JP3583328B2 - 果実類の加熱処理方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、苺やメロン、オレンジ、ブルーベリー、アプリコットあるいはトマト等の果実類を主原料としたジャムやフルーツソース、ピューレ、あるいはドリンク等の流動性を有する果実食品・果実飲料を製造するために、果実類を主体とする食品材料を加熱処理する方法に関するものであり、特に最終製品の段階で、果肉を固形状のままの状態で含んでいるジャム等を製造するに適した加熱処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来一般にジャムやフルーツソースなどを製造するにあたっては、予め使用する果実の種類や大きさ等に応じて果実をカットあるいは破砕もしくは圧潰しておき、それを必要に応じてショ糖などの甘味料等の副原料とともに加熱釜と称される加熱容器内に装入し、高温蒸気やガスなどにより加熱容器を外部から加熱し、加熱容器の壁面側からの伝熱によって加熱容器内の果実等の食品材料を加熱することが行なわれている。この場合、一般には加熱容器内に果実類を主体とする食品材料を装入してから、食品材料が沸騰する温度、例えば105℃前後の温度まで撹拌しながら加熱し、沸騰状態を所定時間維持させることにより食品材料中に含まれる水分を減少させて食品材料を濃縮させ、さらにその温度に加熱保持して殺菌効果を得るのが通常である。なお沸騰後には、加熱容器内の食品材料にPH調整剤や酸味料、香料、あるいはゲル化剤などを添加するのが一般的である。
【0003】
上述のように従来の方法では、加熱容器内に装入した果実を主体とする食品材料を、外部からの伝熱によって加熱しており、このような外部からの伝熱加熱法では、長時間の加熱を行なわざるを得ない。すなわち、果実類を主体とする食品材料は熱伝導度が低いため、外部からの伝熱加熱では食品材料が沸騰温度もしくは殺菌温度に達するまでに著しい長時間を要し、また前述のような沸騰による濃縮自体についても、長時間の高温加熱を要する。そのため従来法では、生産性が低いのみならず、長時間の加熱によって果実の有する本来の風味や香り、色調あるいはビタミンCなどの栄養成分が損なわれてしまうおそれがある。
【0004】
また最近では、ジャムのみならずフルーツソースなどにおいても、製品中に果肉が固形状態のまま残っていることが望まれることが多くなっているが、このように固形状の果肉を含む製品を製造したい場合でも、固形果肉が長時間の加熱によって崩れてしまう問題がある。すなわち果実類を主体とする食品材料の沸騰温度は通常100℃以上であり、また殺菌のための温度としても85℃程度以上が必要であるが、70℃程度以上の高温で加熱した場合、固形果肉が崩れやすくなり、そのため前述の従来法では、果肉を固形状のまま残すことは極めて困難であった。
【0005】
そこで最近では、加熱容器内の食品材料が長時間高温に曝されることを避けるため、減圧濃縮法を適用した方法も適用されている。この方法は、伝熱加熱によって容器内の食品材料の加熱を開始してからある程度温度が上昇した時点で容器内を減圧し、食品材料の沸点を下げることにより60〜70℃程度の温度で沸騰させて、いわゆる減圧濃縮を行ない、その後容器内圧力を常圧に戻してから100℃程度まで温度上昇させて殺菌を行なう方法である。この方法によれば、長時間を要する濃縮工程が60〜70℃程度の比較的低い温度で行なわれるため、70℃以上の高温に加熱される時間が相対的に短くなり、そのため果実の風味、香り、色調、栄養成分等を損なうおそれが少なくなり、またある程度は固形状の果実を残すことが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような減圧濃縮法を適用した従来の果実類の加熱処理方法でも、近年の厳しい要求には充分に応えることが困難であった。すなわち、最近ではジャムやフルーツソース等についても、高級品指向が強まり、果実が本来有している風味等を充分に残していることが要求されるようになっており、また固形果肉を残した製品の場合でも、できるだけ原形状を保っていることが要求されるようになっている。しかるに前述の減圧濃縮法を適用した方法でも、減圧濃縮のための60〜70℃の温度から100℃程度の殺菌温度まで温度上昇させるためにかなりの時間を要し、その間に風味等が損なわれたり、また固形果肉が崩れてしまったりすることを確実に防止することは困難であった。またトータル的な加熱時間は、前述のような減圧濃縮法を適用した加熱処理方法でも特に短縮されず、そのため生産性の点では未だ満足できなかったのが実情である。
【0007】
ところで最近では各種の食品材料の加熱処理方法として、通電加熱(ジュール加熱)を適用した方法が開発されている。これは、食品材料に直接電流を流して、食品材料自体の有する電気抵抗によって発熱させる方法である。そして特に流動性を有する液体状の食品材料あるいは液体−固体混合食品材料については、管路内で流動性食品材料を連続的に移動させながら、管路内の流動性食品材料に通電して連続的に加熱する連続通電加熱法が開発されている。
【0008】
上述のような通電加熱によれば、伝熱加熱による場合よりも格段に短時間で食品材料を高温まで昇温することができ、したがって通電加熱を適用して果実類を加熱することによって前述のような問題を解決することが可能であると思われる。そして特に前述のような連続通電加熱法を適用すれば、生産性も大幅に向上すると考えられる。しかしながらジャムやフルーツソース等を製造するための果実類の加熱処理における加熱手段を、従来の伝熱加熱から通電加熱に置き換えただけの場合、次のような問題が生じることが判明した。
【0009】
すなわち、一般に果肉の内部には多数の空孔、空隙が存在するのが通常であり、このような果肉を含む原料をそのまま加熱した場合、果肉内の空孔や空隙に存在している空気やそのほか内部に吸着されている多量の空気が、加熱昇温過程で果肉外へ脱け出て多数の気泡が生じる。ところが空気は電気伝導度が著しく低いから、通電加熱中に多数の気泡が発生すれば、電流の流れが妨げられて、通電加熱効率が著しく低下し、また必要な温度まで加熱するために長時間を要するようになって、通電加熱のメリットが減じられてしまう。また一方、通電加熱開始の初期には、逆に固形果肉部分の内部に多量の空気が含まれているため、固形果肉部分の嵩比重が液体部分よりも軽く、そのため固形果肉部分が原料中で表面付近に集中して浮いた状態となって通電加熱の電流密度が不均一となりやすく、均一加熱が行なわれないおそれがある。
