JP3581480B2 - 矯正量検出方法及び歪矯正装置 - Google Patents

矯正量検出方法及び歪矯正装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、棒材、軸材、軌条レール等の金属製長尺材の矯正後の各矯正点における矯正量を求めるとともに、その矯正量に基づいて曲がりを矯正する矯正量検出方法及び歪矯正装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
軌条レールのように規定の真直度を確保する必要のある長尺材を使用する場合、前もって長尺材の真直度を測定しておき、許容値以上に曲がっていれば許容範囲内に矯正してから使用するようにしている。このため、ワーク(長尺材)の曲りを検出する形状測定装置と、この形状測定装置で取得した形状データに基づいて矯正位置及び矯正量を決定する演算装置と、ワークの搬送装置と、プレス装置等を組み合わせて構成した自動歪矯正装置が利用されている。
【0003】
図14は従来の自動歪矯正装置のライン構成を示している。
同図に示すように、前工程から送られてきたレールをストッカ1に入れて、ストッカ1に含まれた搬送ローラ及び横転装置を使ってレールの姿勢及び測定位置を移動させて測定装置2で形状データを採取する。測定装置2から演算装置へレールの形状データを渡し、演算装置で形状データに基づいて矯正位置及び矯正量を求める。演算装置は、プレス装置3を動作させてレールの押込み量と弾性変形量との関係を求め、形状データ、押込み量及び弾性変形量に基づいて矯正位置及び矯正量を求める。矯正位置及び矯正量の算出方法については特願平5−93322に一例が詳述されている。この求めた矯正位置及び矯正量に基づいてプレス装置3を駆動してレールの曲りを矯正する。矯正したレールはコンベア4によって後工程へ流されることになる。
【0004】
図15は図14に示す自動歪矯正装置における動作フローを示している。矯正の必要なレールが入ってくると、レールの曲りに応じた最適な矯正位置及び矯正量を求めるためにレール形状を測定し、矯正位置及び矯正量が算出されるのを待ってプレス矯正を掛けている。
【0005】
ある矯正点について加圧を終了すると、演算した通りに矯正されているかどうか確認するために、実際に変形した量(矯正量)を測定する。
図16(a)〜(d)に矯正量を測定際のプレスの動作工程を示している。初めに押込み量に対する実際の矯正量を把握するため、同図(a)に示すようにプレス3を前進させて3つのプレスヘッド5a〜5cに設けられた近接スイッチ6a〜6cを全部ONさせる(同図(b))。
【0006】
次に、同図(c)に示すようにプレス3を後退させて3つの近接スイッチ6a〜6cのうちのどれか1つがOFFになるところを検出する。この位置はワークに対して無負荷でのチャック位置であり、押込み開始点として求めている。
【0007】
次に、同図(d)に示すように再度プレス3を前進させて所定の押込み量となるまで前進させてワークを変形させる。所定の押込み量が得られたならば、プレス3を後退させて3つの近接スイッチ6a〜6cのうちのどれか1つがOFFになるところを検出する。この検出した位置を終了点として求める。
【0008】
次に、図17に示すように押込み開始点からの押込み量とプレス3を後退させたときのワークの後退量とをプレスヘッドに設けた測定器で測定し、その結果から矯正量を算出する。押込み量から後退量を差し引いた残りが矯正量となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した自動歪矯正装置は、測定装置2が動作しているときにプレス装置3は測定が終わるまで待機し、逆にプレス装置3が動作しているときに測定装置2は矯正後のレール形状を測定するために待機しているので、無駄な待ち時間を生じて矯正終了までに長時間を要していた。
【0010】
また、プレス装置の矯正量を算出するためにプレス装置3の前進及び後退を繰り返さなければならないことから、所定の押込み量に対する矯正量を算出するまでの動作工程が多く、時間が掛かる要因となっていた。
