JP3580073B2 - 抗菌性樹脂組成物及びそれを用いた抗菌性樹脂成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌性樹脂組成物および該組成物を用いて得られる成形品に関する。さらに詳しくは、合成樹脂に平均粒子径200μm以下の微粉末状ε−ポリリジンもしくは微粉末状ε−ポリリジン塩(以下、総称して微粉状εPLもしくは簡略してεPLという。)を含有させた抗菌性樹脂組成物および該組成物を用いて得られる成形品に関する。
【0002】
【背景技術】
我々の生活空間には、様々な細菌やカビが存在している。これらの微生物は、しばしば食物を腐敗させたり、悪臭発生の原因となったりして我々に不快感を与える。また、人体に対して、食中毒を初めとする様々な疾病や白癬等の皮膚障害を引き起こす原因となったり、時としては抵抗力の弱い乳幼児や高齢者の生命を奪うことさえある。衛生的で快適な生活を送るために微生物増殖抑制は重要な課題であり、我々の身の回りの様々な医療用品、生活用品、衣料品等に抗菌機能の付加が望まれている。
【0003】
医療用品、生活用品、衣料品等の材料には、軽くて強く、そして目的に合わせて自由に成形できる合成樹脂が好んで使用されている。しかしながら、ほとんどの合成樹脂は、それ単独では抗菌機能を有さないものである。このため、昨今においては、合成樹脂成形品に抗菌機能を付与させる種々の研究が行われている。
【0004】
抗菌性のある合成樹脂成形品(以下、抗菌性樹脂成形品と統一する。)を得るための方法として、特開昭54−147220号公報等には、合成樹脂に対し、銀、銅、亜鉛等の金属を含む化合物を添加する方法が、特開昭59−133235号公報等には、合成樹脂に対し、銀イオン、銅イオンでイオン交換したゼオライト系の固体粒子を添加する方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法で得られる抗菌性樹脂成形品は、用いている金属化合物の作用によって変色してしまい、該樹脂成形品の外観および商品価値を損ねるという欠点を有している。また、塩素イオンの存在下では、銀イオン、銅イオン等の金属イオンが塩素イオンと塩化物を形成してしまうため、十分な抗菌性能が得られなくなる。その上、該樹脂成形品は、使用する用途によっては人体、特に皮膚の弱い乳幼児やアレルギー体質の人々に対して皮膚障害を起こす原因となる。
【0005】
これに対し、人体への安全性が高い抗菌性天然物を合成樹脂に添加する方法がある。これらの抗菌性天然物としては、カラシやワサビから抽出されるイソチオシアン酸アリル、鮭、鱒等の成熟精巣から抽出されるプロタミンおよびストレプトマイセス属に属する微生物から得られるεPL等を挙げることができる。
しかし、イソチオシアン酸アリルの沸点は、成形時に揮発してしまいやすいので、抗菌性樹脂成形品に十分な抗菌性能を保有させるには、多量に用いなければならないという欠点を有している。また、プロタミンは、蛋白質であるため熱に弱く、合成樹脂の成形に耐えることができない。さらに、εPLは、親水性物質であることから、合成樹脂との相溶性が悪く、成形時に合成樹脂内で二次凝集を起こし易く、均一分散し難いので、得られる樹脂成形品の外観を損ねたり、十分な抗菌効果が得られないという欠点を有している。
また、油性塗料および印刷インキ等へεPLを用いると、εPLが塗料内で均一に分散せず、塗料およびインキが正常に乾燥しないばかりか、得られる塗膜および印刷物は、塗料の発色が阻害されたり、美しい塗装外観および印刷外観が得られないという外観不良を起こす。
【0006】
そのため、通常は、これらの抗菌性天然物を溶媒に溶かし、樹脂成形品に表面塗布することで、抗菌性樹脂成形品を得るという方法が用いられている。
しかしながら、このような抗菌性樹脂成形品は、耐洗浄性が欠如しており、長期間にわたって使用される耐久消費材や、繰り返し洗浄される食器等の生活用品、衣料品等への本格的な利用は困難である。また、イソチオシアン酸アリルにはカラシ、ワサビ独特の刺激臭があるため、成形品にその臭気が付着してしまうという問題点を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記問題点に鑑み、得られる成形品の外観を良好に保もち、少ない添加量で良好な抗菌性を得ることができ、該成形品を洗浄しても抗菌持続力を低下させることのない抗菌性樹脂組成物および抗菌性樹脂成形品を得るべく鋭意検討した結果、合成樹脂に平均粒子径200μm以下の微粉状のεPLを含有させた抗菌性樹脂組成物を得、これを用いて抗菌性樹脂成形品を成形すると、該成形品内でのεPLの分散特性と、該成形品内に含有されているεPLの溶出性能とが著しく改善されることを見い出し、本発明を完成するに至った。
以上の記述から明らかなように、本発明の目的は、人体に対する毒性が極めて低く、少ない添加量で良好な抗菌性をえることができ、得られる成形品の外観を良好に保もち、少ない添加量で良好な抗菌性を得ることができ、成形品を洗浄しても抗菌持続力を低下させることのない抗菌性樹脂組成物および該組成物によって得られる医療衛生材、食器類、生活関連材、自動車内装材、家庭用電化製品、フィルム、シートおよび繊維等の抗菌性樹脂成形品を提供するものである。
