JP3579578B2 - 多電極ガスシールドアーク片面溶接方法 - Google Patents

多電極ガスシールドアーク片面溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟鋼・高張力鋼よりなる中板・厚板で構成されるV形突合せ継手を多電極で片面溶接する溶接方法に関し、複数の消耗性電極(溶接ワイヤ)を溶接線方向に一列に配し、裏波ビード形成用の裏当て材を使用し、ガスシールドアーク溶接にて突合せ継手の多電極による片面溶接を行う多電極ガスシールドアーク片面溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
中板・厚板鋼板の溶接を高能率化するため、従来より、被溶接材(V形突合せ継手)を反転することなく片側からの溶接で完全溶込みが得られるようにしたガスシールドアーク溶接による片面溶接が行われている。
【0003】
このガスシールドアーク溶接によるV形突合せ継手の片面溶接方法としては、例えば特公昭50−7543号公報、特公平4−45270号公報に開示されているように、単一の消耗性電極(溶接ワイヤ)を使用し、開先裏面に溶接線方向に沿って裏当て材を当て、開先内に溶着量増加用の充填剤(例えば鋼粒、鉄粉など)を所定量散布し、開先表面の側から溶接を行ってアークで充填剤を溶かしながら裏当て材で溶融金属を支えて裏波ビード(初層ビード)を形成し、次いで2層目以後の溶接を順に行って突合せ継手の溶接を完了させる、いわゆる1電極多パス(pass,あるいはrun )による片面溶接方法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし前記した従来の片面溶接方法では、両者とも、初層ビード(裏波ビード)に高温割れが発生し易いという問題があった。また、一般に、初層溶接では開先裏面側にビードを出すために低目の溶接電圧で溶接するので、初層ビードは凸状ビードとなるが、両者とも単一電極による1電極多パス仕上げによる溶接であり、2層目の溶接時には初層ビードの温度が低下しており、該溶接時に凸状初層ビードと開先面とのコーナー部を融合不良なく十分に溶融できず、該コーナー部に融合不良(溶込み不足)がしばしば発生した(図4参照)。さらに、特公昭50−7543号に開示された方法ではソリッドワイヤを用い、特公平4−45270号に開示された方法ではメタル系フラックス入りワイヤを用い、両者とも、ビード形状を美しく整えるスラグの発生量が少ないワイヤを用いるため、スラグ剥離性が悪く、ビード外観も悪かった。
【0005】
そこで本発明は、複数の消耗性電極を溶接線方向に一列に配し、ガスシールドアーク溶接にて突合せ継手の多電極による片面溶接を行うことにより、高温割れのない健全な初層ビード(裏波ビード)が得られ、第2電極により第1電極で形成された初層ビードと開先面とのコーナー部を融合不良なく十分に溶融して溶接を行うことができ、また、最終電極により良好なビード外観が得られ、よって溶接欠陥のない健全でビード外観の美しい溶接部が得られる多電極ガスシールドアーク片面溶接方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本願請求項1の発明は、複数の消耗性電極を溶接線方向に一列に配し、裏波ビード形成用の裏当て材を使用し、ガスシールドアーク溶接にて突合せ継手の多電極による片面溶接を行うに際し、開先形状:開先角度60°以下、ルート間隔3mm以下(0mmを含む)、第1電極:ワイヤ径1.2〜1.6mmφ、Mnを1.8重量%以上含有し、酸素含有量が200ppm以下のソリッドワイヤ、最終電極:ワイヤ径1.2〜1.6mmφのスラグ系フラックス入りワイヤ、開先充填剤:平均径0.3〜3mm、開先ルートより高さ3mm以上散布、第1電極の運棒法:ストレート法、又は、ウィービング幅4mm以下でウィービング回数60回/分以下のウィービング法、第2電極の運棒法:ウィービング幅が第1電極のウィービング幅より大で、ウィービング回数60回/分以下のウィービング法、溶接速度:35cm/分以下、にて溶接を行う多電極ガスシールドアーク片面溶接方法である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の多電極ガスシールドアーク片面溶接方法において、3以上の消耗性電極を用いる場合、第1電極と最終電極との間に配される中間電極として、ワイヤ径φ1.2〜1.6mmのソリッドワイヤ又はメタル系フラックス入りワイヤを用いることを特徴とするものである。