【0011】
また、プレスヘッドに設けられた測定器でワークの各点を矯正する度に各矯正点における矯正量を算出していたので、作業効率が悪く上記同様に時間が掛かる要因となっていた。
【0012】
また、ワークに対するチャッキング位置のばらつき、各近接スイッチの特性誤差によるばらつきのために、数ミクロン〜数十ミクロンの誤差を生じていた。
また、図17に示すように矯正点においてワークはある曲率半径をもって矯正されることになる。一方、図18に示すように形状の曲り変化を3点測定によりとらえていた。したがって、個々の矯正点における押込み量と矯正量との関係は正確にとらえることができても、矯正点におけるワークの曲率半径の影響をとらえることができないため誤差が生じていた。図17に示すように、曲率半径を考慮した場合とそうでない場合とでは、角度が最大でθ′=2θの関係になるほどの誤差を生じてしまうので、ワーク全体に亘って大きな誤差を生じていた。また、矯正後のワーク全体に亘っての形状を正確に予測することも困難となり、矯正精度の低下、矯正作業のやり直しが必要になるなどの不都合があった。
【0013】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、効率良く装置を動作させることにより無駄な待ち時間を無くして矯正時間を短縮、また矯正後のワーク形状の測定結果から許容範囲内に入っているかどうかの判断をすると同時に一括して各矯正点における矯正量を各点における曲率半径の影響を受けずに算出することにより、効率良く精度の高い矯正を加えることを可能にする矯正量検出方法及び歪矯正装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために以下のような手段を講じた。
請求項1に対応する本発明は、矯正後のワークの各矯正点における矯正量を求める矯正量検出方法において、形状測定装置で取得したワークの形状データを演算装置に入力し、ワーク全体に亘っての矯正後の形状測定結果を求めるとともに、該形状測定結果から、各矯正点における目標直線からの距離を、矯正点における曲率半径の影響を受けずに算出し、この算出した距離を、矯正前のワーク形状の測定結果の各矯正点に反映した仮想目標直線を設定し、この仮想目標直線と前記目標直線との関係から、矯正後の各矯正点における実際の矯正量を矯正点における曲率半径の影響を受けずに一括して算出し、ワーク矯正装置への出力値とする方法である
【0015】
本発明によれば、各矯正点における矯正量が矯正点における曲率半径の影響を受けずに一括して算出されるので、精度の高い矯正量を取得できると共に、歪み矯正装置に適用することにより無駄な待ち時間を無くして矯正時間を短縮することができる。
【0016】
請求項2に対応する本発明は、矯正後のワークの各矯正点における矯正量を求める矯正量検出方法において、形状測定装置で取得したワークの形状データを演算装置に入力し、ワークの目標直線と矯正後のワーク形状とから矯正スパン以外の部分での矯正後のワーク形状の目標直線からのずれを求めるともに、この求めたずれに基づいて前記目標曲線を矯正前のワーク形状に反映させた仮想目標直線を設定し、この仮想目標直線と矯正前のワーク形状との関係から矯正後の各矯正点における実際の矯正量を算出し、ワーク矯正装置への出力値とする方法である
【0019】
請求項3に対応する発明は、矯正前のワークから採取したワーク形状データに基づいて当該ワークの歪を許容範囲内に矯正するための矯正点を求め、矯正後の形状シミュレーションを行って各矯正点における矯正量を求め、この求めた矯正量をプレス押し込み量とワークの塑性変形量との関係からプレス制御装置の押し込み量に変換し、この押し込み量と前記矯正点とに基づいてプレス矯正装置を制御することによりワークの歪を矯正する歪矯正装置において、ワークの目標直線と矯正後のワークから採取したワーク形状データとから矯正後のワーク形状の目標直線からのずれを形状変化を起こしていない部分で求める手段と、この手段で求めたずれに基づいて前記目標曲線を矯正前のワーク形状に反映させた仮想目標直線を設定する手段と、この手段で設定した仮想目標直線と矯正前のワーク形状とに基づいて矯正後の各矯正点における実際の矯正量を一括して算出する手段と、この手段で算出された各矯正点の実際の矯正量と前記形状シミュレーションにより求めた対応する各矯正点の矯正量との偏差に基づいてプレス押し込み量とワークの塑性変形量との関係を修正する手段とを備える。