【0008】
【課題を解決する為の手段】
本発明の抗菌性樹脂組成物および抗菌性樹脂成形品は、平均粒子径200μm以下の微粉状εPLを用いることにより容易に得ることができる。
すなわち、本発明は下記の(1)〜(4)の構成を有する。
(1)合成樹脂に平均粒子径200μm以下の微粉末状εPLを含有させた抗菌性樹脂組成物。
(2)微粉末状εPLの平均粒子径が50μm以下である前記第(1)項記載の抗菌性樹脂組成物。
(3)前記第(1)項記載の抗菌性樹脂組成物を用いて得られる抗菌性樹脂成形品。
(4)前記第(2)項記載の抗菌性樹脂組成物を用いて得られる抗菌性樹脂成形品。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の1つは、合成樹脂に平均粒子径200μm以下の微粉状εPLを含有させた抗菌性樹脂組成物である。
本発明で用いるεPLは、例えば特開昭59−20359号公報に記載のε−ポリリジン生産菌である、ストレプトマイセス属に属するストレプトマイセス・アルプラス・サブスピーシーズ・リジノポリメラスを培地に培養し、得られた培養物からεPLを分離、採取することによって得られる。該εPLは厚生省の化学的合成以外食品添加物のリストにも記載されている物質であり、食品保存料等に利用されている。
【0010】
本発明にあっては、εPLは、遊離の形(以下、遊離物という。)で用いても、無機酸もしくは有機酸との塩の形(以下、総称して塩という。)で用いてもどちらでも良い。いずれの形であっても、抗菌効果には本質的な差はでないが、εPL遊離物よりεPL塩の方が熱安定性に優れているので、230℃以上の加工温度で成形加工される用途では、εPL塩を使用するのが好ましい。
εPL塩としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸もしくは酢酸、プロピオン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、アジピン酸、グルコン酸等の有機酸の塩ならびにカプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の中鎖及び長鎖の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸等の中鎖及び長鎖の不飽和脂肪酸の塩を挙げることができる。
【0011】
本発明においては、平均粒子径が200μm以下の微粉状εPLを用いなければならない。平均粒子径が200μmを越えるεPLを用いると、合成樹脂と該εPLとを主成分とする抗菌性合成樹脂組成物を成形して得られる成形品内での該εPLの分散性が著しく低下するからである。反面、微粉状εPLの粒径が小さくなればなる程、成形品内での分散性は向上するため、本発明では、好ましくは平均粒子径0.1〜100μm、より好ましくは平均粒子径1〜50μmの微粉状εPLを用いると良い。
微粉状εPLは、乳鉢、各種ミルまたは粉砕装置等の既存の粉砕装置を用いることにより容易に得ることができる。この時、本発明の効果を充分に発現させるために、粉砕された微粉状εPLをふるいに通過させ、該微粉状εPLの粒径を整えると良い。
【0012】
本発明で用いる合成樹脂としては、ポリプロピレン及びプロピレンと他のα−オレフィンとの二元もしくは三元共重合体、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ゴム共重合体、スチレン−ブタジエン−ゴム共重合体等の熱可塑性エラストマー及びこれらの混合物や不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0013】
本発明の抗菌性樹脂組成物においては、塗料およびインキを含み、それらに用いられる合成樹脂として、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン−アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂およびフッ素樹脂を挙げることができる。また、合成樹脂とは言えないが、塗料およびインキに用いる際、実質的に合成樹脂と同等の作用となる漆、ボイル油、油性ワニスおよび油性エナメル等も本発明にかかる合成樹脂に包含する。
【0014】
本発明の抗菌性樹脂組成物は、合成樹脂と平均粒子径200μm以下の微粉状εPLとが主成分として均一混合されていれば、その製造方法は特に限定されるものではない。
また、εPLの配合量についても特に限定はないが、抗菌性樹脂組成物中のεPLの含有率が、0.001〜10重量%であることが好ましく、0.01〜5重量%がより好ましい。0.001重量%未満では十分な抗菌効果を得難く、5重量%を越えると、抗菌性がほぼ飽和状態に達するため、これ以上の配合はコスト高を招くだけではなく、成形品の外観、機械的物性の低下を招く恐れもある。
