JP3580883B2 - マルチキャリヤ伝送方法及びマルチキャリヤ伝送システム - Google Patents
マルチキャリヤ伝送方法及びマルチキャリヤ伝送システム Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、多数のキャリアを用いて信号を伝送するマルチキャリヤ伝送方法及びマルチキャリヤ伝送システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディジタル伝送方式の一つとしてマルチキャリア伝送方式が注目されている。マルチキャリア伝送方式は、互いに直交する多数の搬送波(キャリア)を用いて信号を伝送する方式であって、1キャリア当りの信号速度が遅く、帯域幅が狭くなるため、マルチパス等に強いという特徴を有する。
【0003】
マルチキャリア伝送方式の詳細については、例えば「Bingham,J.A.C., “Multicarrier Modulation for Data Transmission: An Idea Whose Time Has Come”,IEEE Commu.Mag.,vol.28,no.5,pp.5−14,May 1990 」に記載されている。
【0004】
図4はこのようなマルチキャリア伝送方式を実現するシステム構成例である。同図に示すように、送信装置では、1ブロック(ブロック長N)の情報データを直列/並列変換器1により並列データに変換し、各データを変調器2により例えばPSKやQAM変調し、逆離散フーリエ変換器(IDFT)3により送信信号ブロックを生成する。逆離散フーリエ変換器3は、周波数軸上の信号を時間軸上に変換するため、等周波数間隔に並んだN個のキャリアを合成した信号を生成する。そして、送信信号ブロックをD/A変換器4によりアナログ信号に変換し、フィルタ5により不要な周波数成分を除去した後、周波数変換器6により無線周波数帯に変換した後、電波として空中線7から送信する。
【0005】
受信装置では、空中線8から受信した電波を周波数変換器9によりベースバンド帯域に変換し、フィルタ10により不要な周波数成分を除去した後、A/D変換器11によりディジタル信号に変換する。そして、変換されたディジタル信号をブロック毎に離散フーリエ変換器(DFT)12により等周波数間隔に分離し、各信号を各々復調器13により復調した後、並列/直列変換器14により直列に変換して情報データを再生する。
【0006】
なお、送信信号は多数のキャリアが加算された雑音上の信号であるが、各キャリアに関しては、変調された正弦波となる。
【0007】
ところで、このようなマルチキャリア伝送方式では、1ブロックあたりのデータ数、すなわち送信信号の分割数を増加するほど、言い換えるとキャリア数を増加するほど、各キャリア当りの信号速度が遅くなり、各キャリア当りの帯域幅が狭くなるため、フェージングなどによる歪みを軽減することができ、複雑な等化器が不要となる。
【0008】
ところが、送信信号の分割数を増加するほど、すなわちキャリア数が増加するほど、図5(a)に示すように合成される正弦波の数が増加するため、加算されて各々の正弦波の位相が一致した場合には、図5(b)に示すように一時的に非常に大きなレベルに達する場合がある。そのため、図4の例でいえば、A/D変換器11では非常に大きなダイナミックレンジが必要となってしまう。よって、A/D変換器11の入力ダイナミックレンジを大きくし、入力レベルがダイナミックレンジを越えることをできるだけ回避するか、あるいは誤り訂正符号を用いてダイナミックレンジを越えることにより生じる復号データ誤りを少なくする必要があった。誤り訂正符号を用いる場合、冗長ビットを付加する必要があるため、伝送効率が劣化するという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、従来のマルチキャリア伝送方式では、キャリア数が増加するほど、一時的に非常に大きなレベルに達する場合があるため、受信側のA/D変換器では非常に大きなダイナミックレンジが必要となり、ダイナミックレンジの制限や誤り訂正符号の使用の必要があった。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するもので、マルチキャリヤにより伝送される合成信号の振幅振動を小さくし、受信側のA/D変換器のダイナミックレンジを小さく抑えることができるマルチキャリヤ伝送方法及びマルチキャリヤ伝送システムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明のマルチキャリア伝送方法は、伝送路の特性を判定し、判定された前記伝送路の特性の悪化に伴って分割数が増加するよう、分割数の増加に伴って帯域幅が狭くなるキャリアの分割数を決定し、送信信号をブロック単位の送信データとして該ブロック単位の送信データを前記キャリアの分割数と同一の分割数に分割し、該分割された送信データをマルチキャリアにより送信し、マルチキャリアにより送信された送信データを受信して前記送信信号を再生するものである。