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態は、ワークの各矯正点をプレス装置で押し込んだ後の矯正後のワーク形状から各矯正点における矯正量(実際にどれだけ曲がったかを示す量)を求める方法についてのものである。
【0021】
図1(a)(b)を参照して矯正量の算出方法について説明する。
同図(a)において、2点鎖線で示すワーク形状X(k)[n1,n2]、(k=n1 、…i,i+1,n2 )のワークを矯正したとき、矯正後のワークが同図に実線で示すワーク形状X′(k)になったとする。[n1,n2]の区間における矯正点はp(i),p(i+1)である。
【0022】
矯正後のワークは、各矯正点p(i),p(i+1)の矯正スパン内においてある曲率半径にて形状変化を起こしているが、矯正スパン以外では矯正前後で形状変化を起こしていない.。矯正スパン以外の部分は具体的には(P1〜P2とP1〜P2´)、(P3〜P4とP3´〜P4´)、(P5〜P6とP5´〜P6)である。例えば、矯正前ワークのP1からP2までの形状と、矯正後ワークのP1からP2´(P2に対応する)までの形状とは同一形状となる。
【0023】
本発明では矯正スパン以外では矯正前後で形状変化を起こしていないことを利用することにより矯正点の曲率変化に影響を受けないで矯正量を算出するようにしたものである。そのため、矯正スパンの両端部(アンビル位置)に着目し、矯正後のワークの矯正スパンの両端部における目標直線からの変位差をd′(i)、d′′(i)およびd′(i+1)、d′′(i+1)を求める。
【0024】
基準直線からの変位差d′(i)、d′′(i)およびd′(i+1)、d′′(i+1)を矯正前のワーク形状X(k)に反映させて、図1(b)に示すような仮想目標直線を求める。この仮想目標直線を決めるために、矯正点p(i)について、ワーク形状X(k)上の左側アンビル位置から当該位置での変位差d′(i)だけ戻した点(イ)と、ワーク形状X(k)上の左側アンビル位置から当該位置での変位差d′′(i)だけ戻した点(ロ)とを求める。同様に、矯正点p(i+1)について、ワーク形状X(k)上の左側アンビル位置から当該位置での変位差d′(i+1)だけ戻した点(ハ)と、ワーク形状X(k)上の左側アンビル位置から当該位置での変位差d′′(i+1)だけ戻した点(ニ)とを求める。A点とイ点とを結ぶ直線M1を求めると共に、ロ点とハ点とを結ぶ直線M2を求め、ニ点とD点とを結ぶ直線M3を求める。直線M1と直線M2との交点をBとし、直線M2と直線M3との交点をCとしたときの、A−B−C−Dを仮想目標直線とする。A点,B点及びA′点との関係を図2に示す。
【0025】
矯正後のワーク形状X´(k)は、上記仮想目標直線を図1(a)に示した目標直線に一致させることによって求められるので、以下の算出式に基づいて各矯正点p(i),p(i+1)における矯正量を算出する。
【0026】
ここで、ある矯正点p(i)について矯正量D(i)は次式で算出できる。
D(i)=(V(i)×W)÷(4×p(i)) …(1)
但し、
V(i)=X′(i)+[X′(i+1)−X′(i)]÷[p(i+1)−p(i)]
Wは矯正スパンである。
上式では矯正量の符号は下向きを正としている。また、矯正点1点の場合は、p(i+1)=p(n2)とする。
【0027】
また矯正後のワーク形状X′(k)の矯正点p(i)における変位X′(i)は次式によって算出できる。
X′(i)=X(i)−[{X(n2)+(p(n2)−p(i+1))×2×D(i)/(W/2)}×(p(i)−p(n1))/(p(n2)−p(n1))] …(2)
