JP3581166B2 - 超電導磁気浮上式鉄道の走行路 - Google Patents
超電導磁気浮上式鉄道の走行路 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、超電導磁気浮上式鉄道の走行路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の超電導磁気浮上式鉄道の走行路と、この走行路を浮上走行する車両の部分縦断面図の一例を図11に示す。
図11において、走行路30の左側壁24の内側には、略凸字状の凹部が紙面直交方向に、左側壁24の全長に亘って形成され、この凹部の底には、推進コイル26が2分の1ラップで連続して設けられている。この推進コイル26の内側(図11においては右側)には、上下に隣接して設けられた浮上コイル27が、同じく左側壁24の全長に亘って取り付けられている。なお、図示しない右側壁にも、左側壁24と同様に、図示しない推進コイルと浮上コイルが対称的に連続して配設されている。
【0003】
走行路30の底部の左側には、凸部30aが形成され、この凸部30aには、停止中の車両の台車19の下端の走行タイヤ21が示され、この走行タイヤ21の左側面には、L字形のアームの下端に案内輪22が取り付けられ、この案内輪22の左側面は、凸部30aの左側に施設された断面略L字形の左右案内レール23の右側面に当接している。走行路30の底部の図示しない右側にも、対称的に図示しない凸部が形成され、この凸部の上面にも台車19の右側のタイヤが走行し、案内輪や左右案内レールなどが設けられている。
【0004】
台車19の上部には、一対の空気ばね31を介して車両の車体4が搭載され、この車体4の下端左側には、側面タイヤ20が突設され、この側面タイヤ20の外側面は、側壁24の上端内側に形成された案内走行路面25に当接している。車体4の下端右側にも、図示しない側面タイヤ20が対称的に突設され、この側面タイヤ20の外側面は、図示しない右側面の側壁の上端内側に形成された図示しない案内走行路面に当接している。
【0005】
このように構成された超電導磁気浮上式鉄道においては、浮上コイル27と超電導磁石3との間に働く電磁力によって台車19は浮上し、推進コイル26と超電導磁石3との間に働く電磁力によって台車19は走行路30を走行する。このとき、側面タイヤ20を介して車体4は案内走行路面25に案内され、走行タイヤ21は、案内輪22を介して左右案内レール23で案内される。
【0006】
したがって、車両の走行によって側面タイヤ20を介して車両を案内する側壁24は、車両の横揺れに耐えるために、上端において約50cm、基端において約70cmの厚みとなっている。
【0007】
ところで、超電導磁気浮上式鉄道の車両基地では、列車は、走行タイヤ21によって低速で走行するので、推進コイル26は必要であるが、浮上コイル27は不要となる。したがって、側壁24は、車両が浮上走行する走行路30に施設された場合と比べて厚みを減らすことはできる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このように構成された走行路30においては、車両基地の分岐点において、側壁24を上下左右に移動自在としなければならないので、分岐装置が複雑且つ大形となる。また、1本の引き込み線に対して車両の幅と両側壁を加えた幅が必要となるので、車両基地の幅が広くなり、そのため基地面積が広く必要となる。さらに、側壁24のために、分岐点における車両の移動が面倒となる。
【0009】
また、車両基地では、列車が引き出される前に台車回りなどを点検するが、側壁が障害となって、作業性が低下し、点検に時間がかかる。さらに、推進コイル26などを側壁24に固定するための取付には精度を要するので、側壁24への推進コイル26の取付作業には時間がかかり、工期が延びる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、車両基地の工期と面積の増加を抑え、車両の保守・点検を容易に行うことのできる超電導磁気浮上式鉄道の走行路を得ることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、車両に搭載された超電導磁石と協働して上記車両に推進力を作用させる推進コイルを、当該推進コイルの支持体となるパネルの裏面に形成された凹部に複数個収納するとともに、上記複数の推進コイルが収納された上記パネルを、その表面を上に向けた態様で、上記車両の走行路に沿って多数連続的に敷設して形成したことを特徴とする超伝導磁気浮上式鉄道の走行路である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記パネルの表面は、その断面中央付近が最も高い態様の略弧状に形