円板状の2つのボディ24a,24bを電子ビーム溶接等によって一体的に接合することにより形成されるもので、両側面8,12に前記シールダイアフラム9,13が外周部を溶接されることにより配設されている。シールダイアフラム9,13は、通常燐青銅、ベリリウム銅などの薄膜状金属板を塑性加工することで円板状に形成されている。加工形成に際しては、外周固定部より内側部分で圧力を受ける部分、すなわち受圧部に半径方向に波形の襞を同心円状に付けることで、ダイアフラムのコンプライアンスを大きくし、言い換えればダイアフラムを柔らかくし、荷重−変位の式を満足する線形域を広くしている。なお、前記検出器ボディ24の両側面8,12でシールダイアフラム9,13の受圧部と対向する部分は、これらのダイアフラムと同形の波形の襞が半径方向に同心円状に形成されることにより着底部8a,12aを形成している。これは、シールダイアフラム9,13に所定圧以上の過大圧力が作用したとき、シールダイアフラムを着底部8a,12aに着底させることでシールダイアフラムの塑性変形、破損等を防止するとともに、後述する半導体圧力センサ30に所定値以上の圧力が加わらないようにするためである。
【0017】
また、検出器ボディ24の内部中央には、ボディ24a,24bの接合面に設けた内室31を2つのボディ内室31a,31bに仕切るセンターダイアフラム32が外周縁部を溶接することによって配設されている。前記各シールダイアフラム9,13の裏面と検出器ボディ24の側面8,12との間には、ダイアフラム室33a,33bが形成されており、これらのダイアフラム室33a,33bと前記各ボディ内室31a,31bは、封入回路34a,34bによってそれぞれ連通している。前記センターダイアフラム32の外周固定部より内側部分は受圧部を形成し、この受圧部には、前記シールダイアフラム9,13と同様に波形の襞が半径方向に同心円状に形成されている。前記ボディ内室31a,31bの内壁面にも、センターダイアフラム32と同形の波形の襞が半径方向に同心円状に形成されている。前記封入回路34a,34bには、封入液封入用孔35a,35bから圧力伝達媒体であるプロピレングリコール、シリコーンオイル等の封入液16a,16bがそれぞれ封入されている。封入液封入孔35a,35bは、ボール36によってそれぞれ封止され、このボール36の抜けを止めねじ37によって防止している。
【0018】
前記ヘッダー3は、検出器ボディ24の外周面に一体的に接合されており、内部に前記半導体圧力センサ30と信号処理回路が組み込まれている。半導体圧力センサ30は、半導体ダイアフラム30aを有し、その表裏面に前記封入液16a,16bが封入回路34c,34dを介して導かれている。
【0019】
前記アダプタ取付部材22は、貫通孔からなる連通孔40を有する異径の円筒体に形成され、大径部22Aの背面が接合面を形成し前記検出器ボディ24の測定圧側の側面に溶接によって固定されることにより、前記シールダイアフラム13を覆っている。連通孔40は、一端が背面側に開口することにより前記シールダイアフラム13の表面側の室、すなわちシールダイアフラム13とアダプタ取付部材22との間に形成された表側室41に連通し、シールダイアフラム13と対向している。一方、他端はアダプタ取付部材22の先端面に開口することにより大気開放側開口端を形成している。また、前記大径部22Aの内部には、アダプタ取付部材22の洗浄時に用いられる洗浄用孔44が形成されており、この洗浄用孔44をボール45と止めねじ46とからなる封止手段47によって封止している。アダプタ取付部材22の小径部22Bは、前記受圧アダプタ23の取付部を形成するもので、外周に雄ねじ48が形成され受圧アダプタ23がシール部材49を介して螺合している。
【0020】
前記受圧アダプタ23は、先端側外周面にフランジ51を一体に有する円筒体に形成され、このフランジ51がプロセス流体14の配管15にシール部材52を介して密接され、クランプ装置53によって固定されている。受圧アダプタ23の前記配管15との接合面には、ステンレス鋼等の耐腐食性に優れた材料によって形成された接液ダイアフラム55が外周部を溶接することによって取付けられている。接液ダイアフラム55の外周固定部より内側部分は受圧部を形成し、この受圧部には、波形の襞が半径方向に同心円状に形成されている。また、この受圧部と対向する受圧アダプタ23の接合面にも同形の波形の襞が半径方向に同心円状に形成されて着底部54を形成している。
【0021】
また、受圧アダプタ23は、背面側に開口し前記アダプタ取付部材22の雄ねじ48が螺合するねじ孔56を有し、内部には導圧路57と封入用孔58が形成されている。導圧路57は、一端が前記接液ダイアフラム55の裏面と前記受圧アダプタ23との間に形成されたダイアフラム室60に連通し、他端が前記ねじ孔56に開口することにより前記アダプタ取付部材22の連通孔40に連通している。そして、導圧路57には、封入液61が前記封入用孔58から封入されている。この封入液61は、前記ダイアフラム室60、連通孔40および表側室41にも封入される。なお、62はボール、63は止めねじである。
【0022】