式(1),(2)はレール形状X(k)の矯正点p(i)における変位X(i)を、矯正後の変位X′(i)にするための矯正量D(i)が求められることを示している。
【0028】
この実施の形態によれば、形状変化の生じていない部分(矯正スパン以外)を利用して矯正量を算出するようにしているので、曲率半径をもった形状変化が生じている矯正点(矯正スパン内)の形状変化に影響を受けずに矯正量を算出することができるので矯正量の測定精度を向上することができる。
【0029】
また、ワークの各矯正点を連続して矯正した後に、矯正後のワークの全体形状を測定しておけば、その形状測定データから各矯正点における矯正量を一括して計算で求めることができる。
【0030】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、プレス装置の押し込み量を決定する方法に関するものである。ここで、プレス装置とはワークの歪を矯正するため装置のことである。
【0031】
矯正すべきワークについて、押し込み量と矯正量との関係を実験により求めておき、図3に示すような押し込み量と矯正量との関係を示すデータとして記憶しておく。例えば、ワークのサンプルを使用し、プレス装置で押し込み量を多段階に分けてサンプルをプレスする。各押し込み量を受けてサンプルが実際に曲げられた量(矯正量)を、第1の実施の形態に示した方法によって算出することにより、図3に示す押し込み量と矯正量との関係を示すデータを用意する。
【0032】
実際にワークを矯正する場合は、ワークの形状データと予め設定された目標曲線とを比較して、ワークの目標曲線からのずれ量及び曲率からワーク許容範囲内に矯正するための矯正位置を決定する。
【0033】
上記のようにして決定した矯正位置をプレスすることにより矯正した矯正後の形状をシミュレーションし、目標曲線に対するずれ量の絶対値が最小になるような矯正量を決定する。
【0034】
上記のようにして決定した各矯正量に対応する押し込み量を図3に示す押し込み量と矯正量との関係から求め、上記各矯正位置での押し込み量を決定する。各矯正位置での押し込み量をプレス装置のストローク量に変換して、各矯正位置とストローク量とのをセットにして記憶する。
【0035】
このような実施の形態によれば、押し込み量と矯正量との関係を前もって作成しておくと共に、矯正後の形状をシミュレーションすることによって求めた各矯正位置での矯正量からプレス装置のストローク量を求めるようにしたので、ワークの形状を矯正前に測定してシミュレーションするだけで、以降の処理は連続して実行できるので、一つの矯正点毎に待ち時間が発生していた従来の場合に比べて、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0036】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、図5に示すように、プレス20のプレスヘッド21に荷重計21を設け、ワークWをプレス20で加圧したときの押し込み量と荷重との関係を求め、この関係に基づいて押し込み開始点を求める。
【0037】
矯正すべきワークについて、プレス装置を動作させることにより各押し込み量に対して荷重計21が示す荷重のデータを採取し、図4に示すような押し込み量と荷重との関係を示すデータを記憶する。図4に示すように、ワークは弾性限度内においては押し込み量と荷重の関係は比例または繰り返し性があり、この弾性限度内の荷重であれば、ワークの変形(矯正量)はプレス20の押し込みを除去すればゼロに戻る。
【0038】
したがって、プレス加圧時に弾性限度内の荷重pからすでに押し込んでいる押し込み量xを下記の計算式で求め、この押し込み量xを基にして最終的な所望の押し込み量が得られるまでプレスを加圧する。押し込み量は、図4に示す押し込み量と荷重との関係から求めることができる。
【0039】
x=(dx/dp)・p …(3)
加圧後は、プレス20を待機位置まで後退させる。