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記パネルは、その敷設方向の第1の端部が厚み方向上半分を残した第1の段付部に形成されるとともに、その敷設方向の第2の端部が厚み方向下半分を残した第2の段付部に形成され、上記パネルを敷設する際には、隣接する一方のパネルの上記第1の段付部と他方のパネルの上記第2の段付部が重ね合わされた態様に連結されることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、前記第1の段付部と第2の段付部には、隣接する前記パネルを連結した状態で、それらのパネルに収納された前記推進コイルの端部を直列的に接続する嵌合部を設けたことを特徴とするものである。
【0018】
【作用】
請求項1に記載の発明においては、走行路に沿って配設された多数のパネルに収納された推進コイルと、車両に搭載されている超電導磁石との間に作用する磁力により、浮力および走行方向への推進力が車両へ作用し、浮上した状態で車両が走行方向へと走行することとなる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明においては、パネルの表面は、その断面中央付近が最も高い態様の略弧状に形成されるので、走行路に沿って敷設されるパネル表面に、雨水や降雪などが留まるような事態を回避することができ、作業員や保守員の安全を確保することができる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明においては、パネルを敷設する際、隣接するパネル間で、一方のパネルの第1の段付部と他方のパネルの第2の段付部を重ね合わせた態様に連結しているので、パネルの連結強度を十分に確保することができ、連結部においてパネルが位置ずれする等の不具合を防ぐことができる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明においては、第1の段付部と第2の段付部には、隣接するパネルを連結した状態で、それらのパネルに収納された前記推進コイルの端部を直列的に接続する嵌合部を設けたので、パネル間の推進コイルの接続作業を簡易に行うことができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の一実施例を図面を参照して説明する。図1は、本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の一実施例を示す部分縦断面図で、従来の技術で示した図11に対応する図である。したがって、図11と同一要素には、同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
図1において、走行路30の凸部30aの外側の床面5には、推進コイル1が図2の斜視図で示す注型成形で製作されたコンクリートパネル2に連続収納された状態で施設されている。
【0026】
コンクリートパネル2の上面は、平坦であるが、下面は、推進コイル1の外形に合わせた環状の凹部が連続して形成され、この環状の凹部の内側には、座ぐり穴付ボルト2aが図2に示すように設けられている。なお、台車19の図示しない左側の下側の図示しない凸部の外側にも、推進コイルが対称的に連続して施設されている。
【0027】
図3は、このうち、台車19の左側面に搭載された超電導磁石3と、走行路30の床面5に連続施設された推進コイル1との間を通過する磁束6の分布状態を示す説明図、図4は、推進コイル1に通電した励磁電流と、推進コイル1及び超電導コイル3間に発生した推進力(Fx)の関係を、推進コイル1と超電導コイル3との水平方向の距離d及び上下方向の高さhを変えて示したグラフ(計算値)である。
【0028】
図4に示すように、推進コイル1と超電導コイル3との水平方向の距離dに対する相互間の推進力(Fx)の関係では、距離dが零のときは、推進力(Fx)も零であり、距離dが離れるに従って推進力(Fx)は増えて、距離dが0.3 〜0.35で最大となり、これを超えると次第に減少する。
【0029】
一方、推進コイル1と超電導コイル3との上下方向の高さhと推進力Fxとの関係では、高さhが減るに従い推進力Fxは増えている。ところが、実際の台車では、今のところ、高さhは、実用化上は0.6mが限界である。
【0030】
このように構成された超電導磁気浮上式鉄道の走行路においては、コンクリートパネルに推進コイル1を取り付けた状態で走行路の30の床面に、この床面5に突設した図示しないスタッドに座ぐり穴付ボルト穴2aを遊嵌させて、座金やナットを介して締め付けることで、床面5に容易に施設することができる。
【0031】