また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の多電極ガスシールドアーク片面溶接方法において、最終電極として用いる前記スラグ系フラックス入りワイヤがTiを0.1重量%(ワイヤ全重量に対する重量%で)以上含有するものであることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
片面溶接における初層ビードの高温割れは、溶接金属の凝固時に割れが発生するもので、凝固中の溶接金属に負荷される拘束力、溶接金属の成分、溶接条件などに起因して発生するものである。この高温割れは、ビード表面にビード幅のほぼ中央を開先長手方向に沿って生じる表面縦割れの形態、あるいは、ビード表面に達していない内部縦割れの形態をとるものである。多電極による片面溶接を行う本発明による片面溶接方法では、初層ビード(裏波ビード)に高温割れが発生することをなくすために、初層ビードを形成する第1電極として、Mn及び酸素含有量を規制したソリッドワイヤを用いること、鋼粒のような開先充填剤(開先充填材)は開先ルートより3mm以上散布充填すること、溶接速度は35cm/分以下とすること、などの構成を採用している。
【0009】
また、初層ビードと開先面とのコーナー部に発生する融合不良をなくすために、第1電極による初層ビードの温度がほとんど下がっていない状態で第2電極による溶接がなされるようにすべく多電極による片面溶接を行う構成にするとともに、第2電極をウィービング(電極を所定幅で開先幅方向へ左右に揺動させること)させるようにしている。さらに、良好なビード外観が得られるようにするために、多電極1パスでの最終電極(2電極1パスの場合は第2電極)としてスラグ系フラックス入りワイヤを用いるようにしている。以下、本発明の構成について詳しく説明する。
【0010】
(1)多電極による片面溶接:第1電極としてMn及び酸素含有量を規制したソリッドワイヤワイヤを用い、最終電極としてメタル系でなくスラグ系フラックス入りワイヤを用いるようにした多電極による片面溶接を行うことにより、初層ビードの耐高温割れ性が大幅に改善でき、第2電極により第1電極で形成された初層ビードと開先面とのコーナー部を融合不良なく十分に溶融して溶接を行うことができ、また、スラグ系フラックス入りワイヤを用いた最終電極によりビード外観の良好なビードを形成することができる。なお、電極数は、溶接装置の取り扱い・操作性の点から2電極または3電極が最適である。
【0011】
(2)V形突合せ継手の開先形状は開先角度60°以下、ルート間隔3mm以下(0mmを含む)であること:中板・厚板の溶接を高能率化するためには開先断面積を小さくする必要があることから、前記範囲とした。なお、開先角度が狭くなると高温割れが発生しやすくなるので、開先角度下限値は40°が適切である。
【0012】
(3)各消耗電極のワイヤ径は1.2〜1.6mmであること:ワイヤ径が1.6mmより太いものではワイヤ剛性が大きく、ワイヤ送給性不安定に起因するアーク不安定(アーク長変動)がしばしば発生する。特に第1電極がワイヤ径1.6mmより太いものではアークが不安定になることで溶融池の凝固が均一になされず高温割れが発生し易くなる。一方、ワイヤ径が1.2mmより細いものでは使用溶接電流範囲が低く十分な溶け込みが得られない。特に第1電極がワイヤ径1.2mmより細いものでは安定した裏波ビードが得られない(開先裏面側に裏波ビードが安定して出ない)。したがって、ワイヤ径は1.2〜1.6mmの範囲とする。
【0013】
(4)第1電極にはMnを1.8重量%以上含有し、酸素含有量が200ppm以下のソリッドワイヤを用いること:まず、第1電極としてソリッドワイヤを用いる理由について説明する。