【0015】
本発明の抗菌性樹脂組成物には、通常合成樹脂に広く使用されている各種添加剤が配合されていても良い。
各種添加剤には、耐熱安定性、耐熱劣化防止性、耐熱性付加のための熱安定剤、耐候性付加のための耐候剤、耐光性付加のための耐光剤、機能性付加のための各種安定剤、中和剤、添加剤、界面活性剤、有機系もしくは無機系の顔料、成形品の機械強度の向上および機能性付与のための有機系もしくは無機系のフィラーを挙げることができる。また、場合によっては、εPLの抗菌性を増すために抗菌助長物質を用いても良い。
【0016】
また、εPLを塗料およびインキに配合する方法としては、εPLが均一に分散されるならば、塗料およびインキにεPLを直接添加しても、トルエン、酢酸エチルおよびアルコール類等の適当な溶媒にεPLを縣濁したのち、該溶媒を塗料およびインキに加えてもよい。
【0017】
本発明のもう1つは、合成樹脂に平均粒子径200μm以下の微粉状εPLを含有させた抗菌性樹脂組成物を用いて得られる成形品である。
この様な成形品を得るための製造方法は、抗菌性樹脂組成物に使用されている合成樹脂の種類によって、さまざまな製造方法を用いることができるが大別して、熱可塑性樹脂を成形するための一般的な方法である押出機、ロール等の加熱混練成形および熱硬化性樹脂を成形するための一般的な方法である圧縮成型、射出成形等を挙げることができる。
本発明の成形品は、合成樹脂に平均粒子径200μm以下の微粉状εPLを含有させた抗菌性樹脂組成物を成形機器によって成形して得ても良く、該εPLを含有しない合成樹脂組成物を成形機器によって成形する時に、該εPLを添加し、成形機器内もしくは成形機器上で両者を混合して得ても良い。
【0018】
また、平均粒子径200μm以下の微粉状εPLとを合成樹脂に高濃度に添加したマスターバッチを予め調整し、該マスターバッチをεPLを含有しない合成樹脂組成物に添加・混合して、本発明の抗菌性樹脂組成物を得ても良い。
【0019】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるべきものではない。尚、以下の実施例における「%」は特に断りがない限り「重量%」である。
【0020】
「微粉状εPLの製造」
微粉状εPL−1
ロータリーエバポレータを用いて脱水処理を施したεPLを、フ−ドミル(フィリップ(株)製HL2053:以下、フードミルという。)で10秒間粉砕したのち、JIS Z8801−1987に定める呼び寸法1mmの網ふるいを通して、微粉状εPL−1を得た。得られた微粉状εPL−1の平均粒子径をレーザー回折法で測定したところ350μmであった。
微粉状εPL−2
ロータリーエバポレータを用いて脱水処理を施したεPLを、フ−ドミルで15秒間粉砕したのち、JIS Z8801−1987に定める呼び寸法250μmの網ふるいを通して、微粉状εPL−2を得た。得られた微粉状εPL−2の平均粒子径をレーザー回折法で測定したところ200μmであった。
微粉状εPL−3
ロータリーエバポレータを用いて脱水処理を施したεPLを、フ−ドミルで20秒間粉砕したのち、JIS Z8801−1987に定める呼び寸法150μmの網ふるいを通して、微粉状εPL−3を得た。得られた微粉状εPL−3の平均粒子径をレーザー回折法で測定したところ100μmであった。
微粉状εPL−4
ロータリーエバポレータを用いて脱水処理を施したεPLを、フ−ドミルで30秒間粉砕したのち、JIS Z8801−1987に定める呼び寸法75μmの網ふるいを通して、微粉状εPL−4を得た。得られた微粉状εPL−4の平均粒子径をレーザー回折法で測定したところ50μmであった。
【0021】
実施例1
ポリプロピレン(MFR10g/10分、230℃、21.18N)を98.9%、BHTを0.1%、微粉状εPL−4を1.0%となるように調整しながら各種添加剤をブレンダーで均一混合した後、該混合物を50×50×0.5mmの金型に充填し、200℃に設定したホットプレスで該金型を19.61MPaの圧力で1分間加熱圧縮することにより、ポリプロピレンシート−1を作成した。
実施例2
微粉状εPL−4の代わりに微粉状εPL−3を用いた以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−2を作成した。
実施例3
微粉状εPL−4の代わりに微粉状εPL−2を用いた以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−3を作成した。
比較例1
微粉状εPL−4の代わりに微粉状εPL−1を用いた以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−4を作成した。
【0022】
(シートの外観観察試験1)
前記の実施例1〜3および比較例1で得られたポリプロピレンシート−1〜4のシートの外観を目視で観察した。その結果は、表1の通りである。
【0023】
【表1】
【0024】