図1および図2において、前記カバー27は、薄い金属板をプレス加工することによって形成されるもので、検出器ボディ24の大気圧側の側面と略同一の大きさを有し前記シールダイアフラム9を覆う円板状のカバー本体27Aと、このカバー本体27Aの外周に等間隔おいて折り曲げ形成された4つの支持部27Bとで構成されている。支持部27Bは、前記検出器ボディ24に固定されることにより、前記カバー本体27Aを前記シールダイアフラム9と検出器ボディ24から離間させている。支持部27Bの固定構造としては、例えば支持部27Bを適宜な幅と弾性を有する板状に形成して内側面に断面形状が三角形の係合部66を突設し、この係合部66を検出器ボディ24側に形成した係止部に係合させることにより着脱自在に固定したり、あるいは支持部27BをL字形に形成してその先端部を止めねじで検出器ボディ24に固定すればよい。したがって、カバー27の取付け、取外し作業が容易で、カバー本体27Aによりシールダイアフラム9を確実に保護することができる。また、検出器ボディ24の大気圧側の側面とカバー本体27Aとの間には支持部27Bによって仕切られた上下、左右の4方向に開放する適宜な隙間Gが形成されているので、ゴミが侵入しても内部に溜まったりせず、また虫が巣を作ったりし難く、さらにゴミや虫がカバー27の内側に入ったとしてもカバー27を取り外すことなく容易に取り除くことができる。
【0023】
図3および図4にカバーの他の実施の形態を示す。
図3はカバー本体27A’をリング状に形成して中央の開口67を金網68で覆うことによりメッシュ構造とした例を示す。図4は隣り合う支持部27B間を同じく金網68で覆うことによりメッシュ構造とした例を示す。このようなメッシュ構造、特に図3に示すメッシュ構造にした場合はカバー内部の様子が見えるので、ゴミや虫が侵入したか否かを容易に視認することができ、図4に示すメッシュ構造とした場合はゴミや虫の侵入を確実に防止することができる。
【0024】
上記した構造からなる差圧・圧力発信器20において、シールダイアフラム9と接液ダイアフラム55に大気圧Poとプロセス流体14の圧力P1をそれぞれ加えると、これらのダイアフラム9,55はその圧力に応じて変位する。シールダイアフラム9の変位は、封入液16aを介してセンターダイアフラム32に伝達される。一方、接液ダイアフラム55の変位は、封入液61を介してシールダイアフラム13に伝達される。このため、シールダイアフラム13も変位し、このシールダイアフラム13の変位がさらに封入液16bを介してセンターダイアフラム32に伝達される。これによってセンターダイアフラム32は差圧(P1ーPo)に応じて変位し、この変位が封入液16a,16bを介して半導体圧力センサ30の半導体ダイアフラム30aに伝達される。したがって、半導体ダイアフラム30aは、差圧(P1−Po)に応じて歪み、その歪量が電気信号に変換されて取り出されることにより、プロセス流体14の液面高さ、タンク内圧等を測定することができる。
【0025】
なお、上記した実施の形態においては受圧アダプタ23を備えた差圧・圧力発信器に適用した例を示したが、本発明はこれに何等限定されるものではなく、検出器本体の両側面に大気圧側と測定圧側のカバーを取付けた大気開放型の差圧・圧力発信器にもそのまま適用することができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る差圧・圧力発信器は、大気圧側のシールダイアフラムを覆うカバー本体と、このカバー本体を支持する支持部とで大気圧側のカバーを構成し、支持部を発信器本体に固定してカバー本体と発信器本体との間に所要の隙間を形成するように構成したので、カバーの構造が簡単で安価に製作でき、また取付け、取外し作業も容易で、ゴミや虫がカバーの内側に入っても溜まり難く、また、たとえ溜まったとしてもカバーを外すことなく容易に取り除くことができる。
また、本発明は、カバー本体の少なくとも一部をメッシュ構造としているので、ゴミや虫が侵入しているか否かを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を受圧アダプタを備えた大気圧基準型の差圧・圧力発信器に適用した一実施の形態を示す断面図である。
【図2】基準圧側カバーの斜視図である。
【図3】カバーの他の実施の形態を示す斜視図である。
【図4】カバーのさらに他の実施の形態を示す斜視図である。
【図5】従来の差圧・圧力発信器の一部を破断して示す正面図である。
【符号の説明】
1…差圧・圧力発信器、2…発信器本体、3…ヘッダー、6…大気圧側カバー、7…測定圧側カバー、8…大気圧側の側面、9…大気圧側シールダイアフラム、13…測定圧側シールダイアフラム、27…カバー、27A,27’…カバー本体、27B…支持部、68…金網。
Claims (2)
- 発信器本体の大気圧側シールダイアフラムをカバーで覆った差圧・圧力発信器において、
前記カバーを、前記大気圧側シールダイアフラムを覆うカバー本体と、前記発信器本体に固定され前記カバー本体を前記発信器本体から離間させて支持し、前記発信器本体の大気圧側の側面と前記カバー本体との間に隙間を形成する支持部とで構成したことを特徴とする差圧・圧力発信器。 - 請求項1記載の差圧・圧力発信器において、
カバー本体の少なくとも一部をメッシュ構造としたことを特徴とする差圧・圧力発信器。
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