【0010】
さらに、ジャムやフルーツソース等を製造するために果実類を加熱する場合、加熱と同時に撹拌を行なうことも重要であるが、前述のように管路内に連続的に流動性食品材料を流しながら管路内で通電加熱する連続通電加熱法を適用した場合、管路内の原料を撹拌することが困難であることが多く、このことも大きな問題となっている。
【0011】
そしてまた、通電加熱は前述のように短時間で高温まで昇温できるメリットがあり、特に60〜70℃程度以上の高温領域では高い昇温速度を得ることができるが、室温に近い低温度域では昇温速度はさほど高くなく、そのため初期の室温程度の果実類を主体とする食品材料に対してそのまま通電加熱を施した場合、60〜70℃程度に達するまでにかなりの時間を要する。したがって単純に従来の伝熱加熱を通電加熱に置き換えただけでは、通電加熱の利点を充分に活用し得るとは言えない。
【0012】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、ジャムやフルーツソースなどの製造のために果実類を加熱処理するにあたり、通電加熱のメリットを充分に活かして、果実類が本来有する風味、香り、色調、栄養成分等を損なうことを確実に防止し、かつ固形果肉をそのまま製品中に残したい場合でも固形果肉部分の崩れを確実に防止し、しかも生産性や効率を従来よりも大幅に向上させ得るようにした方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前述のような課題を解決するべく本発明者等が鋭意実験・検討を重ねた結果、果実類の加熱処理法として、外部からの伝熱加熱と通電加熱とを適切に組合せ、かつ第1段目の伝熱加熱時に減圧処理を行なうことによって、前述の課題を解決し得ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0014】
具体的には、請求項1の発明の果実類の加熱処理方法は、果実類を主体とする流動性食品・飲料を製造するにあたり、果実類を主体とする食品材料を加熱容器内に装入して、容器内の食品材料を容器壁面側からの伝熱により加熱する第1段目の加熱を行ない、かつその第1段目の加熱においては、加熱しながら食品材料を撹拌し、かつ少なくとも第1段目の加熱の後期において容器内を減圧し、さらに第1段目の加熱終了後、食品材料を通電加熱装置に移送して、食品材料に直接通電することにより、食品材料自身の抵抗発熱により食品材料を加熱する第2段目の加熱を行なうことを特徴とするものである。
【0015】
このように請求項1の発明の方法では、第1段目の加熱は、伝熱加熱によって行なって、中間温度(代表的には請求項2で規定するように40〜70℃の範囲内の温度)まで加熱し、その後、第2段目の加熱を通電加熱によって行なって、最終到達温度(代表的には請求項2で規定するように85〜105℃の範囲内の温度)まで加熱する。ここで、伝熱加熱による第1段目の加熱では、少なくとも後期において容器内を減圧することによって、食品材料中に含まれている固形果肉の内部の空気を固形果肉の外部へ排出させ、さらにそれによって生じる気泡を除去(脱気)することができ、また減圧によって沸点が低下するから、前述のような40〜70℃程度の中間温度でも沸騰状態に至らせて、食品材料中の水分を飛ばし、濃縮することができる。なおこの第1段目の加熱では、固形果肉の内部に含まれている空気を果肉外部へ排出させると同時に、その空気と置換するように糖分を果肉内部へ充分に侵入させることができ、そのため糖度が均一化されるとともに、電気伝導度も均一化されて、その後の通電加熱による第2段目の加熱における均一加熱が容易となる。そして通電加熱による第2段目の加熱では、80〜105℃程度の最終到達温度まで加熱することによって、食品材料に対する殺菌がなされる。
【0016】
ここで、第1段目の加熱は伝熱加熱によっているため、昇温速度は比較的低いが、少なくとも後期において減圧しているため、沸点が低くなり、そのため40〜70℃程度の比較的低い中間温度まで昇温させれば足り、したがってさほど長時間の加熱を要しない。そして第1段目の加熱はこのように比較的低い中間温度までの比較的短時間の加熱であるため、第1段目の伝熱加熱において果実類の本来有する風味、香り、色調、栄養成分等を損なうおそれも極めて少なく、また固形果肉が崩れてしまうおそれも極めて少ない。
【0017】
一方第2段目の加熱は通電加熱によって行なっており、通電加熱は既に述べたように短時間で急速に昇温させることができ、特に60〜70℃程度以上の高温域では昇温速度が著しく高くなる。そしてこの発明の場合は、通電加熱の前の第1段目の加熱で40〜70℃程度の中間温度まで予め加熱しているため、85〜105℃程度の最終到達温度まで短時間で昇温させることができ、そのため第2段目の加熱において果実類の有する風味、香り、色調、栄養成分等が損なわれてしまうおそれが少なく、また固形果肉が崩れてしまうおそれも少ない。また第1段目の伝熱加熱において既に脱気がなされていて、第2段目の通電加熱では気泡がほとんど存在しない状態となっているため、通電電流が気泡によって妨げられることがなく、また固形果肉内部の空気が糖分により置換されて電気伝導度が均一化されており、そのため効率良く通電加熱することができるとともに、均一加熱が達成される。
【0018】
したがって伝熱加熱と通電加熱とを組合せ、第1段目の加熱に伝熱加熱を適用するとともにその後期において減圧下での加熱を行ない、さらに第2段目の加熱に通電加熱を適用することによって、所期の目的を達成することができるのである。
【0019】
一方請求項2の発明は、請求項1に記載の果実類の加熱処理方法において、第1段目の加熱を40〜70℃の範囲内の温度まで行ない、第2段目の加熱を85〜105℃の範囲内の温度まで行なうことを特徴とするものである。
【0020】