【0014】
狭い開先内に散布した充填剤や開先面内仮付け部をアークで溶かし、融合不良がなく健全で、開先裏面側への裏波の出方の良好な初層ビードを安定して得るためには、フラックス入りワイヤに比べて、アーク力が強く(同一ワイヤ径の場合)て広い条件範囲で安定した初層ビードが得られるソリッドワイヤを用いる必要がある。ソリッドワイヤに比べアーク力が弱いフラックス入りワイヤでは、健全な初層ビードを広い条件範囲で安定して得ようとすると、太径ワイヤを用いる必要があり、このような太径ワイヤの場合、溶着効率が低下することで同一積層条件では溶接入熱が増加し、このために溶接部の機械的性能を低下させることになる。また、溶融プールが大きくなるためにシールドガスとの接触面積が増加し、耐高温割れ性を低下させる溶接金属酸素含有量が増加する傾向がある。したがって、第1電極には、φ1.2〜1.6mmの細径においても広い条件範囲で安定した初層ビードが得られるソリッドワイヤを用いる。
【0015】
次に、第1電極には酸素含有量が200ppm以下のソリッドワイヤを用いる必要がある。酸素含有量が200ppmを超えるソリッドワイヤでは、初層ビードに高温割れが発生し易くなる。ソリッドワイヤの酸素含有量が高温割れに対してどのように作用するのか、その作用機構自体は明らかではない。しかし、酸素含有量が多く200ppmを超えると、溶接金属の凝固過程において固体と液体とが共存する温度領域(固液共存領域)が広くなるため、あるいは酸素が溶接金属中の元素と結びついて低融点酸化物を形成しこれが最終凝固域に偏析するため、該最終凝固域が溶接金属の収縮応力に対して引き裂かれ易くなり、耐高温割れ性が悪くなると推定される。また、Mn量が1.8重量%を下回るソリッドワイヤでは、初層ビードに高温割れが発生し易くなる。すなわち、Mnは、溶接金属中の不純物であるS(S:溶接金属の最終凝固域に偏析するために耐高温割れ性を低下させる)と結びついてFeよりも高融点な硫化物を形成するために、耐高温割れ性を向上させる効果がある。しかしMn量が1.8重量%を下回るソリッドワイヤでは、このような効果が十分に発揮されない。なお、Mn量の上限は、溶接金属の強度が高まりすぎて溶接金属の靱性(衝撃値)の低下を招く点から、2.5重量%が適切である。このようなことから、第1電極にはMnを1.8重量%以上含有し、酸素含有量が200ppm以下のソリッドワイヤを用いる必要がある。
【0016】
(5)最終電極にはスラグ系フラックス入りワイヤを用いること:前述のように、最終電極としてビードを美しく整えるスラグ系フラックス入りワイヤを用いることにより、良好なビード外観が得られる。さらに該スラグ系フラックス入りワイヤはTiを0.1重量%(ワイヤ全重量に対する重量%で)以上含有するものがよい。最終電極による溶接は、先行電極で形成されたビードの温度がほとんど下がっていない状態でなされるので、該最終電極によるビードは高温のままで温度が下がり難く、スラグが焼き付きスラグ除去に手間がかかることになる。そこでTiを0.1重量%以上含有させると、スラグ剥離性を良好にし、より美しいビード外観が得られる効果がある。なお、Ti量が0.5重量%を超えると溶接金属の強度が高まり衝撃靱性が低下するので、Ti量は0.1〜0.5重量%の範囲とすることがより好ましい。
【0017】
(6)中間電極にはソリッドワイヤ又はメタル系フラックス入りワイヤを用いること:3以上の消耗性電極を用いる場合、第1電極と最終電極との間に配される中間電極には、スラグ発生量が少ないソリッドワイヤ又はメタル系フラックス入りワイヤを用いることがよい。
【0018】
(7)開先充填剤は平均径が0.3〜3mmのものを開先内に開先ルートより高さ3mm以上散布充填すること:片面初層溶接では、開先が狭いために、溶融池が開先長手方向に沿って細長く延びるとともに溶融池幅が一定でなく不規則に変動し、かつ該溶融池が上下にも不規則に大きく動揺し、このように溶融池が細長く、かつ形状不安定となり、そのために溶融池の凝固が一斉かつ均一になされないことで、高温割れが発生し易いことが分かった。また、溶融池が細長く、かつ形状不安定となることに起因して、アーク長(ワイヤ先端と溶融池との距離)が大きく変動しアークが不安定となり、このアークが不安定になることで前記の溶融池不安定現象が助長されるという悪循環が生じていることが分かった。