表1から明らかなように、用いる微粉状εPLの平均粒子径が小さくなればなる程、ポリプロピレンシート内でのεPLの分散性が向上し、かつポリプロピレンシートの透明性および平滑性が向上することが分かる。反面、用いる微粉状εPLの平均粒子径が200μmを越えると、ポリプロピレンシート内でのεPLの分散性が著しく低下し、かつポリプロピレンシートの透明性および平滑性が顕著に悪化することが分かる。
【0025】
実施例4
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−4を0.5%配合した以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−5を作成した。
実施例5
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−2を0.5%配合した以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−6を作成した。
比較例2
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−1を0.5%配合した以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−7を作成した。
実施例6
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−4を0.1%配合した以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−8を作成した。
実施例7
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−2を0.1%配合した以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−9を作成した。
比較例3
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−1を0.1%配合した以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−10を作成した。実施例8
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−4を0.05%配合した以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−11を作成した。
実施例9
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−2を0.05%配合した以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−12を作成した。
比較例4
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−1を0.05%配合した以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−13を作成した。
比較例5
微粉状εPL−4を配合しなかった以外は、実施例1に準拠してポリプロピレンシート−14を作成した。
【0026】
(抗菌性試験1)
“銀等無機抗菌剤研究会 銀等無機抗菌剤の抗菌評価試験法(1995年)”に定められた合成樹脂抗菌試験法である“フィルム密着法”に準じて下記内容の抗菌性試験1を行った。
まず、前記の実施例1、3〜9および比較例1〜5で得られたポリプロピレンシート−1、2〜14を各々50×50×0.5mmの大きさに切った後、その全面をエタノールの滲み込んだ局方ガーゼで軽く2〜3回拭き、再び室温にて乾燥して、試験片とした。
また一方、普通ブイヨン培地を滅菌精製水で500倍に希釈し、pHを7.0±0.2に調整した「1/500培地」に、滅菌したピペットで大腸菌(Escherichia coli、IFO3972)を、培地中の生菌数が3.0×105個/mLの濃度となるように試験菌液を調整した。
次に、試験片を各々滅菌シャーレへ入れ、その試験面に試験菌液0.5mLを接種し、さらにその上に滅菌処理を施したポリエチレン製フィルムを被せて蓋をした後、温度35±1℃、相対湿度90%以上の条件で24時間培養を行った。培養終了後、各々の試験片、該フィルムに付着している菌をSCDLP培地(10mL)を用いて滅菌シャーレ中に十分に洗い出し、この洗い出した液1mL中の生菌数を標準寒天培地法により測定した。試験終了後、下記計算式により増減値差を算出し、その結果を表2の”洗浄処理なし”の欄に示した。
抗菌無加工試料
A:接種直後の生菌数
B:定時間培養操作後の生菌数
抗菌加工試料
C:定時間培養操作後の生菌数
増減値差 = log(B/A) − log(C/A)
また、試験片を水道水で30分間流水洗浄(流速2L/分)した後、前記の同様の方法で増減値差を算出した。その結果を表2の”流水洗浄30分”の欄に示した。
【0027】