このように伝熱加熱による第1段目の加熱を40〜70℃の範囲内となるまで行なうことによって、食品材料の減圧下での濃縮、脱気を確実に行なうことができ、また通電加熱に対する予備処理として電気伝導度の均一化を図ることができ、さらに通電加熱による第2段目の加熱を85〜105℃の範囲内の温度まで行なうことによって、確実かつ安定して殺菌することができる。
【0021】
ここで、第1段目の伝熱加熱の到達温度が40℃未満では、固形果肉が充分に軟質化せず、そのため減圧しても充分な濃縮が困難となるとともに脱気も困難となり、さらには通電加熱による第2段目の加熱における加熱開始温度が低くなってしまって、第2段目の通電加熱時間が長くなってしまい、通電加熱のメリットが活かされなくなる。また第1段目の伝熱加熱の到達温度が70℃を越えれば、第1段目の伝熱加熱に長時間を要するようになって生産性を阻害するばかりでなく、果実類の風味、香り、色調、栄養成分を損なったり、固形果肉の崩れが生じやすくなってしまう。したがって伝熱加熱による第1段目の加熱の到達温度は40〜70℃の範囲内とする。
【0022】
一方第2段目の通電加熱の到達温度が85℃未満では確実な殺菌が困難となり、一方105℃を越えて高温で通電加熱することは経済性を損なうばかりでなく、短時間の加熱によっても果実類の風味、香り、色調あるいは栄養成分等が損なわれたり、固形果肉が崩れたりしてしまう。したがって通電加熱による第2段目の加熱の到達温度は85〜105℃の範囲内とする。
【0023】
さらに請求項3の発明は、請求項1に記載の果実類の加熱処理方法において、前記第2段目の加熱として、食品材料を管路の長さ方向に連続的に輸送させながら、管路内において食品材料に通電して連続的に加熱することを特徴とするものである。
【0024】
このように第2段目の通電加熱に、管路内での連続通電加熱方式を適用することによって、生産性を大幅に向上させることができるとともに、一連の処理工程の連続自動化を容易に達成することが可能となる。なおこの発明の場合、伝熱加熱による第1段目の加熱において撹拌、沸騰濃縮、脱気を行なっているため、第2段目の通電加熱では撹拌を行なう必要はなく、そのため管路内での連続通電加熱を容易に実現することができる。
【0025】
そしてまた請求項4の発明は、請求項3に記載の果実類の加熱処理方法において、前記通電加熱装置として、管路の内周面に沿う複数の環状の電極を管路の長さ方向に間隔を置いて設けておき、管路の長さ方向に相互に隣り合う電極間において電流を流すことにより、管路内を流れる食品材料に対し管路の長さ方向に通電して加熱することを特徴とすることを特徴とするものである。
【0026】
このように管路の長さ方向に通電して加熱することにより、管路内を流れる食品材料を、より均一に加熱することが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1にこの発明の方法を実施するための装置の代表的な一例を示し、また図2に連続通電加熱装置の一例を示す。以下図1および図2を参照してこの発明の方法を具体的に説明する。
【0028】
図1において、加熱容器1は伝熱加熱による第1段目の加熱を行なうためのものであり、外部の高温蒸気発生源3からの高温蒸気が加熱容器1の壁部1Aに導入されて蒸気加熱されるようになっており、さらに加熱容器1の内部には撹拌羽根等の撹拌手段5が挿入されている。またこの加熱容器1は密閉され得る構造とされ、かつ減圧用の真空ポンプ7によって内部を減圧させ得るようになっている。
【0029】
さらに加熱容器1の下端からは輸送管9が導き出されており、この輸送管9は開閉弁11および輸送ポンプなどの圧送手段12を介して連続通電加熱装置13の下端に接続されている。この連続通電加熱装置13は、図2に詳細に示すように、垂直な管路15の内周面に沿う環状をなす複数の電極16A〜16Dを、上下に所定間隔を置いて配設し、かつ電極16A〜16Dを電源装置18の出力端子18A,18Bに電気的に交互に接続した構成とされている。なおこの電源装置18としては通常は高周波電源が最適であるが、場合によっては商用交流電源あるいは直流電源を用いることもできる。
【0030】
以上のような図1に示される装置を用いてこの発明の方法を実施するにあたっては、予め果実類を適切な大きさ、形状にカッティングするかあるいは破砕するか、さらには圧潰しておき、その果実類に必要に応じてショ糖等の副原料や水を混合して、加熱容器1内に装入する。なお以下では、このように加熱容器1内に装入した果実類を主体とする原料を、単に食品材料と称することとする。
【0031】
一方、高温蒸気発生源3からの高温蒸気によって加熱容器1の壁部1Aが加熱され、その壁部1Aからの伝熱によって容器1内に装入された食品材料が加熱され、昇温する。このとき、撹拌手段5を動作させて容器1内の食品材料を撹拌しながら均一加熱を図る。なおこの昇温過程では、真空ポンプ7は作動させないことが望ましい。
【0032】
加熱容器1内の食品材料が、目標とする中間温度、例えば40〜70℃の範囲内の所定の温度(代表的には60℃)に達すれば、PH調整剤やゲル化剤、消泡剤等を必要に応じて添加し、続いて、撹拌手段5を作動させながら真空ポンプ7を作動させて、容器1内を減圧する。これによって既に述べたように容器1内の食品材料中の固形果肉から空気が排出され、さらにそれによって生じた気泡が加熱容器1の外部へ排出される。すなわち脱気が遂行される。また同時に固形果肉内に糖分が侵入する。さらにこの過程では、減圧下での沸騰が生じ、水分が蒸発して濃縮が行なわれる。また脱気後には、必要に応じて糖度調整や酸味料、香料等の添加を行なって撹拌するのが通常である。以上のような加熱容器1における伝熱加熱による第1段目の加熱は、装入量や容器の大きさ等によっても異なるが、通常は15〜30分程度を要する。
【0033】
前述のようにして加熱容器1での伝熱加熱による第1段目の加熱が終了した後、開閉弁11を開放するとともに圧送手段12を作動させて、輸送管9を介し加熱容器1内の食品材料を通電加熱装置13に連続的に輸送する。
【0034】
