JP3582310B2 - 電気機械変換素子を利用した駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電素子(ピエゾ素子)等の電気機械変換手段を利用した駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電圧の印加によって長さが変化する(伸縮する)圧電素子等の電気機械変換手段を利用した駆動装置として、例えば、図1(a)の分解斜視図および図1(b)の組立斜視図に示したものが知られている。
【0003】
この駆動装置は、後に説明するように、台座(固定台)1に対して移動子10を相対的に移動させることができ、例えば、カメラのレンズ駆動装置として使用できる。すなわち、移動子10をレンズ玉枠と連結すれば、移動子10とともにレンズを移動させることができる。
【0004】
圧電素子4は、多数の圧電板を積層して構成されており、伸縮方向一端4aが台座1に固定されるとともに他端4bがロッド5の一端5aに固定される。ロッド5は、台座1に一体的に形成された支持部2および3に摺動可能に支持される。
【0005】
移動子10は、本体11とキャップ12とによってロッド5を挟み込むとともに、押圧バネ13で本体11とキャップ12とに挟み込み方向の付勢力を与えることによって、ロッド5の周囲に摩擦結合される。
【0006】
圧電素子4には不図示の電圧制御回路(駆動パルス発生手段)が接続されており、図2に示したような鋸刃形の波形で表される変動電圧を連続的に印加すると、圧電素子4が伸縮振動し、これに伴ってロッド5がその長さ方向に振動する。具体的には、第1の波形100の緩やかな立上がり傾斜部101に対して圧電素子4は比較的ゆっくりと伸長し、ロッド5が図1(b)中矢印A方向へとゆっくりと移動する。そして、電圧を急激に戻すと(立下がり傾斜部102で示される波形部分)、今度は、圧電素子4は急速に縮んで初期長さに戻り、ロッド5が急激にB方向へと移動する。
【0007】
同様の波形100’、100”・・・が繰り返すように連続的に電圧を印加すると、ロッド5は、A方向へのゆっくりとした移動とB方向への急激な移動とを繰り返して振動する。ここで、ロッド5がゆっくりと移動する場合には移動子10が該ロッド5と共に移動し、ロッド5が急激に移動する場合には移動子10が慣性によってその場に止まる(または、ロッド5よりも少量だけ移動する)こととなるように、移動子10の押圧バネ13のバネ力(移動子10のロッド5に対する摩擦結合力)が調節されている。したがって、ロッド5が振動する間に移動子10は台座1に対して相対的にA方向に移動することとなる。
【0008】
図3には、図2のパルス波形を有する変動電圧を利用した場合におけるロッドの変位量の変動を示した。緩やかな立上がり部分201は図2の傾斜部101に対応しており、ロッド5がゆっくりと変位していることが分かる。また、急激な立下がり部分202は図2の傾斜部102に対応しており、ロッド5が急速に変位していることが分かる。ロッド5の振幅は非常に小さいため、1パルスに対応する移動子10の移動量は非常に小さく、したがって、レンズの位置を精密に制御することができる。
【0009】
なお、移動子10を図1(b)中矢印B方向に移動させる場合には、圧電素子に印加する電圧のパルス波形を、図2に示したものに代えて、急激な立上がり部と緩やかな立下がり部を有する波形とすればよい。移動子10の移動原理は、上記の場合と同様である。
【0010】
上述のものに限らず駆動装置一般においては、図3に示されるような、振動時(往復時)において“行き”と“戻り”とで速度が異なるロッドの変位が必要とされるが、これを達成するために、図2に示したような互いに傾斜の異なる立上がり部と立下がり部とを含む鋸刃形のパルス波形を有する変動電圧が圧電素子に印加される。しかしながら、一般的にそのような波形を得ようとすると、電圧制御回路の回路が非常に複雑となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、複雑な構成の電圧制御回路を使用することなく、一方向(振動時における“行き”)への移動速度と他方向(振動時における“戻り”)への移動速度とが相対的に異なるロッドの変位速度を得ることである。
【0012】
【課題を解決するための手段・作用・効果】
本発明は、上記課題を有効に解決するために創案されたものであって、以下の構成を有する駆動装置を提供するものである。
【0013】