このような実施の形態によれば、プレス20のプレスヘッド21に荷重計21を設け、ワークWをプレス20で加圧したときの押し込み量と荷重計21の荷重との関係に基づいて押し込み開始点を求めるようにしたので、プレス20の動作は待機位置から所定の押し込み量まで前進する動作と、また待機位置まで戻る動作の2つの工程だけで良いので、矯正作業の効率化を図ることができる。
【0040】
(第4の実施の形態)
図6に第4の実施の形態に係る歪矯正装置の機能ブロックを示している。
この歪矯正装置は、制御盤20と、ワークを移動させる搬送装置21と、ワークの形状を測定する形状測定装置22と、ワークを加圧して歪を矯正するプレス矯正装置23とを備えている。制御盤20には、搬送装置21、形状測定装置22及びプレス矯正装置23の動作を制御する制御装置24と、後述する各種演算機能を備えた演算部25とを備えている。プレス矯正装置23は図5に示す装置と同様に構成されていて、プレスヘッドに荷重計26を内蔵している。
【0041】
ここで、演算部25がプログラムを実行することにより実現することのできる各種演算機能について説明する。演算部25は、矯正位置推論部31においてワーク形状データに基づいて予め設定された目標曲線からのずれ量および曲率からワーク形状を許容範囲内に矯正するのに最適な矯正位置を決定し、矯正量推論部32において矯正後の形状シミュレーションを行い、目標曲線に対するずれ量の絶対値が最小になるような矯正量を各最適矯正位置について決定する。そして、ストローク量決定部33において各最適矯正位置について求められた矯正量を得るのに必要なプレスの押し込み量となるストローク量を、プレスの押し込み量とワークの塑性変形量(矯正量)との関係から求める。
【0042】
以上のようにして決定した最適矯正位置及びストローク量に基づいて、制御装置24が搬送装置21、形状測定装置22及びプレス矯正装置23の動作を制御してワークを矯正することになるが、矯正後のワーク形状がシミュレーション通りに矯正されているかどうかを確認する必要がある。
【0043】
演算部25の実矯正量一括演算部34において矯正前及び矯正後のワーク形状データに基づいて前述した第1の実施の形態と同じ手法により各矯正位置の実際の矯正量を算出する。学習演算部35は、実矯正量一括演算部34で算出した各矯正位置の実際の矯正量とシミュレーションで求めた矯正量との差から、ストローク量決定部33で使用するプレスの押し込み量とワークの塑性変形量との関係を更新する。
【0044】
押し込み開始位置制御部36は、プレス矯正装置23に備えた荷重計26から荷重値を取り込み、決定した押し込み量にしたがってプレスを制御するために、プレスの押し込み開始点を加圧時の荷重値とプレスのストローク量から決定する。具体的には、第3の実施の同様にして押し込み開始点を決定し、かつプレスの加圧動作を制御する。
【0045】
以上のように構成された実施の形態の動作について説明する。
矯正すべきワークに対する最適矯正位置及び矯正量を決定するまでの処理について図7のフローチャートを参照して説明する。まず、ワークの形状が形状測定装置22により測定されると(ステップS1)、各測定点における測定データは演算装置20に転送される。演算装置20では、曲りが許容範囲外にある測定データが得られた場合に、各測定点について予め設定されている目標直線とのずれ量(Z)と曲率(C)とを算出する(ステップS2、S3)。
【0046】
次いで、矯正位置推論31は、ずれ量(Z)と曲率(C)とを入力として、次に述べるファジイ推論規則に従って矯正位置優先度を推論し、曲りが許容範囲外にある各測定点について、その推論結果を矯正量推論部32に転送する(ステップS4)。
【0047】