また、床面5に施設された各推進コイル1は、上部がコンクリートパネル2の底面で覆われるので、設置作業員や保守点検員の作業中における損傷を防ぐことができるだけでなく、従来の走行路のように、側壁を立設する必要がなく、例えば、車両基地の内部の作業所で組み立て治具を使って組み立てたものを、作業車などで運搬して順に設置することで、床面に配設することができるので、走行路30の工期を短縮することができる。
【0032】
さらに、各コンクリートパネル2の取付位置の調整作業も、従来のように推進コイル1の重量を支えながら行う必要がないので、位置決め精度を容易に上げることができる。
【0033】
次に、図5(a),(b)は、推進コイル1のコンクリートパネル2への取付方法の一例を示す図である。図5(a),(b)においては、コンクリートパネル2の下面に形成された凹部2bの底面に、めねじ付インサート7を埋設し、推進コイル1の下面に形成した座ぐり穴のボルト穴の下方からボルト8を挿入し、このボルト8の先端をめねじ付インサート7のめねじ穴に螺合させて、推進コイル1を固定する方法である。
【0034】
なお、この作業は、図5とは逆に、コンクリートパネル2は、凹部2bを上向にして、推進コイル1はこの凹部2bが上向きとなったコンクリートパネル2の上方から組込み治具で下ろして行う。作業所の組み立て治具で、コンクリートパネル2の座ぐり穴付ボルト穴2aを基準として推進コイル1を位置決めすることで、この推進コイル1と車両側の超電導コイルとの位置関係を正確に出すことができる。
【0035】
また、図6(a),(b)は、図5で示しためねじ付インサート7の代りに、高張力の六角ボルト9をコンクリートパネル2に埋め込んだ場合を示す。この場合には、推進コイル1は、図示しないばね座金,平座金とナット10を六角ボルト9に挿入し、ボックススパナなどを使って所定のトルクで締め付ける。この場合には、入手性のよい高張力の六角ボルト9をインサートとして使うことで、製作がより容易となる利点がある。
【0036】
図7(a),(b)は、コンクリートパネル2Aの上面を弧状とした場合を示す。図7(a),(b)においては、降雨などがコンクリートパネル2Aの上面に溜ることを防ぐことができ、積雪が溶けたときにもその凍結を防ぐことができるので、作業員や保守員の転倒を防ぐことができる。
【0037】
また、図8は、コンクリートパネル2の接続部を示す図で、各コンクリートパネル2の端部には、段付部を形成し、片側のコンクリートパネルには、この段付部にめねじ付インサート11や六角ボルト13を埋設し、この対向側の段付部には、外側に座ぐり穴を形成したボルト穴を設けて、ボルト12やナット14で接続部を接続したものである。
【0038】
このように、各コンクリートパネルの接続部を連結することで、各推進コイル1と車両側の超電導コイル間に働く電磁力によるコンクリートパネル2の固定力を更に強固にすることができ、電磁力の反力によるこのコンクリートパネルの位置ずれを防ぐことができる。
【0039】
次に、図9及び図10は、走行路に施設されたコンクリートパネル2に対して、簡易接続用の導体15を接続し、各コンクリートパネル2の接続部分の対向面には、凸部と凹部の嵌合部16を形成し、この嵌合部16には導体15の自動連結部を設けて、各コンクリートパネル2の配設と同時に導体15の接続を行った例を示す。
【0040】
また、図10は、各コンクリートパネルに収納した推進コイル1と導体15の接続部を示す。図10においては、導体15の芯線には、帯状で燐青銅板で製作された接触環18が挿着され、導体15の芯線が推進コイル1の凸部に埋設され推進コイル1の導体17に接続された管状の接触環に挿入されると、接触環18を介して通電するようになっている。
【0041】
この場合には、導体15と推進コイル1との接続をワンタッチで行うことができるので、推進コイル1の設置と保守・点検時の交換が容易となる利点がある。車両基地に設置する推進コイルは、定格電圧が低いので、このような自動連結が可能である。ただし、自動連結部は、推進コイル1のと凸部側と導体15の被覆を含めてテーピングして防水処理を施す必要がある。
【0042】
なお、上記実施例においては、複数の推進コイルを片面の凹部に収納するパネルはコンクリート製のときで説明したが、例えば、エポキシ樹脂で成形した樹脂製のパネルとしてもよい。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、車両に搭載された超電導磁石と協働して上記車両に推進力を作用させる推進コイルを、当該推進コイルの支持体となるパネルの裏面に形成された凹部に複数個収納するとともに、上記複数の推進コイルが収納された上記パネルを、その表面を上に向けた態様で、上記車両の走行路に沿って多数連続的に敷設して形成したので、走行路に沿って配設された多数のパネルに収納された推進コイルと、車両に搭載されている超電導磁石との間に作用する磁力により、浮力および走行方向への推進力が車両へ作用し、浮上した状態で車両が走行方向へと走行するという効果を得る。