【0012】
本発明のマルチキャリア伝送システムは、送信信号をブロック単位の送信データとして該ブロック単位の送信データを複数に分割する直列/並列変換手段と、前記分割された送信データを逆直交変換する逆直交変換手段とを備えた送信装置と、前記送信装置から受信した受信信号を直交変換する直交変換手段と、直交変換された受信信号を直列信号に再生する並列/直列変換手段とを備えた受信装置とを具備するマルチキャリア伝送システムであって、前記送信装置または前記受信装置のうちいずれか一方は、伝送路の特性を判定する判定手段と、判定された前記伝送路の特性の悪化に伴って分割数が増加するよう、分割数の増加に伴って帯域幅が狭くなるキャリアの分割数を決定する分割数決定手段とを有し、前記分割数決定手段によって決定された分割数に基づいて前記直列/並列変換手段及び前記逆直交変換手段の分割数を変更している。
【0013】
その一つの態様として上記判定手段は、直交変換手段により直交変換された各受信信号のスペクトルのレベルに基づき伝送路の特性を判定するようにしてもよい。また、別の態様として上記判定手段は、復調された受信信号の品質評価を行い、品質評価結果に基づき伝送路の特性を判定するようにしてもよい。さらに、別の態様として上記判定手段は、前記ブロック単位の1ブロックもしくは複数ブロック区間の観測結果の平均値、ブロック毎に重み付けを変えた評価関数を用いた複数ブロック区間の観測結果の平均値、ピーク値またはこれらの評価値を複数用いて伝送路の特性を判定するようにしてもよい。
【0014】
【作用】
本発明では、伝送路の特性を判定し、判定された伝送路の特性に応じた数により送信信号の分割している。より具体的には、伝送路が劣悪な場合には送信信号の分割数を増加して、フェージングなどによる歪みを軽減する。一方、伝送路が良好な場合には、送信信号の分割数を減少して合成信号の振幅変動を小さくする。従って、フェージングなどによる歪みを軽減することができ、複雑な等化器が不要となり、しかもマルチキャリヤにより伝送される合成信号の振幅振動を小さくし、受信側のA/D変換器のダイナミックレンジを小さく抑えることができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例の詳細を図面に基づき説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施例に係るマルチキャリア伝送システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
同図(a)は送信装置の構成、同図(b)は受信装置の構成を示している。送信装置において、15は1ブロック(ブロック長N)の直列の送信データを並列データに変換する、すなわち送信データをN個に分割する直列/並列変換器である。16はN個に分割された各データを例えばPSKやQAM変調する変調器、17は送信信号ブロックを生成する逆離散フーリエ変換器(IDFT)である。この逆離散フーリエ変換器17は、周波数軸上の信号を時間軸上に変換するため、等周波数間隔に並んだN個のキャリアを合成した信号を生成する。18は逆離散フーリエ変換器17により生成された送信信号ブロックをアナログ信号に変換するD/A変換器、19はアナログ信号に変換された送信信号ブロックから不要な周波数成分を除去するフィルタ、20は送信信号ブロックを無線周波数帯に変換する周波数変換器、21は空中線である。また、22は後述する受信装置の伝送路判定器からの情報に応じて、分割すべき送信データの分割数(N)を決定するブロック分割数決定部である。直列/並列変換器15や逆離散フーリエ変換器17のブロック分割数は、このブロック分割数決定部22により決定された分割数に変更されるようになっている。また、必要に応じてブロック分割数決定部22で決定された分割数は、受信装置に伝達される。
【0018】