通電加熱装置13においては、管路15内を下方から上方へ向けて食品材料が移動する。このとき、上下に隣り合う電極間、例えば電極16Aと16Bとの間には電源装置18によって電圧が印加されるため、その間において食品材料中を電流が流れ、食品材料自身が抵抗発熱して、通電加熱がなされる。このようにして通電加熱装置13内において食品材料が好ましくは85〜105℃の範囲内の最終到達温度(代表的には97℃)まで加熱昇温される間に、食品材料の殺菌が遂行され、続いて排出管19を介して連続通電加熱装置13から系外に排出される。このような通電加熱による第2段目の加熱は1〜2分程度で充分である。なお系外に排出された食品材料は、製品容器内へ充填する充填工程、さらには包装工程等へ連続的に輸送されるのが通常である。
【0035】
以上のところにおいて、前述の例では加熱容器1における第1段目の加熱を、蒸気加熱によって行なうこととしたが、必ずしも蒸気加熱に限定されるものではなく、例えばガス加熱を適用したり、あるいはプレート式熱交換器を用いたりしても良く、要は容器壁面からの伝熱加熱によって食品材料を加熱することとすれば良い。
【0036】
また図1の例では通電加熱による第2段目の加熱のための連続通電加熱装置として、環状の電極を用いて管路の長さ方向に電流を流す構成のものを用いているが、場合によっては管路の横断方向(直径方向)に対向する電極を用い、管路の横断方向に通電電流を流す構成としても良い。さらには、生産性を犠牲にしても良い場合には、連続通電加熱装置に代えてバッチ式の通電加熱装置を用いることも許容される。
【0037】
なおまた、この発明の方法によって加熱処理された果実食品材料は、これをそのままジャムやフルーツソース、ピューレ、ドリンク等の食品・飲料製品としても良いが、さらにその果実食品材料をフルーツアイスクリーム、フルーツシャーベット、フルーツヨーグルト、さらには洋菓子、その他の菓子類の製造に供しても良いことはもちろんである。
【0038】
【実施例】
図1に示す装置を用いてこの発明の方法を実施した例を以下に示す。
【0039】
実施例1
リンゴを用いてリンゴのダイスカットプレパレーションを製造するにあたり、予めリンゴを15mm×15mm×15mm程度にカッティングした。カッティング後のリンゴを210kgと、ショ糖98kgとを容量500lの蒸気加熱方式の加熱容器(蒸気加熱釜)内に装入し、撹拌しながら60℃まで蒸気加熱し、引続いてPH調整剤としてクエン酸ナトリウムを150g、安定剤としてペクチンを900g添加した後、真空ポンプを作動させて加熱容器内の圧力を600mmHg程度まで減圧し、容器内の材料を沸騰させるとともに、脱気を行った。その後、糖度調整を行うとともに、少量の副原料および香料を添加し、さらに撹拌して第1段目の加熱を終了させた。この第1段目の加熱の所要時間は20分である。続いて約60℃の加熱容器内の食品材料を連続通電加熱装置に連続的に移送して、第2段目の加熱として、高周波電流により連続的に97℃まで通電加熱した。この通電加熱時間は2分であった。
【0040】
以上のようにして加熱処理を行った食品材料について、その性状を調べたところ、固形果肉の崩れは従来の減圧濃縮による伝熱加熱のみの場合と比較して格段に少ないことが確認された。また風味や香り、色調、栄養成分の劣化、破壊も従来法の場合と比較して格段に少なく、果実の新鮮さが充分に残っていることが確認された。
【0041】
実施例2
苺を用いて苺ソースを製造するにあたり、予め苺を3mm程度にミンチ掛した。ミンチ掛後の苺を150kgと、ショ糖60kgと、水飴144kgとを容量500lの蒸気加熱方式の加熱容器(蒸気加熱釜)内に装入し、撹拌しながら60℃まで蒸気加熱し、引続いてPH調整剤としてクエン酸ナトリウムを300g、増粘剤としてペクチンを1200g、ローカストビーンガムを300g添加した後、真空ポンプを作動させて加熱容器内の圧力を600mmHg程度まで減圧し、容器内の材料を沸騰させるとともに、脱気を行った。その後、糖度調整を行うとともに、少量の副原料および香料を添加し、さらに撹拌して第1段目の加熱を終了させた。この第1段目の加熱の所要時間は20分である。続いて約60℃の加熱容器内の食品材料を連続通電加熱装置に連続的に移送して、第2段目の加熱として、高周波電流により連続的に97℃まで通電加熱した。この通電加熱時間は2分であった。
【0042】
以上のようにして加熱処理を行った食品材料について、その性状を調べたところ、固形果肉の崩れは従来の減圧濃縮による伝熱加熱のみの場合と比較して格段に少ないことが確認された。また風味や香り、色調、栄養成分の劣化、破壊も従来法の場合と比較して格段に少なく、果実の新鮮さが充分に残っていることが確認された。
【0043】
【発明の効果】
この発明の果実類の加熱処理方法によれば、ジャムやフルーツソースで代表される果実類を主体とする食品・飲料を製造するにあたって、果実が本来有している風味や香り、色調、さらには栄養成分が損なわれてしまうことを確実に防止して、新鮮さを保った食品・飲料を製造することができ、また固形の果肉を有する製品を製造する場合でも、固形の果肉の崩れが生じることを防止して、形状性の良好な固形果肉を含む製品を安定して得ることができ、さらにはトータルの加熱時間を短縮して生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の方法を実施するための装置の全体構成の一例を模式的に示す略解図である。
【図2】図1の装置に用いられる連続通電加熱装置の一例を示す略解的な縦断面図である。
【符号の説明】
1 加熱容器
1A 壁部
5 撹拌手段
7 真空ポンプ
13 連続通電加熱装置
16A〜16D 電極
18 電源装置
【発明の属する技術分野】
