JP3581761B2 - オレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体、それからなるオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒成分、およびそれを含むオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
Ti(IV)のシクロペンタジエニル錯体は、オレフィン重合触媒成分として有効であり、既に種々の錯体がオレフィンの重合触媒に使用されている。例えば特開昭63−39905号公報には、(Rm −A)TiR1 R2 R3 [ここで、R=メチル;A=シクロペンタジエニル;R1 、R2 、R3 =C1 〜C6 アルキル、(Rm −A)、ハロゲンまたは水素;m=0、1または2]で示されるチタン化合物を、エチレンの共重合に使用することが記載されている。
【0003】
一方、Ti(IV)のシクロペンタジエニル錯体のなかでも、チオラートを配位子として持つ錯体はいくつかの合成例が知られている。例えば、クロロ(η5 − シクロペンタジエニル)(1,3− プロパンジチオラート)チタニウム(IV)の合成は、Inorg. Chem., 32,347−356(1993)に記載されている。しかし、このような錯体をオレフィン系またはスチレン系単量体の重合へ適用することについては未だ知られていない。
【0004】
本発明は第1に、新規なシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は第2に、高活性のオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒成分を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は第3に、高活性のオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規なシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体を見出し、さらに、これを触媒成分として用いると、高活性にて重合反応が進行することを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は第1に、次式(1):
【0009】
【化2】
L1 a L2 b TiXc (1)
(上記式中、L1 は、ホスフィノアルキルチオ基であり、ここでP原子もTiに配位して、環状構造をとることができる;L2 はシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基であり;Xはハロゲン原子またはアルキル基であり;aおよびbはそれぞれ、1、2または3であり、かつa+b+c=4である)で示されるシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体である。
【0010】
本発明は第2に、上記のシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体からなる、オレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒成分である。
【0011】
本発明は第3に、(A)上記のシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体および(B)アルミノキサンからなる、オレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒である。
【0012】
【発明の実施の形態】
上記式(1)で示されるシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体について述べる。
【0013】
配位子L1 が表すホスフィノアルキルチオラートにおいて、ホスフィノ基のリン原子に結合している水素原子1〜2個が、炭素原子数1〜8個のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、または置換基を有していてもよいフェニル基などで置換されているのが好ましく、特にメチル基で置換されているのが好ましい。また、ホスフィノ基が結合しているアルキル基は、炭素原子数1〜8個の直鎖状または分枝状のアルキル基が好ましく、例えばメチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、2−メチルエチル、n−ブチル等であり、特に炭素原子数2〜3個のアルキル基が好ましい。ホスフィノアルキルチオ基の好ましい具体例としては、例えば2−ジメチルホスフィノエタンチオ基(以下、dmspと称することがある)、2−ジフェニルホスフィノエタンチオ基、2−ジメチルホスフィノプロパンチオ基、2−ジフェニルホスフィノプロパンチオ基、2−ジメチルホスフィノ(1−メチルエタン)チオ基、2−ジメチルホスフィノ(2−メチルエタン)チオ基、2−ジフェニルホスフィノ(1−メチルエタン)チオ基、2−ジフェニルホスフィノ(2−メチルエタン)チオ基等が挙げられる。好ましくは2−ジメチルホスフィノエタンチオ基である。
【0014】
なお、配位子L1 では、S原子がTiに結合しているが、P原子もTiに配位して、環状構造をとることもできる。
【0015】