また、受信装置において、23は空中線、24は空中線23から受信した電波をベースバンド帯域に変換する周波数変換器、25は不要な周波数成分を除去するフィルタ、26はアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器である。27はA/D変換器により変換されたディジタル信号をブロック毎に等周波数間隔に分離する離散フーリエ変換器(DFT)、28は各信号を各々復調する復調器、29は復調された並列の各受信データを直列の受信データに変換する並列/直列変換器である。また、30は伝送路の特性を判定する伝送路判定器である。
【0019】
ここで、図2はあるブロックにおける送信信号(a)と受信信号(b)の周波数スペクトルであり、(b)は周波数選択性フェージングによって各スペクトルのレベルに変化が現れる様子を示している。上記伝送路判定器30は、離散フーリエ変換器27により図2のように等周波数間隔に分解された各々の信号レベルを観測し、伝送路の周波数選択性から伝送路の状態を判定する機能と、復調器28で復調した結果を誤り検出して伝送路の状態を判定する機能とを有する。
【0020】
図3にこのような伝送路判定器30の一例を示す。
【0021】
同図に示す伝送路判定器30は、誤り検出器31、レベル変動検出器32および評価/判定部33から構成される。誤り検出器31は、復調器28の復調データの誤りを所定の時間(例えば1ブロック)毎に検出し、そこでの誤り率を評価/判定部33に送る。誤り検出には、例えばCRC(cyclic redund ancy code)のような誤り検出符号を用いればよい。レベル変動検出器32は、図2(b)に示したように等周波数間隔に分解された離散フーリエ変換器27の出力を所定の時間(例えば1ブロック)観測し、そこでのスペクトルの変動を求めて周波数選択性を判断し、その情報を評価/判定部33に送る。スペクトルの変動は、例えば各周波数成分の分散(各スペクトル成分のばらつき)と定義する。評価/判定部33は、上記誤り率と周波数選択性の情報から伝送路特性の判定を行う。伝送路特性の判定としては、例えば良い、悪いの2値判断を行う。この評価/判定部33は、誤り率に関し1ブロックあるいは複数ブロック区間の観測結果の平均値を求める平均処理部34と、誤り率に関し複数ブロック内でのピーク値を求めるピーク検出部35と、周波数選択性に関し1ブロックあるいは複数ブロック区間の観測結果の平均値を求める平均処理部36と、周波数選択性に関し複数ブロック内でのピーク値を求めるピーク検出部37と、これら各部の算出結果に基づき伝送路特性の判定を行う判定部38とを備える。なお、平均値の算出の際には、ブロック毎に重み付けを変えた評価関数を用いてもよい。
【0022】
伝送路判定器30による判定結果である伝送路情報は、送信装置に伝達される。伝達の方法としては、双方向通信の場合には逆方向の通信を用い、すなわち図1の受信装置側の送信装置(図示を省略)を用い、制御チャネルを使って送信装置に伝送路情報を伝達する。ここで、伝送路情報として、伝送路状態が良好、伝送路状態が悪いの2種類あるとすると、送信装置におけるブロック分割数決定部22は、伝送路状態が良好との伝送路情報を伝達されると分割すべき送信データの分割数(N)を減少するよう決定し、伝送路状態が悪いとの伝送路情報を伝達されると分割すべき送信データの分割数(N)を増加するよう決定する。
【0023】
伝送路判定器30による判定結果である伝送路情報は、離散フーリエ変換器27および並列/直列変換器29に伝達される。離散フーリエ変換器27および並列/直列変換器29は、受信の際にも伝送路情報が必要だからである。
【0024】
かくして、本実施例システムでは、伝送路判定器30により伝送路の特性を判定し、伝送路が劣悪な場合には送信信号の分割数を増加してフェージングなどによる歪みを軽減し、伝送路が良好な場合には送信信号の分割数を減少して合成信号の振幅変動を小さくしているので、フェージングなどによる歪みを軽減することができ、複雑な等化器が不要となり、しかもマルチキャリヤにより伝送される合成信号の振幅振動を小さくし、受信側のA/D変換器11のダイナミックレンジを小さく抑えることができる。
【0025】
なお、本発明は上述した実施例に限定されない。
【0026】
例えば、図3に示した伝送路判定器30における評価/判定部33は、平均処理部34〜ピーク検出部37の算出結果に基づき伝送路特性の判定を行っていたが、平均処理部34〜ピーク検出部37のうち少なくとも1つの算出結果に基づき伝送路特性の判定を行うようにしてもよい。