この発明は、苺やメロン、オレンジ、ブルーベリー、アプリコットあるいはトマト等の果実類を主原料としたジャムやフルーツソース、ピューレ、あるいはドリンク等の流動性を有する果実食品・果実飲料を製造するために、果実類を主体とする食品材料を加熱処理する方法に関するものであり、特に最終製品の段階で、果肉を固形状のままの状態で含んでいるジャム等を製造するに適した加熱処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来一般にジャムやフルーツソースなどを製造するにあたっては、予め使用する果実の種類や大きさ等に応じて果実をカットあるいは破砕もしくは圧潰しておき、それを必要に応じてショ糖などの甘味料等の副原料とともに加熱釜と称される加熱容器内に装入し、高温蒸気やガスなどにより加熱容器を外部から加熱し、加熱容器の壁面側からの伝熱によって加熱容器内の果実等の食品材料を加熱することが行なわれている。この場合、一般には加熱容器内に果実類を主体とする食品材料を装入してから、食品材料が沸騰する温度、例えば105℃前後の温度まで撹拌しながら加熱し、沸騰状態を所定時間維持させることにより食品材料中に含まれる水分を減少させて食品材料を濃縮させ、さらにその温度に加熱保持して殺菌効果を得るのが通常である。なお沸騰後には、加熱容器内の食品材料にPH調整剤や酸味料、香料、あるいはゲル化剤などを添加するのが一般的である。
【0003】
上述のように従来の方法では、加熱容器内に装入した果実を主体とする食品材料を、外部からの伝熱によって加熱しており、このような外部からの伝熱加熱法では、長時間の加熱を行なわざるを得ない。すなわち、果実類を主体とする食品材料は熱伝導度が低いため、外部からの伝熱加熱では食品材料が沸騰温度もしくは殺菌温度に達するまでに著しい長時間を要し、また前述のような沸騰による濃縮自体についても、長時間の高温加熱を要する。そのため従来法では、生産性が低いのみならず、長時間の加熱によって果実の有する本来の風味や香り、色調あるいはビタミンCなどの栄養成分が損なわれてしまうおそれがある。
【0004】
また最近では、ジャムのみならずフルーツソースなどにおいても、製品中に果肉が固形状態のまま残っていることが望まれることが多くなっているが、このように固形状の果肉を含む製品を製造したい場合でも、固形果肉が長時間の加熱によって崩れてしまう問題がある。すなわち果実類を主体とする食品材料の沸騰温度は通常100℃以上であり、また殺菌のための温度としても85℃程度以上が必要であるが、70℃程度以上の高温で加熱した場合、固形果肉が崩れやすくなり、そのため前述の従来法では、果肉を固形状のまま残すことは極めて困難であった。
【0005】
そこで最近では、加熱容器内の食品材料が長時間高温に曝されることを避けるため、減圧濃縮法を適用した方法も適用されている。この方法は、伝熱加熱によって容器内の食品材料の加熱を開始してからある程度温度が上昇した時点で容器内を減圧し、食品材料の沸点を下げることにより60〜70℃程度の温度で沸騰させて、いわゆる減圧濃縮を行ない、その後容器内圧力を常圧に戻してから100℃程度まで温度上昇させて殺菌を行なう方法である。この方法によれば、長時間を要する濃縮工程が60〜70℃程度の比較的低い温度で行なわれるため、70℃以上の高温に加熱される時間が相対的に短くなり、そのため果実の風味、香り、色調、栄養成分等を損なうおそれが少なくなり、またある程度は固形状の果実を残すことが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような減圧濃縮法を適用した従来の果実類の加熱処理方法でも、近年の厳しい要求には充分に応えることが困難であった。すなわち、最近ではジャムやフルーツソース等についても、高級品指向が強まり、果実が本来有している風味等を充分に残していることが要求されるようになっており、また固形果肉を残した製品の場合でも、できるだけ原形状を保っていることが要求されるようになっている。しかるに前述の減圧濃縮法を適用した方法でも、減圧濃縮のための60〜70℃の温度から100℃程度の殺菌温度まで温度上昇させるためにかなりの時間を要し、その間に風味等が損なわれたり、また固形果肉が崩れてしまったりすることを確実に防止することは困難であった。またトータル的な加熱時間は、前述のような減圧濃縮法を適用した加熱処理方法でも特に短縮されず、そのため生産性の点では未だ満足できなかったのが実情である。
【0007】
ところで最近では各種の食品材料の加熱処理方法として、通電加熱(ジュール加熱)を適用した方法が開発されている。これは、食品材料に直接電流を流して、食品材料自体の有する電気抵抗によって発熱させる方法である。そして特に流動性を有する液体状の食品材料あるいは液体−固体混合食品材料については、管路内で流動性食品材料を連続的に移動させながら、管路内の流動性食品材料に通電して連続的に加熱する連続通電加熱法が開発されている。
【0008】
上述のような通電加熱によれば、伝熱加熱による場合よりも格段に短時間で食品材料を高温まで昇温することができ、したがって通電加熱を適用して果実類を加熱することによって前述のような問題を解決することが可能であると思われる。そして特に前述のような連続通電加熱法を適用すれば、生産性も大幅に向上すると考えられる。しかしながらジャムやフルーツソース等を製造するための果実類の加熱処理における加熱手段を、従来の伝熱加熱から通電加熱に置き換えただけの場合、次のような問題が生じることが判明した。
【0009】
すなわち、一般に果肉の内部には多数の空孔、空隙が存在するのが通常であり、このような果肉を含む原料をそのまま加熱した場合、果肉内の空孔や空隙に存在している空気やそのほか内部に吸着されている多量の空気が、加熱昇温過程で果肉外へ脱け出て多数の気泡が生じる。ところが空気は電気伝導度が著しく低いから、通電加熱中に多数の気泡が発生すれば、電流の流れが妨げられて、通電加熱効率が著しく低下し、また必要な温度まで加熱するために長時間を要するようになって、通電加熱のメリットが減じられてしまう。また一方、通電加熱開始の初期には、逆に固形果肉部分の内部に多量の空気が含まれているため、固形果肉部分の嵩比重が液体部分よりも軽く、そのため固形果肉部分が原料中で表面付近に集中して浮いた状態となって通電加熱の電流密度が不均一となりやすく、均一加熱が行なわれないおそれがある。
【0010】
さらに、ジャムやフルーツソース等を製造するために果実類を加熱する場合、加熱と同時に撹拌を行なうことも重要であるが、前述のように管路内に連続的に流動性食品材料を流しながら管路内で通電加熱する連続通電加熱法を適用した場合、管路内の原料を撹拌することが困難であることが多く、このことも大きな問題となっている。
【0011】