【表2】
【0028】
表2から明らかなように、実施例1、3〜9から得られた試験片(平均粒子径200μm以下の微粉状εPL配合物)は、比較例1〜4から得られた試験片(平均粒子径200μmを越える微粉状εPL配合物)および比較例5(微粉状εPL無配合物)と比較して、大腸菌に対しての抗菌効果が高く、30分の流水洗浄を行った後であっても抗菌効果の持続力が非常に優れていることが分かった。
【0029】
(抗菌性試験2)
大腸菌の代わりに黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、IFO12732)を使用した以外は、抗菌性試験1に準じて抗菌試験を実施した。
この試験に使用した試験片は、前記抗菌性試験1と同様の実施例1、3〜9および比較例1〜5である。該試験片の増減値差を算出した結果を、表3の”洗浄処理なし”の欄に示した。また、該試験片を水道水で30分間流水洗浄(流速2L/分)した後、該試験片の増減値差を算出した結果を、表3の”流水洗浄30分”の欄に示した。
【0030】
【表3】
【0031】
表3から明らかなように、実施例1、3〜9から得られた試験片(平均粒子径200μm以下の微粉状εPL配合物)は、比較例1〜4から得られた試験片(平均粒子径200μmを越える微粉状εPL配合物)および比較例5(微粉状εPL無配合物)と比較して、黄色ブドウ球菌に対しての抗菌効果が高く、30分の流水洗浄を行った後であっても抗菌効果の持続力が非常に優れていることが分かった。
【0032】
実施例10
不飽和ポリエステル樹脂(ポリライトPS−260M、大日本インキ化学工業(株)社製)に対して、該不飽和ポリエステル樹脂が65%溶液となるように、スチレンモノマーを添加して、液状の不飽和ポリエステル樹脂を得た。
次に、該不飽和ポリエステル樹脂100%に対し、硬化剤を1.2%、促進剤5.0%、εPL−1を1.0%添加し、これらが均一に溶解・分散するように撹拌したのち、この混合溶液を50×50×0.5mmの金型に注型して、40℃下で48時間熟成させて、不飽和ポリエステル樹脂からなるシートモールディングコンパウンドを作成した。次に、該シートモールディングコンパウンドを150℃に設定したホットプレスを用い、9.81MPaの圧力で15分間加熱圧縮することにより、不飽和ポリエステルシート−1を作成した。
実施例11
微粉状εPL−4の代わりに、微粉状εPL−3を用いた以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−2を作成した。
実施例12
微粉状εPL−4の代わりに、微粉状εPL−2を用いた以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−3を作成した。
比較例6
微粉状εPL−4の代わりに、微粉状εPL−1を用いた以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−4を作成した。
【0033】
(シートの外観観察試験2)
前記の実施例10〜12および比較例6で得られた不飽和ポリエステルシート−1〜4のシートの外観を目視で観察した。その結果は、表4の通りである。
【0034】
【表4】
【0035】
表4から明らかなように、用いる微粉状εPLの平均粒子径が小さくなればなる程、ポリプロピレンシート内でのεPLの分散性が向上し、かつ不飽和ポリエステルシートの透明性および平滑性が向上することが分かる。反面、用いる微粉状εPLの平均粒子径が200μmを越えると、ポリプロピレンシート内でのεPLの分散性が著しく低下し、かつ不飽和ポリプロピレンシートに肌荒れ、まだら模様等が発生し、平滑性および外観が顕著に悪化することが分かる。
【0036】
実施例13
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−4を0.5%配合した以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−5を作成した。
実施例14
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−2を0.5%配合した以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−6を作成した。
比較例7
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−1を0.5%配合した以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−7を作成した。
実施例15
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−4を0.1%配合した以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−8を作成した。
実施例16