配位子L2 が置換シクロペンタジエニル基のとき、置換基としては、例えば炭素原子1〜8個、好ましくは1〜4個を有するアルキル基が挙げられる。置換基の種類は同じでも異なっていてもよく、また置換基の数および置換位置は任意である。具体的には、例えばメチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、ジエチルシクロペンタジエニル基、トリエチルシクロペンタジエニル基、テトラエチルシクロペンタジエニル基、ペンタエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、ジプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、ジブチルシクロペンタジエニル基、ペンチルシクロペンタジエニル基、ジペンチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基、ジヘキシルシクロペンタジエニル基、ヘプチルシクロペンタジエニル基、ジヘプチルシクロペンタジエニル基、オクチルシクロペンタジエニル基、ジオクチルシクロペンタジエニル基等が挙げられる。異なる置換基を有する置換シクロペンタジエニル基としては、例えばメチルエチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルヘキシルシクロペンタジエニル基、メチルオクチルシクロペンタジエニル基、エチルプロピルシクロペンタジエニル基、エチルブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルエチルシクロペンタジエニル基、トリメチルエチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルエチルシクロペンタジエニル基、ジメチルプロピルシクロペンタジエニル基、ジメチルブチルシクロペンタジエニル基等が挙げられる。中でも、ペンタメチルシクロペンタジエニル基が好ましい。
【0016】
配位子Xにおいて、ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素が挙げられる。中でも、塩素が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1〜8個のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0017】
好ましい態様は、配位子L2 がシクロペンタジエニル基であり;aが2であり、bが2であり、かつcが0である。
【0018】
別の好ましい態様は、配位子L2 が置換シクロペンタジエニル基(特には、ペンタメチルシクロペンタジエニル基)であり、;aが3であり、bが1であり、cが0である。
【0019】
上記のシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体は、例えばハロゲン含有Ti(IV)錯体、すなわちL2 b TiXc+a を、有機溶媒の存在下で、ホスフィノアルキルチオールの金属塩(チオラート)と反応させることにより製造できる。使用できる有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)、エチルエーテル、ベンゼン等が挙げられる。ホスフィノアルキルチオール金属塩(チオラート)の金属としては、例えばアルカリ金属が挙げられ、好ましくはリチウム、ナトリウムまたはカリウムであり、特に好ましくはリチウムである。ハロゲン含有Ti(IV)錯体とホスフィノアルキルチオール金属塩との反応は、好ましくは −80℃〜50℃の温度で10分間〜20時間行う。ハロゲン含有Ti(IV)錯体とホスフィノアルキルチオール金属塩(チオラート)とは、ハロゲン含有Ti(IV)錯体1モル当たり、ホスフィノアルキルチオール金属塩1〜10モルの割合で使用するのが好ましい。
【0020】
本発明のオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒成分は、上記の新規なシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体からなる。
【0021】
次に、本発明のオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒は、成分Aとして上記の新規なシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体を含み、かつ成分Bとしてアルミノキサンを含む。
【0022】
成分Bアルミノキサンは、それ自体公知であり、通常、次式(2):
【0023】
【化3】
または、次式(3):
【0024】
【化4】
(上記式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜8の炭化水素基を表す)
で示される。炭化水素基としては、アルキル基、アルキル置換されているまたはされていないフェニル基、フェニル置換アルキル基等が挙げられる。
【0025】
上記したアルミノキサンは、公知の製造方法により製造できる。例えばAlR3 で示される有機アルミニウム化合物と水とを反応させることにより製造できる。このような有機アルミニウム化合物としては、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム等が挙げられ、中でも、特にトリメチルアルミニウムが好ましい。有機アルミニウム化合物と反応させる水は、通常の水の他に、硫酸鉄、硫酸銅等の結晶水を使用することができる。
【0026】
本発明の触媒は、上記した成分A1モル当たり、成分Bを、アルミニウム原子に換算して1〜106 モル、好ましくは10〜104 モル含む。
【0027】
本発明の触媒の調製は、その方法に特に制限はない。例えば各成分を物理的に混合する、適当な溶媒(例えば成分AおよびBの両者に対して不活性な溶媒例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)中で混合する、重合すべき単量体(液体の場合)中で混合する等の方法が使用できる。あるいは、成分Aおよび成分Bを混合せずに、それぞれ別々に重合槽に導入して使用することができる。