そしてまた、通電加熱は前述のように短時間で高温まで昇温できるメリットがあり、特に60〜70℃程度以上の高温領域では高い昇温速度を得ることができるが、室温に近い低温度域では昇温速度はさほど高くなく、そのため初期の室温程度の果実類を主体とする食品材料に対してそのまま通電加熱を施した場合、60〜70℃程度に達するまでにかなりの時間を要する。したがって単純に従来の伝熱加熱を通電加熱に置き換えただけでは、通電加熱の利点を充分に活用し得るとは言えない。
【0012】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、ジャムやフルーツソースなどの製造のために果実類を加熱処理するにあたり、通電加熱のメリットを充分に活かして、果実類が本来有する風味、香り、色調、栄養成分等を損なうことを確実に防止し、かつ固形果肉をそのまま製品中に残したい場合でも固形果肉部分の崩れを確実に防止し、しかも生産性や効率を従来よりも大幅に向上させ得るようにした方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前述のような課題を解決するべく本発明者等が鋭意実験・検討を重ねた結果、果実類の加熱処理法として、外部からの伝熱加熱と通電加熱とを適切に組合せ、かつ第1段目の伝熱加熱時に減圧処理を行なうことによって、前述の課題を解決し得ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0014】
具体的には、請求項1の発明の果実類の加熱処理方法は、果実類を主体とする流動性食品・飲料を製造するにあたり、果実類を主体とする食品材料を加熱容器内に装入して、容器内の食品材料を容器壁面側からの伝熱により加熱する第1段目の加熱を行ない、かつその第1段目の加熱においては、加熱しながら食品材料を撹拌し、かつ少なくとも第1段目の加熱の後期において容器内を減圧し、さらに第1段目の加熱終了後、食品材料を通電加熱装置に移送して、食品材料に直接通電することにより、食品材料自身の抵抗発熱により食品材料を加熱する第2段目の加熱を行なうことを特徴とするものである。
【0015】
このように請求項1の発明の方法では、第1段目の加熱は、伝熱加熱によって行なって、中間温度(代表的には請求項2で規定するように40〜70℃の範囲内の温度)まで加熱し、その後、第2段目の加熱を通電加熱によって行なって、最終到達温度(代表的には請求項2で規定するように85〜105℃の範囲内の温度)まで加熱する。ここで、伝熱加熱による第1段目の加熱では、少なくとも後期において容器内を減圧することによって、食品材料中に含まれている固形果肉の内部の空気を固形果肉の外部へ排出させ、さらにそれによって生じる気泡を除去(脱気)することができ、また減圧によって沸点が低下するから、前述のような40〜70℃程度の中間温度でも沸騰状態に至らせて、食品材料中の水分を飛ばし、濃縮することができる。なおこの第1段目の加熱では、固形果肉の内部に含まれている空気を果肉外部へ排出させると同時に、その空気と置換するように糖分を果肉内部へ充分に侵入させることができ、そのため糖度が均一化されるとともに、電気伝導度も均一化されて、その後の通電加熱による第2段目の加熱における均一加熱が容易となる。そして通電加熱による第2段目の加熱では、80〜105℃程度の最終到達温度まで加熱することによって、食品材料に対する殺菌がなされる。
【0016】
ここで、第1段目の加熱は伝熱加熱によっているため、昇温速度は比較的低いが、少なくとも後期において減圧しているため、沸点が低くなり、そのため40〜70℃程度の比較的低い中間温度まで昇温させれば足り、したがってさほど長時間の加熱を要しない。そして第1段目の加熱はこのように比較的低い中間温度までの比較的短時間の加熱であるため、第1段目の伝熱加熱において果実類の本来有する風味、香り、色調、栄養成分等を損なうおそれも極めて少なく、また固形果肉が崩れてしまうおそれも極めて少ない。
【0017】
一方第2段目の加熱は通電加熱によって行なっており、通電加熱は既に述べたように短時間で急速に昇温させることができ、特に60〜70℃程度以上の高温域では昇温速度が著しく高くなる。そしてこの発明の場合は、通電加熱の前の第1段目の加熱で40〜70℃程度の中間温度まで予め加熱しているため、85〜105℃程度の最終到達温度まで短時間で昇温させることができ、そのため第2段目の加熱において果実類の有する風味、香り、色調、栄養成分等が損なわれてしまうおそれが少なく、また固形果肉が崩れてしまうおそれも少ない。また第1段目の伝熱加熱において既に脱気がなされていて、第2段目の通電加熱では気泡がほとんど存在しない状態となっているため、通電電流が気泡によって妨げられることがなく、また固形果肉内部の空気が糖分により置換されて電気伝導度が均一化されており、そのため効率良く通電加熱することができるとともに、均一加熱が達成される。
【0018】
したがって伝熱加熱と通電加熱とを組合せ、第1段目の加熱に伝熱加熱を適用するとともにその後期において減圧下での加熱を行ない、さらに第2段目の加熱に通電加熱を適用することによって、所期の目的を達成することができるのである。
【0019】
一方請求項2の発明は、請求項1に記載の果実類の加熱処理方法において、第1段目の加熱を40〜70℃の範囲内の温度まで行ない、第2段目の加熱を85〜105℃の範囲内の温度まで行なうことを特徴とするものである。
【0020】
このように伝熱加熱による第1段目の加熱を40〜70℃の範囲内となるまで行なうことによって、食品材料の減圧下での濃縮、脱気を確実に行なうことができ、また通電加熱に対する予備処理として電気伝導度の均一化を図ることができ、さらに通電加熱による第2段目の加熱を85〜105℃の範囲内の温度まで行なうことによって、確実かつ安定して殺菌することができる。
【0021】
ここで、第1段目の伝熱加熱の到達温度が40℃未満では、固形果肉が充分に軟質化せず、そのため減圧しても充分な濃縮が困難となるとともに脱気も困難となり、さらには通電加熱による第2段目の加熱における加熱開始温度が低くなってしまって、第2段目の通電加熱時間が長くなってしまい、通電加熱のメリットが活かされなくなる。また第1段目の伝熱加熱の到達温度が70℃を越えれば、第1段目の伝熱加熱に長時間を要するようになって生産性を阻害するばかりでなく、果実類の風味、香り、色調、栄養成分を損なったり、固形果肉の崩れが生じやすくなってしまう。したがって伝熱加熱による第1段目の加熱の到達温度は40〜70℃の範囲内とする。