すなわち、本発明の駆動装置は、駆動パルス発生手段に接続されて伸縮するとともに、伸縮方向一端が固定台に固定された電気機械変換手段と、電気機械変換手段の伸縮方向他端に一端が固定されたロッドと、ロッドの周囲に摩擦結合された移動子と、を備えている。移動子のロッドに対する摩擦結合力は、ロッドが相対的に小さい速度で移動する場合にはロッドと移動子とが一体的に移動し、ロッドが相対的に大きい速度で移動する場合には移動子の移動量がロッドのそれよりも小さくなるように設定されており、電気機械変換手段の伸縮によるロッドの振動を利用して固定台に対して移動子を相対的に移動させる。
【0014】
そして、電気機械変換手段は、それぞれが個別の駆動パルス発生手段に接続されて伸縮する複数の電気機械変換素子を伸縮方向に直列に連結してなる電気機械変換素子組合体で構成されている。各電気機械変換素子には左右対称のパルス波形で表される変動電圧がそれぞれ印加され、各変動電圧のパルス波形の振幅および周期の少なくとも1つを互いに異ならせることによって、振動時におけるロッドの一方向への移動速度と他方向への移動速度とを相対的に異ならせている。
【0015】
上記構成を有する駆動装置においては、各電気機械変換素子に印加される変動電圧の波形は、左右対称のパルス波形で表される極めて単純なものであり、したがって、変動電圧を各電気機械変換素子に送る駆動パルス発生手段(電圧制御回路)の回路構成を簡単なものとすることができる。一方、このような変動電圧によって伸縮する各電気機械変換素子はそれぞれ伸長する場合と縮む場合とにおける速度が等しいが、各電気機械変換素子相互間ではその速度および伸縮周期が異なる。したがって、このような各電気機械変換素子を組み合わせてなる電気機械変換素子組合体は、全体として観察した場合には、伸長する場合と縮む場合とにおける速度が互いに異なる。
【0016】
そして、このような電気機械変換素子組合体と連動してロッドが振動(往復動)するので、上記駆動装置に要求されるロッドの変位速度、すなわち、一方向への移動速度と他方向への移動速度とが相対的に異なるロッドの変位速度を得ることができる。
【0017】
本発明においては、各電気機械変換素子に印加される変動電圧のパルス波形は、左右対称形状のものであれば特に限定されるものではないが、正弦波で表されるパルス波形を利用することが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付の図面を参照しつつ以下に説明する。図4に、本発明の駆動装置の一例を示した。
【0019】
図4の駆動装置は、図1に示した駆動装置に対して圧電素子4に対応する部分を、伸縮方向に直列に連結された3つの圧電素子41、42、43から構成される圧電素子組合体45で置き換えた点のみが異なっており、他の構成は同じである。したがって、移動子や台座等については図1で使用したのと同じ参照番号で示し、その説明を省略する。なお、各圧電素子41、42、43は、図1の圧電素子4と同様に積層構造を有する。
【0020】
3つの圧電素子41、42、43には、それぞれ、個別の電圧制御回路(駆動パルス発生手段)51、52、53が接続されており、制御回路51はE=Asin(2πft)で表される変動電圧(図5(a))を、制御回路52はE=1/2・Asin(4πft−π)で表される変動電圧(図5(b))を、制御回路53はE=0.4/3・Asin(6πft)で表される変動電圧(図5(c))を、それぞれ各圧電素子へと送る。図6には、上記3つの波形の合成波形を示した。
【0021】
ここで、図2と図3とを比較すれば分かるように、ロッド5の変位量を示す波形(図3)は、圧電素子への入力電圧の波形(図2)とほぼ同様の概略形状をなす(図2の入力波形は直線の組み合わせで構成されているが、図3の波形はこれを滑らかに曲線状とした形状となっている)。同様に、図5(a)の波形で示される変動電圧が印加される圧電素子41のみを使用してロッドを振動させた場合のロッド変位量をグラフにすると、スケールは異なるが概略形状は該波形とほぼ同じになる。同じように、圧電素子42または43のみを使用した場合も、ロッドの変位量をグラフにすれば、概略形状はそれぞれ、図5(b)および図5(c)に示した波形とほぼ同じになる。したがって、3つの圧電素子41、42、43を伸縮方向に直列に組み合わせて構成される圧電素子組合体45を使用した場合のロッド変位量をグラフにすれば、その概略形状は、やはりスケールは異なるが図6に示した合成波とほぼ同じになる。