【0028】
本発明の触媒は、オレフィン系またはスチレン系単量体を重合するのに使用される。オレフィン系単量体としては、炭素数2〜10個のオレフィンが好ましい。本発明の触媒をオレフィンの重合触媒として使用する場合、オレフィンの単独重合、または異なる2種以上のオレフィンの共重合、あるいはオレフィンと炭素数3〜10個のジオレフィンとの共重合に有効である。本発明の触媒は、特に、エチレンの単独重合、エチレンと炭素数3〜8個のα‐オレフィン(例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1− ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)との共重合(ランダム共重合またはブロック共重合のいずれであってもよい)などに有効に使用できる。
【0029】
また、スチレン系単量体としては、スチレン、スチレン誘導体例えばα‐メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ジメチルスチレン等が挙げられる。本発明の触媒は、これらの単独重合または、2種以上の共重合に使用できる。
【0030】
本発明の触媒は特に、エチレンまたはスチレンの単独重合、およびエチレンとα‐オレフィンとの共重合に使用されるのが好ましい。
【0031】
本発明の触媒をオレフィン系またはスチレン系単量体の重合に使用する際に、重合反応は気相または液相のいずれで行ってもよい。液相で重合させる場合には、不活性炭化水素または液状単量体中で行うことができる。不活性炭化水素としては、例えばブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。重合温度は、通常 −80℃〜 150℃、好ましくは30〜120 ℃である。重合圧力は、例えば1〜60気圧である。また、得られる重合体の分子量を調節するために、重合系に公知の分子量調節剤例えば水素を存在せしめることができる。重合反応は連続式またはバッチ式で行い、その操作条件は慣用の条件でよい。重合反応は1段で行ってもよく、また重合条件を変えたり、使用する単量体の種類を変えたりして2段以上で行ってもよい。
【0032】
【実施例】
以下の実施例により、本発明を具体的に説明する。なお、実施例において、パーセント(%)は、特に断わらない限り重量%である。
【0033】
実施例1
(1) 配位子に使用される2−ジメチルホスフィノエタンチオール(Hdmsp) の合成
(Me)2 PS−SP(Me)2 (ここで、Meはメチル基、以下でも同様)20g(107 ミリモル)と還元鉄36.0g(644 ミリモル)を均一に混合し、フラスコ中で加熱したところ、液状の化合物が生成した。15分間還流を続けた後、蒸留して、透明液体の生成物ジメチルホスフィン[(Me)2 P−P(Me)2 ]12.34 g(101 ミリモル)を得た。収率は94%であった。
【0034】
別のフラスコに、 −78℃にて、ナトリウム4.65g(202 ミリモル)と液体アンモニア200 mlを入れ、30分間撹拌した。ナトリウムを完全に溶解させると、濃青色の溶液が得られた。ここに、上記で得た(Me)2 P−P(Me)2 を滴下して加え、2時間撹拌したところ、溶液の色が黄褐色に変化した。ここに、エチレンスルフィド12.2g(203 ミリモル)を加え、2時間撹拌して、黄色の溶液を得た。さらに、NH4 Cl 12.0g(224 ミリモル)を加え、30分間撹拌し、溶液が完全に白色に変わってから、液体アンモニアを室温で蒸発させた。残留物をエーテル100 mlで抽出した後、不溶物を濾過して除去した。濾液からエーテルを常圧蒸留して除去した後、減圧蒸留により、目的物であるHdmsp (8.91g)を得た(沸点:3mmHgで33〜34℃)。収率は64%であった。
(2) ビス(η5 ‐シクロペンタジエニル)ビス(2−ジメチルホスフィノエタンチオラート)チタニウム(IV)(Cp2 Ti(dmsp)2 と称す)
100 mlのフラスコに、ヘキサン20mlおよび(1) で合成したHdmsp 0.37g (2.9 ミリモル)を入れ、ブチルリチウム(2.9 ミリモル)を撹拌しながら添加した。30分間撹拌を続けた後、溶媒を留去し、2−ジメチルホスフィノエタンチオール(Hdmsp)のLi塩(Lidmspと称する)の白色粉末を得た。この粉末を、氷温下でTHF 15mlに溶解した。これに、別に用意したジクロロジ(η5 ‐シクロペンタジエニル)チタニウム(IV)(Cp2 TiCl2 と称する)(Aldrich 社製) 306 mg(1.23ミリモル)のTHF(45ml)溶液を加えて30分間撹拌したところ、溶液の色が赤色から暗紫色に変わった。さらに1時間常温で撹拌した後、トルエン30mlで抽出した。抽出液を濃縮して固体を得、これをヘキサンで再結晶することにより、Cp2 Ti(dmsp)2 の紫色結晶0.77gを得た。収率は87%であった。 1H‐NMR測定、X線結晶解析等により構造決定したところ、この結晶は、次の構造を有していることが分かった(Meはメチル基を表す、以下でも同様)。
【0035】
【化5】
1H‐NMRのスベクトル分析のチャートを図1に示す。測定装置は、HITACHI R−90HS((株)日立製作所製)であり、測定溶媒は、CDCl3 であった。ピークの帰属を以下の表に示す。
【0036】
【表1】
X線結晶解析の結果を以下に示す。
【0037】
【化6】
(3) エチレンの重合