【0019】
そこで、開先内に開先充填剤(例えば鋼粒)を開先ルートより高さ3mm以上散布充填することにより、図1に示すように、散布された開先充填剤で開先底部が埋められてあたかも開先ルート間隔が広くなった状態となる。この状態でアークを発生させ充填剤を溶融しながら溶接を行うと、充填剤なしの場合に比べて溶融池が幅方向に広がって大きくなり、かつ不規則に動揺することなく安定し、溶融池が安定化することでアーク長の変動も小さくアークも安定化する。この溶融池及びアークの安定化により溶融池の凝固が均一になされて、高温割れの発生を抑制することができる。しかし散布高さが3mm未満ではこのような溶融池及びアークの安定化による高温割れ抑制効果が発揮されない。
【0020】
また、開先充填剤の平均径については、0.3mmより小さいと、溶接時のシールドガスの吹き付けによって飛ばされて散布高さが乱され、アークが不安定になることで溶融池も動揺し不安定になる。一方、3mmを超えると該充填剤をアークで溶かし難くなる。したがって、開先充填剤は、その平均径が0.3〜3mmの範囲のものを用いる。なお、開先充填剤の化学成分は基本的には第1電極(ソリッドワイヤ)と同質でよく、開先充填剤中のMn量や酸素量が被溶接材、第1電極のそれと大幅に異なるものでは耐高温割れ性に悪影響を及ぼすので、開先充填剤のMn量はJIS G 3106 SM490(490N/mm級高張力鋼)と同程度で1.5重量%以上、開先充填剤の酸素量は第1電極と同じく200ppm以下であることが好ましい。
【0021】
(8)第1電極の運棒法は、ストレート法、又は、ウィービング幅4mm以下でウィービング回数60回/分以下のウィービング法とすること:開先裏面側におけるビード幅とビード高さとが均一で安定した裏波ビードを得るためには、第1電極の運棒はウィービングしないストレート法よりもウィービング法が好ましい。しかし、ルート間隔3mm以下の開先ではウィービング幅が4mmより大きいと開先ルート部に対するアークの集中性が失われて逆に安定した裏波ビードが得られ難くなり、また、ウィービング回数が60回/分を超える高速ウィービングではアークが不安定になる。したがって、第1電極の運棒法は、ストレート法、又は、ウィービング幅4mm以下でウィービング回数60回/分以下のウィービング法とした。
【0022】
(9)第2電極の運棒法は、ウィービング幅が第1電極のウィービング幅より大で、ウィービング回数60回/分以下のウィービング法とすること:第2電極の運棒法は、第1電極で形成された初層ビードと開先面とのコーナー部を融合不良なく十分に溶融して溶接を行うために、ウィービング幅が第1電極のウィービング幅より大きいウィービング法とする必要がある。該ウィービング幅は5mm以上が好ましい。ウィービング回数は60回/分を超えると運棒が速すぎてアークが不安定になる。したがって、第2電極の運棒法は、ウィービング幅が第1電極のウィービング幅より大で、ウィービング回数60回/分以下のウィービング法とした。
【0023】
(10)溶接速度は35cm/分以下であること:溶接速度が大きいほど、溶融池が細長くのびて形状不安定になり溶融池の凝固が均一になされず耐高温割れ性が悪くなる。したがって、溶接速度は35cm/分以下とする必要があり、30cm/分以下がより好ましい。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに示す。表1〜表3に示す供試材料を使用し、表7〜表11に示す溶接条件にて490N/mm級高張力鋼よりなるV形突合せ継手の炭酸ガスアーク溶接による片面溶接を実施し、初層ビードの高温割れの有無、開先裏面側への裏波ビードの出方や形状の安定性、初層ビードと開先面とのコーナー部に発生する融合不良の有無、及び最終電極によるビード外観について検査・評価した。
【0025】