【0022】
一方第2段目の通電加熱の到達温度が85℃未満では確実な殺菌が困難となり、一方105℃を越えて高温で通電加熱することは経済性を損なうばかりでなく、短時間の加熱によっても果実類の風味、香り、色調あるいは栄養成分等が損なわれたり、固形果肉が崩れたりしてしまう。したがって通電加熱による第2段目の加熱の到達温度は85〜105℃の範囲内とする。
【0023】
さらに請求項3の発明は、請求項1に記載の果実類の加熱処理方法において、前記第2段目の加熱として、食品材料を管路の長さ方向に連続的に輸送させながら、管路内において食品材料に通電して連続的に加熱することを特徴とするものである。
【0024】
このように第2段目の通電加熱に、管路内での連続通電加熱方式を適用することによって、生産性を大幅に向上させることができるとともに、一連の処理工程の連続自動化を容易に達成することが可能となる。なおこの発明の場合、伝熱加熱による第1段目の加熱において撹拌、沸騰濃縮、脱気を行なっているため、第2段目の通電加熱では撹拌を行なう必要はなく、そのため管路内での連続通電加熱を容易に実現することができる。
【0025】
そしてまた請求項4の発明は、請求項3に記載の果実類の加熱処理方法において、前記通電加熱装置として、管路の内周面に沿う複数の環状の電極を管路の長さ方向に間隔を置いて設けておき、管路の長さ方向に相互に隣り合う電極間において電流を流すことにより、管路内を流れる食品材料に対し管路の長さ方向に通電して加熱することを特徴とすることを特徴とするものである。
【0026】
このように管路の長さ方向に通電して加熱することにより、管路内を流れる食品材料を、より均一に加熱することが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1にこの発明の方法を実施するための装置の代表的な一例を示し、また図2に連続通電加熱装置の一例を示す。以下図1および図2を参照してこの発明の方法を具体的に説明する。
【0028】
図1において、加熱容器1は伝熱加熱による第1段目の加熱を行なうためのものであり、外部の高温蒸気発生源3からの高温蒸気が加熱容器1の壁部1Aに導入されて蒸気加熱されるようになっており、さらに加熱容器1の内部には撹拌羽根等の撹拌手段5が挿入されている。またこの加熱容器1は密閉され得る構造とされ、かつ減圧用の真空ポンプ7によって内部を減圧させ得るようになっている。
【0029】
さらに加熱容器1の下端からは輸送管9が導き出されており、この輸送管9は開閉弁11および輸送ポンプなどの圧送手段12を介して連続通電加熱装置13の下端に接続されている。この連続通電加熱装置13は、図2に詳細に示すように、垂直な管路15の内周面に沿う環状をなす複数の電極16A〜16Dを、上下に所定間隔を置いて配設し、かつ電極16A〜16Dを電源装置18の出力端子18A,18Bに電気的に交互に接続した構成とされている。なおこの電源装置18としては通常は高周波電源が最適であるが、場合によっては商用交流電源あるいは直流電源を用いることもできる。
【0030】
以上のような図1に示される装置を用いてこの発明の方法を実施するにあたっては、予め果実類を適切な大きさ、形状にカッティングするかあるいは破砕するか、さらには圧潰しておき、その果実類に必要に応じてショ糖等の副原料や水を混合して、加熱容器1内に装入する。なお以下では、このように加熱容器1内に装入した果実類を主体とする原料を、単に食品材料と称することとする。
【0031】
一方、高温蒸気発生源3からの高温蒸気によって加熱容器1の壁部1Aが加熱され、その壁部1Aからの伝熱によって容器1内に装入された食品材料が加熱され、昇温する。このとき、撹拌手段5を動作させて容器1内の食品材料を撹拌しながら均一加熱を図る。なおこの昇温過程では、真空ポンプ7は作動させないことが望ましい。
【0032】
加熱容器1内の食品材料が、目標とする中間温度、例えば40〜70℃の範囲内の所定の温度(代表的には60℃)に達すれば、PH調整剤やゲル化剤、消泡剤等を必要に応じて添加し、続いて、撹拌手段5を作動させながら真空ポンプ7を作動させて、容器1内を減圧する。これによって既に述べたように容器1内の食品材料中の固形果肉から空気が排出され、さらにそれによって生じた気泡が加熱容器1の外部へ排出される。すなわち脱気が遂行される。また同時に固形果肉内に糖分が侵入する。さらにこの過程では、減圧下での沸騰が生じ、水分が蒸発して濃縮が行なわれる。また脱気後には、必要に応じて糖度調整や酸味料、香料等の添加を行なって撹拌するのが通常である。以上のような加熱容器1における伝熱加熱による第1段目の加熱は、装入量や容器の大きさ等によっても異なるが、通常は15〜30分程度を要する。
【0033】
前述のようにして加熱容器1での伝熱加熱による第1段目の加熱が終了した後、開閉弁11を開放するとともに圧送手段12を作動させて、輸送管9を介し加熱容器1内の食品材料を通電加熱装置13に連続的に輸送する。
【0034】
通電加熱装置13においては、管路15内を下方から上方へ向けて食品材料が移動する。このとき、上下に隣り合う電極間、例えば電極16Aと16Bとの間には電源装置18によって電圧が印加されるため、その間において食品材料中を電流が流れ、食品材料自身が抵抗発熱して、通電加熱がなされる。このようにして通電加熱装置13内において食品材料が好ましくは85〜105℃の範囲内の最終到達温度(代表的には97℃)まで加熱昇温される間に、食品材料の殺菌が遂行され、続いて排出管19を介して連続通電加熱装置13から系外に排出される。このような通電加熱による第2段目の加熱は1〜2分程度で充分である。なお系外に排出された食品材料は、製品容器内へ充填する充填工程、さらには包装工程等へ連続的に輸送されるのが通常である。
【0035】
以上のところにおいて、前述の例では加熱容器1における第1段目の加熱を、蒸気加熱によって行なうこととしたが、必ずしも蒸気加熱に限定されるものではなく、例えばガス加熱を適用したり、あるいはプレート式熱交換器を用いたりしても良く、要は容器壁面からの伝熱加熱によって食品材料を加熱することとすれば良い。