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−2を0.1%配合した以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−9を作成した。
比較例8
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−1を0.1%配合した以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−10を作成した。
実施例17
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−4を0.05%配合した以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−11を作成した。
実施例18
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−2を0.05%配合した以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−12を作成した。
比較例9
微粉状εPL−4を1.0%配合する代わりに、微粉状εPL−1を0.05%配合した以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−13を作成した。
比較例10
微粉状εPL−4を1.0%配合しなかった以外は、実施例10に準拠して不飽和ポリエステルシート−14を作成した。
【0037】
(抗菌性試験3)
試験片として、ポリプロピレンシートの代わりに、前記の実施例10、12〜18および比較例6〜10で得られた不飽和ポリエステルシート−1、3〜14を用いた以外は、抗菌性試験1に準じて抗菌試験を実施し、該試験片の増減値差を算出した結果を、表5の”洗浄処理なし”の欄に示した。また、該試験片を水道水で30分間流水洗浄(流速2L/分)した後、該試験片の増減値差を算出した結果を、表5の”流水洗浄30分”の欄に示した。
【0038】
【表5】
【0039】
表5から明らかなように、実施例10、12〜18から得られた試験片(平均粒子径200μm以下の微粉状εPL配合物)は、比較例6〜9から得られた試験片(平均粒子径200μmを越える微粉状εPL配合物)および比較例10(微粉状εPL無配合物)と比較して、大腸菌に対しての抗菌効果が高く、30分の流水洗浄を行った後であっても抗菌効果の持続力が非常に優れていることが分かった。
【0040】
(抗菌性試験4)
試験片として、ポリプロピレンシートの代わりに、前記の実施例10、12〜18および比較例6〜10で得られた不飽和ポリエステルシート−1、3〜14を用い、大腸菌の代わりに黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、IFO12732)を使用した以外は、抗菌性試験1に準じて抗菌試験を実施し、該試験片の増減値差を算出した結果を、表6の”洗浄処理なし”の欄に示した。また、該試験片を水道水で30分間流水洗浄(流速2L/分)した後、該試験片の増減値差を算出した結果を、表6の”流水洗浄30分”の欄に示した。
【0041】
【表6】
【0042】
表6から明らかなように、実施例10、12〜18から得られた試験片(平均粒子径200μm以下の微粉状εPL配合物)は、比較例6〜9から得られた試験片(平均粒子径200μmを越える微粉状εPL配合物)および比較例10(微粉状εPL無配合物)と比較して、黄色ブドウ球菌に対しての抗菌効果が高く、30分の流水洗浄を行った後であっても抗菌効果の持続力が非常に優れていることが分かった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の抗菌性樹脂組成物は、微粉状の抗菌剤を使用しており、かつ抗菌剤の粒径をコントロールしているため、該組成物を用いて得られる成形品の外観を損なうことなく、耐洗浄、耐洗濯性にも優れた成形品とすることができる。従って、本発明の抗菌性樹脂組成物は、抗菌性を求められる種々の成形品、フィルム、シート、繊維製品等の合成樹脂成形品およびペンキ等の塗料やインクに広く好適に利用することができ、得られた成形品は、繰り返し使用してもその抗菌効果が持続し、長期使用にも好適なものである。
また、本発明には、抗菌剤として、抗菌性に優れ、食品保存料としても使用できるεPLを用いているので、使用に際して、人体に対する危険性が極めて低い。
Claims (4)
- 合成樹脂に平均粒子径200μm以下の微粉末状ε−ポリリジンもしくは微粉末状ε−ポリリジン塩を含有させた抗菌性樹脂組成物。
- 微粉末状ε−ポリリジンもしくは微粉末状ε−ポリリジン塩の平均粒子径が50μm以下である請求項1記載の抗菌性樹脂組成物。
- 請求項1記載の抗菌性樹脂組成物を用いて得られる抗菌性樹脂成形品。
- 請求項2記載の抗菌性樹脂組成物を用いて得られる抗菌性樹脂成形品。
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