窒素ガス置換した1リットルのガラス製オートクレーブに、(2) で得られたCp2 Ti(dmsp)2 0.019 ミリモルを入れ、さらに、メチルアルミノキサン(東ソー・アクゾ(株)製)をアルミニウム原子に換算して10ミリモルおよびトルエン500 mlを入れた。この容器に、エチレンガスを1kg/cm2 G となるように供給し、50℃で40分間エチレンの重合を行った。触媒活性は、160 g/ミリモル−Ti ・時間であった。また、生成したポリエチレンの数平均分子量(Mn)は2.75×105 であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.27であった。なお、分子量測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行った。
【0038】
実施例2
窒素ガス置換した1リットルのガラス製オートクレーブに、実施例1の(2) で得られた触媒成分Cp2 Ti(dmsp)2 0.020 ミリモル、メチルアルミノキサン(東ソー・アクゾ(株)製)をアルミニウム原子に換算して10ミリモル、1−オクテン10mlおよびトルエン490 mlを入れた。この容器に、エチレンガスを1kg/cm2 G となるように供給し、50℃で2時間、エチレンと1−オクテンの共重合を行った。触媒活性は、27g/ミリモル−Ti ・時間であった。また、生成した共重合体の数平均分子量(Mn)は1.29×105 であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.03であった。
【0039】
実施例3
窒素ガス置換した1リットルのガラス製オートクレーブに、実施例1の(2) で得られた触媒成分Cp2 Ti(dmsp)2 0.020 ミリモル、メチルアルミノキサン(東ソー・アクゾ(株)製)をアルミニウム原子に換算して10ミリモル、トルエン350 mlおよびスチレン150 mlを入れた。反応溶液を50℃に保ち、2時間重合を行った。触媒活性は8g/ミリモル−Ti ・時間であった。また、生成したポリスチレンの数平均分子量(Mn)は5.96×104 であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.75であった。
【0040】
実施例4
(1) η5 ‐ペンタメチルシクロペンタジエニルトリス(2−ジメチルホスフィノエタンチオラート)チタニウム(IV)(Cp* Ti(dmsp)3 と称す)の合成
100 mlのフラスコに、ヘキサン20mlおよび実施例1の(1) で合成したHdmsp 0.46g(3.8 ミリモル)を入れ、ブチルリチウム(3.8 ミリモル)を撹拌しながら添加した。30分間撹拌を続けた後、溶媒を留去し、2−ジメチルホスフィノエタンチオール(Hdmsp)のLi塩(Lidmspと称する)の白色粉末を得た。この粉末を、氷温下でTHF 15mlに溶解させた。これに、別に用意したトリクロロ (η5 ‐ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(IV)(Cp* TiCl3 と称する)(Organometallics,8,105(1989) に従って合成した。合成の手順を下記に示す。) 0.36g(1.23ミリモル)のTHF(20ml)溶液を加えて30分間撹拌したところ、溶液の色が赤色から暗赤色に変わった。さらに1時間、常温で撹拌した後、トルエン30mlで抽出した。抽出液を濃縮して固体を得、これをヘキサンで再結晶することにより、Cp* Ti(dmsp)3 の紫色結晶0.43gを得た。収率は63%であった。
【0041】
【化7】
(上記式中、Meはメチル基、Cp* はη5 ‐ペンタメチルシクロペンタジエニル基を表す)
1H‐NMR測定、X線結晶解析等により構造決定したところ、この結晶は、次の構造を有していることが分かった。
【0042】
【化8】
1H‐NMRのスベクトル分析のチャートを図2に示す。測定溶媒は、C6 D6 であった。ピークの帰属を以下の表に示す。
【0043】
【表2】
また、X線結晶解析の結果を以下に示す。
【0044】
【化9】
上記において、Ti−S(1) 距離は2.424 オングストローム、Ti−S(3) 距離は2.386 オングストローム、Ti−S(2) 距離は2.338 オングストロームであった。また、Ti−P(1) の距離は2.625 オングストロームであった。
(2) エチレンの重合
Cp2 Ti(dmsp)2 の代わりに、上記(1) で得られたCp* Ti(dmsp)3 を0.020 ミリモル使用した以外は実施例1の(3) と同様にして、エチレンの重合を行った。触媒活性は、49g/ミリモル−Ti ・時間であった。また、生成したポリエチレンの数平均分子量(Mn)は4.3 ×105 であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.65であった。
【0045】
【発明の効果】
本発明の新規な錯体は、触媒に使用すると、オレフィン系またはスチレン系単量体、特にエチレンまたはスチレンの重合を高活性で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で製造したCp2 Ti(Hdmsp)2 の 1H‐NMRスペクトル分析の結果を示すチャートである。
【図2】実施例4で製造したCp* Ti(Hdmsp)3 の 1H‐NMRスペクトル分析の結果を示すチャートである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体、それからなるオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒成分、およびそれを含むオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
Ti(IV)のシクロペンタジエニル錯体は、オレフィン重合触媒成分として有効であり、既に種々の錯体がオレフィンの重合触媒に使用されている。例えば特開昭63−39905号公報には、(Rm −A)TiR1 R2 R3 [ここで、R=メチル;A=シクロペンタジエニル;R1 、R2 、R3 =C1 〜C6 アルキル、(Rm −A)、ハロゲンまたは水素;m=0、1または2]で示されるチタン化合物を、エチレンの共重合に使用することが記載されている。