ここで、矯正位置優先度のファジイ推論の手法について説明する。ファジイ推論ルールは、if−then形式で表された前件部1fの部分は、図8に示すメンバシップ関数で表されている。図8(a)のメンバシップ関数Saは、横軸が目標直線に対するずれ量を表し、縦軸はずれ量の大きさが「小さい」というファジイラベルにどの程度所属しているかという適合度を表している。同様に、メンバシップ関数Maは、ずれ量の大きさが「中程度」の適合度を、メンバシップ関数Laは、ずれ量の大きさが「大きい」という適合度をそれぞれ与える。図8(b)のメンバシップ関数Sbは、入力の曲率に対して、曲率が「小さい」、メンバシップ関数Mbは「中程度」、メンバシップ関数Lbは「大きい」という適合度をそれぞれ与えるようになっている。図10(a)は、後件部の出力関数で、出力関数Sは、矯正優先度が「低い」ことを表し、出力関数M,Lは、矯正優先度が「中程度」、「高い」ことを表している。
【0048】
図9は、推論ルールをまとめて表に表した図であり、前件部のメンバシップ関数(Sa,Ma,La)、(Sb,Mb,Lb)と後件部の出力関数S,M、Lの対応関係を示している。
【0049】
矯正位置推論部31は、図9の推論条件に従って各測定点ごとに出力関数を得て、図10(b)に示すように、これらの出力関数を合成した斜線で示す図形の重心位置gの横軸に対する位置が矯正位置優先度となり、この矯正位置優先度の最も高い点を優先矯正位置と決定する(ステップS5)。
【0050】
次に、矯正後の形状がどのようになるかについてのシミュレーションを行ない、この優先矯正位置でどんな矯正量をもって矯正しても、すべての他の測定点のずれ量が所望の許容範囲に入っていなければ(ステップS6のNO)、この矯正位置を中心に新たに目標直線を再設定し、上述の計算を繰り返し、他の矯正すべき点を同様に算出していく。このようにしてすべての測定点のずれ量が許容範囲に入れば(ステップS6のYES)、矯正後のシミュレーション形状が始めの目標直線に対して、ずれ量(Z)の最大値の絶対値が最小になるように各矯正位置における矯正量を算出する(ステップS7)。
【0051】
すなわち、矯正量推論部32は、図11(a)、(b)に示すように、ある矯正位置aにおける仮想目標直線と目標直線とのずれ量(Za)と、隣り合う矯正位置bまでの距離(Wa−b)と、矯正位置bにおけるずれ量(Zb)と、アンビルの間隔として定められる矯正スパン(L)とから仮想目標直線が真直となるように矯正量を求める。順次、他の矯正位置についても同様の演算を行ない、各矯正位置における矯正量を求める。そして、矯正後のシミュレーション形状が始めの目標直線に対するずれ量の最大値の絶対値が最小(x)になるように各矯正位置における矯正量を求める。また、矯正量に材料特性を加味して実際のプレス矯正装置23の押し込み量を決定する。
【0052】
こうして求められた矯正位置および矯正量は制御装置24に転送される。このとき、矯正量はストローク量決定部33へ渡され、そこでプレスの押し込み量とワークの塑性変形量(矯正量)との関係にしたがってプレス矯正装置23のストローク量に変換される。このストローク量が制御装置24に矯正量に相当するパラメータとして転送される。
【0053】
制御装置24は、搬送装置21を制御し、ワークの矯正位置をプレス矯正装置23のプレス位置に順次搬送する。ワークの矯正位置がプレス矯正装置23の位置にきたら、制御装置24は、上記処理にて決定したしたストローク量となるようにプレス矯正装置23の所定の押し込み制御を実行する。
【0054】
このとき、押し込み開始位置制御部36により、第3の実施形態と同様にして、押し込み開始点が制御される。すなわち、ワークをプレスで加圧したときの押し込み量と荷重との関係を求めておき、この関係に基づいて押し込み開始点を求める。プレス加圧時に、弾性限度内の所定の力(荷重p)でワークを加圧してクランプし、そのときの荷重値pからすでに押し込んでいる押し込み量xを上記(3)式で求め、この押し込み量xを基にして最終的な所望の押し込み量が得られるまでプレスを加圧する。加圧後はプレスを待機位置まで後退させる。
【0055】