【0027】
また、誤り率と周波数選択性から伝送路特性の判定を行っていたが、これ以外にも音質、画質あるいはブロックのタイミングジッタあるいはそれらの組み合わせによって伝送路特性の判定を行ってもよい。
【0028】
さらに、ブロック分割数決定部22が送信装置側に設けられていたが、これを受信装置側に設けてもよい。
【0029】
また、伝送路判定器30による判定結果である伝送路情報は、伝送路判定器30から直接離散フーリエ変換器27および並列/直列変換器29に伝達していたが、送信装置のブロック分割数決定部22から、例えば制御チャネルで伝えてもよい。
【0030】
さらにまた、伝送路状態を良、悪の2通りのみに限定する必要はなく、多くの場合分けに対して、多くの分割数を対応させることができる。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、フェージングなどによる歪みを軽減することができ、複雑な等化器が不要となり、しかもマルチキャリヤにより伝送される合成信号の振幅振動を小さくし、受信側のA/D変換器のダイナミックレンジを小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るマルチキャリア伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】マルチキャリア伝送の周波数スペクトルを示す図である。
【図3】図1に示した伝送路判定器の構成を示すブロック図である。
【図4】従来のマルチキャリア伝送システムの構成を示すブロック図である。
【図5】マルチキャリア伝送の送信波形である。
【符号の説明】
15………直列/並列変換器
16………変調器
17………逆離散フーリエ変換器(IDFT)
18………D/A変換器
19………フィルタ
20………周波数変換器
22………ブロック分割数決定部
24………周波数変換器
25………フィルタ
26………A/D変換器
27………離散フーリエ変換器(DFT)
28………復調器
29………並列/直列変換器
30………伝送路判定器
Claims (5)
- 伝送路の特性を判定するステップと、
判定された前記伝送路の特性の悪化に伴って分割数が増加するよう、分割数の増加に伴って帯域幅が狭くなるキャリアの分割数を決定するステップと、
送信信号をブロック単位の送信データとして該ブロック単位の送信データを前記キャリアの分割数と同一の分割数に分割し、該分割された送信データをマルチキャリアにより送信するステップと、
マルチキャリアにより送信された送信データを受信して前記送信信号を再生するステップと
を具備したことを特徴とするマルチキャリア伝送方法。 - 送信信号をブロック単位の送信データとして該ブロック単位の送信データを複数に分割する直列/並列変換手段と、前記分割された送信データを逆直交変換する逆直交変換手段とを備えた送信装置と、
前記送信装置から受信した受信信号を直交変換する直交変換手段と、直交変換された受信信号を直列信号に再生する並列/直列変換手段とを備えた受信装置と
を具備するマルチキャリア伝送システムであって、
前記送信装置または前記受信装置のうちいずれか一方は、
伝送路の特性を判定する判定手段と、
判定された前記伝送路の特性の悪化に伴って分割数が増加するよう、分割数の増加に伴って帯域幅が狭くなるキャリアの分割数を決定する分割数決定手段とを有し、前記分割数決定手段によって決定された分割数に基づいて前記直列/並列変換手段及び前記逆直交変換手段の分割数を変更することを特徴とするマルチキャリア伝送システム。 - 前記判定手段は、直交変換手段により直交変換された各受信信号のスペクトルレベルに基づき前記伝送路の特性を判定することを特徴とする請求項2記載のマルチキャリア伝送システム。
- 前記判定手段は、復調された受信信号の品質評価を行い、品質評価結果に基づき前記伝送路の特性を判定することを特徴とする請求項2記載のマルチキャリア伝送システム。
- 前記判定手段は、前記ブロック単位の1ブロックもしくは複数ブロック区間の観測結果の平均値、ブロック毎に重み付けを変えた評価関数を用いた複数ブロック区間の観測結果の平均値、ピーク値またはこれらの評価値を複数用いて前記伝送路の特性を判定することを特徴とする請求項2記載のマルチキャリア伝送システム。
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