【0003】
一方、Ti(IV)のシクロペンタジエニル錯体のなかでも、チオラートを配位子として持つ錯体はいくつかの合成例が知られている。例えば、クロロ(η5 − シクロペンタジエニル)(1,3− プロパンジチオラート)チタニウム(IV)の合成は、Inorg. Chem., 32,347−356(1993)に記載されている。しかし、このような錯体をオレフィン系またはスチレン系単量体の重合へ適用することについては未だ知られていない。
【0004】
本発明は第1に、新規なシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は第2に、高活性のオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒成分を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は第3に、高活性のオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規なシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体を見出し、さらに、これを触媒成分として用いると、高活性にて重合反応が進行することを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は第1に、次式(1):
【0009】
【化2】
L1 a L2 b TiXc (1)
(上記式中、L1 は、ホスフィノアルキルチオ基であり、ここでP原子もTiに配位して、環状構造をとることができる;L2 はシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基であり;Xはハロゲン原子またはアルキル基であり;aおよびbはそれぞれ、1、2または3であり、かつa+b+c=4である)で示されるシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体である。
【0010】
本発明は第2に、上記のシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体からなる、オレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒成分である。
【0011】
本発明は第3に、(A)上記のシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体および(B)アルミノキサンからなる、オレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒である。
【0012】
【発明の実施の形態】
上記式(1)で示されるシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体について述べる。
【0013】
配位子L1 が表すホスフィノアルキルチオラートにおいて、ホスフィノ基のリン原子に結合している水素原子1〜2個が、炭素原子数1〜8個のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、または置換基を有していてもよいフェニル基などで置換されているのが好ましく、特にメチル基で置換されているのが好ましい。また、ホスフィノ基が結合しているアルキル基は、炭素原子数1〜8個の直鎖状または分枝状のアルキル基が好ましく、例えばメチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、2−メチルエチル、n−ブチル等であり、特に炭素原子数2〜3個のアルキル基が好ましい。ホスフィノアルキルチオ基の好ましい具体例としては、例えば2−ジメチルホスフィノエタンチオ基(以下、dmspと称することがある)、2−ジフェニルホスフィノエタンチオ基、2−ジメチルホスフィノプロパンチオ基、2−ジフェニルホスフィノプロパンチオ基、2−ジメチルホスフィノ(1−メチルエタン)チオ基、2−ジメチルホスフィノ(2−メチルエタン)チオ基、2−ジフェニルホスフィノ(1−メチルエタン)チオ基、2−ジフェニルホスフィノ(2−メチルエタン)チオ基等が挙げられる。好ましくは2−ジメチルホスフィノエタンチオ基である。
【0014】
なお、配位子L1 では、S原子がTiに結合しているが、P原子もTiに配位して、環状構造をとることもできる。
【0015】
配位子L2 が置換シクロペンタジエニル基のとき、置換基としては、例えば炭素原子1〜8個、好ましくは1〜4個を有するアルキル基が挙げられる。置換基の種類は同じでも異なっていてもよく、また置換基の数および置換位置は任意である。具体的には、例えばメチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、ジエチルシクロペンタジエニル基、トリエチルシクロペンタジエニル基、テトラエチルシクロペンタジエニル基、ペンタエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、ジプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、ジブチルシクロペンタジエニル基、ペンチルシクロペンタジエニル基、ジペンチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基、ジヘキシルシクロペンタジエニル基、ヘプチルシクロペンタジエニル基、ジヘプチルシクロペンタジエニル基、オクチルシクロペンタジエニル基、ジオクチルシクロペンタジエニル基等が挙げられる。