以上のようにしてプレス矯正装置23により矯正処理が施されたワークの形状を形状測定装置22によりワーク全体に亘って測定し、この測定により採取された矯正後のワークの形状データを実矯正量一括算出部25へ与える。実矯正量一括算出部25は、事前に制御装置24から受け取った矯正前のワーク形状データと今回受けとった矯正後のワーク形状データとから矯正点における曲率半径に影響を受けずに実際に曲げられた実矯正量を各矯正点について一括して算出する。実矯正量一括算出部25における実矯正量の算出原理は上記した第1の実施形態と同じ手法を適用するものとする。すなわち、目標直線と矯正後のワーク形状とから矯正スパン以外の部分(第1の実施の形態ではアンビル位置)での矯正後のワーク形状の目標直線からのずれを求め、この求めたずれに基づいて前記目標曲線を矯正前のワーク形状に反映させた仮想目標直線を設定し、この仮想目標直線と矯正前のワーク形状との関係から、(1),(2)式の関係を利用して矯正後の各矯正点における実際の矯正量を算出する。
【0056】
実矯正量一括算出部34で算出された各矯正点における実際の矯正量は学習演算部35へ渡される。学習演算部35は当該ワークについて矯正前にシミュレーションすることにより取得した各矯正点の矯正量と実際の矯正量とを比較して、両者に差があればストローク量決定部33に記憶している押し込み量とワークの塑性変形量との関係を修正する。
【0057】
また、この実施の形態に係る歪矯正装置のライン構成を図12に示し、そのライン構成に基づいた歪矯正装置のタイムチャートを図13に示している。
この歪矯正装置では、搬送装置21によって未加工のレール(ワーク)が送られてくると形状測定装置22においてそのレールの形状を測定し、制御装置24に形状データとして与える。制御装置24には当該形状データに基づいて矯正後の形状をシミュレーションすることにより得た矯正点及び矯正量のデータが入力される。
【0058】
プレス矯正装置23では、加圧対象とするレールのデータ(矯正点及び矯正量)を制御装置24から読み込み、このデータにしたがってレールを加圧し、加圧後のワークをストッカに蓄える。その後、横転装置によってレールの姿勢を変えて再び形状測定装置22においてそのレールの形状を測定し、制御装置24に形状データとして与える。この度は、この形状データに基づいて各矯正点での実際の矯正量が一括して求められて学習されることになる。
【0059】
一方、前記レールがプレス矯正装置23にて加圧されている間に、他のレールが前工程またはストッカから取り出されて形状測定装置22に渡され、そこでレール形状を測定し制御装置24に形状データとして与えられている。形状測定装置22では、搬送装置21によって送られてくるワークの形状を搬送装置21のストッカにストックできる余裕がある限り次々と測定して、制御装置24に形状データとして蓄える。このように、形状測定装置22とプレス矯正装置23とは独立して動作している。
【0060】
このような実施の形態によれば、形状測定装置22とプレス矯正装置23とは独立して動作させ、全矯正点を加圧矯正した後にワーク形状を測定しその形状データ等から一括して実際の矯正を求めるようにしたので、矯正時間を大幅に短縮することができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施可能である。
【0061】
【発明の効果】
以上詳記したように本発明によれば、効率良く装置を動作させることにより無駄な待ち時間を無くして矯正時間を短縮でき、また矯正後のワーク形状の測定結果から許容範囲内に入っているかどうかの判断をすると同時に一括して各矯正点における矯正量を各点における曲率半径の影響を受けずに算出することにより、効率良く精度の高い矯正を加えることのできる矯正量検出方法及び歪矯正装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る矯正量検出方法の原理説明図である。
【図2】第1の実施の形態におけるプレス変位d(i)とA点の変位V(i)との関係を示す図である。
【図3】第2の実施の形態における押し込み量と矯正量との関係を示す図である。
【図4】第3の実施の形態における押し込み量と荷重との関係を示す図である。