図2はテストピース(溶接試験用のV形突合せ継手)の説明図で、その(a)は平面図、(b)は側面図である。耐高温割れ性を評価するために拘束板付きのテストピースを製作した。同図に示すように、2枚の開先付き供試鋼板1を突き合わせてなるV形突合せ継手(板厚t:18,20,25mm、幅W:400mm、長さL:1000mm)の裏面に4枚の拘束板2を溶接接合してテストピースを製作した。各拘束板2はその脚部(開先長手方向に対し直角方向へ延びる部位)の両サイドをすみ肉溶接(全長)して継手裏面に溶接接合してある。符号3は開先面内仮付け溶接部、4は裏当て材である。
【0026】
表3に開先充填剤(本例では鋼粒)の化学成分を示している。図3は開先充填剤の平均径φを説明するための図である。同図に示すように、1個の充填剤における最大長さをφmax(x)とし、その中央点から垂直で、かつ最大長さのところをφとし、φmax(x)φ平面からの垂直の長さをφとし、φ’=(φmax(x)+φ+φ)/3を求める。任意の20個の充填剤の各φ’を測定し、これら20個のφ’の平均値を充填剤の平均径φとしている。
【0027】
表4に供試ソリッドワイヤの化学成分の範囲を示し、このうち第1電極として用いられたワイヤの個別のMn量及び酸素量は表8〜表10中に示した。
【0028】
フラックス入りワイヤ(FCWと略称される)については、表5に示す化学成分の鋼製外皮(JIS G 3141 SPCC 相当)を用い、該鋼製外皮内にフラックスを充填したものを線引きし、表6に示すフラックス成分組成を持つスラグ系とメタル系の各フラックス入りワイヤを製作した。なお、Tiを含有させたスラグ系フラックス入りワイヤについてはそのTi量を表8、表10に示した。
【0029】
【表1】
Figure 0003579578
【0030】
【表2】
Figure 0003579578
【0031】
【表3】
Figure 0003579578
【0032】
【表4】
Figure 0003579578
【0033】
【表5】
Figure 0003579578
【0034】
【表6】
Figure 0003579578
【0035】
【表7】
Figure 0003579578
【0036】
【表8】
Figure 0003579578
【0037】
【表9】
Figure 0003579578
【0038】
【表10】
Figure 0003579578
【0039】
【表11】
Figure 0003579578
【0040】
【表12】
Figure 0003579578
【0041】
【表13】
Figure 0003579578
【0042】
試験結果を表12及び表13に示す。比較例では本発明で規定する要件の何れかを欠くために、次のような問題があった。すなわち、No.1及び4は第1電極としてMn量が下限値を下回るソリッドワイヤを用いたため高温割れが発生し、No.7及び8は第1電極として酸素量が上限値を上回るソリッドワイヤを用いたため高温割れが発生した。また、No.9及び10は溶接速度が上限値を上回るため高温割れが発生した。No.11〜14はワイヤ径が不適切な例であり、No.11は第1電極がワイヤ径1.0mmと細く溶接電流が低いため安定した裏波ビードが得られず、No.12は第1電極がワイヤ径2.0mmと太くワイヤ送給不安定に起因した高温割れが発生した。No.13は第2電極がワイヤ径1.0mmと細く溶接速度に対し溶接電流が低いため融合不良が発生し、No.14は第2電極がワイヤ径2.0mmと太くワイヤ送給不安定に起因してアークが不安定となりビード外観が不良であった。
【0043】
また、同じく比較例において、No.15〜17はウィービングが不適切な例であり、No.15は第1電極のウィービング幅が上限値を上回るため、No.16は第1電極のウィービング回数が上限値を上回るため、それぞれ、安定した裏波ビードが得られなかった。No.17は第2電極のウィービング幅が小さいため初層ビードと開先面とのコーナー部に融合不良(溶込み不良)が発生した。No.23,24,27は開先充填剤が不適切な例であり、No.23は開先充填剤の各鋼粒が小さすぎて不適切なためアークが不安定で溶融池も不規則に動揺し、初層ビードに高温割れが発生した。逆に、No.24は開先充填剤の各鋼粒が大きすぎて不適切なため該充填剤をアークで完全に溶かすことができず融合不良が発生し、良好な裏波ビードが得られなかった。No.27は開先充填剤の散布高さが下限値を下回るため高温割れが発生した。また、No.28及び29は、第2電極のワイヤ種類が不適切なためビード外観が不良であった。