異なる置換基を有する置換シクロペンタジエニル基としては、例えばメチルエチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルヘキシルシクロペンタジエニル基、メチルオクチルシクロペンタジエニル基、エチルプロピルシクロペンタジエニル基、エチルブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルエチルシクロペンタジエニル基、トリメチルエチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルエチルシクロペンタジエニル基、ジメチルプロピルシクロペンタジエニル基、ジメチルブチルシクロペンタジエニル基等が挙げられる。中でも、ペンタメチルシクロペンタジエニル基が好ましい。
【0016】
配位子Xにおいて、ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素が挙げられる。中でも、塩素が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1〜8個のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0017】
好ましい態様は、配位子L2 がシクロペンタジエニル基であり;aが2であり、bが2であり、かつcが0である。
【0018】
別の好ましい態様は、配位子L2 が置換シクロペンタジエニル基(特には、ペンタメチルシクロペンタジエニル基)であり、;aが3であり、bが1であり、cが0である。
【0019】
上記のシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体は、例えばハロゲン含有Ti(IV)錯体、すなわちL2 b TiXc+a を、有機溶媒の存在下で、ホスフィノアルキルチオールの金属塩(チオラート)と反応させることにより製造できる。使用できる有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)、エチルエーテル、ベンゼン等が挙げられる。ホスフィノアルキルチオール金属塩(チオラート)の金属としては、例えばアルカリ金属が挙げられ、好ましくはリチウム、ナトリウムまたはカリウムであり、特に好ましくはリチウムである。ハロゲン含有Ti(IV)錯体とホスフィノアルキルチオール金属塩との反応は、好ましくは −80℃〜50℃の温度で10分間〜20時間行う。ハロゲン含有Ti(IV)錯体とホスフィノアルキルチオール金属塩(チオラート)とは、ハロゲン含有Ti(IV)錯体1モル当たり、ホスフィノアルキルチオール金属塩1〜10モルの割合で使用するのが好ましい。
【0020】
本発明のオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒成分は、上記の新規なシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体からなる。
【0021】
次に、本発明のオレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒は、成分Aとして上記の新規なシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体を含み、かつ成分Bとしてアルミノキサンを含む。
【0022】
成分Bアルミノキサンは、それ自体公知であり、通常、次式(2):
【0023】
【化3】
または、次式(3):
【0024】
【化4】
(上記式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜8の炭化水素基を表す)
で示される。炭化水素基としては、アルキル基、アルキル置換されているまたはされていないフェニル基、フェニル置換アルキル基等が挙げられる。
【0025】
上記したアルミノキサンは、公知の製造方法により製造できる。例えばAlR3 で示される有機アルミニウム化合物と水とを反応させることにより製造できる。このような有機アルミニウム化合物としては、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム等が挙げられ、中でも、特にトリメチルアルミニウムが好ましい。有機アルミニウム化合物と反応させる水は、通常の水の他に、硫酸鉄、硫酸銅等の結晶水を使用することができる。
【0026】
本発明の触媒は、上記した成分A1モル当たり、成分Bを、アルミニウム原子に換算して1〜106 モル、好ましくは10〜104 モル含む。
【0027】
本発明の触媒の調製は、その方法に特に制限はない。例えば各成分を物理的に混合する、適当な溶媒(例えば成分AおよびBの両者に対して不活性な溶媒例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)中で混合する、重合すべき単量体(液体の場合)中で混合する等の方法が使用できる。あるいは、成分Aおよび成分Bを混合せずに、それぞれ別々に重合槽に導入して使用することができる。
【0028】
本発明の触媒は、オレフィン系またはスチレン系単量体を重合するのに使用される。オレフィン系単量体としては、炭素数2〜10個のオレフィンが好ましい。本発明の触媒をオレフィンの重合触媒として使用する場合、オレフィンの単独重合、または異なる2種以上のオレフィンの共重合、あるいはオレフィンと炭素数3〜10個のジオレフィンとの共重合に有効である。本発明の触媒は、特に、エチレンの単独重合、エチレンと炭素数3〜8個のα‐オレフィン(例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1− ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)との共重合(ランダム共重合またはブロック共重合のいずれであってもよい)などに有効に使用できる。