【図5】第3の実施の形態におけるプレス矯正装置の構成図である。
【図6】第4の実施の形態における歪矯正装置の機能ブロック図である。
【図7】第4の実施の形態における矯正位置推論部の動作フローを示す図である。
【図8】矯正位置推論部で使用する前件部のメンバーシップ関数を示す図である。
【図9】矯正位置推論部で使用する推論条件を示す図である。
【図10】矯正位置推論部で使用する後件部のメンバーシップ関数を示す図である。
【図11】目標曲線と仮想目標曲線とを示す図である。
【図12】第4の実施の形態のライン構成を示す図である。
【図13】図12に示すライン構成でのタイムチャートを示す図である。
【図14】従来の歪矯正装置のライン構成を示す図である。
【図15】従来の歪矯正装置のタイムチャートを示す図である。
【図16】矯正量を求めるための動作工程を示す図である。
【図17】押し込み量と矯正量と弾性変形量との関係を示す図である。
【図18】矯正点の矯正量の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
20…制御盤
21…搬送装置
22…形状測定装置
23…プレス矯正装置
24…制御装置
25…演算部
26…荷重計
31…矯正位置推論部
32…矯正量推論部
33…ストローク量決定部
34…実矯正量一括演算部
35…学習演算部

Claims (3)

  1. 矯正後のワークの各矯正点における矯正量を求める矯正量検出方法において、
    形状測定装置で取得したワークの形状データを演算装置に入力し、ワーク全体に亘っての矯正後の形状測定結果を求めるとともに、該形状測定結果から、
    各矯正点における目標直線からの距離を、矯正点における曲率半径の影響を受けない位置でのずれから算出し、
    この算出した距離を矯正前のワーク形状の測定結果の各矯正点に反映した仮想目標直線を設定し、
    この仮想目標直線と前記目標直線との関係から、矯正後の各矯正点における実際の矯正量を矯正点における曲率半径の影響を受けずに一括して算出し、ワーク矯正装置への出力値とする
    ことを特徴とする矯正量検出方法。
  2. 矯正後のワークの各矯正点における矯正量を求める矯正量検出方法において、
    形状測定装置で取得したワークの形状データを演算装置に入力し、ワークの目標直線と矯正後のワーク形状とから矯正スパン以外の部分での矯正後のワーク形状の目標直線からのずれを求めるともに
    この求めたずれに基づいて前記目標曲線を矯正前のワーク形状に反映させた仮想目標直線を設定し、
    この仮想目標直線と矯正前のワーク形状との関係から矯正後の各矯正点における実際の矯正量を算出し、ワーク矯正装置への出力値とする
    ことを特徴とする矯正量検出方法。
  3. 矯正前のワークから採取した形状データに基づいて当該ワークの歪を許容範囲内に矯正するための矯正点を求め、矯正後の形状シミュレーションを行って各矯正点における矯正量を求め、この求めた矯正量をプレス押し込み量とワークの塑性変形量との関係からプレス制御装置の押し込み量に変換し、この押し込み量と前記矯正点とに基づいてプレス矯正装置を制御することによりワークの歪を矯正する歪矯正装置において、
    ワークの目標直線と矯正後のワークから採取したワーク形状データとから矯正後のワーク形状の目標直線からのずれを形状変化を起こしていない部分で求める手段と、
    この手段で求めたずれに基づいて前記目標曲線を矯正前のワーク形状に反映させた仮想目標直線を設定する手段と、
    この手段で設定した仮想目標直線と矯正前のワーク形状とに基づいて矯正後の各矯正点における実際の矯正量を一括して算出する手段と、
    この手段で算出された各矯正点の実際の矯正量と前記形状シミュレーションにより求めた対応する各矯正点の矯正量との偏差に基づいてプレス押し込み量とワークの塑性変形量との関係を修正する手段と
    を具備したことを特徴とする歪矯正装置。
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