【0044】
同じく比較例において、1電極2パスによるNo.32及び33では初層ビードと開先面とのコーナー部に融合不良が発生し、ビード外観も悪かった。
【0045】
これに対して、本発明例(No.2,3,5,6,No.18〜22,25,26,30,31)では、高温割れのない健全な初層ビード(裏波ビード)が得られ、第2電極により第1電極で形成された初層ビードと開先面とのコーナー部に融合不良(溶込み不足)のない溶接を行うことができ、また、最終電極により良好なビード外観が得られ、これによって溶接欠陥がなく健全でビード外観の美しい溶接継手を得ることができた。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る多電極ガスシールドアーク片面溶接方法によると、開先形状、各消耗性電極、該各電極の運棒法及び開先充填剤などについて適切に規定し、ガスシールドアーク溶接にて突合せ継手の多電極による片面溶接を行うようにしたものであるから、高温割れのない健全な初層ビード(裏波ビード)が得られ、第2電極により第1電極で形成された初層ビードと開先面とのコーナー部を融合不良なく十分に溶融して溶接を行うことができ、また、最終電極により良好なビード外観が得られ、これによって溶接欠陥のない健全でビード外観の美しい溶接部が得られる片面溶接を行うことができ、中板・厚板鋼板の溶接能率化の進展に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】V形突合せ継手(この例ではルート間隔が0mm)の開先内に充填剤を散布した様子を模式的に示す図である。
【図2】実施例における溶接用テストピースの説明図で、その(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】開先充填剤の平均径を説明するための図である。
【図4】凸状初層ビード及び融合不良の説明図である。
【符号の説明】
1…供試鋼板 2…拘束板 3…開先面内仮付け溶接部 4…裏当て材

Claims (3)

  1. 複数の消耗性電極を溶接線方向に一列に配し、裏波ビード形成用の裏当て材を使用し、ガスシールドアーク溶接にて突合せ継手の多電極による片面溶接を行うに際し、
    開先形状:開先角度60°以下、ルート間隔3mm以下(0mmを含む)、
    第1電極:ワイヤ径1.2〜1.6mmφ、Mnを1.8重量%以上含有し、酸素含有量が200ppm以下のソリッドワイヤ、
    最終電極:ワイヤ径1.2〜1.6mmφのスラグ系フラックス入りワイヤ、
    開先充填剤:平均径0.3〜3mm、開先ルートより高さ3mm以上散布、
    第1電極の運棒法:ストレート法、又は、ウィービング幅4mm以下でウィービング回数60回/分以下のウィービング法、
    第2電極の運棒法:ウィービング幅が第1電極のウィービング幅より大で、ウィービング回数60回/分以下のウィービング法、
    溶接速度:35cm/分以下、
    にて溶接を行うことを特徴とする多電極ガスシールドアーク片面溶接方法。
  2. 3以上の消耗性電極を用いる場合、第1電極と最終電極との間に配される中間電極として、ワイヤ径1.2〜1.6mmφのソリッドワイヤ又はメタル系フラックス入りワイヤを用いることを特徴とする請求項1記載の多電極ガスシールドアーク片面溶接方法。
  3. 最終電極として用いる前記スラグ系フラックス入りワイヤがTiを0.1重量%(ワイヤ全重量に対する重量%で)以上含有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多電極ガスシールドアーク片面溶接方法。
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