【0029】
また、スチレン系単量体としては、スチレン、スチレン誘導体例えばα‐メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ジメチルスチレン等が挙げられる。本発明の触媒は、これらの単独重合または、2種以上の共重合に使用できる。
【0030】
本発明の触媒は特に、エチレンまたはスチレンの単独重合、およびエチレンとα‐オレフィンとの共重合に使用されるのが好ましい。
【0031】
本発明の触媒をオレフィン系またはスチレン系単量体の重合に使用する際に、重合反応は気相または液相のいずれで行ってもよい。液相で重合させる場合には、不活性炭化水素または液状単量体中で行うことができる。不活性炭化水素としては、例えばブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。重合温度は、通常 −80℃〜 150℃、好ましくは30〜120 ℃である。重合圧力は、例えば1〜60気圧である。また、得られる重合体の分子量を調節するために、重合系に公知の分子量調節剤例えば水素を存在せしめることができる。重合反応は連続式またはバッチ式で行い、その操作条件は慣用の条件でよい。重合反応は1段で行ってもよく、また重合条件を変えたり、使用する単量体の種類を変えたりして2段以上で行ってもよい。
【0032】
【実施例】
以下の実施例により、本発明を具体的に説明する。なお、実施例において、パーセント(%)は、特に断わらない限り重量%である。
【0033】
実施例1
(1) 配位子に使用される2−ジメチルホスフィノエタンチオール(Hdmsp) の合成
(Me)2 PS−SP(Me)2 (ここで、Meはメチル基、以下でも同様)20g(107 ミリモル)と還元鉄36.0g(644 ミリモル)を均一に混合し、フラスコ中で加熱したところ、液状の化合物が生成した。15分間還流を続けた後、蒸留して、透明液体の生成物ジメチルホスフィン[(Me)2 P−P(Me)2 ]12.34 g(101 ミリモル)を得た。収率は94%であった。
【0034】
別のフラスコに、 −78℃にて、ナトリウム4.65g(202 ミリモル)と液体アンモニア200 mlを入れ、30分間撹拌した。ナトリウムを完全に溶解させると、濃青色の溶液が得られた。ここに、上記で得た(Me)2 P−P(Me)2 を滴下して加え、2時間撹拌したところ、溶液の色が黄褐色に変化した。ここに、エチレンスルフィド12.2g(203 ミリモル)を加え、2時間撹拌して、黄色の溶液を得た。さらに、NH4 Cl 12.0g(224 ミリモル)を加え、30分間撹拌し、溶液が完全に白色に変わってから、液体アンモニアを室温で蒸発させた。残留物をエーテル100 mlで抽出した後、不溶物を濾過して除去した。濾液からエーテルを常圧蒸留して除去した後、減圧蒸留により、目的物であるHdmsp (8.91g)を得た(沸点:3mmHgで33〜34℃)。収率は64%であった。
(2) ビス(η5 ‐シクロペンタジエニル)ビス(2−ジメチルホスフィノエタンチオラート)チタニウム(IV)(Cp2 Ti(dmsp)2 と称す)
100 mlのフラスコに、ヘキサン20mlおよび(1) で合成したHdmsp 0.37g (2.9 ミリモル)を入れ、ブチルリチウム(2.9 ミリモル)を撹拌しながら添加した。30分間撹拌を続けた後、溶媒を留去し、2−ジメチルホスフィノエタンチオール(Hdmsp)のLi塩(Lidmspと称する)の白色粉末を得た。この粉末を、氷温下でTHF 15mlに溶解した。これに、別に用意したジクロロジ(η5 ‐シクロペンタジエニル)チタニウム(IV)(Cp2 TiCl2 と称する)(Aldrich 社製) 306 mg(1.23ミリモル)のTHF(45ml)溶液を加えて30分間撹拌したところ、溶液の色が赤色から暗紫色に変わった。さらに1時間常温で撹拌した後、トルエン30mlで抽出した。抽出液を濃縮して固体を得、これをヘキサンで再結晶することにより、Cp2 Ti(dmsp)2 の紫色結晶0.77gを得た。収率は87%であった。 1H‐NMR測定、X線結晶解析等により構造決定したところ、この結晶は、次の構造を有していることが分かった(Meはメチル基を表す、以下でも同様)。
【0035】
【化5】
1H‐NMRのスベクトル分析のチャートを図1に示す。測定装置は、HITACHI R−90HS((株)日立製作所製)であり、測定溶媒は、CDCl3 であった。ピークの帰属を以下の表に示す。
【0036】
【表1】
X線結晶解析の結果を以下に示す。
【0037】
【化6】
(3) エチレンの重合
窒素ガス置換した1リットルのガラス製オートクレーブに、(2) で得られたCp2 Ti(dmsp)2 0.019 ミリモルを入れ、さらに、メチルアルミノキサン(東ソー・アクゾ(株)製)をアルミニウム原子に換算して10ミリモルおよびトルエン500 mlを入れた。この容器に、エチレンガスを1kg/cm2 G となるように供給し、50℃で40分間エチレンの重合を行った。触媒活性は、160 g/ミリモル−Ti ・時間であった。また、生成したポリエチレンの数平均分子量(Mn)は2.75×105 であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.27であった。なお、分子量測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行った。
【0038】
実施例2