【0036】
また図1の例では通電加熱による第2段目の加熱のための連続通電加熱装置として、環状の電極を用いて管路の長さ方向に電流を流す構成のものを用いているが、場合によっては管路の横断方向(直径方向)に対向する電極を用い、管路の横断方向に通電電流を流す構成としても良い。さらには、生産性を犠牲にしても良い場合には、連続通電加熱装置に代えてバッチ式の通電加熱装置を用いることも許容される。
【0037】
なおまた、この発明の方法によって加熱処理された果実食品材料は、これをそのままジャムやフルーツソース、ピューレ、ドリンク等の食品・飲料製品としても良いが、さらにその果実食品材料をフルーツアイスクリーム、フルーツシャーベット、フルーツヨーグルト、さらには洋菓子、その他の菓子類の製造に供しても良いことはもちろんである。
【0038】
【実施例】
図1に示す装置を用いてこの発明の方法を実施した例を以下に示す。
【0039】
実施例1
リンゴを用いてリンゴのダイスカットプレパレーションを製造するにあたり、予めリンゴを15mm×15mm×15mm程度にカッティングした。カッティング後のリンゴを210kgと、ショ糖98kgとを容量500lの蒸気加熱方式の加熱容器(蒸気加熱釜)内に装入し、撹拌しながら60℃まで蒸気加熱し、引続いてPH調整剤としてクエン酸ナトリウムを150g、安定剤としてペクチンを900g添加した後、真空ポンプを作動させて加熱容器内の圧力を600mmHg程度まで減圧し、容器内の材料を沸騰させるとともに、脱気を行った。その後、糖度調整を行うとともに、少量の副原料および香料を添加し、さらに撹拌して第1段目の加熱を終了させた。この第1段目の加熱の所要時間は20分である。続いて約60℃の加熱容器内の食品材料を連続通電加熱装置に連続的に移送して、第2段目の加熱として、高周波電流により連続的に97℃まで通電加熱した。この通電加熱時間は2分であった。
【0040】
以上のようにして加熱処理を行った食品材料について、その性状を調べたところ、固形果肉の崩れは従来の減圧濃縮による伝熱加熱のみの場合と比較して格段に少ないことが確認された。また風味や香り、色調、栄養成分の劣化、破壊も従来法の場合と比較して格段に少なく、果実の新鮮さが充分に残っていることが確認された。
【0041】
実施例2
苺を用いて苺ソースを製造するにあたり、予め苺を3mm程度にミンチ掛した。ミンチ掛後の苺を150kgと、ショ糖60kgと、水飴144kgとを容量500lの蒸気加熱方式の加熱容器(蒸気加熱釜)内に装入し、撹拌しながら60℃まで蒸気加熱し、引続いてPH調整剤としてクエン酸ナトリウムを300g、増粘剤としてペクチンを1200g、ローカストビーンガムを300g添加した後、真空ポンプを作動させて加熱容器内の圧力を600mmHg程度まで減圧し、容器内の材料を沸騰させるとともに、脱気を行った。その後、糖度調整を行うとともに、少量の副原料および香料を添加し、さらに撹拌して第1段目の加熱を終了させた。この第1段目の加熱の所要時間は20分である。続いて約60℃の加熱容器内の食品材料を連続通電加熱装置に連続的に移送して、第2段目の加熱として、高周波電流により連続的に97℃まで通電加熱した。この通電加熱時間は2分であった。
【0042】
以上のようにして加熱処理を行った食品材料について、その性状を調べたところ、固形果肉の崩れは従来の減圧濃縮による伝熱加熱のみの場合と比較して格段に少ないことが確認された。また風味や香り、色調、栄養成分の劣化、破壊も従来法の場合と比較して格段に少なく、果実の新鮮さが充分に残っていることが確認された。
【0043】
【発明の効果】
この発明の果実類の加熱処理方法によれば、ジャムやフルーツソースで代表される果実類を主体とする食品・飲料を製造するにあたって、果実が本来有している風味や香り、色調、さらには栄養成分が損なわれてしまうことを確実に防止して、新鮮さを保った食品・飲料を製造することができ、また固形の果肉を有する製品を製造する場合でも、固形の果肉の崩れが生じることを防止して、形状性の良好な固形果肉を含む製品を安定して得ることができ、さらにはトータルの加熱時間を短縮して生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の方法を実施するための装置の全体構成の一例を模式的に示す略解図である。
【図2】図1の装置に用いられる連続通電加熱装置の一例を示す略解的な縦断面図である。
【符号の説明】
1 加熱容器
1A 壁部
5 撹拌手段
7 真空ポンプ
13 連続通電加熱装置
16A〜16D 電極
18 電源装置
Claims (4)
- 果実類を主体とする流動性食品・飲料を製造するにあたり;果実類を主体とする食品材料を加熱容器内に装入して、容器内の食品材料を容器壁面側からの伝熱により加熱する第1段目の加熱を行ない、かつその第1段目の加熱においては、加熱しながら食品材料を撹拌し、かつ少なくとも第1段目の加熱の後期において容器内を減圧して、さらに第1段目の加熱終了後、食品材料を通電加熱装置に移送して、食品材料に直接通電することにより、食品材料自身の抵抗発熱により食品材料を加熱する第2段目の加熱を行なうことを特徴とする、果実類の加熱処理方法。
- 請求項1に記載の果実類の加熱処理方法において;
第1段目の加熱を40〜70℃の範囲内の温度まで行ない、第2段目の加熱を85〜105℃の範囲内の温度まで行なうことを特徴とする、果実類の加熱処理方法。 - 請求項1に記載の果実類の加熱処理方法において;
前記第2段目の加熱として、食品材料を管路の長さ方向に連続的に輸送させながら、管路内において食品材料に通電して連続的に加熱することを特徴とする、果実類の加熱処理方法。 - 請求項3に記載の果実類の加熱処理方法において;
前記通電加熱装置として、管路の内周面に沿う複数の環状の電極を管路の長さ方向に間隔を置いて設けておき、管路の長さ方向に相互に隣り合う電極間において電流を流すことにより、管路内を流れる食品材料に対し管路の長さ方向に通電して加熱することを特徴とする、果実類の加熱処理方法。
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