【0022】
以上の説明から分かるように、各圧電素子に印加される変動電圧の波形は、それぞれが正弦波であって、図2に示した鋸刃形の波形と比較して極めて単純である。したがって、各電圧制御回路51、52、53の回路構成も簡単なものとすることができる。しかしながら、このような単純な波形の変動電圧を利用して伸縮される各圧電素子を組み合わせて構成された全体としての圧電素子組合体45の伸縮によって得られるロッドの振動波形は、図3に示した波形の場合と同様に、緩やかに立ち上がる部分と急激に立下がる部分とを有することとなる。したがって、図4の駆動装置においても、移動子10は、図1の駆動装置の場合と同様に移動する。
【0023】
図5を参照すれば分かるように、変動電圧の振幅は、図5(a)、(b)、(c)の順に小さくなっている。一般に、圧電素子の変形による駆動力の大きさは入力電圧の大きさによって決まり、電圧が大きくなる程、駆動力も大きくなる。したがって、図4の圧電素子組合体を構成する各圧電素子の駆動力は、圧電素子41が最も大きく、42、43の順に小さくなっていく。その理由は、圧電素子43はロッド5のみを駆動すればよいので最も小さい駆動力で十分であり、圧電素子42は、ロッド5に加えて圧電素子43も駆動しなければならないのでより大きな駆動力を必要とし、圧電素子41は、ロッド5および圧電素子43に加えて圧電素子42も駆動しなければならないのでさらに大きな駆動力を要するからである。
【0024】
なお、図示の例においては、圧電素子組合体45は3つの圧電素子で構成されているが、本発明において圧電素子の数が特に限定されるものではない。また、各圧電素子に入力される変動電圧の波形も上記の各式で表されるものに限定されるものではなく、それらが単なる例示であることは言うまでもない。すなわち、入力電圧の波形は、必要なロッドの変位量に応じて適宜選択することが可能である。電圧制御回路の回路構成を簡単にするためには、変動電圧を表すパルス波形の形状が左右対称であれば十分である。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧電素子を利用した従来の駆動装置を示す分解図および組立図である。
【図2】図1の駆動装置の圧電素子に対して印加される電圧のパルス波形を示すグラフである。
【図3】図2に示したパルス電圧を印加した場合のロッドの変位量を示すグラフである。
【図4】本発明の駆動装置の一例を示す正面図である。
【図5】図4の駆動装置の各圧電素子に対して印加される電圧のパルス波形を示すグラフである。
【図6】図5に示した各変動電圧の波形の合成波形を示すグラフである。
【符号の説明】
1 台座
2、3 支持部
4 圧電素子
5 ロッド
10 移動子
11 本体
12 キャップ
13 押圧バネ
41、42、43 圧電素子
45 圧電素子組合体
100、100’、100” パルス波
101 パルス電圧の立上がり傾斜部
102 パルス電圧の立下がり傾斜部
201 ロッド変位量の立上がり傾斜部
202 ロッド変位量の立下がり傾斜部
Claims (2)
- 駆動パルス発生手段に接続されて伸縮するとともに、伸縮方向一端が固定台に固定された電気機械変換手段と、
電気機械変換手段の伸縮方向他端に一端が固定されたロッドと、
ロッドの周囲に摩擦結合された移動子と、を備えており、
移動子のロッドに対する摩擦結合力が、ロッドが相対的に小さい速度で移動する場合にはロッドと移動子とが一体的に移動し、ロッドが相対的に大きい速度で移動する場合には移動子の移動量がロッドのそれよりも小さくなるように設定されており、
電気機械変換手段の伸縮によるロッドの振動を利用して固定台に対して移動子を相対的に移動させる駆動装置において、
電気機械変換手段は、それぞれが個別の駆動パルス発生手段に接続されて伸縮する複数の電気機械変換素子を伸縮方向に直列に連結してなる電気機械変換素子組合体で構成されており、
各電気機械変換素子には左右対称のパルス波形で表される変動電圧がそれぞれ印加され、各変動電圧のパルス波形の振幅および周期の少なくとも1つを互いに異ならせることによって、振動時におけるロッドの一方向への移動速度と他方向への移動速度とを相対的に異ならせていることを特徴とする、駆動装置。 - 上記各圧電素子に印加される変動電圧のパルス波が正弦波であることを特徴とする、請求項1記載の駆動装置。
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