窒素ガス置換した1リットルのガラス製オートクレーブに、実施例1の(2) で得られた触媒成分Cp2 Ti(dmsp)2 0.020 ミリモル、メチルアルミノキサン(東ソー・アクゾ(株)製)をアルミニウム原子に換算して10ミリモル、1−オクテン10mlおよびトルエン490 mlを入れた。この容器に、エチレンガスを1kg/cm2 G となるように供給し、50℃で2時間、エチレンと1−オクテンの共重合を行った。触媒活性は、27g/ミリモル−Ti ・時間であった。また、生成した共重合体の数平均分子量(Mn)は1.29×105 であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.03であった。
【0039】
実施例3
窒素ガス置換した1リットルのガラス製オートクレーブに、実施例1の(2) で得られた触媒成分Cp2 Ti(dmsp)2 0.020 ミリモル、メチルアルミノキサン(東ソー・アクゾ(株)製)をアルミニウム原子に換算して10ミリモル、トルエン350 mlおよびスチレン150 mlを入れた。反応溶液を50℃に保ち、2時間重合を行った。触媒活性は8g/ミリモル−Ti ・時間であった。また、生成したポリスチレンの数平均分子量(Mn)は5.96×104 であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.75であった。
【0040】
実施例4
(1) η5 ‐ペンタメチルシクロペンタジエニルトリス(2−ジメチルホスフィノエタンチオラート)チタニウム(IV)(Cp* Ti(dmsp)3 と称す)の合成
100 mlのフラスコに、ヘキサン20mlおよび実施例1の(1) で合成したHdmsp 0.46g(3.8 ミリモル)を入れ、ブチルリチウム(3.8 ミリモル)を撹拌しながら添加した。30分間撹拌を続けた後、溶媒を留去し、2−ジメチルホスフィノエタンチオール(Hdmsp)のLi塩(Lidmspと称する)の白色粉末を得た。この粉末を、氷温下でTHF 15mlに溶解させた。これに、別に用意したトリクロロ (η5 ‐ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(IV)(Cp* TiCl3 と称する)(Organometallics,8,105(1989) に従って合成した。合成の手順を下記に示す。) 0.36g(1.23ミリモル)のTHF(20ml)溶液を加えて30分間撹拌したところ、溶液の色が赤色から暗赤色に変わった。さらに1時間、常温で撹拌した後、トルエン30mlで抽出した。抽出液を濃縮して固体を得、これをヘキサンで再結晶することにより、Cp* Ti(dmsp)3 の紫色結晶0.43gを得た。収率は63%であった。
【0041】
【化7】
(上記式中、Meはメチル基、Cp* はη5 ‐ペンタメチルシクロペンタジエニル基を表す)
1H‐NMR測定、X線結晶解析等により構造決定したところ、この結晶は、次の構造を有していることが分かった。
【0042】
【化8】
1H‐NMRのスベクトル分析のチャートを図2に示す。測定溶媒は、C6 D6 であった。ピークの帰属を以下の表に示す。
【0043】
【表2】
また、X線結晶解析の結果を以下に示す。
【0044】
【化9】
上記において、Ti−S(1) 距離は2.424 オングストローム、Ti−S(3) 距離は2.386 オングストローム、Ti−S(2) 距離は2.338 オングストロームであった。また、Ti−P(1) の距離は2.625 オングストロームであった。
(2) エチレンの重合
Cp2 Ti(dmsp)2 の代わりに、上記(1) で得られたCp* Ti(dmsp)3 を0.020 ミリモル使用した以外は実施例1の(3) と同様にして、エチレンの重合を行った。触媒活性は、49g/ミリモル−Ti ・時間であった。また、生成したポリエチレンの数平均分子量(Mn)は4.3 ×105 であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.65であった。
【0045】
【発明の効果】
本発明の新規な錯体は、触媒に使用すると、オレフィン系またはスチレン系単量体、特にエチレンまたはスチレンの重合を高活性で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で製造したCp2 Ti(Hdmsp)2 の 1H‐NMRスペクトル分析の結果を示すチャートである。
【図2】実施例4で製造したCp* Ti(Hdmsp)3 の 1H‐NMRスペクトル分析の結果を示すチャートである。
Claims (9)
- 前記式(1)において、L2 がシクロペンタジエニル基であり;aが2であり、bが2であり、かつcが0である請求項1記載の錯体。
- 前記式(1)において、L2 が置換シクロペンタジエニル基であり;aが3であり、bが1であり、cが0である請求項1記載の錯体。
- 置換シクロペンタジエニル基が、ペンタメチルシクロペンタジエニル基である請求項3記載の錯体。
- L1 のうち1個の、P原子もTiに配位して、環状構造をとっている請求項3または4記載の錯体。
- 前記式(1)において、L1 が2−ジメチルホスフィノエタンチオ基である請求項1〜5のいずれか1項記載の錯体。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体からなる、オレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒成分。
- (A)請求項1〜6のいずれか1項に記載のシクロペンタジエニルチタニウム(IV)ホスフィノアルキルチオラート錯体および(B)アルミノキサンからなる、オレフィン系またはスチレン系単量体の重合用触媒。
- オレフィン系またはスチレン系単量体が、エチレンまたはスチレンである請求項8記載の触媒。
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