【0045】
また、請求項2に記載の発明によれば、パネルの表面は、その断面中央付近が最も高い態様の略弧状に形成されるので、走行路に沿って敷設されるパネル表面に、雨水や降雪などが留まるような事態を回避することができ、作業員や保守員の安全を確保することができるという効果を得る。
【0047】
また、請求項3に記載の発明によれば、パネルを敷設する際、隣接するパネル間で、一方のパネルの第1の段付部と他方のパネルの第2の段付部を重ね合わせた態様に連結しているので、パネルの連結強度を十分に確保することができ、連結部においてパネルが位置ずれする等の不具合を防ぐことができるという効果を得る。
【0048】
また、請求項4に記載の発明によれば、第1の段付部と第2の段付部には、隣接するパネルを連結した状態で、それらのパネルに収納された前記推進コイルの端部を直列的に接続する嵌合部を設けたので、パネル間の推進コイルの接続作業を簡易に行うことができるという効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超電導磁気浮上式鉄道の一実施例を示す部分縦断面図。
【図2】図1の要部を示す斜視図。
【図3】本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の作用を示す部分縦断面図。
【図4】本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の作用を示すグラフ。
【図5】本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の他の実施例を示す図で、(a)は部分平面図、(b)は(a)の前面図。
【図6】本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の異なる他の実施例を示す図で、(a)は部分平面図、(b)は、(a)の前面図。
【図7】本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の更に異なる他の実施例を示す図で、(a)は、部分斜視図、(b)は、(a)の左側面図。
【図8】(a)は、本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の更に異なる他の実施例を示す部分側面図、(b)は、本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の更に異なる他の実施例を示す部分側面図。
【図9】本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の更に異なる他の実施例を示す部分平面図。
【図10】本発明の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の更に異なる他の実施例を示す部分詳細図。
【図11】従来の超電導磁気浮上式鉄道の走行路の一例を示す部分縦断面図。
【符号の説明】
1…推進コイル、2…コンクリートパネル、3…超電導磁石、4…車両、5…床面、6…磁束、7,11…インサート、8,12…ボルト、9…六角ボルト、10,14…ナット、15,17…導体、16…嵌合部、18…接触環、19…台車。
Claims (4)
- 車両に搭載された超電導磁石と協働して上記車両に推進力を作用させる推進コイルを、当該推進コイルの支持体となるパネルの裏面に形成された凹部に複数個収納するとともに、上記複数の推進コイルが収納された上記パネルを、その表面を上に向けた態様で、上記車両の走行路に沿って多数連続的に敷設して形成したことを特徴とする超伝導磁気浮上式鉄道の走行路。
- 前記パネルの表面は、その断面中央付近が最も高い態様の略弧状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の超伝導磁気浮上式鉄道の走行路。
- 前記パネルは、その敷設方向の第1の端部が厚み方向上半分を残した第1の段付部に形成されるとともに、その敷設方向の第2の端部が厚み方向下半分を残した第2の段付部に形成され、
上記パネルを敷設する際には、隣接する一方のパネルの上記第1の段付部と他方のパネルの上記第2の段付部が重ね合わされた態様に連結されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の超伝導磁気浮上式鉄道の走行路。 - 前記第1の段付部と第2の段付部には、隣接する前記パネルを連結した状態で、それらのパネルに収納された前記推進コイルの端部を直列的に接続する嵌合部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載の超伝導磁気浮上式鉄道の走行路。
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